ステキな純和空間を独占 一日一組って ”貸切り” ってことですよ : 東家

【夜】[料理・味]5.0*40%+[サービス]5.0*15%+[雰囲気]5.5*10%+[CP]3.0*30%+[酒・ドリンク]3.5*5%=4.38(4.4)
　※「雰囲気」を特例で5.5ptで採点しています。ご了承下さい。


あのミシュラン三ツ星『銀座 小十』の奥田さんの右腕だった坂内晃さんが独立し、一日一組限定 ”一期一会” にこだわった懐石料理を提供するのがこちら『東家』です。

この触れ込みだけで、既にかなりの敷居の高さを感じてしまうのは私だけでしょうか。
かなり前からピックアップはしていましたが、とにかく一度お邪魔する機会を探っていたというのが正直なところ。

今年のカレンダーを見ると、息子の誕生日が土曜日なので家族そろって利用するのに丁度いいのではと思い、3月初旬に早々と予約しました。

場所はというと、まず銀座4丁目交差点の三越前から中央通りを松屋方面に行き、一つ目の松屋の角を右に曲がります。
そこから100メートルも行かないところの左側にある雑居ビルの7階。
正面には王子製紙本社ビルがあります。

エレベータで7階に上がり、引戸を開けるとそこには別世界！が広がります。
パッと見 ”京都” をインスピレーションする落ち着いた素敵な純和空間に、飲食店では滅多にお目に掛かれないレベルのテーブルが2卓のみ。
あとは茶の湯の道具一式が目に入ります。

お話を伺えば、お昼は時に2組のお客様を取ることはあるそうですが、夜は完全に1組限定とのこと。最大8名様までです。
そして今宵は、私たち家族4人でこの空間を独占です。
なんとも言えない贅沢で優雅な気分ですね。

一般的な飲食店における「個室」利用とは違い、お店の「貸切り」の感覚ですから、本当にいい気分ですよ！

こちらのお店はご主人が厨房を一人で、奥様が接客を担当されていますが、奥様のいつもニコニコ優しいキャラクターがリラックス・ムードを演出してくれます。
来店する前の硬いイメージは、瞬時に払拭されました。
特に家族、子供たちはホッとしたことと思いますね。

これは余談ですが…
大きくて分厚い見たこともない「おしぼり」なので、ちらっとタグを見ましたが、今治の ”すごいタオル” を使ってました。
こんなところまでこだわっているのは流石です。

さてお料理は、夜のコースはおまかせ20,000円、25,000円の2種類。お昼は10,000円のみです。
電話予約の時点で25,000円（サービス料10％・消費税共に別）をお願いしておきました。

この日のコース内容は次のとおりです。

前菜は①鱧の南蛮漬け ②アスパラガスの白胡麻ソースがけ ③わらび白和え ④もずく酢 の4種類。白和えの下には紫陽花の葉、中央には飾りの紫陽花の花が季節感を演出。清々しい印象です。
白和えはキメが細かく濃厚で、チーズのような感じがするくらい。とても美味しくいただきました。
茹でたアスパラに掛けられた白胡麻ソースも絶品です。
丁寧に骨切りされた鱧は、こんな調理の仕方もあるのかと感心させられました。

続いては鱧とジュンサイのやさし～いお椀。
お椀からはみ出んばかりの肉厚な鱧！
そして旬に入ったジュンサイは先日も和食店で食べたばかり。見た目の美しさ＆不思議さとヌルヌル＆コリコリの食感の妙が人気のヒミツでしょうか。
ズッキーニでしょうか？輪切りが2本繋がっていて、まるで「知恵の輪」のような遊び心を感じました。

このあとは軽めにあっさりサヨリと小柱、水菜のサラダ仕立て。和風カルパッチョみたいなものですね。
好物の小柱の存在感が抜群でした。

お造りはオコゼをポン酢でサッパリといただきます。
これまであまり食べた記憶はありあせんが、透き通るような美しい白身と、何とも言えないコリコリとした歯応えが食感が印象的です。

お肉は土佐（高知）の赤牛サーロインです。粒マスタードと醤油でいただきます。
結構なボリュームがありますが、サーロインといえども相当にヘルシーな赤牛を使っているのでペロッと食べられます。
通常の黒毛和牛のフィレ感覚ですね。

焼き魚はイサキですね。適度に脂が乗って旨いです。
これに皮付きのまま炭火の中で蒸し焼きされたベビーコーンがもうひとつの主役。
一つまみの岩が振られただけのシンプルな味付けですが、かえって甘みが引き立ち美味しいですね。中にあるヒゲも食べられますよ。
付け合せは鶏ひき肉の入ったおからボールと蓮根・茗荷の酢漬け、更にはサツマイモと枝豆と豪華な一品です。

このあとは私が大好きな焼き茄子が登場。
オクラのみぞれがけです。
しっかりと身の詰まった茄子は、たっぷりと吸った和出汁と炭火で焼かれた香ばしい香りが相まってホント旨いですね。

最後は〆のご飯。
この日は穴子と牛蒡の土鍋炊き込みご飯です。
まず何といっても使われている穴子の量が半端なし！丸々3～4匹は入ってます。
女将さんが土鍋の蓋を取った瞬間、まずその豪快さにド肝を抜かれますね。次に湯気とともに広がる甘～い香りが。
お食事にはお新香と赤出汁も付いてきます。
残りは折箱に入れて、帰りに持たせてくれるので、お腹いっぱいの時は余り無理しない方がいいかと(笑)

デザートは…
和食人のご主人が和三盆を使って焼いてくれた苺のタルトです。しかも苺はひとつひとつ丁寧にハート形にカットされているではありませんか。
予約時に言った「息子の誕生日」を覚えていてくれたんですね。嬉しいです！

この頃になって初めて、調理を終えたご主人がご挨拶に見えます。
調理場は完全に一人でやっているので、仕事に集中するためこのようなスタイルをとっているそうです。

そして一杯ずつ自らの手でお茶を点て、客人をもてなしてくれるのです。
ご馳走様を言うまで、何杯でもお茶を点て続けます。それが茶の湯のルールなのだそうですよ(笑)

こんな時間があるお蔭で、ご主人といろいろな話もでき、食後のやすらぎの時が一段と楽しくなります。
茶道の話し（私は全くの門外漢なのですが）、食材や修行時代や師匠の奥田さんに教わったことなど料理の話し、このお店のことや料理人として人としてのこだわりなどなど…楽しいひとときを過ごすことができました。

家族での利用ですから基本ノンアルコール。
5,000円強のドリンク代と、サービス料10％、消費税が加算されて、それでもお会計は4人で125,000円余りとなりました。
決してお安くはありませんが「この空間を買う」「お店（空間やご主人）を独占する」と思えば、TPOによってはとてつもない威力を発揮するお店だと思います。

今回利用して、私なりにも「こんな時にはまた予約しよう…」といった具体的イメージが湧いてきました。
坂内さん、またお会いできるのを楽しみにしています。