レビュアーの皆様一人ひとりが対象期間に訪れ心に残ったレストランを、
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1位
3回
2013/07訪問 2019/12/22
春は山菜!秋は松茸!日本に生まれて良かった!と心から思える信州の名宿
御無沙汰しております。
最近は、京阪神の和食店巡りもマンネリ化し、
その土地でその時期にしか食べられないものを求めて、
遠方まではるばる足を運ぶ日々を過ごしております。
今回、レビューを書かせて戴く、右馬允は、春の山菜、秋の松茸・・・と、地産料理で有名な信州の名宿です。
松茸の時期は、非常に予約が難しい為、
週末の宿泊をご希望される場合は、半年以上前から予約を入れることが必須と思われます。
ただし、皆様ご存じの通り、松茸が豊作であるか否かは、直前までわかりませんので、
質の良い松茸にあり付けるかどうかは、本当に「運次第」ということになる訳です。
私は今回幸運にも大豊作の年に伺うことが出来ました。
私はこれまで東京や大阪、京都で松茸を丹波や岩手の松茸を何本も戴いて来ましたが、
風味という点で、納得出来るものに巡り合えたことは、殆どありませんでした。
言うまでもなく、茸も野菜と同様、土から抜いた瞬間に、風味が劣化しますから、
大都市にある店の厨房に運ばれてくる頃には、それこそ本来の風味が大きく損なわれている訳です。
同じ例では、よく中国産や韓国産の松茸は風味が弱いと言われておりますが、
それは輸送期間の長さに起因している部分が大きいのであって、
現地で採取した時には、良質なものは国産のものに匹敵する程、香りが高いという話もしばし耳にします。
個人的には、松茸という食材の醍醐味を味わうには、○○産云々以上に、
朝採りの質の良い地物の松茸を腕の良い職人に調理して戴くのが一番であると考えます。
ただ失礼ながら、地方には松茸という素材を昇華させる腕を持つ職人の方は、
本当に一握りというのが現状ではないでしょうか?
こちらの右馬允は、大鹿村という南信州の山奥にあるのですが、
多くの方が想像される「田舎料理」ではなく、本当に洗練された質の高い
地の食材を活かした松茸料理を戴くことが出来ます。
まず、松茸の素焼きに始まり、地の食材や松茸の寿司を盛り込んだ八寸、そしてホイル蒸しに茶碗蒸し、天ぷら・・・と
量、質共に大変満足の行くものだったように思います。
どの料理も押しなべて質が高く絶品揃いなのですが、その中でも深く印象に残った料理は二品あります。
まず、一品目は「信州牛と松茸のすき焼き」です。
割下の上白糖の甘さが控えめで、信州牛の脂も柔らかく、すき焼きという調理法に否定的な私が初めて、
「物凄く美味しい!」と心から思えた逸品でした。
それから二品目が「松茸の雑炊」です。
松茸の芳醇な香りがする冷たい出汁が、これまた悶絶級の旨さであり、これは生涯忘れられない一品となりそうです。
こちらの料理は全般的に、「出汁」が上質であり、御主人が非常に重視されているのがわかります。
具体的には明記しませんが、著名な料理人や食通で知られる文化人とも多くの交流があるようですから、
その辺はかなり研究されているのでしょうね。
長くなるので割愛させて戴きますが、朝食も見た目は素朴ながらも、どれも非常に美味しかったです。
朴葉味噌や揚げに納豆を詰めたもの等は全て自家製であり、
一品一品、手間暇と拘りを持たれて作られているのがよくわかりました。
宿到着時と朝の二回供された、栗の茶巾絞りもこれまた生涯随一とも言えるお味でした。
日本で一番美しい村と称される大鹿村や宿の雰囲気全てひっくるめて、
本当に素晴らしい一時(ひととき)を過ごすことが出来ました。
(松茸の時期の)宿泊料は時価であり、大体35,000円~40,000円の間と決してお安くはありませんが、
一生に一度、訪れる価値は十二分にあると思います。
こちらを訪れた二日後に吉兆嵐山でも松茸を戴いてきたのですが、
個人的には、断然、当店に軍配が上がりました。
山菜の時期(ゴールデンウィーク前後?)も非常に良いというので、後日、すぐに来年の予約を入れました。
なお、松茸の時期(9月下旬~10月下旬)はどうしても値段が跳ね上がりますが、
それ以外の時期は15,000円(税別)と比較的御手頃な価格で宿泊出来るようです。
話が逸れますが、大鹿村までのドライブ時に、五つの赤い風船が唄う「遠い世界に」を車で聴いていました。
見事なまでに周囲の風景とマッチしていて、それが凄く感動しました。
それ以来、すっごく好きな曲になりました。(^-^)
2位
1回
2010/08訪問 2012/02/20
海の魚と比べると、川魚は食材として敬遠されがちであるが、本当に奥が深い。
生育する川の土壌成分や水温、そして川幅や傾斜角度等、
様々な環境的要因によって、同種の魚でも味が全く異なるから面白い。
小さな川の魚は骨が固く、逆に大きな川の魚では骨が柔らかい傾向があり、
また、急流と緩流で育った魚では、脂肪の付き方や身のしまり具合など、まるで違う。
川魚の中でも、鮎は生育環境の影響を非常に受け易い魚と言われている。
鮎を食材として捉えた場合、どこの川の鮎か?という情報は極めて重要であり、
毎年、「利き鮎品評会」が開催されているのも、その所以であると思われる。
今年に入り、かなりの数の鮎を戴いてきたと、一応は自負しているが、
個人的には、和良川と馬瀬川、そして、(当店で使用している)高津川の鮎が最も旨かった。
逆に、印象があまり宜しくなかったのは、日本海で獲れた鮎であり、
これは鮎特有のスイカ臭が殆どせず、卵を持たない雌シシャモを彷彿とさせる味だった。
今回レビューする、こちらの美加登家は新橋の名店、鮎正の本店であり、
かねてより、是非一度、足を運んでみたいと思っていた。
ただし、東京からは、そう簡単に行ける場所ではないので、
そのうち、そのうち・・・と思っている間に、十年以上もの月日が流れた。
そして、ついに美加登家を訪れる機会に恵まれた。
この美加登家で使用する鮎は、店の前を流れる高津川産の鮎であり、
この高津川には堰がなく、日本一の清流に数えられる川の一つと言われている。
高津川の鮎の旨さは、鮎正で既に体験済みであり、自ずと期待に胸が高まる。
今回、こちらで戴いたのは、12,500円の天然鮎のコース。
料理は、子うるか、苦うるか、背ごし、鮎の御椀、塩焼き、うるか味噌包み揚げ、
うるか茄子、酢の物、鮎御飯、青梅の甘露煮の計10品が供された。
支店である鮎正と、供される料理は基本的には同じであり、
お味の方も、いずれも洗練されたものばかりだった。
ただし、食材の質については、こちらの方がハッキリとこちらの方が上であり、
その決定的な「素材の質の差」は、背ごしや塩焼きなど、
加工度の低い料理で、より強く感じられた。
素材が良いだけでなく、御主人の料理の腕前もかなりのものだった。
例えば、鮎料理の醍醐味である「塩焼き」は絶妙なる焼き加減で、思わず頬が綻んだ。
川魚は海の魚に比べて、身の収縮力が強く、変形し易い為、
(皮ではなく身から焼くのは、この所以です)焼き手の力量が大きく問われる。
また、椀物の出汁加減や姿造りの酢の加減等からも、その非凡なる料理センスを強く窺い知ることが出来た。
部屋に挨拶に見えた女将曰く、「今年の夏は、理想的な型の鮎がなかなか獲れなかったが、
私達が訪れる数日前より、やっと、獲れるようになって来た」とのこと。
そういった巡り合わせもあり、これまでで最高の鮎料理のコースを戴くことが出来た。
個人的に、鮎という魚は、初夏から初秋にかけての短い期間に
その味わいが大きく変化するところに、食材としての妙味があるように思う。
初夏の稚鮎は身も骨も柔らかく、凝縮した旨味があり、
また、成長するに従って、野趣溢れる味となり、
秋の風物詩とも言える、卵をたっぷりと蓄えた落ち鮎も、また、それはそれで美味。
鮎を心底堪能するには、初夏と落ち鮎の時期に1回づつ足を運ぶ必要があるとは思うのだけれど、
東京からでも大阪からでも、これだけ離れていると、そう気軽には行けないよなぁ。。。
3位
1回
2010/10訪問 2013/08/08
間違いなく人を選ぶ店であろうが、こちらのすっぽん料理は生涯に一度食べておくべきです!
「美食家が最後に辿り着く食材は河豚とすっぽんである」と、何度か耳にしたことがあります。
両者に共通するのは、フォアグラや本鮪の大とろ等の豊潤な脂の旨味とは対極を成す、
淡泊でいながら、澄みきった、深い旨味であるように思います。
河豚で有名な店は、全国に点在しますが、すっぽんに関しては、本当に限られると思います。
私が知るところでは、東では、荻窪の四つ葉、赤坂のさくま、群馬県高崎市のやじま、
西では、京都の大市、滋賀のきたむら、大分のやまさ旅館・・・あたりでしょうか。
当店は、豊橋という立地と、専門店ではないということから、今一つ知名度がパッとしませんが、
供されるすっぽん料理は、間違いなく全国レベルのものであると確信します。
山猫軒は、完全予約制の創作料理屋であり、5,000円以上の金額でのおまかせが基本ですが、
前以て、予算と料理の希望を伝えおけば、御主人にその都度相談にのってくれます。
すっぽん尽くしコースは14,000円と、(こちらの店では)御値段の方が少々高めの設定となっておりますが、
供される料理の内容を考慮すれば、非常にリーズナブルであるように思います。
料理は一皿毎のポーションは少なめですが、コースを通して15~6皿程供されるので、かなりのボリュームがあります。
一点、注意しなければならないのは、時間に制約がある方の利用は不向きであるということ。
というのは、調理工程の大部分を御主人が一人でこなされているので、
(事前に相談すれば、下準備をして戴けるので、多少時間を早めることは可能のようですが、)
最低、2時間~2時間30分程はかかると見ておいた方がよろしいかと思います。
御主人は世界各国の調理法と食材の特徴、そして安全性をも知り尽くされた方。
調味料についても非常に拘りを持たれているようで、
店で使用している調味料も、全国から取り寄せた一級品ばかり・・・。
印象に残った料理は・・・全部です。(笑
甲羅と葱の酢味噌和え、卵管・腸管・肝臓の時雨煮、卵巣の醤油漬け、
すっぽんの脂焼き、肝焼き、肩ロース焼き、せせり焼き、胃袋焼き・・・などは、
全て美味しく、部位毎の異なる味質、食感を堪能し、素直に感動!
すっぽんの松茸御飯もメチャ旨かった。相性の良さは鱧松茸の比ではありません。(笑
すっぽんの脂でチャーハンを作ってみたり、石臼で挽いた全粒粉を塗して唐揚げにしてみたり、
八角や丁子、桂皮等のスパイスを投入して、薬膳スープを作ってみたり、
その発想力と料理センスには、マジ脱帽です。^^;
すっぽんの和風スープも、京都のどこぞの店の○鍋のように、
臭みを消す為に、日本酒を必要以上に投入したりはせず、
何と!水と醤油のみを用いて、
すっぽん特有の、あの淡泊で深みのある味わいを見事なまでに引き出していました。
他の方も仰られている通り、店内はお世辞にも綺麗とは言い難く、
また、料理を盛る食器も100円ショップで売られているようなショボイ(失礼!)ものばかり。
御主人も(良い意味で)変わり者であり、非常にマイペースな方なので、
間違いなく人を選ぶ店であるし、人によって評価も大きく分かれるような気がします。
聞くところによると、○○尽くしシリーズは、すっぽんだけでなく、
鯛や海老、鶏など、何パターンか用意されているようなので、
また、機会を見つけて、必ず訪問したいと思っています。
しかし、なぜ、あの厨房の設備から、
あの、味わい深い料理の数々を作ることが出来るのか、本当に不思議です。^^;
4位
1回
2010/08訪問 2010/11/24
穴子料理において私が最も感銘を受けた店・・・特に小鍋は必食です!
穴子料理に関しては、唯一無二と思われる店。
御主人は辻留の二代目:辻嘉一氏の薫陶を受けた職人気質の方であり、
料理センス、調理技術、味付けの妙など、いずれも卓越したものを感じます。
料理は10,500円の穴子づくしのコースを戴きました。
内容は、先附け(食用ほおづき・国産蛤と雲丹の蒸し煮・穴子の煮凝り・鴨ロース)
、薄作り、小鍋、白焼き、肝焼き、 穴子と純菜、茗荷の酢のもの、天麩羅、鮑、
食事(穴子飯・蛤の味噌汁・御新香)、水菓子・・・だったと思います。
個人的に穴子という食材に関しては、古より、調理法が確立されており、
煮穴子、焼穴子、天婦羅・・・など、巷に有り触れたものしか口にしたことがなかったので、
こちらで供された穴子料理の数々は、まさに目から鱗でした。
例えば、「薄造り」。穴子の血は、鰻と同様、毒を有し、また独特の臭みがあるので、
供される店自体は非常に限られているのですが、
コリコリとした弾力と鮃の縁側以上にコクを感じる身質にはとても驚かされました。
てっさのような盛り付け、そして包丁の入れ方等も完璧。
ただ、それ以上に記憶に残ったのは、やはり「小鍋」。
御主人曰く、出汁は、兜や中骨などのアラを焼かずに、
その儘18時間熱を加えて、少々醤油を足したものとのことですが、
上白糖や味醂等の甘味は皆無であり、この出汁が実に美味!
時間が経つにつれ、その味わいが千変万化するので、実に面白く、深いと感じました。
浅草あたりの泥鰌鍋は余計な雑味があり、食べ進むうちに飽きが生じて来ますが、
こちらの小鍋は、むしろ、その逆で、食欲が掻き立てられたような気がしました。
店で使う穴子は、基本的に業者任せであり、
この日の穴子は、金沢八景で獲れたものとのこと。
なお、穴子は東京湾の他に、松島からも仕入れており、
薄造り、白焼き、蒲焼には松島産の穴子、
天婦羅、小鍋には東京湾の穴子・・・と、
身質の違う穴子を、調理法によって使い分けるというコダワリがあるとのこと。
穴子は鮨屋の「それ」に比べると、質は一寸劣り、
身の濃厚感に欠けるように感じましたが、
穴子という食材の魅力を多分に引き出している、料理の数々には
それを補って余りあるものを感じました。
先附けや酢の物等も見た目は地味ながらも、いずれも味付けは絶妙でしたし、
食事で供された穴子飯も、香ばしく、さっぱりとした味わいで実に美味しかった。
こちらの店に訪問の後、関西や中四国の穴子料理の有名店を何軒か回りましたが、
こちらに比類する店は、一軒たりともありませんでした。
同界隈には、「たまる」という穴子の名店がありますが、
個人的には、当店に断然軍配を上げます。
穴子という食材の魅力を多分に触れたい方には、強くお勧め出来る店です。
5位
1回
2010/06訪問 2012/03/03
訪問は今年の6月。関西在住の仲良しの某レビューアー様に連れて行って戴きました。
それまでは、関西で一番旨い焼き鳥屋は福島にある「かしわや闘鶏」であり、
それを超える店は、関西には存在しないだろうとさえ思っていた。
ところが当店を訪問して以降、その考えは見事なまでに覆えされた。
まず、付き出しで供されたのは、皮のポン酢和え。
上質な河豚の皮を思わせる、コリコリとした歯応えで、素材の鮮度の良さを確認。
続いては、同行者一番のお勧めである「極上刺身の盛り合わせと極上白肝」。
御造りは云わば、素材そのものであり、全く誤魔化しがきかないもの。
こちらの御造り、実に艶があり美しい姿。臭みは皆無であり、
弾力感、甘味、旨味ともに素晴らしかった。極上白肝は数量が限られているようなので、
訪問の際には予め電話で取り置きして貰うことをオススメする。
魅惑の焼しゃぶも旨かった。薄く捌いた雌のモモ肉を丁寧に焼き上げており、
生とは違う鶏肉の醍醐味を楽しむことが出来た。
ちなみに、こちらで使用している鶏肉の銘柄は、関西では抜群に旨いと思っている淡海地鶏とのこと。
私の経験上、この鶏を扱っている店は、かなりの確率で「アタリ」が多い。
炭火焼き野菜も、肉の脇役ではなく、十分主役になれる程旨かった。
今回戴いた中では、ズッキーニ、アイコトマトが特に良かった。
関西で野菜の美味しい焼き鳥店といえば、京橋の「うずら屋」が思い当たるが、
種類は向こうの方が多いが、味は、こちらの方が断然美味しいと感じた。
そして、メインの焼き鳥。
雄雌の食べ比べ6本セット+おまかせ地鶏串焼き5本セット!を戴いた。
極上むね肉の雌と雄、ねぎ身、皮、つくね、食道、雄手羽、ぼんじり、背肝、さがり・・・と、
いずれも大変美味。肉の切り方や火の通し方、塩の振り方、全てに十二分にコダワリが伺えるものであった。
鶏肉は脂肪分が少ない為、火入れを一歩間違えると、
不快な焦げやパサツキ等が生じる上に、
塩の種類や塩を振る量を一歩間違えると、
鶏肉特有の繊細な風味が瞬く間に破壊されてしまう。
焼き鳥は単純そうに見えながらも、実に奥の深い食べ物だと思う。
また、雄と雌の味質の違いを楽しめるのも面白い。
牛肉の歩留まり等級や肉質等級等による味質の違いは、世間にだいぶ浸透して来たが、
食肉の生育環境(餌など)、期間、性差による味質の違いは、意外と世間では認知されていないものである。
ダブル玉子の親子丼も本当に贅沢な味わいのものだった。
玉子の黄身の色の濃さは餌の違いで決まるが、
この、黄身の表面張力=鮮度の良さそのものに外ならない。
濃厚地鶏のスープも塩加減も宜しく、余計な調味料も付与されておらず、これも実に美味しかった。
まだお若いと思われる御主人は、物腰柔らかで、
非常に研究熱心な方であった。
あくまで私見であるが、もう一つの関西焼き鳥界の雄、「かしわや闘鶏」の焼き鳥は、男性的な力強いものを感じ、
一方、「鶏一途」の焼き鳥は、女性的な繊細さが感じられた。
どちらも良い店とは思うが、こちらの方が値段もはるかに良心的であり、
総合力では、迷わず当店に軍配を上げるだろう。
関西に淡海地鶏を使用した店で、実は関西には、もう一軒非常にお勧めの店があるのだが、
混雑して予約が取れなくなると困るので、しばらく伏せておきます。
ヒントはこちらに→http://u.tabelog.com/wienerwald/diarydtl/34183/
6位
1回
2010/10訪問 2010/11/26
ここは現代の日本人が忘れかけていたものが無数に詰まった宿。
目に映るもの、そして舌で味わうもの全てが新鮮であり、本当に素晴らしい体験をさせて戴いた。
はっきり言って部屋自体には全く期待しない方が良い。
これまで、国賓や著名な文化人が多数利用して来たことが、俄かに信じ難い程である。
評判の高い食事も贅沢な食材なんぞは一切出て来ない。
強いて言えば、馬肉くらいで、後は地元で手に入るものばかりである。
ただし、最高に贅沢な一時を過ごすことが出来るのは疑う余地がない。
まずは、夜の食事。
ゼンマイ、コゴミ、ワラビ、ウドブキ、イラなどの山菜類が少しづつ供されたのだが、
どれも、薄味かつ素朴なお味で美味しかった。
鮒の開きは初めて戴いたが、臭みが全く感じられず、後で鮒と説明を受けて、思わず驚いた程。
名物の馬刺しは全く癖のない上品なお味で、大阪のミシュラン掲載の馬肉料理の店よりはるかに旨かった。
馬刺しの後には馬鍋が登場したのだが、これも調味が控えめで、さっぱりとしたお味で美味。
もう一つの名物である、ハチノコ、ザザムシ、イナゴの三点盛りは、見た目は流石にグロくてドン引きするも、
実際戴いてみると、意外とフツーに食べれて、最後の方は何の抵抗もなく、箸をつけるまでになった。
続いて、朝の食事。
まずは、冷やした柿で目を覚まし、夜とは異なる種類の山菜料理を摘まみながら、
香ばしい焼きおにぎりを頬張った。味の方はいずれも美味でしたが、
私が最も記憶に残ったのは、〆に戴いた蕎麦の実の粥。
出汁は雉で取っているとのことですが、これが相当に旨かった。
宿泊の部屋は上記の通りであるが、建物自体は非常に趣があって素晴らしかった。
それから、他の皆様が書かれている通り、
日本で一番雰囲気のあるとも評される露天風呂は、
洗い場がなく、目の前に湯船がドーンと鎮座しており、あれには本当に驚いた。^^;
接客については賛否両論あるように思う。
年配のおばあちゃんが接客を担当されているのですが、
かなりマイペースで、宿泊客に対して物言いや態度に遠慮がないのです。(>_<)
私は正直、最初あまり接客に良い印象を持ちませんでした・・・が、
年を召されているのに階段を何度も上り下り姿を見たり、色々とお話をしているうちに、
当初抱いていた印象はなくなり、逆に、このおばあちゃんがいるからこそ、
この旅館が凄く魅力的なものになっているんだと考えるようになりました。
そういえば、そのおばあちゃんが、食事の席で食材について説明される際にポツリと言っていました。
地球の温暖化や酸性雨の問題によって、
料理に使う、山の産物が年々採れなくなって来ている・・・と。
好みはハッキリ分かれそうですが、ここは是非一度、宿泊して戴きたい宿です。
勿論、おばあちゃんが接客されているうちに・・・ね!(^-^)
7位
1回
2010/11訪問 2011/06/13
NHKの連続テレビ小説「てっぱん」の舞台として今、脚光を浴びている尾道。
その尾道市の中心部にある、虎魚(おこぜ)料理で有名な料理旅館である。
店は、尾道水道に面する数寄屋造りの建物で、
部屋の窓を開けると、すぐ目の前には尾道大橋の光景が広がっている。
私の経験上、観光地(特に温泉街)にある料理旅館で供される食事というのは、
大概、口にするさえ躊躇するものばかり出て来る。
例えば、①付き出しは、茹でた枝豆など、素人でも簡単に作れるもの。
②御造りは、表面が乾いており、包丁の入れ方にも斑(むら)がある。
山葵は木の葉型をした粉山葵。調味料はサシの多い鮪にも、淡泊な白身にも、味の強い市販の醤油。
③椀物や煮物は、生命線である出汁の味わいが単調でしょっぱい。
④焼き物は、火を入れ過ぎて折角の素材が台無し。
⑤揚げ物は、衣を箸で剥がしながら戴かないと、胃凭れすること必至。
まぁ得てしてこんなもんである。
今回は、名物の「おこぜ尽くし」のコースを戴いた。
内容は、煮凝り、御造り、煮物、唐揚げ、蕪蒸し、食事(雲丹御飯・赤出汁・香の物)、
バニラアイスの計7品から構成されており、最後のアイス以外は、全ての料理に、おこぜが使われていた。
結論から言うと、一品たりともハズレの皿はなく、非常に満足することが出来た。
おこぜという魚は、「夏ふぐ」とも称され、産卵期を迎える5月~8月が旬であると言われているが、
まさか、11月という時期に、こんなにウマい、おこぜ料理を戴けるとは思わなかった。
まず、最初に運ばれて来た煮凝りと御造りで、本日のアタリを確信することが出来た。
様々な部位が混在した煮凝りは、強い弾力を持ち、
淡雪の如く融けてゆくと、口中を芳醇なおこぜの出汁の香りが満たした。
御造りは、皮や肝など部位毎に異なる食感の妙味、
河豚よりも更に旨味の強い身質をしっかり堪能。
煮物は、たまり醤油を使用されているのか、関西よりも少し濃く甘めの味付けでしたが、
身もふっくらとして、これも実に美味。
唐揚げはそこいらの虎河豚ではとても太刀打ちできない旨さ。
おこぜの蕪蒸しやおこぜの赤出汁なども、出汁が美味しく丁寧な仕事ぶりも光る。
店ご自慢の雲丹御飯には、瀬戸内産の甘味の強い雲丹が使用されており、
うずらの卵や刻み海苔と一緒に掻き混ぜて戴くと、言葉を失う旨さ。
ただ、食事は、もう少しさっぱりとした味わいのもので、〆ても良かったかな。
最後のアイスクリームは???だったけど、尾道では有名な店のものとのことで、
(私のような)遠方から訪れた観光客にとっては、話のネタにもなるし、
これはこれで良いのかなと、好意的に解釈。
こちらの店では料理も然ることながら、そのロケーションの素晴らしさも特筆すべきものがあると思います。
窓を開けると、1m先はもう海であり、餌をチラつかせていると、
海猫達が、何の警戒もなく、手が届く距離にまで近寄って来ます。
奥琵琶の湖里庵も凄く感動しましたが、こちらもなかなかのサプライズでした。
果たして、今後、こちら以上のおこぜ料理に出会うことが出来るのだろうか?
食事を一通り戴いた後、素直にそのような感想を抱きました。
聞けば、私の好物であるアコウの料理も供されているというので、
次回は、そちらのコースを戴きに、また足を運んでみたいと思います。
8位
1回
2010/04訪問 2010/12/23
今年に入り、「その土地、その店でしか味わえない料理」を求めて、
「地産地消」をコンセプトに掲げる店への訪問を重ねて参りました。
料理のジャンルを問わずに、様々な店への訪問を試みましたが、
フランス料理にジャンル分けされる店の中では、
当店が最も良質なる料理を供する一軒であると(個人的に)感じました。
こちらのオテル・ド・ヨシノは、フランス料理界の巨匠、吉野建氏が、テロワ「大地」の料理をコンセプトに、
2005年の8月にオープンさせた、今、和歌山では最も注目を浴びているフランス料理店です。
吉野シェフが和歌山の地に支店をオープンさせた理由は、奥様の実家が和歌山であることもあるのですが、
山海の幸に非常に恵まれており、地の利を活かしたメニューが提案出来ることが最も大きかったそうです。
それを裏付けるが如く、こちらの店では、和歌山ならではの食材を活かした、
素晴らしい料理の数々を堪能することが出来ます。
同価格帯のコース料理を比較した場合、一般的にフランス料理に使用される食材のレベルというものは、
日本料理に比べると、一寸劣るように感じております。
話は逸れますが、日本料理というものは、「五味五色五法」に則り、
出汁と最小限の調味料で、素材の味を最大限に引き出すのが基本であり、
調理法がシンプルであるが故に、素材の質の高さが味に直結するところが大きいと感じております。
一方、フランス料理というものは、素材の質の高さ以上に、ソースの完成度や多種多彩な調理法、
そして素材の組み合わせにより、素材の可能性を引き出し、昇華させるところに妙味を感じております。
回りくどい言い方になってしまいましたが、
日本料理=素材の質、フランス料理(西洋料理)=手間隙が、
非常に重要であり、それらがコストにも反映されていることから、
素材の質に差が生じるのは自然の理であると考えます。
ところが、こちらの店では、素材の質に不満を覚える料理は
一品たりとも供されませんでした。
当日は、15,750円(税込)のシェフのスペシャリテが堪能できる一番高いコースにしたのですが、
湯浅産の巨大な岩牡蠣や加太の鯛、熊野牛、紀州赤鶏、
そして、和歌山産の一級品の鮑や鯖、石鯛等の食材が惜しげもなく登場しました。
和歌山の飲食店の相場を考えれば、当たり前という御意見もありますでしょうが、
他県の同価格帯のコースと比べると、非常に魅力溢れるものであることは疑いの余地はありません。
素材の質だけでなく、調理法や味付けも優美にして繊細であり、
また、素材の組み合わせという点でも妙味を多分に感じられました。
具体的に例を挙げると、鯖のマリネは、上質なキャビアと共に裏漉しした木苺のソースが添えてあり、
鯖特有の生臭みが見事に調和され、何とも絶妙なる味わいに。
トマトのヴルーテ (牛乳の)カプチーノ仕立ては、トマトの酸味を抑えたクリィーミーなる仕上がりで、
(塩気の)アクセントにチョリソが添えられているのは面白いと感じました。
岩牡蠣は大ぶりの見事なサイズのもので、加熱処理は一切施されておらず、
白ワインのジュレとクレソンのピュレ、そして、土台に忍ばせてあるクリームチーズが
芳醇なる岩牡蠣の味わいを尚一層引き立てていました。
ただ、個人的に、最も素晴らしいと感じたのは、やはり、パテ・アン・クルート ステラマリス風。
御存じ、吉野がオーナーシェフを務めるパリのステラ・マリスのスペシャリテで
食材は和歌山産のものを中心に構成されています。
これは、前評判通り、驚愕する程、美味しかったです。
接客に関して、日によってバラつきがあると伺いますが、
私が訪問した時は、皆さん、とても感じ良く接して戴きました。
正直、洋の分野に関しては、西低東高が顕著であり、
東京でフレンチを食べ慣れた方が関西のミシュランの高評価店に期待に胸を膨らませて訪問するのは、
個人的には、あまりお勧めしません。
スペイン料理に関しては、いずれもレベルが高いですが、
フレンチに関しては、京都、大阪、神戸でわざわざ訪問に値する店は、片手でも収まる程です。
こちらは、わざわざ和歌山まで食べに来ても後悔しないレベルの店だと言い切れます。
遠方から来られる場合は、是非とも夜の一番上のコースを御注文されることをお勧めします。
9位
1回
2010/10訪問 2011/02/21
周囲の人間が、私が東京で最も好きなイタリア料理店、アロマフレスカより旨い店が名古屋にあるというので訪問してみた。
最初は正直、半信半疑であったが、シェフがノスタルジーカの小林幸司シェフと同じ、イタリアのヴィッサーニ出身であり、
なおかつ、そこでも才能を高く評価されていたと聞き、これは是非行かねば!と予約を入れることにした・・・が、
いくら電話をかけようが一向に繋がる気配がない。
岐阜の行きつけの割烹の御主人が、名古屋では最も予約が取れない店の一つだと仰っていたが、
まさか、これ程までに繋がらないとは思わなかった。
・・・が、これまで、なかひがしや上賀茂秋山、仙仁温泉などのプラチナチケットをゲットして来た実績があるワタシ。(笑
携帯2台と一般電話の計3台をフル活用したら、何とか繋がり、幸運にも席を確保することが出来た。
ランチであったが、折角の機会なので、事前にお願いをして、
夜の10,500円のディナーコースを戴くことにした・・・(よって、評価は夜の方でしてあります。)
まず一品目は、「カワハギのカルパッチョ」。
一つはからすみ、もう一つは肝とガルムという魚醤が掛かっており、
2種の味が楽しめる演出が心憎いと感じた。
ぶっちゃげ、カルパッチョは、以前より、その調理法自体に疑問を感じていたのですが、
こちらのは純粋にウマいと感じました。
続いて、「白パンと玉葱のフォカッチャ」の二種類のパンが供されました。
両方とも非常に美味しいのですが、玉葱のフォカッチャは、少し油分が強いので、
コースの最後まで料理を美味しく戴けるよう、量は考えながら戴いた方が良さそうです。^^;
少し愚痴になりますが、関西のフランス料理店は、パンやバターに気を遣わない店があまりにも多過ぎます。
トゥールモンド、御影ジュエンヌ、料理は非常に良いのに、パンがあれれれれ?です。(>_<)
二品目は、「北海道産の秋刀魚と梨のサラダ」。
秋刀魚は軽く桜のチップでスモークされており、アクセントに梨の酢が使われていました。
これも実に繊細な味で美味。
供される料理全てに言えることですが
使用する素材や調味料との組み合わせも実に斬新で面白く、手間も十二分に掛けられています。
三品目は、「ヤワラと魚介とクスクス」
ヤワラとは、脱皮直後の海老のこと。兎に角旨味が凄かった!
一般に海老は、海水温が下がるにつれ、遊離アミノ酸のグリシンの含有率が上がると言われており、
特に晩秋から冬にかけて、それが最も顕著であると言われています。
その上、脱皮直後の海老は、強い殻を生み出す為にエネルギーを体内に蓄積している関係で、
味が通常よりも濃厚と言われていますから、その味は推して知るべしでしょう。
その下には魚介類やクスクスが添えられており、その味わいを尚一層引き立てていました。
四品目は、スペシャリテである「フォアグラとシャラン鴨の胸肉、カルフォルニアマンゴー」。
フォアグラは桜のチップで軽くスモークしてあり、
山形産の栃の実の蜂蜜と上質なオリーブオイルがアクセントに。
カリフォルニアマンゴーは、アーウィン種のマンゴーのような芳醇な甘みには乏しいものの、
ほのかな酸味とさわやかな甘さが、濃厚なフォアグラの旨味をしっかりと受け止めていました。
いやぁ、これは噂に違わぬ味ですね。
私的には、例のナリサワのスペシャリテのフォアグラよりもずっと好みでした。
五品目は、「三重県産黒鮑の肝ソースと中国産松茸と祖父江の銀杏」。
本日は、これだけが唯一残念な一品でした。
まず、鮑は一寸塩気が強いと感じました。
また、手間暇かけて作られているのはわかりますし、
この価格帯のフレンチやイタリアンに素材の質に多くを求めるのは酷であるとわかってはいるけれども、、
鮑も松茸も素材自体の旨味に乏しく、う~ん・・・と。
話は脱線しますが、東京は何だかんだで(全てとは言いませんが)最高の食材が集まる都市。
特に、魚関係、更に言えば、銀座の鮨屋の魚の質の高さは異常であると思います。
魚の質に関しては、銀座の高級鮨屋>>>一部の高級日本料理店(嵐山吉兆など)>>>その他ですから、
銀座の店をそれなりにこなされている方は、ハードルを少し下げてやらないと、
どこへ行っても(特に加工度の低い)魚関係は恐らく満足されないと思います。^^;
六品目は、「ずわい蟹のキターラ」。
ずわい蟹は北海道と説明されていた気がしたのですが、オホーツクでしょうか?
身がしっかりとして旨味、甘味が強かったので、紅ずわいではなく本ずわいだと思います。
キターラは生麺で、モチモチと上顎に貼り付くような独特の食感で美味でした。
七品目は、「鹿児島牛とハチノス、ポルチーニ」。
鹿児島牛の火入れは完璧。ソースも旨かった。
ポルチーニは、フレッシュポルチーニで、乾燥品とは食感がまるで違います。
乾燥した方が風味自体は強化されると聞きますが、
乾燥ポルチーニは生クリームやバター、そしてソースと合わせる時には良いのですが、
それ自体の味を楽しみたい時には、個人的には、やはり断然「生」に限ると思います。
八品目は、「栗とヘーゼルナッツのデザート」。
これは、悶絶級の旨さでした。
栗を使用したデザートでは、「すやの山栗汁粉」や「プレシューズのモンブラン」をも超える味でした。
これは、かなりヤバい味です。^^;
女性スタッフの対応も素晴らしかった。
調理法や食材の知識も、かなり深く勉強されているようで感心しました。
東京の店もよく行かれているようで、Florilegeが好きなんだとか。。。(←早速、2月のディナーに予約入れました)
逆に、お勧めの店を聞かれたので、関東はK. u. K. 、関西はカセントと答えたかな。。。
料理は総じて評判通りの内容、接客も上記の通り。
ハコは、料理や接客のレベルが高過ぎるので、少々力不足な感があるも悪くはない。
費用対満足度も高いので、
予約が取れれば、間違いなく再訪したい一軒の筆頭に上がるだうが、まぁ当分は無理だろうな。。。
10位
1回
2010/11訪問 2010/12/03
発酵料理と燻製料理に関しては、日本でも指折りの逸軒だと思います。
発酵料理と燻製料理、そしてステーキがメインの店。
弟が「馬の手」という中国地方でも屈指と言われる焼き肉の店を経営するだけあって、
ステーキの味も推して知るべしでありましょうが、
初めて訪れる方には、是非とも燻製ディナーのコースの方をお勧めします。
こちらの店は兎に角凄い!肉や魚だけでなく野菜や果物まで燻製にしてしまうのだ!
しかも、それらが皆絶品なのである。
私は、燻製ディーナーコース+お任せで野菜料理数品という形で戴きました。
まず、最初に戴いたフォアグラの燻製は、あの独特な臭みは皆無であり、
舌触りは滑らか、かつ味わいは濃厚で、言葉を失う旨さでした。
燻製の盛り合わせは、牛蒡、チーズ、鳥肝、鰯、アサリ、里芋、海老、巨峰など実にバラエティーに富む内容で、
箸をつける前から自ずと期待に胸が高まります。
どれも美味しいが、やはり、王道の鰯が一番旨かった。
箸休めに供された蕪も、燻製料理との相性が抜群!
鯵の岩塩包み焼きも、なかなかの味でした。
岩塩はメキシコ産で、塩角の取れた、まぁるい味わいのもの。
演出という点でも、非常に印象に残る一品でした。
黒豚のベーコンも旨かった。
脂が甘く、サラッとして、久しぶりに上質なベーコンを味わえた気がしました。
もう少し、あくさんの世界を楽しみたいので、お任せで野菜料理を追加してみることにしました。
じゃが芋の上に鰯の糟漬けをのせたものや、
牡蠣の醤を使った長葱と玉葱の炒め物が供されたが、いずれも美味。
食事は発芽玄米御飯が供されましたが、
これまで訪問した自然食レストランでも、かつて記憶にない程、香ばしい味わいのもので驚きました。
食事の〆は、長熟チーズ、お手製の無花果、林檎のドライフルーツ、醍醐の盛り合わせ。
まず、醍醐です。これは、予約の際、強くお願いして出して戴きました。
醍醐とは、古代の乳製品の一つで、かつて醍醐の名を冠にした天皇が存在したり、
また、「醍醐味」の語源とも言われる等(諸説あります)、
いずれにせよ、当時は「最高に高貴で美味なるもの」の代名詞であったものです。
詳しくは↓を御覧下さい。
http://miraikoro.3.pro.tok2.com/study/genbutu/genbutunihonshi18.htm#header
※余談ですが、乳製品の類は、アミノ酸、ジペプチド、プロテアーゼ、メーラードペプタイド、
乳酸発酵とphの相関関係等、掘り下げて化学的に検証してみるのも、なかなか面白かったりします。
醍醐を供する店は、日本でも極僅かなので、
どのような味なのか、本当に興味津々で戴いてみた訳ですが、
羊の乳をドロドロに煮つめたような不思議なお味でした。
でも、今後、二度と口にすることが出来ない可能性が高いものだけに、感激も一入でした。
また、長熟チーズが旨いのは勿論、無花果や林檎のドライフルーツなども
市販品のような余分で不快な甘みがなく、自然な味わいで美味しかったです。
こちらの料理で感心したのは、そのスタイルも然ることながら、調味料への拘りとその使い分けです。
塩やスパイス、醤は、全て非常に厳選したものを使用されており、
また、料理の性格に応じて、それらを絶妙な加減で使い分けておりました。
御主人は、所謂ハードボイルド系の風貌で、^^; 一見、近寄り難いオーラを漂わせていますが、
実際は気難しいという感じの方ではなく、また料理に対する情熱と拘りには並々ならぬものを感じました。
帰り際に、チラッとお話を伺うと、発酵の権威、小泉武夫先生も来店されたとのこと。
万人に受ける店であるとは思いませんが、ハマる人はきっとハマる店だと思います。
私は好きだなぁ・・・この店。
食は生命の源。「自然の恵みを口にする喜び」は、食を語る上で最も本質的な部分であると考えます。
2010年は、「食材の旬」や「地産地消」をテーマに掲げ、食べ歩きを行って来ました。
①市場の原理により、良質な食材は(ほぼ)全て大都市圏に集積される
②料理は料理人の修業先で8割方決まる
③鮮度命ではなく熟成により風味が増す食材や、料理人の力量及び加工度の高さが要求される料理は、やはり大都市圏で戴くに限る
・・・が持論ですが、
日本各地には、「その土地でしか味わうことが出来ない美味なる食材」や
「長い歴史と文化によって培われてきた素晴らしき伝統(郷土)料理」が多々存在するのも、また事実であります。
2011年は、2010年に掲げたテーマに加え、「食文化」にも重きを置きながら、
更なる「美味なるモノ」を探求して行きたいと考えています。
なお、マイ★ベストレストランの順位につきましては、
1位の旅舎右馬允以外は「順不同」と、お考え戴ければ幸いです。
数多訪問した店の中から、以下の10軒をチョイスした主な理由は、味も然ることながら、やはり「個性」です。
修行先で学んだ料理を、そのまま安価に供しているだけのような店や
食材に恵まれた地方にありながら、築地から仕入れた全国各地のブランド食材を使用しているような店は、
いくら費用対満足度が高かろうが、美味しかろうが、私はあまり興味が湧きませんし、評価もしません。
生涯に「美味しく」食事の出来る回数は限られています。
一回一回、大切に使いたいですよね!(^-^)
ということで、2011年もお付き合いの程、よろしくお願い致します。