【寿司の源流】歴史と伝統に培われた吉野の寿司

【寿司の源流】歴史と伝統に培われた吉野の寿司

奈良県のほぼ南半分を占める吉野地域は、四方を険しい山々に囲まれる厳しい自然環境にありながら、古くは「万葉集」にも詠まれ、多くの天皇・貴族が行幸したり、身を潜めたりした歴史と由緒の豊かな地域です。山里の知恵から生まれ、歴史と伝統に培われた吉野の寿司を味わってみませんか?

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記事作成日:2018/12/01

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海の幸・山の幸・川の幸

 奈良県のほぼ南半分を占める吉野地域は、四方を険しい山々に囲まれる厳しい自然環境にありながら、古くは「万葉集」にも詠まれ、多くの天皇・貴族が行幸したり、身を潜めたりした歴史と由緒の豊かな地域です。
 海から遠く離れた吉野では、川をさかのぼって運ばれてくる海産物や塩は大変な貴重品。抗酸化作用や殺菌作用のあるタンニン、ビタミンなどを豊富に含む柿の葉に、塩をした鯖を薄くそぎ切りにして飯と一緒に包んだのがこの地の郷土料理、柿の葉寿司の始まりといわれてます。
 いっぽう吉野には、歌舞伎「義経千本桜鮨屋の段」のモチーフで、創業が1184年頃、吉野の清流で獲れた鮎を寿司にした日本最古の寿司店も存在し、現在も盛業されているなど、寿司の原点もこの吉野です。
 いずれも山深い吉野でならではの保存食。山里の知恵から生まれ、歴史と伝統に培われた吉野の寿司を味わってみませんか?

柿の葉ずし 平宗 吉野本店

 近鉄吉野線・大和上市駅、または吉野神宮駅から東に1㎞ほど歩いたところ、吉野川の畔にある文久元年(1861年)創業の老舗有名店です。
 店内に入ってすぐのところに柿の葉寿司などテイクアウトの販売コーナー、その奥が食堂となっていて、テーブル席と小上がりからなる30席ほど。上の階には大広間もあるようです。

定食の「吉野川」(1,760円)は、焼き鮎寿司、胡麻豆腐、茶粥、葛切りなどのセット。まさしく吉野の名産ばかりです。

焼き鮎寿司は頭から尾鰭まで丸ごと一匹分を押し寿司に仕立てている野趣溢れる一品。さすがに頭は堅いが、身の部分は鮎の味が濃厚で実に美味しい。塗られているツメの風味もいいですね。

茶粥は土鍋にたっぷりはいっていて、茶碗に移していただきます。ほんのりとろみを帯びた米の食感を残す軽い煮立ち具合で、ほうじ茶の風味と相俟ってまったりとした味わい。添えられてるお漬け物や梅干、そして「あられ」が茶粥の味わいを深めます。

ゐざさ 本店

 奈良県橿原市あたりから車で国道169号線(東熊野街道)を1時間半ほど南下したところ。奈良県吉野郡上北山村の村役場近くの北山川沿いにある、柿の葉寿司の名店のひとつ、「ゐざさ」の本店です。
 お店は老舗の雰囲気が漂う広々とした販売スペースを持ち、ちょっとした休憩ができる長椅子が置いてあります。ショーケースには様々なお寿司と、それらを詰め合わせた折箱が並んでいます。

もうひとつの鯖街道に佇む老舗

 定番の柿の葉寿司と、ゐざさオリジナルのゐざさ寿司が詰めあわされた柿笹詰め合わせを購入し、この近くの北山川の渓流で広げてみました。

 柿の葉寿司は柿の葉の薫りと鯖の風味が調和して、独特の旨さとなって口の中に展開します。酢飯の酢加減はしっかりめ。ちょうどいい水分量でしっとり・ふっくらとした仕上がりになっています。
 作りたてではフレッシュな風味だが、家に持って帰って翌日に食べたら、旨みが増していました。

 ゐざさ寿司は酢飯とサーモンを笹で包んだお寿司です。笹は柿の葉と同様、抗菌効果があるんだが、こちらの方が香りが強いですね。
 吉野の奥地なのに、なんで鮭なの?っと疑問がよぎるが、なんでも、かつては吉野杉の経済効果で全国各地の産品が集まってきて、中でも新巻鮭が珍重されてきた名残だとか。

柿の葉ずしヤマト  五條本店 大和鮨 夢宗庵

 JR和歌山線・五条駅から南に5分ほどのところにある、関西各地に柿の葉寿司のショップを出しているお店の本店です。
 店内は、柿の葉寿司をはじめ、お土産品などのショップとともに、レストランも設けられ、そこで食事がいただけます。

うどんは深いコクを感じさせるお出汁は優しい風合い。梅は割としょっぱい昔ながらの梅干しで、その塩気と酸味によりお出汁に複雑な風味が加わります。

柿の葉寿司は5個入りで、うち3個が鯖、2個が鮭になっています。森の中にいるようないい香りを発する柿の葉に包まれた鯖は身が厚く、脂が乗った身をキリット酢で締めています。ほのかに甘い鮓飯とのマリアージュ、これは至福です。鮭やや塩気が強いが旨みも強い。

もちろん持ち帰りの柿の葉寿司も購入しました。この日のお昼に食べる予定が、翌日の夕方になべる事になりました。お寿司がよく馴染んで、むしろ美味しくなったようです。

大塔郷土館

 日本一長距の路線バスとして有名な奈良交通・八木新宮特急バスの走る国道168号線のサミット、天辻峠を十津川側に越えてすぐのところ、平成の大合併によって五條市に併合されて消滅した大塔村の郷土資料館では、奥吉野の郷土料理が味わえるお休み処が営業されています。
 建物は茅葺となっていて、屋内もまさしく古民家です。

奥吉野や熊野では「めはり寿司」

 大和地方の名物、茶粥をメインにした美山定食(1,100円)は、トレイの上に茶粥、めはり寿司、野菜やこんにゃくの煮物、白和え、ジャガイモが並びます。めはり寿司はふっくら柔らかめのむすび具合です。
 茶粥は米粒がいい具合に花咲いています。サラッとした仕上がりで、ほうじ茶の渋みが食欲をそそります。

 「めはり寿司」は、高菜漬けの葉で包んだおにぎりで、奥吉野の旧大塔村や十津川村、熊野地域で山仕事や農作業のお弁当として昔から食されてきました。
 寿司とは言うものの酢飯でない場合がほとんどです。大きなおにぎりを食べる時に目を見張るほど口を開けたこと、目を見張るほど美味しいことから「めはり」といわれています。

 この写真は吉野・天川村発祥で、現在、大阪の松原市に本社・工場を置く柿千のめはり寿司です。ずっしり重たいこのめはり寿司は、文字通り目を見開いていただきます。
 柿千のめはり寿司はちりめん山椒入りで酢飯を使った高級なめはりです。大阪の主要百貨店やスーパーなどで手に入れることができます。

つるべすし 弥助

 近鉄・吉野線の下市口駅より奈良交通バスに乗って下市本町BSで降りてすぐのところ。天川方面に向かうバスの走る国道309号線の、ひと筋東側の旧街道にある鮎鮨の老舗です。
 ベンガラ赤壁のひときわ立派な木造3階建ての建物が威容を誇っているこのお店は、創業800年あまり、歌舞伎「義経千本桜」の三段目、「鮨屋」にでてくる「釣瓶鮨」そのもの。清盛や義経が跳梁跋扈していた時代から続く老舗中の老舗です。

鮎の旨さと歴史の重さをともに味わう

 天川の天然鮎の塩焼きは、やや小さめのものが2尾。北大路魯山人は「鮎は腸(はらわた)を食す物なり」と言ったらしいが、今まで食べてきた鮎の概念を吹き飛ばすぐらいの内臓の旨さ。 天川の清流にある藻を餌としてきた天然鮎は、その腸の苦みの内側にある旨みが一気に広がってきます。

 鮎の唐揚げ野菜あんかけ。これは低温で二度揚げしたのかな?骨までしっかり火が通っていて、頭からがぶりといただける。
 香ばしく揚がった鮎に普茶料理風の餡との相性がいいですね。塩気の強いしっかりした味付けは、このお料理の流れの中で変化球のひと品。

 鮎寿司は「焼鮎ちりめん山椒鮨」です。本来の釣瓶鮨は一種の熟れ鮨だが、今はなかなか熟れ鮨が受け入れられないので、焼き鮎の箱鮨になっています。
 しっかり熟成したお鮨は鮎の風味が鮓飯に移っていて、山椒の爽やかさと合わさって絶妙の旨みを醸しています。

寿司の源流

寿司屋に「吉野」や「弥助」という屋号が多いのも吉野が寿司のルーツであることの現れです。悠久の歴史とともに、美しい山林と清流に囲まれた吉野の地で、寿司の源流を辿ってみてはいかがでしょう。

※本記事は、2018/12/01に作成されています。内容、金額、メニュー等が現在と異なる場合がありますので、訪問の際は必ず事前に電話等でご確認ください。

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