金目鯛そばも和え玉も、ともに旨味に力が足りずちょっと残念 : 麺庵 利休

日曜日12時過ぎ、4人待ち。10分程で入れました。この日は仕入れの手違いで丸鶏が入らず「中華そば」は提供できないとのこと。ラインナップは「金目鯛そば」「冷や牡蠣」「スモークシュリンプ冷製まぜそば」 和え玉は「鶏油」と「白子」

初夏の陽気ではありましたが、湿度も低くてまだまだ冷製の気分では無かったので「金目鯛そば1,100円」と「白子の和え玉400円」を注文。「金目鯛そば」は福富町の丿貫で何度も食べた親しみのあるメニューです。期待大。

提供までは10分弱。見覚えのあるオレンジ色の金目鯛そばと再会です。麺が少し透過気味の小麦色なのと、ネギが小口ではなく5cm長に切られいたり、低温チャーシューが平置きになっていたり等々、所々異なるところに気づきます。

香りは変わらずしっかり生（魚）臭くこれも記憶の通り。様々な日替わりメニューの中でも金目鯛そばはとりわけ臭みが強かった気がします。但し、ここからちょっと残念な方向に期待が外れていきます。スープのコク、旨味ともパンチ不足で、生臭さにの方に意識が終始引っ張られてしまいます。複雑さに欠け薄っぺらいというか平板というか、クリーミーでも無くてどうにも物足りずです。相対的に生臭さが立ってきて気になり、終盤ちょっとしんどかったです。（福富町丿貫のスープは生臭さを不問にしてしまうくらい旨味が強く魅力的だったと記憶しています）

麵もしかりで、あのポクポクと低加水ながら旨味の確かな麺とは異なり、柔くてもう一つ特徴のないものでした。低温チャーシューも、丿貫のものは酒（ブランデー）のようなほのかニュアンスが効いていて、もっと肉厚で独特の柔らかさがあったりしましたが、こちらはごくごくオーソドクスでやや肩すかされ気味。

和え玉も旨味が足りない印象は同様。素材と調味料（バターと塩）の濃厚で背徳的なリッチさを感じられずこちらも最後の方はやや持て余しました。蒲田のNIBOSHIMANIA で食べた抗し難い旨さとはまるで異なり残念です。

前回看板と思われる「中華そば」をいただいて少し物足りなさを感じ、「やはり丿貫らしいメニューを選ばないと」と期待していただけに結構残念でした。原材料高の影響もあるのかなあ。と思ったり。店主の方には見覚えがあり間違いなく福富町で仕切ってられた方でした。接客は変わらず素晴らしく気持ちの良いものなので頑張ってもらいたいなあと期待してやみません。

日曜日14時。待ち無しですがお客さんは途切れずほぼ満卓で回転していました。「元丿貫 責任者のお店」等々の事前情報が行きわたっているようで、皆さん満足気に食べられているのが印象的でした。既にがっちり評価を築いたお店の風格。
というのも、そもそも看板がありません。間口狭小でファサード（店名無し）も畳まれており、知らない人は「ここはお店??」と勘繰るような出で立ちです。京都の「高倉二条」とか「すがり」のような狙った厭らしさは無いですが、一見さんを積極的に取り込もうとはしていないようにも感じました。場所も食べログ評価3.7超え「ねむ瑠」の隣と野心的な立地。※ただ接客はとても良く自然体。

丿貫あるいはNIBOSHIMANIAライクな限定メニューに惹かれますが、初回なのでまずは定番品の「中華そば 醤油1,000円」にしました。※限定の価格 2,000円にちょっとひるんだのもあります。。

木製カウンターはピカピカ。木の質感と手触りがとても気持ち良いです。色目も素敵。合わせられたアクリル製のペッパーミルも温かみとクールさ、有機無機のコントラストがとても良い感じ。センス良いですね。

一杯ずつ丁寧に作られて味をチェック。チャーシューは銅製の玉子焼き用フライパンで仕上げられていました。提供までは10分ほど。ちょっと意外だったのは丼で、龍と大きな双喜紋様、側面朱塗りのベタベタのノス系丼。洗練された内観とアンマッチですし丿貫の面影はまるで無く。。事前学習が甘くて「そうかこんな方向性なのか」と今更知って面食らいました。

ほのかに魚節が芳ばしく香るとても端正なスープ。えぐみは皆無です。思いのほかしっかりした動物系の骨格があり、かつ複雑な旨味の奥行きを感じます。しかも雑味が全くなくて非常にクリア。具材の選別と丁寧な処理がうかがえます。角の無いやわらかな醤油の塩味とコクでついつい飲み続けてしまいそうな魅力的なスープです。薬味のネギも新鮮で相性抜群。

麵は丿貫、NIBOSHIMANIAの低加水のポクポクした麺とは異なりアルデンテ。気持ち太目の中細麺でした。麺自体の風味も良い意味で中庸。リッチなスープと合っていると思います。チャーシューはバラで脂身が大半。ちょっと苦手な部類です。メンマもオーソドクスで量は少な目。海苔は厚手でしっかりした質感。風味も豊かです。

麺量、トッピングとも少ない目でボリューム感に乏しく、また質的にももうちょいピンとくる何かがあってほしいかなあと感じました。スープの上質さを勘案してもやや割高に感じるかもしれません。

中華そばも上質さはふんだんに伝わり、お店の力量が間違いないのは明白ですが、やはりここは丿貫ライクな「限定品」を食ってこそなのかもしれません。X（旧twitter）をチェックしつつ次回は価格にひるまず限定＋和え玉を食べてみたいと思います。また近くうかがいます。