1951年創業の新宿三丁目で一番古い老舗酒場（#どん底） : どん底

どん底@新宿三丁目

東京メトロ 新宿三丁目駅から徒歩3分、JR新宿駅東口の繁華街の一角にある1951年（昭和21年）創業の老舗酒場「どん底」。

寄席の「末廣亭」から近い裏通りで、ツタで覆われた特徴的な外観。新宿三丁目にある酒場で一番古いお店で、三島由紀夫や黒澤明、石原慎太郎といった有名人も常連だったことでも有名。

創業者である矢野智さんは、舞台芸術学院の一期生として演劇を学んでいて、役者を目指しながら生活のために新宿三丁目でバラックの酒場を始めたのがきっかけ。独特な店名はロシア出身の作家・マクシム・ゴーリキーの戯曲「どん底（На дне）」に、創業者が出演したことに由来するそうだ。

舞台芸術学院の学長に店名について相談したところ、「遊び半分で商売をやれるものではないから、俳優の仕事が続くかどうか心配だ。「どん底」の舞台が最後の舞台になるかもしれないから「どん底」にしたらどうだ。最低からの出発だからいい名前だと思うよ」とアドバイスを受けたそうだ。

創業当初から夜な夜な演劇人、芸術家、作家といった文化人らが集まり、店内で政治や文化など様々な議論が盛んに行われてきたそうだ。1960年代に流行っていた歌声喫茶・歌声酒場の発祥の店としても知られている。

外観からは狭そうに見えるが、客席は地下1階から3階まであり全部で100席ほど。木造作りとランプの照明の薄暗い灯りで、「どん底」という響きに合っているようなアンダーグラウンドな雰囲気。

各階ごとに趣きが異なり、噂によると入口でマスターが客の雰囲気を見て、何階に案内するか見極めているそうだ。静かそうな客か騒がしそうな客か判断して振り分けているので、階によって落ち着いていたり、ガヤガヤ賑やかだったりと雰囲気がガラッと変わるらしい。

メニューは和風の居酒屋ではなく、ダイニングバーという感じで、お酒は洋酒やカクテルが中心、食事も洋風のメニューが多い。常連客だった三島由紀夫のエッセイの中では“ロシア風酒場”と表現されている。そういえば、店員もロシアの民族衣装「ルバシカ」を着ている。各階にスタッフが3～4人ずつ配置されていて、店員同士の連携プレーも見事。

●お通し　1人600円
薄切りパンにチーズと生ハムを乗せたカナッペ2枚。お通しは毎回必ずこの2品。

●どん底カクテル　グラス650円
通称「ドンカク」。夢はあっても金はない若者たちに半世紀以上愛されてきた、どん底名物の“酩酊カクテル”。戦後間もないころの質の悪い焼酎を、なんとか工夫して美味しく飲むために開発されたメニューで、焼酎を炭酸で割り、レモンなどの柑橘系と隠し味をプラスした爽やかな味。さっぱりと飲みやすいが、アルコール度数は15度近くあるそうで、飲み過ぎには要注意。3~4人で飲むならボトル（3500円）で注文するとお得。

●サッポロラガー（赤星）　中瓶700円
生ビール（グラス・ジョッキ）はサントリーのプレミアムモルツで、瓶ビールはサッポロラガー（赤星）。赤星というのもある意味ロシア的だ。レトロなラベルのサッポロラガーは昔懐かしい加熱処理ビール。生ビール（非加熱）よりも濃厚で苦味と甘みが強く、洋風のおつまみにぴったりの味わい。

●スペイン風タコぶつ　800円
ニンニクとパセリのきいた洋風な味付けのタコぶつ。タコの身は燻製みたいな凝縮感のある味わいだけど、燻製の香りはせず塩漬けして水分を抜いているのかもしれない。

●ミックスピザ　1300円
メニューに“どん底自慢の一品”と書かれているミックスピザ。あさりや玉ねぎ、ピーマン、マッシュルームがトッピングされ、ゴーダチーズとマリボーチーズが山盛りでトロトロのチーズがたっぷり。生地が薄く熱々で手で持てないので箸で食べる。昔ながらの喫茶店のピザをおつまみ寄りにした味わいでタバスコとも相性抜群。

●カサゴのから揚げ　900円
居酒屋でカサゴのから揚げというと、丸のまま揚げて頭やヒレもバリバリと食べることが多いけど、こちらでは食べやすい切り身のから揚げ。サクサクとしたきめの細かい衣で身はふっくら。

●厚切りチャーシュー　1300円
厚さ3cm近くある厚切りの豚バラ肉のチャーシュー。約250gもあるそうでボリュームたっぷり。フォークとナイフが付いてくるが箸でも切れるぐらいホロホロの柔らかさ。どっか懐かしい甘辛味だけど粒マスタードが添えられていて、洋酒にも合う味わい。

●豚カシラのタイ風炒め　800円
もつ焼きで定番の豚のカシラ（こめかみ肉）とニンニクの芽をタイの調味料のナンプラー（魚醤）で味付けして炒めたおつまみ。ナンプラー特有の香りと山椒の爽やかな辛味がある独特な味付け。

●鴨味噌と九条ネギのパスタ　1000円
味噌ダレに漬け込んだ鴨肉の細切れで味付けしたスパゲッティ。醤油味の和風パスタはよくあるけど、味噌味のパスタは珍しい。豆味噌特有の甘口でコクの味わい。ほんのりと柚子の風味もある。

●アレキサンダー（カクテル）　1200円
ブランデーの芳ばしい香りに、カカオリキュールのまろやかさと生クリームがマッチしたミルキーでソフトな口当たりの甘口のカクテル。デザート代わりの食後向きカクテルとして定番。

●マティーニ（カクテル）　1000円
“カクテルの王様”とも呼ばれるバーの定番カクテル。ジンとドライ・ベルモットの2種類のお酒だけで完結するシンプルな辛口のカクテル。アルコール度数は35度とかなり高いので、グリーンオリーブをかじりながらチビチビと飲むのにぴったり。