現在、
東京国立博物館では特別展
「禅-心をかたちに-」が開催されています。
11/8からは展示替えがあり、後期としてスタートしましたが、
新たな試みが加わっています。
チームラボによる
禅をテーマにした映像作品「円相 無限相」 teamLab, 2016, Digital Work, Endless
が、公開されます。
こちらは、11月下旬にシンガポールで公開する新作の先行公開がされますが、
それに先立ち夜間特別内覧が行われました。
■チームラボといえば、
伊藤若冲が「升目描」で描いた
「鳥獣花木図屏風」を、
最先端デジタル技術によって
21世紀版「鳥獣花木図屏風」とした「Nirvana」や、
話題騒然となった
若冲展のHPを担当したり、
他にも様々な展覧会で映像を放ち話題をさらっている集団です。
最近では、
サントリー美術館の鈴木其一展で、主任学芸員さんと
対談を行っていて、その作品のとらえ方にとても興味を持っていました。
そんなところに、
新作「円相 無限相」について
チームラボ代表・猪子寿之さんが語るという
イベントのお知らせは願ってもない催しでした。
■円相とはなんぞや?猪子さんがご挨拶で解説していただいたお話が、わかりやすかったです。
京都の禅寺に毎週、通っていた時期があるそうです。
「円相」といういのは、もともと空間に杖で描いていたとのこと。
そして、紙ができる前は、
石や亀の甲羅など立体に彫られていたと言います。
お墓の文字なども同様で、彫る深さを深くしたり、払いは浅くしたりと変化させ、
もともとは、直感的に立体としてとらえていた。
紙ができる前は、立体にとらえられていたものなので、
それを
「書」をデジタルの立体空間に描くとうことはなじみがよいということ。
チームラボは設立以来、(デジタル)
空間(=三次元空間=立体)に描く「空書」に取り組んできました。
このデジタル空間に描かれる
「円」それは「無限」をモチーフに、
同じものが2度と描かれることはない円やメビウスの環で表現。
一瞬、一瞬の
刹那的な映像が
エンドレスに続いていく世界・・・・
■「無限大」から連想されたもの宇宙、可能性、神秘、循環、エネルギー、回転、持続、連鎖、再生・・・
人によってそれぞれ違うと言います。
◆無限大の記号の由来[∞]
メビウスの輪2匹の蛇が輪になって相食む
ウロポロスがもとになっているという説。
(これは1匹タイプもある)
完全性や
永続性、
循環性、
始原性、
無限性など多くの象徴的な意味を持つ。
■「無限」を理解できない私たち世界を有限な世界として理解していると思われる人間にとって、
無限というものを厳密に具体的に理解することは難しい・・・・そうです。
チームラボが送り出す デジタル空間の中に見る「無限」■鈴木其一展の対談より先日の鈴木其一展に関する対談で猪子さんが次のようなことを語られていました。
⇒〇
チームラボ猪子が解説、長年の研究でわかった江戸琳派の大発明琳派はフレームという概念を持たない絵画表現を発明した集団。
絵画をはじめとする平面表現は
フレームという制限によって構図が決まる。
決められた
形やサイズによって
構図が決まるというセオリーがあった。
ところが《朝顔図屏風》は、
上下にもいくらでもつなげることができる。
これは
描く対象に制限を持たないことを意味し、
琳派は
扇でも重箱でも、どんなものにも描けてしまう。
(かつて「文字は立体の上に書いていた」ということに通じる?)
つまり
琳派はフレームから解放したという大発見があったというのです。
描かれる内容が決定されればフレームは無限に拡張していく・・・
琳派の大発見
「フレームの解放」によって得られる
「無限」禅宗の
「円相」から導き出される
「無限」この「無限」は相通じるものがあるのでしょうか?
■無限のベースとなったのが・・・猪子さん曰く。振り返ってみれば
「
《朝顔図屏風》によって
インスパイアされたかもしれない」という
『花と人』や『Floating Flower Garden』などのインスタレーション作品。
もしかしたら「円相」もまた、それらの作品に連なる形で生まれ、
この先も
「無限」ループとなってつながっていくのではないでしょうか?
とどまることなく作品が創出されていく「無限」の可能性が見えたような・・・
そして
猪子さんご自身も「フレームレス」枠組みから解放されていて、というより、枠組みをぶち壊し、
そこを自由に泳ぎ回っている。
枠組みをなくしたことで広がった世界を回転したり、転げまわったりしながら、
自由に動いて、そのフィールドを無限に広げている。
そんなふうに感じられたのでした。
この
琳派に見る「無限」と
「円相」の無限。
猪子さんにとってどういう関係なのでしょうか?
お伺いしてみたかったなぁ・・・と今になって思うのでした。
【動画】
Life survives by the power of life / 生命は生命の力(前期作品?)
■No.209
《円相図》白隠(p189 図録解説:p393)より
円相は
禅僧が弟子を指導するために用いたもの。
悟りの象徴として描かれたり、
空中に杖などで円圏を描いて円相が表されてきた。
白隠の円相は
ゆっくりとした筆運びから生じる穏やかさ。
淡い墨の滲みや
塗り斑が織りなす模様をじっと見ていると
抽象画のような美しさ。
賛には茶摘みの様子が書かれています。
「遠州浜松はよいお茶の出所、むすめやりたや、いよ茶をつみに」くるくると終わりのない循環する円が描かれ、
それをじっと見ていると、画面の奥の方へと、
延々と進んでいくのが見えた気がしました。
平面というフレームが壊れ、立体となって広がっていくようです。
最初、茶摘みの賛の意味がいまいちわかりませんでした。
が、円が循環して立体になってきたように見えたら、
今年も茶摘みの季節がやってきて、娘を茶摘みに向かわせた。
というのは、
こうして茶摘みの季節は、毎年、毎年、めぐって当たり前のようにやってくる。
それは、昔から今、そしてこれからもずっと続けられていく。
そんな意味があるのかな・・・と思われました。
が・・・・・
◆
白隠禅画シリーズ『一円相』(正光寺)によれば
本分の家郷を自慢しているのです。
人間が帰るべき真の故郷。
そこに娘もやりたいし、そこに婿さんも欲しい。そして
本分の茶を摘んで欲しい。
究極の安住どころ、本分の家郷を一円相で現しています。
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【展覧会情報】
■展覧会名:特別展『禅―心をかたちに―』
■会期:2016年10月18日(火)~11月27日(日
前期展示=10月18日(火)-11月6日(日)
後期展示=11月8日(火)-11月27日(日)
■会場:東京国立博物館 平成館
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*写真については、チームラボ新作発表@禅展・夜間特別内覧にて
美術館より撮影許可をいただいております。
作品の単独撮影、ズーム撮影については、美術館事務局にて確認了解済み。
ps
当初、東京国立博物館にプロジェクションマッピンングのような
大がかりな投影をするような作品だと勝手に思っており、
防寒対策をどうしようかと考えていたことは内緒・・・(笑)
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【追記】2016.11.20
再訪して、《円相図》白隠 を見ました。
内覧会で見て、猪子さんの円相の空間のとらえ方を聞き、
再度、図録で《円相図》を見て感じたことがこれでした。
↓
くるくると終わりのない循環する円が描かれ、
それをじっと見ていると、画面の奥の方へと、
延々と進んでいくのが見えた気がしました。
上記は、図録を見ながら、じっくり見たらそう見えるのではないか・・・
という想像だったのですが、実際に見ると、
画面の奥への広がりはしませんでした。
墨で描かれた円が、チューブのような立体に見えました。
これ、イサムノグチのエナジーヴォイドとの共通を見たように思いました。
立体に見えるのは、
淡い墨の滲み、塗り斑が織りなす模様・・・・
これが、陰影となって、立体に見せているのでした。
滲み・・ 反転・・・・これが影に見える。
ということは、光があたっていることを意味すると考えられます。
そう思うと、どこからともなく降り注ぐ「光」を感じさせられました。
そして、左上部のにじみが濃く太い部分の中央に
黒点のようなものが目に入りました。
この黒はブラックホールのような求心力のようなものを感じさせれました。
一度、見てから図録で見て考えていても、
実際に見ながら鑑賞することに意味があることを改めて感じました。