ブームの真っ最中。軸を失わず揚げ続ける親子がやっぱり凄い。 : てんぷら 深町

（’０９．３　週末の昼・すごく久々）

凄いことになってますね。

「☆騒ぎ」以降、時々予約にトライしても適わず、暫らく脚が遠のいておりました。
加えて我が減量計画が始まったこともあり、「てんぷら」そのものが「対象外」となってしまった結果ますますこの店との「縁」が途絶えてしまった状態でありました。

３月の初めに「年初からの２ヶ月減量プロジェクト」の節目として「血液検査」を受けた結果、これがまあ近来稀に見る大成果。
減量のきっかけとなった「血糖値」はおろか「コレステロール」「中性脂肪」「尿酸値」「γGTP」「血圧」等々の「生活習慣成人病系」の諸数値がほとんど全て正常域に収斂、我ながらその成果に驚愕した訳であります。

人間やれば出来るんですね。

そんなわけでそろそろ「ご褒美天ぷら」の一度くらいはまあ許されるんじゃあないかと、この「お気に入り」に電話を入れたところ運良く週末ランチの手配が出来たって訳であります。

土曜日の１３時４０分指定でカウンターが取れました。

いやあビックリしました。
入り口に「本日予約で満席」の張り紙。
座ってみれば小さなテーブル席まで満席。予約時間の前に到着したと思われる数人が席が空くのを入り口近くで待っている状況。

お女将さん以外にも配膳の女性陣が３人増え、それでもてんてこ舞の感じ。
どうやら「昼天丼」は週末メニュウから外れた様子で、ほとんどの客がコースを食している。

久しぶりであったが顔を合わせるなり「お好み」の品書きが出てきた。
こういうのが嬉しい。

コースの天ぷらはそれこそ同時大量に揚げられており、なかなかむずかしそうだ。


お好みの品書きには垂涎の品が並んでいた。
この時期に「稚鮎」、さらに「白魚」、そして「ぎんぽ」。
稚鮎の苦味、白魚の香華、ぎんぽの食感・・・たまりません。

春の野菜・・・タラの芽、蕗の薹、筍、空豆。
カラダじゅうを春が駆け抜ける。
ものすごいリセット感。


午後３時をまわって依然満席。
気が付けば値段も少し上がった。

ただこの店の「背骨」のところは変化なく、相変わらずきっちりとしたものを食わせてくれるのが嬉しい。
息子さんも益々上手になってきて不安はない。


ご主人も意外と冷静にこの「ブーム」を観ておられる様で、ちょっと安心した。
いつかもう少し落ち着くのだろうか？


（’０８．８　週末当日予約が出来ちゃって・・）

相変わらずの繁盛振り。良く予約が取れました。
今回の発見は二つ。

１．息子さんが少しずつ上手になってきた。ネタによって鍋に入ってからの面倒を見ておられたが、以前より格段に「実」が伴ってきたように感じた。頑張って欲しい。

２．蜆の味噌汁が抜群に美味い。以前から感じていたがここの蜆味噌汁は他に類を見ない。一度伺ったが蜆の味以外に出汁も加えているそうだ。チョッとややこしいが、実に「しみじみ」と美味い「しじみみそしる」だ。

15年ほど前から「最期の飯」は「玉子かけご飯」と「蜆の味噌汁」に決めている。
ここのはそれに値する一椀だ。
「天ぷらの興奮」をサラリと流しながら豊かな後味を、しかもすっきりと残してくれる類を見ない「あがり」だと思うのだ。


（’０８．６　久々に）
当日夜の予約が珍しく取れて、実に久々の訪問。
「タイヤ星」騒ぎで全く予約不如意になって以来足が遠のいていた。

当方「あれ以来予約も出来なくて・・大変でしょう？」
主人「半年たって少し落ち着きました。１１月には今年版が出るそうで・・まあ瞬間的なもんです。」
当方「週末はそれでも全くダメですよね」
主人「土曜は特に大変でして・・」

といった感じでまだまだ「ブーム」は続いている様子。

経木の品書きを見るに、やはりチョッと変わったか。
若干のプライスアップ（これは星と関係ないかも知れない）がありコースが増えていた。

が、てんぷらそのものに向かうと「星」からの「連想」は全くの杞憂であった。

当方、ここでは「お好み」と決めており、品書きの中から見繕い魚・野菜を注文。
白ワインがおともだ。

巻き、アオリ烏賊、キス、めごち、鱧、稚鮎。
万願寺、アスパラ白・青、レンコン、とうもろこし、水茄子、空豆。

連れは穴子天丼、当方天バラ。

ここで食べるとやはり自分が「山の上派」であることを実感する。
ここの「軽さ」と「簡潔さ」が素晴らしく体に合うのだ。

しかもこの店は「庶民感覚」を全く失っていない。
「カッコ付けてない」のだ。
実に「潔さ」に溢れているのだ。
それは「星」を取ろうが「月」に飛ぼうが一向に変わらないのだ。

今回またしても「バアちゃんの台所揚げたててんぷら」を思い出させてくれた。

なんかうれしい。
安心しちゃったって感じだ。


（’０７．１０　今回）
台風一過の日曜日。
この季節「すかーっ」と晴れると、実に気持ちよく身体全体が天ぷらを欲している様な、えもいわれぬ胃袋的充実感に満ち溢れますね。

で、昼に出かければ、ナニやら日本橋ではパレードが・・・
ますます、浮き浮きしたりして・・

いつものように「お好み」で。
海老、鯊、めごち、烏賊、穴子。
野菜は加賀レンコン、慈姑、舞茸、銀杏、むかご、松茸など。
いつもの「塩」を抑えて、あえて、「天つゆ」を中心にやってみました。
これが「新鮮」でいけました。

その昔、天つゆに飽きて「塩」一辺倒になったように、そろそろ「塩」にも飽きてきたって、これ贅沢かも・・・
まあ「塩」で耐えうる「ネタ」が増えてきたってのがきっかけなんでしょうが・・

でも「天つゆ」で食べる天ぷらはやっぱり美味しいんですよ、あらためて。

〆も悪乗りして「タレの天バラ」なんかお願いしたりして・・・
これも中々でありました。


（’０７．７）
その昔、昭和はたぶん３０年代。江戸っ子であった祖母が、我が母親と共に台所（だいどこ）で、夕餉の支度にてんぷらなんぞを作っていたことを妙に鮮明に記憶している。
たぶん大変なご馳走であったためか、「だいどこ」が普段の様子と違うので、恐らく兄と一緒に遠巻きに様子を見ていたんだろう。
祖母は揚げ物の最中にもかかわらず、時々「ほら、手ぇ広げてごらん」等と言って我々の手のひらにアチッチィの揚げ立てを置いてくれた。
何もつけずにふうふう言いながら食べたその旨さを今でも忘れない。
細く切った人参をまとめて揚げたものや、サツマイモの斜め輪切り等の質素なてんぷらだった。
子供らしくなく人参のてんぷらが大好物で、「あんまり人参食べ過ぎると助平になるよ」等と祖母に言われたのを覚えている。
そして予言どおり助平になった。

閑話休題
久々にたずねた「深町」は相変わらずの盛況であった。
ミッドタウンが混み過ぎて可哀相だ等と、後輩の心配をしてるとこなんかがご主人らしい。

「お好み」で揚げてもらう。
まず小瓶のビール。
いつもの「ジャコ」でなく、通しに「穴子佃煮」が登場。これがむちゃくちゃ旨かった。
以前「自家製唐墨」をいただいたことがあったが、この繁盛振りでなお研究熱心。
蝦、稚鮎、キス、に野菜は新レンコン、水茄子、万願寺で開幕。
「ばあちゃんのてんぷら」のごとき旨さ。
ワインに変えて鮑、鱧、アオリ烏賊。トウモロコシに、名残の空豆と続けた。
ちょっと早いが、昼なので天バラで〆た。

今回気がついたけれど、「お好み」がここでのオーダーのコツかも知れない。
何故なら全部ご主人が揚げてくれる。モノによるがネタも定食とは違う。
しかも一番量の多いコースと値段もそんなに変わらない。
ここではやっぱりご主人に揚げてもらうのが、絶対条件。
ご子息、頑張っているがまだまだ親父の足元にも及んでいない。やっぱりてんぷらは修行に時間がかかるのかも知れない。見た目が同じモノは出来るが、熱の具合で全く別物に出来上がってしまう。
やっぱり「生意気」で「気難しい」料理なんだろうか。
もとより「金を払っても食いたい」メニュウの典型だろう。

今日は「助平になるリスクを犯して食べ続けたばあちゃんの人参てんぷら」を思い出すほど、ほんとに美味しかった。

深町さんありがとう。


(’０６．１２ 前回訪問時）
開業当初から徐々に安定感を増し、今や「山の上」派の名店。魚介類、野菜とも季節感あふれるオーソドックスな素材で、しかも産地・銘柄にこだわらず実質本位の仕入れ。軽い衣で揚げ具合も香り高く抜群の頃合。食後感、極めて良好。いつも「お好み」で頂いているが定食や掻き揚げ天丼も上等。全体に深町さんの朴訥なお人柄がそのままの店で、奥様のさり気ないサービスもとても好感。