町に一軒残って欲しいと思わせる町蕎麦屋さん : Yoshino An

過日の昼下り、東京女子医大病院での定期検査の帰り何故か蕎麦気分だったので、店頭のマルシン出前機装着バイクの懐かしさに誘われるように、何の前情報もなく一見フリでこちらに入店。そういえば、ご近所の現在超高層マンションになっている処は株式会社フジテレビジョンがあったから、往時は有名人楽屋に出前でもしていたのかなぁなどとふと思う。東京近郊であれば、一昔前まで町にひとつはあった典型的地元密着系「町蕎麦屋さん」の構え。

店内はテーブル席のみ。すでに近隣にお勤めと思しきホワイトカラーの方々で８割方埋まっている。客の一人はホール担当の中年店員さんとゴルフ談義、ある客は店員さんと名前同志で呼び合ったりしていて、基本常連さんメインの客層。とはいえ何故だかアウエー感はあまりなく、案内された席にすっと着座。

かつ丼と蕎麦のセットを所望。蕎麦はもりにする。

ややあって供されたセット。あ、フルサイズのかつ丼とフルサイズのもりそばのセット。味噌汁と蕎麦湯も一緒に供されたので、テーブル上が満員状態になってしまう。注文の際、なぜか半かつ丼と蕎麦のセットなのだろうと思い込んでいたので、量的に少々誤算。

かつ丼は蕎麦屋さんのあれ。個人的にはとんかつ屋さんのサクサク系かつ丼よりもこちらのようないわゆる煮かつが乗ったやつが好みなので嬉しい。玉ねぎの歯ごたえも適宜。思いのほか薄味だったけれどまあこんなものだろう。もり蕎麦もごくごく凡庸ながら決して不味くはなくまあこんなものだろう。こんなものだろうというのは、町蕎麦屋さん水準で安心確実な味わいということ。

総じて、いい意味で凡庸な日常に馴染んだ味わいで落着く雰囲気。飽きの来ない風合い。

以上1,200円は質量鑑みて相応。想定外のボリュームだったので白飯を少々残してしまったけれど、これは当方の見込み違いが原因。品書きを見返してみたら、半牛丼と蕎麦のセット等もラインナップしていて、親子丼とかつ丼のセットはフルサイズだったようだ。

当店のような大衆的で万人向けで良心的価格で頑張っている町蕎麦屋さんの個人店、昨今では絶滅危惧種になりかけているような気がする。こういうお店、町に一軒は残って欲しいと切に思う。