LESS そして RIVA へ : RIVA chocolatier

恵比寿のパティスリー “LESS” を開業された坂倉加奈子＆Gabriele Riva(ガブリエレ・リバ)両氏が、次に手掛けたのが “RIVA chocolatier” さん。お店の場所は LESS から目と鼻の先、目黒三田通りに面しているので LESS よりも分かり易い。
Riva氏本人を表す店名だけに、氏がやりたい事を実現する場として開かれたのだろう。

すっきりとしたガラス張りの三階建ビルの1階、ガラスの扉を開けて店内へ。店内も余計なものが一切無く、洗練された印象を受ける。正面のショーケース内に生菓子が11種類、ショーケースの上と右手のテーブル上に焼き菓子類が多数並べられている。また左手の棚にはクッキーやジャムなども並んでいる。商品の一部は 箱または包装に “LESS” と書かれている。それらはLESS の商品の一部であり、LESS を代表するパネットーネも1/4カット品ならこちらで購入可能だ。

帰って食べようとケーキを2個買うイメージで寄ったのだが、気が付くと以下を購入していた。いつものパターンである。
□VANILLA FLAN (750円)
□TORTA PARADISE (650円)
[以降、同行者選]
□AGRUMI PANETTONE 1/4 (1000円)
□SAKURA & CHERRY PANETTONE 1/4 (1150円)
□CHESTNUT POUND CAKE (450円)
□POLENTA CAKE (420円)

■VANILLA FLAN (バニラフラン)
フランスで最もポピュラーなお菓子。カスタードクリームがタルト＆クッキー生地の上に流し込まれて焼き上げられている。チーズケーキのイメージでフォークを入れると全く異なるものだった。プリンに近い味と食感。バニラと卵の味わいが際立っておりとても美味しい。ぷるんとした軽い食感もいい。カスタードクリームが生地に浸透しているので生地がとてもしっとりしており、生地だけを食べても旨味たっぷりで実に美味しい。

■TORTA PARADISE (パラダイスケーキ)
バターの層と上下のラズベリー層、計3層の色鮮やかな層を中心に配するスポンジケーキ。イギリスのヴィクトリアケーキに似ているが、イタリア人のRiva氏が作るオリジナルケーキだ。酸味と甘みが調和したラズベリーにバターの滑らかさが加わり、しっとりしたバター感のあるスポンジケーキと混ざり合って全体を包み込む。特に紅茶に合いそうなとても美味しい一品。次の機会にまた買いたい。常温保存なので持ち運びが容易なのも嬉しい。TORTAはイタリア語でケーキ。

■AGRUMI PANETTONE 1/4
AGRUMIはレモンやオレンジなどの柑橘系の果実を意味するイタリア語。パネットーネはイタリアの伝統的なドライフルーツ入り発酵焼き菓子で、Riva氏のスペシャリテである。材料内訳を確認すると、オレンジ,レモン,柚子の砂糖煮が用いられている。生地は弾力と粘りがあり、むっちりとした感じのプレーンタイプ。口の中で生地がゆっくりと溶けていき、やがて柑橘系の甘みをたっぷり含む液状へと変わる。幸せな余韻を楽しんでいると、その奥から甘さが凝縮したごく小さな外果皮が一片顔を覗かせた。

■SAKURA & CHERRY PANETTONE 1/4
春限定のフレーバーパネットーネ。ドライチェリーと桜葉塩漬け(伊豆大島産)、桜蜂蜜が用いられている。桜葉塩漬けは塩抜きして刻まれたものが生地に練り込まれている。たっぷり入っているドライチェリーのキュッとした酸味とギュッと濃縮した甘みが美味しい。生地の感じは AGRUMI PANETTONE と同様。

■CHESTNUT POUND CAKE (栗粉とマロングラッセのパウンドケーキ)
栗の風味と洋酒感がかなり強い。しっかりとした甘さがあるのでブラックのアイスコーヒーが合う。ストレートのアイスティーも良さそう。

■POLENTA CAKE (とうもろこし粉パウンドケーキ)
とうもろこし粉の細かな粒を感じながら、その風味としっとりとしたバター感を味わえる。こちらはホットのコーヒーか紅茶が合う。


【お店のコンセプトとお菓子が表現しているもの】
RIVA chocolatier さんのコンセプトは、 LESS のそれと同じ “Less is More”。近代建築の三大巨匠と言われるドイツ出身の建築家ミース・ファン・デル・ローエ(故人)の言葉で、LESS という店名はここから名付けられている。「少ないほど、豊かである」という意味で、 “極限まで無駄を排しシンプルなデザインを追求することで、自由度の高い洗練された空間が生み出される” というのがミースの哲学。両氏のお菓子に対する考えに共通するとのこと。
華美な装飾を排して必要最小限の素材を用いるということは、一つひとつの素材の質がそのまま前面に表れるということでもある。よって RIVA chocolatier さんのお菓子は、こだわり抜いた素材、繊細な調理方法、シンプルながら考え尽くされた構成や外観といったものが総合的な美として表現されていると考えられる。