一味違うおもてなしと伝統的で素材感が際立つ京料理＠出町柳／京都 : 御料理 はやし

【再訪】 2018年5月

今回はお夜にのコースを事前に予約してお伺いしました。
入口の引戸を開けて入ると中から女将さんのお出迎えです。
名前を告げると女将さんからご挨拶があり、2階の個室へ案内されました。

2階の個室は掘り炬燵式になっていて座っていても楽で助かりました。
女将さんの挨拶のあと「紫蘇茶」から始まりました。
「紫蘇茶」は、お茶席などで最初に供さる「香煎茶」とも呼ばれ、今から始まりますと言う意味があるそうです。

前回お伺いした時に林さんの料理は京都の伝統的な料理と仰っていましたが、盛り付けを見ても色々と研究されて新しいものを取り入れる努力をされているのが分かります。
そして、全ての料理は絵画を思わせるプレゼンテーションで、使用されている器や盛り付けは美しさと共に全てに細やかな心遣いを感じました。
やはり、茶道、花道や陶芸を若い頃から親しまれているからでしょうか。
特に「八寸」は涼しげな竹細工の籠に盛り付けられてとても美しいですし、食べても美味しくとても印象的でした。

薄味と思われている方が多い京都の中でも、こちらは塩味の強い方との印象でした。
ただ、季節や食材とのバランスもありますし、個人的な好みや個人差もあるとは思います。

お会計を済ませると女将が1階の玄関口までお見送りをしてくれました。
料理の説明については、食べる前の先入観を植え付けたくないとの理由で多くはありませんでしたが、特に気になるものだけは確認できたので気になりませんでした。
また、お店の外まで出てお客が見えなくなるまでお見送りするお店も多くなりましたが、それを期待する方には向かないと思います。

料理だけでなく、器や盛り付けも含めて心遣いが素晴らしいので、友人にも勧められたますし、またお伺いしたいですね。

＜この日のコース料理＞
・「食前酒」・・・柚子酒

・「先付」・・・えんどう豆の豆腐

・「八寸」・・・八幡巻、そら豆、里芋煮、
　　　　　　　 稚鮎、独活の酢漬け、筍煮、
　　　　　　　 鯛の子、干烏賊に雲丹

・「椀物」・・・穴子葛打ち、生麩、刻み禰宜
　　　　　　　 刻み生姜

・「造り」・・・細魚、真鯛、甘鯛、鯛の皮、
　　　　　　　 烏賊、湯葉湯葉の刺身
　　　　　　　 ご主人創作の松前酢か醤油で。

・「煮物」・・・賀茂茄子、胡麻餡かけ

・「凌ぎ」・・・穴子の粽寿司、蓮根

・「蒸物」・・・グジ、鱗揚げ、谷中生姜

・「焼物」・・・鰆の幽庵焼き

・「揚物」・・・鱚の雲丹衣、稚鮎、湯葉、鮎
　　　　　　　 こしあぶらの天ぷら

・「煮物」・・・塚原の筍

・「酢物」・・・鯖の酢物、胡瓜と生姜千切

・「飯物」・・・霰茶漬け、アサツキ、青海苔　　　　　　　　
　　　　　　　 蕗醤油、梅肉乗せ

・「香物」・・・胡瓜、沢庵、鰹昆布

・「口直し」・・・柚子のシャーベット

・「水菓子」・・・湯葉の葛餅黄粉掛け、薄茶

＜この日の日本酒＞
・「林泉」純米吟醸

＊＊＊　画像を30枚追加しました　＊＊＊

2015年12月

出町柳の河原町今出川の交差点のほど近く、河原町通りから1本鴨川寄りの通りにある会席料理の
お店です。
今回はお昼に10,000円のコースを事前に予約してお伺いしました。

趣のある木造3階建ての入口を引戸を開けて入ると小さな三和土と廊下、右手の下地窓から
カウンター内にいる従業員が見えます。

従業員が廊下に出てカウンター席に案内されました。
先客は1組のみで用意されていたのはあと2席でした。

ご主人の挨拶もなく「紫蘇茶」から始まりました。
こちらの「紫蘇茶」は「香煎茶」とも呼ばれお茶席などで最初に供され今から始まりますと言う
意味があるそうです。

「食前酒」・・・柚子酒

・「先付」・・・鯖昆布、生姜刻み
朱の紙に包まれていて開けると
　　　　　　　細い短冊状の昆布が見えます。
昆布だけと思っていたら〆鯖か薄く
挟まれていました。
細く刻まれた生姜も挟んであり、
なんとも言えない美味しい一品。

・「煮物」・・・淀大根、南瓜、薄揚げ、京人参、柚子

・「椀物」・・・鱈と雲子の真薯、姫大根
ほんとうにホワホワした木目細かい
真薯で、上品な素材を生かした
　　　　　　　出汁でした。

・「向付」・・・お造り／烏賊、平目、縁側、
こしび（めじ鮪）、湯葉のお刺身
本当に少しずつですが、この日の
「こしび」の美味しさには驚きです

・「蒸物」・・・甘鯛の蕪蒸し葛餡掛け
なんとも白雪のような摩り下ろした
蕪とほんのりと味付けされた葛餡が
美しく、甘鯛の美味しさを引出して
いました。

・「強肴」・・・酢の物／〆鯖の蕪挟み、酢蓮根
スズシロ、醪味噌
大きなお皿にアートの様に盛られた
一品でした。

・「焼物」・・・鰆の幽庵焼き

・「煮物」・・・汲み上げ湯葉入り東寺ゆば風の餡かけ
本来の東寺ゆばは、百合根、銀杏、
椎茸が入っていますが、舌触りの
滑らかさを大切にする為に中には
汲み上げ湯葉だけ入れた逸品です。

・「揚物」・・・桜海老、鯛、湯葉のかき揚げ天ぷら

・「止め肴」・・・酢の物／烏賊、メジマグロ、
サヨリ、九条葱
素材を小さく切って重ねられた
ヌタを乗せた丁寧な仕事の一品

・「飯物」・・・出汁茶粥

・「香物」・・・大根、沢庵、昆布

・「水菓子」・・・柚子シャーベット、葛餅黄粉掛け、
抹茶
関東の小麦粉でんぷんを発酵させた
「久寿餅」と全く違い、本葛を使った
モチッとした食感の美味しい葛餅

ご主人の林さんは、群馬出身で西陣の岡本を皮切りに各店で修行されて32歳で独立され現在の
場所で開業して約30年近くになるそうです。

若い頃から既に会席料理に役立つと思った華道、茶道、書道などをされていたという先見の明と
努力の方だと感心しました。
40年ほど前は若い男性が華道、茶道を習っていると色々と揶揄されたようです。
そして、借家ではなく、一代で現在の土地建物を築き上げたというから驚きです。
お話を聞いていると料理のセンスだけではなく、商才もなかなかのものだと感服しました。

しかし、料理の説明はしてくれません。
自分で考えながら食べるのも料理の楽しみ方の一つとのお考えのようです。
ただし、尋ねるととても丁寧に教えてくれます。

ご主人も言っていましたが、京料理も伝統をベースにした新しさを加えた料理を出すお店が出て来て
いるそうですが、ここの料理は昔ながらの伝統的な京料理とのことでした。
しかし、伝統的と言いながらご主人の創意工夫が随所に散りばめられていると思いました。
そして、派手さや現代的な素材はありませんでしたが、素材の味がよく分かるとても美味しい味付け
と出汁でした。
新進気鋭の新しさも取り入れた京料理のお店よりも私はこちらの料理がとても気に入りました。
是非とも次回もお伺いしたいと思いますし、夜の料理もゆっくりと頂きたいと思います。

＊カウンター席で撮影禁止だったので画像はありません。