非日常的な空間と時間が約束される上質フランス料理店 : 브레스톤코토 유카와탄

都内のフランス料理店だと、いくらお店が非日常的なくらいに上質であったとしても、
訪問前後で余程贅沢なことをしなければどこかで日常が入り込んでしまう。
急に現実に引き戻される時間がどこかでやってくるのだ。
それを回避しようとすると、恐らくリゾート地に行かなければならない。
しかしながら、リゾート地はリゾート地でそんな上質なレストランなんてそうそうあるわけもなく、
行ったら行ったで急に東京のフレンチが恋しくなったりして、
結局、無いものねだりのジレンマに陥ってしまう。

しかしながら、だ。
僕はそんなことを両立できるレストランなんてそうそうあるわけがないと思っていたのだけれども、
実際には存在したわけですよ。軽井沢に。

僕の中では、軽井沢のフレンチって一昔前の野暮ったいイメージがあったんだけれども、
ここ「ユカワタン」を訪れて、僕のそんな古臭い先入観なんて軽く打ち砕かれた。
そのくらいに、この軽井沢の「ユカワタン」は素晴らしかった。
星野リゾート、恐るべし。

例えば。
お店に至るまでのアプローチの雪景色。
店内のゴージャスで贅沢な造り。
BGMなど要らない、ゆったりと流れてゆく時間。
適度な間合いを取り、お客との距離感を大切にする接客。
そしてそして、いろいろな趣向で目と舌を楽しませてくれる数々の料理。
そういうあらゆることが完璧で、その結果、非日常的な空間と時間が約束される。

料理のコースは2種類。
内容的にはそれほど差はないように見受けられ、であれば折角なので高い方のコースをお願いした。
コースの構成は、アミューズ×３、前菜、スープ、魚料理、肉料理、チーズ、デザート×２、小菓子、カフェ。
フルコースもフルコース。更にアミューズやデザートが多重に構成され、更にそれぞれが十分なポーション。
後からざっと数えてみると、10皿＋小菓子＋カフェ、という豪華ラインナップ。
小皿10皿ではなく、十分な量の10皿。しかも、料理のハズレなし（聊か微妙なものもあったが）。
これで料理約2万円は十分リーズナブル。

前半の、アミューズ×３、前菜、スープまでは、ほぼ和食と言っていい内容。
盛り付けはフレンチだが、味はモダン和食の領域。
正直、僕はフレンチを食べに来たのであって、こういう和食が続くなら嫌だなぁと思ったのだけれども、
後半の魚料理からは完全にフレンチ。王道。

料理の方向性は、後半はモダンフレンチ。フレンチの新たな技巧に、更に和のテイストを加える。
特に、長野の食材を数多く取り込んでいるのが特徴。
例えば、信州サーモンや、佐久名物の鯉。こうした食材は、東京のフレンチではまずお目にかかれない。

また、６種類のアミューズ盛り合わせや、大根の桂剥きを使用した料理など、
とにかく盛り付けが非常に綺麗。ここまでとことんまでやっているフランス料理店は滅多にない。
しかも、単に飾りに終わらず、どの組み合わせにも必然性があって、納得。

ただ、今回僕が選んだ料理だけかもしれないが、間違いじゃないかと思えるくらいに塩分がきつく、
ちょっと閉口した。具体的には、鯉のコンソメスープ、そして鹿肉のロースト。
こういう塩がきつい皿が２つあると、頂いていてコース全体が非常に重たく感じる。

ネガティブな要素は、前半のモダン和食が続く点と、塩分が濃い料理が２つあった点。
その分、評価は下げたが、トータル的に考えると非常に満足度が高い。