絶滅危惧種の洋食食べるにも : 登喜和

町中華の名店。
カツ丼が有名ですが食べてほしいのは
ポークライス・オムレツ・親子丼。

まあ、何食ってもうまいんですけどね。ではどうぞ。

ある日ふと当店を思い出した。西新宿に職場ある頃は気にいってて昼の忙しい時間はずしてちょこちょこ伺っていた。

平日の昼間しかやらないからあそこでメシを食うならそのために近辺で用事をつくる必要がある。

とはいえそんな都合よく用事もできないため、平日に休暇とって新宿へ遊びに行くついでによることにする。

開店時間を狙って入る。
昔洋食の部分かもしれないオムレツと、ポークライス。
ポークライスはご飯減らしてもらう。
写真のものが来て非常に満足。
オムレツは塩コショウ効いているのでそのまま食べてほしい。

オムレツとご飯で充分定食として機能する。
非常にオカズ力の高い代物。【メシをグイグイたべられるオカズ】

漫画家さんがたくさん住んでらっしゃるわけじゃあ、ありません。ではどうぞ。

西新宿が仕事の大きな拠点になってから九ヶ月がすぎた。通るたびに気になっているお店がある。
青梅街道と十二社通りがぶつかる交差点。どこにでもあるようなラーメンから丼物まである中華屋。
そしてここが昼めしどき、毎度毎度十名近くの行列ができている。ショーケースにサンプル。
のぞくとラーメン、チャーハン、『うんうん』カツ丼、生姜焼きライス、オムライス『おぉ！』
チキンライス、、、この単語にしびれた。今日び、あんな地味なもんサンプルケースで見せるかと。
いこういこうと思っちゃあいたが、貴重な昼めし時間を行列に費やすのはイヤなのだ。

ある日、めずらしく昼めし時間が遅くなった。午後二時半。十二社通り。当店をのぞく。
七名連れが入ろうとして断念していた。一人なら空席あり。しめしめとドアを開ける。

水を一口含んで心を落ち着かせ、お品書きをみる。チキンライスも惹かれるが。
こちとら朝に野菜ジュース飲んでから水以外口にしていないのだ。
“今のオレは肉食獣だゼ、うぉぉぉぉん！”しょーもないことを考えながら品書きプレートをみる。
やはりこういう時はカツ丼だろう。そうだそうに決まっている。
サンプルケースにはグリンピースのっていたし。注文する。

まつあいだ、棚に乗せられたテレビを見あげる。ぼんやり見ながら手術のシミュレーションよろしく。
“カツ丼をどう食べ進めるか空想”にふける。まず配膳されたらカツを縦長になるよう、丼を回転させて。
手前側のカツ一切れをどかし、メシを一口ほじる。食べる。カツをとって食べる。
あとはカツの切れ目のトコ目安にして垂直掘削して行く。いわゆるショージ式でいこう。
途中でグリーンピースが転げ落ちるだろう。そしたら鉱山で掘り出したエメラルドのように。
うやうやしく箸でつまみ上げて、奥歯ですりつぶして食ってやろう。
途中で脂と甘さに飽きるから味噌汁と漬物のタイミングはからなきゃ。うっしっし。
ここまで考えていたら、『はい、おまちどうさま。』とカツ丼おかれる。

!!!!!!!!でっ、出鼻をくじかれたッッ!!!!!!
なんとグリーンピースが乗っておらず、上の彩りが刻み海苔なのだ。
そして、味噌汁ではなく、醤油味の中華スープ。よくチャーハンについてくる。アレがきた。
【写真ご参照ください】
両方とも好きなものだが、想像していたものとは違うのだ。わなわな。
だがしかし、こんな事でオレは屈するほど臆病ではない。がっしと左手で包むようにして丼を保持。
シミュレーション通りの垂直掘削方式を実施する。

味については言及しない。ってかカツ丼でまずいなんてそうそう無い。
この丼のかっこよさとほどよい持ち重り。すさまじい。
行列ができるのも当然だ。食べ終わって本当にそんな感想が出る。

次回はチキンライスにしよう。そう考えていると隣の方が
『ポークライス！』というのが聞こえる。興味があったので少し待っていたらきた。
生姜焼きとご飯。かと思ったらさにあらず。
醤油の色強い、豚細切れ入りの焼き飯。ちなみにここはチャーハンも独立したメニューとしてある。
チャーハンとポークライス。うむむむ。おそろしく絵面として地味ではあるが、気になる。

カツ丼は700円。チャリンと払って店を出て、振り返る。
ここはまた来よう。寒風の中歩きだす、ビル風はこの日も強かった。

ある日、仕事していて午後二時くらいになってしまった。
と、いうか狙ってこの時間にした。場所は西新宿十二社通り。ぐふふ、しめしめ。
からりと引き戸を開ける。相席のおじさんはオムライス。デカさにひるむ。
品書きを見ながらふと小銭入れを触るとなんだかぽってりしてる。
中をみたら680円くらいあった。カツ丼にしようと思ったがこいつは700円。
そうすると小銭が増えてしまう。悩んでいたら（親子丼）の文字。
カツ丼で綴じていたやり方ならこいつも良さそうだ。しかも650円。
待つこと数分。いやもうなんも言うことはない。うめえ。写真をご覧あれ。
思えば俺、もともと丼物ではカツ丼より親子丼が好きだったのだ。
だが某ショウジセンセが『どうも親子丼好きな青年というものは、出世しそうにありませんネ』
などというもんだからおおっぴらに食うことができなくなった。
おまけにこの頃から卵の綴じ方がやたらゆるい親子丼ばかりまかり通り。
れんげやシャジなんかで、ジルジルすするのばかり。すっかり遠ざかっていたのだ。

丼の足に小指を引っ掛けてがしりと持ち、わっしわっしとかきこむ。
鶏の繊維がキシキシと。硬めの卵がびしりと。
あぁ、ごめんよごめんよそっけなくして。昔から君のこと、ぼかあ好きだったのに。

実は親子丼、カツ丼よりも揚げがないし、脂身もないのでカロリーが低め。
ちょうど三十半ば過ぎたものの丼としていいとこにいる。
食うべくして食ったのかもしれない。って小銭使いたかっただけなのに言い過ぎか？