美味しいの、その先へ。
私は理学療法士です。
普段の仕事では、患者さんの姿勢や動きを観察し、「なぜそうなるのか」「どうすればもっと良くなるのか」を考え続けています。そんな仕事をしているせいか、食事に対しても同じような視点で向き合っています。料理を口に運ぶ前から観察が始まり、香り、盛り付け、焼き加減、器、店主の動き、お客さんの表情まで気になってしまいます。
「美味しい。」
もちろん、それだけで十分幸せです。でも私は、その一歩先を知りたくなります。なぜ美味しいのか。何がそう感じさせるのか。温度なのか、香りなのか、食感なのか。それとも、一緒に食べる人との会話や、その日の気分なのか。料理だけでは説明できない「何か」がある気がして、それを探すことが私の食べ歩きです。
私のレビューには、肉やラーメン、鉄板がよく話しかけてきます。「もう少し待て」「今が食べ頃だ」「野菜と合わせてみろ」「レンゲの上で組み立ててみろ」。もちろん本当に聞こえるわけではありません。でも、食べ進めるうちに、店主の工夫や料理の意図が、そんな言葉になって伝わってくる瞬間があります。その勝手な対話を楽しみながら食べるのが、私のスタイルです。
最近学んだことがあります。それは、「熱々が一番美味しいとは限らない」ということ。少し温度が落ち着くことで旨味がはっきりする料理もあります。鉄板焼きでは、肉だけではなく野菜と合わせることで完成する味がありました。ラーメンでは、レンゲの上で小さな一杯を組み立てる「ミニラーメン」という食べ方にたどり着きました。一杯の料理にも、食べ方次第で何通りもの表情がある。それを発見する瞬間がたまらなく好きです。
レビューを書くときは、できるだけ店主の立場も考えるようにしています。好みに合わないことがあっても、「なぜこの味付けなのか」「自分の食べ方が違うのではないか」と一度立ち止まります。食べ進めるうちに印象が変わることも少なくありません。だから私のレビューは、良いところも気になったところも、できるだけその日の体験として書くよう心掛けています。誰かの正解を書くのではなく、その日、その瞬間に私が感じたことを残したいのです。
食べ歩きは、料理だけを味わうものではありません。店主が料理を作る時間、料理を待つ時間、一緒に行った人との会話、店内に流れる音楽、店の空気。そのすべてが合わさって、一つの「ごちそう」になると思っています。研修帰りに後輩と食べたカレー、友人と笑いながら飲んだ夜、一人で静かにラーメンをすする休日。それぞれが私にとって大切な一皿です。
文章を書くときに影響を受けているのは、ドラマ『孤独のグルメ』です。井之頭五郎のように、料理だけではなく、その場の空気や店主の仕事、人との距離感まで味わうレビューを書きたいと思っています。だから私のレビューには、少しだけ物語があります。料理と会話をし、自分と会話をし、その店で流れていた時間まで記録しています。
以前、食べログの点数表示に不具合があり、自分が付けた評価と異なる点数が表示されていました。運営に問い合わせ、ようやく本来の評価が反映されるようになりました。私にとって、それは「食レポに対するリハビリテーション」、そして「権利の回復」でした。自分が感じたことを、そのまま表現できる。当たり前のようで、とても大切なことだと改めて感じました。
このレビューは、あくまで「私の心フィルター」を通して見えた景色です。同じ料理でも、人が違えば感想は変わります。それが食の面白さであり、食べ歩きの魅力でもあります。
これからも、一皿の料理だけではなく、その店で過ごした時間、人との出会い、店主の思いまで味わいながら書いていきます。
「美味しい」と「楽しい」を、私の心フィルターに通して。
それが、私の食べログです。
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