いつの日かの復活を信じて : Heichinrou

こちらの飲茶が大好きなのですが、5月15日に閉店してしまうということで所用のついでに行ってきました。もうかつての飲茶席はなくなってしまったようで、ひとりでしたが、広い円卓に通されました。かつてはア・ラ・カルテでないと通されない豪華な部屋だったので感慨深かったです。横浜観光に寄与しているこんな店が閉店に追い込まれて移転先もみつからないなんて、なんかおかしいですよね…。
いずれにしても実は個人的にとても重要な案件をこの日、横浜で終えてくたくたになってこちらに足を踏み入れました。ほとんど夜勤明けのおっさん的な体裁でしたが、店も店員も温かく迎え入れてとても心が和みました。大きな円卓が三卓配置された部屋のうちの一卓に通されて生ビールをお願いして、ようやくその日の緊張をほぐすことができました。それからその日の青菜料理を訊くと、担当のお姐さんがレタスの湯引きと説明してくれました。なんという幸運!　個人的にはとても好きな香港菜!　迷わずお願いしました。本当に憔悴しきったこの日、ビールとこのレタスの湯引きでぼくは生き返りました。
続いてお願いしたのは、蟹肉入り焼売だったかと思うのですが、いやー旨いよ、ほんとに旨い。それから牛肉肉団子と湯葉の蒸し物。こういう風味の点心がどこかで食べられるというのが、日本の中華料理の底力だったと思うんだけど、東京ではすでに家全七福も閉店してしまって、どうなるんだろうなあという思いに捉われました。ホテルオークラのスターライトはとっくになくなっているし、六本木の大手ホテルの中華レストランの飲茶はちょっとくど過ぎてなんか違うし…。
続いてはチャーシュー入り腸粉。やわやわな食感とチャーシューの歯応えと旨味の凝縮が旨すぎです。そして締めは香港海老ワンタン細麺。風味はどこまでも上品で、でも香港ワンタン麺の大衆性もあって、細麺のこしも適度にあって、素晴らしかったです。点心の菜単が豊富なこの店がなくなってこういうラウンドを組み立てられなくなるというのは、本当に残念です。いつか移転が決まることを切に願います。
というわけで、閉店数日前にももう一度、行ってきました。この日のランチは平日でコースのみということでしたので、例湯（ライトン）コースをお願いしました。例湯はいわゆる本日のスープのようなものですが、聘珍樓では特に薬膳スープとしてコース化させているようです。
コースのスターターは前菜で、レバーの叉焼、胡瓜の菊花詰め、くらげ、鯖の燻製をプレートに並べたものです。残念ながら、この日、携帯を忘れたため画像はありません。どれも丁寧な仕込みと仕上がりでとてもおいしかったですが、やっぱりレバーの叉焼が最高においしかったです。前総料理長の謝華顕のレシピ本でも紹介されていますが、これはやっぱり絶品です。
続いては例湯ですが、この日はすっぽん、茶樹きのこ、牛アキレス腱のスープ（水魚牛筋敦湯）で、実に滋味が限りなく染み出て身体に沁み入ってくるようなスープでした。もちろん、旨味もとても濃かったです。薬膳なので独特の風味も強かったですが、おいしかったのでゆっくり味わっていただきました。
続いては野菜の塩炒めで、カリフラワーとブロッコリー、海老を炒めたものです（蝦仁雙花菜）。それとパプリカが色味として加えられていました。カリフラワーは個人的には苦手なのですが、これまでで食べたなかでは一番食べやすかったかもしれません。シンプルに中華塩炒めが一番食べやすいことがわかりました笑。なお、この日のメニューの趣旨は、目にいい薬膳料理というもので、カリフラワーもその一環の食材として選ばれているそうです。
メインは鰻の豆豉（トウチ）蒸しです（豆豉蒸河鰻）。ほかの食材に乗せられて青菜も縁取りされている盛り付けでしたが、なにが使われていたのかはもうよく記憶していません笑…。ただ、あっさりしているようでやっぱり濃厚さが追っかけてくるような、複雑な味わいで、素晴らしかったです。
締めは貝柱と帆立とほうれん草のおかゆ（翡翠金銀粥）で、味を加えなくても素材とおかゆの甘さがよく味わえてとてもおいしかったです。デザートはクコを巨峰の玉のようにゼリーで固めたものと白きくらげをグリンピースしるこに合わせたもので（豆露堵哩丸）、滋味深い涼味でした。
こうしたコースはまたほかの店舗でもいただけますでしょうが、こちらの豊富な点心はほかではないと思うのでとても残念です。横浜で用事がある時の最大の楽しみだっただけに、復活を待ち望みます!