クリスマスキャロルの、流れる間に : Edy's Bread

クリスマスの時期が来た。
元来仏教徒が主である日本に於いて
街にクリスマスのイルミネーションや音楽が溢れる時期が来た。
そして、各種SNSのタイムラインはこの２日間、
ケーキやご馳走や各地のイルミネーションの投稿、そして
コンビニはチキンのスパイスと揚げ油の香りでむせ返るようになる。

そんな時期の・・・約１週間前。
約2年ぶりに、西船橋の稽古場へ。
乗り換えを伴う電車移動はとかく疲れるという事を体が思い出す暇もなく
イヤホンから流れる音源を頼りに譜面を眺めてはうたた寝しては、いつの間にか到着していた。
思いのほか到着が早かったので昼を立って喰う寿司屋でつるっと済ませ、
コーヒーでも飲みながらもいちど譜面をさらおうかと入った店。
何となく面差しの程よく整ったパンの並ぶ様子、片隅に見つけたのが紀ノ国屋のシュトレーン。

木村屋系列がしれっとドイツパンを作ったり
パスコ系列がいつの間にか高級フランスパンを作るような可笑しな昨今である。
だのでそこまで期待をせずに、それでも期待を込めて買い求めては家に連れて帰った。
それから数日、
そのシュトレーンの塊を薄く切っては朝のコーヒーと一緒に少しづつ食べた。
上品な洋酒の微かな香りとしっとりした風味。
木の実とレーズンの配合も程よく、時には仕事から帰った時にも口にした。
何と言うか・・・これってきっと「本物」なのだろうなあと、思った。

毎年箱根駅伝を賑わす父の母校の近所にきらきらした、建て替えたばかりの紀ノ国屋があって
都内に住んでいた頃に、たまに買い物に行っていた・・・もう25年も前のことだ。
クリスマス近くにはそのころはまだ珍しいターキーなども扱っていた。
華やかで珍しい食料品売り場が珍しくて、いちいちときめいた、そんな田舎娘だった。

憧れのスーパーの、本物の味のシュトレーンとコーヒーで目を覚ましたら
純和楽器を爪弾き唄ってから仕事へ向かった。
世間ではクリスマスキャロルがそこかしこに流れているのだが
私はそんな流れに乗ることのできない日常の中で、通勤の車中にはダイアナ・クラールやエラ・フィッツジェラルド、トニーベネットなんかの華やかなクリスマスナンバーを流した。
へっぽこな私を支えてくれている周囲に感謝をしつつ
自分自身を見失わないように年末の諸々に没頭している。