海と毒薬ならぬ、デブと串揚げ : 串家物語 イオンモール熱田店

さて、今日のインプラント手術はインプラントを埋める手術では無かった。上顎前歯が歯根破折を起こし、歯がダメになっただけでなく歯を支えている周囲の骨がごっそり無くなっていたので、まずは骨から作らないとインプラントを埋めることができない。10年前は全身麻酔下で腸骨と呼ばれる腰の骨を移植する術式だったが、現在は下顎から骨を超音波ノコギリで切り出して上顎の骨の無いところにビス止めして骨が出来るのを待つ、という手術だ。幅だけ足りないのなら人工骨だけでなんとかなるが、幅も高さもとなると、やはり、自分の骨の方が確実だ。

手術を終わり家に帰ると、熱田区にあるカーマホームセンターに出かけた。実は我家では階段室をワインセラーに改造するという途方も無いことを、私が思いつきで日曜大工で工事を開始したが、何分、飽きっぽいというか、途中で工事が頓挫していた。しかし、明日、千葉に居る長男が友人の結婚式が名古屋であるから帰って来る、ということで、現在息子の部屋を占拠しているワインをなんとかしようと突貫工事を行うべく、木材などの材料をホームセンターに買いに来た訳だ。

なんとか買い物を済ませたら疲れてしまった。まあ、疲れたので今日中に息子の部屋のワインが片付くという可能性はゼロになってしまった。仕方が無いので明日息子が帰って来たら、息子の部屋では無く、客間の座敷で寝てもらうことになりそうだ。時計を見ると既に昼過ぎになっている。今日は他にもやらねばならぬ仕事が幾つかある。まずは、家内をネイルに送って行かなければならない。というのは私の車が定期点検中で家内の車で出かけているからだ。おまけに、家内の車のブレーキランプが切れているので、ディーラーで直してもらわないと追突される恐れがある。

どこか近くで昼食ということになったが、思い当たらない。車を走らせている内にイオンに着いたのでイオンのレストラン街で食事をすることにした。店をグルグル回って探すが、ピンとくる店が無い。その中で、唯一、避けてきた店があるのを発見した。食べ放題の串揚げ屋だ。この「食べ放題」と「串揚げ」というのはデブにとってはタブーな罪悪感を感じさせる「ワード」だ。この、キリスト教徒で無い私というか、多くの日本人は生きているという罪を認識することが少ない。まあ、海と毒薬なんて現在では死語だが、イスラム国が世界を騒がせている現在、もう一度、宗教というか、私達は倫理観やモラルという物の根源を考え直す必要があるようだ。

健康と外観からすると、完全に常識と良識を無視している私は、まあ、誘惑に負けて、この、「食べ放題」と「串揚げ」というタブーを犯してしまった。そもそも、昨日の健康診断で若い？女性がウエストを測る時に、躊躇い無く、つまり、ウエストを細くしようともせず、107cmをカウントさせてしまった私には、羞恥心とかモラルというものが既に欠如している訳だ。今まで、かろうじて、このタブーを冒さずに生きて来たが、ついに堕落の道に迷い込んでしまったようだ。

さて、「食べ放題」と「串揚げ」となると「デブ」と「オッサン」をイメージするが、以外や店内には私のような体型をした男性が居ない。というか、男性客自体が居ないのだ。客層は若い女性が多い。店内は明るくて清潔なイメージだ。席に案内されて驚いたのは、案内された席の椅子の座面が持ち上げてあり、椅子の下に荷物を入れて下さい、とのことだ。やはり、油が跳ねるので荷物や上着に油が付くのを防ぐ為の案内のようだ。

テーブルの上にはおでん鍋のような、四角いステンレスのフライヤーがセットしてある。自分で衣を付けて揚げるというシステムだ。さて、何を食べよう？と具材を取りに行くと、目に前の若い女性は何故か「ちくわ」ばかり大量に、というか、「ちくわ」だけを、あるだけ全てかっさらって居るでは無いか。幸い、私はちくわには全く興味が無いので問題無いが、私がちくわマニアだったら激怒するに違いない。まず最初は様子が分からないので、定番と考えられる串を幾つかとってきた。

さて、これを自分で小麦を溶いた液ダレに付け、パン粉を付けて、目の前の油の中に入れる。我家は自宅でも卓上天婦羅をしばしばやるので似たような物だが、やってみると、このシステムの完成度が意外な程高いということが解る。天婦羅の場合は具を箸で扱わなければならないが、これは既に串が刺してあるので、非常に扱いやすい。おまけに、具が非常に小さいので揚げ上がりを気にする必要が少ない。つまり、すぐに揚がるのだ。茄子や豚肉はなかなか美味しい。反面、牛肉はあまりフライには向かないようだ。

この「90分時間制限」と「食べ放題」という絡みから、私が日頃隠している、人間としての弱さや醜さが露見し、自己嫌悪に陥る。結果食べ過ぎることは無い、と言いたいところだが、具が非常に小さいので、自分が食べている量の把握が出来ない。という訳で食べ過ぎる嫌いがある。何度も取りに行くのが面倒なんで、海老と牛肉をごそっととって来たが、あっという間に食べ切ってしまった。ここまで水を飲んで食べていたが、だんだん口の中まで脂っぽくなってきたので、飲み物を飲み放題メニューのウーロン茶に変更した。

ここで家内を見ると、なんと揚げドーナッツやたい焼きを揚げているではないか！私は流石に揚げものに飽きて来たのでサラダを食べる。と、その時食べ放題メニューでカレーがあるのを発見。しかしここのカレーはスパイシーではあるが少々甘すぎる。家内が「他に食べたい物は無い？」と尋ねるので「たこ焼き」を所望した。しかし、この選択は良く無かった。まずは美味しくなかった。それに、重量が重いのか、たこ焼き本体が串から油の中に落ちてしまい、油の中からのサルベージに苦労することとなった。後、デザートはどれも今一で、珈琲で消化器の内面に張り付いた脂を胃の中に流し込んだというのが〆となった。

しかし、実は、この店は当初予想していたより、ずっと良かった。ところが、やはり、時間が経過すると大量に摂取した油がボディブローのように効いてくる。やはり、この揚げ物食べ放題は私の年にはきついようだ。家内をネイル屋で降ろし、ディーラーに行くと、私が昔乗っていたPeugeot605があるではないか！私はPeugeot605のミッションを3度も載せ変えた過去があるが、この車はピカピカで新車同様に輝いていた。しかし、やはり姿形をよく見ると随分古い車に見えた。私も、もうすぐ、引退の時期が迫って来ているな〜と、少々感傷的な気分になってしまった。