かつてポンディシェリ生まれで、7つの国で働いてきたシェフが働いていた。 : アムダスラビー 西葛西店

この口コミは、ジュリアス・スージーさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら

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¥2,000~¥2,9991人
  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

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¥1,000~¥1,9991人
  • 料理・味3.8
  • サービス3.8
  • 雰囲気3.8
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク3.8
2020/07訪問121回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

かつてポンディシェリ生まれで、7つの国で働いてきたシェフが働いていた。

【後註】このレヴューは過去のものであり、
ステファン・ラジはとっくにインドへ帰国しました。
また、現在のアムダスラビーについて
ぼくが語りたいことはなにもない。
しかし、かつてステファン・ラジがいて
すばらしい料理を作っていたことの記録として、
このレヴューを残しておきましょう。



ステファン・ラジ、
現在38歳ながら精悍に痩せていて青年みたいに見える。
かれがポンディシェリ生まれというだけで、耳がピクンと動く人もいるでしょう。
ポンディシェリは南インドタミルナドゥ州の、州都チェンナイから
クルマで3時間の都市であり、そしてこの都市は、
かつてフランスの植民地になっていた過去があります。
しかもその面影はいまもいたるところに残っていて、
たとえば凱旋門があったりもすれば、
フランスふうのカフェもまたあちこちにあって、
美しいビーチもあるしで、どくとくの文化を形成しています。


ステファン・ラジが作る土日ランチブッフェは、
料理ごとの色の振り分けが良く、どの料理も色あざやかで、
香り良く、野菜のカットも、温度の扱いも、煮込み時間も、
すべて的確で、たいへん優美に南インドらしく、
そしてなによりもかれの料理人としての育ちの良さを感じます。


ぼくは英語で訊ねてみた、「ねぇ、ステファン・ラジ、きみさ、もしかして、
どこかでフランス料理を学んだことがあるんじゃないの?」


するとかれは愛嬌たっぷりに笑って英語でこんなことを言った、「よくわかったね。
いやね、おれは15歳でポンディシェリのアンナプルナって店に入ったんだよ。
最初は床掃除。その後ラッサム、サンバル、Idly、ドーサ・・・
南インドのひととおりは覚えた。
ま、おれ、タミル人だからさ、最初からできたんだけどさ。
でも、ま、レストランはスピードが勝負だからね。鍛えられたよ。


次に働いたのが、Daily Bread Bakery and French Food って店でね、
そこでおれ、フレンチもイタリアンも覚えたんだよ。
ポーチド・フィッシュ・ホワイト・ワイン・ソース
チキン・ア・ラ・キング(チキンフリカッセ=鶏肉のクリーム煮)とか、
ラザニアも、カネロニも、ラビオリも、
スパゲッティもパンケーキも作ったよ。」


ぼくは感心した、「な~るほどね、どうりで、
調理のいちいちが綺麗で正確なんだね。
で、次は、どこで働いたの?」


ステファン・ラジは答えた、
「マレーシアのAjibal Ajicarna"って南インドレストラン。
次がパリのカーラクディチェティナドレストラン。
その後が、サウジアラジアのSouth Park。
次が、カタールのDoha South Corner。
それからドバイで働いて、台湾のインディアン・タウンの
India Town Hinchu ってとこで働いて、
それから日本へ来たんだよ。」


ぼくはふたたび感心した。だって、
ステファン・ラジは、母語のタミル語はともかく、
ヒンディもそれほど流暢ではないらしいし、
英語もつたないし、日本語もだめ、
どうやら他の言語もほとんどしゃべれないらしい。
にもかかわらず、このキャリアですよ。
たまにこういう人がいるんですよ、
どんな国へ行ってもなんとかなってしまう人。
ミュージシャンとか料理人に多い。
たいていこういう人は、本業の実力が高く、
しかも、愛嬌たっぷりの笑顔で、すぐにみんなに愛されて、
そしてそれでなんとかなってしまうのだ。
はたから見れば奇跡みたいだけれど、
しかし本人はむかしっからずっとそうなので、
それがあたりまえなのである。


ぼくは言った、「じゃあさ、ステファン・ラジ、
いつか機会があったらさ、
”三色パプリカのテリーヌ、ミントチャトニ添え”とか、
”白身魚のポワレ、緑豆のダルをかけて”とか、
”鴨のタンドリーロースト、オレンジチャトニ添え”とか、
そういうスモールコースを作ってよ。
おもしろそうじゃん!」
ステファン・ラジは言った、「おれはいつだって作れるよ、
オーナーのOKがでればね。」


ステファン・ラジには、まだまだ秘密の扉がいくつもありそうだ。
ぼくはたのしみながら1枚づつ開けてゆきたい。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー - ステファン・ラジ

    ステファン・ラジ

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2020/06訪問120回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

無邪気でコドモっぽく正直なタミル人たちの、土着料理の洗練。

【後註】このレヴューはすっかり過去の話になってしまった。
現在のアムダスラビーンについて、
ぼくが語りたいことはなにもない。



すでにムゲーシュ・シェフは去り、
これまで二番手だった笑顔が爽やかな37歳のステファン・ラジがシェフに昇格し、
かつまた在日25年のヴェテラン、
薄毛のマリームトゥ・オイヤンさん(以下ムトゥさん)も厨房に入った。
ステファン・ラジは、ポンディシェリの出身で、
かの地は旧フランス領だった土地で、どくとくの料理文化を持っています。
またムトゥさんは経験豊富で、デリーの市長の主催する晩餐会で、
料理長を務めたほどの一流のキャリアを持っています。
このふたりのタミル料理人のコンビが、いいんですよ。


さて、きょう6月27日(土)の1200円ランチブッフェは、
こんなメニュー。


Chettinad Nattu Kozhi Biryani。(地鶏のスパイシー釜飯、チェティナドスタイル)
Tomato Rasam。
Carrot Cabbage poriyal。
Dal Panchmahal。(白い豆、トゥール豆、ムング豆ー緑豆、マイソール豆、ウラド豆の、
スパイシーポタージュ)。
Bindi Mor Kuzhanbu。(冷製 オクラのヨーグルトシチュー)。
Karikudi Egg Curry。(ゆで卵のカレー、カライクディスタイル)。
Makkai Vadai。(とうもろこしの粒の揚げ物)。
Methi Kulcha。(ほとんどナン、香草メティ入り)。
Carrot Halwa。(ニンジンのスウィーツ、砕いたカシューナッツとレーズン乗せ)。
Pinapple Juice。


全体的に、味と香りの中間色が多彩で華やかで、
色と味の振り分けが適切です。
あぁ、これが南インド料理だなぁ、
と、うれしさが心の底からわきあがってきます。
ラッサムは綺麗に澄み渡り、
トマトとひかえめなタマリンドの酸味の二重奏と、
そして黒胡椒のキックがかっこいい。
ダルは6種の豆を煮込んであって、イモのポタージュのような趣ながら、
ただしひかえめなスパイス使いで的確に輪郭づけられていて、
たいへんすばらしい。
地鶏のビリヤニとゆで卵カレーは相性抜群。
コールスロウでさえも、キャベツ、紫キャベツ、ニンジンの
千切りがヨーグルトベースの白いソースで和えてあって、美しい。
キャロットハルワは真紅に染まって華麗な仕上がり、
砕いたカシューナッツとレーズンがアクセントです。


あるいは、ステファン・ラジ&ムトゥさんの料理は、
経堂スリ・マンガラムのマハリンガム・シェフのような、
インパクト系の料理を愛する人にはいくらかものたりないかもしれない。
また、かれらの料理は、横浜・元町INDUのようにあえてやや高値つけにして、
最高の食材を使っているかぐわしい高級料理でもない。
また、銀座アーンドラ・キッチンのラマナイア・シェフの料理のように、
どんな客にどんな料理をふるまおうとも絶対に拍手をもぎとる、
そういう種類のプロ根性があるわけでもない。
けれどもステファン・ラジ&ムトゥさんの料理には、
かれらならではのかけがえのない美質がある。


たとえば、マハリンガムをインド料理界のジミ・ヘンドリックスに喩えるならば、
ステファン・ラジ&ムトゥさんは音色のゆたかなビル・フリゼールだ。
(ごめん、この喩えは音楽マニアにしかつたわらないね。)
ラマナイアを最高のエンターテイナーという意味で、画家マティスに喩えるならば、
ステファン・ラジ&ムトゥさんは、華やかな色彩のボナールだ。
すなわち、けっして派手さもけれんもないけれど、しかし、
南インド料理を食べ込んできた人にとっては、
あぁ、いま自分はすばらしく上等な南インド料理を食べている、
そんな実感がよろこびとともに体を駆け巡る。


対照的に、下手くそな料理人は、スパイスをどかどか使ったり、
しかも、香りを立てるために塩使いを派手にしたりする。
(もっとも、塩使いは人それぞれの癖で、
料理が巧い人でも塩使いが過剰になりがちな人はいますけれど)、
下手くそな料理人は、正しいうまみの作り方を知らないがゆえ、
愚かにも安易に味の素やクノールに手を伸ばす。


しかし、ステファン・ラジ&ムトゥ・コンビは、
ベーシックな調理技術がきわめて高いゆえに、
あたりまえのことをあたりまえにおこなうだけで、
魔法のように、味と香りのゆたかな中間色を多彩に作り出し、
食べ手を魅了することができる。
もっと言えば、かれらはニンニク、生姜、タマネギ、マメとイモ、
そしてわずかな野菜を、的確な加熱とスパイス使いで、
女王陛下に捧げる料理を作ることさえもできる。
もともと南インド料理とは、そういうものだ。
最高のごちそうに、けっしてフォア・グラもキャビアも、
生後2週間の乳飲み仔羊も要らない。
ただし、そんなかれらも、鶏肉は
ブラジル産の冷凍ブロイラーでもそこそこおいしい料理はできるとはいえ、
しかし、やっぱり地鶏のうまさにはかなわないよな、
というような見識がちゃんとある。(あたりまえか。)


かれらはふたりとも南インド、タミル人だ。
たとえば、西インド、ムンバイあたりのインテリIT関係者は、
ほぼ例外なくワナビー・ヨーロピーアンか、ワナビー・アメリカンで、
しかも学校の勉強しかしてこなかったゆえ、
本人たちは知的なつもりだろうが、
しかし、本か新聞に書いてあるような凡庸なことしか話せず、
おまけにとりすましていて、建前しか口にしない。
かれらが腹のなかでいったいなにを考えているか、
それはけっして誰にもわからないところが、
まったくもって不気味である。
そんなムンバイ人にとって、タミル人など田舎者、田吾作の象徴だ。
なにしろタミル人はまったく裏表がなく、
心のなかにあることをなんでもかんでもしゃべるのだ。
タミル人がヒンディをしゃべるときには、たいていなまりがあるらしい。
タミル人は愚かにも、千葉真一と志村けんが合体したような(?)、
ラジニカントをまるで親戚のおじさんのように、慈しみ誇りにおもっている。
タミル人はどんな映画を見るときもマニアが『ロッキー・ホラー・ショー』を観るときのように、
熱狂的に参加型の鑑賞をせずにはいられない。
タミル人のあからさまなフィンガーイーティングはまったくもって上品からほど遠い。
タミル人の性格は無邪気でコドモっぽく、すぐ笑い、すぐ怒り、すぐ仲直りする。
しかし、ぼくはそんなタミル人だからこそ、愛してる。
かれらの正直さとくったくのなさは、神様の贈り物だ。
そしてステファン・ラジ&ムトゥさんの料理には、
そんなタミル人たちのソウルフードが、
最高の洗練と優美をともなって表現されている。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2020/06訪問119回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ムゲーシュはすでに6月18日に離職し、新たにステファン・ラジ・シェフ体制がはじまっています。

「花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生さ」
これは唐の時代の詩を、井伏鱒二さんが日本語で歌いなおしたもの。
これをさらにまた訳しますと、
「せっかく桜が咲いたって、嵐が来ればパーなのよ、
人生に別れはしかたのないなりゆき」
というよう意味かしらん。


きょう2020年6月14日、昼下がり、
ぼくはアムダスラビーのスタッフルームで、
東日本橋店のガネーシュクマール・シェフとふたりで缶ビールを飲み、
かれが作ってくれた、厚手のアル・パロタ、
リッチなグレイヴィーの2種のチキンカレー
(トマトベースとココナツベース)など食べながら、
まったりしていたものだ。


するとガネーシュクマールが、アムダスラビースタッフ専用のLINEをぼくに見せてくれた。
そこにはムゲーシュのこんな言葉があった。
”Good morning,mom.
This month end, I will quit my job.
Sorry my decision."


ムゲーシュ、辞めるのか!??
SANTOSHが言うには、きっかけは
ムゲーシュが2番手のステファン・ラジと大喧嘩したことだそうな。
ステファン・ラジはこれまでずっとムゲーシュの独裁に我慢してきたことの、
その鬱憤がとうとう爆発したようだ。


もともとムゲーシュはお茶目で明るくガキっぽく、風呂は長いが気は短い。
そしてまたムゲーシュは無駄に大卒で、しかもハリウッド映画好きゆえ英語も流暢で、
おまけにムゲーシュは口数が多いと言うか、むしろ大阪弁で言うところの
「いらち」で「いちびり」で「要らんこと言い」である。
そのうえムゲーシュは喧嘩は弱い癖に、毒のあるユーモアを他人にぶつけるのが大好きで、
しかも誰と接するときでも、マウントを取りたがる。
「おまえよりも、おれの方が偉い」と遊び半分に見せつけたいのだろう。
こういうところにムゲーシュの自我の脆さが透けて見えもするし、
また、こういう気質によって、ムゲーシュは孤独になってもゆくのだけれど。
とはいえ、機嫌のいいときのムゲーシュには愛嬌もあるし、
経営者のゴヒル夫妻と話すときには上手な英語でちゃっかり好青年を演じもすれば、
お客さんと接するときにも愛想が良い。
ざっとそんなふうにムゲーシュはいかにもアンバランスな、
そして見るからに隙だらけの男だけれど、
しかし、もしも巧く美質を伸ばし、上手に欠点を抑えこんでゆければ、
ムゲーシュは幸福になれもしただろう。


ところがムゲーシュは、去年2019年6月半ば、
アムダスラビー東日本橋店が開店すると同時に、
ガネーシュクマールがそちらへ行き、
ムゲーシュがひとりで西葛西店のシェフになってから、
かれは「おれさま気質」丸出しのコントロールフリークになって、
ラジャ・イン・ザ・キッチン(厨房の藩王)をやるようになった。
「あれをやれ!」、「それはやるな!」、「これをやれ!」、「それはだめだ!」、
二番手も給仕も朝から晩までムゲーシュに命令されるのだ。
これはちょっとかなわない。
ほんらいレストランは「美食の工場」であって、
あらかじめ食材を買い揃え、料理の部品を作っておいて、
注文が入れば、部品を併せて仕上げ、
客の食卓に料理を届け、客が食事を終えれば、お代を頂戴する場所である。
必要最低限の言葉で、すべてが巧く回るのがあたりまえである。
もしもそのプロセスのいちいちに、料理長の趣味判断による気分次第の罵声が飛ぶならば、
それは仕組が巧くできていないのであり、
結局、それはシェフの未熟というものだ。
むろんそんなむちゃくちゃな環境では、
スタッフの心がすさむばかりで、レストランはまともに営業できるわけがない。


ムゲーシュにしてみれば、はじめてシェフになったことで、
責任感を強く感じたのだろうが、しかしその自負は(残念ながら)空回りしていた。
あるいは、ムゲーシュはディナサヤラン料理長の二番手時代に、
さんざん泣かされたそんな不遇時代の、反動が出たのかもしれない。
ディナサヤランは自分でムゲーシュを二番手に選んだにもかかわらず、
しかしかれはムゲーシュをさんざん無能呼ばわりしたものだ。
なお、ムゲーシュはこの、誰が見ても気の毒な時代に成長した、と言えないこともないけれど。
いずれにせよ、スタッフはみんなムゲーシュの幼稚な独裁を心底不快におもっていたので、
今回のふたりの喧嘩で、
SANTOSHも、ガネーシュクマールも、ステファン・ラジの味方についた。
こうしてムゲーシュは完璧に孤立し、シェフとしての指揮系統は、
まったく機能しなくなった。
自分の言うことに誰も従ってくれないならば、シェフなどできるわけがない。
こうしてムゲーシュは居場所を失った。
喩えるならば、ムゲーシュは単独シェフ体制になって丸一年めに、
クーデターを起こされて失脚したというわけだ。


関係者のあいだには、「ムゲーシュの自意識を肥大させたのは、ジュリアス・スージー、
おまえのレヴューだ」という大胆な意見もあるのだけれど、
しかし、ぼくとしてはそんなことを言われてもちょっと困っちゃう。
もしもムゲーシュがあのていどのレヴューで増長したとしたら、
それはあんなもんで舞い上がる方がアホである。
しかも、ぼくは去年の12月初旬以降ムゲーシュとつきあいはしなかったし、
とうぜんムゲーシュについて書いたこともなかった。
それどころか以来このあいだ6月21日まで、
ぼくはアムダスラビーに顔を出したこともなかった。


少し原理的に考察してみよう。
経営者は除外するとして、レストランスタッフたちのあいだには、
〈誰かが困っていれば誰かが助け、また別のときにはかつて助けられた者が、
誰かを助ける側にまわる〉、そんなgive and take の関係が成立している。
たとえば、誰かがどうしても仕事を休まなくてはならない事情があるときは、
別の誰かが自分の休日を潰して働く。
また、店を閉めた後や休日にスタッフ何人かでヤキトリ屋に飲みに行くにしても、
あるときは誰かがカネを払い、別のときはほかの誰かが払う、
そんな〈奢りの循環〉が慣例になっている。
かれらにとって異国の地で生きてゆくために有用なさまざまな情報もまた、
当然のこととしてシェアされている。
ついでながら、かれらがぼくをいわばかれらの賛助会員のように遇してくれるのも、
ひとつには、日本語ができる友達が生きてゆく上で必要だからである。
ぼくがかれらになにかしてあげると、かれらはぼくにビールや料理をふるまってくれる。
それがかれらの、(いかにも流動的で不安定な小社会における)、
相互扶助にもとづくセイフティネットなのである。
ところがムゲーシュは、職場で幼稚な独裁制を敷くことによって、
みんなから嫌われ、ムゲーシュはこの相互扶助の関係の輪から排除されてしまった。


もしも新型コロナウイルスの流行がなければ、
ここまでひどいことにはならなかったかもしれない。
なぜって、売り上げが悪くなると真っ先に責められるのがシェフである。
アムダスラビー西葛西店は、
自粛が要請されるまでは通年にわたって立派な売り上げがあったものだし、
さらには、ゴヒル夫妻が燃え盛る野望とともに信じがたい大胆さを発揮して、
ろくに人もいないどころか猫一匹歩いていない東日本橋のはずれの地下に店をこしらえて、
案の定毎月毎月赤字の山をこしらえても、
しかし、それを十分補填して余りある稼ぎを西葛西店はあげていたものだ、自粛以前には。
また、西葛西店の自粛以降においては、
誰がどう見ても、最悪なのはむしろマネージメントだった。
だって、この自粛期間アムダスラビー西葛西店は、休業期間を取ったのみならず
再開後も(地下店舗ゆえ)営業しているのか休業しているのかさえほどんどわからなかったものだし、
また、あの時期の弁当販売にしても、
1000円/1500円の価格設定であり、せめて700円の弁当もまた売るべきではなかったかしら。
そしてせめて路面に、「インド弁当販売中」というようなノボリのようなものが必要でした。
まったくもってプロモーション不足で、あれで商売が成り立つはずもありません。
しかし、事情はどうあれ、経営者に責められるのはつねに現場のスタッフです。
そのうえ、もともと安い給与は、さらにいっそう無残なほどに削られるのだ。
経営者自身は、日本政府から家賃支援給付金最大600万円を貰う気まんまん。
労働者たちもまた、日本政府からの給付金10万円もあるし、
それで足りなきゃ区の特別貸付を利用しろ、数十万円は無利子で借りられる、
というわけである。
料理人のプライドは粉々である。
ムゲーシュはさぞや悔しかったろう。
こうしてスタッフの心はそれでなくても殺伐とすさみきっているところへもってきて、
ムゲーシュはその溜まりに溜まった鬱屈をステファン・ラジにぶつけまくって、
結果、とうとうステファン・ラジがキレたのだろう。


ある休みの日、ムゲーシュはひとりで臨海公園へ行き、
ひとりでダイヤと花の観覧車に乗った。
ムゲーシュは中空から、ビルの群れ、荒川放水路、スカイツリー、
アクアライン・・・を眺めた。
「おれはいったいなにを求めて東京にいるのだろう?」
と、ムゲーシュがおもったかどうかは、ぼくは知らない。


では、ムゲーシュの料理とは、どんなものだったろうか?
東京圏には、良いインドレストランがけっこうある。
たとえば銀座アーンドラキッチン、経堂スリ・マンガラム、
御茶ノ水・小川町 三塔舎、はたまたその人っ子ひとりいない場所ゆえ、
とうぜん儲かってはいないものの、しかし料理の質は高い東日本橋アムダスラビー、
そして、このごろぼくがもっとも贔屓にしている、横浜・元町INDU。
そんななかアムダスラビー西葛西店のムゲーシュの料理には、独特の若さがあった。
かれのラッサムとサンバルはなんともすばらしく南インドらしい。
Idlyも巧いもの、チャトニもビシッと決まっていた。
デザートもけっして難しいことはやらないものの、
ラヴリーでキュートだった。(後註:実はデザートは、
ステファン・ラジの仕事だったようだ。)


その反面、たとえばムゲーシュによる野菜のカットは粗っぽく、必ずサイズがまちまちだった。
またムゲーシュのチキンカレーやマトンカレーの煮込み時間は短かすぎた。
もう30分煮込めばそうとうおいしくなるのに。
おまけに、南インド料理には用いない、
もっぱら北インド料理の基本的技術ながら、
chopped masala (刻みタマネギを炒めて、刻みトマトと一緒にさらに炒めて、
グレイヴィーソースのベースを作る)のテクニックを、
けっしてムゲーシュは使えなかった。
ビリヤニは、たまにムゲーシュが本気を出したときだけ、
たいへんすばらしかった。
もっともムゲーシュが手を抜いた日のビリヤニとて、
そこそこにはおいしかったものだけれど。
ざっとそういうふうにムゲーシュは基本的技術がやや凸凹で、
しかもムゲーシュのムラッ気(capricious behavior)が
料理にもまたよく現われていた。


しかしながら、そんな弱点も含めて、ムゲーシュの料理はおもしろかった。
とくに土日のランチブッフェは毎回、どんなラインナップになるか、わくわくしたものだ。
比較するに、アーンドラキッチンやスリ・マンガラム、
そしてINDUの料理にはぼくはただただ感動するばかり、
それに対して、ムゲーシュの料理にはあれこれのツッコミどころを含めて、
いつもその日そのときならではの、小興奮をぼくにもたらした。
あるいは、もしももっぱらムゲーシュの側に立つならば、
ムゲーシュはあの信じがたい安月給でよくがんばったし、しかも多くのファンも作った、
偉いものじゃないか、と言えないこともありません。


おもえば、アムダスラビーはTMVS FOODSの経営者ピライ・マリアッパンが作ったものだ。
そしてぼくはピライの相談役であり、アドヴァイザーだった。
初代シェフは、マハリンガム(現・経堂スリ・マンガラム)、
二代目シェフは、ヴェヌゴパール(現・錦糸町ヴェヌス)
三代目シェフは、ディナサヤラン。
(ムゲーシュは2番手としてアムダスラビーで仕事をするようになった。)
やがて、経営者がゴヒル夫妻に替わり、
四代目が、ガネーシュクマールとムゲーシュの2人シェフ体制。
そして2019年夏ゴヒル夫妻が東日本橋店を作るとともに
ガネーシュクマールが東日本橋勤務になり、
同時に、西葛西店はムゲーシュ・シェフ体制となった。
ぼくはどの時期にも愛着があるけれど、
レストランが売れ出したのは、ガネーシュクマールとムゲーシュの
ふたりシェフ体制になってからのことで、
そこには根強い常連さんたちの支持があり、ファンが増え、
さらにはおもいがけない幸運が舞い込んだせいでもあったにせよ、
そこにはやはりガネーシュクマールの熟練の技術と、
そしてムゲーシュのいかにも若々しい無鉄砲な魅力が貢献しただろうことは疑い得ない。


ぼくとしては、ムゲーシュはやや不安定な基礎をいまのうちにしっかり固めて、
そして大きな料理人に育って欲しかったけれど、
残念ながらそうそう巧いことにはならなかった。
しかし、結局はそんなことなどどうでもいいことだ。
なぜって、人は誰も他人の期待に応えるために生きているわけではないし、
誰の人生とて、そうそうとんとん拍子にゆくものではないもの。
とはいえ、むろんたいへん残念な幕切れではある。


ムゲーシュがLINEに告げたメッセージ、
”Good morning,mom.
This month end, I will quit my job.
Sorry my decision."
それに対するミセス・ゴヒルの返事は、
"OK." ただ一言それだけだった。


(2020年6月14日)


++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

【追記】ムゲーシュは(前述の予定を早め)去る6月18日を最後に仕事を辞め、
スタッフルームからも退去していた。
いったいどうしてムゲーシュは、アムダスラビーの離職を、
せめて8月に延ばせなかったろう?
どこまで直情的な男なのか、と、ぼくは呆れてしまう。
いや、もはやアムダスラビーに自分の居場所はない、と
ムゲーシュは観念したのだろう。


それにしても、まず最初に、
今月中は成田からも羽田からもインドへの航空便はほとんど欠航中で、
わずかにある数便も直前にキャンセルされる可能性が大きい。
次に、現在インド入国者はコロナウイルス感染の有無を調べるため、
空港から直接、近郊のホテルへ護送され、
1泊12000円で10日間、計12万円払って拘束される。
もしもそのカネの持ち合せがなければ、日本で飛行機に搭乗させてさえもらえないだろう。
さらには、万が一ムゲーシュがそれらのプロセスを経て
ようやく市内へ出ることができたとしても、
現在(ムンバイ州とそして)ムゲーシュの郷里タミルナドゥ州の
州都チェンナイは6月末まで完全ロックダウン中で、
電車もバスもリクシャも使えない。移動手段は歩くしかないのだ。


「ジャニーズ系ネパール人」のSANTOSHが言うには、
どうやらムゲーシュは、西葛西ムスカンの経営者の奥さんに紹介してもらった、
彼女の親族が経営しているところの
千葉市幕張駅のネパールレストラン、ラリグラスで、
3ヶ月くらい働いてからインドへ帰るらしい。
ムゲーシュが心底困った今回、ムゲーシュを助けてくれたのが、
ふだんろくにつきあいもなかったネパール婦人だったことは感慨深い。
ラリグラスはいかにも典型的なインネパレストランで、
言うまでもなく、ムゲーシュはアムダスラビーでのように自分の料理を作れるわけもなく、
かつまた、あきらかにムゲーシュに向いているとはおもえない店ではある。
しかし、ああいうカレーはああいうカレーでそれなりのウデが要る。
まじめに取り組まなくては罰が当たるというものだ。
そもそもこの時期、雇ってくれる店があっただけでも、幸運である。
余談ながら、LALIGRASHとはネパールで有名な、大きな赤い花の名前だそうな。
(後註:2020年10月、風の噂によると、ムゲーシュはすでにLALIGRASHを辞めているそうな。
いま、どこでどうしているかはわからない。)


ぼくはムゲーシュとよく遊んだものだ。
行船公園でビールを飲んだり、一緒に古着屋を覗いたり、服を交換したりもした。
外食はサイゼリヤや格安ヤキトリ屋が多かったものの、
浦安のイタリアンレストランへ食べに行ったり、麻布のワインバーに遊びに行ったりもしたものだ。
ふたりでしこたま酔っ払って、
ぼくがギターを弾きながら、即興の歌を歌いながら、ムゲーシュが合いの手を入れながら、
ふたりで夜の西葛西を散歩したこともある。
いくら酔っ払っていたとはいえ、ムゲーシュがいなかったならば、
ぼくはけっしてそんなことはしなかったろう。
ぼくはあの夜、楽しかった。
まるで二十歳の頃に戻ったみたいだった。
それはもちろんムゲーシュのお陰だった。
結局ムゲーシュは、常連さんたちにも、そしてぼくにも、
ひとことの挨拶もなしに、消えてしまった。
ま、もともとそういう奴だということはわかっていたけれど。


他方、ステファン・ラジはおもいのほか好調なスタートを切っていて、
21日(日)のランチブッフェは、こんなメニューだった。
シンディ・マトン・ビリヤニ。
チキン・キーマ&グリンピースカレー。
ヴェジ・マッカンワラ。
発芽緑豆のドーサに、レッドチリで色づけられたココナツチャトニ、生タマネギ入りのチャトニ。
レモン・ラッサム。
オニオン・サンバル。
キャロット・ビーンズ・ポリヤル。
パルプ・ワダ。
緑豆のチャット(サラダ)。
ブレッド・プディング。
オレンジ・ジュース。

色美しく、香り良く、加熱は適切。華やかですばらしくおいしい。
たいへん良い感じのスタートだった。

(2020年6月21日)


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - ぼくとムゲーシュ。

    ぼくとムゲーシュ。

  • アムダスラビー - 新シェフ、ステファン・ラジ。

    新シェフ、ステファン・ラジ。

  • アムダスラビー - 現・東日本橋店の、ガネーシュクマール・シェフ

    現・東日本橋店の、ガネーシュクマール・シェフ

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2019/12訪問118回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

手と手と手。

南インド料理に興味を持った人や、
それを愛する人にとって、
アムダスラビー西葛西店は、
かけがえのないレストランで、
とくに土日&祝日のランチブッフェ1200円は、
安くてヴァラエティに富んでいておいしいのみならず、
12品の料理のラインナップが毎回替わります。
これまでたいへん多くの種類の料理を提供し、
こんなにも南インド料理の多彩な世界を紹介してきたレストランは、
アムダスラビー西葛西店の他に、東京にほぼありません。
料理は若々しく、チャレンジングで、
スタッフはみんな楽しみながら仕事をしていて、
またお客さんたちの気も軽く、
おおげさに言えば、それはちょっと奇跡のような幸福ではないかしら。


さて、美質を褒め称えるばかりではレヴューになりません。
ここではぼくが感じる(必ずしもアムダスラビー西葛西ばかりではなく、
むしろ)東京のインドレストラン全般の、構造的な問題~課題について、
書いてみようとおもいます。


レストランビジネスに夢を持っている人は、
ジョージ・オーウェル著『パリ・ロンドン放浪記 Down and Out in Paris and London 』
(小野寺健訳・岩波文庫)を読んでみるといい。
原著1933年のこの作品は、エリート育ちで貴族的な教育を受けた著者が、
成人した後、「無謀にも」あるいは「酔狂にも」と言うべきか、
いいえ、社会の階層構造へのジャーナリスティックな考察を目的として、
パリの一流ホテルのレストランの厨房や給仕の仕事に従事し、
その苛酷な労働環境をルポルタージュしたエッセイです。
長い労働時間、戦場のような労働、安い給料・・・そんななかで、
労働者たちの精神がどんなふうに変容してゆくか。
その主題が、たいへんなまなましく、かつまた
文学的に上等な文体で描かれています。
さすがに現代ではいくらかなりとも事情は改善されてはいますけれど、
ただし、おおよそのところではそれほどには違いはありません。


しかも日本の多くのインドレストランにおいては、
「もしもインドのルピー換算ならば、
インド的にはなかなかの給料」というようなダブルスタンダードでもって、
在日インド人スタッフの給料の基準が定められ、日本円で支払われています。
なお、インドにおいては、コメ、マメ、油などの基本食材がたいへんに安く、
かつまた住居費もまた低く抑えられていますから、
たとえ給料が安くても、幸福な暮らしができるようになっています。
しかしながら、在日インド人レストランスタッフにとっては、
日本で生活しているわけですから、たとえば単身赴任で来日などしている人ならば、
家族に送金した後は、(いくら食費がかからず、住居提供があったとしても)、
残るおカネは、タバコ代・酒代で消えてゆきます。
ましてや妻帯者でスタッフルームに住めない場合は、
自腹でアパートを借りなければならず、
たとえ奥様もスーパーマーケットや
ホテルのベッドメイキングのパートタイマーで働いているとしても、
困窮は約束されています。


もしもかれの勤めるレストランの売り上げがろくにないならば、
それもいたしかたないことかもしれません。
しかし、立派な売り上げを稼ぎ出すようになってさえも、
給与事情はほぼ同じというレストランがとても多い。
これでは、料理人や給仕が休日に
ちょっと他のインドレストランや、
はたまたたまにはイタリアンやフレンチを食べに行く、
なんて贅沢もまったくままなりません。
また、そもそもさいきんの経営者の多くはIT関係者で、
かれらはコドモの頃から勉強しかしてこなかったタイプばかりで、
たとえ経営の才があったとしても、しかしレストラン遊びの愉しみを知らず、
かれらのほとんどはフレンチを食べたこともないような人たちです。
しかもかれらは監視カメラによる遠隔監督を好み、
自分のレストランの現場であるダイニングにいる時間は極端に少ない。
これでは、経営者は自分の雇っている給仕と、お客との間のやりとりもわからず、
お客がサーヴィスに満足しているか否かも、ほとんど読み取れません。
これでは、レストランを良くしてゆくことは難しく、
ましてや〈インドレストランの新しい形〉を考えることなど
できるはずもありません。


結果、日本の多くのインドレストランは、
たとえ料理がすばらしくおいしくとも、
プレゼンテーションがいささか旧態依然であったり、
はたまた給仕のサーヴィスレヴェルがほとんど例外なく低い。
かれらの多くはまともなレストランの基準を知らないのですから、
スタンダードなサーヴィスなどできるはずもありません。
(いいえ、アムダスラビー西葛西店の給仕長、
サプコタ・チャビラルの名誉のために言い添えるならば、
かれは気の毒なほど安月給でありながら、誇り高く質高く誠実に働いていて、
ネパール人の評価を高めているのだけれど。
それであってなお、ついぼくは夢想してしまう、
もしもかれが一流のサーヴィスを見知ったならば、
きっとかれは超一流のサーヴィスマンに成長するだろうに。)


すなわち、経営者はカネ儲けのことしか考えられず、
労働者はただ搾取され、カネもなく、社交もない。
それがほとんどのインドレストランの可能性の限界を決定していて、
しかも、それがこの業界の「標準」です。
かれらの視野はあまりに狭く、
たとえばあるインド人料理人は、
2年間西葛西で働きながら、
かれが体験した日本は、西葛西の行船公園と、たった1度の秋葉原観光だけで、
インドへ帰ってしまったもの。
こういう労働環境は、もうちょっと
なんとかならないものかしら。


昭和の名人落語家、古今亭志ん生は、
後輩落語家の真打襲名披露の席で、
こんな挨拶をしたもの。
「”手を取って 引き上げてゆく 山登り”、
この新しい真打を、お引き立てのほどを、
どうぞよろしくお願い申し上げます。」


日本のインドレストラン業界においても、
われわれインド料理を愛する者たちが、
みんなで手を取って、引き上げてゆくことができれば、
この世界はもっともっと幸福になるのではないかしら。


なお、このレヴューは、
ぼくが去る12月8日を最後に、5年8ヶ月続けてきた
アムダスラビーの土日&祝ランチブッフェのヴィランティアを辞めたことについて、
ご心配のメールを5人の方からいただいたことへのお返事として(も)書きました。
もっとも、とくにこれといって辞めた理由はないのですが。
しいて言えば、アムダスラビー西葛西店は、
あれだけすばらしい料理を格安価格で提供していながら、
しかし長いことお店の売り上げは吹けば飛ぶような極小利益しか稼ぎ出せず、
さすがにその状態でヴォランティアを辞めるのは屈辱的におもえたもの。
しかし、最近は立派な売り上げが立つようになったので、
(むろんそれは関係者全員の努力と、常連さんたちの根強い支持、
そしておもいがけない僥倖のたまものですが、
いずれにせよ)、さすがにもうそろそろぼくは辞めてもいいかな、とおもって。
また、「スージーはアムダスラビーに、えこ贔屓しすぎ。」
というような友情あふれる(?)批判もいくつかいただいていましたし。
そこで、先日ヴォランティアを辞めることにした次第です。


ぼくはこれまでとてもたのしかった。
インド人労働者たちは、徹底的に搾取されていながらも、
それぞれ自分の仕事にプライドを持ち、
かつまたかれらはまるで日本の落語の(愛すべき)登場人物たちのように、
過酷な境遇を笑いに変える知恵を持って、
しかも、かれらのあいだにはほどほどに友情が生きている。
ぼくもまた、過去5年8ヶ月にわたって、
「変な日本人」として、かれらのソサエティの賛助会員だった。
ぼくがこの経験から得たものはあまりに多く、
それはぼくの生涯の宝物になるでしょう。
そしてアムダスラビーをつうじて知り合えた多くの人たちに、感謝を申し上げます。
どうもありがとうございました!
これからもアムダスラビーおよびジュリアス・スージーを、
お引き立てのほど、どうぞよろしくお願い申し上げます!


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/12訪問117回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

創造の自由について。--ムゲーシュが長ネギと蓮根を「発見」し、かれの南インド料理に取り入れたはなしをきっかけに。

ムゲーシュは、10月30日(土)のランチブッフェで、
「長ネギと鶏肉のカレー」を、
そして翌11月1日(日)で、
「蓮根とグリンピースのカレー」をふるまった。
ぼくはちょっとにこにこしてしまったよ、
ムゲーシュの無邪気な好奇心を感じて。
むちろんインドには、長ネギも、蓮根も存在しません。
ムゲーシュは、西葛西のスーパーマーケットで、
それらを「発見」し、おもしろがって、あれこれ実験をしてみて、
そして自分のレパートリーに加えたのだった。
いずれも、かっこよく仕上がっていて、
とくに「蓮根とグリンピースのカレー」は、
タマネギを炒めた後に、カシューナッツペーストを加えた
リッチなグレイヴィーでまとめてあって、
蓮根の食感とグリンピースの緑は、舌に、目に、
素敵なアクセントになっていた。


また、1日のブッフェには、「ボラ・ビリヤニ(ボラをスパイスでマリネして、
タンドール釜でローストした後に、コメとスパイスで炊き上げた、
ビリヤニ)」が燦然と輝いてもいて。
ボラははんなりした身の白身魚ゆえ、
スパイスでアクセントをつけて、表面をしっかり焼き固めることで、
内側のしっとりした身を包み、コメのなかに投入して、
釜飯さながらに蒸し炊き上げてあって。
上品で、リッチなおいしさで、たいへんに好評だった。


いずれの料理も、ムゲーシュにとっては、けっして
格別に野心的な試みではなく、ただのちょっとした好奇心のたまものであって、
しかもそれがオーセンティックなインド料理として仕上がっていて。
そこがまたとても良かった。





実は、東京のインド料理マニアたちには、
あるイデオロギー傾向があって、
「現地主義者」がたいへんに多く、
どちらかと言えば、ぼく自身もいくらかなりともそのひとりではあって。
そこには、できるかぎり現地インドそのままの料理を食べたい、
そんな願望と要求があります。
だからこそ、東京のインド料理マニアたちのあいだでは、
「正しい/まちがっている」の議論が絶えることがありません。
(あれはちょっと息苦しいですね。)
当然のように、「和様化、サイコー!」と言う、
そんな東京のインド料理マニアを、
ぼくは見たことがなく、会ったこともありません。


いくらか対照的に、大阪のインド料理マニアたちの多くには、
「わしがうまいとおもうもんが、サイコーじゃい!
現地的に正しいかどうか? 知るか、ボケ。
わしの舌が根拠じゃ!」という態度があって、
これはまたこれでたいへんに健全なことだとおもう。
なぜって、もしも自分という主体がはっきり確立していないままで、
現地に根拠を求めたところで、
たいへんむなしい結果が約束されていることは言うまでもありません。
すなわち、モンダイは〈東京のマニア 対 大阪のマニア〉ではなく、
料理人も、食べ手も、ひとしく
自分という主体が確立されていることこそがいちばん大事、
という(たいへん平凡な)はなしではあって。


ついでながら、ぼくをたいへんにおもしろがらせた出来事は、
(ぼくを含めた)東京のインド料理マニアたちの希望の星、
千歳船橋カルパシの黒澤シェフが、「ジャパニーズターリ」をふるまったとき、
多くの黒澤シェフファンたちが、褒め方に困っていたように見えたこと。
ぼくはその気持ちがよくわかって、おもわず笑ってしまったよ。
なぜって、東京のインド料理マニアたちにとっては、
少しでも現地の味に近づくことこそが賞讃の対象である、
と無意識におもっていて、またもちろん黒澤シェフもそのイデオロギーにのとった、
「われらが希望の星」であるとばかりおもっていたら、
ところが当の黒澤シェフは、さらに一歩先を行っていて、
なぜって、かれの作る「ジャパニーズターリ」の回の料理は、
「もしもインド人が日本料理を作ったなら、
こんなけったいでおもしろい”日本料理”を作っちゃうんじゃないの!??」
という創造の遊びを、いかにも楽しげに、実験したものだったから。
(とうぜん、これは現地主義をモノサシにして讃美できる作品ではありません。)
ぼくはかれのジャパニーズターリをいただいて、
おもしろくてたのしくて、
そのおいしさがまた魅力たっぷりにねじくれていて、
ぼくはその意匠にゲラゲラ笑いつつ
ぼくはあらためて黒澤シェフに惚れ直したもの。


ぼくはおもう、いちばん大切なことは、
現地主義でも、おれさま主義でもなく。
むしろ、きちんと主体が確立された料理人が
無邪気に愉しみながら創造を試み、
食べ手もまたしっかりした自分自身の美意識にかんがみながら、
その創造を味わい、おもいおもいの感想を投げかけ、
(稀なる僥倖にめぐまれた場合には、
両者が)生まれ変わったようなよろこびを得ることではないかしら。
おっと、ムゲーシュの長ネギと蓮根のはなしから、
えらくおおげさなはなしになってしまった。
もしもムゲーシュがこれを読んだら、きっと苦笑するだろう。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/11訪問116回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気3.8
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

素敵なordinary。

ムゲーシュがぼくに訊ねた、「きょうの(ブッフェの)料理、どう?」
ぼくは答えた、「いいね、どれもおいしい。
トータル・バランスがとてもいいよ。」
ムゲーシュは訊いた、「ビリヤニは?」
ぼくは答えた、「ordinary。(普通)」
ムゲーシュはゲラゲラ笑った、「お客さんはみんな、
きょうのビリヤニもおいしいおいしいって言うのに、
きみだけ、ordinary って言う!」


ムゲーシュのそのつぶやき方にはどくとくのニュアンスがあって、
ぼくは洞察した、"ムゲーシュにとっても、きょうのビリヤニは、
ordinary だったんじゃないかしらん。”
ただし、同時にぼくは公平のためにこうもおもう、
ムゲーシュの料理のアヴェレージは、
この半年ぐんぐん上がっていて、
いわゆる「普通」のレヴェルが高くなっていて。
だから、ムゲーシュのordinary なビリヤニは、
ぼくにとって、実はそうとうおいしい。


ムゲーシュのビリヤニは、シンプルなスパイス使いで、
お米のおいしさを最大限に活かした、いかにも南インドのヒンドゥーの
ビリヤニだ。しかもムゲーシュは、ビリヤニとプラオを厳しく峻別していて、
ビリヤニはあくまでもビリヤニであって、他方、
プラオを作るときは、林檎や葡萄やカシューナッツを入れて、
かろやかに華やかに仕上げる。
逆に言えば、ムゲーシュにとって、「ビリヤニなんだかプラオなんだか
わからないような炊き込みご飯」は、まったくだめなのである。
そこにムゲーシュの矜持があって、
ぼくは感心しその見識に学ぶものが大いにあった。


もっとも、ビリヤニは料理人の出身地、宗教、個性などによって、
さまざまなヴァリアントがあって。同時に、食べ手ひとりひとりにとっても、
みんなそれぞれ、「自分にとっての最高のビリヤニ」があるものだ。
ごく大雑把に言って、ムスリムの作るお肉たっぷりの豪快なビリヤニをこそ、
好む人もいるだろうし、ぼくもときどきその魅惑の世界を満喫する。
だから、ぼくはけっして「ムゲーシュのビリヤニはニッポン1」
などと言うつもりはないけれど、ただし、いつのまにかぼくにとって、
ムゲーシュのビリヤニこそがいちばんぼくにしたしいものになっていた。
そりゃあ、そうですよね、だって、
週に2回、過去3年間、食べ続けているのだもの。
しかも、実はぼくにとって、それはビリヤニだけのはなしではなく、
ラッサムもサンバルもムゲーシュが作るものこそが、いちばんしたしい。


それでもぼくは(まがりなりにも!)インドレストラン批評を書いているので、
(とくにビリヤニが格別に優れているわけではないけれど)、
内装、サーヴィス、そして料理、そのすべてが揃った、
東京最高の南インドレストランは、ラマナイヤ・シェフ率いるところの、
銀座アーンドラダイニングです、と、つねに伝えています。
だって、ぼくがどれだけアムダスラビー西葛西店を贔屓していようとも、
そんなことは読者にとっては関係のないこと。
そして、銀座アーンドラダイニングは、
これはもう南インド料理のメートル原器のような存在だもの。


ところが、人生、ときにおもいがけないことが起こることがある。
きのうの土曜日、アムダスラビーのランチブッフェのお客さんのなかに、
ヒップホップふうのファッションの青年がいらして、
かれはぼくに言った、「声、少し出るようになりましたね。
実はぼく、アーンドラの料理も好きだけど、
でも、アムダスラビーの料理の方がもっともっと好きです。」


ぼくは一瞬うろたえ、そしておもった、
”あ、この人はぼくの食べログレヴューの読者さんなんだ!
ありがとうございます、ぼくの怪しい文章を読んでくだすっていて。”
しかも、あろうことか、あの、アーンドラダイニングよりも、
アムダスラビー西葛西店の料理をこそ好きだなんて!
ぼくは心のなかで詫びた、ごめんなさい、ラマナイヤ・シェフ!!!
ぼくはわかっています、
あなたの料理には無限にすばらしい巨匠の円熟があり、
他方、ムゲーシュ率いるアムダスラビー西葛西店の料理は、
若さと情熱、ただがむしゃらに多彩な表現があって、
毎回毎回そうとうおもしろく、
たいへん南インドらしい悦楽的おいしさがあるとは言え、
ただし、けっしてあなたの料理と同列に並ぶほどの高みはたぶん、ない。
でも、ぼくはもちろんうれしかった。
うっすら涙で目頭がうるみさえした。
だって、かれは、ぼくの愛するムゲーシュの料理を、
そこまで高く評価してくだすったのだもの。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/11訪問115回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

「喉風邪には、黒胡椒が効くんだよ」と、ムゲーシュは言った。

先日月曜日の、大好きな女友達との横浜・関内~伊勢佐木町デートを、
ぼくは二週間まえからたのしみにしていたものだけれど、
当日、朝起きたら、ぼくの声はほとんど出なくなっていた。
発熱もなく、鼻水も出ないし、体がダルいこともない。
ただ、声がほぼ出ないのだ。
ぼくはうろたえた。朝食を食べたら声は戻るかな、と、おもったけれど、
しかしそれも叶わなかった。あせった。かなりあせった。
それでもぼくはデートを挙行した、
(だって、ぼくはその日を超たのしみにしていたのだもの)。
彼女はぼくと会って、ぼくのしゃがれ声を気遣いつつも、
ぼくが青江美奈の『伊勢佐木町ブルース』を歌ったりすると、
けらけら笑ったものだった。
ぼくらはデートの途中に数回、
ぼくが持参したヴィタミンCカプセルをふたりで飲み、風邪への抵抗を試みた。
むかしもいまも関内、伊勢佐木町は、デートの定番。
声はほぼ出なかったもののこの日は、とってもたのしかったものの、
しかし、日が暮れた頃に、声がまったく出なくなってしまって、
さすがに往生したものだ、それでもたのしかったけれど。
翌日おそるおそるメールで彼女に訊ねたところ、
さいわい彼女に風邪が移ることもなかった。


きのう木曜日の朝11時まえ、ムゲーシュが電話をかけてきて、
ぼくに訊ねた、「sweet cornは、日本語でなんて言う?」
ぼくは 全身全霊を振り絞ってしゃがれ声で答えた、「toumorokoshi!」
ムゲーシュはぼくの声をいぶかしがって訊ねた、「どうしたんだ?」
ぼくは答えた、「I lost my voice, because I cought a cold.」
ムゲーシュはぼくに同情しつつも、訊ねた、「それでsweet corn は、
日本語でなんて言うんだ?」
ぼくは魂を振り絞るように声を限りに叫んだ、「toumorokoshi!」
ムゲーシュは訊ねた、「え、tamarakashi?」
ぼくは叫んだ、「No, to-u-mo-ro-ko-shi!」
こういう応答を繰り返すこと数回、
ようやくムゲーシュは、toumorokoshi という日本語を理解した。
たぶんムゲーシュは、ぼくをいじって遊びたかったのだろう。


明けて翌日の、きょう金曜日の朝十時半、
ムゲーシュはまたぼくに電話をかけてきて、
「銀行から届いた書類に記入して返送しなくちゃいけないんだけど、
日本語をちょっと手伝って欲しい」と言うのだった。
ぼくはアムダスラビーに行った。
スタッフはみんなぼくのしゃがれ声に笑った。
ステファン・ラジは、いつもより摩り下ろし生姜をたくさん入れたチャイを、
ぼくにふるまってくれた。
ぼくがムゲーシュに届いた書類を片付けると、
ムゲーシュはお礼に、黒胡椒たっぷりのマトンカレーをかけた、
カレーライスをふるまってくれた。
そして食後に、ブラックペッパーをどかどか入れた、
ラッサムスープを中サイズのボウルで出してくれた。
ラッサムスープは、黒胡椒の量がものすごく、
トマトやタマリンドの酸味を覆い尽くすほど。
一口飲むと、喉に黒胡椒と赤とうがらしのキックが効いて、
喉に軽く痛みが走る。
二口飲むと、顔中の毛穴から汗が噴き出す。
いわゆる「ペッパーラッサム」ではあって、
それはアムダスラビー西葛西店の土日&祝のブッフェでもときどき出すけれど、
しかし、ここまでどかどか黒胡椒をふんだんに使ったラッサムは、
ぼくには生まれてはじめての経験だった。
ムゲーシュは言った、「ブラックペッパーは、喉風邪に良いんだよ、
抗菌作用があるからね。逆に、風邪のときにラッシーとか、レモンジュースや、
ビールなんかは飲んじゃだめ、体を冷やすからね。
きっと、あしたには、きみの声も戻ってくるよ。」


なお、ぼく自身は必ずしもアーユルヴェーダの熱烈信奉者というほどではない。
理由のひとつは、東京にはあまりにも大雑把で楽天的な、
「おもに日本人の、そして多少はインド人の、
自称アーユルヴェータ紹介者」がいて、
まじめなインド人たちを嘆かせていることを、知っているから。
かといって専門的な施設は、少なくともぼくの知るかぎり東京にはなさそうだ。
もっとも、そんなぼくであってなお、切り傷や股擦れに、
ターメリックパウダーをまぶせばたちまち治ることも知っている。
皮膚のかぶれにレモン汁を塗ることの効用も。
そういう知恵はインド人ならば誰もが持っていて、
かれらは自分たちの治療文化に自信を持っている。
インドでは、一方でいわゆる現代的な医療も先進的で、
価格が安いので外国人がインドで難しい手術を受ける流行さえあるのだけれど、
それでいて同時に、インドでは伝統医学もまたしっかり定着していて、
その共存に、ぼくはインドのゆたかさを感じる。
南インドの専門施設で、まず最初にその人の体の状態を診てもらって、
まさに自分自身の体の状態にあった施術を受けながら、
一定の時間を過ごすことは、
心にも体にも良いだろうな、ともおもっている。


もっとも、インド人料理人仲間のなかには、
こんなことを言う人もいる、
「アーユルヴェティック料理をまじめに作ると、
スパイス使いに制限がかかるから、たいしておいしくないよ。」
ぼく自身はこの話題について経験知が乏しいゆえ、
発言資格はほぼないけれど、
ムゲーシュがぼくのために作ってくれた、
マトンカレーとラッサムス-プの黒胡椒使いはめちゃめちゃ大量で、
まったくもって「スパイス使いに制限がかかる」なんてものでなく、
それどころか、まったくもってとめどない大量使いである。
ぼくはあらためて、アーユルヴェーダの奥深さを身をもって垣間見た。


ついでながら、ぼくはよくたわむれに、
ムゲーシュの頭や、上半身をツボ・マッサージしてあげる。
ぼくがマッサージすると、ムゲーシュはたちまち気持ち良くなって、
ムゲーシュの二本の腕の、柔毛がふわりふわりと立ちはじめる。
ムゲーシュは感心して、ぼくに訊ねる、
「日本人はみんな、こんなマジックができるのか?」
ぼくは答えに窮する、だって、ぼくのマッサージなんて、
庶民向けの本を三冊ばかり読んだだけの自己流だもの。
そしてぼくはおもう、
ムゲーシュとぼくは似た者同士だな、って。
いずれにせよ、黒胡椒の薬効はぼくの喉にも効いているかもしれない。
いま、ぼくの声はほんの少し、戻ってきているみたいだもの。


風邪を引き始めの人は、アムダスラビー西葛西店に、
夜いらして、なにかの料理とともに、
単品でラッサム・スープを「風邪をひいているので、
黒胡椒を効かせてください」という注文つきで、
オーダーするのも良いかもしれません。
もちろんヴィタミンCの回数を分けての大量摂取
(1日3g~9g以上)もとっても有効です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2019/11訪問114回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ひとつの場所に、できること。

大切なことのすべてはレストランで学んだ。
いかにもどこかで聞いたことのあるような陳腐な言い方だけれど、
でも、ぼくはそんなことをつくづくおもう。


朝9時過ぎ、星の数ほどのレストランで、
誰かがモップでダイニングの床を磨き、
レジスターのなかに紙幣と小銭を準備し、
キッチンでは料理人が慣れた手つきで体を動かし、
新鮮な食材を扱い、組み合わせ、
やはていくつもの鍋が、かぐわしい香りをたてはじめる。
ナイフ、フォーク、スプーン、グラス、
皿はすべて磨き上げられている。
二時間後には数多のレストランが店を開け、
お客たちがまばらに来店したり、
あるいはいっせいに詰めかけ、
はたまた、スタッフがどれだけ待っても、
お客はひとりも来なかったりする。


かつてある歌手はこんなことを言った、
「お客様は神様でございます。」
この言葉は多くの揶揄や嘲笑に迎えられもしたものだ。
「なんて偽善的な言葉なんだ!??」
「客に媚びるのもほどほどにしろ!」
「神様からカネを取るのか!??」
けれども、それはあまりにもあさはかな理解というもので、
その言葉の真意は、お客が来てくれたり来てくれなかったり、
拍手喝采に迎えられたり、ブーイングにさらされたり、
はたまた誰にも相手にされなかったり、
そういうことは、けっしてあらかじめわかることではなく、
まったくもって不可知な事柄であって、
すなわちそれは神のみぞ知ることなのだ。
すなわち、正確に言えば、けっしてお客様が神様なのではなく、
お客さんの反応こそが、誰も知りえない運命という名の、答えなのだ。


なるほど繁盛しているレストランには、どこも理由がある。
おいしさ、驚き、おしゃれ、居心地の良さ、新奇性、値段に対する満足度・・・。
ただし、それらの要素がなにかしら実現しているかどうかを決めるのは、
個々のお客であって、店側がどれだけ訴えたところで、なんの意味もない。
なぜって、人はそれぞれ感じ方も、求めるものも違う。
たとえ、経営者がいくら成功しているレストランのスタイルをまねたところで、
しかし、「柳の下にドジョウが何匹いるか」、
そんなことはあらかじめわかりはしない。


アムダスラビーはTMVS FOODSのピライ・マリアッパンが創設した。
かれの志はたいへんに高かった。
リアル・タミルナドゥ料理を格安に提供すること。
とくに土日&祝日のランチブッフェはたいへんに本格的で、
かぐわしく、すばらしいものだった。
ただし、すでに南インド料理をよく知っていて、愛している人にこそ
アピールするものの、しかし、少なからずのビギナーたちには、
「酸っぱい料理が多く、多くのカレーにコクがない」
などと批判にもさらされもした。
そんなわけでアムダスラビー西葛西店は、創立から3年間ほど、
吹けば飛ぶような極小利益しかあげられなかった。
初代料理長は、あの、マハリンガム。
二代目は、2ヶ月間の契約だったものの、(現ヴェヌスの)ヴェヌゴパール。
3代目は、ディナサヤラン。
いずれも一流の料理人たちである。
場所は駅近。味は本格、値段は格安であるというのに、
土日のランチブッフェでさえも、当時は30人を少し越える程度。
しかも、平日ランチも20人を越える日は少なく、
ディナータイムにいたっては、いつも閑散としていた。
スタッフはみんな、不思議がり、はかなんだものだ。
なぜだ!?? どうしてだ? こんな理不尽があっていいのか!??
けれども、現実は現実である。
いまにしておもえば、当時のアムダスラビーは、
店側が発する商品メッセ-ジが、十分な数のお客(および潜在お客)に、
うまく伝達されていなかった。店がいったいなにをやっていて、
なにを目指しているのか、それがけっして十分に伝わってはいなかった。
おまけに利益が極小ゆえ、トイレットの便座は壊れたままで、
あろうことか、ボルトを通してなんとか利用に耐えるようにしたままだった。
(この状態で、美女客を呼ぼうとしても、それは無理というものである)。
そもそも南インド料理は、マスコミでこそ話題になりやすいものの、
しかし、いまだにそれほどポピュラーなものではない。
あるロンドン育ちの英国人は言った、「わたしは東京へ移住して、
アムダスラビーへ来て、はじめて南インド料理を知りました。」
エー・ラージ、ダバ・インディア、アーンドラキッチン、
ダルマサーガラ、ニルヴァナム、ケララの風・・・
それら00年代の先駆的レストランの成功の影には、
すさまじい奮闘があったことだろう。
だって、インド人タウンと呼ばれもする西葛西で、
しかも2010年代半ばの創業でありながら、
アムダスラビーは、たいへんに苦労をしたものだもの。


開店3年を経て、マリアッパンはやむなく経営を手放し、
IT関係のキャリアのご主人とインターナショナルスクールを経営する奥様の、
ゴヒル夫妻が、新たに経営者になった。
かれらは内装もいくらか綺麗にして、トイレットを改善し、
換気を改良し、ダスキンと契約し徹底防虫をおこなうようにした。
やがて、おもいがけず風向きが変わった。
いくつかの幸運があった。
食べログがカレー百名店に選んでくれたり、
HiHi Jets が来店してくれたり、
『モヤモヤさまぁ~ず』が放送で採り上げてくれたり・・・。
料理人は、ムゲーシュとクマールのふたりシェフ体制になっていた。
(その後、東日本橋店が開業するとともに、クマールはそちらに転籍し、
西葛西店はムゲーシュひとりでヘッドシェフを務めるようになった。)


それからというもの、
土日のランチブッフェには開店まえから数人の待ち客が出る。
閉店まで、ほぼ満席が続く日も少なくない。
平日のランチのお客さんも増え、
ディナーは基本的にはやや寂しいとはいえ、
それでも週末にはスタッフを披露困憊させるほどの客入りの日も、
ぼちぼちある。
それでも桜が咲けば桜に負け、台風が来襲すれば、
たちまち客は減るとはいえ、それはどこの店も同じだろう。


まず、スタッフ自身がとまどい、不思議がった。
「ウケてんじゃん、アムダスラビー!??
おれたち、稼いでるじゃん! 
(おれたちの給料は安いけど。)」
ついでながら、週末ランチ限定の準スタッフの某は、
まったくのヴィランティアである。
お客さんの入りが良くなると、
スタッフも自信を持つようになるもの。
とくにムゲーシュは、ひとりで料理長を務めるようになってから、
最初の1ヶ月こそ努力が空回りして同僚に煙がられたものだけれど、
しかし、あっというまに見る見るウデを上げていった。
いまではムゲーシュは堂々たる一流の料理人であり、しかも若さがあって、
新しいレパートリーを増やす遊び心と冒険心がある。
おまけに、このごろはダイニングにも出て、
カタコトの怪しい日本語を駆使して、
お客に笑顔で挨拶もするようになった。
ぼくはつくづくおもった、ウケるということは、
人を、ひいてはレストランを、成長させるものなんだなぁ。


また、アムダスラビーのお客さんも、
なんとなく、アムダスラビー好きらしいキャラクターがある。
構成は日本人客6割で、インド人客3割、その他・外国人1割。
日本人のお客さんたちも、外国滞在経験があったり、
旅行好きだったり、はたまたなにかしら異文化好きの人が多い。
年齢の幅も広く、美女客もやや増え、カップルも、
そしてコドモ連れのお客さんも多い。
ダイニングに、いろんな言語が飛び交い、
日本人とインド人が、同じ料理を食べている光景は、
親日派のインド人たちをよろこばせている。
また、好奇心旺盛な日本人客のなかには、
インド人の盛り方・食べ方を興味深そうに、ちら見したりしている人も。
また、常連さんたちの多くはムゲーシュや給仕長のチャビラルと挨拶を交わし、
かれらを微笑ませる。
さらには、アムダスラビーをつうじて、インドの食や、
ひいてはインドの社会システムや重層的な文化に関心を持ちはじめる人もいる。
むろんそれはけっしてアムダスラビーに限ったことではないけれど。


そしてぼくは知る、レストランは ひとつの場所 であり、
その場所の可能性を生かすも殺すも、スタッフと客の相互作用であり、
さらに言えば、おたがいの(いくらかなりともの)意志疎通が
叶うか叶わないか次第であって。
けっきょくそれは最終的には、神のみぞ知ることなのである。


2019年11月2日(土)のランチブッフェは、
第2期、すなわち経営者がゴヒル夫妻になってから、
3周年記念のスペシャルブッフェだった。
小エビのビリヤニ、ハイデラバードスタイル。
チキン・スッカ・ワルワル。
(黒胡椒の効いた、すばらしいグレイヴィーが
骨つきチキンに染み渡ったドライなカレー。すばらしかった!)
マンタカイ・カーラ・カレー。
(上品でひかえめな酸味のグレイヴィーのなかに、
苦みスパイスのマンタカイがミステリアスな香りを放っています。)
チャナ・マサラ。
ダイコンとグリンピースのスパイシー炒め、ココナツの香り。
チキン・ラッサム。
インドコーヤドーフのてんぷら(=ボンダ)。
マラバール・パロタ(=薄く仕上げたうずまきパン)
蝶ネクタイパスタのサラダ。
クッキー・ハルワ。(デザート;クッキーをスウィートミルクで煮つめたもの。)
グレープジュース。


たいへん力のこもった優美な内容で、お客さんの入りも上々。
ぼくは、この日やむなく来れなかった常連さんたち数人の残念顔が浮かんだものだ。
なお、西葛西店は、3日(日)も、4日(祝)も、ランチブッフェをやります。
理想の来店時刻は、11時です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2019/10訪問113回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

Happy Diwali!

インドでは、祭りが生きている。
たんに季節の風物詩ではまったくなく、むしろ人びとをむすびつけ、
熱狂させ、陶酔させ、それまでの単調だった時間を生ていた自分が死に、
新しい自分がおもいおもいに甦り、世界は圧倒的な活気に包まれる。
去る10月27日(日)、ランチブッフェは、
光の祭りディワリを祝したスペシャルメニューだった。


開店直前、ムゲーシュはすべての料理を作り終えて、
スマートフォンの画面を見せながら、
いたずらっぽく、ぼくに言った。
「見ろよ、東日本橋店のきょうのブッフェは、オムレツビリヤニだぜ!??」
ぼくは言った「Feeling of rivalry?(対抗意識、丸出しじゃん!)
でも、東日本橋店も、Idlyもあるし、ペッパーチキンもあるし、
おいしそうじゃん!」
ムゲーシュは言った、「まあな。でも、ディワリの日に、
オムレツビリヤニはないだろ?」
ぼくは笑って言った、”I know,I know, competition is important.”
ぼくはわかってる、
ムゲーシュはきょうの自分の料理に自信まんまんなのである。


なるほど、ムゲーシュが自慢したくなるのも無理はない。
骨つき羊のビリヤニは、香り良く、食べ応え十分。
骨つき羊のスープ(パヤ)は、澄んだスープでありながら、
うまみが深い。
カンチープラムIdly+ミントチャトニは、
ふかふかの蒸しパンに食感のアクセントが楽しく、
美しく明るい緑色のチャトニがアクセントを添える。
トマトラッサムは、いかにもラッサムらしい澄んだうまみがあり、
じゃがいもとピーマンのサンバルは、サンバルらしい香りを立てる。
スタッフド・マサラ・ボンダは、内側のじゃがいもがユーモラスで、
ルシアンサラダは、じゃがいやニンジンを優美なドレッシングでまとめてある。
セミヤ・サブダナ・キール(ヴァーミセリとタピオカのミルク煮)は、
上品な甘さで、いかにも南インドらしい趣がある。
ミックスフルーツジュースは、南国タミルの涼風を感じさせてくれる。
いかにもディワリらしい華やかさだ。


ぼくはかつてちょうどこのディワリの時期にインドを訪ねたものだ。
ぼくがデリーに降り立ったときが、ちょうどディワリの
(メインの日から遡って)十日ほどまえで、
その頃からもう街行くインド人たちは
キラキラのパッケージに包んだプレゼントを抱え、
いかにも幸福そうに街を歩いていたものだ。
テレビをつけても、”Happy Diwali!”と挨拶のように繰り返す。
ぼくは訪ねた、デリー、アグラ、ジャイプール、デリー、チャンディガール、デリー。
そしてデリーから南インドのチェンナイ行きの飛行機に乗って、
チェンナイに着陸したのが、ディワリ当日の夜8時。
ぼくを乗せた飛行機がチェンナイ上空にさしかかると、
夜空にはいくつもの花火が次々に打ち上げられ、
まるで、ぼく自身が祝福されているかにおもえたものだった。


インドは州ごとに言語は違うし、人それぞれの郷土愛も深く、
宗教も多様で、貧富の差も大きい。
人口の8割を占めるヒンドゥー教徒の社会にはカーストもあって、
それは法律上は過去のものであるとはいえ、事実上、
結婚を同じカースト同士でおこなうことを好む傾向などによって、
いくらかなりとも生きている。
すなわち、インド社会は縦にも横にもこまかく細分化されている。
結果、インド人が「インド人」としてのアイデンティティを強烈に感じるのは、
全インド 対 パキスタンの クリケット試合のときくらいではないかしらん?
むろん試合が終れば、ふたたび人びとの心はバラバラになる。
しかしそんなインドは、祭りの盛り上がりもまたすごいものがある。
春のホーリー、そして秋のディワリ。
いずれもヒンドゥー教徒の祭りだけれど、
それはほとんど全インド的な祭りになっている。
それはもう筆舌に尽くし難い、熱狂だ。
(インドのムスリムの人たちは、その時期、複雑な心境かもしれないけれど?)


なお、この日10月27日の西葛西店のランチブッフェは、お客さまも満席つづきで、
たいへんな盛り上がりだったし、しかもこの日はディナーもまた、
たくさんのインド人たちが食べにいらしたそうな。
むろんインド人にとっては、ディワリの日にどこのレストランで食べるか、
それはたいへん重要な事柄である。むろんアムダシラビーのスタッフたちもまた、
それは重々承知していて。スタッフはみんなプライドを大いに満足させつつ、
くたくたになるまで働いていた。


給仕長のサプコタ・チャビラルは感心したものだ、
「うちの、日本人のお客さんはみんなすごいね、
インドの祭りのことまで知ってる。」


余談ながら、日本は徳川幕府が宗教を警戒するあまり骨抜きにして、
さらには明治維新以降の近代化のなかで、宗教をかんぜんに過去のものにした。
以降、日本人にとって宗教は、一方で葬式ビジネスになりさがり、
他方で、知識人たちが戯れる教養の披露の対象になり果てた。
高度成長期にはカイシャが信仰の対象に見えさえした。
そんな堕落の果てに、1995年にはさるカルト教団による大規模犯罪まで生まれ、
結果、日本人は宗教に対する恐怖心まで植えつけられた。
それでも日本人にはちゃんと仏教意識が内面化されているゆえ、
ちゃんと道徳心もあって、宗教が形骸化されていても、
たいていの場合は困ることもなく、これはこれで見事なものだとはおもう。
他方、なるほど西側諸国では、宗教は前近代にこそ心の法であったものの、
近代においてその役割を近代法に譲り渡してはいる。
けれども、そんな欧米であってなお、
信仰は(その重要性を弱めながらも)いまだにしっかり生きていて。
たとえば、ロックンロールには、
土曜の夜のらんちき騒ぎを讃美する歌が数々あるけれど、
しかし、あれだって実は、日曜の朝には教会へ行く、
という暗黙の前提がひそんでいる。
さて、そんな日本では、(当然のように)ほとんどの祭りもまた形骸化されていて。
インド人の祭りへの熱狂は、ぼくにそんなことを考えさせてくれる。


ヒンドゥー教にはたくさんの神様がいて、
どの神様もまたキャラが濃く、途方もないことを平然とおこなう。
インド文化のゆたかさの由縁はあきらかにここにある。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/10訪問112回目

-

  • 料理・味-
  • サービス3.8
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
~¥9991人

最良のインド料理にはシティライフの刺激と、田舎暮らしの幸福の、共存があります。

先日、むかしよく一緒に遊んでいたフレンチレストランのソムリエさんから、
8年ぶりくらいに電話がかかってきた。
かれは挨拶がわりにぼくに言った、「いつのまにかスージーさんたら、
インド料理に、”ドはまり”しちゃって。知りませんでしたよ、
スージーさんがそこまでそんなことになっちゃっていたなんて!」
かれはひさしぶりにぼくの食べログを読んで、
かるく呆れるとともに、びっくりして、
そしてさいきんのぼくに興味をもって、
ぼくに電話をくれたようだった。


なるほど、かれが呆れるのももっともで、
実はぼくはインド料理は十代の頃から大好きだったものの、
ただし、00年代の後半ぼくは、むしろフランス・レストラン料理の探求にこそ夢中で、
そんなさなかに、ぼくはかれのおにいさん(シェフ)と出会って、
ひいてはソムリエのかれとも知り合って、
数年間たいへんしたしく遊んでいたものだ。
当時、ぼくがもっとも感心したことは、
フランス料理は、料理を「食材/加熱法/ソース」の構造で考えること。
しかも、その加熱法は、ソテー、ロティ(=ロースト)、グリエ(=グリル)、
ブレゼ、ラグー、ポワレ・・・など厳密に峻別されているのだ。
なんて合理的な分類だろう!
さすが、デカルトの国である。
ぼくは、料理における『方法序説』を学び、それはいまでも、
ぼくが料理について考えるときの考え方の基本のひとつになっている。
(文体が偉そうで、ごめん。)


もっとも、その後ぼくの住んでいる西葛西に、
インド人が増加し、それにともなったインドレストランの発展などもあって、
しかも、いつのまにかぼくはインド人レストラン関係者たちと
多く知り合ったこともあって、
ぼくはどんどんリアルインド料理の世界に惑溺していった。
さらに付け加えるならば、ぼくがいくらか貧乏になったことなどもあって、
結果、いつのまにかぼくはフランス料理からかなり離れていた。


ぼくはかれに訊ねた、「さいきん、どうですか?」
かれは言った、「いやぁ、けっこうたいへんですよ。」
ぼくは言った、「景気、悪いですものね。でも、
そうは言ってもカネ持ちは一定数いるし、
一定数のカネ持ちはむかし以上にカネ持ちだから、
そこのパイを獲ってゆけば、なんとかなるでしょ。
極上ワインを最良の状態でふるまって、
おいしいフレンチとともに提供する。
人生、最良の幸福のプレゼントじゃないですか。」
かれは言った、「まぁ、そうなんですけどね。
さいきんはなかなか高いワインも売れないですよ。
そもそもこのごろはフレンチじたいが話題が少ないですもん。」
ぼくはちょっぴり不意を突かれた、「そういえば、そうですかね。
ぼくのイメージでは、王道フレンチのアラジン、
マノワールダスティン。たまたまコンテンポラリーフレンチの、
カンテサンス、レフェルヴェソンス、ハジメ。
低価格ビストロのラミティエ。
そんな感じ。ぼくが知ってるくらいだから、
いまもどこもご繁盛でしょうけれど、でも、その後現れた
ニューカマーって、あんまり聞きませんね。
もっとも、ぼくの耳に入って来ないのは、
このごろのぼくがフレンチに怠惰なだけでしょうけど。」
とかなんとかしばらく話して、どちらからともなく、
「ひさしぶりに会いましょうよ」というような挨拶で、電話は終った。


その後、ぼくはひさしぶりにフランス料理について考えた。
おもえばフランス料理って、なんとも独特な歴史をたどったものだ。
ルイ王朝の時代、テーブルの上には豪華絢爛な料理が並んだものだけれど、
ただし、あの時代にはまだソースは独立していない。
ソースの独立はナポレオンの没後で、
赤いソース・アメリケーヌと白いベシャメルソースが生まれ、
エッフェル塔の頃に(半量に煮詰めてコクを出した)デミグラスが生まれた。
ただし、この時代にはまだフランス料理は
けっして世界1の美食の座は獲得していなくって、
むしろロシア料理が燦然と輝いていたし、
はたまたウィーンの料理をはじめ、ハンガリー料理など、
多くの欧州料理が競いあっていたものだ。
さて、そのフランス料理が世界1の美食の座を獲得したのは、
20世紀初頭に、ホテル王リッツの要請で、
料理人エスコフィエが各地方料理を体系化し、
厨房のフォーメーションの基礎を築いてからのこと。
1973年にその名をつけられたヌーヴェルキュイジーヌが、
それまで薄暗い地下厨房の親方仕事だった料理人の地位を、
芸術家の位置にまで高めた。ポール・ボキューズが、
フランス料理の親善大使だった頃のこと。
さて、こうして料理を芸術化したフランス料理は、
それぞれの料理人がおもいおもいに自分にとってのアートを追及するあまり
結果、フランス料理がフランスの料理である必然性が薄れていった。
実際、00年代話題になったエルブリは、スペイン料理を刷新したとはいえ、
それはフランス料理の手法を極限まで使った、
(しかもおいしさよりも驚きを追求する)ユーモアだった。
はたまたフランス料理好きのあいだで近年話題のNoma もまた、
コペンハーゲンのレストランである。
すなわち、いまやフランス料理は、
フランス料理の技術と歴史を知った料理人が、
自分の創造性を示すものであり、
逆に言えば、どこの国の料理人が、
どういう世界を描いてもまったくかまわないのである。
おもえば、これはかなり奇妙なことではある。


もっとも、国土としてのフランスは農業国であり、
人気のプロヴァンス地方のみならず、田舎暮らしのゆたかさもまた潤沢にある。
むろん各地にはゆたかな田舎料理がさまざまに存在している。
しかし、どういうわけか、フランスレストラン料理は、
どんどん都市的(=大脳的)な方向を推し進めていったあげく、
田舎料理のゆたかさと縁を切っていった。
レフェルヴェソンスにせよ、ハジメにせよ、
はたまたエルブリにせよ、Nomaにせよ。
ぼくはおもう、この傾向は(おもしろいとはいえ、
やってる方は)苦しいだろうなぁ。
だって、実験につぐ実験では、心の休まるときがない。
音楽だって、ブーレーズやクセナキスばかりではくたびれてしまう。
ときには街角のミュゼットアコーディオンが恋しくもなるだろう。
小説だって、ジェイムス・ジョイズの『ユリシーズ』や、
ウィリアム・バロウズみたいな方向では、
そういうご趣味のマイノリティ以外は離れてゆくだろう。
文学だって、たとえば西加奈子さんの『漁港の肉子ちゃん』みたいな、
誰もが読んで楽しい作品があってこそ、シーンも盛り上がるというもの。


ぼくはおもう、もしかしたら近年のフランス料理界には、
バランスの良いナヴィゲーターがいないんじゃないかしらん。
『ミシュランTOKYO』も影響力ないし。
もしそうだとしたら、それはたいへんにもったいないことだ。





そんなことをつらつら考えるに、
ひるがえってインド料理には、まったくもってそんな分裂は存在しない。
いくらインドの十大都市が世界の都会と遜色がなくなったとはいえ、
しかしながら、つい三十年まえまでは、都市を象が歩いていたような国である。
しかも、インド人はみんなおもっている、ほんとうにおいしいインド料理は、
田舎にこそ息づいている。
なお、歴史を振り返れば、
インドは大英帝国に殖民されたことによって、
アジアのなかでもっともヨーロッパの影響を受けた国である。
しかも、その過酷な150年~200年を体験してなお、
インド人たちは誇りとプライドを捨てなかった。


インド料理と欧州料理を比較すると、興味深いことが多々ある。
たとえば、インド料理におけるソースの独立は、
ひかえめに言っても(インドの江戸時代)ムガル帝国の御世であって、
これはフランス料理よりも2世紀ほど早い。
したがって、インド料理が欧州料理に与えた影響もまた、
あながち無視できない可能性がある。
逆に(?)、たとえばインド料理のコルマは、おそらくは、
英国人が持ち込んだシチューのインドアレンジだろう。
はたまた、英国人が大好きな紅茶をインド人もまた飲み始めたら、
インド人はスパイシーチャイを作った。
同様の話題では、インド食材店に行けばラスクや、
スナック菓子としてのパイも売っていて、
それはあきらかに英国の影響ながら、ただし、そこにはクミンを混ぜ込んで、
風味をつけたりして、ちゃんとしっかりインド化がなされている。
そう、インド人は自分たちの伝統的な食に、圧倒的な自信を持っていて、
どんな境遇にあっても、そしてたとえ異国の料理の影響を受けるときでさえも、
それをしっかりインド化せずにはいられない。
そこに息づいているものは、土着文化への誇りである。
たとえば、タンドール釜のような、あんな危険で原始的なものを、
いまだにかれらが使っていることもまた、
あれを使ってこそ味わえる風味とおいしさを
けっしてかれらが手放さないからだ。
ぼくはそれをとても素敵におもう。


南インド料理の中心には、
ごはん、ラッサム(酸っぱい胡椒汁)、
サンバル(けんちん汁?)、
ポリヤル(野菜炒めココナツ風味)の、
黄金の基本形がある。
そこには質素で伝統的な、かぐわしいおいしさがある。
これだけで十分、ひなびたおいしさが味わえるのだけれど、
たとえば、アムダスラビーの土日ランチブッフェでは、
贅沢にビリヤニをこしらえ、ダル(豆のスパイシーポタージュ)や、
アヴィヤル(野菜のヨーグルトシチュー)や、
肉や魚のカレー、はたまたワダなどの揚げ物、サラダ、
そしてデザートにケサリ(きんとん)や、
パヤサム(タピオカのミルク煮、ドライフルーツとナッツ入り)などを添え、
マンゴージュースや、薔薇の香りのミルクなどをつける。


ムゲーシュ料理長は、ハリウッド映画大好きの都会っ子なので、
たとえば、ときどきビリヤニを炊くにあたって、
肉の脂身の水煮ダシを用いることもあって、
これは伝統的な調理法にはない新機軸だ。
はたまたムゲーシュは、サラダを英国風にアレンジしたり、
デザートに、キャラメルカスタード(=プリン)をこしらえたりする。
と同時に、ムゲーシュは、ラッサムとサンバルが惚れぼれするほど巧い。
そう、南インド料理の土着的伝統への誇りと自負がそこにある。


ムゲーシュ料理長による、アムダスラビーの土日ランチブッフェは、
たんに毎回毎回ラインナップが変化するのみならず、
実は、毎回、新しい「南インド料理の世界」を提示していて。
ムゲーシュは料理を通じて、毎回、お客さんに語りかける。
「どうですか? こういう南インド料理の世界もなかなか良いでしょ?」
これがぼくにとっても、常連さんにとっても、
おもしろくてたまらない。


もしもこのレヴューを読んでおもしろがった方は、
たとえフランス料理好きであっても、良かったら、
アムダスラビーの土日ブッフェにいらしてください。
魅惑のインド土着文化と、ちょっぴりの創造性が、
なかなかにどくとくで、おそらく他に類を見ません。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2019/10訪問111回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

台風ランチブッフェ営業、2019年10月12日(土)の記録。

ゆうべから大型台風19号の関東上陸が予測されていたので、
「きょうの営業をどうするのか?」について、
経営者のゴヒルさんとスタッフのあいだでいろいろ議論があった。
臨時休業するか? 営業するか?
仮に店を開けるとして、
ア・ラ・カルトのみで営業するか?
はたまた、いつものようにブッフェ営業するか?


いくら Super Typhoon Hagibis の上陸とはいえ、
12日ランチのタイミングではまだ名古屋である。
また、スタッフはみんな職住接近なので、
(電気、水道、ガスの供給さえ通常どおりならば)、
レストランを開けることじたいはたやすい。
ただし、営業しても利益は出ない。
そもそもアムダスラビーの土日の1200円ランチブッフェは、
アムダスラビーの広報的性格のあるサーヴィスで、
アムダスラビーの「顔」である。
ただし、食材原価をそうとう使っている関係上、
お客さん40人が、損益分岐ラインである。
さすがに台風の日に40人以上ものお客さんが来てくれるとは、
おもえない。けれども、せっかく台風のなか来てくださったお客さんにとって、
店が閉まっていたならば、そうとうショックだろう。
逆に、営業していればお客さんもまたうれしいだろうし、
こういう日の食事はいつもにも増して記憶にも残るのではないかしら。
また、店の都合で土日のブッフェをやったりやめたりしては、
お客さんの印象も悪くなる。それは避けたい。


けっきょく、ムゲーシュ料理長の意向で、
通常ブッフェ営業で、ただし初回調理のみの、追加調理なし。
料理がはけた時点で、早仕舞いという仕様となった。





ブッフェの内容は、ざっと以下のとおり。


Navaratan Pulao
果実とナッツ入り炊き込みご飯、「7つの宝石」
(ビリヤニとは違う、プラオならではのかろやかさ、華やかさがすばらしい!)
Chennnai Saba Fish Korma
鯖のリッチでゴージャスなシチュー。(グレイヴィーの奥行感が高級!)
Channa Masala
ひよこ豆のカレー
Keeala Avial
冷製 野菜のヨーグルトシチュー(エレガント!)
Keerai Bonda
ほうれんそう入りひよこ豆のコロッケ
Potato Podimas
じゃがいものスオアイシー炒め
Pepper Rasam
ラッサムスープ胡椒風味
Methi Kulcha
ほとんどナン、メティの香り
Macaroni Salad
マカロニサラダ
Rava Bulfi
セモリナ小麦のスウィーツ(上品!)
Rose Milk
薔薇の香りのミルク

総じて、たいへんに華やかで、
レヴェルの高いおいしさだった。

さて。お客さんの入りはどうだろう?
この日、餃子の大阪王将も、牛丼の松屋も、
ドトールコーヒーも、はたまた
K's Martもフジマートも、
そして噂では、西葛西のインドレストランも、
アムダスラビー以外はすべて臨時休業らしい。
アムダスラビー以外のお店で営業しているのは、
ご近所ではお隣のLOWSONさんくらいだ。
もっとも、いまのところ風こそそうとう強いものの、
その風とてけっして
木々の小枝という小枝を折りまくって吹き荒れるというほどではなく、
せいぜい街行く人たちの開いた傘の形を
逆さにしてしまうほどの、強風である。
ましてや雨はそれほどではない。
ぼくは瀬戸内育ちなのでガキの頃から台風には慣れていて、
このていどならば屁でもない。
(きょうの夜にはどうなるかわからないけれど。)


それでも用心深い行政は、万が一の高潮を警戒して、
朝10時半にこの地域に避難勧告まで出しているのだ。
なるほど、この台風は発達が速いらしく、
それゆえの警戒警報ではあるらしい。
もっとも、堤防が決壊するか、
あるいは堤防を上回る高潮が来ない限り、
こちら江戸川区や江東区、ひいては隅田区、葛飾区は安全であり、
逆にもしもそんな高潮が訪れたなら、この地域はほぼ全滅に近い?
(後註:この日の夜までに江戸川区では、
3万人以上の人たちが、指定の十箇所の公共施設に避難したそうな。)


スタッフはみんな口々に言った、
「きょうはお客さん、何人くらい来てくれるかね?」
「3人とかだったら寂しいね。」


開店まえに来てくれたのは埼玉在住の常連さんだった。
われわれは拍手喝采でかれを迎えた。
つづいて11時5分に、西葛西在住の男性客。
11時20分、ご夫婦に赤ちゃん連れ。
11時50分、日本人男性おひとりさま。
12時2分、日本人男性おふたりさま。
12時5分、インド人客15人様!
12時15分、日本人男女おふたりさま。
そして12時20分に、ムンバイパレス&ムンバイキッチンの
owner chef の「リッチマン」バサント。
(先々週の週末、アムダスラビーのランチブッフェに、
マサラドーサをご所望のお客さまが遠方からいらして、
しかしその時間にアムダスラビーではマサラドーサをご提供できないので、
ぼくは彼女らをムンバイパレスにご案内したのだった。
バサント・シェフは、そのときのお礼も兼ねて、
ライバル店たるアムダスラビーの最近の味を視察に、来店なさったようだ。
バサント・シェフは、あれこれ口にして、OK、OK、うんうん、
OK、いいね、と笑顔で召し上がっていた。)
午後1時まえに、ネパール男性客3人さま。
1時5分に、インド人男性おひとり。
計 29人の来店で、初回の調理も売り切れ、
きょうだけは午後2時に臨時早仕舞いとあいなった。
気がついたら、東京メトロ東西線も、
東陽町ー西船橋、終日運休になっていたことだし。
なお、この日首都圏の鉄道のほとんどは終日運休したようだ。
他方、都バスはしっかり運行していて、頼もしかった、


いつもの半分ほどのお客さんの入りとはいえ、
台風の日だもの、たいへんありがたい上出来の入りではないかしら。
スタッフは全員、満足そうに後片付けをした。


給仕長のサプコタ・チャビラルが、驚いた顔で、
携帯電話に流れてきたニュース映像を見せてくれた。
暴風で電柱が倒壊し、屋根瓦が吹き飛ばされたり、
はたまた全壊し、クルマが横転している。
どうやら竜巻が起こったらしい。
千葉県市原市の映像だった。
つづいて、八王子市の道路のマンホールからは
勢いよく水が噴き出し、
渋谷駅前のスクランブル交差点には強風が吹き荒れ、
人影もほとんどなかった。


さて、あした13日(日)のランチブッフェは、
開催できるかしらん? 
むろんこれは現時点ではなんとも言えません。
どうぞ、アムダスラビーのツイッターアカウントなどで、
最新情報をご確認ください。





後記) アムダスラビー西葛西店は、けっきょく、
10月12日(土)のディナーは臨時休業した。
西葛西の(ぼくの住居を含む)一部地域では、
12日夜から13日朝4時頃まで、停電&断水した。
ぼくはアホなので水の買い置きもしてなくて、
結果、真夜中に暗闇のなかウィスキーを舐めて、一夜をしのいだ。


明けて13日(日)は、台風一過、からりと晴れ渡った秋晴れ。
ふだんのブッフェは前日夜にけっこう仕込みをして、
翌日朝、すべての料理を仕上げる。
ところがきょう13日は、前日夜臨時休業したため、
仕込みがまったくできていない。
そんなかなムゲーシュ料理長は、13日朝、即興で以下のメニューを決め、
2番手のステファン・ラジとともに一気呵成に調理にとりかかった。

Kusuka Biryani(Simple Biryani)
Kai Kari Mandi
Onion Bonda
Dal Tadka
Chettinad Chicken Curry
Tomato Rasam
Carrot Potato & Channa Poryal
Green Salad
Lemon Juice
Sabu Dana Payasam

こういういかにもタミル州のスタンダードなメニュー構成が、
実は、とっても素敵なんですよ。
メニュー上は、なんにも特別なものがないのだけれど、
でも、食べるとおいしい。
とってもあたりまえな、それでいて素敵な、
タミルのブッフェがここにある。
アムダスラビー公式ツイッターにきょうのブッフェの告知が遅れたこともあり、
(なんと告知はきょうの朝11時頃だった)、
開店からしばらくのお客様の入りはそこそこだったものの、
12時過ぎからは続々と入って、
最終的には、ほぼ標準的な売り上げとなった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/10訪問110回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

南インド発、世界行き。

インド料理好きの人のなかには、
異文化好きの人が多い。
われわれは(!)、他人の文化に関心をもち、
後先考えず、よそんちの世界に首をつっこんでみることが
好きなのだ。
とうぜんのことながら、そんなわれわれは、
浅草でヘソを出してサンバを踊る日本人のおばちゃんや、
横浜市金沢区六浦でフラダンスを踊る日本人のマダムを、
いくらかなりとも、他人とはおもえない。
いや、あけすけに言えば、「彼女たち」は「われわれ」であり、
「われわれ」は、「彼女たち」なのだ。


アムダスラビーの土日&ときどきの祝日
ランチブッフェは、南インドへの入口であり、
かつまた世界の縮図です。
まず最初に、料理についてかんたんに触れておくと・・・。
10月6日(日)の、ボラ・フィッシュ・ビリヤニがどれだけ優美においしかったか。
チェティナド・チキン・カレーのグレイヴィーがいかに深みをそなえてすばらしかったか。
マラバールパロタが、はかないココナツの香りを放ちながら、
素敵に薄く、それでいてエッジはブリオッシュのようにクリスピーで素敵だったか。
しかもブッフェの全体がクオリオティ高く、このところの、
アムダスラビーのレヴェルの高さを見せつけていた。
お客さんも開店から閉店まで満席続きで、
しかもこのごろぼくは、アムダスラビーのお客さんの多彩さについて、
ちょっぴり得意におもう。


ぼくは日本育ちの日本人で、ずっと日本に暮らしてきたものの、
これまでおりおりにソウル、シンガポール、マレーシア、
香港、北京、ロンドン、
アムステルダム、マラケシュ、フェズ、カサブランカ、
ニューヨ-ク、ソウル、
ローマ、フィレンツェ、ニューデリー、ジャイプール、
チャンディーガル、チェンナイを訪ねたものだ。
外国を旅した後で東京へ戻って来ると、
ぼくは少しの寂しさを感じつつも、同時に、
かすかに醤油の臭いの混じった懐かしさと安心感を感じる。
好きだよ、日本、とおもう。
それでいて、長いこと日本に暮らしていると、
日本の社会システムに息苦しさを感じてしまう。
かといって、いまのぼくには外国へ行くカネもない。
そんなぼくは、インド料理好きであることと関係して、
気がついたら友達は、ほとんど外国人だらけになっていた。


アムダスラビーのお客さんは、だいたい6割くらいが日本人で、
あとの4割はインド人を中心にいろんな国の人がいます。
日本人のお客さんにしても、異文化に関心が高い人が多く、
また人生のどこかでインド滞在経験がある人も多い。
はたまたたとえば先日は、カザフスタンに数年滞在した日本人ご夫妻が、
アムダスラビーのブッフェを召し上がって、
「アルマトイという街の、タンドールという名の高級レストランで
食べた味をおもいだす」と、感慨深げにおっしゃったりしたものだ。
また、さまざまな外国人たちは、それぞれが関係を持った都市で、
インド料理好きになった人たちが多い。
たとえば英国ロンドンで、はたまたマンチェスターの「カレー屋通り」たるカレーロードで。
あるいはアメリカ、ニューヨーク州ブロンクスのインドレストラン群で。
そのほか、パリだったり、オーストラリアの都市だったり、カナダのトロントだったり・・・。
そしてぼくは知る、外国人のなかにも異文化好きが多いということを。





アムダスラビーの常連さんのなかに、
HUQさんという中年バングラデシュ人男性がいて、
いつもにこやかに微笑みながら、
おいしいおいしい、とブッフェの料理群を召し上がる。
しかもかれは、土日のブッフェでヴォランティアで
サーヴィスをしているぼくを、
「変な日本人として」おもしろがって、
興味を持っているようだった。
聞けばかれは湯島で、フィリピンパブ「バナナボート」と、
インターナショナルパブ「HOT LEGS」の
2軒を経営しているそうな。
かれは言う、「こんど遊びに来てくださいよ、
いつもぼくはあなたにサーヴィスしてもらってるから、
こんどはぼくがあなたをサーヴィスしますよ。」


ぼくは驚き、かすかな不安を覚えたものの、
しかしハックさんの人懐こい笑顔と、
そしてぼくのなかから湧き上がる好奇心が、
そのかすかな不安をあっというまに打ち負かした。
白状するならば、ぼくはこういう遊びの経験が、
ほぼ、ない。そもそも近年のぼくは
酒と本と月に数えるほどの外食以外には
ほとんどカネを使わない。


さて、この夜のぼくのコーディネートは・・・。
GUの黒のポリエステルの中折れ帽をかぶり、
ユニクロのピンストライプのドレスシャツに、
古着屋で買ったシャネルのタイを結び、モンディーンの腕時計をして、
鳥井ユキのキャメル色のジャケットをはおり、
カーキー色の細身のコットンパンツに、アディダスの赤のソックス、
そしてRomaniのブラウンカラーの革靴。
ぼくとしては一応、かるくおしゃれをしてみた。
多少なりともカネ持ちふうに偽装することが
こういう場所でのマナーかな、と、おもって。
(もっとも、われながらそこはかとなく、
いんちき臭い格好だけどな。
喩えるならば、ルキノ・ヴィスコンティ監督による脚本を、
ジョン・ウォーターズ監督が映画化したようなものか。)


最初に伺ったのは、春日通り沿いのビルのなかに入っている、
フィリピンパブのバナナボートで、
ぼくについてくれたフィリピーナは、
BIANCA さんとRAINさんで、ミニスカート姿の彼女たちは、
ぼくにタガログ語を教えてくれた。
「ありがとう」は「サラマッポ」。
「あなたは綺麗」は「イッカオ・マガンダ」。
「おっぱい大きい」は「マティッティ、ソーソー」。
ぼくはRAINさんと”My Endless Love”をカラオケでデュエットした。


つづいて春日通りを渡ってお向かいのビルのなかに入っている
「HOT LEGS」に移ります。
こちらの女の子たちは、ロシア、ウクライナ、イギリス、ブラジル、
ルーマニア、フィリピン、リトアニア、ドイツ、
フランス、ガーナ、ペルーなどなどのご出身だそうな。
ぼくのテーブルに最初についてくれたのは、
カザフスタン出身のArisaさんとウクライナ出身のTannaさん。
Tannaさんは、神保町の ろしあ亭 を高評価してらして、
彼女は言った、「日本人のシェフだけれど、
20年ロシアに住んでた人なの。ほんとのロシア料理を出してるよ。」


その後、女の子がチェンジして、コロンビア人の、
大柄で黒髪でおっぱいの大きいPatriciaさんと、
いかにもロシア美女という感じの金髪碧眼のMonaさんが現れた。
ぼくはPatricaに熱弁した、
ガルシア・マルケスの小説『百年の孤独』がいかにすばらしいか。
そして晩年にかれが、日本人の作家カワバタの作品にインスパイアされて書いた、
老人男性が眠れる少女と関係を持つエロい小説をいくらか苦笑しつつ話題にした。
もっとも、Patriciaは、ガブリエル・ガルシア・マルケスの名前こそ知っていたが、
しかし、文学に関心はなさそうだった。
他方、ロシア人のMonaは大の小説読みで、
トルストイこそ嫌いなものの、ドストエフスキーを讃美し、
プーシキンを愛し、Bunin(というぼくの知らない作家)の贔屓だ。
ぼくらはミハエル・ブルガーコフによる、
あろうことかスターリンの恐怖政治のなかでひそかに書かれ、
著者の没後四半世紀経ってはじめて出版された、
恐怖と笑いに満ち満ちた奇想天外な小説『巨匠とマルガリータ』を熱弁しあった。
しかも、Monaは、ナボコフについての感想は(礼儀正しく?)述べなかったけれど、
それでも、なんと『プニン』を読んでいた。
実はBunin という作家の話題が出たとき、ぼくは言ったのだ、
「知らないなぁ、ナボコフの書いた Punin なら読んだけれど。」
するとMonaは言ったのだ、「それはわたしも読んだ。」
ぼくは彼女にナボコフの『記憶よ、語れ』を強く推薦した。
そのうえ、ぼくらはスクリャービンについてまで語り合った。
(ぼくはミステリアスなピアノ曲が好きで、
彼女は『ファンタジア』が大のお気に入りだ。)
さらには、ショスタコーヴィチの交響曲群に見られる深く絶望的な苦悩についても。
おっぱいの大きいPatriciaは呆れ顔で、Monaに言った、
「話の合うお友達ができて、良かったわね。」
ぼくはMonaをアムダスラビーのブッフェに誘いたかったけれど、
しかし、(なんということだろう!)
彼女はインド料理にまったく関心がないのだった。


奥のテーブルでは日本人のサラリーマン男性が、
タガログ語でフィリピンの歌を歌っていた。
ハックさんは約束どおり、この夜の全額をもてなしてくれて、
人懐こい笑顔で、ぼくを送り出してくれた。
ぼくはすっかりたのしい夜を堪能して、そして
上野広小路駅から終電間際の地下鉄に乗り込んだのだった。
HUQさん、ありがとう!


なお、バナナボートは、60分4000円、延長30分2000円、
ホットレッグスは、60分5000円、延長30分2000円、
両店ともに、指名料2000円。
サーヴィス+税金が20パーセント。
そのほか女の子の飲み物一杯1000円が客負担になっています。
こういう世界がお好きで、しかもおカネに余裕のある男性は、どうぞ。


そしてぼくはおもう、「南インド発、世界行き」、
いつのまにかぼくはその列車に乗ってしまったようだ。
アムダスラビーの土日&ときどき祝日のランチブッフェで、
あなたもこの列車に、乗りませんか?
その列車にはきっとサンバやフラダンスを踊る
陽気な日本女性たちもまた、
さらには場合によっては世界中の美女たちもまた、
同乗しているに違いありません。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/09訪問109回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

どのインドレストランが、街中華を越えて、中国料理店に相当するレヴェルへ行けるだろう?

土日&ときどきの祝日のランチブッフェが人気の、
アムダスラビー西葛西店は、
さて、ディナータイムにはなにを頼めばいいの?
マナガツオのフライセット 1700円
(ただし、品切れの日がやや多いのは憂慮すべきこと。)
チェティナドクラブセット(=蟹づくしミールス) 1700円
(チェティナドクラブセットはインド料理好きならば、
一度は食べるべき圧倒的名品ながら、
ただし、基本的にはハサミも提供される仕様ながら、
給仕担当者によっては忘れることもあって、
そういうときはがぜん食べにくい。)
南インディアンセット(いわゆるミールス) 1700円
そして、サウスインディアン・ノン・ヴェジ・ターリ1850円、
マトンビリヤニ 1250円・・・。
(このあたりはすべて文句なくおいしい!)
ざっとこんなところかしら?


総じて、素敵な花園になっているとはおもう。
ムゲーシュ料理長の日がおいしいのはもちろんのこと、
かれの休日であってなお、二番手のステファン・ラジ&SANTOSHが、
しっかりクオリティを守っていて、
しかも、値つけも標準的で、ぼくは自信(他信?)をもって、
お薦めできます。
ただし、現状のメニュー構成に対して、
ぼくには少しだけちいさな不満(ないものねだり)もまたあって。
きょうはそのあたりについて書いてみましょう。





近年の東京のインド料理の本格化は、
なかなかなものですよ。
だってひとむかしまえまではインド料理と言えば、
サモサ、ナン、タンドリーチキン、
バターチキンカレーだったけれど、
しかし、いまではそこに、
ミールス、ビリヤニ、マサラドーサが加わった。


なるほど、これはたいへんよろこばしいことだけれど、
ただし、一回の食事で、
ミールスとビリヤニを注文する人はいないし、
同様に、ビリヤニとマサラドーサを同時に食べる人もいません。
だって、相撲の力士でもない限り、
一皿完結で食欲は充分満たされますから。


すなわち、いまのところ広い世間では、
インド料理は一皿完結があたりまえです、
(インドであっても事情はそれほどには変わりないとはいえ、
ただし、インドのテーブルクロスのかかったレストランには、
もう少し多皿構成での楽しみ方もまた、あります。)
それに対して東京のインドレストランでは、
スモールコースを組んでディナーを愉しむ、
そんな食べ方をするお客さんはとても少なく、
また、コースを前提にメニューを作っているインドレストランもまた、
東京では数えるほどです。


つまり、現状ではほとんどの東京のインドレストランは、
街中華と同じステージに立っています。
むろん佳良な街中華には安くておいしい楽しみがあるとはいえ、
ただし、メニューは、餃子、春巻、ラーメン、焼き蕎麦、
酢豚、エビチリ、カニタマ、レバニラ炒め、中華丼・・・
ざっとこのくらいに限られていて。
しかも、せいぜい注文は、ビールと餃子と料理1品ていどで、
けっしてコースを組んで愉しむようにはできてはいません。
いいえ、もちろんべつにいつもいつも
コースを組んで食事をする必要などまったくありませんし、
そんな食事がしたければ、格式ある中国料理店へ行けばいい、
それだけのこと。
しかし、他方、東京のインドレストランには、
この、格式ある中国料理店に相当するインドレストランが、
あまりに少ない。
銀座アーンドラダイニング、バンゲラズ各店舗、
御茶ノ水小川町 三燈舎、浅草サウスパーク、
はたまた(ぼくは食べたことがないけれど)
渋谷エリックサウスマサラダイナー・・・
あと他にどのくらいあるかしらん?
なお、アムダスラビー西葛西店は、
土日&ときどきの祝日ランチブッフェに限っては、
立派に格式ある中国料理店の域に達しているとはおもうけれど、
他方、平日&全日ディナーメニューは味はちゃんとおいしいのだけれど、
しかし、メニュー構成の見地において、必ずしもそうなってはいない。
ぼくはそれをとてももったいないとおもう。





ぼくはいくらかそんなことをおもいつつ、
夜のアムダスラビーに、ふらりとひとりで出かけていっては、
たとえば、ペルノーのロック(400円)を飲み、
レモンライス(750円)と、
野菜カレー”ヴェジタブルコーラプリ”(800円)を食べたりする。
レモンライスをアルパロタ(450円)に替えたりもする。


この夜は、給仕長のサプコタ・チャビラルに強く勧められて、
サウス・インディアン・ノン・ヴェジ・ターリ 1850円に誘導された。
それはこんな構成のワンディッシュプレートです。


マトン・カレー。
チキン・チェティナド・カレー。
チキン65。
ラッサム。
プーリ×2。
バスマティライス。
サラダ。
パパド。
ピクルス。


とくにマトン・カレーとチキンチェティナドのグレイヴィーが
たいへん完成度が高く、官能的で、
かつまた全体の構成もとても良い。
そんなわけでぼくはいまのアムダスラビーがディナーで提供している料理の値段と味は、
たいへん優れているとおもうものの、
ただし、それであってなお、ちょっぴりないものねだりもしてしまう。
そう、コースで食べる楽しみをもまた、提供して欲しいのだ。
だって、そうすれば、ディナーに女友達を誘いやすくもなるでしょ。
良いレストランは、客の恋愛を支援するもの。
惜しむべきは、アムダスラビーには、そこがちょっと足りない。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/09訪問108回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ランチブッフェが教えてくれる、「インド料理的思考、その4つの原理。」

たわむれに数学についての啓蒙的文章を読んでいたら、
おもいがけずおもしろかったので、
ぼくは以下に、そのパロディとして、
そのインド料理版を書くことにした。
文体がいつもよりいっそう偉そうなのは、そのためです。
では、興味のある方は、以下の本文をどうぞ。





日本料理にせよ、中国料理にせよ、
フランス料理にせよ、インド料理にせよ、
なにかのジャンルに精通するためには、
多くのストランで食事経験を積むのみならず、
同時に、そのジャンルの良店のいくつかに徹底的にリピートして、
食事回数を重ねる必要があります。
すなわち、「広く、かつまた深い」経験が必須です。


なぜならば、まずはその料理世界の全体像を知る必要があり、
次に、そのジャンル特有の「料理における思考の手法群」を学び、
分類することによって、明快な理解が生まれ、
鑑賞のよろこびもまた増すものだからです。
優れた料理人は、必要な手法をすべて熟知し、
明快に使い分けることができます。


他のジャンルに喩えるならば、
ロックミュージックで言えば、Char さんのギタープレイを飽きるほど聴けば、
ロックギターに必要な表現方法はすべて最高の水準で理解できます。
落語ならば、古今亭志ん朝を聴けば、落語とはこういうものなんだ、
と、最高の粋を感じることができます。
マンガで言えば、偉大なるイノヴェーター手塚治虫。


さて、同様のことを東京のインド料理界で言えば、
アーンドラのラマナイヤ、
経堂フードタイムのモルゲシュ、
吉祥寺かぶとのマハリンガム・・・
そしてアムダスラビー西葛西店の
土日&ときどきの祝日のランチブッフェにおける、
ムゲーシュ・シェフ。
かれらの料理を徹底的に食べこめば、
南インド料理の原理が最高水準で理解できます。


では、インド料理的思考とは、いったいどのようなものなのでしょう?





1)分類の原理。

中学校で勉強する初等幾何学では、三角形(と円)について、
しつこく勉強させられますね。そこで学ぶことは、
世の中にありとあらゆる三角形があるにせよ、
しかし、辺の数が3つなら、そのすべては等しく「三角形」です。
次に、すべての多角形はいずれも「三角形の集まりとして」、
とらえることができるからです。


たとえば、ラッサムとは、
濃度のない黒胡椒のスープに、
タマリンドとトマトの酸味、そして煮込んだ豆を少量、加えたもの。
なお、このスープの、トマトを強調すればトマトラッサム、
胡椒を強調すればペッパーラッサム、
ニンニクを強めに効かせればガーリックラッサムであり、
豆のうまみを強調すればダルラッサムです。
その他、ワタリガニを加えたり、鶏挽肉を加えたり、
マイソール地方の名を冠したものなど、
さまざまな種類のラッサムがありますが、
しかし、それらはあくまでもヴァリエーションであって、
基本はひとつです。


同様のことはサンバルにも言えますし、
多かれ少なかれ他の料理にも言えます。
そう、ひとつの基本に多彩なヴェリエーションがあります。


なお、南インド料理には以下のような分類があって。
ラッサム。
サンバル。
ポリヤル(野菜のスパイシー炒め、ココナツの香り)。
ダル(豆のポタージュのカテゴリー)。
コロンブ(カレーという語に近く、複数の味型を持っています)。
ワダ(揚げ物)カテゴリー。
ワルワル(ドライカレー)。
ビリヤニ/プラオ。
パン類。
ラッシーに代表される飲み物カテゴリー。
デザート類。


日本ではときどきサンバルを「野菜カレー」と表記したり、
ダルを「豆カレー」と書いたりするレストランを見かけますが、
しかし、啓蒙的見地から言えば、あまり良いことではありません。
なぜなら、サンバルには固有の香りと味型があります。
同様にダルは、けっしてカレーではなく、
しいて別の言い方をするならば「スパイシーポタージュ」と呼びたいもの。
と言うか、ダルはやはりダルなんです。


2)各部分と全体の関係の原理。


南インドのワンディッシュプレートたるミールスをイメージしてください。
ごはんに、ラッサム、サンバル、ポリヤル(野菜のスパイシー炒め、ココナツの香り)、
コルマ(ミルキーポタージュ)、コロンブ(ほぼカレーと理解してかまいません)、
そしてチャトニと称するピクルスが添えてあるようなスタイルが基本です。


ミールスは、けっしていろんなカレーを盛り合わせたものではなく、
むしろトマト~タマリンド系の酸味、胡椒の清涼感、ココナツの甘い香り、
ミルクのリッチなまったり感、
チキンカレーやマトンカレーの表現力あふれるグレイヴィー、
そしてデザートの優美な甘さ・・・。
それらは必ずしも、ひとつひとつの料理で独立しているわけではなく、
むしろ、酸っぱさ、(たとえばVathalなどの苦み)、ココナツの甘み、
ミルキーさ、赤とうがらしとグリーンチリの違った刺激・・・などなど、
それぞれの方向をそなえた料理が、おのおのはやや部品としてあって。
そしてそれぞれの味の料理を、あれ食べて、これ食べて・・・
と、ひと口ごとに違った味を舌に響かせる。
そんな悦楽に、それぞれの料理(部品)は奉仕しています。


したがって、たとえばサンバルにタマリンドを入れない場合もあれば、
入れる場合もあって。それをどちらが正しいとか、主流派だとか、
はたまた地域差があるのか・・・
などと考えたり議論をふっかけたりすることは、
愚考=ナンセンスというもの。むしろ、
全体を構成する料理群のなかに(たとえばラッサムがないなどの理由で)
酸味が足りないとおもえば、サンバルで酸味を補っても良く、
はたまた別の料理で補っても良い、ただそれだけのことです。
そう、さまざまな味のふりわけ。
それがもっとも大事な原理のひとつなんです。


3)よりシンプルなスパイス使いで、より大きな効果を上げることが偉いという原理。


日本人の西アジア料理マニアのなかには、
インド料理よりもタイ料理の方がだんぜん好きな人たちが一定数います。
(ぼく自身はインド料理こそを熱愛していますが、
しかし、かれらの趣味もたいへん理解できます。
なぜって、タイ料理のスパイス使いはシンプルで、
わかりすく、しかも派手だもの。
インド料理好きのぼくでさえも、そこに最良のPOPさを感じます。)


また、同様に、インド料理よりもむしろ
ネパール料理の方が好きな人たちもまた一定数いて、
かれらもまた(ぼくの趣味とは違いますが)たいへん筋のとおった人たちです。
しかもサンサール各店、プルジャダイニング、タカリバンチャ、
そしてナングロなどのファンのなかには、
インド料理なんてものには、ハナもひっかけないような、
激烈なネパール料理原理主義者さえもがいます。


なお、タイ料理とネパール料理のスパイス使いはまったく違いますが、
両者ともども、スパイス使いがシンプルで、
たいへんにわかりやすく、しかも前述の店みせの超絶料理人が作れば、
迫力満点。たとえばネパール料理に使うスパイスは、
ニンニク、生姜、グリーンチリ、ターメリック、ついでに紫タマネギ、
(田舎住まいのネパール人はたいていそれらを家の庭で育てています)、
外で買うのはクミンホールくらいなもの。


対照的に、インド料理は、とくに高級レストランにおいては、
シナモンだの、クローヴだの、アジョワンだの、ガラムマサラだの、
ありとあらゆるスパイスを使います。
ネパール料理的美意識から言えば、はなはだしい無駄使いです。
しかし、インド料理を愛する者にしてみれば、
たとえいかに多種類のスパイスを使おうとも、
その料理に対してそれが必要不可欠ならば、まったく問題ありません。
それだけのスパイスをふんだんに使うからこそすばらしい魅力を放つもの。
そしてそういったゴージャスなスパイス使いをもときには味わうこともまた、
インド料理を愛する者にとって、人生の最良のよろこびです。


余談ながら、世の中には、
タイ料理もインド料理もついでにネパール料理も、
「どれも同じくらい同じほど好き」と主張するような人物がいますが、
しかし、こういう人は、もうちょっとまじめに自分の舌と向き合って欲しい、
と、ぼくは個人的にはおもいます。
なぜって、どんな料理であっても、それが理解できる舌を作るには、
時間がかかるもの。そしてまた同じスパイス料理といえども、
人にはそれぞれ自分の舌に合った世界があるもので、
自分の舌の好みをはっきりさせてこそ、
食の話はおもしろいもの。
なんでもかんでもいいですね、というわけにはゆきません


4)香りの運動法則の原理。

たとえば、花火をイメージしてみましょう。
花火は写真に撮ってもけっしてその本質はとらえられません、
むしろ花火はムーヴィーで撮ってこそ、
他ならない「その花火」ならではの魅力がわかるもの。
なぜって、ムーヴィーでなければ、経時変化がとらえられないから。


同じことは、インド料理でも言えます。
たとえばビリヤニをイメージしてみましょう。
一般に、ビリヤニの基本スパイスは、
グリーンカルダモン、シナモン、クローヴで、
そこに加えてシェフ秘伝のマサラが加わりもすれば、
場合によっては(スパイスではないものの、うまみを足すために)
スープストックさえもが加わります。


最良の料理人が作った、作りたてのビリヤニを、
皿に盛って、食べ始めるとき、
香りの経時変化を感じることができます。
これがまさにインド料理の官能であって。
これほど魅惑的な体験はそうそうありません。
最初に皿から立ち上る香り。
そして口のなかから喉に上がってゆく香り。
そして味と溶け合って、もはや香りとも味とも言えない、
なんとも言えない香り。
そして最初にふわっと立ち上った香りが消えた後でも、
シナモンのミステリアスに甘い香りはしっかり残っていて。
しかもときおり、ごはんに混じったグリーンカルダモンを噛んだときなど、
あらためてその清楚な香りが生まれてきて。
まさに、食事そのもののが香りの万華鏡体験です。
悪いけれど、この官能は、けっしてタイ料理や
ネパール料理ではほとんど味わえません。
いいえ、たいていの国の料理は、極めれば無限におもしろいもの。
ぼくの意見とまったく違うタイ料理絶讃の見解や、
ネパール料理ブラボーな意見もまたあるでしょう。
そしてかれらにおいては、インド料理など
無駄に複雑でめんどくさいだけのしろものであることでしょう。
ぼくはただ、南インド料理に惑溺している自分の意見を述べたに過ぎません。


いずれにせよ、ざっと以上のように、
インド料理にはどくとくの思考と原理があります。
アムダスラビーのランチブッフェには、そのすべてがあります。
興味のある人はどうぞ、ぼくと一緒に探求してゆきましょう。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/09訪問107回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

南インド美食工房の(帳簿の)秘密。-South Indian Restaurant mahange hai.

ジャニーズ系ネパール人のSANTOSHが、
店の前で、道行く人にチラシを渡しながら、客引きをしている。
ぼくはその隣に立って、SANTOSHに教わった、
ヒンディー映画の歌を口づさんでいる。


paisa, paisa, karti ho kyu
paise pe marti ho.


ぼくの歌を聴いたインド人の家族連れが、
くすくす笑いを堪えきれない感じで通り過ぎてゆく。
インド人のコドモが振り返って、苦笑しながらぼくに手を振る。
なお、それは映画”Chandani Chowk to China" のなかの歌だそうで、
訳詞すれば、こんな感じらしい。


「カネ、カネ、カネって、なんなんだよ!??
カネなんかでは死にはしないってば!」


ぼくはコメディアンに憧れを持っているので、
ウケるとちいさくうれしいのだけれど、
それはそれとして、現実は、Paisa jindagi hai.
まずは、カネこそである。
たとえば、レストランの場合は、
いくらおいしい本格料理を格安価格で出していようとも、
しかし、お客が少ししか来てくれなければ、
やがてレストランはつぶれてしまう。


しかも、南インド料理店の場合は、
北インド料理店に比してざっと4割は多く原価がかかる。
そのうえ、南インド料理は、原価がかかるわりには、
南インド人たちと日本人のマニアたちにはウケるものの、
しかし、一般客のなかには「なんだ、こりゃ!??」という反応も多く、
なかなか繁盛店になりあがることは難しい。
アムダスラビー西葛西店とて、ここ1年こそ小繁盛店ながら、
しかし、開店から4年間はずっと、
高額原価のブッフェを安価(最初のしばらくは1400円だったけれど、
その後1200円に下げた)で提供しながら、
しかし、吹けば飛ぶような極小利益しか稼ぎ出せず、
同業者たちに笑われていたものだ。





たしかに南インドレストランは出費が多い。
30席のアムダスラビーの、
一週間の出費が、以下のとおりである。


骨なしマトン 5kg
鶏肉 2kg
ほうれんそう 2kg
グリンピース 1kg
カリフラワー1.5kg
インゲン 1kg
オクラ 4kg
マイダ(中力粉)25kg
塩 25kg
サラダオイル 16リットル
色粉(赤)てのひらサイズのちいさい1缶
レモン汁 1ボトル
ヨーロピアンマシュルーム缶 1缶
ベーキングパウダー 


しかもその他にスーパーマーケットで買うものがあって。
毎日、スーパーマーケットから買うものはーー。
牛乳 10パック。
(各種カレーのデコレーション用の)生クリーム2パック。


ちょこまか買うものを1週間分で換算するとーー。
キャベツ 20kg
ニンジン 10kg
ナス 2~3kg
じゃがいも ?kg
ニンニク&生姜が各2kg


生ビール&各種瓶ビールは1ヶ月単位の注文ながら、
1週間換算するなら、生ビール1.5リットル、
瓶ビール2ケース弱(60本弱)・・・
もちろん各種の豆とスパイス代が1ヶ月でかるく10万円は越える。


その他、タンドール釜用の炭、伝票、ペーパーナプキン、つまようじ、
トイレットペーパー、芳香剤、
消毒用アルコール、各種掃除用リキット、
店舗全体の殺虫にダスキンに払うカネが1か月1回5400円、
おしぼり代金1ヶ月2万円~2万4000円、
毎日のゴミ収集代、1ヶ月2万2000円・・・。
出費はひじょうに多い。





こうして考えると、南インドレストランは、
けっして賢い商売とは言えない。
いいえ、都心部にでっかい資本を投下して、
でっかく儲けている南インドレストランもあるにはある。
ただし、それらはどこも大資本を持っている経営者の特権である。
小資本でかんたんに儲けたいなら、どう考えても、
北インドレストランである。


アムダスラビー西葛西店にしても、
たとえば土日&ときどきの祝日のランチで、
たったの1200円で、あんなゴージャスな
ヴァラエティメニューが食べられるのは、
経営者もスタッフも全員が南インド料理を愛していて、
しかも、スタッフの給料が安く、
しいて言えば、とある酔狂なヴォランティアが、
土日ブッフェで、ただ働きしているからである。
ここ1年のアムダスラビーは小繁盛店になって、
いまの1200円の値段でもちゃんとしっかり儲かっているので、
もう少しスタッフの給与を上げるべきだとおもう。
なお、ぼくは個人的には、アムダスラビーのランチブッフェは、
勇気をもって1500円くらいつけるべきだともおもう。





ここ数ヶ月のアムダスラビーは、
かつて1年ちょっと続いた、
ガネーシュ・クマールームゲーシュふたり体制だった頃の
黄金時代と闘っている。
実は去る6月中旬、東日本橋店開店以降、
ガネーシュ・クマールはそちらのヘッド・シェフになり、
他方、ムゲーシュは単独で西葛西店の料理長になった。
あまりにもふたりがコンビだった時代が良かったので、
ぼくはその後のアムダスラビー両店を、はかなんだ。
おまけに、西葛西店の土日ランチブッフェが、
毎回毎回ナンしか出さなくなったことも、
ぼくをがっかりさせるに十分だった。


しかしながら、その後のムゲーシュの努力と達成は、
なかなかにたいしたもので、
そしてまた、さいきんは日曜日のランチブッフェに、
ドーサ~Idly系の充実が戻って来て、
ぼくはこの傾向をよろこんでいます。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/09訪問106回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

啓蒙について。--「なんだ、こりゃ!??」からはじまる味覚の旅がある。

女の行動は正直なものだ。
あの人たちは好奇心と実感にしたがって生きているから。
(対照的に、男は頭でっかちで、
この世界をまるごと把握しようとがんばるあまり、
結果、好みや実感が追いつかない人たちが多い。)
いや、別の意味では、女は嘘つきでもあって。
女が嘘をつくときは、
(こう言えば相手がよろこぶかな)という計算のゆえである。
女の社交性のベースは、上手に嘘をつくことにある。
つまり、女は行動において正直で、言葉において嘘つきだ。
もっとも、必ずしもそうともかぎらない、
ときには女も正直そうなことを言う。


ぼくはアムダスラビーの土日ランチブッフェで、
ヴォランティアで、
黒板書きや料理に添えるプレートに料理名を書いたり、
開店からしばらくは給仕をやったりしていて。
こないだの日曜日ぼくは、食事を終えたある若い女性客に訊ねた、
「お味はいかがでした?」
すると彼女は答えた、「おいしかったです!」
ぼくは訊ねた、「なかには”なんだこりゃ!??”って料理も、
混じってませんでした?」
すると彼女は微笑んで言った、「全部の料理が、”なんだこりゃ”でした!」
ぼくは内心爆笑した、正直な女、発見!


彼女の感想はこういうことである。
よくわからないけれど、おいしい。
実は、こういう正直な感想を口にできるのはほとんど女で、
ぼくは女のそういうところが大好きだ。
男でこういうことが言えるのは、中小企業の社長さんくらいのもので、
たいていの男は、観念先行型ゆえに、
わからないものはおいしくないのである。
しかも、男の厄介なところは、
たとえ自分にとってちっともおいしくなくとも、
社会の秩序と価値体系に鑑みて(!)
ここは「おいしい」と言っておかなくてはいけないのではないか、
とかなんとか煩悶し、しかしおいしいという実感はないゆえに、
結局、小声でごにょごにょつぶやいたりするのである。


さて、西葛西アムダスラビーは
「本気の南インドレストラン」を標榜しています。
なお、いくら南インド料理がさいきん小ブームだとはいえ、
それはたいへんマイナーな話題で。
多数派の日本人は、
ナンも、サモサ、ケバブも、バターチキンカレーも召し上がっていて、
(それらはすべて北インド、パンジャビ料理なのですが)、
かれらは自分はインド料理によくしたしんでいるとおもっています。
ところがですよ、アムダスラビーのこの日のブッフェを食べてみたら、
どうですか?
マンゴーシューズがある。
鶏釜飯がある。
酸っぱくて胡椒の効いたえたいの知れない汁がある。
けんちん汁みたいなものがある。
ココナツの甘い香りを放つダイコンとニンジンの炒め物がある。
ぜんざいをカレーにしたような、アズキのカレーがある。
もちもち食感の小さなクレープがあって、
内側にじゃがいものスパイシー炒めが潜んでる。


はじめてこれらを召し上がって
「なんだ、こりゃ!??」
と、驚かない方がおかしい。
実は、それらはひじょうにまっとうな南インド料理なんですけれど。
もっともかれら彼女らのその反応にも3種類あって、
「なんだ、こりゃ (怒)」ばかりではなく、
「なんだ、こりゃ(判断保留)」や、
「なんだ、こりゃ❤(ハート)」までのニュアンスが
さまざまにあるところが、このはなしのおもしろさです。


いずれにせよ、東京のような大都会であってなお、
南インドレストランというビジネスは、
けっこう割りに合いません。
なぜって、食材原価が北インドレストランのそれよりも、
かるく4割は高い。しかも、
まじめに作れば作るほど、日本人のお客様に「なんだこりゃ!??」
と言われる確率も高くなる。
たとえばアムダスラビーが、ランチブッフェでたまたまナンを出さない日なんて、
ときにはお客様にボロカスにののしられることさえあって。
「舐めとんのか!
おまえんとこは、酢飯の準備のない鮨屋と同じやんけ。
そんな鮨屋、どこにあんねん! ふざけんなー、ボケッ!」
いいえ、さすがにそこまであけすけにおっしゃる人はいなかったけれど、
しなしながら表情でそう言っておられる人はそこそこいらしたもので、
今後も同様であることでしょう。
そんなときレストランのスタッフは、心のなかで小声でつぶやく、
「ご縁がありませんでしたね。」


さらには、世の中にはインド家庭料理に忠実なレストランもあって、
そもそもタンドリー釜を持たず、とうぜん
ナンを出すなんてことはまったく眼中にないお店もあって。
そういうレストランは例外なく誇り高いものだけれど、
しかし、世の中、誇りでなんとかなる場合ばかりではありません。
案の定、「ナン、出しません派」のお店と、
「ナン大好き派」のお客の conflict(対立)が日常化する。
「ナン大好き派」のお客はナンがないならば、2度と食べには来ません。
しかも、次から次に新しいお客が現れて、
口ぐちに困惑と失意をスタッフに告げるのだ。
いつしかお店側のスタッフは説明に疲れ果てて、
「毎日毎日こんなことやってられるか!」と怒り心頭、
そして店頭に張り紙を貼る、「ナン、ありません!」
同業者なら誰だってその気持ちはよくわかります、
実はあれは「悪霊退散」のお札なのだ。
なんと痛ましいボタンのかけまちがいであることでしょう。
店主も客も、両者ともどもインド料理が大好きなのに。


もっとも、いまだに南インド料理には新奇性があるゆえ、
メディアに採り上げられる機会は多いけれど、
しかしながらだからといって
繁盛店になれるかどうかはまったくわからない。
経営者は自分の店がろくすっぽ売れてないときに、
たまたま「ターリー屋」さんの前など通ったりすると、
その大繁盛ぶりに、心が揺れます。
悪魔の囁きが聞こえてきます。
しかしながら、だからといって、
南インドレストランが過度に北インド料理にすり寄ってゆけば、
結果、アイデンティティを失ってしまいます。


ましてやアムダスラビー西葛西店は4年間の苦節を経て、
ようやくこの1年半、小繁盛店になれたのだから、
これからも、もっとも多くのヴァリエーションで
南インド料理を提供してきたことに誇りを持って、
ひきつづき南インド料理の愉しさ、ゆたかさを
啓蒙し続けていって欲しいもの。


このところの土日ランチブッフェは、
日曜がよりいっそうマニア度が高い傾向にあります。
ラッサム、サンバルがともにあって、
パン系は日によって、
idly や小マサラドーサなどがふるまわれています。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/09訪問105回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

おなかのなかから美しく、HAPPYに。

9月1日(日)のランチブッフェでは、
ナンのみならず、Idly(米粉と豆粉の蒸しパン。
かるかんまんじゅうあんこ抜き?)と、
ミントチャトニ(ミントのディップ)もまたふるまわれました。
ぼくは声を大にして言いますよ、
すばらしい! こうでなくてはいけません。
これこれこれこれ、これですよ。これでこそアムダスラビー。
なぜって、これは、ここ半年近くつづいていた、
パンはもっぱら、ナンもしくは「ほとんどナン」であるところのクルチャしか
出さなくなっていた、そんな流れを止めて、それに先立つ1年間ほどの、
アムダスラビー西葛西店の「本気の南インド料理」、その黄金時代、
すなわちガネーシュ・クマール&ムゲーシュ、2人シェフ時代の姿勢に、
一歩、回帰したことを意味しています。
ぼくはこの小英断に拍手を送ります。





レストランは営利事業ですから、
どこを見るかによって、評価は揺れ動くもの。
売れてない店は、いくら料理がおいしく本格的であろうとも、肩身が狭いもの。
(アムダスラビーも開店以来4年間は、そうでした。)
他方、いったん売れてしまうと、たいていは評価も安定し、経営もやりやすくなるもの。
けれども、あえてそういうことを括弧に括って、内容や方向性についての批評はあって良く。
アムダスラビーのここ半年は、
経営的にも料理のクオリティ的にもとても良いのだけれど、
ただし、もしも純粋な南インド料理マニアとして言うならば、
むしろ2017年の秋あたりから2019年の2月初旬あたりまでの、
アムダスラビーのブッフェこそが、サイコーにおもしろく、
毎回毎回が、まったくもって目の離せないものでした。
顕著に、パンのヴァラエティがとてもゆたかだった。


当時はパロタ(うずまきパン)を基本としつつも、
そのパロタも、ときにはBun Parotta(スポンジブレッドスタイル)や、
Tawa Aloo Parotta(内側にじゃがいものスパイシー炒めをひそませたパロタ)も
出したもの。
Viru Dhungar Parottaもまた。


Idly(かるかんまんじゅうあんこ抜き)だってメニューに載った。
Kanchpuram Idly さえも。

Dosaだって、Moong Dal Dosa も、Adai Dosaも出した。

パンケーキ、Uttapamも、Onion Uttapam、Masara Uttapam、
はたまたVegetable Uttapam とヴァリエーションがあった。

Pesarattu(ムング豆とチャナ豆のパンケーキ)もまた。

ディップだって、レッドチリやミントのそればかりでなく、
ピーナツ、キャロット、ピーマン、オニオン、ビーツと自由自在でした。


こういう世界があってこその、「本気の南インドレストラン」であり、
いまふたたびアムダスラビーがこの世界へ回帰したならば、
こんなすばらしいことはありません。





もう少し全体的に紹介するならば、
2019年9月1日(日)のランチブッフェはこんな構成でした。

Andra Mutton Biryani & Onion Raita
羊ビリヤニ&ヨーグルトサラダ、タマネギ入り

Egg Bhrji Curry
カキタマカレー

Navratan Kurma
「9つの宝石」という名のカレー、
リンゴ、パイナップル、グレープ、ニンジン、グリンピース、
スウィートコーン、ビーツ、マッシュルーム、パニール入り。

Idly & Mint Chutney
かるかんまんじゅうあんこ抜きとミントのディップ

Keerai Medu Vada
揚げたてふかふかがんもどき、小松菜入り

Dal Rasam
ラッサムスープ、豆のうまみを効かせて

Kadamba Sambhar
具だくさんの、南インド、けんちん汁?

Naan
ナン

Japanese Rice
多産地混合日本米

Vegetable Juice
野菜ジュース

Carrot Halwa
ニンジンのミルク煮


ムゲーシュ・シェフによる
メニュー構成もたいへんリッチで、ゴージャスなもの。
マトンビリヤニがたいへんおいしいのは言うまでもありません。
ナブラタンコルマは、まさに「9つの宝石」という名にふさわしい、
優美な仕上がり。
サンバルとラッサムが揃っているのも良い。
また、全体的に味の振り分けが良く、
いずれもおいしく華やかなのはもちろんのこと、
そのうえ、たいへん多彩な食材が用いられているがゆえ、
腸内細菌叢をよろこばせる内容になっています。


そしてこの日はじめての試みはVegetable Juice で、
これは「ジャニーズ系ネパール人」の
Santosh が担当しました。この野菜ジュースは、
ニンジン、キューリ、トマト、ジャックフルーツ、
キャベツ、リンゴ、パイナップル、そして、
けっして血糖値を上げず、しかも腸内細菌のエサになる「オリゴ糖」を
少々加えて構成されています。
色は、キャロットオレンジに仕上がっていながらも、
味は、おだやかなニンジンベースの甘みのなかに、
林檎の優しい甘みと酸味が加わり、
しかもそこにグリーン系の野菜の立体感さえも加わって、
キュートで、素敵においしく、しかも腸内細菌たちもよろこぶ仕上がり。
ぼくは何杯もおかわりしたもの。


このヴェジタブルジュースには、インドレストランのひとつの未来が感じられます。
なぜって、そもそも南インド料理には豆や野菜のメニューが多く、
ヴェジタリアンにとってほんらい夢の楽園です。
いいえ、肉好きにとっても、野菜をたくさん食べることは、
とても大事なこと。
そして南インド料理は、肉好きをも野菜好きをも大満足させるゆたかな世界があります。
しかしながら、上手に食べてこそそのメリットを享受できるもので、
逆に、下手に食べると、炭水化物過多と油の摂取量が多いゆえ、
太ってしまう可能性もまたあって。
それはひとえに、レストラン側のプレゼンテーションと、
食べ手のリテラシーにかかっています。


南インド料理は、もしも上手に食べるならば、
地中海ダイエットと同じメリットを受け取ることができます。
レストラン側も、もっともっと強くハッキリ野菜のおいしさをアピールしてゆくと、
南インド料理の新しい扉が開かれることでしょう。
今回の野菜ジュースには、そんな可能性を感じることができました。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/08訪問104回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ミッションをおもいだす。

アムダスラビーのミッションは、
「Serve the real south Indian food.--本気の南インド料理をふるまうこと」です。
そして、このごろのアムダスラビー西葛西店は全体的にはとてもいい。
少なくとも、とくに土日&(ときどきの)国民の祝日の、
ランチブッフェ 税込1200円は、
たいへんにおいしいし、野菜も豆も豊富で、高い原価によく耐えていて。
またムゲーシュ料理長の成長も著しく、
インド人にも日本人にもおおむね笑顔で迎えられ、
お客さんの美女率も高く、集客も上々。
ただし、このエントリーは、
「それはそうなんだけれど・・・」というはなしではあって。


なるほど、東京にインド料理の名店は他にもあって。
銀座アーンドラ・ダイニングの、
ラマナイヤ・シェフの巨匠の円熟。
吉祥寺かぶと の、マハリンガムおまかせコースの、
優美で凶暴なとてつもない表現力。
経堂フードタイムのモルゲシュ・シェフの超絶名人芸。
小川町 三燈舎のおしゃれな内装とリアル南インド料理のマリアージュ。
千歳船橋カルパシの日本人、黒澤シェフのなにものをも恐れない創造性・・・。
けれども、もしもこのリストのなかに、
アムダスラビー西葛西店が入っていなかったならば、
信憑性はすべてなくなってしまうでしょう。
なぜって、アムダスラビーの土日&ときどきの祝日ブッフェほどに、
南インド、タミル料理に本気のレストランは、ありません。
なにしろラッサムにせよ、サンバルにせよ、ポリヤルにせよ、
アヴィヤル、クートゥー、ワダ~ボンダにせよ、
はたまたビリヤニ~プラオにせよ、
ありとあらゆるヴァリエーションを出ふるまってきたのだもの。
こんな南インドレストランは、実際に東京に、他にひとつもありません。


ただし、それはそうなんだけれど、
でも、気がついたら、
アムダスラビーのミッション、
「本気の南インド料理」が、
いくらかなりとも薄まってやしないかしらん???
ぼくはこれを危惧しています。
実はこれが、このエントリーの主題なんです。


アムダスラビーの土日&祝日ブッフェは気がついたら、
ラッサムこそ必ず出しているものの、
しかしいつのまにかサンバルは日曜日しか出さなくなっていて。
はまたパンも、さいきんはナンか、
「ほとんどナン」であるところのクルチャしか出していない。
かつては長いこと、断固、パロタ(うずまきパン)しか出さなかったもの。
その後、ガネーシュ・クマール&ムゲーシュのふたりシェフ体制になってからは、
パロタのみならず、その日ごとに、たとえばスモールドーサや、
idly(かるかん饅頭、あんこ抜き)をも出してきたもの。
ついでに言えば、ポンガル(お粥)を出したことも数回ある。
しかし、さいきんはそういうおたのしみがなくなってしまった。
ぼくはそれをとっても残念におもう。


いいえ、ぼくだって知っている。
西葛西であってなお、けっしてナンがなくては
ゼッタイに許してくれないお客さんはそこそこいらっしゃる。
「え? ナンないの??? じゃ、食べません、帰ります。」
そんなお客さんは、一定数いらして、
ぼくはかれらの素直さが(実は)好きではあるけれど。
また、「南インドレストランでありながら、
やむなくナンをも提供する」ことは、
日本のほとんどの南インドレストランが採用していることで、
レストランは営利事業なので、それじたいは当然の選択だとはおもう。


でも、だからといって、レストランがみんなに好かれようとすると、
結果、誰にも好かれなくおそれもまたあって。
しかも、ナンがきっかけとなって、レストラン全体の方針が揺らいでゆく、
そんな可能性だってなきにしもあらずです。
また、この現在を是とするならば、ミッションもまた変えなくてはならないでしょう。
たとえば、「だいぶ折衷的ながら、それでも
南インド料理にそこそこには本気のレストラン」とかね。
あるいは、「ムンバイのタミルレストランのように」とかね。
いずれにせよ、ミッションと現実はしっかり一致していて欲しい。
なぜなら、もしも両者がズレてしまうと、
そしてそのズレをそのままにしておくと、
いつのまにかレストランは指針を見失い、
提供するサーヴィスは、右顧左眄を繰り返し、
結果、客側のそのレストランへの関心も支持も不安定になって、
いつしか薄らいでゆくでしょう。


そんなふうにおもうぼくは、
アムダスラビー西葛西店がここ1年、小繁盛店であることをよろこびつつも、
パンケージ・ゴヒルさん(だんなさんの方)に以下のようアドヴァイスをしたのだった。
もしもこのまま「本気の南インド料理店」のミッションでいくのだったら、
ときどきは、パンにしても、
ナンばかりじゃなく、パロタ、idly、スモールドーサなど出しましょうよ。
そしてラッサムのみならず、サンバルだって、もっと出しましょうよ。


そんなぼくの意見に、ゴヒルさんは、答えた、
I agree with you.


ゴヒルさんのこの答えには、この件についての善処が期待されます。





この日8月24日(土)ラストオーダーぎりぎりにいらしたのは、
タミルナドゥ州の最南端ティルネルヴェリご出身のご夫妻と、
3歳のお嬢さんSherylさん。彼女は大きな黒い瞳をして、
ブラウンカラーの肌に黒髪のショートヘア、
オレンジ色の地に切ったスイカの絵柄のノースリーブのワンピースを着ている。
Sheryl はえらくぼくになついて、閉店間際に他のお客さんも少ないダイニングで、
彼女に乞われるままにぼくは、彼女の両脇を持って、
高い高い(”Lift me up!"ー”Up, up, high!”)を、
なんと十数回も繰り返したのだった。
Sherylもそうだったろうが、ぼくも夢のようにしあわせだった。




ハンサム白人給仕長のGyan Dev が西葛西へ戻ってきました。
かれは去年2018年9月3日に、ネパールへ戻って、
1年間家族としあわせな時間を過ごしていたもの。
(もっとも、そのかんかれはバイク事故で右肩の鎖骨骨折などもしたけれど。
それでも)、1年間の休暇はかれの笑顔をいっそう爽やかにしていました。
今後かれがどこのレストランで働くことになるか、
それはいまのところ未定。わかり次第、お伝えします。





8月25日(日)のランチブッフェ1200円は、
ハイデラバディ野菜ビリヤニ、
チキンペッパーマサラ、
ペッパーラッサム、
オクラとナスのサンバル、
冷菜 モールコロンブ(ヨーグルトシチュー)など、
素敵においしい南インド料理が12種類。
パンはナンだけですが、かなりたのしいとおもいますよ。


理想の来店時刻は、11時です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー -
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2019/08訪問103回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

花と卵。

開店まえの朝10時20分、
いつものようにぼくは表通りの脇のエントランスで、
黒板にチョークで花の絵を描いていた。
きょうは右上に白いアマリリス、左下にマジェンタ色のアリウム・ギガンチウム。
そして空いているスペースに、白いチョークで料理名を書いてゆく。


ジャニーズ系ネパール人のSANTOSHが掃き掃除の手を休めて言った、
「hana ですね。」
SANTOSHは、日本語をちょっぴり知っていることが得意なのだ。
ぼくは答えた、「そう、hana。そしてhana にはもうひとつ別の意味もあるよ。」
そしてぼくは自分の顔のまんなかにある突起物を指差した。
SANTOSHは感心しつつ訊ねた、「どうやって使い分けますか?」
ぼくは答えた、「 depend on context.(文脈に応じて)。」
SANTOSHは言った、「そういうことは、ネパール語にもあります。
ネパール語で flower は phool。そしてphool にはまた eggという意味もあります。」
ぼくは言った、「ネパールでは花も、チキンのエッグも、同じ言葉、phoolなんだ?」
SANTOSHは言った、「そう。」





2019年8月17日(土)のランチブッフェは以下のメニューだった。


Amboor Chicken Dum Biryani (鶏釜飯、アムブール・スタイル)
Keema Egg Korma(鶏挽肉とスクランブルドエッグのシチュー)
Yellow Dal Masala(黄色い豆のカレー)
Kerala Lobia Curry(ロビア豆のカレー、ケーララスタイル)
Cabbage Poryal(キャベツのスパイシー炒め、ココナツの香り)
Keerai Bonda(コロッケ、ほうれんそう入り)
Sakura Ebby Rasam(ラッサムスープ、サクラエビ入り)
Veg Kulcha(ほとんどナン、あれこれ野菜入り)
Japanese Rice(おコメのプロがブレンドした多産地混合日本米)
Green Moong Sprouts Salad(3日かけて発芽させた緑豆のサラダ)
Aval Kheer(ライスフレーク”ポハ”のミルク煮)
Mango Juice(マンゴージュース)


料理長は、南インド、タミルナド州出身のムゲーシュ。
総じて、たいへんおいしく、食べていて、とっても楽しい。
ぼくはアムダスラビーのランチブッフェが世界でいちばん好きだ。
ただし、しいて言えば、この日の構成は、豆のポタージュ系が2品あって、
どちらか1品はサンバル(けんちん汁のようなもの)に替えればいいのに、
と、ぼくは感想を述べた。
するとムゲーシュは言った、「サンバルは日曜だけに出すって、決めてんだよ。」
なるほど、ラッサムと並んでサンバルもまた、
南インド料理の魂ではあるものの、
ただし、お客さんによって、好き/嫌いが分かれるゆえ、
ムゲーシュも用心深い。ムゲーシュもプロらしくなったものだ。
発芽緑豆のサラダは、発芽させることによって栄養価を高めるもので、
インドの家庭ではよくやるものの、しかし、レストランでは
やる店はたいへん少ない。おもしろい試みだとおもった。
ただし、なんとも味がなく、そっけない。
ぼくは言った、「ヴィネグレットソース(フレンチドレッシング)かなにか
かければいいのに。」
すると、給仕長のサプコタ・チャビラルは笑って言った、
「インドではそんなことしないよ。でも、あなたの好みを考慮すると、
タマネギのスライスとトマトのスライスを入れて、
チリペッパーを振れば、完璧ね。」
ぼくは感心した、サプコタ・チャビラルは、
ちゃんと、”ぼくの好みのインドスタイル”を教えてくれる。」





この日、SANTOSHは、洗いあがった皿を次から次に乾いた布で拭きながら、
ダイニングの一角を見つめ、ぼくに耳打ちした、
「わたしの好みは、あの女の人です。」
それは、いかにも明るく楽しげに召し上がっている、
ふたりの日本女子の片方の人だった。
彼女たちはちょうど料理を食べ終わるタイミング。
ぼくは言った、「じゃ、SANTOSH、きみがデザートのキールをふたつ、
彼女たちにサーヴしてあげたら?」
SANTOSH はものすごくためらったものの、
結局、ぼくに背中を押されて、
たいへんにおずおずと、ものすごく照れくさそうに、
緊張しながら、彼女たちにキールをふるまっていた。




さて、きょう8月18日(日)のランチブッフェは-----。
Mutton Biryani(骨つき羊釜飯。)
Chettinad Fish Curry(魚がなにかはいまのところ不明--後註:ブリでした。)
Vegetable Jalfrezi(タマネギ、ピーマン、パニール・・・)
Palak White Chana Dry (白い豆のドライなカレー、ほうれんそう入り。)
Poosanikai Sambhar(カボチャのけんちん汁)
Milagu Medu Vada(揚げたてふかふかがんもどき、胡椒風味)
Corriander Rasam(ラッサムスープ、コリアンダーリーフを効かせて)
Boondi Raita(ヨーグルトサラダ、てんかす風のベサン粉の小ボールを具材に。)
Naan
Fruit Burfi(スウィーツ:あれこれ果実のバルフィ)
Ice Lemon Tea

お薦めの来店時刻は、11時です。

後記:たいへん充実した内容で、バランス良く、
さいきんのアムダスラビーの ランチブッフェの
水準の高さを見せつけるものでした。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/08訪問102回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

もしもサンバルライスがランチメニューにあったなら、ヴェジタリアンたちは、もっとうれしいんじゃないかしら。

このごろのぼくの食生活はかなりヴェジタリアン寄りで、
毎朝、数種の葉野菜のグリーンジュース
(いまっぽく言えばGreen Smoothie)を作って飲んでいるし、
週4日か5日はアルコール、果物、ナッツ、野菜、豆、豆腐で過ごしています。
(逆に言えば、週に2日か3日は、ぼくは肉や魚も少し食べる。)
各種乳酸菌錠剤も毎日飲みはじめた。
実はぼくは帝王切開で生まれてきたらしく、
おそらくそのことに由来してコドモの頃から肌が弱く、
幼稚園の頃はありとあらゆる病気にかかったものだ。
(その後、たいへん健康になって、
中年半ばまでは不自由なくやりすごしたものの、
ただし、長年のアル中そのほか不摂生がたたって)、
いままた皮膚科のお世話になっていて。
そこでぼくは、まずは、腸から健康になろう、と考え、
食事は自分の愉しみのためのみならず、
腸内細菌たちにエサを与えるものでもある、という考えに至った。


ヴェジタリアン生活の向き/不向きは、
その人の腸内細菌叢がヴェジタリアン仕様に変化できるか否か、
に、かかっていて。
もしもその人の腸内細菌叢が肉食時代のままでは、
ヴェジタリアン寄りの生活はただただ苦しく、
場合によっては、体が衰弱してしまうでしょう。
大事なことは、自分の体を改造してゆくのだ、という意志をもって、
ヴィタミン&ミネラル錠剤で栄養を補いながら、
あるていど徹底的にやること。
いずれにせよ、ぼくの体はここ二ヶ月で
あるていどヴェジタリアン寄りになったようで。
体も軽くなった。肌の脂っぽさも消えた。思考も冴える。
睡眠時間もやや短くなった。ただし、すぐ腹が減る。
こうしてぼくはヴェジタリアン寄りの食生活の効用を知った。
ヴェジタリアンライフ、けっこう、おもしろいね!





アムダスラビー西葛西店のランチブッフェ(1200円税込)は、
豚組しゃぶ庵のランチブッフェ(1000円税込)や、
焼肉の名門 天壇 銀座店のランチブッフェ(1500円~)などと並んで、
たいへんに野菜が豊富ゆえ、腸内細菌叢の健康を考える人たちにとって、
ひじょうにありがたいもの。
そうです、いまや、しゃぶしゃぶ屋や焼肉屋でさえも、
豊富な野菜を提供してこそ美女たちが集まる、
そんなご時勢です。


さて、そんなアムダスラビー西葛西店ながら、
しかし、ウィークデイランチになにを食べようかしらん?
と、考えたとき、ざんねんながら、食物繊維豊富なメニューの、選択肢はやや少ない。
サウス・インディアン・ターリ(いわゆるミールスです) 1100円。
あとは、マサラドーサセット 1000円、
プレーンドーサ 900円くらいです。
ドーサは米粉と豆粉からできていますから、
そこそこ食物繊維が摂れます。マサラドーサは、
内側にじゃがいものスパイシー炒めもひそんでいます。


この話題においては、もしもナンを全粒粉の小麦粉(ATTA)で作れば、
食物繊維も豊富に摂れてたいへんに良いのだけれど。
しかし、そういうことはインド人はあまりやりたがらない。
なぜってナンは、MAIDA(中力粉。日本では日清製粉のカメリカ小麦粉)で作るもの。
ナンは卵を混ぜいれるゆえ、タンパク質が摂れるというメリットはあるけれど、
しかし、腸内細菌叢的には魅力がない。


もしも全粒粉(ATTA)のパンが食べたければ、
パロタ、チャパティ、プーリを食べれば良い。
腸内細菌叢的には、こちらの方が歓迎です。
ただし、卵は使わず、粉の他は塩と水だけ。





きょう、朝11時頃、ぼくは、ムゲーシュとサプコタ・チャビラルに呼ばれて、
ちょっとした日本語関係のヤボ用をかたづけた。
お礼に、かれらはぼくに まかない料理を、ふるまってくれた。
(なお、アムダスラビーのスタッフは、だいたいの日は、
店でお客さんに出している料理を食べるのだけれど、
ときどき、メニュー外の、まかない料理を食べる。)
この日は、こんな構成。

1)マンゴージュース。
2)ミニサラダ(キャベツの千切り、サウザンアイランドドレッシング)。
3)サンバルライス。
白ごはん(多産地混合日本米)に、オクラとニンジンのサンバル(けんちん汁のようなもの)を
かけたもの。いわゆる南インド猫飯のひとつ。
4)インディアン・チャイ。


南インド人にとっては、たいへんにあたりまえな、
なんのヘンテツもない家庭料理なのだけれど、でも、ぼくはとてもうれしかった。
なぜって、サンバルは、いつもアムダスラビーの土日ランチブッフェや、
他店のミールスでしょっちゅう食べているけれど、
でも、こうして皿いっぱいのごはんの上に、
なみなみとサンバルをかけて食べる機会はそうそうない。
そのおいしさは地味なものだし、
良く言って、「滋味ゆたか」な「ひなびたおいしさ」、
悪く言えば、「ばばあくさく」、「貧乏くさい」。
なお、ぼくにとっては、しみじみおいしく、
(だって、ムゲーシュのサンバルとラッサム、
そして本気のときのビリヤニは最高においしい)。
しかもごはんと野菜が腸内細菌たちのエサになる。
ぼくもうれしく、しかもぼくの腸内細菌たちもおおよろこびである。


スタッフにとっては、サンバルは、ミールスやドーサセット用に作るのだから、
サンバルライスをメニューに載せることはかんたんである。
しかし、インド人経営者や料理人たちは、
きっと恥ずかしがって、サンバルライスをメニューに載せることをためらうでしょう。
かれらはきっとこう考える、
こういうものはあくまでも家庭で食べるものであって、
けっしてレストランにふさわしい料理ではない。


ぼくはかれらがそう考える事情もわかりはするものの、
しかし、いくらかそれを残念におもう。
なぜって、もう少し、腸内細菌叢を気遣う人や、
ひいてはヴェジタリアンの側に立って、
メニューを考えるならば、必ずや、集客に貢献できるだろうに。


ぼくはおもう、
ランチのサンバルライスが人気のインドレストラン。
そんなレストランはありえる。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/07訪問101回目

-

  • 料理・味3.8
  • サービス3.8
  • 雰囲気3.8
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク3.8

「ぼくたちは綺麗な日本女性たちの微笑みが見たくて、がんばって働いています。」労働者代表、料理長ムゲーシュ。

インド料理の名店は、他にもいろいろあって。
たとえば、アーンドラダイニング銀座や、
経堂フードタイムは、
インド人巨匠料理人の円熟の境地が愉しめます。
小川町 三燈舎は、ちょっぴりおしゃれな内装で、
デートに最適な、素敵な本格料理を味わえます。
はたまた千歳船橋カルパシは、心のこもった夢見がちな空間で、
黒澤シェフの創造的冒険が体験できます。


さて、そんななかアムダスラビー西葛西店は、
スタッフ全員が若く、みんなで楽しみながら、
南インド料理としてのクオリティをさらにいっそう上げるべく、
つねにがんばっていて。
とりわけ土日&場合によっては祝日の1200円ブッフェは、
関係者全員が、「日本で一番すばらしいインド料理ブッフェを
提供しているのは、アムダスラビー西葛西店なんだ!!!」
と(根拠なく)自負していて。
毎回料理のラインナップも替わって、目が離せません。


去る7月13日、14日、15日の三連休では、
13日と14日はメニュー構成はordinary で情報的誘惑は小さいけれど、
ただし、たいへん南インドらしく、食べると超おいしい、
そんな内容だった。
他方、15日は、ビギナーはもちろん、マニアたちをおおよろこびさせる構成。
Varutha chicken Biryani (炒めチキン釜飯)。
Chicken Vada (鶏挽肉、ひよこ豆、じゃがいも、タマネギをマサラでまぶしたコロッケ)。
Pepper Rasam。(ラッサムスープ、胡椒の香り)。
Green Moong Tadka。(緑豆のスパイシーポタージュ)。
Soya Chunks White Peas Korma。(インドコーヤドーフと白い豆のポタージュ)。
White Pumpkin Kootu。(冬瓜のポタージュ)。
Madras "Wakasagi"Fish Curry。(ワカサギのちょっぴりすっぱいカレー)。
パンはMethi Kulcha。(ほとんどナン、メティの香り)。
サラダは、Channa Chat(ひとこ豆のサラダ)。
デザートは、Bread Halwa。パンをミルクやナッツにつけたはなやかなもの。
飲み物は、Rose Milk。(薔薇の香りのミルク)。


冬瓜の小片は、皮がすべてついていたのだけれど、
半分くらいは剥いた方が良さそうだとか、
ワカサギのマサラマリネはもう少し深い方がいっそう良いとか。
そんなこともおもったものの、しかし、
総じてたいへんすばらしい超一流の仕上がりだった。


先日、テレビ東京の『モヤモヤさまぁ~ず』で、
さまぁ~ずさんと安藤サクラさんがアムダスラビーを取り上げてくださったこともあって、
3日間、お客さんは大入りで、しかも夜はマサラドーサがよく売れたそうな。


先月までアムダスラビー西葛西店は、
ガネーシュ・クマールとムゲーシュのふたりシェフ体制だったのだけれど、
しかし、東日本橋店ができてクマールがそちらの配属になったため、
結果、西葛西店はムゲーシュ・シェフをトップに、
セカンドに、ナイフテクニックのアーティスト、ステファン・ラジが入った。
クマールは、南インド料理のレパートリーが豊富なのみならず、
北インド、パンジャビ料理も幅広く作ることができる。
ただし、南インド料理らしさはやや薄い。
他方、ムゲーシュは南インド、タミル料理っぽさが深く、
レパートリーはそれほど広くないものの、
ただし作る料理はどれもたいへんにおいしく、
かつまたサラダやデザートのセンスが光る。


ムゲーシュは、あきらかにアムダスラビーの歴代料理人たちーマハリンガム、
ヴェヌゴパール、ディナサヤランの系譜を引いている。
あまりにも南インド、タミル料理らしさが深すぎるあまり、
開店から4年間、吹けば飛ぶような利益しか稼げなかった、
不器用きわまりないアムダスラビーの、一流シェフたちの系譜を。


しかし、長かった不遇の時代は、アムダスラビー西葛西店の、
心も体もたくましくした。
開店以来、4年にわたって、
どんなにお客が少ないときだって、いつだってアムダスラビーは、
スタッフが食べていちばんおいしいとおもえる料理を、
ただひたすらふるまってきた。
どんなときもけっしてクオリティを落とすことなく、しかも、
みんな冗談を言い合って、ときには歌など歌って、たのしみながら。


そして、ここ1年間、いくつかの偶然が重なって、
いま、アムダスラビー西葛西店は人気店になった。
土日&ときどきは祝日のランチブッフェは、
開店まえから待ち客が数人出て、12時過ぎるとまた待ち客が出はじめ、
ひとりあたりの待ち時間はほぼ十分ていど、そして満席は閉店まで続く。
給仕たちはお客をテーブルに案内し、ときには盛り方、食べ方を説明する。
はたまた泣いている赤ん坊を見かければ、ちょっとあやしてみたり、
たまにはデザートをサーヴして機嫌をとったりもする。
そのあいだにも別のお客は食事を終え、給仕はお客の会計を行い、
食後のテーブルを片付け、綺麗に「建て直」す。
そんななかにも新たなお客が現れ、給仕に待ち時間を訊ねる。
他方、料理人たちはワダを揚げたかとおもえば、ビリヤニがなくなり、
カレーを補充したかとおもえば、コルマがすっかりたいらげられている。
しかも、調理だけでも死ぬほど忙しいふたりの料理人は、そのかたわら、
洗っても洗っても次から次に押し付けられる食後の皿や小鉢を、やっつけてゆく。
一言で言えば、つねに混乱へと向かってゆく力に対して、
スタッフは少しでも早く秩序を建て直してゆく。
この両者の闘いが、ランチタイムの開店から閉店まで4時間、続く。
アムダスラビー西葛西店ははじめて知った、
(繁盛店って、こういう状態のことだったのか。)


もちろん、この人気がいつまで続くかなんてことは、誰にもわからない。
おそらく三週間もしたらだいぶ落ち着くだろうし、
あるいは、その後お客さんの入りが下降線をたどる可能性だってないとは言えない。
けれども、たとえどんな展開になるにせよ、
けっしてアムダスラビー西葛西店はうろたえはしないでしょう。
それが不遇の時代にそなわった足腰の強さというものです。
もっとも、このごろのように綺麗な日本女性のお客さんが増えると、
みんなたいへんにうれしがる。
それは、まぁ、あたりまえのことですね。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - 料理長として、いっそう頼もしくなったMugesh。

    料理長として、いっそう頼もしくなったMugesh。

  • アムダスラビー - ナイフ使いのアーティスト、Stephan Raj。

    ナイフ使いのアーティスト、Stephan Raj。

  • アムダスラビー - ジャニーズ系ネパール人、Santosh。(実はタンドール料理の名人です。)

    ジャニーズ系ネパール人、Santosh。(実はタンドール料理の名人です。)

  • アムダスラビー - レストラン運営のすべてをしっかり管理する、サプコタ・チャビラル。

    レストラン運営のすべてをしっかり管理する、サプコタ・チャビラル。

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2019/07訪問100回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

土日ランチブッフェの美女率が高い理由。(案外まじめな健康のはなし。)

ぼくは、人間のタイプはロケンロールで、
どちらかといえば毎日酒浸りなろくでなしなのだけれど、
同時に、食と健康 の話題が大好きで、
たとえば大西「美女な医師」睦子先生のコラムを読むのも好きだし、
またなにかの食事法に興味を持ったら、すぐにしばらく試してみます。


ダイエット系の食事法は、たいてい
炭水化物/脂質/タンパク質の摂取比率をどう取るか、
の、話題に終始していて。
さいきんは炭水化物を悪者にする考えが流行していて、
極端な考え方では、
肉200g、卵3個、チーズ120gを毎日食べましょう、
というMECダイエットが、あまりにも過激であるがゆえ、
ぼくは興味を持ちました。
しばらくやってみて、ぼくにもなかなかに充実感があって、
元気みなぎる感じがなかなかに良かったものの、
ただし、続けているうちに、ちょっとくたびれてきて、
おならが臭くなるのもちょっとげんなりしたもの。
なにしろ、このセオリーは、腸の健康のことをまったく忘れていて。
そこがちょっと問題ではないかしらん、と、おもった。
腸のことは大事に考えてあげなくてはいけません。
すなわちくだものや野菜をいっぱい食べて、
食物繊維を与えてあげて、乳酸菌もほどほどに摂ってあげなくては、
けっして腸は健康でいられません。
だって、ご自分の腸のなかの細菌たちはあなたの大切な友達ですから。
そして美女の腸は綺麗なピンク色をしているもの。
(肉眼で見たわけじゃないけれど。)


そういう意味でいかにも穏健なのは、地中海ダイエットで、
野菜、果実、豆、ベリー、ナッツ、オリーヴオイル、魚を食べ、
ほどほどにワインを飲むことを勧めています。
ハリウッドスターたちにもファンが多い食事法です。
ヴェジタリアン寄りではあるものの、
それでいて(場合によっては鶏肉や)魚も食べるところがなかなかに賢明で、
ぼくはこの地中海ダイエットが好きで、
ふだんの食生活は、これを理想にしています。


と言うか、ぼくの愛する南インド料理も、
いろんな野菜をあれこれおいしく食べることにおいては、
けっして地中海ダイエットに負けていません。
また果物大好きなところも同じだし、
ラッシーで乳酸菌も補給できるし、
こちらにはおいしい魚カレーだってある。
オリーヴオイルこそサラダ以外には使わないけれど、
インド料理は上等バターのGHEE、ココナツオイル、米油など各種の油を、
巧みに使い分けます。
(それでもコレステロール値が高くなったり、
高脂血症の恐れが出てくれば、フィッシュオイルサプリを補えば、
まったく問題ありません。)
きょくたんなはなし、糖尿病になるような人は、
たいてい野菜を食べる量が少なく、しかも、
ヴィタミン&ミネラルサプリさえも飲まない人にほぼ決まっていて。
しかも、たとえ糖尿病になったとしても、
ヴィタミン&ミネラル錠剤で、たいていは治ります。
たとえ大酒飲みが大酒飲みでありつづけていてさえも!
(医者でもない癖に無責任な・・・とおもわれるでしょうが、
しかし一部の医者はこのことが真実であることをよーく理解しています。
もっとも、製薬会社や病院の経営を考えれば、サプリごときの安上がりなもので、
大事な収入源たる糖尿病患者たちがこぞって治ってしまっては、
たいへんに困るのでしょうが。)


もっとも、食べ方によっては、南インド料理は
炭水化物愛がやや深すぎるかもしれません。
だって、ビリヤニは山盛り食べてこそ超おいしいもの、
あの幸福なエクスタシーはけっして手放せません。
しかし、それだってヴィタミンB群錠で補えばまったく無問題だし、
さらにいっそう理想的には、
マルチヴィタミン&ミネラル錠と、
各種乳酸菌錠剤および場合によっては、
SAT ISABGOL などの食物繊維粉を補えば完璧です。
すなわち、ぼくは大好きな南インド料理を、
やや地中海ダイエット的に解釈して、
多少(?)サプリで補って、愉しんでいます。


さて、以上のような考えに鑑みて、
アムダスラビー西葛西店の土日ランチブッフェ1200円税込みは、
たいへんにすばらしい最高の食事です。
たくさんの種類の野菜、豆、鶏肉、ときにはキノコや魚、果実を、
すばらしくおいしく、しかも食べ放題で1200円で提供している
レストランは(ジャンルにかかわらず)そうそうありません。
どちらかといえばヴェジタリアン寄りとはいえ、
それでもちゃんとちょっとは肉を食べるよろこびもまたけっして忘れません。
さいきんは美女率がけっこう高いこともスタッフ全員をよろこばせています。
みなさん、ちゃんとわかってらっしゃる、
アムダスラビーの土日ランチブッフェが、美女のための食事であることを。
ぼくには見えます、彼女たちのピンク色の綺麗な腸が。





きょう7月6日(土)のメニューも素敵だった。
まずステファン・ラジが作ったサラダが、
サラダボールのなかにキャベツと紫キャベツの千切りで、
脇に、ニンジンを葉っぱのような形に切ったもの3片が突き刺してあって、
そしてサラダのまんなかに輪切りのキューリが重ねて塔みたいになっていて。
愛嬌たっぷりな仕上がり。
しかもステファン・ラジは、トマトで薔薇をこしらえたりする、
カーヴィングも上手なんだ。
ぼくはおもったよ、
ステファン・ラジ、きみは「サラダ界のピカソ」を目指すべきだ、って。


ココナツ・チキン・プラオもまた、ステファン・ラジの担当。
卒のない無難な仕上がりで、彩りよく、おいしい。

さて、以下はムゲーシュ・シェフの仕事。
コリアンダーシード・チキン・カレーが、
まったり優美においしい。


ポテト&グリンピース・コルマは、
エレガントなシチューで。
じゃがいものカットがユーモラスで、
しかも、15分ほどクリーミーなソースで煮た
じゃがいもって、心底おいしいんだな、って、
いまさらながらおもったよ。


(アズキに似た)モチャイ豆の、プーリ・コロンブが、
ひかえめにタマリンドの酸味を活かしながらも、
その酸味もマイルドに抑えた優美な仕上がり、
けっしていっぱい食べる料理ではないものの、
ちょっぴりプラオにかけて食べると、
素敵なんですよ。
この料理を気に入ったお客さんもけっこういらっしゃって、
それもまたぼくをよろこばせた。


チャナダルマサラが、
豆を砕いてスパイスで煮た、優美なスパイシーポタージュで、
(ダルタルカ寄りの)エレガントさで、
優美においしい。


ムゲーシュのトマトラッサムが、
澄んだ綺麗な味で、酸味もまた綺麗で、胡椒の香りもうれしい、
南インド料理好きにとってサイコーなおいしさであることは、
とっくにアムダスラビーファンの常識です。


デザートのマンゴ-・ジェリーも、素敵だった。


ぼくはおもった、
ムゲーシュはひとまわり大きくなった。
もっとも、たとえば銀座アーンドラのラマナイア・シェフや、
経堂フィードタイムのモルゲシュ・シェフのような、
中年の円熟は、ムゲーシュの料理には、ない。
けれども、ムゲーシュの料理には、
堂々たる立派なスパイス知があって、
しかも、野菜のカットは多少雑だとはいえ、
しかし、どの料理にも元気いっぱいな若さがあって、
しかもさいきんはコルマもダルも超一流、
ビリヤニもムゲーシュが本気を出したときは、
悶絶するほどおいしい。
また、毎回毎回、なにかの挑戦があって、
それがまたぼくはおもしろくてたまらない。





経営者のゴヒル夫妻が、
どういう目的をもってアムダスラビー東日本橋店を出したのか、
それはぼくにはわからないけれど、
いずれにせよ、アムダスラビーの両店のスタッフのなかでは、
おたがいに、「バカヤロー、そっちに負けるものか!」
という競合意識が激しく燃え立っていて。
そんなわけで、いま、西葛西店のブッフェは、
料理監督ムゲーシュの本気度が、すごいですよ。
他方、東日本橋店のガネーシュ・クマール・シェフも、
タイプはまったく違うもののそうとうすばらしいのですが、
ただし、惜しむべきは、東日本橋店はブッフェの提供がないので、
(たいへん気の毒なことながら)同じ土俵で勝負できません。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/06訪問99回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ぼくらが心底うれしがる新しく素敵な世界は、HAPPYな人間関係からのみ、生まれる。

本格インド料理をふるまうことは、実はそれほど難しくない。
なぜなら、インドには13億人もの人間がいて、
良い料理人はとてつもなくたくさんいるから。
(もしかしたら東京都民の数くらいいるかもしれない???)
だから、経営者がかれらのうちの誰かひとりを連れて来て、
料理を作ってもらえば、
あっというまに本格インドレストランは生まれる。
しかもその良い料理人への賃金が多少安かったとしてもなお、
ルピー換算ではまんざらでもない額になる。
したがって、近年は在東京IT関係者たちが、
カネ持ちの道楽、すなわち副業で、
東京にインドレストランを持つことが、
ステイタスのひとつになっていて、
こうして一群の名店および名店候補が生まれた。


なかには、大山YAZHINIのように
最高にすばらしい悶絶するほどおいしい料理をふるまいながら、
しかし収益構造がうまく作られていなかったため、
たったの13ヶ月で潰れてしまった店もあれば、
他にも、なかなかおもうようにはゆかない店もいくつかあったし、
いまもある。
(たいていの失敗例は、場所選び、家賃に対する席数、
客単価、回転率、価格設定の計算が合っていないこと。
それらは、レストラン育ちの人間ならば誰でもできるかんたんな計算だけれど、
しかし、部外者はまずここでつまづいてしまう。)
この話題において顕著な成功例は、浅草サウスパークではないかしら。
いいえ、さまざまな例があり、そこには悲喜こもごもがありつつも、
総じてこの傾向はたいへんけっこうなことで、
ぼくは大いによろこんでいます。


ただし、ここにはもうひとつけっして忘れてはいけないことがあって。
ぼくは本格インド料理を愛しているし、
かつまた(多少の例外はありつつも、基本的には)
ぼくは調理技術の高い、巧い料理人しか好きにはならないけれど、
しかし、いちばん大事なことはそこではなくて。
たとえ、どれだけ本格インド料理レストランができようとも、
ただし、ぼくらが楽しくて、わくわくするようなレストランでなくては
まったく意味はなくて。
そんなレストランはまず、スタッフ自身がみんなして楽しんでいるもの。
ただし、楽しい人間関係をこしらえる方程式は、ない。
しかも、どんなに聡明なIT関係者であっても、
そこに気づく人は、ほぼいない。
それが証拠に、たとえば、
ひとりひとりは優秀なスタッフを揃えながらも、
しかし全体的には仲間割れの絶えない陰気なレストランはけっして少なくない。


さて、ここから先が本文で、案の定、
アムダスラビー西葛西店がぼくによって讃美される、
そんな予定調和的展開なのだけれど。
ただし、そんなアムダスラビー西葛西店であってなお、
初代マハリンガム、二代目ヴェヌゴパール、三代目ディナサヤランの時代には、
ラジャ・イン・ザ・キッチン、すなわち雇われ料理長が「キッチンの帝王」であって、
必ずしも、そこには雇われ人たち相互における民主的なたのしいふんいきは、なかった。
このレストランのふんいきが変わったのは、
四代目ムゲーシュ料理長になってからのこと。


振り返ればムゲーシュは、ディナサヤラン料理長時代にセカンドとして入り、
ディナサヤランに不当にバカにされ、下働きとしてコキ使われ、
理不尽にも無能として踏みつけられた。
しかもディナサヤランは「もしもおれさまがいなくなると、
たちまちこのレストランは傾くだろう」と悪心を発揮し、
ある日突然、インドへ帰ってしまった。
これぞ、まさに、「駆け引き」である。
経営者のゴヒル夫妻は激怒し、自動的にムゲーシュが料理長になり、
最初こそかなり危なっかしかったものの、しかし、
ムゲーシュはなんとかレストランを維持し、さらには客を増やした。
常連さんたちの多くは、必死でがんばるムゲーシュの味方になった。
そのタイミングでゴヒル夫妻が、ガネーシュ・クマールを呼び、
さらにいっそう経営を良好化させた。
つい先日まで、アムダスラビー西葛西店はふたりシェフ体制だった。
いまは、ガネーシュ・クマールが、
先日新たに誕生したアムダスラビー東日本橋店のシェフになって。
他方、西葛西店は、ムゲーシュひとりがシェフとして、
そして新たに二番手として、イケメンのステファン・ラジが入り、
ますます人気を高めています。


さて、繰り返すけれど、ムゲーシュはレストランのふんいきを変えた。
かれはもともと無駄に高学歴で、明るくお茶目な人間で、
自分がディナサヤランのセカンド時代に受けた不当な受難に
いまなお腹を立てていて、だからこそ自分が料理長になってからは、
料理人の同僚も、給仕長も、ヘルプも、みんながたのしく、
なんでも自由に言えるふんいきを作った。
しかも給仕長のサプコタ・チャビラルも、
「ジャニーズ系ネパール人」のSANTOSHも、基本的に料理人で、
他人の料理には厳しい。
ついでに言えば、おもに日本語関連ヴォランティアのぼくでさえも、
自分ではたいした料理は作れない癖に、潤沢な食べ歩き歴を持つゆえ、
つねに他人の料理を褒めるなんてことは、一切ない。


はやいはなしが、みんなそれぞれ笑顔で、冗談交じりに、
おもいおもいに言いたいことを言う。
たとえばぼくがガネーシュ・クマールのラッサムやサンバルに「だめ出し」をする。
そのときムゲーシュは、(わが意を得たり! というように)笑顔になる。
逆に、ぼくがムゲーシュのコルマに「ちょっと下手だよね」と言うと、
それを聞いたSANTOSHが笑いを堪えきれないようになる。
サプコタ・チャビラルはぼくに言う、「ムゲーシュは南インド料理は巧いけど、
北インド、パンジャビ料理は、ちょっと、ね。」
なお、ムゲーシュの名誉のために付け加えるならば、
これは1ヶ月まえのはなしで、その後、ムゲーシュは、
パンジャビ料理のウデを大きく上げた。
しかも、ビリヤニをムゲーシュが作るようになってから、
ビリヤニの売れ行きは大きく上がった。
しかも、最近はムゲーシュのデザートにも期待が集まっている。


だからといって、かれらもぼくも、
けっして年柄年中、辛気臭い顔をして、
料理の巧緻ばかりを話題にしているわけではない。
だいたいはムゲーシュもぼくもSANTOSHも、
他愛のないバカな話しかしないし、
ビラ撒きをするときだって、
道行く女たちの値踏みをしたり
他愛もないエロ話をおもいおもいにしたり、
ときには即興で歌を作って歌ったりするだけだ。
そしてまじめな人柄のサプコタ・チャビラルは、
まるで保護者のように暖かいまなざしで、つねにみんなを見守る。


きのうランチ営業のなか、ひそかに
ムゲーシュはあさって土曜日のランチブッフェのために、
ボンベイ・ハルワを作っていた。
たいへんポピュラーなデザートで、べつに驚くことはなにもないのだけれど、
シュガーシロップとコーンフラワーと水をかき混ぜてベースを作って、
カルダモンパウダーで香りづけして、カシューナッツとギーで、
リッチな味わいに仕上げたもので、
あえてほどほどの甘さに抑えた、上手なものだった。
いいえ、そんなことよりなにより、
ムゲーシュはぼくに言った、「先週のキャラメル・カスタード、
みんな、よろこんでただろ? あんなによろこばれたら、
クオリティ、落とせないじゃん!」


ムゲーシュのこの素直さ!
ムゲーシュは誰かと口喧嘩でもしようものなら、
悪口雑言罵詈讒謗がマシンガンのように飛び出す、
ほとんどぼくの分身みたいな奴なのだけれど、
しかし、そんなムゲーシュにはこんな素直さもまたある。


ぼくはアムダスラビー西葛西店がただただ好きだ。
さぁ、この週末はどんなブッフェになるだろう?
いまから楽しみだ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/06訪問98回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

4人はアイドル。

アムダスラビー西葛西店に強力なライバルが登場!
アムダスラビー東日本橋店ですよ。
東日本橋店は、(SITAARA表参道店ほどではないものの)
ちょっぴりchic な、大人っぽいふんいき。
ブッフェは提供せず、ア・ラ・カルト中心。
シェフは、「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマール。
かれはまだ32歳ながら、料理人経験は20年近く、
また他のスタッフはさらに年齢が高く、経験豊富な中年男ぞろいです。
この采配は、すべて経営者のゴヒル夫妻によるもの。


この展開を知ってぼくもムゲーシュも驚き、嘆いたもの。
なぜって、shy なクマール、
お茶目で陽気なムゲーシュ、
ジャニーズ系ネパール人のSANTOSH、
そして、しっかり者のサプコタ・チャビラル、
この4人はみんな仲が良く、
おのずとレストランのふんいきも明るく、
いつも冗談が飛び交い、
笑いが絶えず、みんな楽しい。
当然料理もおいしい。
しかも料理人たちは楽しみながら
さまざまな挑戦や冒険を試みる。
お客さんもいっぱい詰めかけ、
事情通は、クマールやムゲーシュに拍手を送る。
多少、話を盛って言えば、4人はアイドル、
ぼくはそうおもったもの。
そんなユニットが壊れてしまうなんて、
ぼくにとってはSMAP解散に相当するショックだった。


もっとも、アムダスラビー西葛西店はイケメン運が良く、
新たに入ったステファン・ラジがまた
笑顔がキュートなハンサム・ガイで、
性格もさばさばしていて、気が軽く、
アムダスラビー西葛西店の「4人はアイドル」路線は、
ますます好調に発展的に継続できています。
むろん、スタッフ全員、誇り高く確信しています、
「東京でいちばんすばらしい南インド料理ブッフェを提供しているのは
アムダスラビー西葛西店なんだ。」
かれらのその確信にはなんの根拠もないけれど。


おもえばガネーシュ・クマールは、
南インド料理を、多彩なレパートリーで
優美に作れることはもちろんのこと、
北インド、パンジャビ料理でさえも、
一流の北インド料理人たちのそれに、
まったく負けていないどころか、ともすればクマールの方が巧い。
なお、かれのビリヤニはいくらかプラオ寄りであるものの、
なかなかおいしい。
ただし、そんなクマールにも弱点があって、
かれの料理は南インド料理っぽさがやや薄く、
(もっとも、それについは東日本橋店のヘッドシェフとしては、
適性があると言えないこともないけれど)、
なぜかかれはラッサムとサンバルがヘボい。


他方、ムゲーシュ(31歳)は、無駄に大卒(IT系)で、
料理人になったのも大卒デビュー。
しかしかれは天性の勘とセンスの良さで、
ラッサムとサンバル、そしてドーサ類およびチャトニが圧倒的に巧く、
すばらしくおいしい。
ビリヤニも、ムゲーシュが本気を出したときは最高においしい。
いいえ、寄せては返す喜悦が脊髄を電流のように走り抜けるほど、おいしい。
(後註:たとえば、6月23日のマトン・ビリヤニは、まさにそういうものだった。)
かれが手をぬいたときのビリヤニは、まあまあ。
またムゲーシュは好奇心旺盛でしかも知性が高いので、
洒落たサラダをあれこれさまざまに作ってみせる。
(ただし、ムゲーシュの野菜のカットは、
ホテル育ちとはおもえないほど雑で、
そこがまたムゲーシュらしく、けっして憎めない。)
そしてムゲーシュは、コルマがちょっと下手っぽい。


つまり、ガネーシュ・クマールとムゲーシュのコンビは、
お互いの弱点を補いあい、かつまたお互いの得意ジャンルを尊重しあって、
ふたり力を合わせて、最高に魅惑的なブッフェを表現してきたものだ。
しかし、クマールはすでに東日本橋店のヘッド・シェフである。
ムゲーシュはあわて、うろたえ、緊張しただろう。
実は、東日本橋店開店に先駆けて、
アムダスラビー西葛西店では、数週間まえから、
ムゲーシュをヘッドシェフとした、(クマール抜きの)オペレーションが、
試験的に実施されていた。


ぼくは初回には、おもったものだ。
「ムゲーシュは南インド料理は巧いけれど、
他方、北インド、パンジャビ料理はだめだな。」
これはぼくのみならず、SANTOSHも同じ感想だった。
しかし、その後ムゲーシュは、
どんどん北インド料理のウデをも、上げていった。
また、ムゲーシュが担当するようになってから、
ビリヤニの減り方が早くなった。
(お客さんの反応は、正直なもの。)


ムゲーシュはほんの3週間で、
クマールとムゲーシュのコンビ時代と、
まったく遜色がないどころか、
むしろいまやムゲーシュの料理人としての美質が開花して、
新たなアムダスラビー時代の幕開けを果たした。
おもえば、ムゲーシュは、
アムダスラビー歴代料理人の系譜を引いていて。
初代マハリンガム、二代目ヴェヌゴパール、三代目ディナサヤラン、
そして四代目ムゲーシュという、南インド王道シェフの系譜を。
それに対してガネーシュ・クマールは、
そんな系譜に、新たに北インド、パンジャビ料理の世界を加え、
アムダスラビー西葛西店を成功に導いた人だ。


とりわけぼくがこの数週間で大感動したのは、ムゲーシュの、
シーフードビリヤニに「モチャイ豆のカレー」をかけて食べたときだった。
カレーは、アズキに似たモチャイ豆のうまみを最大限に引き出した
トマトベースのオイリーで塩気がガツンと効いたかっこいい仕上がり。
これを炊きたてのシーフードビリヤニにかけて食べたときの感動。
ただただ至福だった。
デザート枠では、Mysor Pak(ベサン粉とシュガーシロップを使った、
とってもちいさなサイズのケーキ)がなんとも素敵で、
ぼくも常連さんたちも、「ムゲーシュ、やるもんだねぇ。」
と感心したものだ。
余談ながらムゲーシュは、先日AEONで買った、
プリン・アラモード198円を食べながら言った、
「おれなら、もっとおいしく作れる。
次回、それを証明するよ。」
ぼくは「フルーツマルシェ、たっぷりピーチ」198円を
おいしく食べながら、そんなムゲーシュに感心したものだ。
(後註:これは6月22日のランチブッフェで実現された。
ムゲーシュのキャラメル・カスタードは、
イタリアン・レストランやフレンチビストロの基準において、
まったく遜色のない、素敵においしい仕上がりだった。
しかも、11時の開店時には、大きな大きなプリンで、
まるで夢のなかのプリンのようだった。
もっとも1時を過ぎると、形がぐずぐずに崩れてしまって、
カキタマのような見てくれになっていたけれど。)


ムゲーシュにせよ、ぼくの好きな他の料理人たちにせよ、
はたまた食べ歩き友達の佐野くんにせよ、
〈ぼくがどういう人間なのか〉、よーくわかっていてくれる。
ぼくは、優れた料理人たちには無限の愛を持って接し、
かれらを最大限に賞讃するけれど、
しかし、ぼくは、(ごくわずかの例外があるとはいえ、
基本的に)下手糞な料理人には見向きもしないし、
また、いったんは良い料理人であっても、
しかし、その料理人が堕落したとおもえば、
あっさり見限って、以降、まったく相手にしない。
レストランについてもぼくの好みははっきりしていて、
収益構造がしっかりできていいる店がぼくは好きだ。
逆に、収益構造ができていない店は、
たとえどれだけ料理がおいしく魅力的であろうとも、
ぼくはまったく褒める気にはならない。
わかってる、おれはひどい奴さ。
たとえなにかのきっかけで友達が減ったとしても、
ぼくはまるで気にしない。
もっとも、ぼくがそんなふうだからこそ、
ぼくがしたしい気持ちでいるところの料理人たちは、
ぼくのあれこれの評価を聞きたがってもくれる。


別の言い方をするならば、事情通たちの一部が囁く、
「ジュリアス・スージー、ドS説」は、あながち嘘でもなくて。
なお、一般にどう理解されているかはともかく、
実はサディズムの要諦は、
マゾヒストの望むサーヴィスをこころゆくまで提供すること。
すなわち、サディズムはサーヴィス業のエッセンスと通じ合っています。
と同時に、サディズムは批評とも通底していて。
対象への愛がなければけっして魅力的な批評は書けません。
そして理想的には、
批評家が、批評対象が抱え込んでいる無意識のファンタズムをつかまえて、
その人のファンタズムにあれこれの刺激を与え、
対象が感じる痛みを無限の快楽にまで高め、
かつまた自分もまたそこから最大限の快楽を引き出さんとする行為、
それが(語の最良の意味での)批評です。
もっとも、ぼくがSMを愉しんだのはもっぱら若い頃のこと、
さいきんはもはやぼくはそういうお年頃ではないけれど、
それでも、もしもマゾ趣味の美女が首にチョーカーを巻いて、
ぼくの前に現れたならば、きっとぼくはあなたに優しく微笑むでしょう。
おっと、ついついバカばなしをサーヴィスしてしまったけれど、
あなたはきっと呆れたでしょう、
「そんなアホアホ・カミングアウトになんの意味があるのか!??」 
ーーまことにもって、あなたのおっしゃるとおりです。


本題に戻りましょう。
きのう6月19日は、ムゲーシュの休日で、
ランチタイムはステファン・ラジがひとりで調理を担当。
ディナーは、SANTOSHがセカンドに就く。
ぼくは興味を持った、ステファン・ラジがどんな料理を作るのか。
さて、ランチでマトンカレーとチキンカレーをいただいたところ、
余計なことはやらないすっきりした仕上がりで、
色良く、香り良く、とくにマトンカレーはリッチな味わいだった。
ぼくはあらためて確信した、良い料理人は見た目も良いものだ。
いいえ、べつにイケメンに限ったはなしではなく、
アーンドラのラマナイヤ・シェフにせよ、
フードタイムのモルゲシュ・シェフにせよ、
キャラ立ちがすばらしいでしょ。
あの感じですよ。あれがなくちゃ、ね。


そんなわけで、ぼくはアムダスラビー西葛西店の、
現在を、たいへんによろこんでいます。
むかしふうに言うと、「災い転じて福が」訪れました。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/05訪問97回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

美女のあなたがインド料理に接近するとき、待ち構えているもの。

幸福な食事のために、必要な言葉はどんなものでしょう?
その答えは決まっています、「おいしいねぇ、ああ、おいしい。
あなたと一緒に食べているから、いっそうおいしい。」
小鳥のさえずりのような、泡のような言葉。
けれども、これ以外はほぼ要りません。
幸福とは、こんな他愛もない言葉をリフレインしてけっして飽きることのない、
そんな心の状態のことです。
さて、このエントリーの主題は、「幸福を作り出す言葉と、
幸福を壊してしまう言葉」についてです。


世界中に数ある料理のなかで、
インド料理ほどに魅惑的かつ官能的で、
しかも多様性に富んでいるゆえ、
探求のし甲斐のあるジャンルは、
そうそうないでしょう。
一生楽しみ続けていられる、魅惑の楽園です。
ですから、美女のあなたが、
なにかのきっかけでインド料理のよろこびを味わったならば、
それはまさに幸運であり、その先には、
夢のように楽しい世界が待っている可能性があります。


しかしながら残念なことに、どの世界にも、
運/不運というものがあって、
ともすればあなたの夢と期待をぶち壊しかねない、
おもいがけない伏兵もまた、潜んでいます。
さて、では、白雪姫たるあなたに毒林檎を喰わせようとたくらむ、
悪いおばあさんはいったい誰でしょう?
彼女の名は、インド系料理マニアたちおよび、
一部のインドレストランに蔓延する
「主知主義」です。





そもそも美女にとってレストランは、
お姫様気分を味わいに行く場所です。
彼女は髪型を整え、季節にふさわしく、
かつまた綺麗に見える服を選び、
軽く(あるいは時に入念に)化粧をほどこし、
アクセサリーをつけ、レストランに向かいます。
お姫様気分を味わいに。
たとえば、フランス料理のレストランは
そのことを深く正しく理解し、
お客である彼女のよろこびを最大限にすべく、
あらゆる努力を惜しみません。
しかし、他方インドレストランのほとんどは、
この最重要事項をまったく理解していません。
ここにすでに不幸のはじまりがあるのですが、
しかもそのうえ、前述の
「主知主義」という名の悪いおばあさんさえもが、
待ち構えています。


たとえば食べログのインドレストラン評価は、
なかなかに公平で、おおむね妥当なものだと、
ぼくはおもっていますが、同時に、
この場所は、悪いおばあさんたちの巣窟でもあって。
まず、美女レヴュアーのあなたが、
インドレストランのレヴューを投稿しようものなら、
たちまち「いいね!」がやたらとつきます。
その多くは「インド料理おたく男」たちによるもので、
かれらはおおむね悪気は一切ないばかりか、
なろうことならば、かれらは、
美女(あるいは推定美女)とお友達になって、
大好きなインド料理の話をしたいだけなのですが、
しかし、すでにかれらの心には「悪いおばあさん」が棲みついていますから、
おのずと unpeaceful な展開が待ち構えています。


そもそもこの小世界には、たくさんの暗黙のルールがあります。
たとえば、「どれだけナンがおいしかろうとも、
そしてまたどれだけバターチキンカレーが魅惑的だろうとも、
けっして褒めすぎてはならない。」
美女のあなたは憤慨するでしょう、「なんていう不条理!??」
そうです、あなたのおっしゃるとおりです、
しかし、この小世界では、それらは
インド料理未熟者が褒めるもの、と決まっています。


また、ネパール人経営のインドレストランが、
どれだけすばらしくおいしかろうと、
せいぜい3.7点ていどに留めることもまた、
この小世界の不文律です。
高得点をつけて良いのは、プルジャダイニング、
タカリバンチャ、ネパリコ、ナングロガルなど、
ネパール料理に特化した専門店だけです。
(なお、事情通の読者は、このリストのなかに
あのサンサールが抜けていることに、
底知れぬ理不尽を感じるでしょう。)
むろん、美女のあなたもまた理解に苦しむでしょう、
「そんなルール、わからないし、わかりたくもないから!」
そうです、あなたのおっしゃるとおりです。
しかし、これもまたこの小社会の暗黙のルールなんです。


はたまた、パキスタンおよびムスリム系インド料理については、
ムスリム文化についての小教養を披露したくてたまらない、
そんなおたく男(稀には女)たちが待ち構えています。
さらには、この一連の話題において、
もっとも「悪いおばあさん密度」が高いのは、
なんと言っても、南インド料理です。
いわく「スプーンとフォークで食べる奴はビギナー、
指を使って食べてこそ、南インド料理の
本当の(!)おいしさがわかる。」
「(南インドのワンディッシュプレートたる)ミールス、
そしてそれに準じたブッフェは、混ぜて食べてこそ、おいしい。
その混ぜ方もけっしてなにからなにまで混ぜればいいのではなく・・・」
かれらのうんちくは留まることを知りません。


美女はたちまち我慢の限界を越え、悲鳴をあげることでしょう。
「助けて! もう嫌! わたしはただ
お姫様気分を味わいに来ただけなのに、
なんでこんな貧乏臭い男どもに(稀には女に)
説教されなきゃいけないの!??
わたし、もう、帰る! 2度とインド料理なんか食べないから!
食べてやるものですか! なによ、あんたたち、
ダサくてモテない癖に。
歯なんてターメリックでまっ黄色で、おまけにデブ。
話題と言えばインド料理のうんちくしかない癖に!
美女のあたしとつきあおうなんて千年早いわ! 死ねッ!」


彼女の怒りは同情に余りあります。
もしも、それがアンジェリーナ・ジョリーであれ、
ジュリア・ロバーツであれ、レディー・ガガであれ、
マドンナであれ、(彼女たちは全員、大のインド料理好きです)、
しかし、もしもインド料理に興味を持ち始めた時期に、
こんな「うんちく攻め」に見舞われたならば、
けっして彼女たちは、現在のようなインド料理熱愛者には、
ならなかったことでしょう。





それはそうと、この一連の(不穏な)話題は、
いったいどんな脈絡で、
アムダスラビーの評価に結びついてゆくのでしょう???


それはアムダスラビーが、2014年の4月開店から、
約4年間にわたって、「マニア評価だけが高いものの、
しかし、吹けば飛ぶような小黒字しか稼ぎ出せない、
一般客にはまったくモテないレストラン」だったからです。
人は自分がモテなければ、なぜモテないのか、理由を考えるもの。
レストランだって同様です。
アムダスラビーはいつもおもってきました、
「モテたいなぁ。もっと愛されたい。できることならば美女に。」
しかし、だからと言って、けっしてマニア度・現地度は下げたくない。
「本気の南インド料理」という看板は、ゼッタイに下ろしたくない。
そもそも西葛西には、インド人その他の外国人と日本人が混在していて、
もしもインド人客が寄りつかなくなれば、
たとえ経営が順調であったとしてさえも、
しかしけっしてインド人料理人のプライドは維持できません。
しかも、アムダスラビーにはSITAARA青山のような
chic な内装があるわけでもなく、はたまた、
(当時はまだ存在していなかったとはいえ)
バンゲラズキッチンのような、
特権的な魚の調達ルートがあるわけでもありません。
(もっとも、アムダスラビーがよく使う
サニーモール内マルエイ鮮魚部は
たいへん良い魚を入れていますし、
はたまたゴヒル夫妻は、かつて築地市場消滅間際には、
築地探訪もかねて、築地で魚を買ってきたことも
ありましたけれど。)


なお、最近のアムダスラビーは、そこそこモテるようになりました。
その理由は、まずは2代目経営者のゴヒル夫妻の経営上手。
ガネーシュ・クマール、ムゲーシュ、サプコタ・チャビラル、SANTOSH、
この4人のチームワークと、料理のPOPさとマニアックさのバランスの良さ、
そしてかれらの仲の良さ。
さらには、いくつかの出来事がほぼ同時期に起こったこと。
すなわち、食べログ百名店に選ばれたこと。
ジャニーズのHiHi Jetsが食べに来てくれたこと。
東京12チャンネルがゴールデンタイムの番組で取り上げてくれたこと。


と同時に、ぼくはこんなふうに理解してもいて。
こうした小幸運群を呼び寄せた最大の理由は、
アムダスラビーが長いあいだ、心底モテなかったゆえ、
モテたいなぁ、と、煩悶しつづけたからではないかしら。


長い不遇の期間のなかで、
アムダスラビーが見出した姿勢は以下のとおりです。
主知主義を求める人にはこころよく知識を提供し、
また、食の官能を味わいたい人には、
知識無用で、ごちそうを多彩に提供すること。
たとえば、アムダスラビーの
ブッフェの料理名がアルファベットと日本語の二重表記で、
日本語表記においては、ビリヤニを「釜飯」と、
サンバルを「けんちん汁」と、パロタを「うずまきパン」と、
コルマを「シチュー」と、
クルチャを「ほとんどナン」と書くことには、
うんちく嫌いの人には、うんちく抜きで、ごちそうを体験して欲しい、
そんな願いが込められています。


事情通の読者の多くは、ここまで読んで大いに呆れたことでしょう。
「ジュリアス・スージー、おまえはどんだけずうずうしいんだ!??
なにをたわけたことをおまえは抜かしてやがる!
おまえこそが、誰にも増して、
”悪いおばあさん”ではないか!」
はいはい、あなたのおっしゃるとおりです。
ぼくだってわかっています、
ぼくの心にもまた”悪いおばあさん”が棲んでいることを。
しかし、そんなぼくだって学んだんです、
悪いおばあさんとともにあってなお、
それでも幸福にインド料理を愛し、
かつまたインド料理から愛される術を。


そんなわけで、インド料理に興味を持った美女のみなさんは、
どうぞ、アムダスラビーへいらしてください。
それでも用心深い方は、ジュリアス・スージーのいそうな時間を避けて?


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/05訪問96回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ソリストとしてのムゲーシュ。

ひとつの試験的な試みとして、
先週から週末ランチブッフェでは、
ほとんどすべての料理を、
ムゲーシュが担当しています。


これまではムゲーシュの担当は、
ラッサム、サンバル、サラダ、
そしてIdilly やドーサ、チャトニが中心でした。
他方、ガネーシュ・クマールがいわゆるカレーや
コルマ(=シチュー)、ポリヤル、そしてデザートを
担当していました。
もっとも、平日どちらかの休日には、
他方の料理人がメニューに載っているすべての料理を作ります。


ふたりの料理人はタイプがまったく違っていて。
ガネーシュ・クマールは、
13歳からレストランに入って、
すでに二十年のキャリアを持つ料理人。
基本的な調理技術がすべて非常に高く、
レパートリーは、南インド・タミル料理全般はもちろんのこと、
北インド・パンジャビ料理さえも多彩にしかもたいへん上手に作る。
演奏家に喩えるならば、
バークレー卒やコンセルヴァトワール卒といったタイプです。
ただし、なぜか、ラッサムとサンバルがヘボい。


他方、ムゲーシュは無駄に高学歴で、
大学でITを学んだものの、ホテルに就職し、
あらゆるポジションをまわった後に、
料理の道を選んだ。
ムゲーシュは、ラッサム、サンバルが抜群にすばらしく、
またIdilly もドーサもチャトニも最高に巧い。
また好奇心旺盛でもの知りゆえ、
(野菜のカットは雑な癖に)
サラダのヴァリエーションが広い。
もしもムゲーシュをミュージシャンに喩えるならば、
いかにもストリート系で、たとえば、
キース・リチャーズを連想します。
できることの幅は狭いけれど、
しかしそのできることをやったとき、
サイコーにかっこいい。


そんなわけで、ガネーシュ・クマールと、
ムゲーシュのコンビは、お互いの弱点を補い合って、
ふたりが、それこそバンドの要となって、
最高の高みを作り出していたもの。


しかしながら、アムダスラビーでは、
あれこれの可能性を視野に置きつつ、
ここしばらくの週末ランチブッフェでは、
試験的に、ムゲーシュひとりがほぼすべての料理を作る、
そんな試みをおこなっていて。


ぼくは4回のブッフェを食べて、
たいへんにおもしろかったと同時に、
なんとも言い難い、独特な感想を持った。


音楽に喩えるならば、
トッド・ラングレンがひとり多重録音でつくりあげたソロ・アルバムや、
かまやつひろしさんが同様の手法で仕上げたソロアルバムを、ぼくは連想した。
けっして「巧い/下手」では測れない、独特の世界。
なにか別の尺度を要求するような、別種の世界。
ムゲーシュは成長が早く、ぐんぐん巧くなっているものの、
ただし、そこには微妙な危うさもあって。
ただし、そんな危うさも「込み」で、
料理人ムゲーシュの魅力はある。


ついでながら、クマールが26日担当した Bun Parotta
(少し厚めに焼き上げるパロターうずまきパン)は、
エッジがクリスピーで、内側ふっくらな、
最高の焼き上がりで、ここでもまた、
クマールは、ちょっぴり得をした。


どんなレストランも生き物です。
アムダスラビーの今後に、目が離せません。


(後註)ムゲーシュの名誉のために付け加えるならば、
6月1日(土)と2日(日)のランチブッフェもまた、
ムゲーシュのソロ調理で、とくに2日がサイコーだった。
アムブール・チキン・ダム・ビリヤニ。
キャベツとニンジンのライタ。
春巻状に巻いてある小マサラドーサに辛味の効いたトマトチャトニ。
カリフラワーとインドコーヤドーフのカレー。
じゃがいものスパイシー炒め。
そしてメインは羊肉団子カレー。
デザートはセミヤパヤサム。飲み物はマンゴージュース。
たいへんバランスの良い、リッチなブッフェだった。
ぼくはムゲーシュに惚れ直した。
おもうに、ムゲーシュは南インドタミル料理が圧倒的にすばらしく、
逆に、北インド、パンジャビ料理が弱い。
したがって、あらゆる料理を得意の南インド料理に引き寄せて作ると、
今回のような高いクオリティが生まれるのではないかしらん。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/05訪問95回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

教えてSantosh、ナンの秘密を。

あなたが少しでもインドレストランで召し上がっているならば、
タンドール職人のことを「かっこいい♪」と、
おもったことはありませんか?
温度設定もできない、あの原始的な釜を、
料理人たちは自分の経験則だけで、
自由自在に扱い、
おいしいナンや、タンドーリチキンを焼き上げます。
そんなかれらは、
いったいどんな魔術を使っているのでしょう???
きょうはナンのおはなしです。


アムダスラビーは、
「本気の南インド料理店」を標榜していて。
ならば、もしもパンを語るならばあくまでも
パロタ(うずまきパン)か、ドーサであって、
けっしてナンではないでしょ。
そんな意見もあるでしょう。
けれども、他方で、レストランは
お客様のよろこびのために存在してもいて。
お客様が「わたしはナンを食べたい♪」
とおっしゃるならば、ナンを提供するのもまた、
レストランの心意気というもの。
(アムダスライーは、タンドール釜も持っているのですから。)
しかも、アムダスラビーのナンは、
けっしてやりすぎない節度があって、
焼きたては炭の香りもかぐわしく、
おいしいんですよ。


そこでぼくは、タンドール担当の、
「ジャニーズ系ネパール人」の、
SANTOSHに訊ねてみた、
「ナンはどうやって作るの?」





SANTOSHは言った、「まずね、
牛乳2リットル、
ベイキングパウダー150グラム、
砂糖500グラム、
塩50グラム、
卵10個、
水3リットルをwisk (かき混ぜ器)でかき混ぜて、最後に、
マイダ(=強力粉=日清製粉のCamellia )を10キログラム入れて、
しっかりかき混ぜる。

30分ていど置いておくと、ねばりけが出てくる。

そしてそれを、ひとりぶん200グラムで、ボールを作ってゆく。

注文が入ると、このボールをひとつ取って。
両手でキャッチボールして、叩いて、伸ばして。
最後に「涙の雫の形」にして。
200℃ていどに熱せられたタンドール釜の側壁に貼り付けて、
だいたい2分ていどで焼きあがります。


もしも釜の温度が低いと、ナンの生地が側壁にひっつかないで、
落ちてしまうし。逆に釜の温度が高すぎると、ナンの裏側が焦げすぎたり、
場合によっては燃えてしまったりします。
また、もしもタンドール釜の掃除をおこたっていると、
焼きあがったナンの裏側が、
炭だらけみたいに汚くなります。
だから、タンドール釜は、いつもクリーンアップ。
これ、important です。」


ぼくは言った、「ありがとう、SANTOSHのお陰でぼくは
ナンについておおよそのことを理解できた。
そこで次の質問は、世の中のインドレストランは、
どこも多かれ少なかれナンの焼き上がりが違うでしょ、
それはどういう理由に拠るものなの?」


SANTOSH は答えた、「たいていは、
ベイキングパウダーと卵の量の違いかな。
たとえば、これ以上ベイキングパウダーの量を増やせば、
いっそうソフトにはなるけれど、でも、消化に負担がかかる。
卵の量をあと5個増やせば、もっとソフトにはなるけれど、
ただし、これは趣味の問題。ぼくの価値観では、いまの量が最適。
その他の観点では、タネを仕込んでから何時間後に焼くか、
そのポイントもあるよ。タネを作ってから1時間後から、
ナンを焼くことはできる。でも、理想的には、
タネを作ってから8時間後くらいがベスト。
もっとも、タンドール職人はみんな人それぞれ自分の意見があるだろうけどね。
ぼくは、こんな考えで、ナンを焼いているよ。」


ぼくは言った、「ありがとう、SANTOSH。
きみのお蔭でぼくは、ナン博士になれたよ。
けっして自分では焼けない癖に。」


このエントリーを読んだ人は、
あなたの生活圏の、
あなたのお好きなインドレストランで、
もしもレストランが混んでいない時間ならば、
タンドール担当に、「おいしいナンの秘訣」について、
訊ねてみてはどうでしょう?
きっと、おもいがけず、素敵な話が聞けるかもしれませんよ。
いいえ、もちろん西葛西のアムダスラビーまでいらっしゃるのも、
すっごくおいしく、そしてまた超楽しいですよ。





他日、週末ブッフェのラストオーダーも過ぎた頃、
残り物の、Carrot Beans Poryal
(ニンジンとインゲンのスパイシー炒め、
ココナツの香り)を、ナンの内側にくるんで、
SANTOSHに焼き上げてもらうことを、
ぼくはおもいついた。
いわゆるStuffed Naan のヴァリエーションである。
SANTOSHは、こころよく引き受けてくれて、
焼きあがったそれは、もちもちのナンの内側に、
オレンジ色のニンジンと緑色のインゲンがいっぱいで、
ココナツファインの甘い香りも華やかでたいへんにおいしく、
ぼくはStuffed Naan には未知の可能性があるなぁ、
と、おもったのだった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - ジャニーズ系ネパール人、SANTOSH

    ジャニーズ系ネパール人、SANTOSH

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2019/05訪問94回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ムゲーシュ・シェフのチキン・ビリヤニ、その裏技とは?

今週は月曜日がクマール・シェフの休日で、
自動的にムゲーシュがワンマンシェフになる。
ぼくはちょっとした雑用でレストランに呼ばれ、
それを終えたら、ムゲーシュが言った、
「ビリヤニ、食べていきなよ。」


ぼくは毎週末のランチブッフェで、ほとんど毎週二回、
アムダスラビーのビリヤニを食べていて。
それはいかにも南インドのヒンドゥースタイルのダムビリヤニで、
香り良く、それほどには色むらがなく、お肉少なめの、
おコメをおいしく食べる楽しみに満ちた、優美で上品なおいしさだ。
(もっとも、ここ数ヶ月のアムダスラビーは、
いくらか黒字が大きくなっていて、
そこで、先日から、事実上、多少ながら、
肉を増やすようにはなりましたけれど。)
それは基本的にクマール・シェフが手がけていて、
ぼくにとっては、誰のどんなビリヤニよりも慣れ親しんだもので、
ぼくは大好きであるとともに、
もはや驚くことなどなにもない、
と、おもっていたもの。
ところが違ったんですよ。


待つこと15分。テーブルにチキンビリヤニが届いた瞬間、
ムゲーシュがぼくに自分のビリヤニを勧めた理由が、
ぼくはよくわかった。
香り良く、黒に近いブラウンカラーのオニオンフライが
ほどよくまぶされていて。
米粒には色むらもそこそこあって、
しかも一口食べれば、おコメにはうまみが上品にのっていて。
しかもチキンには辛味のキックが効いていて、
マサラは奥行感をそなえていて。
総じて、ムゲーシュの新境地と、その自信のほどが、
よーーーーくうかがえた。
ぼくはムゲーシュに訊ねた、「どうやって作ったの?」


ムゲーシュが言うには、こんなレシピであるそうな。
まず最初に、鍋底で、
グリーンカルダモン、
シナモンスティック、
ベイリーフ、
フェンネル、
オニオン、
ジンジャー、
ガーリックをオイルで炒め。
ヨーグルトを加え、ペーストふうのスパイシーソースを作り。


他方、あらかじめ1時間かけて、
羊を「掃除する」ときに削除する脂身の部分のみを、
水煮して、うまみのあるスープストックを作っておいて。


前述のスパイシーソースの上に、バスマティ米を振り撒いて。
そこにスープストックを入れて、米を炊き上げる。


同時に、そのあいだに、フライパンで、
鶏肉をギー(上等バター)と自作のビリヤニマサラと、
チリパウダーと塩で、炒めてゆく。


そして最後に、炊き上がったごはん(=プラオ)と、
炒めたチキンを併せて、数分、蒸らして、提供される。


ぼくは、ムゲーシュの語るレシピを聞いて、たいへんに感心した。
あらかじめスープストックをこしらえて、ビリヤニのうまみを増強する。
この技法は、いかにもフランス~イタリア料理のテクニックを密輸したもの。
けっして、もともとインド料理にあった技法ではありません。
しかし、アムダスラビーにおいては、クマール・シェフが、
まず最初に、この技法(ダシをとる)を密輸して、
たとえば、野菜プラオに、野菜の水煮ダシを使うようになった。
そこで、ムゲーシュは一緒に仕事をしているゆえ、この技法に間近に接し。
そしてムゲーシュは考えたのではないかしら、
「おれだったら、この技法をこんなふうに活かす」というふうに。
ムゲーシュのこの意図は、成功していて。
ヒンドゥー・ビリヤニの最高の優美が実現されていた。


いいえ、ぼくが言いたいことは、けっして、
クマール・シェフとムゲーシュ・シェフの、
ふたりのビリヤニの優劣ではなくて。
いまのアムダスラビーの4人のスタッフの仲の良さと、
ガキみたいに無邪気な幸福、そしてそこにまじめに息づく競い合いと
切磋琢磨のドラマを、
ぼくはサイコーにすばらしいと感じる。





クマール・シェフは、いま32歳ながら、
13歳のときからレストラン育ちで、
キャリア20年に近い。
基本的な調理技術がたいへんに高く、
レパートリーは、
南インド料理はもちろんのこと、
北インド、パンジャビ料理も幅広く優美にエレガントに作る。
ただし、なぜか、ラッサムとサンバルが弱い。
そんな欠点さえもが、クマール・シェフの人間的な魅力を増していて。
しかも、学校教育とははやばやと縁を切っているにもかかわらず、
朴訥ながら、大半の日本人よりはいくらか上手に、英語をしゃべる。
ぼくにはよくわかる、
かれは料理が圧倒的に上手なだけではけっして充分ではなく、
なろうことならば端正な英語もまた要求される世界で、
できるかぎりがんばって生きてきたのだ。
クマール・シェフは基本的にシャイな、むかしふうの男です。
そんなクマール・シェフはことあるごとに、ぼくの名を呼ぶ。
そしてぼくが振り返るとクマールはぼくに言う、
”Anonee・・・”、
かれはささやかな日本語ができることをぼくに示して、
ぼくを笑わせたいのだ。


他方、ムゲーシュは31歳、
4年生大学でコンピュタ・サイエンスを学びながら、
なぜかIT関係には就職せず、ホテルに就職し、
レセプション、ベッドメイキング、キッチンで仕事を覚え、
けっきょく、料理を自分の仕事に選んだ。
ムゲーシュのラッサムとサンバルは圧倒的にすばらしく、
またIdlly やドーサもとても素敵だ。
またムゲーシュは見聞が広く、好奇心旺盛ゆえ、
(野菜のカットはホテル育ちとはおもえないほど粗っぽい癖に)、
サラダのレパートリーが広い。
しかも、ムゲーシュは成長が早く、料理がどんどん巧くなっている。
おまけに、かれは無駄に高学歴ゆえ、いちおう教養があって、
たいして読んでもいない癖に、日常会話にシェイクスピアを引用したりもできる。
もっとも、「ブルータス、おまえもか」みたいなやつだけれど。
ただし、ムゲーシュはハリウッド映画をよく見ていることもあって、
スタッフのなかでもっとも英語が巧く、しかもさまになっている。
ちなみに、ぼくの英語は、ぼくはアメリカやUKの映画をそれほど見てないし、
英語はむしろ斜め読みの読書で覚えているので、会話のテンポがのろく、
ムゲーシュによく笑われる。


そしてまたさいきんアムダスラビーに戻ってきた、
ジャャニーズ系ネパール人のSANTOSHは、
タンドール系がたいへんに巧く、
ナンひとつとってさえも、SANTOSHが焼くと、超おいしい。


給仕長のサプコタ・チャビラルは、
まじめな人柄と仕事のこまやかさが買われて、
いまや給仕長職として貫禄が感じられる。
本人は、もともと料理人ゆえ、
「この1年間、ちっとも料理を作ってないよ」
と、たまに、ぼやきながら。


4人のスタッフはみんな仲がいい。
しかも、みんなして、ことあるごとに、
ぼくをその輪のなかに、招いてくれる。
近未来のいつの日か、きっとぼくは、
いまのこのアムダスラビーのチームと一緒に、
冗談ばっか言いながら過ごした日々を、
懐かしくおもいだすことだとう。
あの頃は、他愛もないありきたりな毎日が、
ただただしあわせだったなぁ、って。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - ムゲーシュ。

    ムゲーシュ。

  • アムダスラビー - ガネーシュ・クマール

    ガネーシュ・クマール

  • アムダスラビー - サプコタ・チャビラル

    サプコタ・チャビラル

  • アムダスラビー - ジャニーズ系ネパール人、SANTOSH

    ジャニーズ系ネパール人、SANTOSH

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2019/05訪問93回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ラッサムとトマトとプライド。

時刻は午前十時過ぎ、
店内にかぐわしいスパイスの香りが立ち込めはじめるなか、
ぼくは料理の前へ置くプレート用に、
あれこれ料理名など書いていた。
するとSANTOSHが近所のスーパーマーケットから帰って来て、
こう言った、「きょうはトマト、高いね。
たいして大きくもないのに、5個で580円だよ。」


レストランは美食の工場ゆえ、
たくさんの食材が消費されます。
1日のチキンは10kg。
あれこれ野菜が3kg。
その他にグリンピースが1kg。
キャベツが3kg。
イタリアMalika 社の whole peeled tomatos 缶 2550g 半缶
バスマティライスは5kg~8kg。
中国産ニンニクもまたけっこうな量です。


したがってトマト5個が580円など、
取るに足らない話題におもえるかもしれないけれど、
いいえ、そんなことはまったくなくて。
トマトがいちばん高い。
しかも、もしも料理人が堕落への誘惑に負けようものならば、
イタリアMalika 社の whole peeled tomatos 缶 2550g
1缶 660円を使うこともできるし、
(実際、アムダスラビーもまた、ラッサム以外の料理、
おもにカレーには、こちらを使っています。)
しかも、さらにコストを下げたければ、
同社の(同量で)290円の缶さえあります。


Malika社の水煮トマト缶は、使い勝手の良いもので、
チキンカレーやマトンカレーにはうってつけで、
どこのインドレストランやイタリアンレストラン、
はたまた洋食屋でも使っているもの。
しかしながら、もしもインドレストランがこれを
あらゆるカレー類に使ってしまうと、
たちまち個々の料理の個性が消えて、
味は退屈になるものだし、実は使い方が難しい。
しかも、「南インド料理の魂」を、
サンバルとともに担っているところのラッサムに至っては、
もしも水煮トマト缶を使ってしまえば、例外なく、
ラッサムのかけがえのない美質を大きく損なうことに
なってしまいます。
ラッサムには、フレッシュトマトでなくてはいけません。


いちおう説明を入れますと、
ラッサムとは、ニンニクのうまみのある、
黒胡椒の澄んだスープに、
タマリンドとトマトの2種の異なった酸味を加え、
煮込んだ豆のうまみを足し、
コリアンダーリーフ(=パクチー)の香りをまとわせたもので、
この澄んだスープには、たいていは主役がなくて、
ただ構造だけがある、そんな独特なスープです。


もっとも「主役がない」と言っても、
いつもつねにいかなるときでもそうであるわけではなく、
ラッサムにはさまざまなヴァリエーションがあって、
ときに主役がフィーチャーされることもあって。
Anyway,アムダスラビーでは、
これまでこんなラッサムを出してきました。
なお、括弧内はタミル語表記。


Tomato Rasam(Takali Rasamu)/Pepper Rasam(Milagu Rasam)/
Garlic Rasam(Poondu Rasamu)/
Puli Rasam/Dhal Rasam/Corriander Rasam(Kothamali Rasam)
このあたりは、ラッサムのどの要素を強調するかの違いで、
わざわざ別の名前をつける必要は、それほどには感じられません。


酸味にパイナップルに置き換えると、
Pinapple Rasam ができあがります。
レモンに置き換えると、
Lemon Rasam が生まれます。
マンゴーに置き換えるならば、
Mango Rasam が。
アムラ(これを食べると白髪がたちまち黒くなり、
はげ頭から毛が生える・・・とインド人に
信じられている神秘の果実)を使えば、
Amla Rasam ができあがります。


コリアンダーリーフ(=パクチー)の香りを、
ミントに置き換えるとMint Rasam が、
そしてメティシードと入れ替えれば、
Vendigaya Rasam が現れます。
同様に、カレーリーフに替えれば、
Curry Leaves Rasam が。


その他、かわりだねラッサムとしては、
Crub Rasam(Nandu Rasamー蟹のラッサム)、
Mutton with Bone Rasam (羊肉のラッサム)、
Kozhi Rasam (鶏挽肉入りラッサム)、
Sakura Ebby Rasam(サクラエビのラッサム)、
Beetroot Rasam (ビーツのラッサム)、
Neera Rasam(ニラ入りラッサム)、
Coconut Milk Rasam ,
Ellu Rasam (コマ風味ラッサム)、
Curd Rasam (ヨーグルト風味ラッサム)、
そしておモチ入りの、お雑煮ラッサム・・・。


南インド料理の魂たるスープ、ラッサムを、
日本人に説明するときに、「お味噌汁みたいなもの」
として紹介されることが、まま、あって。
なお、両者の味型は、けっして似ていないのだけれど、
ただし、ふだんの食事になくてはないらないもので、
かつまた基本の味は決まっていつながらも、
さまざまなヴァリアントが存在する・・・
という意味では、たしかに両者は似ています。


そして、ブッフェのラインナップにおいては、
必ずしも南インド料理ばかりではなく、
適宜、北インド、パンジャビ料理も取りいれているとはいえ、
それであってなお、「南インド料理に本気の」(!)、
アムダスラビーでは、こんなふうにラッサムへの本気が示されています。


なお、ラッサムは、(サンバル同様)、
必ずしも、お客様全員にウケる料理ではなく、
好き/嫌いが分かれる料理ではあるけれど、
しかし、もしもラッサムをないがしろにしてしまったならば、
それはもう、けっして口が裂けても「南インドに本気の」(!)
インドレストラン・・・・などとは言えなくなるでしょう。
したがって(?)、アムダスラビーは、
開店以来いまに至るまで、
ラッサムについては、ただただ愚直なんです。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/04訪問92回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

頭で食べるな、舌で喰え! でも、その逆もまた真理なんです。

レストラン商売は恐ろしいもので、
たとえ、おいしく、めずらしい料理を、安価で提供していてさえも、
しかし、雨が降れば雨に負け、桜が咲けば桜に客を奪われたりもするものです。
お客が少ないとたちまちスタッフの顔色は曇るものだし、
たとえほんの15分でさえも、ダイニングにお客がひとりもいないときなど、
みんなそろってろくなことは考えないもの。
逆に言えば、人があるレストランに食べに行くということは、
自分の好奇心および食欲の満足のみならず、
場合によっては、レストランスタッフのプライドを維持することにさえも貢献しています。
ましてやあなたが美女であればなおさらです。


アムダスラビーの場合は、土日および場合によっては国民の祝日の
1200円ランチブッフェに、プライドを賭けています。
スタッフは全員、アムダスラビーのブッフェこそが、
東京でいちばんすばらしい(おもに南)インド料理ブッフェである、
と、(なんの根拠もなく)確信しています。
そしてぼくは、このレストランの日本語関係そのほかをヴォランティアで手伝っていて、
そんなぼくもまた、かれらの心意気に共感しています。
もしもあなたがインド料理のよろこびに身も心も捧げたいならば、
まずはアムダスラビーの週末ランチブッフェに30回ほど通うことが、
いちばんの早道です。
もっとも、たとえアムダスラビーのような名店(!)でなくても、
ご自分の好きなレストランに通うことはとても大事なこと。
たとえ、あなたが後に自分が愛して通ったそのレストランが、
それほどには優れていなかったことに気づいたとしても、
それであってなお、あなたがその店にリピートしたことは、
けっして無駄にはならなかったどころか、あなたの食の美意識を育ててくれたことでしょう。
実はぼくはひそかにおもっています、
リピートするレストランを持たないような人は、グルメでもなんでもありません。


さて、アムダスラビーは、ゴールデンウィークに負けるわけにはゆきません。
そこでこの3日間のアムダスラビーの本気度はすごかった。
4月27日(土)は、フィッシュビリヤニ(たぶん鯖)がどくとくに魅惑的で、
そして(もともとはムスリムを代表する料理)マトンニハリが、
ここではヒンドゥー教徒のガネーシュ・クマールによって、
優美でエレガントな仕上がりにアレンジされ、夢のようにすばらしかった。
そのうえ、蟹のラッサムまである!
おまけにお客さんひとりひとりに、パニプリ4個のサーヴィスまで!!!


4月28日(日)は、ナブラタンプラオが、まさに「7つの宝石」な、
すばらしく優美な炊き込みごはん。
そしてマラバール鯖カレー。これがまたほどよくスパイシーでおいしい。(小骨が多いけど)。
そのうえ、チキンペッパーフライが、ぼくを椅子から転げ落とすほどおいしかった!!!
しかも、冷製アヴィアル(ヨーグルト・シチュー)がまた素敵。
(もっとも、開店11時のお客さんにとっては、
まだ十分に冷えていなくって、中途半端な温度でしたけれど。)
おまけに紅色のビートルートサンバルがまた、
ビーツの甘みをスパイスで上手に抑えこんでいて、
いわゆるサンバルフレイヴァーとはやや違いながらも、
たいそうエレガントな魅力を放っていた。
さらにはラッサムはパイナップルを具材にして、キュートだった。


4月29日(月・祝)は、
「鴨カレー、カライクディスタイル」が、
鴨から染み出た上等の脂分がスパイス効果でもって立体的に魅惑的で、
アスリートのようにひきしまった肉質が実においしく、
ただし、骨がめんどうくさいものの、サイコーにおいしい!
また、鯖フライが、レッドチリで真っ赤に染まって外側カリッと揚げてある。
それでいて内側はしっとりジューシー。おいしいんですよ。
はたまた、「”インドコーヤドーフとヨーロピアンマッシュルームのシチュー、
チェティナド・スタイル”ー Chettinad Soya Chunks Mushroom Korma」が、
この日は家族連れが多かったなか、おもいがけずコドモたちにも食べてもらえた。
おまけに、この日のパンはタンドーリ・ロティで、
炭火の香りもこおばしく、小麦のうまみの深いおいしさ。
ジンジャーレモネードも、フレッシュレモンの酸味、ブラックソルトと砂糖の魅惑のバランス、
そして千切り生姜の清楚なアクセントがすばらしかった。


スタッフのこのがんばりが功を奏して、3日間、ほぼ上々のお客さんの入りで、
しかもお客のみなさんにはおおむね好評で、
結果、(ついでながら)スタッフのプライドも維持されました。





どの料理ジャンルにせよ、メニューを読めることこそが、グルメ道のステップ1です。
アムダスラビーの常連さんは、みんな、
アムダスラビーの公式フェイスブックかツイッターをチェックしていて、
そこには前日の夜に翌日のメニューが載るゆえ、
それを見て食べに行くか、行かないか、決める人が多い。
なお、そこでの告知メニューは、経営者のゴヒル夫妻が書いています。


ぼくはアムダスラビーの常連さんたちに感心します。
だって、一般的な人にとっては、アムダスラビーの告知メニューはただの呪文で、
メニューからどんな料理かを想像することは至難です。
しかし、アムダスラビーの常連さんたちは、
かれらはすでにインド料理の食べ手のプロゆえに、
メニューを読んで、どんな料理か、かなりなところ察しがつく。
もっとも、そんな常連さんとて、
Vaathu klumbu ヴァアトゥ・クランブが、鴨カレーのことだ、
と気づくほどの超絶的上級者は、さすがに少なかったんじゃないかしらん。
実を言うと、ぼくも気づきませんでした。
(なお、Vaathu は鴨のこと。
クランブはコロンブの表記揺れで、アルファベット表記においてもまた、
klumbu、kolombu 、Kuzhambhu・・・などなど表記揺れがはなはだしい。
もともとタミル語で、汁物のみを指すとはいえ、各種の味型を含み、
ほとんど「curry -カレー」という(味盲の英国人どもが名づけた)素性の怪しい言葉と似て、
たいへん大雑把な料理カテゴリーです。
もしも Duck curry と書いてあれば、目をらんらんと輝かせた人は多かったでしょう!)
はたまた、チキンペッパーフライのような、平凡な料理名の料理が、
しかし、食べてみたら超おいしくて、ぼくは身悶えするほどでした。
そんなわけで、まったく油断ができません。


料理名をどう書くか。
これについて高い見識を見せつけているのは、
なんといってもレストラン・フレンチです。
フランス人は、料理名を、「食材ー調理法ーソース」として書くことを発明しました。
「鴨の、ロースト、オレンジソース」というように。
したがってフランス料理については、ちょっと勉強すれば、
かんたんにメニューを読めるようになれもすれば、
料理名から料理を察することもできるようになります。
(よほど前衛的な料理人の料理を除けば)。


しかし、インド料理の料理名は、たいそう不親切で、
しかも国内に言語が二十以上も存在するゆえに、ほとんどカオスです。
アムダスラビーの場合はおおむねタミル料理を中心にしているとはいえ、
料理名はタミル語のみならず、ときにインドの一応の国語たるヒンディーが混じりもすれば、
はたまた一部の料理名には、インド各地の地名が混じりもすれば、
あれこれの食材や料理名の表記揺れなどもあって、
したがって料理名はむちゃくちゃに混乱しています。


アムダスラビーの場合は、レストランでの料理プレートの料理名は、
アルファベットと日本語の二重表記で、
せめて日本語表記だけでもわかりやすく書くことを心がけてはいます。
ただし、そこでは独特なローカルルールが採用されていて。
たとえばBiryaniは「釜飯」、Pulavは「炊き込みごはん」、
Sambhar はけっして「野菜カレー」とだけは書きたくないゆえに、
あろうことか、「けんちん汁」と併記してあって。
しかし、これは考えようによっては、
日本語ユーザーへのわかりやすさを徹底的に求めた結果、
新たな別のわかりにくさが生まれているおそれも、
やや、なきにしもあらずです。
料理名の書き方もエンターテイメントの一環、と、
おもっていただければ、さいわいです。
いずれにせよ、この、料理名のカオスを通過してはじめて、
われわれはインド料理の魅惑の世界に習熟することができます。
なんて悩ましいことでしょう。あぁ。

おまけ:インドのコドモの歌。Kulla Kulla Vathu
https://www.youtube.com/watch?v=wqhlXLdqOVM





ジャニーズ系ネパール人のSANTOSHが、アムダスラビーに戻ってきました。
かれはタンドールを担当し、かつまたホール仕事も手伝い、
おまけにぼくにとっては、ネパール語の先生でもあります。
かれのネパール語の教え方は、理路整然としていてたいへんわかりやすいので、
ぼくは感心して、かれのキャリアを訊ねたところ、
かれはネパールの大学で社会学を学んだそうな。
そしてSANTOSHは照れくさそうに言い添えた、
「(もっとも、ぼくは大学を)3年で辞めちゃったけどね。」


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/04訪問91回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

空間上のフルコース と 時系列上のフルコース。

東京のインドレストランの輝く星座を眺めてみましょう。
銀座バンゲラズキッチン、
錦糸町&御徒町ヴェヌス、経堂フードタイム、町屋Puja、
清澄白河&虎ノ門ナンディニ、銀座&御徒町アーンドラ、
浅草サウスパーク・・・・、
西葛西アムダスラビーもまたかれらに負けずにたいへんチャーミングな光を放っています。


同じく強い悦楽の輝きを放っている千歳船橋の名店カルパシは、
上記の星座から少し離れて、単独で、孤高に、高く創造的に、毅然と輝いていて、
カルパシは日本のインドレストランの宝です。
これらのレストランにはそれぞれ多かれ少なかれ個性があり、特徴があって、
だからこそ食べ歩きの愉しみが生まれます。
先日ひとつの星が消えました。大山Yazhiniです。
たった13ヶ月の命だったけれど、しかし、
ぼくはいまなおその圧倒的な輝きを忘れることができません。
噂では(どう考えてもあまりにも無謀な!)家賃75万円だったらしいことが災いしたらしい。
ぼくはYazhiniの消滅が悔しくて、もったいなくて、ほとんど心が壊れそうになります。


では、アムダスラビーの特徴はなんでしょう?
それは土日(および場合によっては国民の祝日の)ランチブッフェであり、
アムスラビーほどに、本気でブッフェをやっているインドレストランは、
おそらく東京には他に存在していないでしょう。
料理の完成度はひじょうに高く、しかも、その日ごとに料理構成が違うゆえ、
これまでふるまってきた料理のヴァラエティは、かるく500種を超えています。
これはまさに、魅惑のインド料理百科事典と呼びたくなるゆたかさです。
毎回12~13種のごちそうを1200円(コドモ600円、乳幼児0円)で提供できるのは、
けっして家賃19万円と無縁ではありませんが、同時に、
歴代経営者の心意気もまたあります。


では、アムダスラビーのブッフェと、南インドのワンディッシュプレートたるミールスの違いは、
どこにあるでしょう?
一品一品の料理は同じです。
ただし、ブッフェにおいてはそれぞれの食べ手が、
好きなように、おもうがままに、それぞれの料理を食べることができること。
すなわち、料理の盛り方、構成、量の配分などが、
すべて食べ手にゆだねられていることです。
この一点において、ときにアムダスラビーが「上級者向けの南インドレストラン」と、
呼ばれもする理由になっています。
もっとも、ほんとうは、ほんのちょっとした食べ方のコツがあるだけですけれど。


たとえば4月14日のランチブッフェで言えば、
ハイデラバーディ・マトン・ビリヤニが大好きな人は、
白いお皿にビリヤニを山盛りにして、
キャベツのコールスロウ(サラダ)を添えて召し上がって、
デザートに干し米のパヤサム(Aval Payasam)を愉しむだけで、
十分に楽しい食事が成立します。


はたまたヴェジタリアンの人ならば、
「ラジマ豆とじゃがいものカレー」と
パンの「ニンジンとピーマンのクルチャ」を中心に、
コールスロウも添えて、そして同じくデザートのパヤサムを愉しんで、
素敵なランチを愉しむことができます。
(なお、クルチャは、ナンの、派手好きの妹みたいなパンです)。


はたまた南インド料理マニアならば、
ビリヤニはたいていいつも出るのだから、
あえてビリヤニには目もくれず、
皿に白ごはん(日本米)を盛り、一方からトマトラッサムを、
他方からドラムスティックのサンバルをかけて、
マニアですから、サンバルのなかからドラムスティックをつまみだし、
歯でしごいて、果肉だけを味わって、皮は捨てます。
ついでにメドゥボンダ(コロッケのようなもの)なども、食べて、
ちょっと微笑んでみる。
こういう召し上がり方もかっこいい。


逆に言えば、1200円ブッフェなんだから、
並んでいるすべての料理を食べて、モトを取らなくちゃ・・・
というように食べてゆくのは、ちょっと、はしたない。
(また、稀に、アムダスラビーを低評価なさるレヴュアーさんを見かけるのも、
実は、食べ方のミスによって、ー気の毒にもー
ブッフェのかけがのえのない美質が崩壊してしまった可能性が大です。)
いいえ、ビギナーはそれで良いんです、
もっとも、それが食べ方の失敗であることに気づかず、
二度とアムダスラビーに訪れなかったならば、ちょっともったいないとはおもいますけど。
いずれにせよ、なにごとも体験です。
しかし、もしもあなたがアムダスラビーのブッフェに通って、
インド料理の魅惑の世界に心底魅了されたならば、
次は、さらなる上級者になってゆきましょう。





実は、けっしてアムダスラビーのみならず、
多くのインドレストランは、
たいへんゆたかなア・ラ・カルトを揃えているにもかかわらず、
しかし、夜営業の客は少ない。
しかも、その少ない夜客でさえも、
アムダスラビーで召し上がるのは、マサラ・ドーサ 1200円だったり、
ミールス(南インドターリ)1700円だったり、
チェティナド・クラブ・セット(蟹料理を中心としたセット)1700円だったりです。
他の南インドレストランもどこも事情は似たようなものです。


むろん、ミールスは超おいしく、めちゃめちゃすばらしいし、
また、チェティナド蟹カレーセットは、
インド料理好きならば、一度は食べるべき絶品ではあって、
ぜひ、みなさんに召し上がって欲しいものではあるけれど。
他に、夜営業で注文が入るのは、インド人客の場合は、
パロタ(うずまきパン)値段忘却 と、
マナガツオのフライのセット 1500円だったりします。
もちろん、いいんです。ぜんぶ、オーライ。
だって、食事って、自由のよろこび。
好きなように注文して、好き勝手に愉しめばいい。


ただし、ぼくがおもうことは、
日本人客はもちろんのこと、インド人客であってなお、
ア・ラ・カルトから好きな料理を選んで、
コースを構成して、愉しむ、
そんな愉しみ方をする人が、あまりに少ない。
これはちょっとあまりにももったいない。





たとえば夜のアムダスラビーで、
こんな注文をするのは、どうかしら。


(タンドリー)パニール・ティカ 1000円
チキンスープ 500円
マトン・スーカ 1500円
レモンライス 750円


はたまた、
スペシャル・サラダ 500円
ラッサム 500円
(ブッフェの小鉢一杯ではなく、ア・ラ・カルトで大きめの器でいただくと、
ラッサムのおいしさがいっそうよくわかります。)
そしてオニオン・ウタパム 1000円か、
はたまたチキン・クットゥ 1200円。
そして、マトン・ヴィンダル 1100円か、
あるいは、マトン・スーカ 1500円。
もしもマトンよりもチキンが好きな人ならば、
チキン・チェティナド 850円。


つまりぼくがこのエントリーでお伝えしたいことはこんなこと。
ミールスやブッフェで空間上の、インドごちそう世界に慣れたならば、
次は、時系列上のインドごちそう世界を探求してゆきましょう。
もしも、あなたがそんな一歩を踏み出してくれたならば、
そしてそんな食べ手がいくらかなりとも増えてくれたなら、
必ずや、東京のインドレストランもまた、
さらなるゆたかさに向けて、歩み出せることでしょう。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/02訪問90回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク-

南インド・フルコースミールスやブッフェは、5味? 6味? そしてASTRINGENT(渋み)って、どんな味?

おいしさを最大限に味わうには、良いレストランを選ぶだけではなく、
その料理が伝統的に育ててきた その料理に適切な食べ方 を知る必要があります。


かつて日本では、南インドのワンディッシュプレート、ミールスは、
(そして同様にブッフェもまた)、「混ぜることが大事」と喧伝されたもの。
なるほど、それはけっして間違っているわけではないにせよ、
ただし、たいへん誤解誘発的な説明でした。
実際は、ラッサムとごはんを混ぜる。サンバルとごはんを混ぜる。
なお、ラッサムとサンバルはいくらか混ざっても、それはそれで楽しい。
しかし、他の料理はせいぜいその料理とごはんを混ぜるだけで、
けっして、あらゆる料理を混ぜたりはしません。
もしもそんな食べ方をすればそれぞれの料理の味は壊れてしまって、
ミールスは(そしてブッフェは)台無しになってしまいます。
もしもお客がそんな食べ方をすれば、料理人はたいへんに不機嫌になる。
むしろ大事なことは、一口ごとに、辛い、酸っぱい、ミルキー、塩っぱい、
甘いなど、それぞれ違った味を味わうこと。
そうやって食べてこそ、ミールスやブッフェの喩えようもない愉しさが味わえます。


さて、先日ネットサーフをしていたら、興味深いコラムに出会った。
Sappadu means a full course meal that accommodates all six taste.
ざっとこんな意味ですね。
「サッパドゥというタミル語は、南インドのフルコース・ミールスのことで、
それらは、6つの味の料理で構成されています。」
ぼくはおもった、なるほど。ただし、6味だったっけ?


仮にそう分類するとして、では、その6味とはなんだろう?
コラムはこう続く。
SWEET (甘い。デザートのことですね。)
SOUR (酸っぱい。ラッサムやプーリコロンブのタマリンドの酸味のことですね。
はたまたヨーグルトもいくらか酸っぱい。)
BITTER(苦い。vathal kuzhambhu -ヴァッタル・コロンブとかのことですね。
後註:そのスパイス vathal は、むしろ ASTRINGENT と見なされているようだ。
くわしくは後述します。)
SALTY (塩っぱい。モールコロンブー冷製ヨーグルトシチューーや、
バターミルクのことですね。)
PUNGENT(辛味のことですね。これはチキンカレー、マトンカレーをはじめ、
いろんなカレーが該当します。)
ASTRINGENT(辞書で調べると、渋み のことですね。
さて、このASTRINGENTは、いったいどんな料理に該当するかしらん。


そこでぼくはムゲーシュとガネーシュ・クマールに訊いてみた。
ガネーシュ・クマールは答えた、
「Sappadu は、まずはおコメの意味なんだよ。
次に、いろんな料理やミールスの意味もあって。
きみもよく知ってるだろ?
いつものとおりだよ。

Sambhar
Rasam
Apparam(=papad)
Piccle
Butter Milk


そしてクマールは、ムゲーシュと顔を見合わせて、こう言った。
「でも、6味だっけ?」
ムゲーシュもまた考え込んだ、「5味だよなぁ。・・・
BITTER と ASTRINGENTの使い分け? そんなの考えたこともなかったよ。」
そしてムゲーシュは続けた、「いま、忙しいんだよ。休憩時間は終わり終わり。」





きのう2月23日(土)のランチブッフェは、こんな構成だった。
鶏挽肉ビリヤニ。(バスマティ)
チキンコルマ、カレーリーフの香り。
ヴァジ・サルナ。
ヴァッタル・コロンブ。
オクラとブロッコリのカレー。
ラッサム・メティシードの香り。
マッカイワダ。(とうもろこしのペーストの揚げ物。)
セサミ・ナン。
日本米ライス。
大根サラダ。
マンゴーラッシー。。


たいへんバランスの良い構成で、ぼくはおもった。
ミールスにせよ、ブッフェにせよ、
実は、けっして5味とか6味なんて大雑把にはとらえられない。
良い調理であればあるほど。
例のコラムの話題展開は、あれは、
虹の色をいくつの色として理解するか、
という問いに似ている。
われわれはつい自動的に、7色と答えるけれど、
でも、実際に見ているときは、けっして7色として見ているわけではなく、
色のグラデーションを感じているのではないかしら。
そもそも 虹を何色として理解するか、
それは民族ごとに違っていて。
2色ととらえる民族もあれば、
3色として理解する民族もいて、いろいろだそうな。
そもそも色の分類の仕方が、民族文化によって違う。
日本人はむかしから青と緑を同じフォルダーに入れていて、
他方、たとえば英国人は、オレンジと赤を連続的にとらえているような印象がある。





なお、もう少し調べてみて教えられたことにはーー。
まず最初に、このコラムニストが料理の味を6つに分けているのは、
どうやらインドに古代から伝わる生活哲学たるアーユルヴェーダの分類に
従っているためであるようだ。
アーユルヴェーダは、たんに味を6つに分類するのみならず、
それぞれの味にはそれぞれ異なった体への効用がある、と考えているようだ。
このあたりが、さすがに古代人らしく、現代人の目から見ればナンセンスだけれど、
しかし、人によってはそれをもまたロマンティックに感じるかもしれない。


次に、(けっしてアーユルヴェーダに限らず、現代においても一般に)、
ASTRINGENTは、タンニン(tannin)に由来する「渋み」を指すらしい。
紅茶、ワイン、アムラ、渋柿、柿、熟していない緑のバナナ、
おそらくはスパイス vathal にも、
はたまたハーブ類にもふくまれる「例の味」のことを指しているらしい。


なるほど、たとえば果実アムラ AMLA の味には、
アーユルヴェータ的にはすべての味が含まれていて、
それもあってたいへんすばらしい、という見解がある。
アムラは、マスカットに似た色と大きさの果実で、
食感も味もグリーンアップルに似ていて、
しかも、正確に言えば、その味には 渋味 もまた含まれていて、
したがって、アムラは甘くて、酸っぱくて、苦くて、渋い。
(もっとも塩っぱさや辛さはない、と、ぼくはおもうけれど。)
なお、アムラは神秘の果実と呼ばれていて。
インド人は信じています、アムラを食べると白髪がたちまち黒くなり、
禿げ頭から毛が生える、と。
アムラは瓶詰チャトニとしても売っているし、
おそらくインドでは、フレッシュな果実を用いてチャトニも手作りするだろう。
ただし、日本では輸入食材ゆえ値段がやや高いし、入手がやや難しい。
アムダスラビーではごくたまに「アムラ入りラッサム」を出しているけれど。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - AMLA

    AMLA

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2019/02訪問89回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥2,000~¥2,9991人

たいてい火曜日のムゲーシュと、ぼく。

アムダスラビーではふたりの料理人が働いています。
ガネーシュ・クマールとムゲーシュである。
週7日営業中、5日は、かれらふたりがともに(分担して)仕事をしていて。
たとえば、週末のランチブッフェならば、
クマールがビリヤニと各種カレー類を作り、他方、ムゲーシュが作るのが、
Rasam、Sambhar、そして Parotta やIdly などパン類、および、サラダなどです。


かれらふたりのタイプは大きく違う。
クマールは固太りで毛深く、微笑みを絶やさない、shy なタミル男。
かれは、タミルナドゥ州西部(ケーララ州寄りの)Coimbatore 出身で、
ティーンエイジの半ばからレストラン育ちです。
かれは基本的な調理技術を身につけた後、
オマーン国の首都マスカットに渡り、
5つ星ホテルのキッチンでキャリアを築きました。
かれの料理は、優美で、エレガントで。
かれのレパートリーは、南インド全般はもちろんのこと、
北インド、Punjabi料理さえもレヴェルが高く。
しかもかれは考えている。もしもクマールの料理によって、
「クマールの目の前の、そのお客さん」が微笑み、歓声をあげないならば、
それはクマールの負けだ。お客さんがよろこんでくれてこそ、
そのときはじめて料理人には存在価値がある。それはかれの哲学であり、
そこにはほとんど鉄壁の意志が込められています。
ただし、そんなクマールとて弱点もまたあって。
ふしぎなことにかれの、Rasam と Sambhar は、いささか精彩を欠いている。
そこで、Rasam と Sambhar は、ムゲーシュの担当になった。


さて、ムゲーシュは同じくタミル男で、州都チェンナイから60km 離れた
Mahabalipuram 出身。その地は、「小さなゴア」と呼ばれる観光地だそうな。
ムゲーシュもまた同じく毛深いけれど、
かれには陽気なガキっぽさがあって、naughty だ。
しかしそれでいて実はかれは、大学でコンピュータサイエンスを学んでいて、
比較的に教養がある。それでいてかれはIT関係には就職せず、
タミルの高級ホテルに就職した。そしてムゲーシュは、
レセプション、ベッドメイキング、そしてキッチン・・・と
各ポジションを担当した後、結局、料理人になった。
(余談ながら、ホテル時代には、
あるマダムが宿泊客として東欧からバカンスにタミルへやってきていて。
ムゲーシュは、彼女から「とってもかわいがられた」そうな。
ムゲーシュは彼女といまもFacebook で繋がっていて。
他方、彼女のFacebookには、いかにもしあわせそうな家族写真が掲載されています。)


ムゲーシュのホテル時代は、あれこれのポジションをまわって計3年。
その後、かれは(Deenathayalan料理長時代に)セカンドクックとして、アムダスラビーに入った。
そんなわけで、ムゲーシュは、いわゆる「ガキの頃からレストラン育ち」というタイプとは違って。
しかしかれはセンスが良い。
まず最初に。ムゲーシュは、Rasam 、Sambhar、はたまたIdly、Parotta など、
タミルナドゥ州の基本的メニューを実にタミルらしく、官能的に作る。
次に。かれは(ふだんの料理の野菜のカットはやや雑な癖に、それでいて)
ヴァイキング用のボウルに盛ったサラダには、
かれは器用にトマトをcarving して、”薔薇”をこしらえて添えたりする。
三番目に。かれはルシアン・サラダのような洒落たものも作ってみせる。
おまけに、かれはスーパーマーケットで日本のキノコやサクラエビを「発見」し、
料理に活用したりする、そんなお茶目さもある。
また、ムゲーシュはハリウッド映画をよく見ているゆえ、
(とくに経営者のゴヒル夫妻と話すときなどには)、
いかにもgood boy という感じの、比較的に上等の英語をしゃべる。
他方、かれはタミル語ネイティヴで、学校ではまったくヒンディを学ばず、
かれは来日後に(必要に迫られて)ネットでヒンディを覚えたそうな。
なお、かれの日本語はまったくの片言だ。
ただし、かれは「片言日本語」のリッチなガラクタコレクションを持っていて、
そこには、ろくでもない言葉が豊富に含まれている。
それらのほぼすべては、ムゲーシュがぼくのおしゃべりのなかから「盗んだ」ものだ。


ガネーシュ・クマールも、ムゲーシュも、ふたりとも、
アムダスラビー以外の日本のレストランでは、一切働いたことがありません。
しかも、経営者のゴヒル夫妻には本業が別にあり、
かれらにとってレストラン経営ははじめての挑戦だ。
ましてや、マーケットはかれらにとって異国の東京である。
おのずと、かれらはみんな、日本のお客さんたちについて、ゼロから学習します。
かれらのその学習には、なんのマニュアルもなく、教科書もない。
かれらが頼りにできるのは、かれらの知性と想像力だけだ。
そこが、最近のアムダスラビーの、独特な魅力の、源泉のひとつではないかしらん。
なお、このような了解には、ぼくのアムダスラビーへの身贔屓があることもまた、
疑い得ないけれど。


ぼくには、ムゲーシュに謝らなくてはならないことがある。
実はおととしの秋くらいまで、(かれがDeenathayalan料理長のセカンドクックだった頃)、
ぼくは信じていた。ムゲーシュは料理が下手糞だ。
なるほどじっさい当時のムゲーシュは、
けっしていまのムゲーシュほどには料理が巧くはなかったけれど、
とはいえ、当時のぼくのムゲーシュ理解は、
(いまにしておもえば)いささか不当ではあって。
その理由は、当時のDeenathayalan料理長が、かれ自身をbig chef として演出し、
そしてかれのポジションの優位性を保つべく、
「ムゲーシュは口ばっかりで使いものにならない」
というプロパガンダで、ぼくを洗脳したのだった。
おそらくDeenathayalanは経営者夫妻にも同じプロパガンダを試みたろう。
どこの会社でもよくある光景。”causing trouble for other people.”
レストランもまた例外ではありません。
あるいは、野人派のDeenathayalanにとって、
ムゲーシュの流暢な英語が(いつの日か自分の存在を脅かすかもしれないものとして)
怖かったの「かも」しれない。知は力だから。


他方、当時のムゲーシュは、ポジション上、Deenathayalanに敬意を払いながら、
いろいろと我慢しながら、いじらしく、けなげに働いていた。
また、当時のムゲーシュは、ぼくのことを、「なんだ!?? この変なじじい!」
と、おもっていたようだ。なるほど、かれがそうおもうのも無理はなく。
ぼくはたんなるヴォランティア・ヘルプに過ぎないにもかかわらず、
アムダスラビー開店から現在に至るまで、ほとんどずっとこのレストランに(少しだけ)
関わっていて、結果、いまではぼくが誰よりもアムダスラビーの歴史を知っている。
とはいえ、そんな「ぼく」の実態は、ただの「黒板へのメニュー書き」に過ぎないのだから、
ムゲーシュがぼくを怪しげにおもったとしても不思議はない。
しかも、当時のぼくは Deenathayalan と仲が良かった。


他方、おととしの秋、ちょうどディワリの頃、
Deenathayalanが(つまらない駆け引きをおもいたって)、
突然インドへ帰って。経営者のゴヒル夫妻は激怒したものだ。
high pressureの下、ムゲーシュは、絶大な努力で、アムダスラビーを延命させた。
一群の常連さんたちは、この時期の(いくらか危なっかしかった、
そんな)アムダスラビーを支持してくれた。
ムゲーシュはどんどん料理が巧くなっていった。
ぼくは不明を恥じた。
他方、そんなある日ムゲーシュは、ぼくが Tabe-log に書いたレヴューを読んで、
驚いて、ぼくに言った。Your writing is basically funny.
まず最初にムゲーシュは驚いた。ぼくの書く文章のなかに、
ムゲーシュが何度となく登場していることに。
次にムゲーシュは発見した。
ぼくの書く文章を通じて、「ぼく」という、あるひとりの人間の、内面を。
そしてぼくとムゲーシュは仲良くなった。





さて、ぼくはゆうべ、ムゲーシュがひとりで調理する日、
ディナーを食べにアムダスラビーへ寄った。
(たいていは火曜日だけれど、しかし今週は例外的に水曜日だった。)
ムゲーシュのRasam とSambhar はすばらしい。
したがってぼくは、南インドセット(ミールス)1700円に大いに惹かれたのだけれど、
しかし、ムゲーシュと、そして給仕のサプコタ・チャビラルのふたりのお勧めもあって、
結局、South Indian Duck Thali 1800円を選んだ。
食前酒は、コクトーが愛した pernod をオン・ザ・ロックで。400円。
黄色に近いオリーヴ・カラーが美しい。ぼくは pernod が大好きだ。


South Indian Duck Thali は、いわゆるワン・ディッシュ・プレートで、
ステンレスの大皿に、いくつもの窪みがついていて、
そこに以下の料理が盛られています。


鴨カレー。
ココナツライス。
チキン・ドラムスティック。(野菜のドラムスティックとはなんの関係もなく、
いわゆるチキンロリポップのようなもの。)
パロタ(うずまきパン)。
チャナダル・ワダ。
水菜のサラダ、ゴマ・ドレッシング。
デザートがグラブジャムンがひとつ。


まず、主役の鴨カレーがおいしい。
鴨は肉もさることながら、脂がまたおいしい。
鴨の脚1本から出た脂がスパイスと溶け合って、
グレイヴィーには、上等の深みが生まれていて、
そこには辛味のキックもまたあって。
しかも、肉はどくとくに無骨なものながら、
そこには飼育ものであるにもかかわらず、
ジビエに似た野性味が、いくらか残っている。
なお、鴨肉独特の臭みはスパイスが華麗に抑え込んでいて。
たいへんにおいしい。


また、ココナツライスには南インドらしいたのしさがある。
かろやかに炊き上げられたバスマティ米に混じって、
黒く小さなマスタードシードがいっぱい。
そしてチャナ豆、カシューナッツ、ピーナツ、
そして赤黒く光るとうがらしが1本。
おいしいんですよ、これがまた。
南インドのごはん類は、超おいしい。


パロタがまたおいしい。
クロワッサンほどには繊細でなく、
かといってブリオッシュとも違う。
パロタはパロタならではの独特のおいしさで、
エッジはクリスピーで、それでいて、いくらか層を備えたボディは、
ソフトな噛み心地があって、無類の幸福感をもたらしてくれる。
なお、パロタは料理人が忙しいときには、いくらか、おいしさが落ちる。
きょうはお客が少なく、調理に時間がかけられたせいもあるだろう、
超おいしい!


他の料理もまたそれぞれの役割を果たしていて、
バランスの良いワン・ディッシュ・プレートになっています。
ただし、ムゲーシュらしさは、やや弱い。
なぜって、なんと言ってもムゲーシュは、
キレのあるRasam と、深く深くタミルらしいSambhar がすばらしく、
しかし、このワン・ディッシュ・プレートにはいずれも、ない。
したがって、そこがややものたりないのだけれど。
しかし、逆に言えば、ムゲーシュは料理が巧くなったもの。
もしもガネーシュ・クマールがこれを作ったならば、
鴨カレーはもっとオイリーなおいしさを優美に強調しただろうし、
それはそれで華麗ですばらしいけれど、
他方、ムゲーシュのやや控えめな脂の扱いも、
ホームメイドフードの趣があって、相当おいしいし、好感が持てる。





おっと、ついついぼくは長々といろんなことを書いてしまったけれど、
きっとムゲーシュはこれを読んだら、陽気にぼくをからかうことだろう。
なにしろ、ムゲーシュのぼくへの愛嬌たっぷりの挨拶はいつもこんなふうだ。
You look so younger!
すなわちかれはぼくを、じじいの若作り、と揶揄しているのである。
なるほど、ぼくはたいてい派手なおしゃれをしているけれど、
しかし、ぼくがどんな服の着方をしようが、ムゲーシュのビジネスとは無関係というものだ。
ぼくは笑って(親愛の情を込めて)、ムゲーシュに言う、「黙れ!」
そんなわけで、そんなふうに、ぼくとムゲーシュは親友になった。Oh, dear.
読者はきっと呆れただろう、「なんだよ、それがオチかい?
Is it the punch line!??」
どうもすみません。どんなレストランにも物語があるものですね。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/02訪問88回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ある雪の日。

きょう2月9日(土)、東京・西葛西は、朝から小雪 a light snow が舞っていた。
アムダスラビーの土日ランチブッフェを
ぼくはヴォランティアとして、(黒板書きそのほかを)少し手伝っていて。
ぼくが朝9時過ぎにレストランへ着くと、料理人のムゲーシュが言った。
”We have snow.Big size snow!"
ムゲーシュは南インド人ゆえ雪がめずらしいのだ。
ムゲーシュはこの雪を見て、心がexcite して、超happy になっていた。
実は先日ムゲーシュはぼくに訊ねたものだ、「ぼくは雪を見に行きたいよ。
いちばん近くで雪を見れるのは、どこだい?」
ぼくは曖昧に答えたものだ、「新潟かな? 夜行バスで一緒に行ってみる?」
まるでそんなムゲーシュの願望に、神様が応えてくれたかのような、きょうの雪だ。


他方、給仕長のサプコタ・チャビラルは、ネパールのポカラ出身。
かれは言う、「ポカラはすっかり雪景色だよ。
見せてあげようか。」と、Facebook の投稿写真を見せてくれた。
かれは言った、「氷の厚さもすごいんだよ。膝くらいまであるの。」


料理人のガネーシュ・クマールは言った、
「きょうは何人くらいお客さんが来てくれるかな?
もしもお客さんが少ないと、ぼくの心は壊れそうになる。」
かれは固太りの、毛深い三十歳のプロ中のプロの料理人なのに、
しかし心は少女のようだ。いや、少女と言っても、人それぞれさまざまだろうが。


ぼくは想像する。東京には十数万軒の飲食店がある。
きっとすべてのレストランのスタッフたちが、いま、この時刻に心配しているだろう。
この粉雪の日に、どれだけお客さんが来てくれるかしらん?
とてもスリリングで、けっして予断を許さない疑問だ。心はとても緊張する。
その緊張を解消すべく、スタッフはそれぞれに、くだらない冗談を言い合ったりする。





さて、きょうのアムダスラビーのランチは、開店まえの行列こそできなかったし、
また11時代のお客さんは、13人ほどだったものの、
しかし、12時過ぎからお客さんはどんどん入って、
2時過ぎまで絶えることなく、結果、40人をちょっと越えた。
ありがたいことに、スタッフのプライドはけっして傷つけられることなく、
むしろ、快適な疲労 を味わうことができた。


12品の料理構成もとってもバランスが良かった。
モグライ・チキンカレー(鶏カレー、ムガル帝国スタイル)。
ヴェジ・プラオ(炊き込みごはん、あれこれ野菜入り)。
エッグ・ティカ・マサラ(ゴージャスゆで卵カレー)。
キャベツ・パシプリップ・クートゥー(キャベツとムング豆の煮込み)。
ガーリック・ラッサムがまたすばらしかった。
デザートは、スウィートポンガル(デザートとしてのお粥)。


いつものように家族連れも多く、
インド人のコドモも、日本人のコドモも多かった。
なかには、日本人の5歳児の男の子が、ほぼすべての料理を超よろこんで召し上がっていて。
ぼくはかれに惜しみなく拍手を送った。





さて、あした10日(日)のランチブッフェはーー。
チキン・ダム・ビリヤニ。(鶏釜飯)。
鴨カレー、胡椒風味。
ヴェジ・ウタパム。(南インドのお好み焼き)。
そのほか、かなり本気度が高い。
お薦めの来店時刻は、11時です。


なお、余談ながら。雨の日、雪の日、嵐の日には、
あなたのいちばん好きなレストランへ行きましょう。
そんなあなたは、きっとレストランスタッフにとって、
救世主のように見えるでしょう。
そのときからきっと、あなたにとってそのレストランは、
あなたの家のダイニングのようにおもえるようになるでしょう。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - JS とムゲーシュ。

    JS とムゲーシュ。

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2019/01訪問87回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

コドモたちのインド料理体験。

アムダスラビーの土日ランチブッフェは、
大人1200円、コドモ600円、乳幼児0円で、
「コドモ歓迎」を標榜しているせいもあって、比較的にコドモ客が多い。
アムダスラビーは地下一階にあるので、
人によっては階段を降りるだけでもちょっとした冒険だったりする。


なお、ぼくはこの土日ブッフェにおいて、
レストラン事業を「参与観察」していて。
ぼくはヴォランティアとして、
店の前の路上に立てる黒板に料理名を書いたり、お花の絵を描いたり、
ダイニングに並べる料理の前に置くプレートに、
それぞれの料理名をアルファベットと日本語で書いたり、
はたまた給仕や接客も多少する。


ぼくにとって、レストラン側に立つことによってはじめて知ったことはあまりに多い。
地下のレストランがお客を得ることの難しさ。
店内をつねに清潔に保つことへの鉄壁の意志。食材の効率的な扱い。
気候によるお客の増減。お客の席への案内のコツ。そして各持ち場のスタッフの気持ち・・・。
そしてそうやって得られた知見は、けっしてアムダスラビーに限らず、
ぼくの書くレヴュー全般に、多少なりとも反映していることでしょう。
いや、自慢する気はまったくないけれど。
(そもそもぼくはへんてこりんなレヴューばかり書いてるしね。)


他方、事情通のインド料理マニアのなかには、「あのスージーの野郎は、
若くて綺麗な女にばかりちゃらちゃら話しかけちゃって」とかなんとか揶揄する人もいる。
ごめんなさい、自分としては接客にえこ贔屓はしてないつもりながら、
正直者ゆえついつい心の内がバレちゃうんでしょうねぇ。(まだまだ修行が足りません。)
いいえ、ぼくの好みがどうあれ、そんなことはなんのトピックにもならないにせよ、
実は同時にぼくはお洒落な高齢者や、そしてコドモたちも大好きだ。
とくに非インド人のコドモは、インド料理経験が乏しいゆえに、
未知の世界に目をらんらんと輝かせて立ち向かう姿が、とても良い。


おとうさんやおかあさんはよく訊ねる、
「コドモでも食べられるカレーはありますか?」
しかし、これは難問で、なぜなら、
辛さにの感じ方には個人差が大きいから、
平均的な答えには意味がない。


ぼくはコドモたちに訊ねる、「お味はいかがですか?」
するとおとうさんやおかあさんは、この場を円満に済ませるべく、
「おいしかったね?」なんて言ってコドモの感想を誘導するのだけれど、
他方、本人は「えっとね・・・」なんて言いながら、
自分の言葉を探していたりする。
そんな姿が、ぼくは好きだ。


たいていコドモたちに人気なのはパン類やコロッケ的なもの、
そしてデザートとジュースがある日はジュースである。
味がわかりやすいものね。
カレー類は、人によって、料理ごとに、好/悪が揺れる。
ラッサム、サンバル、プーリコロンブあたりはさすがに難しい。
比較的わかりやすいおいしさのチキンカレーにしても、
「ちょっと辛い」と言って敬遠する人もいれば、
「おいしかった!」と胸を張る人もいる。
なかにはビリヤニをよろこんで食べる人もいて、
たいへんにかっこいい。


相手が12歳くらいだったりして、知的そうな人だったりすると、
ぼくはインドの多言語事情について話したりする。
「日本は北海道から沖縄まで日本語が通じるでしょ。
でも、インドは地域ごとに言語が違うんだよ。」
とかなんとか。


もっとも、3歳以下になると、そんな言語的コミュニケーションは無理なので、
ぼくは身振りや表情で、遊んだりする。
遊びが成立すると、ぼくはうれしい。


かれら彼女らのなかにはトイレがひとりでできるのが自慢の人もいれば、
本人としてはまことに不本意ながらまだひとりではできない人もいる。
「2」はアヒルの形に似ているとか、「3」はお尻の形をおもわせるとか、
そんなささやかな発見にほくそえんだり、
はたまた「ん」の字や「を」の字の形態のとりとめのなさに困惑する人もいるだろう。
左と右の区別がつかないとか、靴紐が結べないとか、そんな悩みを持っている人もまたいるだろう。
なかには、大人という種族は愉しむことを知らないなんて哀しい人たちだろう、
と詠嘆してやまない人もまた。


アムダスラビーのスタッフはみんなコドモが大好きだ。
オウナーのゴヒル夫妻にはふたりのお嬢さんがいて、いかにも仲のいい家族だ。
また、料理長のガネーシュ・クマールや、
セカンドのムゲーシュは、単身赴任ゆえ、
自分のコドモと長らく会えず、毎日携帯端末で話しているばかりゆえ、
レストランのコドモたちを見ながら、
いくらか自分のコドモのことを考えているんじゃないかしらん。


もしも小学生の食べログレヴュアーがいてくれたなら、
きっとぼくはよろこんでかれもしくは彼女のレヴューを読むでしょう。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/01訪問86回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク-

ついでに国際感覚も(多少)身につきます。

1月20日(日)のランチブッフェはーー。
ちょっぴりすっぱい鯵のカレー、チェティナドスタイル。
ムング豆の小ドーサ + ミントチャトニ。
ダルラッサム。ナスとかぼちゃのサンバル。
そして小麦のパヤサム・・・
アムダスラビー的にはタミルらしさが強調された日だった。
たいへんバランスの良い構成で、
ぼくは無限の幸福を味わったものだし、
また、よく晴れたうららかな暖かい日だったせいもあって、
お客さんの入りもたいへんに良かった。


もっとも、ぼくの個人的な意見としては、
魚カレーと、チキンビリヤニは両方出さずとも、
魚カレーにはむしろあっさりジーラライスかなにかの方がいいんじゃないかしらん、
とおもわないでもない。
ただし、そこには、ガネーシュ・クマール・シェフの、
なんとしてでもお客さんは開店直後からラストオーダーまで十分に入って欲しい、
(だって、もしもお客さんが少ないとぼくの心は壊れそうになるから)、
という気持ちに由来する、念には念を入れた用心深さがあって、
そういうところもまた最近のアムダスラビーらしい。


ぼくがそんなことをしゃべると、
給仕長のサプコタ・チャビラルは、ふと、おもいだしたように、
懐かしそうに、こんなはなしをぼくにしてくれた。
「サウジアラビア人は、3歳~4歳くらいの、
ちっちゃなラクダを食べるんだよ。
内臓を取り除いて。アラビアスタイルのプラオ(Monday Rice)を詰めて。
アラビアふうのマサラをまぶして。
でっかいオーヴンで2時間かけてローストするんだよ。
そしてその料理を、アラビア人たちは13人とか20人とかで、
テーブルを囲んで食べるわけ。」


サプコタ・チャビラル給仕長は、ネパール生まれネパール育ちのヒンドゥーで、
サウジアラビアの第二の都市ダンマーム Damman の高級ホテルで、長年仕事をしてきた。
サウジアラビアはイスラム教を国教とする、いかにも厳格そうなムスリム国家で、
世界最大の石油埋蔵量を誇り、石油は国家事業で、学費・医療費国家持ち、
ただし、近年は人口増加で、かつてほどにはリッチではなくなったそうな。
都市ダンマームは、ペルシア湾沿いのすっきり整然とした都市に、
黒い衣服に身を包み、その瞳だけを覗かせている女たちがいる、そんなイメージがある。
おそらくホテルのフロントには、頭にスカーフを巻きつけ黒い輪っかで締めた
王族たちの肖像写真が金ピカに額装されて飾られていただろう。
それぞれの部屋のサイドボードには、
メッカの方角を示す、コイン大の黒い石片が埋め込まれていただろう。
ついでながらガネーシュ・クマール料理長は、
タミル生まれのタミル育ちのヒンドゥーながら、
オマーン国のマスカットの、いつもからりと晴れて、
明るい日差しの下、純白の家々が立ち並ぶ海辺の都市の、
高級ホテルで、キャリアを築いた人だ。
中東の都市はどこも、さまざまな外国人労働者たちによって支えられている。
シリアやイエメンは内戦で悲惨を極めているけれど、
他方、他の国々には平和な日常がある。


そしてぼくはいまさらながら気づく、
インド人やネパール人にとって世界地図は、
「まんなかにインド大陸があって、
西にアラビア半島、東に(シンガポールを中心とした)インドシナ半島がある」。
かれらにとって、アラビア半島は(心理的にも行動範囲的にも)近い。
ヒンドゥーの民にとって、ムスリムの文化が他者の文化であってなお。
もっとも、原油価格の上下によって、かれらにとっての
リヤドやダンマーム、クエート、カタールのドーハ、バーレーンのマナーナ、
ドバイ、マスカットあたりの魅力もまたたちまち増減するのだろうけれど。
とくに近年はアメリカによるシェールオイル開発の影響もあって、
いくらか危なっかしそうだ。
とうぜんこの話題の先には、世界経済の騒然たる波乱万丈の可能性が
不気味に控えてもいるのだけれど。


おもえばインド釜飯、ビリヤニは、
もともと(インドの江戸時代)ムガル帝国の時代に生まれた。
ムガル帝国とは、イラン系ムスリムたちが、
インドの現地人たるヒンドゥーたちを支配した政治体制である。
ビリヤニの起源について、通説はこんなふうに説明している。
ムガルの支配者が(羊の尻尾の脂でコメを炒める料理=プラオ=ピラフ)を、
ヒンドゥーの料理人に作らせたところ、
ヒンドゥーの料理人はスパイスを派手に効かせて仕上げたことが、
そのはじまりである。
すなわち、ビリヤニはその出自からして、
ふたつの文化が遭遇した結果生まれた、混血的な性格を宿していて。
(ここで連想するのは、インドに息づくたくさんの宗教のなかのひとつ、
シク教は、ムスリムとヒンドゥーを結合して生まれた。
そう、頭に色とりどりのターバンを巻いたあの人たちですよ。)


それでいてその後の長い歴史のなかで、ビリヤニは、周辺諸国の食文化のなかにまで入り込んで、
料理人の宗教や、それぞれの地域に由来する違いや個性もまた育って、
結果、大いなる多様性を獲得していった。
たとえば、ムスリムの作るビリヤニは「肉が主役でコメが従」みたいな個性があるし、
ヒンドゥーの作るそれは「コメが主役で肉が従」といったはんなりした趣を感じる。
ただし、それもまたあくまでもインド~パキスタンあたりを中心にした、
大雑把な印象であり、むしろ、いまや世界各地には
無数のプラオ~ビリヤニがあることの方にこそ興味は尽きない。
さらには、サウジアラビアではカブサ Kabsa と呼ばれる肉と野菜の炊き込みごはんが有名らしく、
これもまたいわば プラオ~ビリヤニの仲間 に見える。


人は誰しも、他者と関係を持ちながら生きていて、
そこではとうぜん相互に影響の与え合いが生じるもの。
と同時に、人は、他者の文化のなかに身を置いたときにこそ、
自分の出自の文化への敬愛や矜持を強く持つようになる。
そして人は、たくましく、自己を鍛える。
ましてや、異郷に暮らし、
1日5回も自分が異教徒であることを自覚させられれば、なおのこと。


この話題は、言語の次元でもまた展開できる。
たとえば、インド諸語のなかのウルドゥー語は、デリーを含む北インドでは
それなりのプレゼンスを持っていて。ウルドゥー語は、
ペルシア~アラビア語の系譜を(語彙にも文法にも)色濃く引いているらしい。
他方、歴史的に見て、ヒンディ語は、
自分自身とウルドゥー語との差異を強調し、
むしろ古語サンスクリットへの親近性を強調することによって、
近代ヒンディ語として純化していった、というような経緯もあるらしい。
ここにもまた、アイデンティティをめぐる文化ー政治がある。
しかも、そのうえ、南インドにおいては、北部インドとは違う諸語があり、
北部とは異なった文化的アイデンティティがある。
また、とうぜんのことながら、アラビア語圏においては、
けっして他の言語には翻訳できない独自の文化があるだろう。
かれらの、神様の声を伝える装飾的な文字は美しく、まるで視覚による音楽のようだ。
おまけに「アラビア文字には、月文字と太陽文字がある」なんていう説明を聞くと、
ぼくは詩的好奇心をかきたてられる。


西葛西にサウジアラビア人は少ないけれど、
それでもたまにインド食材屋で見かけることもある。
かれらはスパイスを物色しながら、こんなことを言った、
「ぼくらはインドのスパイスを使って、
サウジアラビアの料理を作るんだよ。」
なるほど、考えてみれば日本人だって、インドのスパイスを使って、
日本スタイルのカレーライスを作ったりもするものね。


インドレストランは、異文化への入口です。
もしも贔屓のお店ができたなら、
ときには給仕や料理人とおしゃべりしてみましょう。
おもいがけない異国の話が聞けるかもしれませんよ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/01訪問85回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク-

インド人のアイデンティティについて。

アイデンティティって言葉は、
〈いろんな関係のなかで変化するさまざまな自己を、統一する自己イメージ〉、
みたいな意味なのかな。
ただし、これを統一の側にアクセントを置くのではなく、
逆に、むしろ〈関係のなかで変化するさまざまな自己〉の方に関心を寄せると、
また別の世界が見えてくる。
ややこしい説明のし方で、ごめん。
インド人のアイデンティティにはどくとくなものがある、
っていうはなしなんだ。


まず最初にどんな人であろうとも、
けっしていついかなるときもつねに同じってわけでもなくて。
むしろ誰と一緒にいるか、どんな人を相手にしゃべっているか、
何語を使っているかによって、
その場面場面で〈自分自身〉って、けっこう変化するもの。


たとえば在東京の関西人が、仕事の話題については標準語をしゃべっていて、
でも、いつのまにか話題が学生時代のことになったあたりから関西弁に変わって。
それがとってもかわいらしかったり、人懐こく感じられたり。
その人の印象はけっこう大きく変化したりするもの。
とうぜん、選んだ言語は、話す内容にまでいくらか変化を及ぼす。


もっと極端な例を挙げるならば、日本人相手に日本語をしゃべっているときは内気な日本女が、
しかし、英語話者を相手に英語を使っているときは、胸の前で両手をひらひらさせて、
えらく陽気で社交的な女になっていたりすることもある。


ぼくの例を挙げると、ぼくは日本育ちの日本語話者の日本人で、
漫才や落語をはじめ日本語芸能が大好きだ。
けれどもそんな日本語大好きのぼくは、
英語を使っているときの方がなんでも白/黒ハッキリ言える。
冗談もばんばん言える。ただし、ぼくの英語のヴォキャブラリーはプアで、
それなのに話題は文化的なことからアホ丸出しな話題までさまざまゆえ、
異文化人にとっては、「ぼく」は、
賢いんだかバカなんだか文化的出自がまったくわからない奇妙な人物になる。


さて、インドという国は、なにしろ各州の公用語が18種、
準公用語まで含めると言語が22種あるとんでもない国で、
なお、その22の言語はけっして方言ではなく、読み/書きの表記体系が違うのだ。
それぞれの地域は、おおよそ言語別にまとまっているため、
したがって、地域ごとの文化の独立性が高く、
逆に言えば、国家インドはつねにいついかなるときもまとまりが悪く、
まるで合衆国のような印象がある。
そもそもかれらがみんな揃って自分たちを〈インド人〉として意識するのは、
クリケットのインドーパキスタン戦のときくらいで、
そういうときはそれこそみんな一丸となって(!)熱狂するのだけれど、
しかし試合が終れば、ふたたびみんなの心はばらばらになる。
そもそも北部インドと南部インドなんて、お互いにとってほとんど外国である。
そしてふだんは、「わたしはムンバイ人です」とか「わしはタミル人やで」とか、
はたまたヒンドゥー、ムスリム、シク、あるいはクリスチャンなど自分の宗教、
職業、出身地など、属性の総合にアイデンティティを持っているように見える。
ただし、場面場面での自己の現し方は大きく違う。





さて、2019年1月19日(土)のランチ・ブッフェはこんな感じだった。
Kerala Fried Egg Biryani (ゆで卵釜飯、ケーララスタイル)と
Dum Chicken Nawabi (王様チキンカレー密閉式) を中心に。

Aloo Chana Sabji (Dry) (じゃがいもと黒ひよこ豆の含め煮)
Paneer Saag Masala (カテージチーズ入りほうれんそうカレー)
Dal Mackhani (豆のポタージュ、高級バターの香り)
Naan (ナン。この料理構成ゆえ、とうぜんナンである。
よけいなことはなにもやらず、香ばしくおいしい。)

Pineapple Rasam(パイナップルラッサム)

Carrt Halwa (デザート。オレンジ色も美しい、激甘ニンジンのハルワ。)・・・

さて。ぼくの感想は・・・。
「茹で卵入りビリヤニ、ケーララスタイル」が、
米粒パラッパラなかろやかな炊き上がりで、茹で卵のうまみがおいしく、
チキンカレー、サグ・パニール、ダル・マッカニが、
いかにも濃厚でリッチなおいしさ。
アル・チャナ・マサラ(ドライ)がまたほのぼのと家庭的な魅力があって、
とても楽しい。
総じて、優美で洗練されていて濃く深くおいしく、構成のバランスも良い。
国際基準において一流のインド料理がここにある。


しかし、それはそうと、このメニューは「パイナップルラッサム」以外は、
ほぼ北インド(=パンジャビ料理)ではないか!
「本気の南インド料理」を標榜するアムダスラビーとしては、
これはちょっとあまりに北インドに寄せすぎなのではないかしらん。
もっとも、この日はいくらか極端なことで、
ふだんはもっとタミル料理寄りであるのだけれど。


いいえ、視点を変えれば、こんな感想にもなる。
ガネーシュ・クマールはタミル人でありながら、
タミル料理のレパートリーのみならず、
よくぞここまでパンジャビ料理をも質高く自由自在に作れるものだ。
推察するに、ガネーシュ・クマールはタミルの生まれと育ちながら、
そのキャリアはアラビア半島のオマーン国の首都マスカットの高級ホテルで
築いてきた。とうぜん外国では南インド料理だけでは商売にならず、
おのずと北インド料理のウデも上げなければならなかっただろう。
次に、かれはアラビア語を話すムスリムたちにかこまれながら、
そこで、おのずとかれのなかに、「ぼくはインド人なんだ。
ヒンドゥスタン(=ヒンドゥーたちの郷)で育ったんだ、
(そのことに比べれば自分がタミル人であることはとても大事なことだけれど、
ここでは脚注のようなことだ。)」
というようなアイデンティティもまた育っていったのではないかしらん。
すなわち、ガネーシュ・クマールには、いくらか
帰国子女 kikoku-sijyo~returnee みたいな趣がある。
対照的に、もうひとりのクック、ムゲーシュは、タミル生まれのタミル育ちで、
タミルのホテルに就職したゆえ、
人格も料理も、ゆるぎないディープタミルなアイデンティティを持っている。
ムゲーシュにおいては、インド人であることに先立って、
自分はタミル人であるという自己意識なのではないかしら。


アムダスラビーの土日ランチブッフェにおいては、
ムゲーシュが、ラッサム(とサンバルを出す日にはサンバル)を担当していて。
そしてまたイディリやウタパムをはじめ、パン類も、そしてサラダも、
ムゲーシュの担当である。
そこでムゲーシュは、タミルっぽさを強調する傾向にある。
また、たいていは火曜日(ときどき曜日は変わる)、ガネーシュ・クマールの休日は、
ムゲーシュがひとりですべての料理を作る。
これがまた南インド料理マニアには「もうひとつのアムダスラビー」としてひそかにウケている。


まるで「帰国子女」みたいなガネーシュ・クマール。
他方、いかにもタミル人な、ムゲーシュ。
このふたりのコンビはとてもイイ。


なにごとにおいても純粋を求める人は、ムゲーシュの料理を好むかもしれない。
ひいては、大山Yazhiniのマハリンガムの料理を(ランチブッフェではなく、ア・ラ・カルトを)
讃美するかもしれない。
ぼく自身、ふたりの料理を大好きだ。


しかし、同時に、ガネーシュ・クマールのレパートリーの広さ、多彩さ、
仕上がりの優美、洗練もまたかけがえのないものである。
そしてまた、ガネーシュ・クマールがムスリムたちの生きる異郷の環境のなか、
しかも、かれはアラビア語も英語もつたないにもかかわらず、
ウデ1本で、キャリアを築き、その過程で、自分自身を、
インド人として自覚し、誇りをもって生きてきたことを知り及べば、
そんなガネーシュ・クマールをさらにいっそう好きにならずにはいられない。
かれの料理は、いかにも優美で洗練されているけれど、
そこにはひそかに、異文化のなかで自分自身を鍛えあげていった、強さがある。


さて、きょう、1月20日(日)のランチブッフェは、
「チキンビリヤニ」
「鯵のちょっぴりすっぱいカレー」
「ムング豆のドーサ」
「ナスとカボチャのサンバル」
「ダル・ラッサム」などなどなど、
そうとう力の入った、かつまたタミル色を出した、
そんな構成になっています。
お薦めの来店時刻は11時です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2019/01訪問84回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

収穫祭ポンガルにおける、タミル人の wild at heart について。

ちょうどいままさに南インド、タミル州(およびスリランカ)の収穫祭、
ポンガルの季節が訪れていて、アムダスラビーでも、
12日(土)ランチブッフェでは純白のポンガル(お粥版、なんとも優しく、美しく、
サンバルをかけ、ココナツチャトニを混ぜながらいただくと、素敵においしいんですよ)が、
そして13日(日)ではポンガル(お粥のデザート版、これがまたひかえめながら
深く幸福なおいしさ)がふるまわれました。
すなわちポンガルという言葉は、まず最初に収穫祭の意味であり、
次に、食事としてのお粥、はたまたデザートとしてのお粥の意味もまた、
あわせもっています。


この収穫祭ポンガルは、前夜とメインの3日間、計4日にわたっておこなわれます。
まず前夜に、古い衣類などを燃やして新しいものを新調する「ボーギ」をおこなう。
つづいて初日は太陽に感謝する日として、 「ポンガル」を食べる。
そのポンガルは純白のお粥版だったり、デザート版だったりします。
2日目は家畜に感謝する日で、牛やヤギを綺麗に飾りつけ、
闘鶏や、馬のレース、そしてジャリカツが開催されます。
3日目は観光をしたり、映画鑑賞などを楽しむそうな。


さて、このジャリカツがとんでもない。
檻から放たれた荒れ狂う雄牛に、命知らずの若者が飛び乗って、
なんとかして両手で雄牛にとりつけられた「こぶ」をつかまえ、
振り落とされずにどれだけ長い時間つかまえていられるかを競う競技である。
20秒以上つかまえていられれば、優勝の可能性が高い。
上位入賞者には、賞金や、バイク、冷蔵庫などの商品がもらえる。
これは紀元前から続いている伝統的なスペクタクルで、
毎年優勝者は一人だけ、死者は百人にものぼります。

https://www.bing.com/videos/search?q=jalikattu&&view=detail&mid=522199A4EC45E6A129FC522199A4EC45E6A129FC&FORM=VRDGAR


2017年は、動物愛護協会がこれを非難し(!)、危うく中止になりかけたものの、
しかしタミルでは中止反対のデモが大々的に繰り広げられ、
みんな口々に" We want Jallikattu!" と叫びながら街を練り歩いたもの。
しかも警視庁に放火があったり、すさまじい騒乱になって、
けっきょく、ジャリカツは延命しました。
すなわち、清楚においしい優しいお粥と、ワイルド・アト・ハートなジャリカツ、
ふたつの顔がポンガルにあります。


もともと南インド、タミル人のメンタリティは大阪人に似ていて、
陽気で冗談好きでその笑いのセンスはベタで、
そしてお祭りのときにマッチョな魂が全開する。
(ついでながら、いかにも対照的なのが、ムンバイあたりの西インド人たちで、
かれらは知的で、いくらかとりすましていて、かれらはどちらかといえば東京人に似ています。)





さて、アムダスラビーは、きょう1月14日(祝)は、1200円ランチブッフェです。
骨つきマトンビリヤニとエッグマサラという強力なメイン。
その他は、いつもどおりダルやラッサム、ニンジンとグリンピースのポリヤルなど、
たのしく贅沢な構成です。お薦めの来店時刻は11時です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2019/01訪問83回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

ポンガルってどんなお祭り? お粥はどう食べればいいの?

アムダスラビーは長いこと、マニア受けだけが良く、ネットでのみ評判高く、
しかしじっさいにはいつも同じようにそこそこしかお客の入らないレストランだったため、
”どこのレストランにとっても、12月~3月までがたいへんに厳しい季節だ”という真実を、
まったく知らなかった。
ところが去年2018年、おもいがけず、「食べログカレー百名店」にも選ばれ、
週末ランチブッフェの客入りも増えて、
週末は毎昼50人前後まで伸びるという幸福を経験した。
ただし、いったんそんな幸福を経験してしまったがゆえ、
11月後半以降のお客さんの減少は、スタッフにとっていっそう厳しい試練となった。


ガネーシュ・クマール料理長は言う、「お客さんが少ないと、ぼくの心は壊れそうになる。」
なお、ここでかれが言う「お客さんが少ない」は週末昼のみで30人ていどのことで、
ランチタイム4時間のなかでそれでも二回転半はしている。
ぼくは言う、「あなたの料理はたとえようもなく優美でレパートリーも多い。
ぼくの知る限り最高の南インド料理だ。
問題はあなたにはない。
しかし、この時期東京の人たちはみんな忙しいんだ。
12月はyear end drinking party がある、
home town にも帰らなくちゃいけない、1月は new year drinking party がある、
カネもかかるし、好きなレストランでくつろぐ時間もなかなか作れない。
そもそも寒い休日には外に出たくないだろ?」


しかし、ぼくがいくらそんな説明をしたところで、
スタッフの失意はけっして解消されはしない。
スタッフはみんなおもっているのだ、こんなすばらしい料理を12品1200円という
安価でふるまっていながら、
それであってなお、30人ていどの客入りというのは、理不尽ではないか!??
こうしてアムダスラビーの闘いがはじまった。


12月9日は、チキンビリヤニにエッグマサラ。
12月15日は、野菜ビリヤニにサンマカレー。
1216日は、マトンビリヤニに、
じゃがいもとほうれんそうとパニールのカレー。
12月23日は、ジーラ・プラオに、マトンヴィンダルー、
おまけにチキン・サルナに、カイカリマンディ、チェティナドペッパーラッサムに、
マサラ・ドーサまである!!!
12月29日は、パニールビリヤニにアルゴーシュトカレー(羊とじゃがいものカレー)
1月4日は、お雑煮ラッサム。チキンカレー、ムガル帝国スタイル。
ヴェジ・マジブー(野菜ビリヤニのようなもの)。


こうした流れのなかに、きょう1月12日の、
ヴェン・ポンガル(バスマティ米とムング豆のお粥、カシューナッツ入り)、
鴨カレー、
パンケーキ、ウタパムとココナツチャトニ(=ディップ)、
アル・ポーチドエッグ・コルマ、
キャベツのポリヤル、蟹のラッサム・・・がある。


これは南インド料理マニアにとってはそうとう魅力的な構成ではあって。
とくにポンガル(お粥)は、名店ナンディニでこそけっこう出してはいるものの、
しかしまだまだマイナーな料理である。
南インド、タミル人にとっては、1月の新月、
収穫祭ポンガルの時期に食べるお米料理ポンガルとして、
とても大切なものであるらしい。


お粥としてのポンガルは、純白で清楚に美しく、
そこにカシューナッツが良いアクセントになっていて。
このポンガルの上に、サンバルをかけ、ココナツチャトニも添えて、
混ぜながら食べてゆきます。
こういうふうに食べると、たしかにいっそうおいしいし、
しかも、いかにもたいへんに南インド料理好きらしい。


ぼくは、土日ランチブッフェにおいては、アムダスラビーのスタッフの端くれなので、
ほんとうは、そんな、ポンガルの「現地っぽい食べ方」まで
紹介したい気持ちはやまやまながら、
しかし、なかなかそこまで全員のお客様に説明することは難しいし、不可能である。
そもそも好きなように食べたいとおもうお客様も多いし、
うるせーな、勝手に喰わせろよ、という気持ちもまたじゅうぶん理解できる。
けっきょく、こういうことは少しづつ、段階を追いながら、
広まってゆくといいなぁ、と、ぼくはおもっている次第。


東京の南インド料理ファンの層は厚くなった。
ミールス、ドーサ、ビリヤニ好きは増えた。
次はポンガルですよ。しかも、ポンガルにサンバルをかけて、
ココナツチャトニを添えて、上手に混ぜて召し上がるならば、
そんなあなたは超かっこいい。
ぼくはおもわずそんな貴女に、惚れてしまうことでしょう。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/12訪問82回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥6,000~¥7,9991人

通常利用外口コミ

この口コミは試食会・プレオープン・レセプション利用など、通常とは異なるサービス利用による口コミです。

アムダスラビーは”恋人たちに選ばれるディナーレストラン”になれるかしらんプロジェクト。その1

夜のアムダスラビーで、
「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマール・シェフによるインド料理のフルコースを、
ぼくとガールフレンドのふたりは、
(ちょっぴり早い)クリスマスデートとして、愉しんだ。
ごめんなさい、いまこの瞬間にムカついた人も多いでしょ。
だって他人のデートの話を聞かされたって、おもしろくもなんともないですものね。
せめてみなさんのデートの参考になるように、ぼくはがんばってレヴューします。





フルコースの概略はすでに前日ぼくが決め、クマール・シェフに伝えてあります。
今回のぼくのアイディアはいたって単純で、
ヨーロッパ料理のエッセンスであるところのフルコースの流儀を踏襲し、
最後にミニミールスで〆るというもの。すなわち、
〈オードヴル → 魚 → 肉 → ミニミールス〉である。


まずは赤のスパークリングワイン Lambrosco で乾杯。
(このワインは、彼女による持ち込みです。)
1)野菜と果実とパニールのタンドール。
2)30cmほどあるスズキの姿焼き。
(スズキは、当日の朝ぼくがサニーモール内マルエイ鮮魚部で買いました。
いっそう正確に言うと、その朝マルエイ鮮魚部でいちばんおいしそうな魚を買って、
フライパンで焼いてもらうというのが計画でした。)
3)丸ごとチキンのマサラロースト、プラオを詰めて。茹で卵2個つき。
マッシュドポテト添え。
4)ミニミールス(サンバル、ラッサム、キャベツとニンジンのポリヤル、
バスマティライス。そしてデザートのバダムパヤサム。)
5)彼女はチャイ。ぼくはペルノーのロック。

赤ワインは 辛口で果実味が深くひじょうにおいしい。
料理はいずれもシンプルなものながら、なんとも大胆かつダイナミックである。
まず、タンドールは「カリフラワー、パプリカ、タマネギ」の1本もあれば、
「リンゴ、パイン、パニール」の1本もあり、いずれも構成的なおいしさ。
熱々に焼き上げられたスズキがでかいんですよ、全長30cm。
テーブルのまんなかに置かれ、それをふたりで食べてゆきます。
白身魚ならではの、優美で気品に満ちたおいしさ。
クマール・シェフは、スズキの皮を剥いで、焼き上げています。
こういう ちょっとしたセンスも「さすが!」です。
そして湯気のたつ「インディアン・ローストチキン、プラオ詰め」がまたでかい。
しかもその味はマサラのキックに満ち、
ジューシーなおいもしさはもちろんのこと、焦げ味さえ良いアクセントです。
そのうえプラオと茹で卵、そしてサントーシュのマッシュドポテトがまた良い脇役を演じていて。
そして〆のミールスは、ラッサムもサンバルも味がばっちり決まっていて、
われわれは南インドを満喫した。
そう、寄せては返す喜悦の波に飲まれながら、
われわれはまるで古代ローマ人のように、そのすべてをたいらげていったのだ。
食後酒にペルノーってところも、お洒落でしょ。
余談ながらこの日はムゲーシュの休日で、それだけがちょっぴり残念だった。




今回の企画の動機についても、少し話そうか。
東京のインドレストランは、もしも名店群だけ見るならば、
インドを含めた世界の都市基準で、ほぼ一流だとはおもう。
ただし、弱点もあって、それはディナーメニューが弱いこと。
そこには食べ手側とレストラン側の、双方の事情があって。


たとえば南インド料理を例に取るならば、
日本人の食べ手の層もそれなりに厚くなったとはいえ、
ただし、まだまだミールスとドーサとビリヤニ好きに留まっていて。
夜のア・ラ・カルトに挑戦し、自分でコースを組んで、愉しんでゆく人は少ない。
他方、ならば、レストラン側がプリフィックスのスモールコースを組んで、
お客の注文を誘導すればいいのだけれど、しかし残念ながら、
そういうサーヴィスを提供しているインドレストランもまたまだまだ少ない。
もったいないですねぇ。だって、レストラン側は莫大な利益を遺し、
食べ手側は未踏の領域に潜んでいる夢のような宝物に気づいていないんだもの。
またレストランの使い方としても、
「本気のデートならばやっぱフランス料理でしょ」っていう考えは
世間にすっかり定着していて。なるほどたしかにそれは無難な選択ではあるにせよ、
しかし同等の愉しみは、インド料理でもじゅうぶん味わえるのに!


ぼくはアムダスラビーの経営者のゴヒル夫妻と、よくそんな話をしていて。
ちょうどいままさにゴヒル夫妻はディナーメニューの改善について考えておられるところ。
そこで今回ぼくは、ゴヒル夫妻の許可をいただいて、
そしてぼくはガネーシュ・クマール料理長と直接相談して、
「ぼくだったらガールフレンドとのデートに、
こんなフルコースを食べたいな」という提案をしてみたのだった。
ゴヒル夫妻、この企画をよろこんで了解してくだすって、
ありがとうございました!


今回は、ほぼすべての料理がグランメニュー外の構成ゆえ、
レストラン側も値段のつけようがなく、
われわれは「暫定料金として」それなりのおカネを払い、
そしてそれをうわまわるほとんど空前絶後とおもえるほどの満足を味わった。
しかも、今後もしもグランメニューに組み込まれたり、
あるいは季節のコースメニューに採用されたならば、
おそらく料理代金のみで1人5000円(×2名)以内で召し上がれる可能性があります。
どうぞ、お楽しみに。
またアムダスラビーでは、数日まえの予約で、
いろいろと融通のあるフルコースを組むことができます。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - 野菜と果実のタンドール

    野菜と果実のタンドール

  • アムダスラビー - 全長30cmのスズキのタワフライ

    全長30cmのスズキのタワフライ

  • アムダスラビー - インディアン・ローストチキン、プラオを詰めて。茹で卵2個つき。

    インディアン・ローストチキン、プラオを詰めて。茹で卵2個つき。

  • アムダスラビー - 副菜、マッシュドポテト

    副菜、マッシュドポテト

  • アムダスラビー - ミニミールス

    ミニミールス

  • アムダスラビー - 「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマール

    「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマール

  • アムダスラビー - 「アニメのなかの小熊のような」給仕長サプコタ・チャビラル

    「アニメのなかの小熊のような」給仕長サプコタ・チャビラル

  • アムダスラビー - 「ジャニーズ系ネパール人」サントーシュ

    「ジャニーズ系ネパール人」サントーシュ

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2018/12訪問81回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

SANTOSH のマッシュド・ポテト。

どんなレストランも生き物で、日々なにかしら変化しているもの。
先日、ムゲーシュが親族の不幸で急遽インドへ発って、
(それはちょうどカルロス・ゴーンが逮捕されたニュースが
朝刊を賑わわせた、11月20日の朝だった。)
したがって、アムダスラビーは、
「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマール料理長、
アニメのなかの小熊のようなサプコタ・チャビラル給仕長、
そしてこれまでもっぱら皿洗いとチラシ撒きそのほか雑用を担当してきた、
「ジャニーズ系ネパール人」というか、「小柄なショーンK」みたいな、
SANTOSH(サントーシュ)が、調理の二番手に就いて、
そんなフォーメーションになった。


ムゲーシュがいないと、ブッフェメニューから
イディリやぺサラットゥ(緑豆のしなしなドーサ)などが消え、
またラッサムの「切れ」がやや鈍る。
また常連さんたちは事前に告知されるメニューをしっかり読んでから、
来店するかどうかを決めるので、ムゲーシュが不在のこの3週間は、
いくらか客数が少なかったものだ。


しかし、なにごとにも悪いことばかりではなく、良いこともまたあって。
日曜日のブッフェのサラダは、マッシュドポテトで、
ガラスボールのなかに純白のじゃがいものピュレがこんもり盛られ、
そこに緑のミントの葉がみずみずしく飾られていた。
食べてみると、じゃがいものピュレはていねいに裏漉しされていて、絹のようで、
しかもヨーグルト、ひかえめなガーリック、グリーンチリ、塩と一緒に練り上げられ、
たいへん優美で気品あふれる味わいだった。SANTOSHが作ったものだった。


実はその前日、SANTOSHが作ったグリーンサラダは、
野菜のカットの大きさが不均一で、ぼくは年長者の役割として、
「カットは均一にしなくちゃ」と、かるく注意したものだった。
しかし、マッシュドポテトは同じ料理人の仕事とはとうていおもえない、
洗練された、そしてたいへんおいしい仕上がりだった。
ぼくはおもった、やっぱイケメンの作る料理はそれっぽい仕上がりになるもんだな。
いや、きのうは違ったけど。


なお、この日はブッフェは、チキン・ダム・ビリヤニと
エッグマサラを中心にしたたいへんオーソドックスなメニューで、
デザートはシャヒトクラ(揚げパンのシロップ漬け)だった。


最初のお客さんたち十数人がひととおり食卓に就いたのを見計らって、
ぼくとSANTOSHはレストランの前の表通りでビラ撒きをした。
ぼくはSANTOSHのマッシュドポテトを褒めた。
SANTOSHは照れてはにかんだ笑顔で言った、
「わたしはいまセカンドクック。
でも、ムゲーシュが帰って来たら、また皿洗いとビラ撒き。
12月は寒いです。1月も寒い。2月も3月も寒い。」
ぼくは言った、「ま、レストランビジネスはいくらかエンターテイメントだからさ。
ビラ撒きを愉しめる人の方が適性があるとおもうよ。
もっとも、ずっとそればっかりでは淋しいけどね。」


SANTOSHは「ジャニーズ系ネパール人」なので、
ビラを受け取ってもらえる確率がやや高い。
一緒にビラ撒きをしていると、SANTOSHの女の子の好みもいくらかわかる。
SANTOSHはけっこう日本人のお洒落な女の子に興味しんしんのようだ。
SANTOSHは路上に立ち、道行く人たちに声をかける。
「どうぞ、いらっしゃいませ~。
南インドバイキングで~す。」
ぼくはSANTOSHにアドヴァイスする、
「口角は上げた方が良いよ、声が明るくなるから。
逆に、口角が下がっていると、声が陰気になるからね。」
SANTOSHは感心して、口角を上げて発声する。
「どうぞ、いらっしゃいませ~。
南インドバイキングで~す。」
ぼくは言う、「そうそうその調子、声がだいぶ明るくなったよ。」
SANTOSHは次回、いつ料理を担当するだろう?
そのときはどんな料理をふるまってくれるだろう。
西葛西の路上に枯葉が舞っています。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - 「ジャニーズ系ネパール人」サントーシュ

    「ジャニーズ系ネパール人」サントーシュ

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2018/12訪問80回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

負けず嫌いな The team Amdasurabhi と常連さんたち。

12月8日、土曜日の朝、開店まえ11時40分。
ぼくはブッフェテーブル前の各料理の料理名プレートを書き終わって、
次に店の前の黒板書きをすべく、階段を登って、表に出てみると、
厚手のジャンパー姿の常連さんがお店の前の路上に立っていた。
かれはHONDAの700cc のバイク Integra に乗って、月に何度も埼玉県からやって来てくれる。
かれは言った、「ったくもう。スージーさんたら、
バンゲラズキッチンで彼女とデートしちゃって、
よろこんじゃって、舞い上がっちゃって、鼻の下伸ばしちゃって。
レヴューにあんな超高得点つけちゃって。しょうがないなぁ。
いいですか、スージーさん、
バンゲラズキッチンがアムダスラビーみたいに、
1200円であんなすばらしいブッフェが出せますか!??
もし出せるんだったら、とっくにわたしはバンゲラズキッチンに通っていて、
川越からわざわざこんな西葛西くんだりまで
高速代やガソリン代使って、月に何度も通っていませんよ!」


ぼくはちょっと胸が熱くなった、
だって、かれはアムダスラビーのほぼすべてが大好きで、
たとえときおり(ここ2週間ほどムゲーシュが不在ゆえ)
ラッサムの完成度がいくらか崩れたときなどは、
やんわりと苦言を呈しはしても、しかしアムダスラビーこそが、
南インド料理の最高基準なのだ。
だからこそ、そんなかれの目には、ぼくの態度がいかにも優柔不断に見えて、
かれはちょっと憤慨しているのだった。
おもえば、それはかれのみならず、相模原の佐野くんや、
銀座の某嬢をはじめ、何人かの常連さんもまた口にしそうな不満ではある。





実はぼくにとってアムダスラビーのレヴューの点数はたいへんつけにくい。
(だって、ぼくは週末ランチタイムのみのヴォランティアとはいえ、
いくらかなりとも関係者ですからね)。
もちろんそんなぼくだってレヴューはできるかぎり正直に公平に書きたい。
したがって、ときにはぼくも”アムダスラビーの土日のランチブッフェは
4.5点くらいはつけてもいいかな”、
と、おもったりもするのだけれど、でも、
もしもフランス料理やイタリア料理の基準で考えると、
さすがにちょっと贔屓の引き倒しではないかしらん、
と、おもって考えなおし、4.2点に抑えていて。
それでいながら、Yazhiniや、バンゲラズキッチンのいずれもディナーのように、
たとえ少しでもアムダスラビーがおこなっていないサーヴィスを提供しているレストランには、
ぼくは景気良く高得点をつけてしまうのだった。
これはぼくにとって悩ましい事柄ではあって。
実は内心ぼくはこうもおもう、上記3店の他、
ヴェヌス、アーンドラ、サウスパーク、ナンディニ、ニルヴァナムあたりは、
いわばひとつの星座であって、人それぞれに贔屓のレストランがあるにせよ、
それらすべてのレストランが、競い合いながら、
東京の南インド料理のレヴェルを高く維持し、夜空を輝かせているのだ。


じっさいこのレヴェルのレストラン群においては、
どこがもっとも魅力的かはその人の好み次第であって、
絶対的な優劣は、ほとんどないのではないかしらん。
たとえば極端な話、バンゲラズキッチンの評価だけが高く、
他のレストランへの評価が軒並み低いレヴュアーさんもおられるけれど、
そういう人の舌を信用することはできない。
だって、そういう人は、
ベートーヴェン以外は聴きません、とか、
マイルス・デイヴィス以外はジャズじゃない、とか、
そんな偏屈な人と同じであって。
むしろバンゲラズキッチンの良さがわかるならば、
たとえ(多少の粗があるとはいえ)スルチのランチブッフェをも微笑んで愉しむ、
それが南インド料理マニアの良識ではないかしらん。

また人それぞれの好みは、必ずしも料理の優劣とは関係がない。
たとえば、アムダスラビーは去る5月、
「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマールが就職し、
ラッサム自慢で、タミル料理全般にセンスのいい、
そんなムゲーシュとともに調理を担当するようになってから、
レパートリーは眩しいほど多彩になって、
結果、インド人のお客さんも、日本人のお客さんも飛躍的に増えて、
毎回でこそないものの、たいてい開店まえに
待ち客が5~7人出るようになった。
お客さんの数も、かつてはその日のランチブッフェのみで三十数人だったものが、
しかしさいきんは50人前後からときには80人まで伸びた。
どれだけ多くのお客さんから、ぼくは、
ガネーシュ・クマールの料理への讃辞を聞いたことだろう。
しかし、それであってなお、ある南インド、タミル人のお客さんはぼくに言う、
「かつての(体重105キロの)ディナサヤラン時代こそが圧倒的にすばらしかった。
他方、いまのアムダスラビーは南インドっぽさが減ってつまらない。」
なるほど、それは少数派の意見とはいえ、たしかに「あるひとつの見識」ではあって。
ぼくはかれに言う、「了解。あなたは大山Yazhiniのディナーに行くべきだ。
マハリンガム料理長は、あなたを待っています。」
むろん両店は優劣で語られるべきではなく、
むしろそのレストランがどのあたりにおいしさをフォーカスするか、
そのフォーカスポイントの違いに過ぎない。





他方、アムダスラビーのガネーシュ・クマール料理長もまた、
インド料理人としてのみならず、「負けず嫌い(competitive)」としても、一流である。
たとえば、先日の週末ブッフェで、フライド・ライス(=チャーハン)と、
シーフードカレーをメインにした日は、いつになくお客さんが少なく、
三十数人だった。
クマール料理長は、たいそう不満げで、不思議がって、ぼくに訊ねた。
「どうしてきょうはお客さんがこんなにも少ないんだい?」
ぼくは答えた、「日本人のお客さんは、インド料理の”魅惑のスパイス使い”に夢中なんだよ。
他方、フライドライスは”インド中華”で、スパイスは使わない。
だから、日本人のお客さんはフライドライスのために、西葛西までやって来ない。
いや、バスマティ米を使ったチャーハンはかろやかな仕上がりで、おいしいけどね。
また、Japan は”shisi のワンダーランド”だから、
日本人は魚に要求する基準が高い。したがって、
たとえ冷凍のシーフードをたとえどれだけ良いものを選び、
どれだけ上手に調理しようとも、しかし、日本人はけっしてそれを食べるために
わざわざアムダスラビーに駆けつけたりはしないんだよ。」
ガネーシュ・クマール料理長は、(多少不満げながらも)、納得したようだった。
「インド人のお客さんはみんな、ぼくのフライズライス、大好きなんだけどなぁ。」と、
(いかにも悔しそうに)つぶやきながら。


ざっと、そんなふうに、さいきんのアムダスラビーは、
いくらかなりともお客さんの気持ちをわかるようになってきて、
結果、小繁盛店になれたとはいえ、
しかし、まだまだいたらないことだらけで、成長過程のただなかにいます。
たとえば、先日、ある常連さんがディナーに食べにいらして、
注文なさったタンドール盛り合わせの一部はジューシーでおいしかったけれど、
でも、一部が、トゥーマッチ・ドライでぱさぱさだった、と苦言を呈されました。
ごめんなさい、その「ぱさぱさだった一部」は、あらかじめ火入れをしておいて、
注文が入り次第、レンジにかけてサーヴしたものでした。
(多くのインドレストランがやることですが、
しかし、それはやめるべきことです。)
経営者のゴヒルさんは、この苦言を聞きおよび、
さっそく、今後はそんなことのないように、
「つねにジューシーな仕上がりのタンドールを提供すべく」、
ガネーシュ・クマールに促しました。
むろん、プライドの高いガネーシュ・クマールは、
負けず嫌いですから、今後、タンドールのレヴェルは向上するでしょう。


また、アムダスラビーの、ディナーのア・ラ・カルトは、まだまだ弱く、
「デートで利用するには」、魅力が乏しい。
そこは、銀座バンゲラズ キッチンに大きく負けています。
12月はクリスマス・シーズン、
アムダスラビーもまた、「恋人たちに選ばれるインドレストラン」になるために、
しっかり努力するでしょう。だって、なにしろ、
経営者のゴヒル夫妻も、そしてガネーシュ・クマール料理長も、
たいへんな「負けず嫌い」ですから。


きょう9日 日曜日のランチブッフェは、
チキンビリヤニにエッグカレーという手堅いものですが、
しかし、こういうわりと定番的な日がまた実は超おいしい。
そして 食後は、インド食材屋を覗いたり、
「地の果ての激安古着屋」ヴァンベールを眺めたり、
西葛西の休日、超楽しいですよ。


余談ながら、12月8日(土)
午後3時頃、給仕長の(アニメの小熊のような)
サプコタ・チャビラル(夫婦)に、ちっちゃなお嬢さんが生まれました。
The team Amdahasrabhi の、小幸福です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/11訪問79回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

なぜ、アムダスラビーは小繁盛店になるのに4年半もかかったの?

日本人ならばあたりまえのように、
納豆を掻き回して、ねばっこい糸を引かせて、炊きたてごはんに乗せて、混ぜて、
箸で口に運んで、食べて、「おいしい、おいしい」とよろこびもすれば。
味噌汁を飲んで、しみわたったダシの味を愉しみ、
その具材に季節を感じて幸福を味わったりするけれど。
でも、それって、外国人にとってはそうとう難易度の高いこと。
だって、納豆は腐った臭いがするし、味噌汁はどんより濁っているし、
「なんでまたこんなもんを食べなくちゃならないの!??」、
と、異国の人が顔を顰めたとしてもまったくふしぎはありません。
そんなふうに異文化理解における障壁は、おもいがけないところにあって。
さて、きょうはこの話題の、南インド料理篇です。


べつに必ずしもアムダスラビーにかぎったことではなくて。
食べログでいろんな南インドレストランのレヴューを読んでいると、
my heart is beating so fast。
だって、同じレストランに対してレヴュアーごとの評価がきわめて大きく違いますからね。
たとえば比較的に絶讃レヴューがつづくなかであっても、しかし、なかには、
「わたしの評価はみなさんとは違いますッ!」とばかりに、
「味が薄い」だの、「スパイス感が弱い」だの、
無邪気に自信まんまんにかつまた自意識過剰に、
これ見よがしに激しい低評価をつける人がいたりするもの。
まったくもってよくある光景です。


しかも、もしもその人がカレーライスマニアならばそういう誤解もありえるでしょう。
だって、カレーライス基準で、ラッサム、サンバル、アヴィアル、
プーリコロンブそのほかを食べたって、「なんだこりゃ!??」と、とまどうほかありません。
南インド料理はけっして「カレーライスの親分」ではありません。
そもそも「カレー」「カレー」と連呼する人のなかに、
けっして南インド料理のまっとうな理解者はいません。
同様に、インド系料理全般に経験値が少ない人もまた南インド料理を誤解しがちです。
また、名店だけで食べていればいいものを、しかし次から次にレストランをまわって、
しかも南インドのみならず、北インド、パキスタン、ネパール、スリランカ、バングラデシュ、
果てはタイ料理まで食べていった挙句、
いつまでたってもどのジャンルの舌の基準もできない人は多い。
しかし、ときにはその人が
たとえばパキスタン料理にはちゃんと見識のある良い舌を持っている人だったりすることもあるので、
事態はいっそう厄介です。(パキスタン料理の基準で南インド料理を鑑賞しようとしたところで、
それは無理というもの。)


そもそも、南インド料理について、しっかりした信頼できる舌を持っている人がまだまだ少ない。
それが証拠に、最初にどなたかがそのレストランに対して低評価レヴューを書いて、
結果、釣られて後続レヴューがえんえん低評価になっていることもまたあって。
もちろんそれがほんとうにだめな料理ならば仕方のないことながら、
しかし、けっこうまじめにちゃんと正統的に作っている場合もあるので、
そんなときぼくは料理人のことをおもうと、かわいそうで胸が締めつけられます。
いずれも(残酷なことながら)そのレストランの運命としか言いようがありません。
もちろんたまにその逆の例も見かけるけれど、
それはそのレストランの幸運というもので、良かったですね、と、ぼくはおもう。
もっともぼくもレヴュアーなので、たまに(今回の話題とは裏腹なポイントで)
低評価レヴューを書くこともありますけれど。(I hope you understand. )


まず最初に、人それぞれに好みはあって、
誰もみんな、自分の舌こそがその人の「正義」ではあって。
人はなかなか自分の「正義」を疑いはしません。
また、人それぞれの感受性の差異があるからこそ批評はおもしろいわけだし、
むろん、こういうはなしはけっして必ずしも南インド料理に限ったことではないけれど、
しかし、どう見ても、あきらかに南インド料理に、
この、人それぞれの評価のバラツキの幅はきわめて広い。
その原因は、そもそも南インド料理とはいったいどういうものなのか、
それについての共通理解が(残念ながら)在日日本人にはまだ十分には得られていないゆえでしょう。


ただし、実は南インド料理好きならば、誰もがその誤解のポイントをおおよそわかっています。
ミールスもしくはブッフェを構成する料理のなかの、
ラッサム(の酸味)とサンバル(の、どくとくな香り)が人それぞれの好き/嫌いを分けます。
食べ慣れた人にとっては、ラッサムとサンバルがあってこそ南インド料理であって、
それはもう南インド料理の魂でさえあって。
しかし、もしもあなたが南インド料理ビギナーならば、
ラッサムは濃度のない、ただの酸っぱい胡椒汁だし、
サンバルは「けんちん汁」みたいでわけわかんないし、
ビギナーゆえ、とうぜんラッサムとサンバルの食べ方もわかっていないので、
「なんだこりゃ!??」と困惑してしまう可能性があって。
これがレストランにとっても、食べ手にとっても、地雷です。
そしてきょうもまた、どこかの南インドレストランで、
誰かが地雷を踏み、爆発の硝煙が立ちのぼり、気の毒な負傷者が生まれています。
まっとうな料理をふるまいながら激しく非難されるレストランが痛ましいことはもちろんのこと、
他方、激しい困惑に見舞われて、怒りにまかせて低評価レヴューを書いたレヴュアーとて、
ご本人が気づいておられるかどうかは別として、実はひそかに不幸なことではあって。
なぜって、南インド料理マニアたちは、文脈を読み、苦笑とともに事の次第を明察しますから、
以後その人を南インド料理の信頼できる食べ手とは、けっして見なさなくなるでしょう。


なお、では、その(規範的な)ラッサムとサンバルの食べ方とは、
ひととおり料理を食べた後で、小鉢のラッサムを飲み干したり。
あるいは、おかわりに白ごはんをよそって、片側からラッサムをかけ、
もう片側からサンバルをかけて、(多少、味が混ざってもOK)、
それぞれ猫飯にして、食べたりします。
でも、ビギナーの場合、とうぜんそんな食べ方はご存知ない。
ですから、理想的には、最初は誰か南インド料理好きの人に、
一緒に連れていってもらって、その人の食べ方をまねしてみると良いのだけれど、
なかなかそんな理想的なことってありませんものね。


他方、南インドレストラン側もまた、日々の営業のなかで、ちゃんと見ていて。
お客様の盛り方。食べ方。ブッフェテーブルの料理のどれが減りが激しく、
どれかあまり食べてもらえなかったか。
そのお客様がどの料理をおかわりして、どの料理を残したか。
ぜんぶしっかり見ていますから、
とうぜんレストラン側も学習します。
そうか、ラッサム(の酸味)とサンバル(の、どくとくの香り)が問題なんだな。
そこで、都心のレストランなどでは、
ブッフェテーブルのラインナップからラッサムを外し、出さなくしたり、
サンバルのあのどくとくの香りを弱く弱くして、
ミネステローネみたいに仕上げたりすることも多い。
また、サンバルのダイコンは嫌われがちなので、かぼちゃを主役にして、
イタリアンのズッパみたいにして押し通す場合もまたある。
むろんミールスの場合も同様です。
これはレストラン側に対して大いに同情すべきことではあって、
だって、ラッサムとサンバルで嫌われてしまっては、まったく商売になりません。
また、もしもその客がラッサム好きならば、
たとえブッフェのなかになくとも別途注文すれば応じてくれる場合もあるし、
また、たとえそれが無理であろうとも、
そのレストランが潰れてしまうよりは、よほどましですからね。
なお、アーンドラキッチン&ダイニングのラマナイヤ・シェフは、
ラッサムにジャガリ(濁り黒砂糖)を潜ませることで、
辛味と酸味をマイルドにする手法を使っていて、
さすが百戦錬磨のラマナイヤ、と、(ここでもまた)ぼくはかれを讃美せずにはいられません。


さて、ふつうは(?)そういうふうに対処するものなのだけれど、
しかし、アムダスラビーはどういうわけか、まったくそういう操作をしませんでした。
歴代アムダスラビーのスタッフにとっては、
ブッフェにときどきナンを出すことくらいはかまわない。
また、南インド人が好きな日本米のごはんを出すこともまったく気にしない。
(なお、ビリヤニおよびプラオには、つねにバスマティ米を使っています。)
白状すれば、蟹のラッサムにカニカマを使ったことも何度かあったけれど、
それだって(その当時の)原価計算ゆえのこと、スタッフは誰もそれを恥じてはいない。
なお、その後、お客さんが増えて、
ちゃんとリアルワタリガニを使えるようになりました。
しかし、ラッサムとサンバルの味は、ひたすら現地主義を貫徹してきました。
なぜって、初代経営者の(現TMVS FOODSの)ピライ・マリアッパン、
初代シェフの、現Yazhini のマハリンガム、
2代目、現ヴェヌスの、ヴェヌゴパール、
3代目の体重105キロのディナサヤラン、
そして現在の経営者、ゴヒル夫妻、
料理長のガネーシュ・クマール、(そしてこの話題においてはとくに)ムゲーシュが、
歴代みんな揃ってラッサムとサンバルを大好きだから。
もしもラッサムとサンバルの味を「曲げる」くらいならば、
それはもう南インド料理を出さないほうがマシだ、
と、歴代関係者全員が考えていた、と言えないこともありません。
しかし、よりいっそう正確に言えば、
アムダスラビーのスタッフはながいこと、
ラッサムとサンバルに問題(と言うか課題)があることにほとんど誰も気づくことなく、
自分たちにとっていちばんおいしい料理を、
ウケようが、ウケなかろうが、ただただ愚直にふるまってきました。
それゆえ、アムダスラビーは長いこと「マニアにのみウケるヴァーチャル繁盛店」で、
じっさいにはなかなか小繁盛さえしませんでした。


ついでながら、北九州の名店として噂のKALAは、あらかじめこんな文言を掲げています。
「当店はマニア向け料理なので、食べ慣れない人には美味しく感じません。」
なんと誠実で、泣ける但し書きであることか。
また、大森ケララの風の沼尻オウナー・シェフは、
全国の多くの、日本人による誠実経営の南インド料理店に対して、
ほぼ満遍なく(?)熱い友情を表明していて。
これはひとえに、あの、人望も評価も高く、多くの人々から愛されている、
そんな沼尻さんご夫妻であってなお、
人知れず涙を流した日が(たぶん何度となく!)あったゆえの同志的友情ではないかしらん。
そう、どこの南インドレストランも例外なく必ずや、
「奮闘努力の甲斐もなく、きょうも涙の日が落ちる」、
そんな受難の日々を潜り抜けていて。


もっとも、アムダスラビーの場合は、
長いあいだスタッフも、例の某ヴォランティアも、みんな揃ってバカだったから、
べつに涙を流すこともなく、ただただ不思議がっているばかりだった。
スタッフはみんな、「どうしてお客さん少ないんだろうね、こんなにおいしいのにね。
やっぱり地下のレストランって集客が難しいね。さ、ビラ撒きしなくちゃ。」
とかなんとか言っちゃって、ただただひたすら easygoing で、
つくづく happy-go-lucky だった。
なお、アムダスラビーに知性が加わったのは、
経営者がゴヒル夫妻になってからのこと。
ゴヒル夫妻になってから、ラッサムもサンバルもしっかりふるまいながら、
それであってなお、お客さんは増えてゆきました。
理由は、ゴヒル夫妻の経営上手もあれば、
ガネーシュ・クマール&ムゲーシュのコンビの力量と情熱もまたあるでしょうし、
また、レストランの「たまたまの時期的な勢い」もまたあるでしょう。
しかし、いちばん大きいことは、一群の常連さんが、
きっぱりはっきりアムダスラビーを熱烈に支持してくれていて、
そして常連さんの層が厚くなったことによって、
現在のアムダスラビーの小繫栄があることはまちがいありません。


ま、ひとことで言えばこの文章は、経営という意味では、
「南インドレストランはつらいよーIt's tough running a south Indian restaurant 」というはなしではあって。
でも、それが好きなわれわれにとっては、
南インド料理こそが、世界でいちばんおいしい料理ですからね。
人生において指折りに大切なものを、ちょっとやそっとの受難で、手放す人はいません。


11月18日(日)のランチブッフェはーー。
ハイデラバディマトンビリヤニ&ニンジンのライタ。
サンマのちょっぴりすっぱいカレー。
アンドラ・ペサラット(緑豆を使った、緑色のソフトな小ドーサ)&生姜のチャトニ。
ワタリガニのラッサム。
冬瓜のサンバル。
バナナミルクシェイク。
セミヤパヤサムそのほか。
ざっとそんなメニューで、これはもう満員御礼まちがいなしのメニューで、
そしてしっかり開店からランチ営業終了まで、ほぼ満席つづきでした。
ぼくの知るかぎり、みなさんほぼにこにこ笑顔で帰られたけれど、
しかしもしかしたらそのなかにひとりくらい内心超不満だったお客さんもいらしたかもしれない。
これはひとえに南インドレストランの宿命であって、
そんなわけで、どこの南インドレストランであっても油断できる日は一日たりともありません。
Shanti. Shanti. Shanti.


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/11訪問78回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
~¥9991人

夜のサンマのタワフライ。750円。

さいきんのアムダスラビーは、土日&祝日のランチブッフェがますます人気で、
開店まえから待ち客が5人くらい出るようになりました。
先日はランチブッフェだけで81人という新記録も達成されました。
平均的には50人~60人くらいの日が多いかしらん。
開店4年半にしてようやくのこと。
お客さんにとってはどうでもいい話題かもしれませんし、
待ち客が増えることなんてちっともうれしくないでしょうが、
でもね、多少は利益が出ないことにはレストランは潰れてしまいます。
そしてアムダスラビーは、開店4年半にして、ようやくちゃんと利益が出始めました。


まず最初の理由は、「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマールの
調理力の高さとレパートリーの広さ、
次にムゲーシュのサポートによるものではないかしらん。
次に、どうやらこのごろはスタッフもお客さんの気持ちが少しはわかるようになってきて、
メニューの組み立ても巧くなってきたのではないかしらん。
常連さんたちが笑顔でブッフェを召し上がっている姿に、
スタッフ全員、元気をもらっています。
いやね、こういうことを書くといかにも社交辞令みたいで嫌らしいんだけれど、
でも、ほんとなんですよ。
料理人も給仕もみんな毎日毎日仕事しかしてませんから、
常連さんたちこそが、かれらにとってのJAPANそのものなんです。
つまり、常連さんたちが笑顔で料理を召し上がっている姿は、
かれらにとって”JAPANがかれらに向かって微笑んでいる”そんな光景なんです。
それはうれしいですよ、だって、かれらはJAPANを世界で指折りかっこいい国だと感じて、
来日したのですから。


ま、スタッフのはなしはともかく、
アムダスラビーにとって、次は、平日夜の集客を増やしたいところ。
5時から7時までのハッピーアワーがアルコール好きのみなさんのための大サーヴィスではあって、
また、メニューは「マナガツオのフライ」、「蟹づくしミールス」
あとは各種のドーサと、ミールス、そして各種カレーが揃っていて、どれも超おいしいですが、
ただし、おしむらくは(名店群のなかで比較すれば)
メニューがちょっぴり普通っぽいかしらん。
名店基準では、おいしいだけではけっして十分ではありません。
そこで、かねてからぼくは経営者のゴヒル夫妻に希望を伝えてきたもの、
「表参道SITAARAの季節メニューみたいなのを、
アムダスラビーも考えて、出しましょうよ。」
ゴヒル夫妻はにこにこ微笑んで、そうですねぇ、
なんておっしゃっていたもの。


さて、いま、ちいさな一歩が踏み出されました。
サンマのタワフライ 750円がメニューに載りました。
これね、おいしいんですよ。
サンマをマサラに数時間マリネして、
そのマリネはといえば、チリパウダー、生姜とニンニクのペースト、
コリアンダーパウダー、クミンパウダー、塩、
そのほか(実はここに秘伝あり!)。
そしてフライパンで焼き上げる。
熱々ふかふかのサンマは、オイリーで、
しかもマサラがサンマの肉の苦味そのほかを、
実にエレガントに丸めこんでいて、
おいしいんですよ。


たまたまきょう11月13日は火曜日、
ガネーシュ・クマール料理長はお休みで、
ムゲーシュが火曜日料理長の日。
ぼくは感心した、ムゲーシュ、上手じゃん!
ムゲーシュはどちらかといえば「感性の料理人」だけれど、
センスが良いので、かれが上手な料理はたいへんおいしい。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー -
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2018/10訪問77回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

もしもアムダスラビーが、NYCのクイーンズにあったなら。

アメリカの大学を卒業した某嬢と話していたら、そんな話題になった。
いや、順を追って話そう。
ニューヨーク州には、まずはマンハッタン島があって、
その北東部にブロンクス、
マンハッタン島に対して、(イーストリヴァーを挟んで)、
西部にブルックリン、東部にこのクイーンズがある。
そのうちクイーンズは面積ももっとも広く、
さまざまな移民があちこちに集住していて。
たとえばジャクソンハイツには大きなインド人街があって、
とうぜんさまざまにおいしい各種インドレストランがあるそうな。


なるほど、ちょっとグーグル先生に訊いてみると、
ざっと二十軒のインドレストランを教えてくれる。
https://www.google.com/search?q=queens+jackson+heights+indian+restaurants&npsic=0&rflfq=1&rlha=0&rllag=40747677,-73891498,62&tbm=lcl&ved=2ahUKEwjv_cH0v6feAhVGfrwKHb3GB1oQtgN6BAgBEAQ&tbs=lrf:!2m1!1e2!2m1!1e1!2m1!1e3!3sIAE,lf:1,lf_ui:9&rldoc=1#rldoc=1&rlfi=hd:;si:;mv:!3m12!1m3!1d15362.141130674557!2d-73.9038095!3d40.760690999999994!2m3!1f0!2f0!3f0!3m2!1i218!2i244!4f13.1;tbs:lrf:!2m1!1e2!2m1!1e1!2m1!1e3!3sIAE,lf:1,lf_ui:9&spf=1540673467576


某嬢は言った、「もしもアムダスラビーがクイーンズにあって、
こんなふうに土日&祝日のブッフェを提供していたならば、
価格は20$くらいで、チップは5$って感じでしょうね。
また、西葛西をマンハッタンに喩えるのは無理だけど、
仮にそんな想定をするならば、30$でチップは5$って感じかな。」


ぼくは言った、「なるほどね。実はぼくもおもってたんだ、
アムダスラビーの土日&祝日ブッフェの値つけは安いよね。
スタッフ自身もときどき(自虐的に)言ってるもん、
”12品で1200円、すなわち1品100円じゃん、
アムダスラビーは人気の百円インドレストランってわけか”って。
ほんとは2000円くらいつければいいんだろうけれど、
でも、ざんねんながらそれで満席3回転ってわけにはゆかないだろうからね。
そもそも、日本はざっと過去四半世紀にわたってデフレ大国で、
外食の値段は、(高額店も一定数あるとはいえ)、
総じて世界の都市のなかで屈指に低価格店が多く、その層が厚いから。」
なお、インドはさらにいっそう低価格の飲食店層が充実してはいるものの、
同時に5大都市のリッチでゴージャスなエクセレントレストランの層は、
見方によっては、東京以上に厚いのではないかしらん。


誇り高いガネーシュ・クマール・シェフや、ムゲーシュにとっては、
自分たちが作る一流の料理を一品百円で売るのはそうとう不本意だろうけれど。
しかし、だからといって、かれらとてブッフェは 満席3回転くらいしなければ、
それはまたそれでさぞや不満だろう。
経営者のゴヒル夫妻は、現在の経済動向に鑑みて、
賢明な価格設定をおこなう、リアリストである。





きのう10月27日(土)は、
カシューナッツ・プラオ(炊き込みごはん)に、
カダイチキン・カレー、
そしてマグロのマサラ揚げ「チリフィッシュ・ドライ」が、
たいへんすばらしい世界を描いていた。
サクラエビ入りラッサム、
「ナスのちょっぴりすっぱいカレー(プーリコロンブ)も、
良い脇役で、ガーデンサラダは(とくに11時代は)華やかで、
ラヴァバルフィは、かるかんに似たふんわりしたかわいいお菓子で、
たいへんたのしかった。


余談ながら、この日は、ソウル育ちの青年、申くんが食べに来てくれて。
かれは東京大好きで、鮨はもちろんのこと、洋食からインド料理、
はたまたフランス料理もモダンクラシックから先端系まで、
すべて系統だてて召し上がっていて。
われわれは、エスコフィエ、ボキューズ、ロブション、デュカス、
はたまたレストラン・ノーマまで、
そしてそれに対応した各時代精神を体現する東京のシェフたちについて、
おたがい目をらんらんと輝かせて語り合った。
申くんが言うには、ざんねんながらソウルにはまだ、
インド料理は北インド料理レストランしかないそうな。
ぼくは言った、「きっとあと数年で、南もできるんじゃない?」
申くんはいぶかしげに言った、「どうでしょうねぇ???」


さて、きょう28日(日)は、
ハイデラバディ・マトン・ビリヤニ、
チェティナドゆで卵カレー、
パンはウタパムに、タマネギチャトニ。
これはもう、来た来た来た来た、来たーーーーーッ、
という強力なメニュー構成。
お薦めの来店時刻は11時です。


後記。案の定、きょうはお客さん大入りで、
開店まえから7人ほど行列ができ、しかもその後もえんえん満席続きで、
どの料理も売れ行きが圧倒的で、
1時50分に、ウタパムがウィードドーサに変更され、
(いつもは2時半ラストオーダーのところを)
やむなく1時55分に「売り切れ入店お断り、ごめんなさい」になりました。
その後にいらしたお嬢さん、ごめんなさい。


ぼくは役得で、ウタパムもウィードドーサも両方いただきました。
ウィードドーサは、こんがり茶色の全粒粉のミニドーサで、
しんなりした生地ながら、小麦の香りがこおばしい。


きょうはペンシルヴァニアご出身の金髪ロングヘアの、翻訳家の女性Laraさんがいらして、
彼女は南インド料理も台湾料理も中東料理も大好き。
ぼくがクイーンズのインドレストラン事情の話題を振ると、
彼女は答えた、「そうなんですよ、ニューヨークはインド料理はやや高いですね、
中近東の料理ならば、おいしくて安いんだけれど。」


経営者のゴヒルさんは、アムダスラビーで焼酎を出すことを計画中。
きょうかれは試験的に、芋焼酎の、一刻者、富乃宝山、黒霧島、田苑、
米焼酎の白岳など購入。近日中にメニューに載りそうです。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/10訪問76回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

スマートフォン・ネイティヴ HiHi Jets と、インド料理の近未来。

先日ジャニーズ系アイドルグループの HiHi Jets がアムダスラビーへ現れて、
かれらのYOUTUBE番組のために、
かれら自身が出演交渉し、メンバー5人でマサラドーサを食べ、
それを番組にする企画があった。
https://www.youtube.com/watch?v=zi5elFKGbSs&feature=youtu.be


ざんねんながら当日ぼくはいなかった。また、
経営者のゴヒル夫妻も、アムダスラビーのスタッフも、
日本のカルチュアにうといので、HiHi Jetsのことを知らなかったのだけれど。
他方、Twitter ではかれらのファンの多くが番組を話題にしていて。
それを通じて、ぼくが知り、そしてアムダスラビーのスタッフ全員に伝えたのだった。
経営者のゴヒル夫妻は、ふたりのお嬢さんに自慢ができる。
インド料理の貴公子、ガネーシュ・クマール料理長は、
「そうか、それは良かった」と、漠然と、うれしがった。
給仕のサプコタ・チャビラルは、ちょっぴり得意そう。
ムゲーシュは、いちばん好奇心が強く、i-Phone で番組を見て、
しかもYoutube で HiHi Jets のライヴ映像を眺めて、
ムゲーシュは異文化を覗き、ふしぎがり、興味を持ち、にこにこたのしんでいた。


なお、さいきんのインド料理人たちはスマートフォンを使いこなしていて。
たとえばガネーシュ・クマールやムゲーシュの場合ならば、
Sun news、KTV、Vijay TV 、Jaya TV でタミルニュースをチェックし、
Sun Music でタミル音楽を楽しみ、
インターネット電話の WhatsApp で毎日家族と会話を交わし、
Facebook やTwitterで世界のさまざまな都市で暮らす仲間たちと交友をする。
ちなみに、インドにおける携帯インターネット回線使用料は、無制限で月700円ていどだそうな。


他方、HiHi Jets のメンバーもまた、
よくぞ、アムダスラビーのようなマニアックなインドレストランにたどりついてくれたもの!
しかも、召し上がったのがマサラドーサだもの!
さすが、スマートフォンネイティヴ世代の情報収集力&行動力とおもわずにはいられない。
HiHi Jetsのみなさん、ありがとうございました!


なるほどネットはどんどん暮らしのなかに入り込んでいて、
情報はどんどん増え、どのジャンルも競合状態は加速していて。
しかも料理は自分で体験してみないと、なにもわからない。
結果、”ポケモンGo”みたいな「”情報空間の探査+行動”の楽しみ」が飲食の世界にも生まれていて。
この波とともに、インド料理の世界は、どんどん未知の扉を開き、
ますますおもしろくなっていっていて。
アイドルたちがどんどんダンスが巧くなり、
かれらの場合はローラースケートまで巧くって、
しかもバックトラックにはHIPHOPやハウスがどんどん上手に取り入れられているように。
ニッポンのインド料理もまたどんどん進歩していて。
微力ながら、ぼくもそれを推進する方向でこのゲームに参加してゆきたいもの。


余談ながら、HiHiJetsは、西葛西観光の一環として、
あろうことか、ぼくとムゲーシュが愛する、
あらゆる服が最期に集まってくる約束の地、「地の果ての古着屋」たんぽぽハウス
(ヴァンベールの系列店である)へ、やって来て。
「1000円コーデ、簡単オシャレで髙橋優斗改造計画! 」
なんて番組さえも作ってアップロードしているではないか!
ぼくは驚き、かつまたおおいに感心した。わかってるねぇ、西葛西の楽しみ方を!
(・・・と、おもったら、よく見たら、たんぽぽハウス高田馬場店でした。)
それにしても、作間龍斗くんってコーディネート、上手じゃん。おしゃれだねぇ。
https://www.youtube.com/watch?v=hkIrVHb_56c



10月20日(土)は、
「Kong Nadu地方の野菜ビリヤニ」
「Karamani 骨つきチキンカレー」
「4種の豆の、ダルマッカニ」
「ダイコンのポリヤル」
「レモンラッサム」
そして「コットゥ・パロタ」ーうずまきパンを細かくカットして、
鶏肉と一緒にスパイシーに炒め合わせたもの が、
おいしかった。(食感が ふにふに して、どくとく。)


きょう21日(日)は、
「パキスタン、シンディ地方の、ゆで卵入りビリヤニ」
「コリアンダーの香るぜいたくチキンカレーーチキンハリヤリ」
「渡り蟹入り、ラッサム」
「冷製 モールコロンブ(ヨーグルトシチュー)」
など12品が勢揃い。


お薦めの来店時刻は、11時です。
また、西葛西周辺在住の人にとっては、
アムダスラビーは、uber eats の出前サーヴィスをはじめています。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/10訪問75回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ひとりひとりにファンがいる。the theam Amdhasrabhi。

アムダスラビーは開店してから4年半で、
ぼくにとってはどの時期にも忘れ難い魅力がありおもいでがあるけれど、
ただし、いまがいちばんスタッフのまとまりも良く。
ブッフェのレパートリーも豊富で。
お客さんは正直なもので、ちゃんと、これまででいちばん多く詰めかけていて。
けっきょくいまがいちばん、「レストランとして」幸福なのではないかしらん。


経営者のマダム・ゴヒルは、現代的なインド女性ならではのセンスと
いかにも食いしん坊らしい積極性があって。
たとえばアムダスラビーの壁紙はひそかにお洒落だし、
はたまた先週の「マグロのビリヤニ」のマグロは、
彼女が最後の築地に観光に行ったおみやげのマグロを使ったもの。
塊で買ったマグロは、骨のまわりの半透明のゼラチン質がとぅるんと優しく、
もちろん肉もうまみたっぷりで、その豪快なうまみを繊細なスパイス使いで、
立体的な香りに仕上げていて、ビリヤニとして、たいへんにすばらしかった。


ご主人のゴヒルさんは本業はIT系で銀行勤めのキャリア。
アムダスラビーの経営を簡潔に方向づけています。


料理長のガネーシュ・クマールは、インド料理界の貴公子。
こんなに広いレパートリーを持ち、しかも優美で正確な仕上げをおこなう料理人は、
そうそういません。いつまでたってもえんえん知らない美しくおいしい料理が現れるので、
飽きることがありません。そんな偉大な料理人でありながら、
なぜか、ラッサムだけがヘボく、そこがまた人間くさく、
クマール・シェフの憎めない魅力になっています。
だって、まったく弱点のない完璧人間なんてつまらないですものね。


さて、そのラッサムはさいきんではムゲーシュがサポートしたり、
担当したりするようになって、ラッサムのクオリティはぐんと上がり、
結果、アムダスラビーのブッフェにもはや弱点はほぼなくなりました。
しかも、ムゲーシュがサラダも担当するようになって、
それまでの二番手の仕事と比べて、がぜんクオリティが高まって、
華やかになって。
しかもドーサや、イディリもムゲーシュの担当で、たいへんおいしい。
ついでながら、ムゲーシュはそこそこ教養がある癖に、年中アホな冗談を言っては、
場の空気をなごませます。


女性客のファンが多かったハンサム給仕長のグヤン・デヴは、先日ネパールへ帰りましたが、
その替わりに、給仕仕事全般を表も裏もしっかりこなす、
「絵本なかの小熊」のようなサプコタ・チャビラルと、
そして「ジャニーズ系ネパール人」と言うか、「小柄なショーンK」と言うか、
なかなかかっこいい茶髪のサントーシュ・シャルマが入りました。
サントーシュ・シャルマは、イケメン風ゆえ、
チラシ撒きのときに、受け取ってもらえる率がやや高い。


そしておまけとして、土日のランチブッフェには、
開店から1時間くらいは、ぼくもいます。
ぼくはただの「黒板書きそのほかのヴォランティアの裏方」ですが、
ときどき「食べログ、読んでますよ」とか、
お客さんに言われると、うれしい。
その人が美女ならなおさらだけれど、おっさん客であってもやっぱりうれしい。


しかもアムダスラビーの常連さんがまた多彩で、
昆虫採集の大家でかつまた自転車競技の専門家でおまけにノイズミュージックマニアさん、
西葛西在住の三代つづく食いしん坊さん、
大田区から富士重工のスクーター”ラビット”1967年モデルに乗ってやってくるお洒落さん、
いつも荷物の多いお茶目な山ガール、
クラシック界の女豹、マルタ・アルゲリッチのピアノを愛するセミプロのピアニストさん、
風のように現れてにこやかに去ってゆくおじさん、
神奈川県から来てくれるイラストレーターさん、
食べログレヴュアーの某嬢、
さいきんご無沙汰のファンクミュージックマニアさん・・・
みんなおもいおもいに楽しそうに召し上がります。





さて、10月13日(土)のランチブッフェは、
「鯖のローガンジョシュ」が上等にオイリーで、かっこよくおいしく、
「マラバール・ヴェジ・ビリヤニ」がまた優美で立体的な香りだった。
レモン・チキンは、インド中華のヴァリアントながら、
清楚な酸味が素敵だった。デザートのムングダルハルワの黄色が鮮やかで、
シルキーな舌触りのおいしさだった。


なお、あした14日(日)は、
シーフードビリヤニとチキンサルナを中心に構成されるようですよ。
パンはオニオンウタパム。
お薦めの来店時刻は、11時です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー - 画面向かって右から、ガネーシュ・クマール、グヤン・デヴ、サプコタ・チャビラル、そしてムゲーシュ。

    画面向かって右から、ガネーシュ・クマール、グヤン・デヴ、サプコタ・チャビラル、そしてムゲーシュ。

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2018/10訪問74回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ムゲーシュの、イディリの食べ方。

10月7日(日)、三連休の中日は、
「骨つきチキンビリヤニ、Dindigul地方スタイル」
「紫タマネギとニンジンとトマトのライタ」
「輪切りタマネギとひよこ豆と鶏挽肉のカレー」
「サンバル、ほうれんそう入り」
「ブロッコリーとグリンピースのカレー」
「ニンジンのスパイシー炒め、ココナツの香り」
「ラッサムスープ、豆のうまみを効かせて」
そしてパン枠に「イディリ」と「ほうれんそうのチャトニ」があって、
デザートは「セミヤ・パヤサム」だった。
いかにもガネーシュ・クマールらしい
たいへんバランスの良い、贅沢で優美な構成で、
客の入りも良く(53人だったかしら)、
好評だった。


ラストオウダーの2時半を過ぎると、スタッフは片付けにかかり、
2時45分頃になると、おもいおもいに食事をはじめる。
アホな冗談を交わしながらのいつもの食事風景である。
ぼくが感心したのは、ムゲーシュのイディリの食べ方である。
イディリとは、かるかん饅頭あんこ抜き、みたいな蒸しパンで、
ムゲーシュはこれを皿に4つほど乗せ、
ほうれんそうのチャトニを軽くかけ、その上にほうれんそう入りのサンバルをかけて、
イディリを食べはじめた。
しかも、イディリをつまんで食べもする一方、
少し崩しもして、サンバルに混ぜたりもして、
そうやって片付けていって、
最後は両手でお皿を持って、口元へ持ってゆき、
崩したイディリ混じりのサンバルスープを(背筋を伸ばして毅然と!)飲み干すのだった。


いかにも南インド、タミル人らしい食べ方で、
そのあまりのタミルっぽさに、ぼくは感心したものだ。
たとえばタミル人は、チキンカレーとパロタ(うずまきパン)を食べるときでも、
パロタを小指よりも小さなサイズにちぎって、カレーの上にすっかり撒いてから、
カレーとパロタを混ぜて、パロタをカレーでしっとりさせて、食べてゆく。
どうやらタミル人にとっては、こうして食べるのがいちばんおいしいらしい。


タミル人と言えば、映画スター、ラジニカントが超有名で、
かれは志村けんが千葉真一を兼任しているような存在で、
冒険活劇ラヴロマンス入り勧善懲悪映画のなかのユーモラスな正義漢でヒーローであり、
すべてのオヤジたちの希望の象徴である。
タミル人たちはみんなかれを「ラジニ」と呼び、
まるでしたしい友達のように口にする。
もっともムゲーシュは現代っ子ゆえ、ハリウッド映画もよく見ているけれど、
そんなムゲーシュもまた、イディリの食べ方はタミル人そのもので、
まるでラジニの映画の一場面みたいで、
ぼくは見ていてにこにこ微笑んでしまうのだった。


なお、明日8日(祝)のランチブッフェは、
「マグロビリヤニ、ハイデラバード・スタイル」「ジンジャー・チキンカレー」など、
ゴージャスなラインナップです。
お薦めの来店時刻は11時です。

ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー - ムゲーシュ

    ムゲーシュ

  • アムダスラビー - ムゲーシュがインドで買ってきたイディリ蒸し器

    ムゲーシュがインドで買ってきたイディリ蒸し器

  • アムダスラビー - イディリ

    イディリ

  • アムダスラビー - ほうれんそうチャトニ

    ほうれんそうチャトニ

  • アムダスラビー - ラジニカント

    ラジニカント

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2018/09訪問73回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

お楽しみは、タミル料理のコンテンツだけじゃなく。

(実はぼく自身はとくに理由はなく食べたことはないのだけれど、
そんなことはここではどうだっていいことで)、
2016年、東京のインドレストランシーンに、
カルパシが誕生したことはやはり画期的なことではあって。
なぜって、あのレストランの経営者は、
(つねに新しいインド料理の魅力的なコンテンツを提供するんだ)というミッションを
たいへんに意識的かつ明確に持っていて、そういうインドレストランはそれまでの東京に、
ほとんどなかったから。
そうでしょ、そもそも提供する料理を コンテンツとして見る なんてことは、
高額フランス料理ではあたりまえのことながら、
しかしインド料理でそんな認識を持つレストランなど、
それまでの東京にはほぼ存在しなかったから。


考えてもみて欲しい、それまでインドレストランときたら、
長いあいだナンとタンドールチキンとバターチキンカレーとチャイを出してきて、
その後、00年以降ビリヤニとミールスとドーサが加わったとはいえ、
いずれもその店の定番料理を提供するだけのシンプルで安定的なスタイルを、
現在にいたるまでどのレストランもそれほどには崩していない。
もちろんおいしさは立派な価値だけれど、しかし、
誰もが知っている(あるいは知ってしまった)定番料理には情報価値は小さい。
(なお、もしかしたらヒトの多数派は
定番料理を食べ続けることにこそ幸福を感じるの「かも」しれないけれど、
ここではそれについては考察しない。
ここで大事なことは、おいしさ はあたりまえに大事な価値だけれど、
それと同時に 情報価値の有/無 という新基準がインドレストランシーンに登場し、
一定数のファンが情報価値の乗っている料理をふるまうレストランを
熱烈に支持したということだ。)


じっさいカルパシはいわばインド料理の探求の旅を続けているようなもので、
常連客たちは、次にいったいどんなインド料理がふるまわれるか、
目をらんらんと輝かせながら、その旅に参加している気分ではないかしらん。
(おもえば業態はまったく違うものの、エリックサウス系のレストランもまた、
企画立案者のイナダシュンスケさんに着目すると、同様のことがあるていどは言えそうだ。)


さて、アムダスラビーはどうかと言うと、
もちろんそんな難しいことなどスタッフは誰ひとり考えたこともなく、
ただ経営者のゴヒル夫妻がレストランを簡潔に方向づけ、
スタッフたちはアホな冗談を交わしながら、
自分たちの慣れ親しんだ上等のインド料理をつくり、
それを比較的安価に提供してきただけである。
にもかかわらず、カルパシの登場によって気づかされたことには、
あ、実はアムダスラビーもまたけっこうどくとくに魅力的な
おもしろいコンテンツ(=タミル料理の数々)を提供してきたじゃんか、
ということだった。
土日&祝日のランチブッフェの常連さんたちには同意してもらえるだろう、
これまで何百という料理を出してきたし、
ビリヤニだけでさえも何十種類にものぼる。
しかも、「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマールがシェフに着任し、
ムゲーシュがセカンドを務めるようになってからの輝きは圧倒的である。
無数のレパートリーを誇り、かつまたカット、過熱、色の振り分け、
味と香りの造詣などすべてにわたって高い実力を持ちながら、
なぜかラッサムだけがともすればヘボい、そんなガネーシュ・クマールを、
ロックンロールハートな(?)ムゲーシュが巧みにサポートし、
しかもムゲーシュのラッサムは優美で立体的でたいへんにすばらしい。
その他、ムゲーシュはサラダとパン類と料理2品を毎回担当し、
ふたりのコンビは最強である。


9月29日(土)は、メニュー構成だけ見れば、いつもながらの
アムダスラビーのランチブッフェらしい、さして驚きのないものだったけれど、
しかし、食べれば超おいしかった。
アムブール・チキン・ビリヤニは香りも立体的でおいしく、
ライタ(ムゲーシュ担当)は美しく、かつまた野菜のカットが洗練されていて、
エッグマサラは想像どおりの仕上がりながら、ビリヤニにかけると、そのおいしいこと!
ぼうれんそうとニンジンのサブジ(ムゲーシュ担当)は
緑色のなかのニンジンのオレンジ色が美しく、濃度は完璧。
じゃがいもとグリンピースのドライな一品な手堅く、佳良な副菜。
ライタがまた優美で澄み渡っていながら、ほのかにオイリーで、
底には豆のうまみが潜んでいて、味に立体感があり、
かつまた、さくらんぼを小さくしたようなトウガラシが入っていて、
これを噛もうものならば、まずはほのかな甘さと苦味を感じるものの、
その後すぐに髪の毛が逆毛立つほどの辛みが襲いかかってきて、
あわててデザートを口にしてその甘さで舌をかまってやらなくてはならないのだけれど、
しかし、それもまたインド料理の愉しみのひとつです。
なお、このトウガラシ(urundai milakai)はムゲーシュのインドみやげであり、
あと500gはあるそうなので、1ヶ月くらいは愉しめそうだ。
デザートの Aval (干し米のパヤサムーミルク煮)は、干し米が純白のミルクを吸って、
ややふんわりして、いくらか炊いたコメの食感に近づいていて、楽しい。
たいへんすばらしい構成だった。


以上、コンテンツのはなしをしてみたのだけれど、
とはいえ常連さんにとってアムダスラビーは、コンテンツのみならず、
あの空間が、くつろいで楽しめるどくとくな場所であり、
そこがおもしろいという理由もまたありそうだ。
じっさい、お客さんがなにかのインド食材を探していれば、
誰かが、あ、それならあの店にあるよ、と教えてあげるし、
お客がなにかの料理のレシピを知りたければ、もしもそれほど忙しくないときならば、
ガネーシュ・クマールなりムゲーシュなりがレクチュアしてくれる。
はたまた、きょうはぼくは、はじめてのインド旅行を控えたとあるお客さんに、
インド旅行における厳重注意事項を伝えたりした。
むろんそうやってスタッフたち自身もお客さんと楽しんでいて。
そのあたりが実はアムダスラビーの個性というか、「とりえ」なのかもしれない。


さて、あした30日は、「骨つきマトンビリヤニ」、「マトン・ド・ピアザ」、
「野菜ウタパム」&「ココナツチャトニ」などが揃っています。
あしたはたぶん台風でお客さんは少ないんじゃないかしらん。
そんな日にいらっしゃると、レストランスタッフによろこばれますよ。
お勧めの来店時刻は、11時です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2018/09訪問72回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

公然の誘惑、ひそかな目くばせ。

たとえ東京圏に千数百軒のインドレストランがあろうともどうだっていいことだ。
じっさい在東京 インド料理を愛する者たちの視野に入っているレストランは、
せいぜい三十軒ほどにすぎないだろう。
ただし、そこで繰り広げられている誘惑の競争は熾烈をきわめ、かつまたたいへんにレヴェルが高い。


おもえばゲームは00年代にまず池袋A-Raj、八重洲ダバインディア、
東銀座ダルマサーガラによって始められ、
そしてブッフェの愉しみを教えてくれる虎ノ門と神谷町ニルヴァナムが加わり、
そこに御徒町アーンドラキッチンが参入し、
(タミルではなく)アーンドラプラテシュのスタイルで多くの客を魅了した。
すべて南インド人料理人による南インドレストランである。
また、ケバブ・ビリヤニ・グループはビリヤニのレヴェルと知名度を一気に上げた。
独自のゴージャス路線をひた走る、星崎オウナー夫妻による表参道SITAARAも忘れ難い。


その後、当時は西葛西・いまは葛西のレカの西インド家庭料理が
新鮮な風を吹かせてくれたものだし、現・足立区太子前のエパレットは、
これまでPujaの独壇場だった西ベンガル料理の世界に、
もうひとつのチャーミングな花を咲かせてくれていて。


さらには勇敢な日本人料理人たち、大森ケララの風、木場カマルプール、
千駄ヶ谷ディルセ、新大塚カッチャルバッチャル、荒川遊園前なんどり、東葉勝田台 葉菜、
そして前述の、圧倒的なプレゼンスを見せつける町屋Pujaの参入によって、一気に多様性を増した。
まったく違う業態ながらエリックサウス系の大繁盛も業界を活気づけていて。
しかも2010年代後半に千歳船橋カルパシ、三軒茶屋サンバレーホテルが加わったことによって、
マニア度はさらにいっそう増して、もはやとんでもないことになっている。


他方、ムスリム系は埼玉県八潮市の カラチの空、アルカラム、
日本橋ナワブ、そしてついこのあいだ開店した行徳ビリヤーニーハウスなど
強力なレストランが揃っています。
バングラデシュの定食屋、錦糸町アジアカレーハウスが、
たった8席のボロい店でありながら若い女たちを含む多くの日本人客を集めたのは、
誰もを驚かせることだった。さらには中野新井薬師シックダールは、
バングラデシュ料理の世界をさらにいっそう広げていて。


そのうえ近年の南インド料理の世界においては、
浅草サウスパーク、清澄白河&虎ノ門ナンディニ、錦糸町&御徒町ヴェヌス、
そしてぼくがいま指折り愛する大山Yazhini と、
なんとも優美で洗練された料理をふるまう銀座バンゲラズキッチン、
そして西葛西にこの店あり、ブッフェに本気のアムダスラビーが、
さらにいっそう南インド料理の世界を多彩にしていて。
こうしてあらためて振り返ってみると、
2016年あたりから競争のレヴェルが一気に高まった、
と、おもわずにはいられない、
2016年といえば、サンバレーホテルとカルパシが開店した年である。





もっともアムダスラビーのスタッフたちは、東京インドレストラン地図がこんなふうになっている、
なーんてことはまったく知らない。オウナーのゴヒル夫妻は簡潔にレストランを方向づけ、
料理人たちはいつものようにバカな冗談を交わしながら、愉しみながら、あれこれ多彩な料理を作っていて。
そんなわけでアムダスラビーは開店以来長いこと、
東京のインドレストランシーンとはまったく無関係にただ勝手に店側も客側も楽しんでいる、
そんなレストランだった。
ところが、この5月ガネーシュ・クマールがシェフになってからというもの、
かれは膨大なレパートリーを持っていて週末ごとにそれを惜し気もなく披露するがゆえ、
気がついたら、日々マニアック度を増してゆく一群の東京インドレストランシーンの、
その競合のどまんなかに入っていた。


この三連休では、23日(日)には、
柔らかい鴨が喩えようもなくおいしい「鴨カレー・チェティナド・スタイル」と、
香りが立体的な「卵ビリヤニ、ハイデラバディスタイル」がすばらかった。
そのうえ、ムゲーシュ作の美しい緑色のしなしなミニほうれんそうドーサと、
あえてブレンダーにかけずに、ワイルドな仕上がりの
トマト系のディップ Takkali Tokku がまた素敵だった。


24日(月)は、Kashimiri Purav が、米のなかに、
林檎、パイナップル、グレープ、カシューナッツをちりばめ、
華やかでラヴリーなおいしさだった。
汁もの系は、「フライドポテトを飾った鶏挽肉カレー」
「ダルタルカー豆のスパイシーポタージュ」「インド中華、チリチキン」とともに、
「Manathakkali Puli Kuzhambhu-苦味スパイス、small vathal を主役にした、
ちょっぴりすっぱいカレー」が全体をかっこよく引き締めていた。


さいきんのアムダスラビーは客の入りも良く、開店まえに待ち客が数人出ることも多く、
また2時半におラストオーダーまで数人の待ち客が続くことさえときどきある。
(お勧めの来店時間は11時です。)
月曜日は、マンチェスター出身の英国人の知的なモヒカン男性も混じっていて、
楽しそうに召し上がっていた。マンチェスター郊外には、
1マイルほどインド、パキスタン、中東料理のさまざまなレストランが並ぶ 
Curry Mile という場所があるそうな。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー -
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2018/09訪問71回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

手ごわくて、正直な常連さんたち。

三連休のまんなか、9月16日(日)のランチブッフェは、
開店まえから数人の待ち客が出て、かつまたどの時間帯もお客さんの入りが良く、
しかも「常連さん率」がひじょうに高かった。
埼玉県川越から、神奈川県相模原から、西葛西からはもちろん、
お隣千葉県浦安から・・・かれら彼女らはやって来た。
ぼくは感心してにこにこしてしまったよ、
さすが、アムダスラビーの常連さんたちだ。
だって、みんな、前日のTWITTERでメニューを見て、
「きょうはゼッタイに行かなくちゃ!」
と来店を決めたに違いないもの。
(逆に言えば、もしもメニューを見てピンと来ない日には、
かれらのなかにはナンディニやYazhiniやヴェヌス、
はたまたサウスパークに
いそいそと食べに行っている可能性がある人たちもいて?
もちろんこの正直さはむしろ好ましい。)


この日のメニューは、鯖ビリヤニに鯖カレー、
キューリとヨーグルトのドレッシング(=ライタの位置の一品、
ただしキューリが主役です。)
小マサラドーサに、スパイシーチャトニ
(=レッドチリ、オニオン、トマトのディップ)。
カダンバサンバル(=7つの野菜入り結婚式仕様)。
マイソール・ラッサム。
ニンジンとキャベツのスパイシー炒め。
じゃがいもとカリフラワーのカレー。
ほうれんそう入りのワダ。
日本米ごはん。
アップルカスタード(=プリン)。
ローズミルク。


まず、鯖ビリヤニがすごかった。
鯖の切り身を、ガーリック、チリパウダー、黒胡椒、米粉、
コーンスターチ、小麦粉(=マイダ)にマリネして、
油で揚げてあって。そしてその揚げた鯖と一緒に、
ごはんをスパイシーに炊き上げている。
たいへんパワフルなビリヤニで、
そこに鯖カレーをかけて食べると、
そのおいしさったら、もう、譬えようがない。
さすが、インド料理の貴公子、ガネーシュ・クマールの仕事である。


他方、小マサラドーサと真っ赤なディップは、
ムゲーシュが担当した。
ご存知のとおりドーサは米粉と豆粉のクレープで、
マサラドーサは、その内側にじゃがいものスパイシー炒めが、
パテ状にして潜ませてあります。
ふだんは葉巻のようにでかいのだけれど、
しかしきょうはブッフェの一品ゆえ、小さく、
それがまたかわいく適量で、チャーミングです。
しかもほどほどの辛味のディップがまた良いアクセントを加えていて。
ガネーシュ・クマールとムゲーシュのコンビが最強であることがわかります。


15日(土)は、骨つきマトンビリヤニと、
鶏挽肉とゆで卵のカレーをメインに、
他は、ラジマ豆のカレー、ロビア豆とトマトのちょっぴりすっぱいカレー、
マサラワダ、レモネードなどで構成され、
バランス良く、おいしかった。


17日(月)は、「チキン・ビリヤニ、シンド地方スタイル」と、
「チキンサルナ(まったりチキンカレー)」を主役に、
Beans Carrot Paruppu Ushili (インゲンとニンジン、そして
チャナ豆とムング豆の蒸し併せ、ココナツ風味)が、地味な料理ながら、
マニア心をくすぐられて、魅力的だった。
ふかふかMedu Bonda もかわいいおいしさ。
マンゴージュースも幸福感を演出していた。





アムダスラビーの常連さんたちは、みんな、
手ごわく、正直で、気のいい人たちばかりだ。
かれらは(マハリンガム時代やヴェヌゴパール時代こそ
食べている人はいまや少ないけれど)、しかし、あの、
ラッサムに、プーリコロンブに、魚カレーに、
タマリンドの酸味をこれでもかとばかり効かせまくる、
ディープな、タミル田舎料理をふるまっていたディナサヤラン(体重105kg)の
料理をしっかり食べこんでいているのだもの。
あんなとんでもない料理をふるまう南インドレストランは、
東京に他にあるわけがない、唯一無二のコテコテぶりだった。
(だから当時アムダスラビーの集客はそこそこで、
なかなか売り上げは伸びなかった。
しかし、あれこそはタミル田舎料理というもので、
あれを食べ込んだことはたいへん貴重な体験で、
あれを食べこんでいるのだもの、われわれにはもはや怖いものはなにもない。)
その後任のムゲーシュは、最初の2~3週間はヘボかったのだけれど、
しかし、常連さんたちはけっしてムゲーシュを見放さず、
またムゲーシュはそれに応えるように、
ディナサヤランの料理をあるていど継承しつつも、
ポピュラリティを増す方向へ世界を広げ、
しかもどんどん調理力を増していったものだ。
そのプロセスは、まるで映画のようなおもしろさだった。
そしていま、インド料理界の貴公子、ガネーシュ・クマールがシェフになって、
エレガンントな世界を見せつけていて。
しかも2番手はムゲーシュで、最強のコンビである。
この一連の流れを常連さんたちはみんな、自分の舌で体験していているのだもの、
どこの南インドレストランで食べようとも、
その店の美質のありようも(もしあるならば欠点も)正確に理解できる。
そしてぼくもまた、かれら彼女らと、同じ釜の飯を喰ってきた仲間だ。


常連さんたちが集まると、スタッフも笑顔になる、
スタッフはみんなおもっているに違いない、
アムダスラビーは大丈夫、OK、けっしてまちがった方へは行ってないぞ、って。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/09訪問70回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

マントラと冗談。ーアムダスラビーと言葉。

アムダスラビーの朝は9時ごろはじまります。
線香に火をつけ、プロジェクターにYOUTUBEの
ヒンドゥーマントラのヴィディオ・クリップを流し、
厨房では、次から次へとタマネギやじゃがいもやオクラやニンジンが刻まれ、
スパイスが調合せれ、いくつものでっかい鍋には、
色とりどりの鮮やかなグレーヴィーが湯気をたて、
こうばしい香りがたってゆきます。


スタッフはみんな、限られた時間のなかで、つねに手を動かし、忙しく仕事をしながらも、
交わす会話はすべて冗談で、口を開けばバカなことばかり言い合って、
笑いをこしらえては楽しみます。
そこにマントラを乗せた音楽が流れてきます、
ナマッシヴァ~ヤ、ナマッシヴァ~、ハレハレホ~リ~、ナマッシヴァ~♪
仏教でいえば、なむあみだぶつ に相当するお祈りの言葉、
そこにほとんど意味はなく、ただの音のつらなりなのだけれど、
ただし、逆に言えば、それはけっして言葉にできないなにかとともにあって。
このマントラが料理の香りに溶け合うことで、料理はますますおいしくなってゆきます。


なお、とかく日本人は(徳川幕府以降!)宗教について感覚がおかしくなっているので、
宗教はまじめな人のものという大誤解があるけれど、
しかしじっさいはカネ持ちも貧乏人も、善良な者も悪党も、
どんなインテリもどんなアホも宗教とともに生きているからこそ、
宗教なのである。そして信仰はほんらい人と人をつなぎ、たのしくもあるもの。


おもえばアムダスラビーの土日ランチブッフェにおいて、
それぞれの料理に添えられる料理名もまた、なかば冗談みたいなもの。
Biryani には「釜飯」と、
Pulavには「炊き込みごはん」と、
Vadai(=ワダ)には「がんもどき」と、
Sambhar には「けんちん汁」と、
Parotta には「うずまきパン」と、
Kesariには「きんとん」と、日本語表記が添えられ、
アルファベット表記と二重表記になっています。
なぜこういうことになっているかといえば、
担当者が冗談好きだからにほかなりませんが、しいて言えば、
ビギナーは日本語を読めばいいし、他方、インド人および
マニアはアルファベット表記を読めばいいという趣向です。
アムダスラビーのお客さんは日本人が過半数とはいえ、
国籍も年齢もインド料理への興味の度合も、
人それぞれたいへんに幅拾いゆえの配慮でもあります。
ここでは言葉はきっかけづくりのようなもの。
だって、いちばん大切なことは言葉にできない。





9月8日(土)のランチブッフェは、
アムブール・シイタケ・ビリヤニがすばらしく、
酢豚っぽいチリ・ソヤ・チャンク(=ピーマンとインドコーヤドーフのカレー)、
冷製のアヴィヤル(=野菜のヨーグルト仕立て)、
そしてデザートのドーナツが印象的だった。


9日(日)は、ムゲーシュがインドからイディリスティーマー(蒸し器)を買ってきて、
はじめて使われました。イディリ(=かるかん饅頭、あんこ抜き)の蒸し器は、
いろいろな趣向のものがあって、たとえば西葛西のインド食材屋 バップバザール
https://tabelog.com/tokyo/A1313/A131305/13211523/ には、
Minolta 社の Idly Vessel が2550円で売ってたりしますが、
ムゲーシュが買ってきたのは、たいへんオーソオドックスな、
錫製のボックスタイプ。見かけは、ラーメン屋のおかもちに似ています。
このボックスタイプの蒸し器は、いちばん下の段に水を張り、
上の二段に、タネを注ぐ窪みのついたプレートを差し込めるように作ってあります。
これをガスレンジに乗せ、火にかけ、蒸すわけです。
この日のイディリは、Thalicha Idly 。ムゲーシュが担当した。
ふかふかの食感のなかにナッツの食感が楽しい。
しかも深紅のビートルートチャトニ(=ディップ)がまたかっこいい。


そしてこの日のメインは、Thalappakatti Chicken Biryani。
このタラパッカティとは、布で鍋に鉢巻を巻き、鍋を密閉することだそうな。
オニオン、トマト、各種スパイス、ニンニク、生姜をペーストにして、
油は用いず、ギーだけで調理する、そんなビリヤニだそうな。
かぐわしく、奥行を備え、とってもおいいしい。
半割りのナツメグが効果的だった。


スタータードリンクはBadam milk 、ココナツ風味のミルクで、
アラビックなエキゾティシズムを感じた。


すべて優美にすばらしく、ただラッサムだけがぼくにはへぼかった。
ガネーシュ・クマールにそう言うと本人は(やや嫌そうに)、
またそれを言うか、と苦笑する。
それにしてもあれだけ技術が高く、レパートリーやたらと豊富で、
なにを作っても優美においしい、そんな「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマールが、
なぜかラッサムだけはちょっとヘボいところが、むしろ人間くさく、憎めない。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー - イディリ蒸し器

    イディリ蒸し器

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2018/09訪問69回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

干し魚カレーと火曜日のシェフ、ムゲーシュ。

ガネーシュ・クマールがヘッドシェフにおさまって、
「インド料理の貴公子」ぶりを見せつけるようになって4ヶ月が経った。
そして先週、ムゲーシュがインドから戻りニ番手に就いた。
(かれのブッフェでの担当は、パロタ、ウタパム、チャトニ、サラダなどです。)
なお、火曜日だけはクマールの休日で、ムゲーシュがヘッドシェフで、
すべての料理を作ります。


おもえばムゲーシュのポジションは(気の毒にも)乱高下を繰り返していて、
前任のディナサヤラン(体重105kg)時代には二番手、
そのディナサヤランがあさはかな駆け引きを仕掛けてインドへ帰れば、
自動的にムゲーシュがヘッドシェフになって、大車輪の努力で料理の質を維持したものの、
こんどはクマールがヘッドシェフに着任し、ムゲーシュはふたたび二番手に。


クマール・シェフは、演奏家に喩えるならばバークレー卒みたいな感じで、
技術が高く、譜面の読みが正確で、レパートリーも広い。
筋肉質の体、鼻の下にヒゲをたくわえ、無駄なことはしゃべらず、笑顔が優しい。
すべての料理が洗練されていて優美においしい。
しいて弱点を挙げれば、ラッサムがあんまりラッサムらしくなく、
またメインのカレーはもう少しスパイスのキックを強くして欲しい。
ただし、それであってなお、かれの料理は東京有数にすばらしい。
他方、ムゲーシュは喩えるならばストリート系でのしあがってきたギタリストみたいな感じで、
テクニックはそこそこながら、耳の感覚が良く、抜群のセンスで、
客を熱狂させてきたようなタイプだ。
30歳ながら、おしゃべりで、毒舌で、ユーモアがやや攻撃的で、それでいて愛嬌があって、
評価は人によって分かれるけれど、そこがまたぼくにとっては親近感を感じる。


ムゲーシュは、インド土産に、さまざまな干し魚を買ってきて、
1日(土)は、そのなかからキングフィッシュの干し魚を使って、
クマール・シェフが、Chettinad Karuvadu Kuzhambhu
(干し魚カレー、チェティナドスタイル)を作って、
ブッフェのメインとして供した。
アムダスラビーでは、干し魚カレーは、いつもはイリコ(=煮干)を使って、
(とくにディナサヤラン時代は)タマリンドを効かせて作るのだけれど、
しかし、今回のキングフィッシュの干し魚カレーは、
干し魚のフレイヴァーが濃厚で、塩けも強く、うまみも深く、
どくとくの臭みが美女の体臭のようでそれもまた素敵で、
(クマール・シェフはタマリンドは控えめながら)迫力たっぷりなおいしさだ。
ぼくはそこにムゲーシュとクマールの競演を感じた。
なんとも魅惑的な競演だった。





アムダスラビーでは、夕方5時から7時までハッピーアワーで、
生ビール中200円そのほかの提供がはじまっています。

また、一部の女性客たちにひそかに人気のある、
給仕長の、中央アジアの白人、ハンサム・グヤン・デヴは、
今月9月20日前後に、ネパールへ帰ります。
その後アムダスラビーに戻るのか、戻らないのか、
それはいまのところわかりません。
グヤン・デヴ・ファンはお早めに。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/08訪問68回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

サブジ談義。ぬいぐるみのクルチャ。ハッピーアワー。ムゲーシュの帰還。

8月25日(土)は、いつものようにガネーシュ・クマールの調理で、
以下の料理がふるまわれました。


Paruppu Chicken Masala With Bone (骨つきチキンの、チャナ豆グレイヴィーカレー)
Ghee Plav(炊き込みごはん、上等バターの香り)
Rajima Masala(ラジマ豆のカレー)
Aloo Brimjal Sabji(じゃがいもとナスのカレー)
Garlic Rasam(ラッサムスープ、ニンニクの香り)
Daikon Podimas(茹でたじゃがいものスパイシー炒め)
Veg Pakoda(野菜のカキアゲ)
Stuffed Kulcha(丸パン、じゃがいものスパイシー炒めを詰めて)

Green Salad(サラダ)
Butter Milk(バターミルク)
Carrot Payasam(ニンジンのミルク煮、ナッツとドライフルーツとともに)


ヴァラエティに富んだたいへん優雅でエレガントな料理が並び、
とても1200円とはおもえないリッチな内容です。


さて、Aloo Brimjal Sabjiを最初ぼくは
「じゃがいもとナスのスパイシー炒め」と書いたものだけれど、
しかし料理が出来上がったらグレイヴィーのある、いわゆるカレーだった。
ぼくはガネーシュ・クマールに訊ねた、「Sabji(サブジ)ってヒンディ語でしょ?
タミル語のPoriyal(ポリヤル:スパイシー炒め)と同じじゃないの?」
するとクマール・シェフは答えた、「サブジはセミグレイヴィー、
ちょっとグレイヴィーがある。ちょっとカレー。」
給仕長のハンサム・グヤン・デヴが割り込む、「サブジはヴェジ・カレー。」
新入りの給仕補佐サプコタ・シャビラルが続ける、「ネパール料理のタルカリと同じ。」


なるほど、そういうことならば、ポリヤル(南インドの野菜の茹でスパイシー炒め)とは、
まったく違う。いつまでたってもインド料理には知らないことがついてまわるもの。
実はいまのオウナーのゴヒル夫妻が西インド、ムンバイの人で、
かつまたガネーシュ・クマールが南インドタミル人でありながら、
タミル料理のみならず、西インド料理も東インド料理も作れるゆえ、
メニューがたいへん多彩になって、おのずと料理名もまた多彩になったのである。


マニアのぼくでさえこのありさまなんだもの、
ビギナーのみなさんは、なにがなんだかわからないでしょうね。
ぼくはアムダスラビーの日本語関連ヴォランティアゆえ、
いくらか気をつかって、「Parotta うずまきパン」と書いたり、
「Pulav(炊き込みごはん)」と、「Biryani(釜飯)」と、
「Sambhar(けんちん汁)」というように二重表記しているのだけれど。


オウナーのゴヒル夫妻は日本語上手で、TWITTER告知に、
「Stuffed Kulcha(ぬいぐるみの クルチャ」と書いてらして、
ぼくはこの表記が大好きだけれど、しかしぼくが書く黒板と料理前のプレートには、
「Stuffed Kulcha(丸パン、じゃがいものスパイシー炒めを詰めて)」と書いた。





アムダスラビーは、土日のランチブッフェが比較的集客が良いのに対して、
平日の集客が弱く、そこで5時から7時までをハッピーアワーとして、
生ビール中250円サーヴィスと、安ワインのサーヴィスがはじまっています。
注文時に「ハッピーアワー、生ビール!」と告げてください。


夜メニューでは「マナガツオのフライ」と「蟹づくしミールスセット」が、
お薦めです。「マナガツオのフライ」は、ぼくが山田くんと一緒に、
八重洲のダクシンで食べて、おいしかったので、
アムダスラビーでも(ちょっぴりスパイシーにアレンジして)出そうよ、と提案して、
ディナサヤラン料理長時代にメニューに組み込まれたもの。
ぼくはアムダスラビーではただただおいしいおいしい、
と食べているばかりで、メニュー提案など他にしたことがなく、唯一の例外である。





25日(土)昼、ムゲーシュが日に焼けて坊主頭になって戻って来た。
日に焼けた坊主のような風貌。少し太った。幸せ太りである。
聞けば、二階建ての自分の家を、建築人足とともに建てていて、
7割がたできたそうな。
そしてまた去年父親が死んだので、お寺めぐりもして、
南インドのみならず、バナラシまで行ったそうな。


おみやげに、ぼくには甘い菓子セットをくれた。
アムダスラビーのお客さんには、干し魚をいっぱい買って来たようで、
やがてメニューにも登場します、おたのしみに。


ただし、ムゲーシュの今後のポジションはまだ決まっていません、
アムダスラビーも外資系ですからね。


追記 ヘッドシェフは、ガネーシュ・クマール、
そして2番手にムゲーシュが納まったようです。




さて、きょう8月26日(日)のランチブッフェは、
ハイデラバディ・チキン・ダム・ビリヤニ、
じゃがいもフライと茹で卵カレー、
ドラムスティック入りサンバル、
パイナップル・ライタなど、
ゴージャスなメニューが予定されています。


お薦めは開店の11時です。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2018/08訪問67回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

上等のコルマは、もっと拍手されて良い。

もしもロックバンドに喩えるならば、
チキンカレーやマトンカレーはヴォーカリストで、
女たちにキャーキャー言われるのが商売だ。
ラッサムとサンバルは、ベースとドラムスで、
かれらがしっかりビートをキープしてくれてこそ、
食べ手の気持ちはノリノリになる。
ポリヤル(野菜炒め)はキーボードで、
チャトニはパーカッションだ、
脇役だけれど、サウンドを華やかにしてくれる。
パン類とごはんは、PAみたいなものかしらん。
PAがちゃんとしてなくては、すべてが台無しだ。
さて、なにか忘れちゃいませんか?
コルマ(=ホワイトシチュー)は、どんなパートを担っているかしらん?
ぼくにとってはクラリネットとかフルートとかオーボエとか木管のイメージがある。
ロックバンドに登場する頻度は低いけれど、しかし上手に使えば、
音楽はたちまち優美になる。
もっとも、こういう喩えの遊びは個人的な感覚の世界だから、
人それぞれに独自の喩えがあることでしょう。


アムダスラビーの料理長、筋肉質の体の、鼻の下にヒゲのある、
インド料理の貴公子、ガネーシュ・クマールは、
タミル州ながら内陸部の西の方でケーララ州にやや近い
コーヤンブットゥール(Coimbatore)出身で、
かつまたアラビア半島の南東端オマーン国の首都マスカットでキャリアを築いた人。
ガネーシュ・クマールは、タミル料理のスペシャリストであるのみならず、
レパートリーがたいへんに広く、
パンジャブやムンバイの料理、はたまたベンガル料理までも上手である。
逆に、タミル料理人でありながら、魚カレーそのほかにおける、
タマリンドの使い方がややひかえめである。
(総じてタミルっぽさがやや弱い)。
しかしかれの料理は、色の振り分けが良く、美しく、
味の振り分けもまた良く、しかも野菜のカットは料理ごとにきちんと考えられ、
加熱は適切、グレーヴィーの濃度にわずかの狂いもない。
たいへんに育ちの良い料理で、ぼくは、美女と目と目を見つめあって食べて「いない」ときなど、
すなわちひとりで黙々と食べているときなど、
おれはいったいこのすばらしい料理に対して、なんてまちがった食べ方をしているのだろう、
と罪深さを感じるほどである。
あ、ごめん、つい見栄を張ってしまった、
ぼくはアムダスラビーではたいてい経営者のゴヒルさんと
目と目を見詰め合って(?)黙々と食べているのだけれど。


8月19日(日)のランチブッフェでは、
ウタパム(蒸しパン;かるかん饅頭あんこ抜き)と
カプシコンチャトニ(ピーマンをベースにしたスパイシーディップ)、
ナスのサンバル、
ホワイト・ヴェジ・コルマ(あれこれ野菜のホワイトシチュー)が、
いずれもすばらしかった。


ぼくはガネーシュ・クマールと出会うまで、
コルマに感動したことなど一度もなかった。
今回のコルマは、ニンジン、グリンピース、カリフラワー、
じゃがいも、タマネギを煮込んで、
カシューナッツペーストとココナツと牛乳で作った、
純白のソースをまとわせたもの。
なんとも優美で気品があってエレガントだ。
上手な人がていねいに作るとすばらしいんだ、
と、つくづくおもい、コルマへの認識を改めた。


他方、この日は「鯖のマスタードシード仕立て」もまたメニューのなかにあって、
この一品は、タミル料理ならばタマリンドで酸味を効かせるところ、
しかし今回はベンガルスタイルで、タマリンドを一切使わず、
マスタードシードのほのかに苦味のあるキックをアクセントにしたもの。
グレイヴィーの濃度は適切だし、鯖はグレイヴィーを吸ってふくよかに微笑んでいて、
ぼくにはなかなかおいしかったし、また多くのお客さんにもウケていたけれど、
しかし、とあるタミル人の常連さんだけは、(他の料理はすべておいしかったのに)、
「この1品だけは、ぼくには、ちょっと」と残念がっていた。


ぼくはかれのタミル人ならではのわずかな不満も理解できると同時に、
他方、これはガネーシュ・クマールの、調理力の高さとレパートリーの広さゆえに
(タミル料理を内側からも外側からも見ることができる視野の広さに)
起因することであるともまた了解できる。
そしてぼくは「インド料理の貴公子」ガネーシュ・クマールにちょっぴり同情した。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/08訪問66回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

8月15日(水)インド独立記念日、ミニランチブッフェ750円。

Mint Lemon Juice レモンジュース、ミントの香り
Mutter Panner グリンピースとカテージチーズのカレー
Kadi Kudi Chicken コリクラ・チキン(カレー)
Dal Tadka 豆のスパイシーポタージュ
Naan ナン
Japanese Rice 日本米ごはん
Green Salad サラダ


南インド料理の貴公子、ガネーシュ・クマールの、
エレガントな料理を750円で堪能できます。
お薦めは11時開店と同時の来店ですが、
むろん12時来店でも十分おいしいですよ。


後記。土日のランチブッフェに比べると品数が少なく淋しいし、
また3種のカレー類も一見とくに驚くべきものはなにもないかにおもえるけれど、
しかし、ガネーシュ・クマールの(フレンチで言えばソーシエ:ソース担当としての)
実力の高さがよくわかります。つねにグレイヴィーの濃度が適切で、
しかも手抜きなしの奥行感があって、かれの育ちの良さがよくわかります。





さて、せっかくなのでインド独立についてのはなしを少しだけ。
1947年のこの日、インドは150年にわたってつづいた大英帝国による統治から脱却し、
独立を勝ち取りました。
長らくつづいた独立闘争が勝利を得たのです。
この独立闘争についてはガンディーがもっとも有名ですが、
しかしかれのみならず過激派の闘士もいれば、
はたまた大日本帝国と共闘して戦う戦略を選んだ人たちもまたいました。
かれらのなかには新宿中村屋にかくまわれたボースさんもいれば、
戦後、銀座ナイルレストランの初代オウナーになったナイルさんもいました。


また、インドの独立はインドにとってたいへんめでたいことであると同時に、
他方、それまで同胞たちだったムスリムたちが、東パキスタン、
西パキスタン(現バングラデシュ)として分離独立にいたったことは、
かれらにとっておもいがけないなりゆきでしたが、
しかしそれもまた独立闘争のなかでそれぞれにもはや後には引けない、
それぞれの考えが生まれた結果でした。


次に、国としてはヒンドゥー中心のインド/ムスリム中心のパキスタン(および現バングラデシュ)として分かれたことに対して、インドの各州は言語別に分かれました。
公用語はヒンディになったものの、ただし独立間際まではベンガル語になるのでは、
という予測が強かったし、また、南インド、とりわけタミル州には、
ヒンドゥー中心主義に対する根強く激しい反発があって。
結果、インドにおいてはヒンディの公用語としての牽制力は完璧ではなく、
多くの州の人たちにとっては母語の次くらいの位置であり、
南インドにはヒンディを(あえて)学ばない人もまたいます。
(いまではインドの事実上の公用語は英語であることは公然です。)
そもそも北部インドと南部インドはお互いに外国同士くらいにおもっていて、
かれらがひとつにまとまるときは、
インド 対 パキスタンのクリケット試合のときくらいです。
逆に言えば、そのくらいそれぞれの地域文化の特色が強いゆえ、
多様性がたいへんに高いというおもしろさがあります。


アムダスラビーのようなちいさなレストランでも、
オウナーはムンバイ人のゴヒル夫妻、
シェフのガネーシュ・クマールはタミル人、
(現在、インド帰国中のムゲーシュもタミル人)、
二番手のアショクはカルナータカ人、
給仕のハンサム・グヤン・デヴはネパール人で、
いろんな言語が飛び交います。


たとえばハンサム給仕長のグヤン・デヴは
ぼくが食事しているとき、料理の評価をぼくに訊ねます、「どうですか?」
ぼくは答えます、「うん、おいしい!」
グヤン・デヴはさらに訊ねます、「まあまあですか?」
ぼくは答えます、「いや、ノーまあまあ、ヴェリヴェリおいしい!」
実はぼくはちゃんとかれに教えてあります、
「まあまあ」という言葉の意味は「70パーセントOK」であることを。
きかっけは、グヤン・デヴが「元気?」と挨拶したとき、
ぼくが「まあまあ」と答えたときから。
グヤン・デヴは給仕長ですが、料理人でもあって、
したがって料理の評価は厳しく、ディナサヤラン、ムゲーシュ、
そして現在のガネーシュ・クマールのなかでは、
ガネーシュ・クマールの評価がもっとも高く、
逆に、ディナサヤランの料理については、
「オール酸っぱい」と否定的です。
そんなわけで、ぼくがガネーシュ・クマールの料理を褒めると、
グヤン・デヴはにっこり微笑んで、(わかってるじゃないか!)
と満足そうです。
純白のシェフコートに身を包んだガネーシュ・クマールはぼくに向かって、
右手を左胸の上に置いて、微笑みながらおじぎをします。
そんなところも、ガネーシュ・クマールの南インド料理の貴公子ぶりが現れています。




ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー -
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2018/07訪問65回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

メイスの葉とミルクから生まれる、プラオのエレガンス。

土曜日の午後、TMVS FOODSで暇を潰していたら、
綺麗な白人女性が現れて、毛むくじゃらのココナツを買い求めた。
ぼくは訊ねた、Where are you from?
彼女は答えた、「わたしはモルドヴァから来ました、
十年ほど日本に暮らしています。」
ぼくは言った、「Oh,welcome to Japan! 南インド料理を作るんですか?」
彼女は答えた、「いいえ、わたしはまずジュースを飲んで、
それからキーホールダーを作ります。」
そして彼女はにこやかに手を振って、店を出て行った。
そして店からお客はいなくなった。


店主の(マイルドヤンキーみたいな風貌の)ピライさんはぼくに訊ねた、
「このごろのアムダスラビーはどうですか?」
ぼくはピライさんの肩にそっと手を置きたくなる、
なぜってかれの気持ちがよくわかるから。
ピライさんは2014年の4月アムダスラビーを立ち上げて、
ディープなタミル料理と格安価格で、
インド人たちと、マニアな日本人客たちの心を掴んだものの、
しかし、年柄年中料理人たちのわがままに翻弄され、苦労は絶えず、
(もっとも料理人の側に立てば、かれらの言い分もまた十分わかるのだけれど、
いずれにせよ)、お客がつめかけるのは土日のランチブッフェばかりで、
いつまでたってもディナーへの誘導は果たせず、平日ランチ客もそこそこで、
とうぜん利益はわずかなもの。
結果、ピライさんはくたびれ果てて、
2016年の秋、経営権をIT系のゴヒル夫妻に手放したのだ。
ゴヒル夫妻は、壁紙をお洒落に張り替え、トイレットを買い替え、
換気設備を刷新した。あれから2年近く経ち、新たにガネーシュ・クマール・シェフと、
2番手のアショクが入って2ヶ月ちょっとになる。
そんなわけで、ピライさんにとっては、
もしも現在のアムダスラビーが大成功していたならば悔しくてたまらない。
しかしながら、もしも落ちぶれてすさんでいたならば心配で心配でいてもたってもいられない。
そんな複雑な心境なのである。


ぼくは笑ってこう言った。
「新しいシェフのガネーシュ・クマールは育ちのいいシェフでね、
野菜のカットは料理ごとに適切、色と味の振り分けも美しい。
レパートリーはたいへんに多彩、美女客はどんどん集まってくる、
なにからなにまですばらしいよ。ただね、
わずかにときにラッサムの酸味が弱かったり、
料理の塩使いがいくらか弱いかな、と、おもうこともあるけれど、
でも、総じてすごくいいよ。」


するとピライさんはいたずらっぽく笑って言った、
「酸味が足りない? 塩が弱い? 
わはは。あなたはまだ(先々代の料理長の)ディナサヤランのことを
忘れられないんですね、あのブラック・サンタクロースのディナサヤランのことを。
わはは。あなたはもう”100パーセントの日本人”じゃなくて、
”半分タミルの田舎人”になってますよ。
わたし、いっぱい覚えてます、ディナサヤランが料理作ってたとき、
わたしいっぱいいっぱい苦情を受けました。
みんな言いました、”塩が多すぎる、””酸味がくどい。”
うれしがってにこにこ料理食べてたのは、タミル人たちと、
ディナサヤランのベストフレンドのあなただけでした。」


ぼくは抗弁した、「It would be hyperbolic! それはちょっと話を盛りすぎ。
ディナサヤランの料理には、ちゃんと1ダースほどの日本人のファンもついていたし、
また、ぼくはディナサヤランのみならず、(初代アムダスラビー料理長で、現Yazhini料理長の)
マハリンガムの料理が大大大好きだし、また多少雑なところがあるにせよ、
しかし全体的にはたいへんタミル料理らしい、そんなムゲーシュの料理だって好きだよ、
ムゲーシュはディナサヤランが失踪した後の難局を乗り越え、
しっかりアムダスラビーを延命させたもの。
もう少し評価されるべきだとおもうんだけれど。」


ピライさんは言った、「(オウナーさんにとっては)ムゲーシュは
ちょっと使いにくいかもしれませんね。ムゲーシュは頭がいいし、
自分のオピニオンをちゃんとしゃべります。でも、オウナーさんと
コンフリクトになると、オウナーさんはやりにくいです。
そうですか、クマールさん、良いシェフですね。」


ぼくは言った、「だからかれは育ちの良いすばらしいシェフだって言ってんじゃん!
ああいう優美な料理を出すレストランは、SITAARA青山くらいしかおもいつかないし、
ぼくにとっては、料理だけで言えば、クマールの料理の方が勝るともけっして劣らない。
あ、そうそう忘れてた、ジャーヴィトゥリ Javithri ってスパイス、ある? 
クマールさんがきょうのプラオ(炊き込みごはん)に使ってたの。」


ピライさんは言った、「ありますあります、これですね、
英語で Mace Leaf 、ヒンディでジャイパトリ、タミル語で、
ジャーヴィトリと言います。ナツメグの皮ですよ。
マトンカレーによく使います。」
(註:メイスの葉 と言ってもいわゆる緑の葉ではなく、
茶褐色の木の皮みたいなものである。)


ぼくは言った、「クマールさんの作るプラオは洒落てんの。
クローブ、グリーンカルダモン、シナモン、カルパシ、
インディアンベイリーフ、スターアニス、
そしてそのジャーヴィトゥリ、
おまけにガラムマサラとミルクまで使うんだよ。
香りはけっして強くはないけれど、柔らかくふわっとした、
優しく優美な香りなんだよ。」


ピライさんは微笑んでいる、ちょっぴり淋しそうに。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/07訪問64回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

(ミールスに対して)ブッフェはかなりお洒落なお姉さん。

いいえ、あくまでもこの比喩表現はさいきんのアムダスラビーについてのもので、
けっしてすべてのインドレストランにあてはまるものではないけれど、
それでも世界の都市においてあるていどそういう傾向はあるのではないかしらん。
なお、ここで言う「お洒落」とは chic のこと。
では、chic ってなんだろう?
ファッションの世界に喩えるならば、ユニクロ、GU、GAP、H&M、しまむら・・・
そこではいわゆるところのプチプラお洒落競争が苛烈に展開されていて、
ぼくもよく覗いたり買ったり着たりするけれど、ただし、
この世界ではけっして手に入らないもの、それがchic だ。
では、chic はどこにある?
たとえば焼きたてのピッツァのように軽いイタリアンジャケット、
ていねいに仕立てられた英国製の重い革靴、
光を織ったようにカラフルなインドのドレスシャツ・・・
そこにはchic としか言いようのない価値観 がある。


アムダスラビーの料理がここまでchic になったのは、
むろんガネーシュ・クマールによるものである。
かれのレパートリーは多彩で、
野菜のカットはつねにその料理に対して「こうでなくてはいけない」というもの、
加熱は適切、色は美しく振り分けられ、味もまた同様、
香りよく、かぐわしく、おいしい。仕上げの飾りつけもただ愛らしい。
grace という言葉がよく似合う。


たとえば7月14日(土)のランチブッフェ(1200円)は、こんな構成だった。
「ナスとじゃがいものプラオ(炊き込みごはん)」
「チリフィッシュ(鯖と野菜のドライカレー)」
「サツマイモとニンジンのマサラ」
「グリンピースと鶏挽肉のカレー」
「ダイコンのスパイシー炒め、ココナツの香り」
ざっとこのあたりの料理でひとつの(かぐわしい夢のような)世界ができている。


「プラオ(炊き込みごはん)」は、あえて味つけを淡くひかえめにしてあり、
他の料理の引き立て役にまわっていながら、それでいてしっかりおいしい。
「チリフィッシュ」は、ひかえめなインド中華で、
鯖の切り身にコーンスターチとマイダのコロモをつけて、エッジをカリッと揚げてあって、
構成と味つけは、酢豚を連想させる。
「グリンピースと鶏挽肉のカレー」は、おだやかながらキックがつけてあって、手堅い。
「サツマイモとニンジンのマサラ」は、サツマイモの優しい甘さがユーモラスだ。
この構成は、「さすが!」です。
なお、この日はダルラッサムもちゃんとと酸味のキレのある、なかなかな仕上がり。
デザートはラドゥー(ベサン粉団子)、かわいくユーモラス。
飲み物は日本茶で、東アジアエキゾティシズムまで添えていた。


ぼくはおもった、もしかしてアムダスラビーは、
いま東京でもっともchic な南インド料理をふるまっているのではないかしらん。
きょう7月15日(日)ランチブッフェは、
「トマト・ビリヤニ」、
「チキンカレー、ムガル帝国スタイル」、
そしてパンにウタパムを中心に12種類。
攻めてますね、アムダスラビー。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/07訪問63回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ゴーヤのプーリコロンブは、Mugeshからの挨拶。

2018年7月1日(日)、朝11時。
開店まえから詰めかけた数人のお客さんがダイニングテーブルに集まり、
順繰りに大皿に料理を盛ってゆきます。
つづいてぼくもまたーー。


シメジとグリンピースのビリヤニ。
骨つき羊カレー、ハイデラバードスタイル。
ヴェジ・マッカンワラ。(=野菜カレー、上等バターの香り)。
ゴーヤのプーリコロンブ(=ゴーヤのちょっぴりすっぱいカレー)。
ベル・プーリ。
ミント・ラッサム。
アル・ボンダ(=じゃがいもコロッケ)。
トスド・サラダ(=おしゃれサラダ英国風)。
キャロット・パヤサム。
バターミルク。(スタータードリンク)。


たいへんバランスの良いラインナップです。
ガネーシュ・クマールは、どの料理に対しても「その料理にはこのカット」という、
かれどくとくの野菜のカットをおこなう。かっこいい。
しかもどの料理も色が美しく、しかも料理が並んだとき華やかさが際立つ。
過熱は適切、味の振り分けも巧みだ。そのうえ、きょうは「ゴーヤのプーリコロンブ」の
苦味と酸味のバランスが良く、ブッフェ全体をかっこよく引き締めている。
これまでのクマールの料理は、ほとんどすべてがすばらしいにもかかわらず、
ただし酸味だけがひかえめで、そこがマニアたちにとって絶讃をためらわせていたものだ。
ところが、きょうのゴーヤのプーリコロンブは酸味さえも完璧である。


ぼくが満面の微笑を浮かべながら食べていると、Mugeshがやって来て、訊ねた、
”How about taste?"
ぼくは答えた、”Very good! Today's lineup is the best!
Everything is wonderful."
すると、Mugeshはいたずらっぽく笑った、
”Today,only puli kuzhambhu,I cooked."
ぼくは言った、”Oh, I got it!"
そうだったのか、けさはMugeshもキッチンに入ってなにやらごそごそやっていたものだけれど、
そうか、プーリコロンブを作っていたのか。
ガネーシュとMugesh、良いコンビじゃないか! サイコーじゃん!





Mugesh は7月2日(月)にインドへ帰る。2ヶ月間のバカンスである。
かつてディナサヤラン料理長がとつぜんインドへ帰ってしまって、
アムダスラビーが大混乱に陥ったとき、2番手だったMugesh がシェフに昇格し、
なんとかレストランを維持し、さらには短期間にどんどんウデを上げていった時期のことを、
多くの(といっても1ダースくらいの)アムダスラビーの常連さんたちはちゃんと覚えていて、
この2週間は、インドへ帰るMugeshの顔を見に来店する常連さんたちも多かった。
常連さんたちは帰り際にMugeshに声をかけ、
短い会話を交わし、秋の再会を確認したりした。
大田区から富士重工のスクーター”ラビット”1967年モデルに乗ってやってくる常連さんは、
Mugeshの三歳になる息子ハリシュのために、剣玉をプレゼントした。
こうした流れのなかで、7月1日、バカンスまえの最後の日曜日、
Mugeshは1品だけは自分で調理することにしたのだった。
いつにも増して料理の評判も良かった。
ロックミュージック好きの某嬢もお友達と一緒に来てくれた。
埼玉から立派なバイクでやって来る常連さんは、Mugeshに餞別を渡した。
Mugeshはたいへん恐縮して、「ありがとう!」と言って何度もおじぎをした。





そしてランチ営業が終った後、Mugesh はドンキホーテへ行き、
明治ブラックチョコレートやら、ロッテガーナブラックチョコやら、
ブルボンアルフォートチョコやら、それぞれ10個セットを大人買い。
すでに百円ショップのDAISOで、あれこれのリアル恐竜、双眼鏡、デジタル腕時計など、
ハリシュのためのおみやげもたくさん買ってある。
そしてMugesh はマンションの部屋へ戻り、キリンの「のどごしSTRONG」をぼくに渡し、
ふたりで飲みながら、Mugesh は
この日のためにマンションのごみ捨て場で拾ってきた、
3つの立派なキャリーバッグに、おみやげそのほかをパッキングした。
Mugesh は、7月2日、11時15分成田発のエア・インディアでデリーに発ち、
デリー着は17時。そして20時40分発の飛行機でチェンナイへ。
チェンナイ着は23時35分。
チェンナイからホームタウンのマハバリープラムまでは、
タクシーで1500rp(=3000円)ほどだそうな。
東京へ戻って来るのは、8月25日だそうな。


なお、Mugesh は2年ぶりに家族と会うのだけれど、
なんと、(毎日のように電話しているにもかかわらず)、
家族にインドへ帰ることは伝えていないそうな。
突然、帰って、奥さんとハリシュを驚かせたいらしい。
いかにもお茶目でnaughty なMugesh らしい。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/06訪問62回目

-

  • 料理・味-
  • サービス3.8
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

あなたはKumar派? それともMugesh派? 揺れるアムダスラビー。 

シェフが替わると料理が変わる。
一方で、常連さんたちの一部はかつての味を支持するあまり不満の声を上げ、
なんとなく理不尽を感じ来店頻度が落ちもすれば、
「いやいや、むかしから食べているけれどいまの料理がいちばん素敵、
サイコー、大好き、待ってました♪」
と変化を歓迎する常連さんたちもまたいて。
他方、新しいお客さんが続々とつめかけ、拍手喝采を捧げもすれば、
ちょっとした批評を口にして去ってゆきもして。
そんなことはどこのレストランにでもある、いかにもよくある光景だけれど、
でも、アムダスラビーにとっては、ここまで大きな変化ははじめてのことゆえ、
スタッフにとってスリリングな体験です。


具体的にはこんなストーリーです。
去る4月に、それまで料理長だったMugeshは、この夏にインドへ帰り、
2年ぶりに奥さんと3歳の息子ハリシュ、
そして親戚たち一同と一緒に過ごす2ヶ月間のバカンスを取りたいという希望を表明した。
そこで経営者のゴヒル夫妻は、Mugeshの希望を叶えるべく、
Mugesh不在でもレストランを廻してゆけるように、
去る5月初旬に、新たにガネーシュ・クマール(と2番手のアショク)を採用した。
(サーヴィスはあいかわらずハンサム・グヤン・デヴです。)
そこで5月初旬以降、試験的に、アムダスラビーの料理はおおよそクマール・シェフと、
2番手のアショクによって作られています。
Mugeshがアムダスラビーに復帰するのは8月末の予定で、
それ以降は、クマールとMugeshのふたりシェフになるというはなしがあるものの、
ただし、委細はまだ決まっていません。


この1ヶ月、Mugeshは、レストランや店の前の舗道を掃除したり、
店の前を通りがかる人に愛嬌を振りまきながらビラ巻きをしたり、
また金曜日には自転車で西葛西全域をまわり、チラシのポスティングをしたりしています。
Mugeshは性格がお茶目で、naughty ゆえ、
自分の境遇を笑いながら、日々を楽しんでいます。
アムダスラビーの常連さんたちの多くは、Mugeshを気の毒がります、
なぜなら、かつてディナサヤランがわがままを起こし突然インドへ帰ってしまったとき、
アムダスラビーを支えたのは、Mugeshだったことをちゃんと覚えているからです。
いいえ、同時にあの時期アムダスラビーを支えたのは、
けっしてアムダスラビーを見捨てなかった常連さんたち自身だったのですけれど。





アムダスラビーは2014年の4月開店以来、
シェフ交替は何度かあったものの、ずっと一貫して、
タミル人料理人による deep tamilian 料理をふるまってきたのに対し、
現在のガネーシュ・クマール・シェフは、
なるほど出自はタミル人ながら、その料理は、
きわめてエレガントで優美な、洗練されたタミル料理を作ります。
この、スタイルの大きな変化によって、アムダスラビーのお客さんたちのなかに、
賛否両論、議論百出が巻き起こっています。
もちろんお洒落なインド料理が好きなお客さんたちはおおよろこび、
それはそうでしょう、たとえば土日のランチブッフェなど、
あんな贅沢な料理をたったの1200円で食べられるんだもの、
世界の都市基準で言えば3500円が妥当ではないかしら。
他方、マニアたちにとっての不満は、ラッサムの酸味が弱い、
サンバルのサンバルらしい香りが薄い、
メインのカレーにはもう少し辛さを効かせて欲しい、
そんな声が聞こえてきます。


いいえ、もしもアムダスラビーが新規に開店したレストランならば、
こんな賛否両論は巻き起こらなかったでしょう。
けれどもすでに4年を越える歴史があります。
ひとことで言って、おそらくこれまでのアムダスラビーは、
マイナーメジャーな南インドレストランとして、
錦糸町ヴェヌスや、神保町シリバラジと同じカテゴリーのレストランでした。
それに対して現在のアムダスラビーは、清澄白河ナンディニや、
SITAARA青山のカテゴリーに(少なくとも料理のスタイルは)
近づいていて。
むろんアムダスラビーのこの変化は、うまくゆけば、
たいへんサクセスフルな結果をもたらすでしょうが、
しかし、それはもう少し時間が経ってみなければわかりません。


一般にインド料理マニアは、クロスのかかったレストラン料理よりは、
むしろロードサイドのボロっちい定食屋の、濃厚な現地度の料理を好む傾向がありますが、
しかし、ぼく自身はけっしてそんなことはなく、
どちらの世界にもおいしい料理はあるのだから、
両方楽しんでこそ、人生はおもしろい、と、おもっています。
問題はそんなたんじゅんなところにはありません。


Mugeshは7月2日、インドへ経ちます。
アムダスラビーの料理は、ひきづづき、
ガネーシュ・クマールが作ってゆきます。
念のため繰り返しますが、
かれの料理にはたくさんの美質があります。
一例を挙げるならば、6月23日(土)の、Veg Majiboos。
これは「野菜の炊き込みごはん(プラオ)」と呼んでもさしつかえないものながら、
ただし、米を炊くにあたって、わざわざ野菜の水煮ダシ(ブロート)を取って、
そのダシでもって米や野菜を炊き込んでいます。
インド料理の世界において、水煮ダシを使う料理人はほとんどいません。
この一件だけを見ても、クマール・シェフの育ちの良さがわかります。


いいえ、インド料理マニアはとかく地域様式の違いを熱く語って止まないけれど、
ただし同じ地域の料理人であっても、実は料理人の数だけスタイルは違います。
それはあたりまえのことだけれど、なぜか忘れられがちなこと。
歴代アムダスラビーの料理人たちをぼくはおもいだします。
お肉大好きのマッチョマン、マハリンガム(現 Yazhini)。
たとえ自分で調理しなくともすばらしい料理を仕上げるヴェヌゴパール
(現 錦糸町&御徒町ヴェヌス)。
どてらいタミル田舎料理の魅力を魅せつけた、大酒飲みでわがままなディナサヤラン(現在インド。委細は謎)。
タミル料理らしさを活かしながらポピュラリティを獲得すべく料理を刷新していった、
Mugesh。
そして華麗で優美で、その反面いささかタミルらしさの薄い、現在のガネーシュ・クマール・シェフ。
そしてぼくはあらためておもう、
タミル料理の世界はなんて広くゆたかなんだろう!


お洒落料理が好きな人も、そしてまた、
お茶目なMugeshが好きな人も、
アムダスラビーへいらしてください。
Mugeshは7月2日にインドへ経ちます。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/06訪問61回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

フランス料理好きにもぜひ召し上がって欲しい、南インド料理の優雅と洗練。

アムダスラビーは2014年4月10日の開店以来、
一貫して南インド、”タミル人料理人によるタミル料理”を提供してきました。
ただし、とうぜんのことなら歴代料理人ごとに、微妙にスタイルが違っています。
初代のディナサヤラン(現 板橋・大山Yazhini)。
2代目ヴェヌゴパール(現 錦糸町&御徒町ヴェヌス)。
3代目ディナサヤラン(インドへ帰国。現在は謎。)
4代目ムゲーシュ(現在アムダスラビーで雑用。
9月からアムダスラビーでダブルシェフのひとりに?)
そして現在の5代目ガネーシュ・クマール。
初代のディナサヤランから4代目のムゲーシュまでは、
みんなそれぞれスタイルは違えもども、
東京で有数のディープタミル料理をふるまってきました。
それに対して、現在5代目のガネーシュ・クマールの料理は、
むしろたいへん優美で優雅な、まさにエレガントな、
1泊2万円クラスの、星つきホテルスタイルのタミル料理をふるまっています。


常連さんたちはちょっぴりとまどい、いくらか驚きながら、
ガネーシュ・クマールの野菜のカットの緻密さ、加熱の温度の的確さ、
レパートリーのゆたかさ、仕上がりの美しさ、味の配分の巧みさなどなどの美質を讃美し、
同時に、人によってはラッサムやサンバルのそれらしさが薄いとか、
どれか1品くらいはもっと辛味が欲しいなどと批評もしつつ、
おもいがけない方向に展開しているアムダスラビーの現在の料理を、
おおむね愉しんでいます。
また、ガネーシュ・クマールによって、
美女客が増えたこともスタッフにとってはうれしいこと。
だって、スタッフにとっては男ばかりのむさくるしい職場、
綺麗な女性客が増えたことは勤労意欲を向上させてくれます。


さて、6月16日(土)ランチブッフェ(1200円)はこんな料理がふるまわれました。

クスカ・ビリヤニ
(肉なし野菜なしビリヤニ。ほとんどプラオ、軽やかな炊き上がりです。)

チキンカレー・アンブール・スタイル

ペサラットゥ・ドーサ&キャベツのチャトニ
(ムング豆、米、ウラド豆のペーストで焼き上げるソフトなドーサ。
キャベツのディップが洗練されたおいしさです。)

冷菜 ウルンダイ・モール・コロンブ(3種の豆団子のヨーグルト・カレー)

サブダナ・ワダ(タピオカのもっちり揚げ物)

ミックス・ヴェジ・カレー


デザート カラチ・カ・ハルワ
(カシューナッツ、”バダム”、グレープを、
コーンスターチでぷるんぷるんのとろみをつけた真っ赤なデザート。
美しい。そして甘い。)


あきらかにここにはとびきり優美で華麗なタミル料理の世界があって、
そういう世界が好きな人には ぜひ召し上がって欲しいし、
また、フランス料理を愛する人にもぜひ挑戦して欲しい。
アムダスラビーの土日ランチブッフェ、1200円(税込)。
いらっしゃるときは11時の開店同時の来店がベストです。
(2時すぎまで、可能な限り料理の質は高く保っているとはいえ)。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー -
  • アムダスラビー -
  • アムダスラビー -
  • アムダスラビー -
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2018/06訪問60回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

シルクのドレスシャツを着たソウルフード。

ひきつづき6月9日(土)&10日(日)も、
ガネーシュ・クマールのダイレクションによるランチブッフェがふるまわれた。
9日は、Corn Cashew Biryani(炊き込みごはん、コーンとカシューナッツ入り)、
Mutton Dal Gohsht(豆のスパイシーポタージュ、羊肉入り)
Broccoli Negi Korma、(ブロッコリーとネギのマイルドカレー)
あたりを中心に、
デザートがPaal Kuzhambhu(お米の団子のココナツソース)。


10日(日)は、
Moghlai Chicken Biryani(鶏釜飯ムガル帝国スタイル)、
Egg Masala(ゆで卵カレー)、
Lobia Nasu Kuzhambhu
あたりを中心に、
デザートがMango Payasam。


カットは緻密、過熱は的確、料理は美しく、色の振り分けが良く、レパートリーは幅広い。
いかにも星つきホテルっぽい、エレガントな一流の料理で、
しかもお客さんも増え、たいへんな好評である。
他方、しいて弱点を挙げるならばラッサムの酸味や、
サンバル(けんちん汁)のサンバルらしい香りがやや弱く、
ビリヤニの香りバランスが薄い。
ただし、それらはクマール・シェフの料理の人気と表裏一体の関係にある。
そんなわけでぼくもムゲーシュも常連さんたちも、
にこにこうれしそうに美質と弱点をともに指摘して飽きることがない。


9日につづいて10日も、相模原から佐野くんが来てくれた。
佐野くんはおそらくまじめな会社員として事務をしている人ながら、
ジェイムス・ブラウン、Pファンク、ファンカデリック、プリンスを熱愛する
大のファンクミュージックフリークである。
ぼくは佐野くんと話しているとこんなことをおもう、
タミル映画界のキング、ラジニカーントは、
いわば「タミル世界のジェイムス・ブラウン」ですよ。
陽気さ、バカっぽいユーモア、マッチョ感、
やりすぎで振り切りすぎな過剰感、芸能の楽しさ、
そして熱狂を引き起こすマジック。
おそらくかれらふたりには同じ魂が宿っている。
そしてタミル人は誰もみんなおもっている、
ラジニはおれたちの仲間だ。
そんなわけで、佐野くんがアムダスラビーにいれあげるようになったのも、
たぶん自然なことだった?


クマール・シェフがダイレクションするようになって、
アムダスラビーの料理はシルキーかつエレガントになった。
しかしそれであってなお、そのソウルは変わらない。
ちゃんとラジニの血が流れているのだ。





余談ながら、この日ぼくと佐野くんは、
アムダスラビーのランチブッフェの後で、
都バスに乗って船堀のISKCONクリシュナ寺院へ行った。
礼拝では背の高いロシア女性がハルモニウムを弾き、
マントラを歌い、インド女性が太鼓を叩いていた。
ぼくらもマントラを唱和した。
軽食もいただいた。
ポンガルに似たものと、クートゥー、林檎のヨーグルト和え、
そんな構成。この日はエナダシーという、
穀類抜きの構成だったそうな。
その後、都バスで西葛西へ戻り、
TOKYO SCOOL OF MUSIC AND DANCE の学祭みたいなのを覗き、
X21 というアイドルユニットのミニライヴを聴いた。
その後、ゴージャスな内装のデリーダバで
インドラム「オールドモンク」のロックを数杯飲んだ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/06訪問59回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

日常生活のなかの神秘。

「お客さまは神様でございます」、
と昭和の大歌手、三波春夫は繰り返し語ったものだ、満面の微笑で。
他方、多くの人びとは(脊髄反射で)嗤ったものだ。
「なんて盛大な媚び、へつらいなんだ。」
「おべっか使ってお客を増長させてどうする? ろくなことにはならないぞ。」
「それじゃあなにかい、かれは神様からカネを取ってるってわけ?
とんでもねえ野郎だな。」
(気の毒にも)そんなあれこれの揶揄にまみれて、この言葉は有名になったものだ。


けれどもぼくはおもう、そういう理解はあまりにもあさはかではないかしらん。
はばかりながら、ぼくの理解はこうだ。
なるほど芸能にはセオリーがあって、その芸がウケるかウケないか、
そのくらいのことならば芸界の人びとには(長年の経験則で)おおよそ予測できるだろう。
しかし”その芸が大ヒットするかどうか、メガヒットできるかどうか”、
すなわち”多くの人の心に届き、みんなを熱狂させられるかどうか”なんてことは、
おそらく誰にもまったく予想がつかないだろう。
そこにはまさに”暗闇のなかの跳躍”のような論理のジャンプがあり、
言い方を替えればそれはまさに、神のみぞ知ることではないかしら。
すなわち、この言葉は 運命 と呼ぶほかない、
ある神秘 について語っているのだ。





アムダスラビーの6月2日・3日の土日ランチブッフェは、
ひきつづきガネーシュ・クマール・シェフのダイレクションだった。
両日とも開店まえからお客さんが数人いらして、
しかもその後も客足は止まることなくいっぱいつめかけ、とくに3日は70人近かった。
ブッフェの席数は24席ほどで、相席なしゆえ、
11時から2時半までの3時間半でお客さんは4回転したわけである。
これまでもこういうことはときどきあったことながら、
ただし、2日続き、しかも常連さんたちもちゃんと混じっていつつ、
「いちげんさん」のお客さんがたいそう多く、
ぼくは、「あ、風が変わった」と感じたものだ。


なるほど両日とも構成が洒落ていて、上品で優美な仕上がりの料理が並んだ。
土曜日は、Vegetable pulav、
Andhra Chicken Curry、
野菜料理が数品に、デザートがJalebi。
日曜日は、Kabli Pulav、
Uttapam、
Chettinad Fish Curry(鯖カレー)、
野菜料理が数品に、
スタータードリンクにMojito。

ひじょうに星つきホテルっぽい一流の料理で、
どの料理も美しく、野菜のカットは正確で、過熱も適切。
ワダの仕上がりは空気をはらんでかろやかだ。
印象的だったことは、魚カレーに酸味をまったく導入せず、
それでいて上手にうまみを引き出していたこと。
そしてスタータードリンク、モヒートの、
ライムの酸味、ミントの清楚な香り、生姜のキック、
砂糖と塩のバランスが作り出すエレガンス。


そしてまたふしぎなことは、
ガネーシュ・クマールが料理をダイレクションするようになって、
まだたったの3週間めなのだ。
かれの料理の評判がゆきわたるにしては、いささか早すぎないかしら?
給仕長のグヤン・デヴも、ムゲーシュも、ぼくも驚いたものだ、
「お客さん、多いねぇ~」と口々にさえずりあって。


常連のひとりミス・クリスチャンは微笑みながらぼくに言った、
「すばらしいですね! とってもおいしい!」
ぼくは言った、「さいしょは心配してたんですよ、
すばらしくおいしい一流の料理だけれど、
仕上がりがこれまでのアムダスラビーっぽさ、
ディープサウスインディアンとはちょっと違うので、
どういう結果が出るかしらん、って。
でも、それは杞憂だったようですね。」


そしてぼくはおもった、
おいしい料理がたくさんの人を呼ぶ、
果たしてそれはそれほどあたりまえのことだろうか?
むしろぼくはそこにただただ神秘を感じるのだった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/05訪問58回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

アラビア海の風に吹かれたタミル料理。

料理人たちの多くはコスモポリタンで、
自分の調理技術だけを頼りに、その国の言語ができなかろうがなんのその、
どこの国にも勇敢に飛び込んでゆき、仕事をする。
相性が良ければ飽きるまで仕事をするし、悪ければまた別の場所へ移ってゆき、
そんなことを続けながらキャリアを築いてゆく。
そんなわけで客もまた、その料理人の料理を食べて、
ちょっぴりかれの人生の来し方を感じることがある。


5月26日(土)のランチブッフェは、
ひきつづきGanesh Kumar のダイレクションで、
ざっと以下のような料理がふるまわれた。

Chettinad Veg Biryani
Chicken Kolhapuri
Cabbage Carrot Poryal
Brinjal Kala Kuzhambhu
Virudunagar Oil Parotta
Mutton Bone Rasam
Soya Pattani Korma
Onion Bonda
Butter Milk
Apple Payasam


どの料理も色美しく、総じてマイルドで、中庸なおいしさ。
野菜ビリヤニもおいしい。
チキンコーラプリの鶏挽肉団子もいい。
たいへんに星つきホテルレストランっぽい。
逆に言うと、たとえば羊の骨のラッサムは酸味のキックが弱く、
むしろ「羊の骨のスープ」の趣が強い。
ただし、これはもしかして、
タミルの南部の都市 コーヤンブットゥール Coimbatore 出身のクマール・シェフが、
長年アラビア半島のオマーン国の首都マスカットのホテルで、
料理長を務めてきたせいかもしれない。


マスカットは魅力的な街であるようだ。
背景にはゴツゴツした山があり、
白い家並があって、前景には青い青い海がある。
少しクルマを飛ばせば砂漠もある。
モロッコあたりと並んで、ヨーロッパ人たちにとって、
ほどよくエキゾティックな観光地であるようだ。


ちょっとネットサーフしてみると、
オマーン国のレストランのメニューには、
トマトとバジルのショルバ(=スープ)とか、
ココナツとエビのショルバがあって、
パニールティカ、各種タンドール、ダルタルカ、カレーというようなレストランが多く、
われわれにとってはそうとうインド料理が食い込んでいる。
そのうちクマール・シェフにオマーン国の食事情を訊いてみたい。
もっとも、ぼくはタミル語が使えず、かれは英語がほぼ話せないゆえ、
ムゲーシュの通訳がなくては、ほとんど会話は成り立たないのだけれど。


音楽もYOUTUBEで聴いてみると、さいきんは
アラビア ンヒップホップとかアラビアントラップとか、
興味深い動向があるようだ。First lady of Arabic singer と呼ばれるらしい
Shadia Mansour という人も知った。
パレスティナ系英国人だそうな。
いったいどんな言葉でどんなメッセージを歌っているだろう?


きょうはアムダスラビーのお客さんも、ペルーの男性や、
ドイツのハンブルグ出身の金髪女性、
そしてインド人、日本人と、ひじょうに国際的だった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/05訪問57回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

まるでSITAARA青山みたいにエレガント。

アムダスラビーは都内屈指の南インドレストランのひとつ。
2014年4月10日開店以来、
つねに一貫して「タミル料理人によるタミル料理」を提供しています。
ただし、どこのレストランもそうであるように、
アムダスラビーもまた時期ごとに、そのときどきのシェフごとに、
料理の描き出す世界が微妙に違っていて、
そしていままた新たな時期に向けて、微調整中です。


実は近日中にムゲーシュ・シェフが2ヶ月のバカンスを取る予定になっていて、
そこでここ2週間は、(ムゲーシュ不在でもレストランが廻せるかどうか試すべく、暫定的に)、
新任のGanesh Kumar がシェフになり、2番手もまた新任のAshokが勤め、
給仕はいままでどおりハンサム・グヤン・デヴが担当し、
これまでシェフだったムゲーシュは、にこにこ楽しみながら雑用をこなしています。


きょう5月19日(土)のランチブッフェは、こんな構成。
Hyderabadi Chicken Curry
Jeera Pulav
Daikon White Peas Korma
Green Mung-Dal Masala
Tomato Rasam
Medu Vadai
Maan
Japanese Rice
Green Salad
Moong Dal Payasam
Rose Sharbat (ミステリアスな果実のシロップ’Roohafza'を水で希釈したもの、
レモンと氷入り)


描き出す世界がたいへんに中庸で、エレガントで、優美で、気品にあふれていて、
ひじょうに星つきのホテルレストランっぽい。
いいえ、多くの料理人はキャリアのどこかでホテルで仕事をした時期を持つものだけれど、
しかしながら料理の姿がこれほどまでに「ホテルレストランっぽい」料理人は、それほどいない。
ぼくにとって、かれの料理はSITAARA青山っぽく、
むろんそれは一流である、という意味ではあって。
ただし、それは言い方を変えればこういうことでもある。
前の前のシェフのディナサヤラン(体重105kg)の料理のような、
魚カレーが容赦なく酸っぱく、プーリコロンブもまた徹底的の酸っぱい、
あまりといえばあまりにタミル田舎料理の、その対極にあって。


ぼくはクマール・シェフの料理をつうじて、
タミルの南部の都市 コーヤンブットゥール Coimbatore 出身のかれが
7年間シェフを務めた、アラビア半島の東端(イランの海向こう)オマーン国の都市Muscatの
Muscut Hotel におもいをはせる。


アムダスラビーの常連さん、IT系のDossさんは言う、
「マスカット(オマーン国の首都)、アブダビ(ドバイ首長国の首都)
クウェート(クウェート国の首都)、マナーマ(バーレーン王国の首都)・・・
中近東のあのへんは、どこもシンガポールやマレーシアあたりに似ていて、
タミルの料理人たちがいっぱい仕事していてね。
同じインド人でもIT系よりもいっぱい働いてるよ、
インドレストランがいっぱいあるからね。」


ぼくはDossさんの趣味を訊いてみた。
かれは言う、「クマール・シェフの料理、いいとおもうよ。
都会の料理って感じだよね。
日本人のお客さんもみんなよろこんで食べてたし。
ここは東京だもの、東京のお客さんに愛されなくちゃ意味ないもの。
でもね、ぼく自身はカンニャークマリ出身だから、
ディナサヤラン・シェフ時代の料理がいちばん好きだよ。
ほら、ディナサヤランのときは、
魚カレーのタマリンドも、プーリコロンブのタマリンドも
ガツンと効いててさ。おれはうれしかったよ!
おお、おれの故郷の料理だっておもったもん。
でも、難しいよね、日本人にとってはあそこまで酸っぱいと、
好き/嫌いが分かれるだろうからね。」


実は、西葛西の常連さん(日本人)からも、似たような感想を聞いた、
「おいしいけど、欲を言えば、もうちょっとガツンと、
塩やニンニクを効かせて欲しいかな。」


ぼく自身はかれらの感想がよーくわかると同時に、
いくらかまた違ったこともおもう、
ムゲーシュがシェフの日と、クマールがシェフの日を分けて、
あるいはブッフェはムゲーシュ担当、ディナーはクマール担当などと分けて、
競い合うとおもしろいとおもう。
またクマール・シェフは、
ホテルレストランで磨き上げたかれの力量をまだ十分には見せていないのではないかしら。
ぼくはかれの星つきレストランの創造性もまた楽しんでみたい。
かれにはまだ必ずや「隠しているたからもの」がありそうだもの。
そんなわけで、アムダスラビーの現在から、目が離せない。


【追記】

翌日20日(日)は、
Kuska Biryani (肉なし野菜なしビリヤニ)
Chicken Chettinad with Bone
Idily を中心とした構成で、
クマール・シェフはひきつづき中庸で優美な世界を展開していた。


西葛西在住の常連さんは、「きょうは塩使いもいいですね」と、
満足そうにおっしゃった。
ミス・クリスチャンもお友達を連れて来られ、
にこにこたのしそうにめしあがっていた。
また、マトンが大好きなお茶目なおじさまと素敵なマダムは、
マトンの出ない日でありながら来てくだすって、
ぼくはかれらにメガヴィタミンの効用について熱弁した。
またこの日はいちげんさんも多く来られ、なかなかの賑わいだった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー -
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2018/05訪問56回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

2人シェフ体制になる?

去年2017年の秋ちょうどディワリの季節に、
前任のシェフ、ディナサヤランが気まぐれな悪心を起こし突然インドへ帰ってしまい、
アムダスラビーは大混乱、
自動的にそれまで二番手だったムゲーシュがシェフに昇格したもの。
ムゲーシュの大車輪の努力によって、常連さんたちはけっしてアムダスラビーから離れることなく、
それどころかお客さんは2割くらい増えたもの。
さて、この5月から新たに Ganesh Kumar が入り、
今後は二人シェフ体制になる可能性が高そうです。


クマール・シェフは31歳、
タミルの南部の都市 コーヤンブットゥール Coimbatore 出身。
郷里のSugam Hotel そしてOrient Hotelを経て、
アラビア半島の東端(イランの海向こう)オマーン国の都市Muscatの
Muscut Hotel で7年にわたって仕事をしたそうな。 


二番手は、同じく新入り バンガロール出身のAshok。
御徒町のシャンティや、赤坂のソニアで仕事をしてきたそうな。
給仕長はひきつづきハンサム・グヤン・デヴです。
これでいつムゲーシュが休暇を取ってインドへ戻っても、
とどこおりなくレストランが運営できます。
また、これまでは月曜定休だったけれど、しかし
これからは年末年始を除いて無休になりました。





きょう2018年5月12日(土)は、
暫定的にクマール・シェフのダイレクションで
全体が構成されました。


Kerala Fish Curry (鯖と鯵のカレー)
Corn Methi Pulav(とうもろこしとメティの葉を使った炊き込みごはん)
Vathal Puli Kuzhambhu(苦味スパイス vathal のちょっぴりすっぱいカレー)
Asparagus Green Peas Korma(アスパラガスとグリンピースのシチュー)
Mix Veg Poryal(ニンジンとインゲンのスパイシー炒め)
Lemon Rasam(ラッサムスープ、レモン風味)
Aloo Bonda(じゃがいもコロッケ)
Naan(ナン)
Japanese Rice(日本米ごはん)
Green Salad(サラダ)
Rava Payasam(スージー粉ー小麦粉ーでとろみをつけたスウィーツ)
Mango Juice(マンゴ-・ジュース)


レモンラッサムのキレのある優美がすばらしく、
また、Vathal Puli Kuzhambhuは美しく味わいもまた綺麗だった。
総じて華のあるとても良い料理で、みんなを愉しませてくれました。


アムダスラビーの歴代料理長は、
現 Yazhini の マハリンガム・シェフ、
現・錦糸町Venusのヴェヌゴパール・シェフなど、
東京のインドレストランシーンを支えています。
そしてそんなアムダスラビーは、いま、
さらにいっそう、良いレストランらしく、
厨房のフォーメーションを充実させ、
未知のタミル料理のよろこびを表現せんと身構えています。
アムダスラビーの現在から目が離せません。


【追記】翌13日(日)ランチブッフェもまた、
暫定的に、Ganesh Kumar シェフのダイレクションだった。

Kongu Nadu Chicken Biryani、
Cucumber Rita、
Egg Masala をメインに、
Potato Poriyal と Cucumber Chana Kootu が、
脇を固め、
Brinjal Sambhar と
Dal Rasam がもうひとつの世界を描きだしていて、
Kumar シェフは31歳と若いにもかかわらず、
円熟した魅力を魅せつけていた。
とくにラッサムのキレの良い透き通ったうまみの深さは、
最高だった。


ぼくの個人的な見解としては、
クマール・シェフの日と、
ムゲーシュの日をそれぞれ作って、
アムダスラビーファンがそれぞれの世界を愉しめるようにすると、
素敵だなぁ、とおもう。
オウナーのゴヒル夫妻、いかがですか?


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー -
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2018/05訪問55回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

君子さん。

開店前10時45分頃、
ぼくが店頭の黒板にメニューと女の顔のクロッキーなどチョークで描いていたら、
黒いテンガロンハットをかぶって、タンガリーシャツを着た痩せた初老の男に
声をかけられた。「あなた、ここの専属なの?」
ぼくは驚いた、「え? なにがですか?」
かれは言った、「この絵も字もあなたが描いてるの?」
ぼくは言った、「ええ、まぁ。」
かれは訊ねた、「それでいくらもらってるの?」
ぼくは答えた、「いや、ヴォランティアですから。」
かれは言った、「だめだよ、たとえちょっとでもおカネ取らなきゃ、
もっともインド人はけちだから難しいだろうけどさ。
いや、おれはべつにあなたの絵を褒めてるわけじゃないんだ。
怒っちゃだめだよ、怒っちゃだめ、あのね、あなたの絵はべつにたいしたことないけど、
でも、そんなことしろーとにはわかりゃしねーから。
世間の人はみんなどしろーとですから。」
どうやらかれは画家らしく、ショルダーバッグからファイルに入った作品をぼくに見せた。
新聞紙の上に絵を描き、絵の部分を切り抜いて、白い紙に貼り、
筆文字の書と組み合わせたものだった。
25歳で絵と書の賞をいくつも取って、新聞社各社に売り込みにいって、
それから新聞用にたくさんの絵を描いて、稼ぎ、その後は、
ニューヨークの大学に学び、さいきんはニューヨークそのほかの画廊で、
毎年1枚2万円の絵を百枚売ったり、日本では絵を教えたりして暮らしているそうな。





先週、アムダスラビーには2人の新人が入った。
ひとりはチェンナイ出身のGanesh Kumar。
アラビア半島のどこかの都市で7年間、シェフを務めたそうな。
もうひとりはバンガロール出身のAshok。
御徒町のシャンティや、赤坂のソニアで仕事をしてきたそうな。
きょうはムゲーシュがシェフとして、采配を振るっていた。
給仕長はひきつづきハンサム・グヤン・デヴである。
厨房の陣営が充実したゆえ、これでいつムゲーシュが休暇を取ってインドへ戻っても、
とどこおりなくレストランが運営できる。
また、これまでは月曜定休だったけれど、しかし
これからは年末年始を除いて無休になりました。


2018年5月5日、土曜日、
きょうのメニューは、ざっとこんな感じ。

ヴェジタブル・ビリヤニ
アスパラガスとチキンのカレー
ネギとカリフラワーのコルマ
キャベツとひよこ豆のポリヤル
キーライクートゥー(=ほうれんそうと豆のスパイシーポタージュ)。
トマトラッサム
メドゥワダ
パロタ(=うずまきパン)
グリーンサラダ
セミヤ・パヤサム
マンゴージュース

上品でおおらかな味の構成のラインナップである。
ぼくはインド料理ブッフェにおいては、アムダスラビーがいちばん好きだ。
そう、老舗のニルヴァナムはもちろんのこと、
クリエイティヴタンドールでぼくを悶絶させるYAZHINIでさえも、
そして多少の欠点もなんのその、けっして憎めないスルチを含め、
アムダスラビーこそがだんぜん好きだ。
アムダスラビーほどにブッフェに本気を出しているインドレストランを
ぼくは知らない。(逆に言えば、ディナーへの誘導が下手だとも言えるにせよ。)





さて、開店とともに十数人のお客さんが入った後、
ぼくと新人の Ashok は、表の舗道に立って、客引きをやった。
まずぼくが言う、「南インド料理ブッフェ、いかがですか?」
つづいてAshokがかぶせる、「いんどじんもびっくりです!」
カツゼツとテンポ感が大事で、両方良くないとけっして笑いは獲れない。
この芸はアムダスラビーの伝統で、新人が来るたびにぼくが仕込んでいる。
Ashok はむずかしそうにさえずる、「いんどじんもびっくりですか?」
ぼくはダメだしする、「No,no. ”びっくりですか” No. 
Say,びっくりです! Once again! 」 


いったんおばあさんが階段を下りてアムダスラビーへ入ったものの、
2分後にふたたび階段を上がって来られた。足取りが少し重そうだ。
舗道でぼくは言った、「なにかお気に召しませんでしたか?」
彼女は言った、「どうやって食べたらいいかわかんないんだもの。」
ぼくは言った、「ぼくがご案内しますよ、どうぞどうぞ。」
白い春ニットに小花模様のスカート。
ふんわりした髪、まなざしにコケットリーがある。


ぼくは彼女を厨房入口の脇の小テーブルに案内した。
そして彼女のためのお皿に野菜ビリヤニを盛り、
アスパラとチキンのカレーを注ぎ、
脇にキャベツとひよこ豆のスパイシー炒めを盛って・・・。


隣のテーブルは、福岡から神奈川に嫁いだお嬢さんや彼女の赤ちゃん、
おかあさん、姉妹といった構成。おかあさんはインド料理にくわしく、
九州の名店と噂の高いKALAのこともご存知だった。「まえは焼肉屋さんだったお店でしょ」
ぼくは言った、「そうそう、マスターは絵に描いたようなオヤジで、
値つけも高いけれど、マニアに評判いいですよ。ぼくはまだ食べたことないけれど。」


さて、コケティシュなおばあさんは生ビールを2つ注文し、そして言った、
「さ。あなたも一緒に飲みましょ。」
そしてぼくは同席して、生ビールを飲みはじめた。
彼女はゆっくり話しはじめた。「実はわたしね、この場所でクラブをやってたの。
もうずっとむかしのこと。バブルの頃。・・・18年間かな。
大きなシャンデリアを吊り下げてね、
壁にはブラケット(間接照明)をいくつもつけてね。
ホステスは14人。時給二千数百円は払ってたかな。
ボーイが3人、キッチンが1人。
客単価? 1万5000円くらいかな。
みんな言ってたわ、西葛西にクラブなんて1年たたずに潰れるよ、って。
西葛西で最初のクラブだったからね。
でもね、あたしはちゃんと銀座から良いお客さんを引っ張ってこれたからね。18年やれたのよ。
あたし、24歳で岩手から東京に出てきて、
29歳まで、銀座4丁目の、と言っても東銀座の方だけどね、勤めていたの。
それから西葛西のここに店を出したの。」
ぼくは言った、「道理で! あなたの首から肩にかけて、
コケットリーというのかな、虹色のオーラを感じましたよ。」
彼女は笑った、「まーた巧いこと言って。わたしもうおばあちゃんよ。」
彼女の名前は君子さん。クラブの名前は「君」だったそうな。
おばあさんなのだけれど、しかし吸い込まれるような目力があって、
女盛りの名残がある。
彼女の目には、いまのアムダスラビーでブッフェを食べているお客さんの光景の彼方に、
男たちとホステスたちが談笑する光景が浮かんでいるのだろう。
彼女は言った、「証券会社に務めてる人から
ダイアモンドブルーのーいい色だったわよーメルセデスベンツ買ってもらったり、
それから1億円もらったりしたわ。
でもね、いい人はみんな早死にしちゃうのよ。奥さんがいた人だったけどね。
いろんなことがあったけど、でも、しあわせな人生だったわ。
あなた、優しいわね。猫を家に置いてきたから、もう帰らなくちゃ。」


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー -
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2018/04訪問54回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

「青い山」という名の、鶏一羽丸ごとカレー。

blue mountain と言えば、
ジャマイカにある山のことらしく、またコーヒー豆の品種としても有名ですね。
生い茂る植物の「緑」でもなく、冬の樹木と土の「ブラウン」でもなく、
色づく秋の「黄金」でもない、「青い山」とはいったいどんな山だろう?
たとえば朝靄のなかで、あるいは曇りの日の夕暮れにそんなふうに見えるだろうか?
はたまた青い虎のように神話のなかの光景だろうか?
さて、サンスクリットで青い山ーNilgiri ーと言えば、
ケーララ州からタミルナドゥ州にかけての山岳地帯のことで、
先史時代から人が暮らしていたそうな。
(この山岳地帯の先住民たちは、
インドのいくつかの神様の原型ではないかしらん、という説がある。)
また、その名Nilgiri は紅茶の品種として名高いとともに、
カレーの名前にもなっています。


きょう2018年4月21日(土曜日)のランチブッフェは、
鶏一羽丸ごと使ったニルギリ・チキンカレーと、
トマトビリヤニがメインだった。
そしてそのほか、
ダイコン・ポリヤル、
マスール豆を使ったイエローダルマサラ、
ネギ・アスパラガスコルマ、
はたまたヴェジパコダ、日本米ごはん、
サラダ、ナン、パヤサム。
オーソドックスながらゆたかな構成である。


ニルギリチキンは、骨から出る肉のうまみはもちろんのこと、
ガラムマサラ、コリアンダー、グリーンチリ、
ミントリーフを使ったマサラの深い奥行感のあるカレーで、
食べていてたいへんに充実感があり、官能的で、なんとも無限にすばらしかった。
さて、このカレーのいったいどこがニルギリ丘陵と関係があるのか???
それはいつかゆっくり調べてみたい。


ついでながら、きょうはラッサムも澄み渡って、
キレがあって、ニンニクに由来するうまみもまた深く、
香りに立体感があって、とってもすばらしかった。
ラッサムはいわば主役がなく構造だけがある、
ふしぎなスープだ。
いつもおいしいけれどきょうはとびぬけておいしかった。
おそらくはムゲーシュが「きょうはとくにがんばった」というようなことでもなくて、
たぶん偶然の賜物ではないかしらん。
インド料理にはこういう偶然があることがまたおもしろい。
ぼくがムゲーシュにそんな感想を告げていると、
ロン毛の哲学的風貌のロックミュージシャンのような(?)常連さんも、
「きょうのラッサムはおいしいですねぇ!」と同意してくだすった。


ニルギリ山には、ケーララ州から山岳鉄道が出ているらしい。


【追記】翌20日(日)は、ホームスタイル・マトン・カレーが、
しゃばしゃばのグレイヴィーに、ナスとじゃがいもがふんだんに入ったなか、
羊の肉質がミルキーにおいしいばかりか、
脂身さえもが口のなかで微笑むようなおいしさ。
いくらかバングラデシュ料理に似ているかしらん、と感じさせつつ、
たいへんにすばらしかった! ランチ来客数63人だったそうな。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/04訪問53回目

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  • 料理・味-
  • サービス3.8
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

鶏一羽丸ごとビリヤニ&ゆで卵カレーで、セロトニンが出まくり♪

4月15日(日曜日)のランチブッフェは、こんなメニューだった。

アンブール・ホールチキン・ダム・ビリヤニ(バスマティ)
ヴェジタブル・ライタ
チリ・エッグ・マサラ(=ゆで卵カレー)

オニオン・ウタパム&スパイシー・チャトニ

カイカリ・マンディ
ポテトポリヤル
メドゥ・ワダ

ダル・ラッサム
ビンディ・サンバル
日本米ごはん

レモネード
ムングダルパヤサム


鶏丸ごとならではのリッチな仕上がりのビリヤニをお皿にどかっと盛って、
一方から野菜たっぷりのライタをかけ、他方からスパイシーなゆで卵カレーをかける。
そしてひたすら食べてゆく。
これだけでもうたいへんにおいしい。
しかもおかわりで他の料理をたいらげてゆく。
カイカリマンディはあれこれの野菜が優しくおいしい。
きょうのサンバルは趣向を変えてタマリンドの酸味がひそませてある。
ウタパムはいかにも幸福なパンケーキとしてしあがっていて、
そこにチャトニの刺激がまた心地よい。
すべてが最高のブッフェだった。
このごろのムゲーシュはますます良い。ノリにのっている。


ぼくはきょうアムダスラビーで食事を終え、ヴィタミンB総合錠とCをメガ量飲み、
しばらくすると、かるい眠気を感じつつ、春の日差しのなか、
芝生に寝転がるような幸福を感じるのだった。
どこかからビル・エヴァンスのピアノが聴こえてくる。
柔らかく光沢のある響き。かすかにテムポが伸び縮みして。
虹色の音の粒が、形を作り、崩れてゆく。そしてまた形が生まれ・・・。
雲の上を歩くような。
歩きながらいつしか夢の国へ至っているような。
染み込んだメランコリーが夢のなかへ蒸発し空気のなかへ消えてゆくような、
そんな音楽。
ぼくはおもった、これが世に言うセロトニンなのか。
いま、ぼくの脳内でセロトニンが出ている。
ぼくはそれをまざまざと実感し、そしておもった。
あきらかにインド料理は、愛と幸福のためにある。


【註】実はぼくはこのところメガヴィタミン主義者であり、
ヴィタミンB総合錠、C、そしてEを中心に、メガ摂取しています。
インド料理は世界でいちばんおいしい料理ながら、
ただし、炭水化物摂取量がやや多くなりがちでもあって、
ここが唯一、インド料理とのつきあいかたの難しいところ。
ただし、炭水化物は(幸福感を感受させてくれる脳内物質たるところの)セロトニンの原料として
大切であると同時に、
また炭水化物を消化するにあたってヴィタミンB群を使うので、
ぼくはB群をサプリで摂っています。
また、ヴィタミンB6とB12はそれ自体でもセロトニンの原料でもあります。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/04訪問52回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

The challenge --イリコカレーでお客を満杯にできるか? 前篇

闇のなかに宝石を撒き散らしたようなきらびやかなメトロポリスTOKYOの夜景を
自宅のマンションの13階の廊下から眺めながら、ムゲーシュはおもった。
「なるほど4月1日のブッフェは、骨つきマトン・ビリヤニでお客は60人近く入った。
お客さんはみんなうれしがってどかどか食べてくれて、
おかげで1時にはチキンビリヤニに変更して補充することになったけれど。
Anyway、おれはうれしかった。こうでなくちゃいけない。」


ムゲーシュが来日してから3年の月日が流れた。
いまだにニンジャにもヤクザにも会ったことはないが、
しかし27歳だったムゲーシュは3月末に30歳になった。
親父が死んで3年経って、
タミルにいる息子のHarish はもうすぐ3歳、英語のライムを口づさむようになった。
アムダスラビーの経営者も替わった。
前任の料理長ディナサヤランが逃亡して、自動的におれが料理長になって、そして半年経った。
常連さんは離れなかったし、それどころかお客の数はかるく2割は増えている。


「しかし」ムゲーシュは自問自答した、
「おれはこんなことでよろこんでばかりいていいのか!??
だって冷静に考えればアムダスラビーはア・ラ・カルトでは
マトンビリヤニ単品で1300円で売っているのだ。
それをランチブッフェではエッグマサラにワダにイドィリに
じゃがいもとオクラのポリヤルにダルラッサムにアップルカスタードまで
あれこれつけて大サーヴィス12品構成で1200円で売って、
それでお客が満杯になったからといって、なんの自慢になるだろうか?
なんのことはない、1品百円の大安売りではないか。
おまけにアムダスラビーの平日の客は、
いくらか増えたとはいえ、まだまだ淋しい限りだ。」


人生に慰安の時などない、いついかなるときも運命からの挑戦を受けているのだ。
挑戦され、挑戦され、挑戦されることの連続だ。
ムゲーシュの脳裏に映画 Monky King がおもい浮かんだ。
そう、ひとりのBuddism Monk の真理の探究の旅路を描いたあの映画だ。
Monk のボディガードには、各種の怪力をそなえた猿男、豚男、
そしてミステリアスな美女が付き従っている。
かれらはありとあらゆる神秘的な技を駆使してMonkを護る。
だが、おれにはつきしたがってくれる猿男も豚男もましてやミステリアスな美女もいない。
おれはおおよそただひとりメトロポリスTOKYOで「自分の南インド料理」を作っている。


だが、嘆いている暇はない。ムゲーシュは決心した、「よし、4月7日と8日の週末は、
まずは土曜日はマッシュルームビリヤニとチキンチェティナドでつなぎ、
そして日曜日は地味なイリコカレーをメインにして、
しかもキャッチーな料理はひとつも入れずに、
むしろ南インドのスタンダードなふだん料理をふるまってみよう。
前日の アムダスラビー twitter でのメニュー告知を見て、
みんなどうおもうだろうか? 
かれらの瞳は輝くだろうか、それともあっさりナンディニやヴェヌスに流れるだろうか?
おれはおれのイリコカレーに賭ける。
これでお客さんが満杯になってくれたなら、
そのときおれはほんとうによろこぶ。
しかし、もしもこのメニューではお客さんが入ってくれなかったならば、
そのときはおれの負けだ。いさぎよく認めよう。」


ムゲーシュは誓った、闇の奥に姿を隠している Mt. glorious Fuji の方へ向かって。


つづく


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/04訪問51回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

The challenge --イリコカレーでお客を満杯にできるか? 後篇

承前
https://tabelog.com/rvwr/000436613/rvwdtl/B87097208/


去る4月1日のブッフェでは、
メインが骨つきマトン・ビリヤニとエッグマサラでお客は60人近く入って、
料理長のムゲーシュは大いによろこんだものの、
しかし次の瞬間おもった、
「いや、もしかしてこれはおれの料理への評価というわけではなく、
むしろたんに骨つきマトンビリヤニ効果、
12品1200円という大安売り効果なのではないのか?
もしもキャッチーなメニューをひとつも設けず、
タミルのあたりまえのふだん料理だけで構成したならば、
いったいどのくらいお客さんは来てくれるだろうか?
もしもそんな日であっても、ちゃんとお客さんが満杯にできたなら、
それなら少しくらいはよろこんだって罰は当たらないだろう。」


さて、その試みは4月8日(日)になされた。
メニューはイリコカレー、
ミックスヴェジコルマ、
キャベツのポリヤル、
ラッサム、サンバル、ワダ、
2種の白ごはん(バスマティと日本米)
ナン、サラダ、パヤサム、バターミルクである。
ごはんメニューが(プラオもビリヤニもなく)ただの白ごはん2種であるのは、
アムダスラビー的にはたいへんにめずらしいこと。
こういう地味っぽい構成も、いかにもタミルのふだん料理の滋味ゆたかなおいしさで、
ぼくは好きだけれど、さて、どのくらいお客さんが来てくれるだろうか?
うららかな春の日である。


なおアムダスラビーは通常営業では14卓32席ながら、
しかし土日祝のブッフェは、ブッフェテーブルに6卓取られるゆえ、
8卓24席、相席なしである。
11時開店から2時半来店までの3時間半で何人のお客さまが来てくれるか、
それが勝負である。


この日の最初のお客さんはおもいがけず、髪の長いクリスチャンの女性で、
むかしからのお客さま、きょうは朝のミサの後にいらしたそうな。
訊けば彼女は、4月1日に1時に来店なさって、
最初に骨つきマトンビリヤニを召し上がり、
おかわりのときにはチキンビリヤニになっていて、
結果、2種類愉しむことができてラッキーでした、と、よろこんでらした。
そして彼女は付け加えた、「きょうのイリコ・カレーもいいですね、とってもおいしい!」
なんとなく幸先のいい感じです。
その後もお客さんはちゃくちゃくと入り続けて、48人という結果だった。
もう少し多いと最高だっただろうけれど、しかしけっして悪い数字ではない。
ムゲーシュは汗を拭きつつ、満足そうに微笑んでいた。


ムゲーシュは言った、「タミルの魚屋はその日仕入れて売れ残った魚は
すべて干し魚にするんだよ。だからタミルでは干し魚料理が多彩なんだ。
こんどおれインドへ帰るとき、干し魚をあれこれ買って帰るよ。」
そのときはアムダスラビーの土日祝ランチブッフェに
あれこれ干し魚のカレーが登場することでしょう。
それはそうと、ムゲーシュがインドへ帰っているあいだ、
誰が代理シェフになるかしらん?


なお、4月14日(土曜日)のメニューは、
グリンピースプラオとチェンナイフィッシュカレーをメインに、
12品構成1200円です。


追記

14日(土曜日)の来客数は37.5人(含む、コドモ客3人)だった。
花曇りの春らしい日にしては、いささか少なめの来客数だった。
ムゲーシュはつぶやいた、「chotto chotto samishiine。」
あした15日(日曜日)は、ホールチキンビリヤニがメインである。
天気予報は雨だけれど、さて、挽回できるかしらん???


きょうはシンガポールで南インド料理にめざめたお嬢さんが、
ぼくの食べログの読者だそうで、そんなこと言われてうれしかったです。


追記の追記

15日(日曜日)は、開店時には雨も上がり、
埼玉・大宮からバイクに乗って現われる常連さんをはじめ、
あの方この方と日本人の常連さん中心に埋まってゆきました。
逆に、1時過ぎには2回めのビリヤニも補充し、
インド人家族が何組も現われて、
ダイニングのお客さまは全員インド人という展開。
結果、50人越えで、料理も食べ尽くされ、
2時過ぎにははやばやと「close」の札を出しました。
ありがたいことです。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/04訪問50回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

マトンビリヤニ・ブッフェ繁盛記。

前日にムゲーシュは不敵にほくそ笑んだ、
「見てろよ、あしたはお客さん、いっぱい入るよ。
なんてったって骨つきマトンビリヤニとエッグマサラ(ゆで卵カレー)、
おまけにイディリ(蒸しパン、スパイシー・チャトニつき)だからな。」
去る春分の日が冷たい雨がしょぼ降って最高気温6度の真冬並みの寒さで
お客さんの入りも悪かったゆえ、ムゲーシュはよほど悔しかったのだろう、
いくらか復讐の気分もありそうだ。
ちなみにアムダスラビーの場合ランチブッフェの損益分岐ラインは
来客数20人~25人であり、40人を越えてはじめてスタッフの満足感も生まれる。


他のメニューは・・・。
カイカリマンディ。
ダルラッサム。
アル・ビンディ・ポリヤル。
(午後1時以降は、ひよこ豆とニンジンのポリヤルになった)。
キーライ・ワダ。
ミックス・ヴェジ・サンバル。
日本米。
アップルカスタード。
マンゴー・ジュース。
食べ放題で、1200円。
天気予報はうららかな4月晴れ。
ただし、安心はできない、花見に負ける可能性もまたある。
さて、ムゲーシュの読みは当たるかしらん?





さて、明けてきょう4月1日(日)、
ムゲーシュは、骨つきマトン・ダム・ビリヤニを、
6kgのバスマティライスと4kgのマトンで仕上げた。
マトンの肉質はミルキーで、ほどよいスパイス感あるバスマティが、
なんともかぐわしくおいしい。
これにエッグマサラをかけて、ゆで卵を潰しながら食べる。
たいへんおいしい。カイカリマンディやアル・ビンディ・ポリヤルなど野菜たっぷりで、
これがまたおいしい。


ふつうは米1kgのビリヤニで8人ぶん。
したがってムゲーシュは今回48人ぶん仕込んだつもりなのだけれど、
しかし11時の開店と同時に常連さんたちが次から次へとつめかけ、
なんと午後1時、計30人ほどのお客さんで、骨つきマトンビリヤニはきれいに食べ尽くされた。
料理長のムゲーシュも、給仕長のグヤン・デヴも、顔を見合わせて驚いていた。


ムゲーシュは12時代にあわててチキン・ダム・ビリヤニに取り掛かり、
2kgのチキンと3kgのバスマティで作り、メニューを変更しつつ、
1時過ぎにビリヤニを補充した。
ムゲーシュとて骨つきマトンビリヤニを追加したいのはやまやまながら、
しかしマトンは原価がかかりすぎるという判断で、チキンに変更したようだ。
1時過ぎに来店されたお客さん、ごめんなさい。
でも、チキンビリヤニもおいしかったでしょ。
お客さんは60人近く入ったのではないかしらん。





巧くいっているブッフェはいかにも華やかで楽しいもの。
お客はおいしい料理をあれこれの種類、おもう存分愉しむことができるのだもの。
もちろん提供する側もまたうれしい、
お客さんがみんなにこにこいっぱい召し上がる姿を見ながら、
次から次にはけてゆく料理に負けじと、どんどん補充してゆく。
給仕は、客の立った後のテーブルを片付け、クリーンアップし、
新たなお客を案内する。
すべては良く調整された機械のように廻ってゆく。
ただし、こうした幸福はお店側の情熱とお客側の熱気がシンクロしたとき、
はじめて生まれるもの。


逆に言えば、さまざまなごちそうが並びながら、
しかしお客さんがろくに入っていないブッフェほど淋しいものはなく、
そしてまた、レストランのスタッフにとっては
残ってしまった料理を捨てるときの腹立たしさと恥辱もまた耐えがたい。
また、お客さんはそこそこ入っているものの、
しかし温度の冷えた料理が寒々しく並んでいるような、
そんなブッフェもまたいかにも物悲しいもの。
提供する側が自分の仕事に飽きているのだ。
そういうことはおのずと客にもバレるもの。
しかし、いつ誰がそんなふうになるか、それは誰にもわからない。


ぼくはおもいがけない人生のなりゆきで、ヴォランティアというかたちで
アムダスラビーの舞台裏をちょっぴり覗いたお陰で、
たとえばぼくは雨の日に自分の部屋で机に向かってなにか書き物をしているときなど、
つい、どこかのレストランを思い浮かべていたりすることがある。
それはべつにどこか実在のレストランというわけではなく、
あくまでもぼくの想像のなかの場所で、
その街にもやはり雨が降っていてそのレストランにお客の姿はなく、
スタッフは退屈しのぎにアイフォーンを触ったりしていて、
ダイニングではあれこれの華やかな料理がかぐわしい香りを立てながら、
しかし理不尽にも誰をも魅了することができない。
雨の音に混じってちいさな音でバート・バカラックが流れている。
そんなときのぼくにはそのレストランが
まるで自分自身のようにおもえるのだった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/03訪問49回目

-

  • 料理・味-
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  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ムゲーシュの、ちょっとしたクリエイティヴィティ。

2018年3月25日(日)ランチブッフェのはなしである。
ムゲーシュは訊ねた、「フレッシュ・アップルジュース、どうだった?」
ぼくは言った、「いいね、あれ。マイルドでエレガントじゃん。どうやって作ったの?」
ムゲーシュは言った、「リンゴはいつものやつなんだけど、
ミルクとシュガーと生クリームもちょっと加えて、
アイスキューブを入れてブレンダーで廻したんだよ。」
ぼくは言った、「なるほどぉ。かっこいいじゃん!」


ムゲーシュは訊ねた、「ネギとカリフラワーのコルマはどうだった?」
ぼくは言った、「おいしかったよ。ココナツ風味のグレイヴィーのなかに
うまくまとまってて、ほどよくレッドペッパーの辛味も効いていてエレガントだった。
それはそうとムゲーシュは長ネギなんていつ知ったの?」
ムゲーシュは言った、「スーパーマーケットにいつも売ってるのを見てたんだ。
で、今回ちょっと試してみたんだよ。」
ぼくは言った、「なるほどね、いいじゃん、そのクリエイティヴィティ。」


そういえばムゲーシュはこのあいだの休日、
スーパーマーケットで食材を物色しているなかセロリをはじめて知って、
そこでプライヴェートに
「ビーフストロガノフ、セロリ入り、インドスタイル」みたいな一品を作ってくれた。


まずは、セロリを炒め、水を加え、シメジを要れ、ピーマンを入れ、蓋を閉める。
他方、牛肉を細切りにして、レッドペッパー、ブラックペッパー、塩、コリアンダー、
ターメリックをまぶし、水煮缶トマトを加え、タマネギのザク切りを入れ、
カレーリーフを加え、最後にポピーシードを入れてしばらく加熱する。
最後のセロリと牛肉を合わせてできあがり。
まさに「ビーフストロガノフ、セロリ入り、インドスタイル」と言うべき一品。
インド料理というよりも、むしろヨーロッパ料理に派手にスパイスを効かせたような印象。
かなり無国籍な料理ながらたいへんおいしかった。


ムゲーシュには、spontaneous creativity とでも言うべきセンスがある。
それはけっしておおげさなものではなく、むしろとてもさりげなく
おもいがけないときに無邪気に発揚される、茶目っけとともに。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/03訪問48回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

トマトビリヤニと、タミル料理オールスターズ。

アムダスラビーは西葛西にある南インド、タミル料理のレストランです。
土日のランチブッフェが人気です。11~12品の料理が並びます。
いつも前日に料理長のムゲーシュがその日の料理のラインナップを書いて、
オウナーのゴヒル夫妻に送り、ゴヒル夫妻がOKを出すと決まります。


メニューを考えるにあたって、
ムゲーシュがどういう順番でどんなふうに思案するかしらん。
それはもちろんぼくにはわからないけれど、
たぶん多くはプラオだったりビリヤニだったりするごはんものと、
そしてメインの肉カレーもしくは魚カレーが決まれば、
おおよその世界が見えてくるのではないかしら。


むろんもうひとつの世界として、
白ごはん、ラッサム、(とサンバル)は比較的定番的にあって。
その日の暑さ寒さで辛さの按配や野菜の種類などがおのずと決まってゆくのではないかしら。


パン系をウタパムやイディリにしてマニアックに攻めるか。
あるいはナンにして無難に多数派によろこんでもらうか。
そのあたりもいくらかローテーションを組み込みながら、
おのずと決まってゆくのではないかしらん。


さて、きょう3月24日(土)は、
トマト・ビリヤニ&かぼちゃとチキンのカレーが全体の印象を決定していて、
ほのぼのと幸福な世界が生まれていました。
トマト・ビリヤニはトマト色の炊き込みごはんで、
スパイスはほどほどの効かせ具合で、優しい仕上げ。
かぼちゃとチキンのカレーもわりと家庭的な仕上げです。


ムスリムの肉肉しいビリヤニとはまったく違った、
いかにもタミルらしいヴェジタリアンライクなはんなりビリヤニで、
これはこれでとても素敵です。
かぼちゃとチキンのカレーとの相性も抜群。


そこに「ミックスダルのサラダ」、
「インゲンとレンコンのスパイシー炒め、ココナツの香り」、
「ミックス・ヴェジ・コルマ」、そして
「じゃがいもコロッケーアル・ボンダ」がゆたかな世界を展開してくれます。


きょうのパンは、ナン。(コルマと食べるとおいしい)。
ラッサムは、プーンドゥ・ラッサム(ニンニクを効かせてあります。)
デザートは小麦のパヤサム。
ドリンクはレモンジュース。





きょうはうららかな春らしい良い天気で、
開店そうそうからお客さんの入りも良くいい感じだった。
こないだの春分の日なんて寒くって小雨がパラついていたものだから、
11時代の1時間ではたった4人しかお客さんが入ってなくて、
しかも正確に言えば時間によってはお客さんが2人しか入っていないときさえあって、
これはそうとう寒々しい光景で、
ムゲーシュやグヤン・デヴたちのジョークも(心なしか)空回りしていたものだ。


みなさん、どうぞご自分の好きなレストランには、
(天気の良い日はもちろんのこと)悪天候の日にこそ行ってあげましょう。
なぜって、悪天候の客の少ない日に訪れるあなたは
レストラン関係者にとって、天使ですから。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー - 2018年3月24日の黒板。

    2018年3月24日の黒板。

  • アムダスラビー - ムゲーシュ、亀戸にて。

    ムゲーシュ、亀戸にて。

  • アムダスラビー - トマトビリヤニ。

    トマトビリヤニ。

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2018/03訪問47回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

幸福な事故。

ビリヤニは世界でいちばんおいしい炊き込みごはん、あるいはワンダフルな釜飯で、
しかも地域、宗教、料理人によって作り方が微妙に違っているゆえ、
食べ歩きの愉しみがあります。


3月17日(土)のランチブッフェの花は、
ヴェジタブル・ビリヤニと
コーリーワルタ・カレー(=チキン・ソテーのカレー)で、
パラク・パルプ・クートゥと、
アル・ビンディ・マサラそのほかがしっかり脇を固めていた。


翌18日(日)は、
アンブール・骨つきチキン・ビリヤニ&ヴェジタブルライタがメインで、
もうひとつのメインがチェンナイ・フィッシュ・カレー、
そしてキーライ・ブラックチャナ・ポリヤル、
パニール・マタール、そしてクルチャなどなどが華やかなラインナップを構成していた。


すなわち、2日つづけてビリヤニがメインでした。
ただし、それぞれの日のビリヤニの役割は違って、
いずれもただ単品として派手に目立つばかりでなく、
むしろそれぞれの日の世界をそれぞれのビリヤニが上手に代表していて。





どちらかといえばビリヤニは、北部インド、パンジャブ州から、
ひいてはパキスタンにかけての料理という印象が強く、
同時に、(ヒンドゥーたちも作るものの、どちらかといえば)ムスリムのイメージが強い。
ムスリムの作るビリヤニは、いかにも肉肉しく、
米粒パラッパラの炊き上がりを好み、かつまた、
山盛り大量のビリヤニとライタで完成していて、
それだけで1食がじゅうぶんに成り立っているもの。


やや対照的に、南インド、タミルのビリヤニは、
どちらかといえば、炊き込みごはんらしさがより強く、
米粒は(パラッパラというよりはむしろ)もっちりした感じ。
むろんビリヤニとライタだけでもじゅうぶん成立する完成度を持ちながら、
しかしアムダスラビーのブッフェにおいては、
これを11品構成のなかで、華やかに贅沢に愉しんでいただきましょう、
という趣向である。


実はむかしのぼくは、いま同様
(おしあわせにも?)アムダスラビーを世界1のインドレストランとして愛しながらも、
ただし、ことビリヤニに限っては、それほどにはアムダスラビー贔屓ではなかった。
むしろかつてデリーやジャイプール、チャンディーガルを訪ねたときに
あちこちで食べたさまざまなビリヤニの印象が勝っていた。


でも、いつのまにかぼくはけっしてそんなふうにはおもわなくなっていた。
ぼくはムゲーシュの料理が大好きで、そしてビリヤニもまた、
ムゲーシュの作るビリヤニを大好きになっていた。
しかもそれは華やかなブッフェのなかの女王のような座についていて、
無限の魅惑がぼくを魅了する。
いいえ、この話題はいたって個人的なもので、
そもそも各地域各様式のビリヤニは優劣を競い合うものではなく、
ぼくの味覚の軸が、審美の基準が、
ムゲーシュによって完全に南インド・タミルにもっていかれた、
というようなはなしなのだけれど。


人は誰も食をつうじて経験を重ね、審美の基準を磨いてゆくのみならず、
ときにその基準をなにかにもっていかれてしまうこともまたあるものなのだろう。
喩えるならば、幸福な事故 のように。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/03訪問46回目

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  • 料理・味-
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¥1,000~¥1,9991人

鶏一羽丸ごとカレー。

3月11日(日)ランチブッフェのメインがこれだった。
はじめての試みで、ムゲーシュは
冷凍ものの鶏一羽を自分でバラして、頭以外のすべての部位を使って、
家庭料理スタイルのカレーに仕立てた。
ぼくは訊ねた、「どこが家庭料理スタイルなの?」
ムゲーシュは答えた、「皮を剥さず、皮ごと使うところだよ。」


解体された各部位はマサラにまぶされ、
小骨からはダシも出て、そのダシもまたスパイスと溶け合って、
肉はグレイヴィーを染み渡らせなんともおいしい。鼻息が荒くなるほどおいしい!
これをマッシュループ・プラオ(炊き込みごはん)にかけて食べると、もう至福。


ぼくは訊ねた、「チェンナイでは、鶏一羽っていくらくらいするの?」
ムゲーシュは答えた、「フレッシュで200ルピーから250ルピーくらいかな。
400円~500円。だからインド的にはけっこう値が張って贅沢なんだよ。」
なるほどね、値段のみならず味わいもまさに sumptuous meal である。


そのほかきょうのブッフェは・・・。

レモンジュース。
プレイン・ウタパン&スパイシーチャトニ。(おいしい!)
マッシュルーム・プラオ。(たいへんおいしい!)
ニンジンとナスのサンバル。
ソヤチャンクス(インドコーヤドーフ)とグリンピースのカレー。
キャベツ・ポリヤル。
蟹のラッサム。(これがまたすばらしい!)
チャナチャット。
シャヒトクラ(揚げパンのシロップ漬け)


このごろは、前日のアムダスラビーのTWITTERでのメニュー告知を見て、
食べに来るかどうかを決めるお客さんが多く、
もしもここでツカミが弱いと、
ーすなわち、もしもこの段階で読者の興味と関心を強く呼び起こすことができなければ、ー
客の二割は(たぶん)ナンディニやヴェヌスに流れてしまう。
鶏一羽丸ごとカレー。むろん料理名もおいしいけれど、
しかし食べてみないとあのおいしさの感激はありません。
あたりまえのことだけれど。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー -
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2018/03訪問45回目

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  • 料理・味-
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¥1,000~¥1,9991人

歳月の贈り物。

3月10日 土 のブッフェはこんなメニューだった。


マンゴー・ジュース。(南国のおいしさ)。
ブロッコリーとグリンピースのプラオ。(緑もあざやかな炊き込みごはん)。
ヴェジパコダ。(カリッとクリスピーに揚がった野菜のカキアゲ)。
トマトラッサム。(澄んだ深みと立体感!)
ダルパラク。(ほうれんそう入り豆のポタージュ。優しい。)。
ニンジンとグリンピースのポリヤル。(華やか!)
カイカリマンディ。(7種の野菜のシチュー。春らしい。)。
チリ・キーマ・カレー。(鶏挽肉とピーマンとパプリカとトマトのカレー。おいしい!)。
日本米。
サブダナ・パヤサム。(清楚)。


春らしい野菜がたっぷり、上品で、味覚の中間色を活かした優美な世界。
スパイスはやや控えめながら、とってもおいしい。


開店まえから待っておられた男性客はなんと名古屋からいらしたそうな。
ムゲーシュはそれを知ってよろこんで叫んだ、Iineeee!!!!





ムゲーシュはぼくに言った、「去年のいま頃を覚えてるかい?
おれたちは店の前の路上に立ってビラ撒きしてさ、
”インド人もびっくりで~す♪”とか言っちゃって道行く人に愛想振りまいてさ。
でも、あんなに一所懸命やっても、
週末ランチのお客さんはせいぜい三十数人だっただろ?
それがいまはどうだい? ビラ撒きもなんにもしないのに、
五十人越えの日は多いし、六十人越えの日だってあるよ。」


ぼくは言う、「いまにしておもえば、(前任の)ディナサヤランの料理は、
ラッサムにしても魚カレーにしても超酸っぱかったものね。
おれは好きだったけど、でも、さすがにあの料理で五十人越えは無理だよな。
たしかにマニアはたいてい現地の味を求めるけど、でも、
マニアのお客さんだけじゃけっしてレストランはまわせないものね。
いや、そもそもあのころはマニアの巡回するレストランにさえも、
なっていたかどうか。」


ムゲーシュは言う、「おれだって、いま、
もう少しスパイスを効かたい気持ちもあるけど、
でも、いま、お客さんが増えてるからね。
それは結局アムダスラビーのお客さんが、
いまの味を支持してくれてるってことだからな。」


ぼくは言う、「ここまでくるのが長かったよね。
日本米しか出してないときはそれだけで文句言われたし、
でも、バスマティはキロ500円、多産地混合日本米は200円、
あの頃バスマティを出せばカリフラワーは買えなかったものね。
いまはお客さんが多いから、バスマティ使ってもカリフラワーも使えるけど。
そうかとおもえばナン出してないってだけで怒って帰っちゃうお客さんもいたし。
それどころかあの頃はおれ自身もけっこうお客さんに嫌われたもん、
客なんだか店員なんだかわからないとか、調子にのってやがるとか言われてさ。
インド料理マニアってつくづくおっかないっておもったもん。」


ムゲーシュは言う、「でも、あのころがあるから、いまがあるんだよな。」


ぼくは言う、「レストラン自体はなんとか生き延びたからね、
オウナーは替わったけど。
いまのゴヒル夫妻になってから、ちょうど1年半か。
かれらはトイレットも良くしたし、壁紙も張り替えたし、
レストランらしい体裁も整ったし、
なによりも、厨房の換気を強力にしてようやく煙が外に出てゆくようになったものね。
もしもむかしのままだったら、ムゲーシュもグヤン・デヴも気管支炎になってたかもね。」


ムゲーシュは言う、「マジでそうなってたかもな。さもなくばレストランが先に潰れたか。」


ぼくは言う、「アムダスラビーはいつのまにかトンネルを抜けてたね。」


ムゲーシュは言う、「きょうのあの人なんて、名古屋からわざわざ食べに来てくれたんだもんな。」


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/03訪問44回目

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ジョークと祭りとインド人。

日本美女のコメディエンヌ、Tamayoさんが、
ニューヨークの大観衆の前に登場する。
彼女は、異文化人の耳に怒れる日本軍人のしゃべる日本語がそう届くであろう、
意味不明の言語を吠えまくって会場の大観衆を沸かせた後で、
うってかわってコケティッシュに囁く、
「日本人はね、キスよりもおじぎが大好きなの。
お互いにおじぎを繰り返しているうちに、
おもわず乳首が勃っちゃうの。」
アメリカ人たちは白人も黒人もジューイッシュもヒスパニックも大爆笑。
彼女の、1980年代後半のネタである。
こうしてアメリカ人たちは、奇妙なジャパニーズカルチュアにちょっぴり親愛の情を持つ。
喧嘩もジョークならば、仲良くなるのもまたジョーク。
世界はジョークでできている。


インド人もまたジョークが大好きで、
おうおうにして他人の地域文化や宗教がネタになる。
たとえば北西部のインド人にとって、南インドのタミル人は
へんてこりんなヒンディをしゃべるアホアホな道化者たちである。
他方、タミル映画のなかの北部インド人は、
たいていターバンをかぶっているシク教徒で、
まぬけなトラックドライヴァーである。
このようなネタは数限りない。
なんびとたりともジョークのネタにされることは避けられない。
そしてジョークにはジョークで返すのがクールな態度であり、
もしも本気で逆上すれば、その人は田吾作として位置づけられてしまう。
むしろジョークは、本気の喧嘩を避けるための、ガス抜き装置なのである。
むろんそこには、ジョークのなかの文化的ステレオタイプを
かれらの本質だと真に受けるのは愚か者だけ、
というタテマエが共有されているからこそ。


そんなふうにインド人はつねにまとまりが悪く、
かれらが一致団結するのは、フットボールの インド対 パキスタン戦のときくらいである。
インド人はパキスタンン選手を野次る、「テロリストでもなけりゃ、
サッカー選手でさえもないドシロートどもが、どたどた走ってやがるぜ。」
こうして観戦中だけは、われわれみんなインド人、という幻想に酔いしれる。
しかし試合が終れば、ふたたびバラバラである。





こないだの週末は、Holi で、春を祝い、愛を尊ぶ、全インド的な祭りだった。
西葛西でも怪獣公園で小規模開催されたものの、
しかし現地インドではたいへんな騒ぎで、通りを行く誰もが、
おたがいに赤、黄、緑、紫などさまざまな色粉をお互いにぶつけあう。
そこはみんな心得たもので、この祭りの日だけは、
汚れても良い服を着ているのだ。
コドモたちはもちろん大人たちも大喜び。みんな本気で楽しんでいる。
しかも、愛を尊ぶ祭りゆえ、道行く美女に抱きつくスケベ男なども混じっていて、
ときにセクハラとして、女たちをイラつかせもする。
さらに興味深いことは、この日は、喧嘩していた同士が、
色粉まみれの顔を合わせて仲直りをできる日でもあるのだ。
こういう日が設けられていることもまた、インド文化の知恵と懐の深さを感じる。


アムダスラビーもまた、去る土日はホリ・スペシャル・ブッフェだった。
両日ともいつものように十種を越えるメニューが並びます。
土曜はヴェジタブル・プラオにラジママサラ、大根ロビアポリヤルなど、
豆のメニューが印象的においしかった。
日曜日は、骨つきチキンダムビリヤニに、
ナスカレー・タマリンド味をかけて食べるのがおいしかった。
ヴェジタブルウタパンにココナツチャトニの組み合わせもまた良かった。
おまけに鯖カレー・タマリンド風味まであって、贅沢だった。


アムダスラビーもまた、ちいさなタミルレストランながら、
オウナーのゴヒル夫妻はムンバイの人たち、
シェフのムゲーシュはタミル人、
給仕のnealy 白人のハンサム・グヤン・デヴと2番手に新たに入ったPrenはネパール人。
いつもは内心、「ったく、あいつらときたら・・・」と、
お互いにお互いをジョークの対象にしながらも、
しかし、それでいてささやかな利害共同体ゆえ、みんな仲良くやっています。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


  • アムダスラビー -
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2018/02訪問43回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ヘマントさんとぼく。

土曜日の午後、小島町2丁目団地のインド食材屋にインド人たちが集まっています。
かれらは到着したばかりのインド野菜、ドラムスティック、バナナステム、
緑バナナ、カレーリーフ、オクラなどをうれしそうに買ってゆきます。
少し離れたところでは、インド人たちへのテレビの取材がおこなわれていて、
それは「インド人にとって、CoCo壱番屋のカレーは、いかがですか?」
というトピックです。


ぼくは内心おもう、わが同胞よ、低予算でおもしろい番組を作ろうというおもいで、
西葛西へ来てくれてありがとう!
インド人たちの多くは恥じらいながらもうれしそうに取材に応じているよ。
しかしちょっとだけぼくには異議がある、
インド人と言えばカレー、っていう理解はたしかに正しいとは言え、
しかし、けっしてインドはカレーの国だけではないよ。
世界中からインドに治療に訪れる人も多いし、
シク教徒中心のTATAによるインド国家への数々の貢献は、
たいへん感動的なトピックだし、
映画も地域ごとのスタイルがあって活気があるし、
しかも映画のみならず、インド社会は膨大な数の小インド文化が葡萄の房のように集まって
できあがっていて、しかも葡萄の粒どうしはいくらか不干渉。
そういうところを味わってこそインドは心底チャーミングなんだぜ。


しかし、そんなぼくの憂慮を振り払うように、
いかにも明るく快活に上手な日本語で爽やかに、
こんなふうに答えるインド人がいた。
「CoCo 壱のカレー、おいしいです。
会社の近くにあるスープカレーのお店も大好きです!」


かれは Hemantさん、IT系のキャリアビジネスマン。
かれの物腰はつつしみ深く謙虚でしかも微笑を絶やさず、
日本人に好かれるふんいきが身についています。
訊けば、かれはジャイプールの人で、カナダの大学でMBAを取得し、
日本在住十年目、銀行系の会社に勤め、
ついさきごろ豊洲から西葛西へ引っ越して来たそうな。
ぼくは、かれに西葛西にある3軒のインド食材屋について教えてあげた。
それぞれ経営者はタミル人、ビハール人、デリー人であること。
どうやらかれはそのすべてをすでに知っていたらしいけれど、
しかし、かれはぼくの理解に感心しお世辞を言ってくれさえした、
「あなたは西葛西インド文化のグーグルですね!」


なお、ぼくのしたしいインド人たちはほぼ料理人と商人および労働者で、
しかも(ぼくの人生のなりゆきによって)タミル人の比率がやけに高く、
また、IT系の インテリの友達がほぼいない。
なぜなら、かれらミドルクラスのキャリアにとってぼくはただのストリート系で、
ぼくにもまがりなりにも知性はあるものの、ただしぼくの英語はかなりボロいし、
ぼくの生計の立て方もぼくのインド人の友達選びも全部揃っていかにも怪しいゆえ、
かれらの多くは通例、「なんだ、このインド好きの変な日本人は!??」
と、おもいこそすれ、それほどしたしくぼくとつきあおうとはしない。
なるほど、どこの国であれ、社会とはそういうものではある。
貧乏人としたしくつきあいたがる、そんなカネ持ちはいない。


目の前の食材屋がタミル人経営であることにことよせて、
ぼくはかれに訊ねた、You don't like ”Chennai Express”culture?
かれは苦笑して言った、「No,no. けっしてそんなことありませんよ、
われわれはみんな同じインド人です。インドはひとつです。」--たいそう照れながら。
解説すると、”Chennai Express”という映画があって、
これがタミル人の陽気な田舎者ぶりをネタにして笑いを取る、
明るく差別的なコメディ映画である。
むろんかれはおもったろう、(おまえ、インド文化の南北差異についてまで、
知ってるのか!?? どんだけインドおたくな日本人なんだよ。
ったく西葛西には変な日本人がいるもんだぜ。)
いいえ、かれがどうおもったかはぼくにはけっしてわからないけれど。
さて、軽く笑いも取ったところで、
ぼくはかれをアムダスラビーのランチブッフェにお誘いした。
訊けば、かれはアムダスラビーのオウナーのゴヒルさんとは仕事上したしく、
アムダスラビーには、まだ行ったことはないものの好感は持っていたそうな。


さて、われわれは翌日曜日に、ランチをご一緒した。
Hemant さんはさすがに知性が高く、
われわれはたったの1時間のあいだに、
何十もの話題を行き来させ、多くの情報をあげたりもらったりした。
ぼくはひさしぶりにおもいだした、
そうそうそう、こういう感じだったなぁ、
インテリと話すとたったの1時間でおたがいに超かしこくなれる。


ダイコンとソヤチャンク(インドコーヤドーフ)のマサラ。
ニンニクを効かせたラッサム。
オクラのサンバル。
ほうれんそうとひよこ豆のスパイシー炒め。
アスパラガスと鶏挽肉のカレー。
そしてバスマティ米。
たのしく、おいしい。とってもおいしい!


かれにとっては異郷の料理、南インド タミル料理ながら、
紳士的なかれはいかにもおいしそうに召し上がった。
それどころか、ぼくの食べ方を褒めてくれさえした。
ほんとに Hemantさんは社交の達人!


なお、Hemantさんはクレジットカード関連の仕事柄、
いろんな高級レストランで召し上がっていて、
話題はフレンチから日本料理まで多岐にわたり、
かれはとくに 京都の祇園の にしむら を絶讃した。
むろんぼくがそんな話題につきあえるわけがない。
ぼくももう少したまには高額店でも食べなくちゃなぁ、
と、ちょっぴり反省した次第。
おもえば、アラジンの川崎シェフにも同じ件で、
ぼくはやんわり叱られたもの。
どうやらいまぼくはそういう星まわりにあるようだ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/02訪問42回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

お客力を上げる5つの方法。

レストランは誰のものでしょう?
オウナーのもの? 従業員のもの? お客のもの?
その答えはけっしてたんじゅんではありません。
きょうはアムダスラビーのワンディッシュプレイト騒動のおはなしです。


アムダスラビーは、土日祝のランチブッフェにおいて、
洗い物の手間を減らし、料理の補充にいっそう力を入れるべく、
それまでの大皿+複数の小鉢というスタイルをやめて、
ステンレスのワンディッシュプレイトを百枚ほど購入して、
2月10日(土)のブッフェから、提供をはじめました。
小鉢を使わず、すべての料理をステンレスの大皿一枚に盛って、食べるもの。
ごはん用の窪みが大きく、他の窪みが6つほどあって、
そこに各種の汁もの、炒め物、揚げ物を注いだり乗せたりして食べます。


ところが導入してみるとこれがなかなか使い方が難しく、
ごはんと汁ものを混ぜにくいし、窪みの容量もちいさい。
また、とくにラッサムを飲むのに適していないことがわかりました。
ラッサムはごはんにかけて食べてもおいしいですが、
しかし、単独で飲み干したいお客さんも多く、
そしてワンディッシュプレイトでそれはけっしてできません。
そこで17日(土)にはステンレスの大皿のみならず、
ラッサムとデザートは小鉢も併用するスタイルに変更しました。


ところが今度は、小鉢はラッサムとデザート用という但し書きを無視して、
小鉢をいくつも使って料理を召し上がるお客様が多く、
けっきょくなんのためにワンディッシュプレイトを導入したのか、
まったく意味がなくなってしまいました。
ムゲーシュもグヤン・デヴも憤慨したものですが、
しかし、これはお客さん側の意思表示だった、と言えなくもありません。
さらに、そこに追い討ちをかけるように、
埼玉県の大宮からバイクでひんぱんにーすでに百回近くー食べにいらっしゃる
某常連さんがオウナーに意見しました、
「やっぱワンディッシュプレイトは食べにくいよ。まぜにくいんだもん。
まえの大皿と複数の小鉢に戻そうよ。」
そこでオウナーは、この常連さんの意見を聞き入れ、
18日(日)からもとのスタイルに戻しました。
けっきょくワンディシュプレイトでの提供は、
わずか3日3回だけでした。


ぼくはこの常連さんのお客力に感心しました。
どこのレストランも、店を愛してくれる常連さんの意見には弱いもの、
しかも正論であればなおさらに。
だって、もしも常連さんにこぞって逃げられてしまえば、
レストランは自信を喪失してしまい、きっとアイデンティティも揺らいでしまうでしょう。
逆に言えば、だからこそレストランのスタッフは、
それぞれ自分の好きなお客さんには、あの手この手で、接客サーヴィスに努め、
リピートしてもらうべく努力するもの。
あけすけに言えば、どこのレストランもいくらかなりともお客を選んでいます。
なお、一軒のレストラン内でも、スタッフはみんなそれぞれ好きなお客さんがいくらか違い、
だからこそお客にヴェラエティが生まれます。





せっかくですから、お客力を上げる方法を伝授いたしましょう。
まず第一に、スタッフの名前を覚えて、会話のなかで相手の名を呼ぶことです。
アムダスラビーならば、オウナーはゴヒルさん。
給仕長はグヤン・デヴ。シェフはムゲーシュ。2番手は3月3日よりPrenくん30歳です。
会話の内容はなんでもいいんです、相手の名前を覚えて、呼ぶこと。
これがもっとも大事です。


2番目は、いくら食べ放題だからといって、
あまりにもどかどか大量に食べたりしないこと、
おかわり7回とかはさすがにちょっと・・・です。
そしてけっして1時間半もの時間いたりはしないこと。
とくに店が混んできて待ち客が出た場合には早めに引きあげること。


3番目には、ちょっとなりとも会話を交わし、自分のことを覚えてもらったな、
と、おもったら2度めの来店をあいだを置かずにおこなうこと。
あまり間隔が空いてしまうと、忘れられてしまいます。
自分の存在をおぼえてもらったら、あとはひたすらリピートします。


アムダスラビークラスのお店の場合は予約は無用ですが、
(そしてそもそも土日祝のランチブッフェには予約ができませんが)、
フレンチレストランそのほかもうちょっと上のクラスの場合は、
必ず予約電話を入れて、自分の名前を覚えてもらいましょう。


4番目には、雨の日、嵐の日、雪の日など、客の少なそうな日にこそ、
がんばって来店すること。レストランスタッフにとって、
こういう日のお客さんは、心底うれしいもの。


5番目は、ちょっとめずらしい食材をプレゼントすること。
相手と好みがあえば、がぜん好印象です。


なお、番外として、「知ったかぶりをしないこと」も大事です。
たとえばぼく自身の例で言えば、ぼくは南インド、タミル料理についてはくわしいけれど、
でもパキスタン料理にはしろうとです。
またぼくはレストランフレンチにはいくらか自分の趣味があるけれど、
しかし、ワイン舌はまったくなくて、どんな高級ワインを飲んだところで
一切ありがたみがなく、豚に真珠です。
料理の話題に知ったかぶりはゼッタイやめるべきで、
必ずバレるものですし、そんなことをすれば、
レストラン関係者との信頼関係など生まれようがありません。


さぁ、あなたもお客力を上げましょう。
お客力が上がったならば、お店に自分の意見を通す可能性が生まれます。
いいえ、それはけっしてわがままを通すためではありません。
自分の好きなレストランに、いつまでも自分が好きでいられるレストランであって欲しい、
と願うからです。
レストラン側にとっても、お客さんの正直な意見がフィードバックされてこそ、
健全な経営がなりたってゆきます。
もしも誰もなんにも言ってくれなかったならば、
どんなレストランも元気を失くしてゆくでしょう。
レストランのスタッフが、あぁ、もしもあの人が来てくれなくなったら淋しいなぁ、
と、おもうようになればしめたものです。
人生は、愛し愛されてこそです。
そしてレストランは愛と幸福のためにあるのですから。





2月17日(土)ブッフェは、グルンピースプラオと
マトンカレー南インド家庭風がおいしかった。
18日(日)は、野菜ビリヤニ、チキンペッパーマサラ、
そしてイディリがおいしかった。


ぼくのレヴューを読んでくれている南行徳のグルメさん、
シンガポールで南インド料理に目覚めたスリムなお姉さん、
ナンが大好きな南インドビギナーの男性、
お話できて楽しかったです。
またお会いできる日を楽しみにしています!


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/02訪問41回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

2番目に、なにに興味を持ちますか?

もちろん一番目に大事なものは、自分の舌。
それはそうですよ、だってわれわれはみんな
幸福もしくは快楽を求めて外食をしているのですから。
いいえ、それはけっして味覚だけの話題ではないにしても。


さて、そんなあなたが胸いっぱいの好奇心を持ってわざわざ西葛西までやって来て、
オレンジ色の怪しげな看板に臆することなく(ただし、ほんとに大丈夫なのかなぁ、
と心配もしつつ)地下へ降り、
半信半疑、扉を引いて、心配しながらインド系の人の接客を受けつつ、
おっかなびっくり料理を食べてみて、
奇跡的にも(?)、「おぉ、超おいしいじゃん!」と感じたならば、
そのときあなたは「アムダスラビーの客」の一員です。


(むろんこういう体験は、
ヴェヌスでもサウスパークでもアーンドラでもナンディニでもシリバラジでも、
場合によってはミナミキッチンでも起こりうること、
相性、あるいはもしも劇的に言うならば、運命のしからしめるところです。
上記のような名店および準名店群のなかで、どこをもっとも好きになるかは、
けっして論争点ではありません。
むしろ、南インド料理好き同士、みんないくらか仲間です。)


さて、こうしてもしもあなたがアムダスラビーの料理を好きになったとして、
次に、なにに 興味を持ちますか?
南インド各州料理の地域様式に?
そのサブカテゴリーであるところのタミル料理に?
ムゲーシュ料理長に?
ハンサム給仕長のグヤン・デヴに?
タンドリー担当のジャバル・シンおじさんに?
あるいは、このどくとくなレストランを作り出し、維持し、経営しているゴヒル夫妻に?
はたまた、土日ランチの日本語関連ヴォランティアのジュリアス・スージーに? 
(ごめんごめん、わかっているよ、
ぼくに関心と好意を持つお客さんは、現状ではせいぜい5人ていどです)。


いいえ、もっと深い関心を持つ人もまたいるでしょう。
インドにはどうして言語が22もあるの?
いったいどうやって他州の人とコミュニケーションを取るの?
ヒンドゥー教徒は、どんな価値観をもっているの?
お釈迦さまはヒンドゥー社会のどういうところと闘ったの?
カースト制度は過去のもの? それともいまなお生きてるの?
少数派であるところのムスリムやシクやクリスチャンにとって、インドはどんな社会なの?
インド人がもっとも大事にしているものはなに?
かれらには社会日本および日本人はどう見えるの?


この、「2番目になにに興味を持ちますか?」という問いと答えこそが、
おもいがけず、インド系料理好きの、あなたの未来を決定してゆきます。
むろんそこに唯一の正解などあるはずもありません。


いまぼくはこの文章を書きながらスタッフ全員の顔をおもいうかべます。
あるいはかれらはみんな全員、「2番目には、ぼくに、わたしに、関心を持ってくれよ!」
と、おもっている「かも」しれません。
同時に他方で、そんなかれらもまた、アムダスラビーを好きな人たちのことを、
おおいにうれしがりながら、たいへんに関心を持っています。
それはそうですよ、自分が働いているレストランを愛してくれる人が、
いったいどんな人なのか、興味を持たない人はいません。


2月11日のランチブッフェでは、
アンブール・チキン・ビリヤニに、エッグカレーをかけて食べて、
超おいしかった! 
プレインウタパンにココナツチャトニをつけて食べるのも、たのしかった!


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2018/02訪問40回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

いろんな言語が怪しく飛び交う、陽気な競技場。

ぼくを、あなたを、夢のような官能に誘うインド料理は、
いったいどんな社会が産み、育ててきただろう?
そしてまたそのサブカテゴリーとしての、各地域の料理小世界群は、
調理法も、スパイス使いも、料理名の言語さえもそれぞれいくらかなりとも違って、
まったくもって統一性を欠いているのは、なぜだろう?
なんというまとまりの悪さだろう!
むろんそれはけっして料理のみにとどまるものではない。
そもそも、これこそがインドなのだ、と言えるような
(垂直方向、水平方向をともに貫く)共通の文化的枠組は、
果たして存在するだろうか?
こうした疑問が群がり生まれる原因は、
広い国土、複雑な宗教事情、(制度的には過去のものになったとはいえ、
いまだインド社会をいくらかなりとも縛っている)カースト制度などいくつかあるにせよ、
しかし、まず第一にはインドの、26もの公用語を持つ、そんな多彩な言語環境による。
ここではタミル料理レストラン アムダスラビーを例に、考えてみたい。





レストランの開店の準備が整って、ひと段落ついた頃、
給仕長のグヤン・デヴがぼくに言った、「手を開いて。」
ぼくは掌を広げた。
するとグヤン・デヴはぼくの掌の上に握り拳を突き出して、微笑んだ。
そしてかれは拳をそっと開いた。
樹の根っこみたいな黒い乾燥した塊が、ぼくの掌の上に落ちた。
グヤン・デヴは言った、Eat!
おそるおそる、ぼくはそれを口にした。
ぼくは言った、「おぉ、スクティじゃん!」
噛み心地があって、辛味をはじめとしたスパイスの深みがある。
スクティとは、ネパール人が(水牛肉や)
マトンで作るスパイシーなジャーキー(干し肉)である。
グヤン・デヴの親戚の、レストラン ムナルの料理長 チンタマニがこしらえたそうな。
ぼくは言った、「おいしい!」


ヴィデオプロジェクターの表面では、インド白人のシャー・ルク・カーンが、
美女とともに緑の草原で高らかに愛を謳いあげている。
タンドール担当のジャバル・シン(デリー出身)が、
作業をしながら、満面の微笑みでそれをちらちら眺めている。
シャー・ルク・カーンは、
もっともメジャーなマイノリティであるところのムスリムでありながら、
しかし、ほとんど全北部インド人たちのあこがれのマトだ。
男たちはみんなおもうのだ、
自分もあんなふうにかっこよく、そして美女に愛されて、
ふたりで草原でダンスしたり、大きく両手を広げて、
詩のような言葉で、愛を謳いあげることができたら、
どんなに素敵だろう。
むろん女たちもまたおもう、
あぁ、もしもシャー・ルク・カーン様にわたしがあんなにも熱愛されたなら、
どんなに素敵かしら。
グヤン・デヴもまたネパールの nearly 白人で、背が高いゆえ、
画面のなかのシャー・ルク・カーンを微笑んで眺める、
まるで自分の遠い友達であるかのように。


他方、料理長のムゲーシュは不機嫌そうにぼくに訊く、「シャー・ルク・カーン、好きかい?」
ぼくは答える、「ぼくはボリウッド系ではアーミル・カーンが一番好きだけど、
でも、シャー・ルク・カーンも好きだよ、優男でかっこいいじゃん。」
ムゲーシュは吐き捨てるように言う、「あいつはかつておれのアシスタントだったよ。」
ぼくは苦笑する、Was it a joke? 
実はムゲーシュは、南インド、タミルの、淡い褐色の肌の誇り高いドラヴィダ男で、
北インドのヒンディ文化~ボリウッド映画は、ほとんど他人の文化なのである。
タミル映画スターと言えば、まずはラジニカーントであり、
志村けんと千葉真一を併せたようなキャラクターである。
ボリウッド映画を「swanky でスカした東京文化みたい」と喩えるならば、
他方、タミル映画は、笑って踊って冒険活劇ラヴロマンスなんも一緒くたにしたもので、
「吉本新喜劇を伝統とする大阪文化」に似ている。
ムゲーシュは、タミル語~タミル文化を愛し、
ボリウッド映画を観るくらいならば、アメリカ映画を好む。
ムゲーシュはタミル語と英語をしゃべり、大卒ながら学校でヒンディ語は学んでいなくて、
来日後、インターネットで少し覚えたていどだ。
(インドの国語はヒンディであるという公式認定は、
しかし必ずしも現実に即してはいない。しかもまず最初にヒンディ国語説を大声で否定するのが、
full of pride なタミル人たちなのである。)
けっきょくムゲーシュは他のスタッフとしゃべるときにはいくらかヒンディを使いはするものの、
しかしオウナー夫妻としゃべるときはもっぱら英語でしゃべる。
かれの英語は、欧米在住経験がないわりには、
なるほどハリウッド映画好きだけあって、
fluent で、ファッショナブルで、いかにもいまどきの若者っぽい。
かれがよく使う That's it! (それなんだよ! ~まったくそうさ!)は、
アムダスラビー内で、みんなが使うようになったものだ。


なお、アムダスラビーのオウナーのゴヒル夫妻は、
西インド、ムンバイの人たちで、かれらの属するマハラシュートラ文化のみならず、
いくらか重なり合うところの北西インドを覆うヒンディー文化に誇りを持ち、
なおかつ同時に、
かれらにとってはいくらか異文化であるところの、南インド料理を深く愛している。
ゴヒル夫妻は、ムゲーシュとは英語でしゃべり、
他のスタッフとはヒンディでしゃべる。
ぼくとしゃべるときは、日本語と英語が半々くらいになる。
かれらの英語は(いかにもミドルクラスらしく)きちんと時制があり、
格変化もともなったもので、ヴォキャブラリーもたいへんリッチで、
すなわち、話す/聞く のみならず、読み/書き の厚みも感じる
端整で綺麗な英語だ。
しかもゴヒルさんの奥様は、社会人的日本語が完璧であるのみならず、
ふたりのお嬢さんをお持ちのせいもあって、
ふさわしい文脈において、正しく語尾上げで"Kawaii!"と言うこともできる。
なお、ご主人のゴヒルさんのしゃべる日本語は、いくらかぎこちないものの、
ただし、日本語をなるべく正確に使おうとする態度に誠実味がある。
ゴヒルさんはアムダスラビーのtwitter にいつも書く、
「今では新しい表情で皆さんを待っています!!」
このフレーズが、ぼくは大好きだ。


ぼくはちょっとだけながらグヤン・デヴに、接客用の日本語を教えてあげたりするし、
また、ムゲーシュを焼肉屋やヤキトリ屋へ連れて行って
日本文化を紹介して遊んだりもするのも好きだ。
かつてディナサヤランは、ぼくがなにかを問い返すときについ口にする
"Nani?"(←語尾上げ発音)とか"Wakaranai!"
という日本語を、おもしろがっておおげさな身振りとともに、よく囀っていたものだ。
ムゲーシュはぼくがよく言う"Sugoineee!(=Great!)"とか、
"Usotsuke!(No kidding! ~Don't tell a lie!)"とかをまねして口にしておどける。
ついでながら、ぼくのしたしいインド食材屋のマニカンデンは、
ぼくとしゃべっているときに、"Sohnannda?"という、ぼくの口癖を口にして遊ぶ。
こういう脊髄反射のような言葉は、誰だって母語になるもので、
ぼくのそんな日本語だけがよく伝染し、そこにぼくは奇妙なおもしろさを感じる。
他方、ぼくが使えるヒンディは、"Namaste!(こんんちわ~ありがとう)"、
"Syukuria(ありがとう)"、"Nehin chaie(要らねー)"、
Paisa (カネ)、"Sasta(値段をまけろ!)"、"Charo Charo! (行こう!)"だけだ。
タミル語は、"Wanacome(こんんちは)"、"Nandri(ありがとう)"、
"Kanjam kamipanunga(値段をまけろ!)"、
"Adankokkamakka!??(なんじゃこりゃ!??)"、
"Pakkaram!(じゃあまたね)"だけだ。
われわれがいかにプアなヴォキャブラリーでもってゆたかな意思疎通(???)をはかっているか、
おわかりいただけるのではないかしら。
はやいはなしが、どんなにつたなくとも英語を使わなくては、どうにもならない。


なお、ぼくの英語は、発音は「けっしてひどくはない」ていど、
格変化も時制の使い分けもできるし、
ヴォキャブラリーはけっして貧相というほどではないものの、
ただし、ぼくは欧米在住経験がないばかりか、
アメリカ映画をあまり観てないし、
英語の本の読書量も少ないゆえ、まったく流暢ではないし、
平易な語彙とたんじゅんな構文でもって、
ときにいくらか難しいラテン語系の言葉を混ぜるし、
話すスピードも遅いので、
かしこいんだかバカなんだか判然としないうえ、文化階層的な所属もよくわからない、
いかがわしいしろものである。
おもえばぼくが話したり書いたりする日本語もまた、
おしゃべり文体のなかに、ときどき人文科学系の学術語が混じりもすれば、
文芸的な修辞を使いもする、たいそう非規範的なもので、
けっきょくぼくは、(使用する日本語の水準においてさえも)、
怪しい(suspicious な?)奴なのだろう。
ましてや英語においては・・・。


ムゲーシュはボヤく、「(前任の料理長)ディナサヤランがいた頃は、
ディナとおれで、タミル人が多数派だったけど、
しかし、それがいまじゃタミル人はおれだけだよ。」


アムダスラビーは宣伝文句のとおり「本気の南インドレストラン」ではあって、
また、東京の1ダースほどの名店群のなかの1店ではあるけれど、
他の名店群同様、いくらかなりとも北部インド料理をも提供している。
ア・ラ・カルトは言うに及ばず、
ひじょうに南インド料理らしさを前面に出している土日ランチブッフェにおいてさえも、
さいきんは多少、北部インド料理をも含めている。
たとえば、ダル(豆のポタージュ)、ボンダ、ひじょうに稀にはグラブ・ジャムン、
そして、月に1~2回はナンも登場する。
アムダスラビーに似合うパンは、まずはパロタであり、
準じて、ウタパムであり、イディリであって、
むろんそれらの登場頻度は高いものの、
ただし、他方、ナンがなくちゃ許してくれないお客さんもいくらかはいて、
そこでちょっぴり妥協した結果である。
この小変革を多少なりとも推したのは、給仕長のグヤン・デヴである。


日本人は自分の国を単一文化とおもいやすく、
そこでついインドについても
ざっくり北インド、南インド、東インドに分けて、
それぞれの文化を理解しようと試みがちだけれど、
しかし、それらはいずれもまったくもって一枚岩ではない。
それどころかインドはどんな地域のどんなちいさな集団であろうと、
たいていは無数の小世界をゆるく束ねたようなものであり、
みんなそれぞれ「おれの文化がいちばん!」とおもっている者同士で、
自慢競争をし、ときに相手の文化を陽気に罵倒し、
その場その場のささやかな文化政治闘争、あるいは文化の覇権争いを繰り広げる、
遊び半分で、無邪気にじゃれあいながら。


2月3日と4日のランチブッフェでは、
3日の「ミックスダルマサラ」が、
緑ムング豆、黄ムング豆、トゥール豆、マスール豆、チャナ豆を贅沢に使った、
深い奥行き感のあるスパイシーポタージュですばらしかった。
4日の「鯖のコルマ」もまた素敵においしかった。
輪切りの鯖を揚げてから、
グレイヴィーに投入し、マイルドでエレガントに仕上げてあった。
(これまでアムダスラビーの魚カレーと言えば、
つねに一貫してタマリンドの酸味仕上げだったから、余計に印象的だった。)


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/01訪問39回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

アンブール・マトン・ビリヤニ!

1月28日(日)のランチブッフェのメインは、
前日には「マトン・ビリヤニ」として告知されていたものの、
しかし当日朝、ムゲーシュ料理長はぼくに言った、
「料理名は、アンブール・マトン・ビリヤニって書いてくれ。」
おそらくムゲーシュは前日告知した後、さぁ、どんなビリヤニを作ろうか思案していて、
結果、アンブールスタイルに決めたのだろう。
ご存知のとおりビリヤニは、世界でいちばんおいしい炊き込みごはんで、
インド各地はもとより西アジア全域で作られていて、
地域、民族、宗教、はたまた料理人の個性によって、仕上がりがいくらか違います。
ぼくは訊ねた、「アンブールって、どんなとこ?」
ムゲーシュは答えた、「Good place!」
ぼくはおもった、出たよ出た出た、インド人の典型的なsuper laid-backな返事。


ま、それはともかく、しあがったアンブール・ビリヤニは、
その香りは強く、立体的で、また骨つきマトンの肉汁が、
バスマティ米のひと粒ひと粒に染み渡り、
なんとも官能的でリッチな食べ心地。
チリ・エッグ・マサラ(卵カレー)をかけて食べるとまたおいしい。
ビリヤニに茹で卵はベストマッチングだ。


しかもこの日のパンは、イディリ(とレッドチリチャトニ。)
ほのかな酸味のある蒸しパンである。
ウラド豆とイディリ米で作ったペーストを寝かせて、
いくらか発酵させたタネを専用の蒸し器で蒸し揚げる。
このイディリをチリチャトニにつけて食べるも良し、
はたまたサンバル(けんちん汁)につけて食べるも良し。


シメジとロビア豆のコルマもおいしい。
いやぁ、その他、すべていい感じ。
すばらしいランチブッフェだった。


家へ帰って調べてみると、
アンブール(Ambur)は、タミル・ナドゥ州にあって、
画像検索してみるとこんなところ。
https://www.bing.com/images/search?q=Ambur+tamil&FORM=HDRSC2
アンブールは、チェンナイとバンガロールのあいだを流れるPalar 川の河岸にあって、
もともと徴税官の多く住むところで、米の生産と皮工業が盛んで、
そしてまたヒンドゥーよりもムスリムの多い場所だそうな。
なるほど、ハイデラバード同様、ムスリムの多い場所は、ビリヤニ自慢の都が多そうだ。
なお、アンブールは米の産地として名高いけれど、
しかしビリヤニやプラオに限っては、
インド北部~パキスタンを産地とするバスマティを使うことが多い。
パラッパラの炊き上がりを好むゆえだろう。
他方、タミルのヒンドゥーとてビリヤニ好きとしてはけっして負けていない。
かれらのビリヤニは、やはりバスマティを使うことが多いものの、
ややはんなりもっちりして、炊き込みごはんっぽさがやや強い。


ヒンドゥーたちとつきあっていると、
かれらのなかにムスリムへのいくらかの嫌悪や警戒心を感じることがある。
実はそんなかれらの多くも、ムスリム・スター俳優のアーミル・カーンや、
天才音楽家のARラフマーンならば大好きだったりするのだけれど。
いずれにせよ、もしもムスリムとヒンドゥーの出会いがなかったならば、
歴史的に、けっしてビリヤニは生まれなかっただろう。
そしてビリヤニのないインド料理など、魂が抜けたようなものだ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2018/01訪問38回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

どうしてランチブッフェでは、バスマティと日本米をそれぞれ出してるの?

さいきんインド料理好きのあいだで、
「南インド料理にふさわしいコメはなにか?」
というトピックが話題になっていますね。


その背景にはこんな事情があります。
インドには数百種のコメがあり、広い選択の幅があるのに対して、
対照的に、日本政府は日本米を保護するがゆえ、外米にキロ341円の税金を乗せ、
しかも輸入がまたけっしてかんたんではありませんから、
結果、日本で買えるインド米は、
わずか数種のバスマティ、ポニーライス~ソナ・マスリ、
その他は、イディリライスと、あとは
バングラデシュのセラライスとマダムライスくらいであるがゆえ、
インド料理にどんなコメを選ぶか、それはかなりの難問です。


ある人は言います、「日本で人気のバスマティは、
パンジャブ地方からパキスタンの方にかけてのコメであって、
しかもどくとくの香りも強いし、
たとえビリアニにはふさわしくても、
でも、南インドのミールスには合わないんじゃないの?」
なるほど、それはそれでうなずける意見ではあるかしらん。
でも、同時に、バスマティのかろやかなおいしさもまたなんとも魅力的で、
ミールスもまたバスマティで食べたいよ、
という気持ちもまたあって。
はい、まことにもってぼくは優柔不断です。
はたまた、人によっては、南インドミールスにはポニーライスや、
そのブランドたるソナ・マスリでなくちゃ、という意見も聞きます。
ぼく自身はああいうコメは古米みたいにぼそぼそしていて嫌いですが、
しかし、あれが好きなんだ、という人もまたいるからこそ、
世の中はおもしろい。


さて、ぼくが興味深くおもうと同時に、影響を受けたのは、
アムダスラビーのインド人のお客さんたちのおコメの好みです。
アムダスラビーは、ビリヤニやプラオには必ずバスマティを用いますが、
同時に、必ず日本米も用意しています。
ビリヤニやプラオがメニューにのぼらない日は、
バスマティと日本米(白ごはん2種)を用意します。
日本米は、おコメのプロがブレンドした多産地混合米で、
値段は安いけれど、おいしいおコメです。


さて、アムダスラビーのインド人のお客さんたちの多くは、
バスマティを使ったビリヤニやプラオをいかにもおいしそうに召し上がると同時に、
おかわりでは、お皿に日本米を盛って、そこに一方からラッサムを、
他方からサンバルをかけて、猫飯にして食べます。
そう、白ごはんとしては、バスマティよりも日本米の方を好むインド人が多いんです。
ぼくは、なるほどな、と、おもう。
つまり、けっきょく猫飯にして食べるんだから、
あらかじめしっとり炊けている日本米の方がおいしい、というわけです。
なお、タミルには百種を越えるコメがあって、
日本米に似たウェットに炊きあがる米もけっこうあるらしい。


ついでに言うと、アムダスラビーのスタッフが、
カードライス(ちょっとだけ手を加えたヨーグルトかけごはん)を食べるときも、
必ず日本米を選びます。バスマティは絶対に選びません。
他方、繰り返しますが、ビリヤニやプラオはバスマティでなくちゃ、
という趣味を持っています。
それはそうです、香りはいいし、かろやかだし、
南インド人だからといってバスマティをあきらめる必要などどこにもありません。
もっとも、これは東京のコメ事情が反映していることがらであって、
かれらもまたインドにおいては、自分の好みのインド米を自由に選んで、
食べることでしょう。


そんなわけで、ぼくはサンバルやラッサムをかけて食べるにあったっては、
バスマティを選ぶ日もあれば、ときどきは日本米を選ぶ日もあって、
日によって、愉しみ分けています。




さて、きょう1月20日(土)のランチブッフェは、
こんなメニューだった。


トマト・ビリヤニ(バスマティ)
ヴェジタブル・ウタパン&ココナツチャトニ
ヴェジ・パコダ
ポテトポリヤル
蟹肉入りラッサム
ソヤ・チャンク・パッタニ・コルマ(インドコーヤドーフ入りマイルドカレー)
イエロウ・ダル・マサラ(いわゆるダル、マメのポタージュである。)
チキン・ヴァルタ・カレー
ムングダルパヤサム(デザート)
グリーンサラダ
多産地混合日本米
ブラックコーヒー


いつもながら夢のようにおいしいブッフェだった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2018/01訪問37回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

きみ知るや、タミル人の荒ぶる魂を。

今年もタミルナドゥ州の収穫祭、
ポンガルフェスティバルの季節がおとずれた。
アムダスラビーも1月14日(日)は、ポンガルスペシャルブッフェとして、
オールヴェジメニューでした。


ヴェジタブル・ビリヤニ。
ほうれんそう入りワダ。
ダイコンのスパイシー炒め。
ラッサムスープ、ニンニクを効かせて。
カイカリ・マンディ(あれこれ野菜のポタージュ)。
カダムバサンバル(あれこれ野菜のけんちん汁)。
ゴビ・マンチュリアン。
パロタ(うずまきパン)。
スウィート・ポンガル。(デザート)
ミックス・ビーンズ・サラダ。
マンゴー・ラッシー。
パパド。


ヴェジビリヤニはかろやかで華やかにおいしい。
カダムバサンバルやカイカリマンディは優雅でたのしい。
ゴビマンチュリアン(カリフラワーのコロモ揚げ、中華風)も、
たいへん上手なもの。
また、コメの砂糖煮スウィートポンガルが、いかにも収穫祭らしい。
ぼくは魅惑の楽園を満喫した。





さて、収穫祭は、日本にも秋祭りがあるし、
キリスト教圏にはサンクスギヴィングデイがあるように、
世界中どこにでもあるものだけれど、
ただし、タミルでは4日間にわたって祝い、
かつまたこの祭りのなかに、
檻から放たれた荒れ狂う雄牛に、若者たちが飛び乗って、
なんとかして両手で雄牛にとりつけられた「こぶ」をつかまえ、
振り落とされずにどれだけ長い時間つかまえていられるかを競う競技
ジャリカツが組み込まれています。
20秒以上つかまえていられれば、優勝の可能性が高い。
上位入賞者には、賞金や、バイク、冷蔵庫などの商品がもらえます。
これは紀元前から続いている伝統的なスペクタクルで、
毎年優勝者は一人だけ、死者は百人にものぼります。

https://www.bing.com/videos/search?q=jalikattu&&view=detail&mid=522199A4EC45E6A129FC522199A4EC45E6A129FC&FORM=VRDGAR


去年は、動物愛護協会がこれを非難し(!)、危うく中止になりかけたものの、
しかしタミルでは中止反対のデモが大々的に繰り広げられ、
みんな口々に" We want Jallikattu!" と叫びながら街を練り歩いたもの。
しかも警視庁に放火があったり、すさまじい騒乱になって、
けっきょく、ジャリカツは延命した。





ぼくはタミル・ナドゥ州の友達や知り合いが多く、
たいていみんな人懐こく、冗談が大好きで、
映画館で映画を見るときになんとも熱狂的に鑑賞し、
また街で友達同士が会えば、互いに陽気に悪口の応酬をおこなって、
友情を維持する、そんな連中だ。
日本で言えば、大阪人に気質が似ている。
そんなタミル人に、このジャリカツのような、
荒ぶる心が息づいていることに、ぼくは驚く。


また、インドでは農民の社会的な地位はけっして高くはないし、
農村には(日本で言えば、深沢七郎の描く小説のような?)
閉鎖社会の暗がりがひそんでいるに違いないとおもっている。
おもえば前任の料理長ディナサヤランも village guy (農村の人間)で、
レストランでは陽気で、また家族をたいそう愛してもいたけれど、
同時に、心に深い屈曲を抱え、休日はたいていひとりで朝から晩まで酒を飲んでいたものだ。
そんなかれはポンガルフェスをめっぽうよろこんだもの。
他方、インド社会はけっして農民に十分な敬意を払いはしない癖に、
しかし、タミルナドゥ州では都市に暮らす人間も含めてみんな熱狂的にこの収穫祭を祝う。
ぼくにとってインドはわからないことだらけだ。
しかもつきあえばつきあうほど謎は深くなる。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2018/01訪問36回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

誇り高いドラヴィダ人の世界。

アムダスラビーは、「本気の南インド料理店」ですが、
ただし、スタッフの人種も帰属する文化もひじょうに混交しています。
オウナーのゴヒル夫妻は、西インド、ムンバイのビジネスマン&キャリアウーマン。
かれらは、いくらか異文化であるところの、南インド料理を深く愛しています。
料理長のムゲーシュは、タミル・ナドゥ州チェンナイに生まれ育った大卒のインテリ料理人で、
南インド料理にたいへんな誇りを持っています。
2番手は、ジャバル・シン、北インド、デリーの方の出身のベテラン料理人。
かれはおもにタンドール料理を担当しています。
給仕長のグヤン・デヴは、中央アジア(ネパール)の白人で、
見るからに中央アジアの白人で、ハンサムで背が高く、一部の女性客たちに人気です。
グヤン・デヴは、南インド料理に対して、(そもそも他人の文化ですから)
比較的中立的な立場です。


開店まえの調理中も、開店後も、YOUTUBEでインド音楽やインド映画をかけます。
グヤン・デヴはにこにこ微笑んで、たいていサンスクリット語のマントラをかけます。
画面では、シヴァがコブラを首に巻きつけ、三叉の槍を握って、威張っていたりします。
ぼくもお調子者ゆえ、サンスクリットなど読めもしない癖に、
アルファベット表記のマントラを、まねして、さえずったりします。
他方、ムゲーシュは、そういう光景を、ときに、嫌そうに横目で見たりします。
かれはぼくに、「わかったわかった、enough!  Too much! 」なんて言ったりします。
そしてかれは、タミルの美女が踊る古典舞踊に、番組を切り替えたりします。


ぼくは、ムゲーシュのイラッとする気持ちが、ちょっぴりわかります。
なにしろ、アムダスラビーは「本気の南インド料理店」であるにもかかわらず、
いまでは、料理長のムゲーシュが、たったひとりの南インド人(=ドラヴィダ系)なんです。
実は、インドは北部人と南部人は、お互い相手のことを外国人だとおもっています。
そのくらい文化が違っています。
北部のインド人たちの多くが、中央アジアの白人の血がいくらか混じっていて、
「日に焼けたヨーロッパ人」みたいに見える人が多くいますし、
比較的に背が高い人が多く、鼻も高く、なかにはインド白人もまたいます。
これを裏付けるように、言語学では、「インドの古語たるサンスクリットは、
古典ギリシア語やラテン語と多くの共通性を持つ」と言われていて、
現代では、その知見が20世紀の考古学の発見とどのように擦り合わせられるか、
議論されています。
対照的に、ドラヴィダ系は、北部においてもインド原住民という説もあり、
(同時によりいっそう南部に多く住んでいて)、肌の色が黒く、背もちんちくりんで、
鼻がそれほど高くありません。
肌の色を別にすれば、かれらはわれわれ日本人によく似ています。
ムゲーシュは、わりとハンサムなドラヴィダ系ではあるけれど。


そんなムゲーシュは、
元旦にハリクリシュナ寺院へ行くようなヒンドゥー信仰を持ってはいるものの、
あれはもしかしたらクリシュナ信仰にスポットを当てた宗教だからではあるかもしれなくて。
また、同時にかれは「南インドにおいて新解釈されたヒンドゥー教」は大事にしているにせよ、
しかしながら、いわゆる古代のヴェーダ時代由来のヒンドゥー教には、
必ずしも全面的には肯定できない、複雑な気持ちがあるのではないかしら。
なぜって、古代ヒンドゥー教は、イラン系白人が北インドに侵入してきて、
先住民たるドラヴィダ族の文化を編集し、かれらを支配するための道具であり、
しかもそこでは白人たちはドラヴィダ人に対して、
必ずしも十分な敬意を払ってはいないからではないかしら。
もっとも近年では「白人はみな共通の祖先から派生した」という
アーリア人説は否定されているようですが。
さらに驚くべきことには、インド社会の秩序は、古代ヴェーダ時代に作られた枠組が
現在なおあるていど息づいていて、
これに起因し、インドにおいて、人種にまつわる対立はいまだにつづいています。


実はこの話題は、(けっしてムゲーシュのみならず)
ドラヴィダ系たる南インド人たち、
顕著にはタミル・ナドゥ人たちの、フィロソフィを理解するうえで、
けっこう大事なものです。
たとえば20世紀初頭、パンジャブ地方に、インダス文明の遺跡が発掘され、
謎の言語や、立派な文明が存在したことが、あらためて注目を集めたもの。
そしてこのインダス文明が、ドラヴィダ族の文明であったことが大きなトピックとなりました。
この事実におおよろこびしたのが、南インドの、とくにタミル・ナドゥ州の、
誇り高いドラヴィダ人たちでした。
「ほら、見ろ。ヴェーダ時代に先立って、おれたちドラヴィダ族の立派な文明があったんだ。
しかもおれたちの文明こそが、イラン系白人抜きの、純粋インド文明なのだ。」
かれらのそんな気持ちがよーーーーく伝わってきたものです。
たしかに、かれらのそんな気持ちもわからないではありません。
いずれにせよ、考古学も罪な学問です、なぜって、おもいがけず、現代の生々しい政治-文化闘争に、
燃料を投下してしまったのですから。


さて、本題に入りましょう。
1月8日(祝)のランチブッフェ。
まずは、香り高い軽やかな「ベジタブル・プラオ」に、
まったりおいしい「チキンチェテイナド」や
豆のうまみがリッチな「グリーン・ムング・ダル・マサラ」をかけて食べた。
これがなんともおいしい。
「ミックス・ヴェジ・カレー」もクリーミーにおいしい。
カリッとクリスピーな「チャナダルワダ」もいい。
興味深いのは、オクラのてんぷら「ビンディ・ジャイプリ」、
しかもきょうのパンは、「ナン」である。
デザートは、揚げパンのシロップ漬け「シャヒ・トクラ」。


全体的に、このラインナップは、
南インド世界のなかに、いくつかの北インド料理が招かれ、包摂されています。
ダルが、オクラのてんぷらが、そしてナンが。
ぼくはそこにムゲーシュの誇り高いドラヴィダ魂を見ます。
ただし、同時に忘れてはいけません、そんなアムダスラビーを経営しているのは、
西インドのミドルクラスのゴヒル夫妻なのです。
この両義性~ひいては多様性が、アムダスラビーの魅力の源泉です。
いやぁ、インドって、文化のどこを見ても、あまりにも多様性が息づいています。
言い方をかえれば、なにからなにまでまったくもってまとまらないようにできているんです。
そしてそれこそが、創造性の源になってもいるんです。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2018/01訪問35回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

じゃがいも と インドコーヤドーフ(Soyachunks)のコルマ。

1月6日(土)のランチブッフェは、まずは、
「グリンピースのプラオ(炊き込みごはん)」を中心に、
左に「チキンコルマ」を、右に「じゃがいもとインドコーヤドーフ(soyachunks )のコルマ」を、
下に「ほうれんそうと黒ひよこ豆のスパイシー炒め(ポリヤル)」をかけて、
食べてみた。
皿の印象は、まるでスリランカプレートみたいです。
いいえ、南インド料理もこういうふうに盛って食べるといっそうおいしいんです。


まずプラオが香りよく、かろやかな炊き上がりですばらしい。
「ほうれんそうと黒ひよこ豆の炒めもの」は塩がビシッと決まっておいしい。
「じゃがいもとインドコーヤドーフ(Soyachunks)のコルマ」は、
トマトベースの酸味が気持ちよく、じゃがいもとソヤチャンクスが同量で、
食感の対比がおもしろい。


このインドコーヤドーフは、
写真のような商品で、200gで 400円ていどで買えます。
タンパク質6割、炭水化物4割、脂質0割の、
ダイエタリーフードで、ヴェジタリアンのタンパク源としても、
インドでは人気があります。


(余談ながら、去年の11月24日のブッフェでは、
このソヤチャンクをお湯で戻して、
小麦粉とベサン粉を溶いたタネにつけて、
サンフラワーオイルで揚げて、ナゲットをこしらえて、
ブッフェのなかの1品としてふるまわれました。おいしかった。)


そしてチキンコルマは優美で上品なおいしさ。
コルマという料理名は、インド全土的に使いますが、
料理の仕上がりは地域ごとに違います。
ただし、総じてマイルドで、「スパイシーなシチュー」のような趣があります。


それぞれをプラオと混ぜて、食べてゆきます。
たいへんにおいしい。


おかわりは、ほのかなお酸味の熱々プレインウタパンに
ひんやり冷たいココナツチャトニをつけていただきます。
南インドらしくて、素敵においしい。


もう1回のおかわりは、白ごはん(日本米)に、
一方からラッサムをかけ、他方からダルをかけて、
それぞれ猫飯にしていただきます。
揚げたてふかふかワダもついばみましょう。


そして最後は、サブダナパヤサム(タピオカのミルク煮、
ドライフルーツとナッツ入り)で〆ます。
う~ん、満足です!





インドはさすがヴェジタリン大国で、
ヴェジタリアンでも十分にタンパク質を摂取できる工夫がいたるところにあります。
また、お肉が好きな人にとっても、野菜9 : 肉1 くらいの比率で食事ができます。


興味のある人は、一度、インド食材店の棚を隅から隅までチェックしてみてください。
各種の豆が豊富に揃っているし、ナッツ類も豊富、ベサン粉(豆の粉)、そして
インドコーヤドーフ(ソヤ・チャンクス)、はたまたミロのような、各種麦芽飲料まで、
おもいがけない魅力的な商品がいっぱい揃っています。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


  • アムダスラビー -
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2017/12訪問34回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ぼくを3度悶絶させてくれた、年末最終ランチブッフェ。

メニューを見た瞬間、本気が伝わってきた。
並んでいる料理を見た瞬間、ゆたかさが香ってきた。
食べはじめたら幸福の頂上状態がえんえん続いた。


なんて贅沢なんだろう、
エビビリヤニに骨つきチキンカレーをかけて食べるなんて。
もっとも全12品で 1200円税込みゆえ、ビリヤニのエビはちいさいのだけれど、
それでもひかえめに役割は果たしていて、しかも
ビリヤニは香り高くおいしい。
骨つきチキンカレーは、香りもコクも肉のうまさも、
もうたまらない。


マサライディリに冷菜ピーナツチャトニをつけて食べる。
これがまたおいしいの。
ほんのり黄色に蒸しあげられたマサライディリを噛むと、
ふかふかの食感のなかにところどころ豆の食感がある。
ひんやり冷えたチャトニのコクがまたいい。


揚げたてふかふかにキーライ・ワダ(ほうれんそう入りがんもどき)を、
オクラのサンバル(けんちん汁)につけて食べるのも、楽しい。
きょうのサンバルがまたすばらしくおいしい。
ふしぎなものだ、サンバルはあたりまえすぎて、
なんの感動もしない日もあれば、
きょうのように超感動する日もある。
トゥール豆のまったり感、トマト、タマネギ、オクラのわずかのバランスのゆえかしら。


ミックスヴェジポリヤルも、カリフラワーのシチューも、
そしてキューリとトマトのサラダも良い脇役を務めていた。
ドリンクのバダムミルクも、デザートの小麦のパヤサムも。


そんなわけで、アムダスラビーの今年最後のランチブッフェは、
たいへんにすばらしかった。
ぼくは3度、悶絶した。
ありがとう、アムダスラビー。
もはやアムダスラビーは、
ぼくの人生の一部だもの。


さて、ひかえめに申し添えるならば、
来年のアムダスラビーは、ディナーの挑戦をするといいんじゃないかしら。
少し高値つけをして、創造的な料理をふるまう。
ロンドンの、ベナレスなど参考にしてみたらいいんじゃないかしら。
https://www.benaresrestaurant.com/


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


  • アムダスラビー -
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2017/12訪問33回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

インド料理世界の成熟。

アムダスラビーの土日ランチブッフェは、
12種の料理による南インド料理の世界を表現していて、
いつも同じように見えながら、いいえ、毎回ちょっぴり違う。
しかもムゲーシュが料理長になってから、ヴァラエティが増した。


たとえばきょう12月30日(土)のランチブッフェで言えば、
堂々たる南インド料理が並ぶ。
蟹のラッサム(実に南インドらしい)、
キャベツとグリンピースのポリヤル(とってもタミルらしい)、
じゃがいもとひよこ豆のポタージュ(コルマ)、
そしてデザートのパヤサム(まさにタミル)である。


他方、その南インド料理世界のなかに2割ほど北インド料理が招かれる。
きょうのメニューで言えば、
ダル・パラク(豆のポタージュ、ほうれんそう入り)、まろやかでおいしい。
ナスと鶏挽肉のカレー、(キックが効いて、ナスがグレイヴィを吸い込んで、
挽肉とあいまっておいしい)。
そしてナンである。
(たいていはパロタを出す日が多いし、
ときどきイディリを出す日もある。
そんななかたまに、きょうのようにナンを出す日もある。)


料理人たちはそれを愛嬌たっぷりに「ジャパニーズ・ナン」と呼ぶ。
なぜって、それは、北インド、パンジャビ地方のパンを、
わが日本のインドレストランがいくらかデフォルメしたものだから。
ただし、かれら自身もまたこのジャパニーズ・ナンをおいしそうによく食べる。
そこには余裕のある遊びの感覚がある。





おもえば東京のインド料理シーンも成熟したものだ。
なぜって、インド以外の世界中のインド料理は、
ずっと長いこと北インド、パンジャビ料理だったものだ。
そこには歴史的事情がある。
まず、1947年のインド/パキスタンの分離独立がある。
(現・バングラデシュもまた
このときは「東パキスタン」として独立した)。
インドにとっては独立のよろこびのなかに、
大混乱と哀しみが生まれた。
象の顔のようなインドは、両耳を削がれて、独立とあいなった。
有史以来ずっと同じ国だったはずのパキスタンが、
ムスリムの国として独立してしまったがゆえ、
そっちの側に住んでいたヒンドゥたちは、
命からがらデリーの方まで逃げ延びたのだった。
このとき、この地に住んでいた料理人たちの多くは、
この大混乱に恐れをなして、
さっさとインドを捨てて、世界中に亡命したのだった。
これにて、インド以外の世界中のインド料理は、
サモサ、タンドリーチキン、ナン、
ナブラタンコルマ、ダル、
バターチキンカレー、グラブジャムン・・・になったのだった。


インド以外の世界中のインド料理のイメージが変化したのは、
00年以降である。
IT系のインド人たちが世界中で活躍するようになって、
むろんかれらは北インドのみならず、インド全域の出身者がいるゆえ、
とうぜん南インド人もまた多い。
南インド人たちは故郷の料理を食べたがる。
そこで世界の都市に、南インド料理レストランが生まれるようになった。
東京においても、エーラージ、ダバインディア、
ダルマサーガラ、アーンドラキッチン、ニルヴァナム、シリバラジ・・・と、
南インドレストランが生まれていった。
そしてアムダスラビー、ナンディニ、ヴェヌス、サウスパークが続く。
そのうえ、優れた日本人料理人たちによる名店群が
シーンにさらなるゆたかさを加えている。


そう、東京のインドレストランシーンは、
すでにじゅうぶん成熟している。
世界的に見ても、立派なものだとおもう。
ぼくはうれしくてたまらない。
しかし、そうおもうと同時に、「この先」もまた見たい。
それには「賭けを含んだ挑戦」が必要で、
そういうことにかけては、
ざんねんながら東京はロンドンにいくらか負けている。


と、なんとなく年末っぽいレヴューを書いてみたものの、
あした31日のアムダスラビーのランチブッフェは、
エビのビリヤニやマサライディリなど、
超興味深い。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2017/12訪問32回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

舌の上の、魅惑の豪邸。

インド究極の贅沢とはなんだろう?
あるいは逆に、”欲望の超克”、ひいては”無への接近”とは?


食べるまえからすでにぼくは魅惑の香りに誘惑されていた。
そのカレーを香り良く、かろやかに仕上がっている、ココナツライスにかける。
そして一口食べた瞬間に、舌の上にひとつの夢が広がった。
ココナツオイルとヒマワリオイルを贅沢に使った赤茶色のグレイヴィー。
黒胡椒(粒)のキックがあり、
赤黒く焦がしたトウガラシが辛味を主張している。
鶏肉片はグレイヴィーを吸い込んで、リッチな味わい。
シナモンスティック、クローヴ、
ベイリーフ、そしてひそかにカルパシが効いている。
そのほかグリーンカルダモン。そしてコリアンダーホール。
(むろん以上のすべてをぼくが舌で言い当てたわけではなく、
後でムゲーシュ・シェフが教えてくれた。)
なんてリッチで官能的なカレーだろう。
なんて力強い表現力だろう?
料理の形が明快である、豪奢な建築のように。
インド料理の最高の優美がここにある。


料理の名前は、チェティナド・チキン。
南インド、タミルナドゥ州の、カライクディ(Karaikudi)という街に、
チェティヤールという部族が住んでいて。
かれらはむかしから交易や金融で有名で、
インドシナ半島や、明の時代の中国にまで、事業を拡大したもの。
カライクディには、
かれらが18世紀に建てた豪邸 Chettinad Mansion がいまも残っていて、
まるでインド映画のなかの「夢のような豪邸」みたいであると同時に、
ディズニー映画のなかの、インドのラジャの宮殿みたいでもあって。
なにしろ、ほとんど城と呼びたくなるようなスケールだ。
その大きな建物の、内部に回廊が作られ、
中庭がしつらえてあったりする。
建物のいたるところに、こまやかで美しい装飾がほどこされている。
またかれらは、富をひけらかすような贅沢なスパイス使いの料理を愉しむのでも有名で、
このチェティナド・チキンはその代表です。


次にぼくは、いかにも対照的な、
もうひとつのインド文化をおもいだす。
あらかじめ断っておくならば、
一般的なイメージとは違って、
ぼく自身は、けっしてインドをことさらに宗教的な国だとはおもわない。
たとえば日本と比べても、そんなに違わないだろうとおもってはいて。
たとえばタミル人のメンタリティは、冗談好きな大阪人に似て、
無邪気で人間くさい。
ただし、それであってなお、
インドはたとえば日本に比べれば信仰が身近ではあって。
じっさい、むかしからインドには、「歳をとったら家を出て、
すべてを捨てて信仰に生きる」、そんな人生の選択肢があり、
それはひとつの「文化の型(生き方のオプション)」になってはいて。
かれらは朝から晩までヨガをおこない、
呼吸を通じて、小宇宙(自分)と大宇宙をつうじあわせる。
たいていは寺院が提供する無料の食事を食べるのだけれど、
しかし、なかには断食をおこなう人もまたいる。
インドには断食文化がある。
ムスリムのラマダンが有名ながら、ヒンドゥにもまたあって。
ガンディの断食が有名である。
それは命がけの、インド独立のための闘争だった。
もっと一般的には、お祭りのまえや、結婚式のまえに断食する人が多いらしい。
ただし、たいていの「断食」はなにかをいくらか口にしたり、
また期間を定めておこなうものである。


日本では、実利的な目的で断食が語られることが多い。
健康になるための断食である。
なるほど、朝食抜きの小断食くらいならば、
BMIと体脂肪率が高めの人には健康に良い場合もあるだろう。
ぼくもときどきやっている。
さらには、もっと本格的な断食は、
アトピーを治したり、
体の内側から浄化する効果があると言われているし、
それどころか一般的な治療では見放された難病さえも治ったという話も聞く。
しかしその他方で、下手をすると、あっというまに栄養不足になって、
髪や肌、爪が精彩を欠くようにもなりかねない。
それでもなお、きょくたんな小食に体を慣らし、
定期的に断食に挑戦していると、
やがて体から脂っけが抜け、(成人女性の場合は月経が止まり)、
いつしか体は骨と皮だけになり、骨密度も低下し、
とことんまでやれば歩行困難になってしまう恐れさえある。
むろん小食&断食では、けっして難病に勝てなかった人たちもまた多い。


だが、他方で、インドにはあろうことか、「70年以上、
まったくの飲まず喰わずで元気に生きている87歳の老人」が生きていたりする。
かれの名前は Prahlad Jani さん。
白髪の長髪。長い顎鬚。
かれは女が身につけるような赤い服を着て、アクセサリーを身につけ、
座禅を組む。ふしぎな歌を歌う。
かれは、北インド、ラジャスタンに生まれ、
7歳のときから実家を離れ、ジャングルに暮らしはじめ、
11歳のときに3人の女神が現われ、お告げを囁いた、
「もう2度と食事について憂う必要はない」と。
それ以来、かれは一切なーーーんにも飲み喰いしていないそうな。
世界には他にもこういう人たちがいるらしい。
空気を食べる人たち。ブレサリアンと呼ばれているそうな。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2017/12訪問31回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

Agni Vaisvanara ~体のなかの炎。

のどかなテンポの Mantla が流れています。
かん高い女の声がなにかを語り、合唱隊がそれに応えます。
コール&レスポンスによる、神様を褒め称える音楽。
「褒め称える」と言っても、謎の言葉は謎のまま、
(音のまま、響きのまま)唱えつづけられます。
おおらかなその歌声に溶け合うように、いい香りの料理が並びはじめます。


Green Peas Plav(basmati)(グリンピース入り、炊き込みごはん)
Chicken Kadai
Vegetable Uttapam & Spicy Chutney(ウタパム:米粉と豆粉のパンケーキと、
スパイシーディップ)
Yellow Dal Masala(いわゆるダル。豆のスパイシーポタージュである。)
Potato Pattani Korma(じゃがいもと豆のマイルドカレー)
Daikon Poriyal(ダイコンのスパイシー炒め、ココナツの香り)
Masasla Vadai(がんもどき、セミハード仕立て)
Crab Rasam(蟹肉入り、ラッセムスープ)
Green Salad
Japanese Rice
Semiya Payasam(ヴァーミセリとナッツとドライフルーツのココナツミルク煮)
Black Hot Cofee


プラオ(炊き込みごはん)が、香り良く、かろやかで、おいしい。
一方からダルを、他方からじゃがいものコルマをかけて食べると、
それだけで幸福を感じる。
ダイコンのポリヤルがまた、ダイスカットされた半透明のダイコンが、
なんとも優美においしい。
しかし、チキンカレーがまたリッチな香り、
チキンはヴレイヴィーのなかで、
微笑んでいます。


ウタパム(米粉と豆粉のパンケーキ)は細かく刻んだニンジンやピーマンが華やかで、
噛むとほのかな酸味が口のなかに広がる。
オレンジ色のホットなディップをつけると、
キックが効いて、派手な味になる。

蟹肉入りラッサムのおいしさがまたいかにもタミルらしい。

デザートのパヤサムが、ココナツミルクの優しい甘さで、
食事の最後を締めくくる。


きょうは塩使いもバッチリ決まっていて、
ぼくはムゲーシュ料理長に惚れ直します。





もしかして、南インド料理は、世界でいちばん幸福な料理ではないかしら。
まず第一に、南インドは土地がゆたかゆえ、さまざまな野菜、果物、米、麦が育つ。
しかもスパイスがゆたかゆえ、それらの魅力を最大限に活かす調理法を心得ている。
なんて魅力的な料理でしょう、(炭水化物過多にならないように、
気をつけさえすれば完璧です。)


インドには、アーユルヴェーダ、ヨガ、果てはカーマスートラに至るまで、
体を大事にする知恵に満ちています。
アーユルヴェーダには、作った料理はすぐ食べよ、とか、
ニンニクを食べすぎるといたずらに性欲が昂進するので控えたほうがいいよ、
というような知恵がいっぱい伝えられています。
いまでもインド人はちょっとナイフで指を切ったり、
股ずれをおこしたりすれば、ターメリックをまぶして、傷を治します。
またアーユルヴェーダには書かれていないものの、
ターメリックは高齢者のボケ防止に役立ち、コショウやトウガラシは体を温める。
コリアンダーリーフは多幸感を生み出す。
そのほかスパイスの英知はおもいのほか深い。
ヨガは、まさに身体知。
瞑想は、呼吸を整え、小宇宙と大宇宙を一体化させる技術。
カーマスートラは、男と女の性のよろこびをゆたかに愉しむ知恵である。


対照的に、ヨーロッパの哲学は(プラトンがこしらえた学校が体育も重要視したり、
スパルタが韓国さながらの軍事教練を必須としたり、
はたまた古代ギリシア~ローマがオリンピックの開催をはじめたにもかかわらず、
しかし、その後、近代には)身体知を
スポーツやバレエとして別枠に切り分けてしまった。
すなわち、「頭が生み出す知」と「体を使う技」は分離してしまった。
しかも、体を慈しむ知恵には、ほとんど場所を与えられていない。
ただ医学だけがある。
これはたいそう不幸なことではないかしら。


余談ながら、このごろぼくはときどき1日の食事を8時間内に押し込めて、
残りの16時間を小断食しています。
(けっして毎日ではないけれど。)
いまぼくは体脂肪率29.5%で、内臓脂肪16.0ゆえ、
小断食は体に良い。
それはぼくにとって非常に有効なダイエットであるとともに、
しかも、食事のよろこびを大きくしてくれます。
(でも、もしもあなたがすでに痩せていて、体脂肪も少なく、
内臓脂肪もたまっていないならば、
小断食はけっしてお勧めしません。
なぜって、美と健康を損なうおそれがあるから。)


先日、古代インドの知の体系、
ウパニシャット哲学の、紹介本を読んでいたら、こんな一説が現われて、
ぼくは笑ってしまった。


「人は、体のなかに炎を持っている。
炎(=エナジー)の名は、Agni Vaisvanara。
人はこの炎によって、食べた食物を消化する。
手で耳をふさぐと、ざわめきが聞こえる。
それは、Agni Vaisvanara が食物を消化している音だ。
人がこの世を去るとき、
人はもはやこの音を聞かない。」


小断食をやっている人ならば、誰だってこの音を聞く。
おなかが鳴る音を。
ぼくはおもった、
さすが、インド哲学だ。
かれらはけっして体のことを忘れない。


参考文献 服部正明著『古代インドの神秘思想』 講談社学術文庫 2005年刊


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/12訪問30回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

若さと塩。

先任のディナサヤラン料理長が、
驚くべき身勝手を発揮し、いきなりインドへ帰ってしまって、
(スタッフ全員を怒らせ、ついでにぼくをたいへん失望させて)、
そして自動的に、ムゲーシュが2番手からシェフに昇格してから、
ほぼ8週間が経った。
ムゲーシュは(陽気に愉しみながら)料理長職をこなしている。
土日のブッフェのレパートリーが多彩になって、華やかになった。
お客さんは減らなかったし、なによりもアムダスラビーの超絶級の常連さんたちが、
けっして離れなかったことは、ムゲーシュの勲章である。
アムダスラビーの土日ブッフェは、
ヴェヌス、サウスパーク、ナンディニ、アーンドラあたりと並んで、
東京のトップクラスのレヴェルにある。


さて、そういう前提の上で、ぼくがおもうに、
ムゲーシュにはふたつのちょっとした弱点がある。
ひとつは野菜のカットが粗いこと。
もうひとつは、塩使いが上品すぎて、ときどき、
(ほんの少し)臆病に感じるときがあること。
塩使いは、もう少し大胆であって良い。


塩使いは不思議なもので、料理を食べて「塩っぱい!」と感じさせてはだめで、
「うまいッ!」と感じさせなくてはいけない。
ただし、その「うまいッ!」と感じさせる料理には、
ひそかに塩が効いていて、塩こそがうまさを引き出している。
(一般に病院食がまずい傾向があるのは、減塩料理であるためである。)
すなわち塩は、存在が気づかれないほど透明でなければならない。
ただし、その透明な存在である塩こそが、
料理のうまみを決定しているのだ。
しかもインド料理にあっては、塩とスパイス効果は密接な関係があって、
たとえばフランス料理と比較すると、あきらかにインド料理の方が塩を多めに使う。
スパイス効果を派手に決めたい料理人ほど、
塩使いが多めになる。
しかし、繰り返すけれど、食べて「塩っぱい」と感じさせてはアウトだ。
アウト/セーフの線上にあるかに見えつつもしかしやはりアウトなのが、
熱々状態のときはおいしく感じるものの、
しかし冷めた状態で味見すると、
「ゲゲッ、塩っぺーよ」とバレてしまう場合だ。


塩使いでおもいだすのは、アーンドラのラマナイヤ・シェフである。
ラマナイヤ・シェフは、ちんちくりんの小太りで、
鼻の下に立派なヒゲをたくわえ、愛嬌たっぷりに微笑んで、
「わたし、ラマナイヤ」とひとこと挨拶するだけで、誰もを魅了し、
しかも2軒のレストランを大成功に導いている、
たいへんサクセスフルな料理人である。
少年時代からレストランで育ったかれにはさまざまな伝説があって、
そのひとつに、「ラマナイヤの塩」というトピックがある。


かれには(おそらくはその日の忙しさや、感情の状態で)、
ときどき、ごく稀に、塩が暴れることがある。
稀なことゆえ体験した人はそれほど多くはないはずだけれど、ただし、
その稀なときの塩の暴れ方が派手なので、伝説になった。
ラマナイヤの料理を愛し、かれを慕う人々も、
また、アーンドラの料理をそれほど評価しない人々も、
同じくこの伝説を口にする。
むろんぼくが好きなのは、ラマナイヤを慕う人たちが語るときで、
かれらはほんとにうれしそうに口にするのだ。
その気持ちはよくわかる。
そこには、「あのインド料理の第一人者が、
われらのスーパースターがめずらしく失敗した料理をぼくは、わたしは食べたよ」
そこには、ファンの、ちょっと自慢したいような、得意な気持ちがうかがえる。


(ディナサヤランも同じタイプだった。
ディナサヤランもまたスパイス効果を派手に決めるのが好きだった。
それゆえのこと、ある日かれが二日酔いの日に揚げたバジを、
ぼくは光栄にも味見をさせてもらったものの、
しかしそれらは揚げ方こそ的確で、カリッとクリスピーに見事に揚がっているものの、
その味は「塩味!」と言うほかなく、けっして客には出せず
全部捨てたことを、懐かしくおもいだす。)
いずれも、かれらがつねに" almost to the limit の塩使い" を好んでいるがゆえに、
たまに勢い余って閾値を越えてしまうことがあるという、失敗談である。


さて、12月10日のアムダスラビーのランチブッフェの話題に移ろう。
香り良いチキンビリヤニに、
ゆで卵のカレーの組み合わせが良かった。
しかし、さらにいっそう素敵だったのは、
「カブとシイタケのコルマ」が冬の暖かいごちそうで、それからまた、
「ウルライ・パッタニ・ワルワル(グリンピース入りマッシュドポテト)」が、
幸福感を与えてくれた。
「ニンジンとカボチャのサンバル」もおいしかったし、
「トマト・ラッサム」もシャープな切れ味だった。
総じてとても良かった。
したがって、このエントリーにはわずかな瑕疵を拡大している不公平が、
ややあるかもしれない。
しかし、人は資質のある良い料理人には、さらにいっそう期待してしまうものだ。


ムゲーシュは27歳。この年齢で30席のレストランのシェフを勤めるのは、
かなりかっこいいことだ。ムゲーシュには才能があり、
しかもインド人料理人にはめずらしく教養があり、しかも
性格がいくらかコドモっぽく、お茶目なラッキーガイだ。
ムゲーシュの料理はこれからさらにいっそう良くなってゆくだろう。
ぼくはそれを愉しみながら見守ってゆきたい。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/12訪問29回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

野菜の力。発酵食品 Idly の魔法。

オーストラリアの先住民たちや、
アフリカのブルキナファソの人たち、
ひいてはネパールやバングラデシュなど、
貧しい国の人たちの多くは腸内細菌叢がとてもゆたかで、
かれらの多くは健康で、しかも、
ともすれば現代栄養学的にはやや問題のある食事をしているにもかかわらず健康で、
理由はかれらがくだものや木の実や野菜や豆(食物繊維)をたくさん食べるかららしい。


ところが、そんなかれらの環境が都市化して、
かれらがファストフードを食べはじめるやいなや、
かれらはあっというまにそれらに魅了されて、
それらは食物繊維がきょくたんに少ないゆえ、
おのずと腸内細菌叢が貧しくなって、
結果、糖尿病になってしまう人が多いらしい。
まるで、貧しいことが健康の条件で、
いくらかカネ持ちになるととたんに糖尿病になってしまうかのような、
文明の逆説がここにある。


日本も糖尿病の診断基準が生まれたのは1960年のことで、
それまでは糖尿病になる人はほとんどいなかった。
(夏目漱石は例外中の例外)。
理由は、明治、大正、昭和前期の日本人たちは、
つけものを漬け、味噌や醤油を自作し、
どぶろくも造って、発酵食品をたくさん摂取し、
しかも、野菜をたくさん食べたからではないかしら。


インドもまた同様で、
むかしながらのインドの食事は、
たくさんの豆や野菜をおいしく食べるための工夫があって、
むろんそれはスパイスだ。
最良のインドの食事は世界有数の健康食である。
ところがそんなインドにもまた欧米化の波が押し寄せ、
肉と脂肪のファストフードがかれらを誘惑する。
じっさいIT系の連中には肉好きが多い。
結果、インドもまた糖尿病大国になってしまった。
なんてもったいないことだろう、
だって、むかしながらのインド料理は、
世界有数の健康食なのに。
ただし、食べ方によっては、いくらか炭水化物過多になりやすいけれど。


さて、きょうのアムダスラビーのランチブッフェもまた、
いろんな野菜がたっぷりで、おいしくて官能的で、
たとえば「ブロッコリーとグリンピースのシチュー」がすばらしい、
「ニンジンとインゲンのスパイシー炒め、ココナツの香り」がたのしい。
しかもイディリ Idly (蒸しパン)とココナツディップが素敵に幸福だった。
さらには「鯖のちょっぴりすっぱいカレー」もあって、
ムゲーシュ・シェフは、けっして酸味を強調することなく、
マイルドなうまみこそを押し出していて、
とてもおいしく、しかも蛋白質摂取に貢献していた。


ご存知のとおりぼくはもっぱら食べるばかりで、
自分で作るインド料理はわずかなもの。
イディリも作ったことはないけれど。
米と、ウラド豆と、炊いたごはんと、塩と、
フェヌグリークでタネを作って、
少し発酵させて、蒸しあげるらしい。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/12訪問28回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ナスがニンジンがタマネギがトマトが豆たちが、女王陛下に捧げるごちそうに変わる。

ここ2ヶ月、ぼくは野菜中心の食事をしていて、
ダイコン、ニンジン、セロリ、山芋、キャベツに白菜など、
かるく塩をまぶし、2種のとうがらしの粉をまぶして、
ライトなキムチをこしらえて、毎日大量に食べている。
そして土日は、アムダスラビーのランチブッフェだ。・
世に南インドレストランは多いけれど、
アムダスラビーの土日ブッフェほどに、
野菜をたっぷり食べられるサーヴィスはほとんどない。
そんなわけで、ぼくは、たまには肉も魚も食べるけれど、基本は野菜。
心身ともにHAPPY&CHEERFULで、
鼻のとおりが良くなって、体も軽い。
つい憂鬱に転がり落ちることもけっしてなく、心はいつも落ち着いている。
野菜にこんなにも「人の心身を良くする力」があるなんて、おもってもみなかった。


2017年12月3日(日)のランチブッフェは、
オールヴェジ・ブッフェだった。
オールヴェジは、アムダスラビー史上はじめての試みだ。
料理長のムゲーシュは、さいきんYAKINIKUのおいしさに開眼したものの、
しかしその魂は、堂々たる南インド料理人。
そして一流の南インド料理人であれば、
たとえ肉料理が1品たりともなくとも、
お客たちを感動させることができる。
いいえ、南インド料理とて、むろん肉や魚料理に命を賭ける場合もある。
けれども、肉料理を保険の意味で入れておくこともまた多い。
「肉が一品もないと、一部の客から不満が出そうだから」、
ま、1品入れとくか、なーんて。
しかし、誰がリクエストしたわけでもなく、
料理長のムゲーシュは、きょうの日のために、
オールヴェジメニューを組んだ。


しかも、この日は、めずらしく開店そうそうから満席になって、
ムゲーシュをはじめスタッフはよろこんだ。
こんなメニューだった。


まず前菜は、Rajima Chat (ラジマ豆のサラダ)、
アズキに似たラジマ豆が、キューリ、タマネギ、トマトと一緒に、
ひんやり冷えていて、チャットマサラの華やかな香りがあって、
おいしいの。


Plain Uttapam  (米粉と豆粉のパンケーキ) & 
Peanut Chutney(ピーナツディップ)
ウタパムにはほんのり酸味があって、
ピーナツディップには、上品なうまみがあって、おいしい。


Kai Kari Mandi (あれこれ野菜のシチュー)
Cabbage Kootu (キャベツのマイルド煮込み)
Daikon Poriyal (大根のスパイシー炒め、ココナツの香り)
この3品が優美なんだ。
いずれも穏やかな味にまとめてあって、
それでいてそれぞれの上品な味が、
こうして揃うと、魅惑の万華鏡効果を現す。


carrot Brinjal Sambhar (ニンジンとナスのけんちん汁)
Garlic Rasam(ラッサムスープ、ニンニクを効かせて)
この2品は、白ごはんに左右からそれぞれかけて、
猫飯にしていただく。南インドの幸福を満喫。


ときどき、
Canna Dal Vadai(がんもどきセミハード)
をついばんで。


最後は、
Semiya Sabdana Payasam(タピオカのミルク煮、
ドライフルーツとミックスナッツ入り)
が、甘くキュートに、食事をしめくくる。


おいしかったよ!
夢のようにすばらしかった!
南インド料理は、世界でいちばん、
野菜をふんだんにおいしく食べさせてくれる。
あらためてそうおもったよ。
これが南インド料理の最高のごちそうだ。
生後二週間の乳飲み仔羊も、
キャビアもフォアグラも要らない。
インドならばどこにでもある各種の豆が、
そして日本のどこの八百屋でもスーパーマーケットでも買える、
タマネギが、ニンニクが生姜が、
ニンジンが、ナスが、キャベツが、トマトが、インゲンが、
グリンピースが、ココナツファインが、
フレッシュなマサラと的確な塩と火使いで、
魔法のように生まれ変わり、
女王陛下に召し上がっていただく、世にもエレガントな、ごちそうになれる。
こんなことは南インド料理でしかありえない。
ぼくはその魔法を心ゆくまで堪能した。


なお、きょうは11時半に東西線早稲田駅で起こった人身事故により、
長らくダイヤが乱れた。
これによって、アムダスラビーに来れなかった人もいたでしょうし、
また帰途に難儀した人も多かったんじゃないかしら。
これに懲りずに、どうぞ、また。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


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2017/12訪問27回目

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  • 料理・味-
  • サービス3.8
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

肉食、それともヴェジタリアン? いいえ、その分類はもう古い。

12月2日(土)のランチブッフェは、
Kuska Biryani (クスカ・ビリヤニ;肉なし、ビリヤニ)をはじめ、
Black channa Poriyal (黒ひよこ豆のスパイシー炒め)、
Yellow Dal Masala(ムング豆、マスール豆、ひよこ豆のポタージュ)、
Aloo Lobia Masala (じゃがいもとロビア豆のシチュー)、
おまけに Tomato Rasam にも、ひそかに豆の煮込みが入っているし、
Keerai Vadai(がんもどき、ほうれんそう入り)も豆粉と米粉が具材で、
すなわち、豆のオールスターズといった趣がある。
いいえ、Chicken Chettinad (ぜいたくチキンカレー、
チェティナド・スタイル)もちゃんとあって、むろんリッチにおいしいのだけれど。


豆の使い方と使い分けが上手でね。それぞれにおいしいの。
Aloo Lobia Masala (じゃがいもとロビア豆のシチュー)は、
ソースのなかで微笑むように茹で上がったじゃがいものうまみに、
ロビア豆のコクのあるうまみが溶け合い、スパイスで輪郭づけられていて、
すばらしくおいしい。


Yellow Dal Masala(ムング豆、マスール豆、ひよこ豆のポタージュ)は、
三つの豆の作り出すハーモニーが、まろやかで、
しかもうまみに奥行があって、なんとも魅力的だ。


揚げたてのワダも、ふかふかでおいしくて。

Kuska Biryani (クスカ・ビリヤニ;肉なし、ビリヤニ)がまた、
セクシーな香りをたてていて、魅惑の桃源郷なんだ。


もしもあなたがインド料理が好きだったら、
いつヴェジタリアンになっても、
まったく困らないのではないかしら。


じっさいインド人は、とくにミドルクラス以上の人たちにはヴェジタリアン率が高い。
そこにはガンディと同じく、殺傷を嫌うメンタリティがある。
また、南インドは土地がゆたかなので、
豆のみならず、野菜も果物もゆたかに育つのだけれど、
しかし、仮に豆とイモとわずかの野菜だけしかなくても、
すばらしいごちそうを作り出せるのが、インド料理のマジックだ。


さいきんのぼくは腸内細菌学派であり、
腸内細菌たちの餌は食物繊維であるゆえ、
毎日、山のように野菜を食べている。
基本は、キャベツ、白菜、山芋、セロリ、大根を中心に、
かるく塩漬けにして(たいへんライトなキムチを作って)食べる。
アミノ酸摂取のため、エビオス錠も飲む。
そして土日はアムダスラビーである。
これがまた豆と野菜の楽園である。
まさに、腸内細菌叢のための食事の日々である。
ぼくの心も体もHAPPYだ。


したがって、ぼくはいつヴェジタリアンになってもそれほど困らないものの、
でも、たまに焼肉を食べたりすると、たいへん興奮するし、
このおいしさは手放したくないな、ともおもう。
女友達とふたりでフランス料理で、仔羊のローストをいただいたりするのも、
たまにはいいじゃない、とも、おもいはする。


いいえ、考えてみれば、ヴェジタリアン/ミートイーター という分類も、
いくらかコドモっぽい。
なぜって、大事なことは、〈いかにして体を養うか〉、それだけだもの。
まず蛋白質から考えるにしても、
たしかに肉ばかり食べていては腸内細菌叢に好ましくない、
ということは定説になってはいる。
なるほど、蛋白質は、けっして肉からのみならず、
大豆からはもちろんのこと、
玄米からだって、
ブロッコーリーやニンジン、じゃがいも、トマト・・・からだって、合成できる。
エビオス錠を飲めば、不足しがちな栄養素も補填してくれる。
ヴェジタリアンのボディビルダーやアスリートたちも増えているそうな。
しかし、その反面、ヴェジタリアン生活がうまくいっていなくって、
体調を崩してしまう人もけっして少なくない。
(「たまには肉も食べれば?」と、おもわずアドヴァイスしそうになる。
むろん、まったくもっておおきなお世話である。)
そうかとおもえば、青汁1杯とエビオス錠だけで、
お茶目に元気にふくよかに生きている人もまたいる。
(むろん、その人ならではの、すばらしく独創的な腸内細菌叢あってこその奇跡である。)
けっきょくのところ、野菜をたくさん食べることが体に良いことは言うまでもないにせよ、
ただし、タンパク質摂取にあたっては、
アミノ酸摂取をキーワードにして、
肉も魚も野菜も横並びにして考えればいいのではないかしら。
もちろん個々人それぞれに違う 自分の腸内細菌叢 のことを大切に考えながら。


いろんな意味で、これからの時代、
栄養学は変わってゆくだろうし、
人が食事に求めるものも変わってゆくだろう。
われわれはたいへんおもしろい時代ー変化の時代ーに生きているのだ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2017/11訪問26回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

羊カレー、家庭的。

インド映画を見ていて気づくことのひとつは、
〈インド人にとって、家庭は神聖な価値をもっていること。
けっしてその価値を卑しめてはならないこと。〉
したがって、浮気は家庭を破壊する罪であり、
罪を犯す者はけっして幸福にはなれない。
どうやらこれは、すべてのインド映画にあてはまる倫理であるらしい。
インド映画にはいまも、勧善懲悪が生きている。


料理においても、その価値観はいくらか生きていて。
一流の料理人が、「ぼくに料理にもっとも大事なことを教えてくれたのはおかあさんだ」、
なんて言うことは多い。もっとも、じっさいにかれが作っているのは、
レストラン料理の技術を駆使した優雅な料理なのだけれど、
しかしながら、けっして家庭料理の魂は忘れてないよ、と、
かれは言っているのだ。
そこにはインド社会の健全がある。


11月26日(日)のランチブッフェは、こんなメニューだった。
マトン・カレー、ホームスタイル
ブロッコリーとグリンピースのコルマ
じゃがいものスパイシー炒め
野菜のカキアゲ
ラッサム・スープ、鶏肉入り
オクラのけんちん汁
うずまきパン(パロタ)
バスマティライス
多産地混合二本米
おしゃれサラダ英国風(トスド・サラダ)
セミヤ・パヤサム(デザート)
バター・ミルク


いつもながら野菜がたっぷり食べられて、とても楽しい。
サラダはトマト、キューリ、紫タマネギがカラフルで、
食感もしゃきしゃきしてさわやかだ。
「ブロッコリーとグリンピースのコルマ」はマイルドで、
パロタによく合う。
オクラのサンバルも、いかにもサンバルらしいフレイヴァーが良い。
ラッサムも、鶏挽肉がおもしろい隠し味になっている。


さて、きょうの注目は、
「マトン・カレー・ホーム・スタイル」である。
ひかえめなココナツミルクテイストのグレイヴィーのなかに、
じゃがいもとナス、そして噛むとミルキーな味の羊肉が、
ごろごろ入っている。マイルドで、スパイスの香りが、
羊肉のうまみと溶け合って、喩えようもなく、おいしい。
なんとも魅惑的だ。


ぼくはムゲーシュに訊ねた、「どこが家庭的なの?」
ムゲーシュは答えた、「タミルナドウ州の家庭の味、って意味だよ。
それはね、まずは、ココナツミルクを控えめにしてあるところ。
次に、ナスとじゃがいもをふんだんに使ってるところ。
ほんとはドラムスティックも入れたかったんだけど、
ざんねんながら、きょうは手に入らなかった。」


ぼくは訊ねた、「インドではどんなふうに肉を買うの?」
ムゲーシュは答えた、「インドの肉屋は、バックヤードがあって、
バックヤードで、鶏や、山羊を生かしておく。
それを毎朝、絞めて、店頭に吊るすんだ。
客は、好きな部位を何百グラムでも買える。
山羊は、身だけじゃなくて、頭でも、脳みそでも買える。
ま、東京じゃそういうわけにはいかないから、
冷凍だけどね。でも、おいしかったでしょ?
上手に使えば、冷凍だって、そうとうおいしくできるんだ。」


ムゲーシュは続けた、「ついでに言うとね、
インドではスパイス・ショップも、
客が店頭でスパイスを選んで、その場で挽いてもらって、
自分の好みのマサラを買えるんだ。
マトンマサラでも、チェティナドマサラでも、
自由に調合して、挽きたてのフレッシュなマサラを買える。」


話を聞きながらぼくは、チェンナイの街をおもいだしていた。
ぼくがあの街を訪ねたのは十年まえのディワリの季節だ。
マリーナビーチではインド人の家族連れが、みんなして波打ち際に立って、
寄せては返す波とたわむれていた。
映画館では、冒険活劇恋愛映画にインド人たちは熱狂していた。
あんなに楽しそうに映画を観る人たちは、チェンナイの人たち以外にいない。
オートリキシャのドライヴァーは、ぼくを映画好きと知るや、
ラジニカーントの家の前に連れていってくれた。
白いちいさな二階建てのモダンな家だった。
定食屋で、ぼくが広げたチェンナイの地図を見ながら、
一緒におしゃべりした定食屋の娘、スウェニィは、https://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/104171/
あのとき十歳くらいだったから、いまはもう二十歳のお嬢さんか。
しかし、記憶のなかの人はけっして歳をとらない。
ぼくのなかでスウェニーは、いまも、
2テールの十歳の少女だ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/11訪問25回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

Samma means "autumn sword fish".

ぼくは訊ねた、「きょうのチェンナイ・フィッシュ・カレーは、鯖?」
ムゲーシュは答えた、「No.サンマ。」
ぼくは訊ねた、「誰が買ってきたの?」
ムゲーシュは答えた、「シャチョー。」
そして、ボウルに入っている、マリネしてあるサンマを見せてくれた。
頭と尾を切り落して、内臓を取り除き、ターメリックパウダーと、
ジンジャー&ガーリックペーストでマリネしてある。
ムゲーシュは日本へ来て2年めの秋、
サンマをはじめて調理する。


11月19日(日)ランチブッフェ
この日のメニューは以下のとおり。


チェンナイ・フィッシュ・カレー
(サンマのちょっぴりすっぱいカレー)
メドゥ・ワダ(揚げたてふかふかがんもどき)
ミックス・ヴェジ・サンバル(具だくさんの、けんちん汁)
ソヤ・チャンク・シイタケ・コルマ(インドのコーヤドーフとシイタケの
マイルドカレー)
ダイコンのポリヤル(スパイシー炒め)
パロタ(うずまきパン)
コールスロウ

バスマティライス
多産地混合日本米

マカロニ・パヤサム
レモン・ジュース


さて、準備万端整って、開店11時。
お客さんが ぼつぼつやって来る。
さて、ぼくもいただこう。


お皿にバスマティライスを盛って、
皿の三辺にサンマよっぴりすっぱいカレー、ダイコンのポリヤル、
そしてインドコーヤドーフとシイタケのマイルドカレーを注ぐ。


サンマのちょっぴりすっぱいカレーは、
たいへんマイルドな酸味で、
タマリンドの使い方は控えめにしてあって、
タマネギの優しい甘さがハーモニーを奏で、
そこに、ふっくらした身のサンマが、
ほど良くスパイシーで、とってもおいしい。


インドコーヤドーフとシイタケのマイルドカレーも、
シイタケが牛肉みたいな食感で、質朴なコーヤドーフと、
良く合っている。

ダイコンのポリヤルは、ダイスカットされたダイコンが半透明に炒めあげられ、
スパイス、豆、コリアンダーリーフが上手に使ってあって、おいしい。


おかわりでいただいたサンバルも、具だくさんで、
(ダイコン、ニンジン、ナス、サツマイモ、オクラ、タマネギ!)
ぜいたくにおいしい。

ワダも手馴れたもの。ラッサムもいい。


コールスロウのヨーグルトベースのソースも優美で、
飾り切りされたトマトが薔薇のように咲いている。


この日のサーヴィスドリンクがマンゴージュースであることも、
南国の幸福を体現している。


ぼくはおもった、きょうはムゲーシュが生まれてはじめてサンマを調理した日なんだなぁ。
でも、そんなこと誰ひとり気づかないだろう。
とっても優美な「サンマの、ちょっぴりすっぱいカレー」だった。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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  • アムダスラビー -
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2017/11訪問24回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

知性と感性。

ぼくの知る限り、インド人のインド料理人たちの過半数は学校文化と縁が薄く、
本の一冊も読んだことがなく、十代そうそうからレストランで育ち、
もっぱら料理上手であることによってキャリアアップを図ってきた連中だ。
かれらには、じぶんの技術以外にはなにものにも頼らない、どくとくのかっこよさがある。
ぼくはむかしからそういう人が好きだった。
しかし、アムダスラビーの先任のディナサヤラン料理長がとつぜんインドへ去ったときには、
さすがのぼくも呆れたものだ、そのモラルの欠如に。
(実は、ここには書けないこともあるのだ。)
そしてぼくは考えを改めた。
なるほど学校文化とほぼ無縁に育った才能あふれる料理人もいることはいる。
もちろんそういう人は尊敬に値する。
しかし、一般的に言って、教養はないよりはあった方がいい。
ましてやモラルは。


さて、ディナサヤランが(関係者すべての信用を裏切って)インドへ去ってから、
ちょうど1ヶ月がたって、自動的に料理長に昇格したムゲーシュは、髪をGIカットに刈り、
黒縁セルフレームの眼鏡も新調し、知的な料理長のふんいきが出てきた。
ムゲーシュはめずらしく大学でITを学んで、
卒業後は専攻とはなんの関係もなく、
マハバリープラムの Indeco Hotels で、
あらゆるセクションを担当し、6年間仕事をした、変り種だ。
腕にエッチなタトゥーを入れていて、そういうガキっぽいところがありつつも、
ハリウッド映画仕込みの流暢な英語をしゃべる。
そして週末のランチブッフェは、回を重ねるごとに、
ムゲーシュらしさが色濃くなっている。


11月18日(土)は、こんなメニューだった。


ココナツ ライス
ヴェジタブル・サディ
チキン・ヴィンダルー
プレーン・ウタパム&スパイシー・チャトニ
蟹のラッサムスープ
緑豆のカレー(グリーン・ムングダル・マサラ)
いんげんとピーナツのスパイシー炒め
グリーンサラダ
フルーツカスタード
マンゴージュース


メニューを見ただけで、ちょっぴりチャレンジングである。
なぜって、サンバルがない。
おまけにサンバルがないときにはたいていあるはずの、
プーリコロンブも、ない。
かつてならばコルマのポジションに、
ヴェジタブル・サディ(Sadhi) がある。


ぼくは興味しんしんに食べていった。
ムゲーシュは言う、「ココナツライスに、
サディをかけて食べるとおいしいよ。」
ぼくはアドヴァイスに従った。
おぉ、香りのいいココナツライスに、
純白のサディをかける。
優美なココナツミルクグレイヴィーは、
ムングダルのペーストがうまみを潜め、
じゃがいもやニンジンが華やかである。
画家で言えば印象派のように、味覚の中間色が美しく、
エレガントだ。


ぼくはムゲーシュに訊ねた、「コルマとサディはどう違うの?」
ムゲーシュは不敵に笑った、「ぜんぜん違うよ、
だって、たしかにコルマもココナツミルクを使うけれど、
でも、コルマにはカシューナッツペーストを潜ませるだろ。
そしてコルマの香りはガラムマサラとグリーンチリだよ。
きみの舌はまるで南インド人みたいだっておもうこともあるけど、
でも、コルマとサディの違いを訊ねるなんて、まだまだだな。」
どうです、みなさん、ムゲーシュのこの貫禄。
人はポジションを得て、大きく成長するもの。


この日はウタパムも上品な酸味が優しく、
チリペッパー系のチャトニも良かった。


興味深かったのは、チキン・ヴィンダルーで、
通例ヴィンダルーとはワイン酢の酸味を効かせるものだけれど、
しかし、酸味はほとんど奥に潜んでいて、けっしてめだたない。
そのかわり、タマネギの優しいほの甘さのあるマイルドなグレイヴィーに、
レッドペッパー系のキックで輪郭づけられている。
ぼくはムゲーシュに訊ねた、「おいしいね!
ただし、ヴィンダルーというわりには酸味が淡いね。」
するとムゲーシュは答えた、「もともとヴィンダルーはゴアの料理だけど、
しかし、ぼくはそれをタミルスタイルにアレンジしたんだ。」
ぼくはおもった、なるほど。しかもここで言う、
「ムゲーシュにとってのタミル」は、けっして「ディナサヤランにとってのタミル」とは違う。
そもそもディナサヤランならば、こういう知的なゲームはおもいつきもしないだろうし、
次に、「ディナサヤランにとってのタミル」は、もっと強烈に酸っぱい。
こういうところが、ぼくにとってとてもおもしろい。


むろん、表現にもっとも大事なものは、確かな技術と、その人ならではの感性だ。
しかしながら知性だって、ないよりはあったほうがいい。
なぜって、過大評価も過小評価もせず、ありのままの自分自身を知り、
自分はなにが優れているのか、どこが足りないのか、
なにを求め、それを手に入れるためにはなにが必要なのか、
それらを理解するためには、知性が必要だ。
そしてぼくはムゲーシュの料理にますます興味を持つ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー -
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2017/11訪問23回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ムゲーシュによる亡霊退治。

「your best friend は、きみに電話をくれたかい?」
と、新シェフ ムゲーシュは(いかにも皮肉っぽく)ぼくに言う。
(すでにお伝えしたとおり)、
先代の料理長ディナサヤラン(体重105kg) は勝手にインドへ帰ってしまって、
それ以来 オウナーにも、レストランにも、ぼくにも、
まったく連絡がなく、
すでにわれわれにとってディナサヤランは過去の人だ。
しかしムゲーシュはもう一度言いたいのだ、ぼくに。
「きみはディナサヤランに騙されていたんだよ、
きみはディナサヤランに利用されていたんだよ、わかったかい?」
こうしてディナサヤランはまたしてもわれわれの意識のなかに甦ってくる、
われわれはとっくにかれを葬った気でいるというのに。


ディナサヤランは去った。
しかし、レストランにはまったくなんの変化もなかった。
ディナサヤランはこの結果に、さぞや残念がるだろう。
むかしもいまも平日の客入りはいくらか少ないけれど、
しかし、あいかわらず土日の客は多いし、
常連さんたちもひきつづき来てくれる。
ケータリングの依頼もあいかわらず多い。
twitter やインスタグラムでも、
アムダスラビーの話題は
(けっしてにぎやかというほどではないにせよ)途切れない。
むろんそれは(自動的に新シェフに昇格した)ムゲーシュ27歳の善戦によるものである。


それどころか、ムゲーシュは言う、
「ディナサヤランはレパートリー数百とか言うけれど、
でも、けっきょくのところいつだって、
プーリコロンブ、ラッサム、サンバル、チキンカレーだったじゃないか。
そしてラッサムのガーリックを増量すればガーリックラッサム!
チキンカレーにブラックペッパーを振ればペッパーチキンカレー! 
なにが数百のレパートリーだよ!?? ナンセンス!」
ハンサム給仕長のグヤン・デヴが相槌を打つ、
「ディナさんの料理はオール酸っぱい。」
ぼくは憤慨する、それはまったくもって公平ではない。
ディナサヤランはコルマの系統も上手に作ったし、
冷菜モールコロンブのあの優美さはどうだ?
たしかにディナサヤラン37歳は、水牛のような容姿を持ち、
水牛のような心の持ち主であるにせよ、
しかし、かれの料理は(語の最良の意味で)タミル田舎料理の魂があった。
しかも料理に迫力があった。
味つけのトーンも、たしかに酸味にこだわりはあったにせよ、
とてもゆたかなトーンヴァラエティがあった。
もっとも、そんな意見を持つぼくにとっても、
ムゲーシュの言いたいことはわからないでもない。


喩えるならば、その批判はざっとこういう論法だろう。
「モーツァルトは六百曲だか作曲したにせよ、
でも、どの曲も構造はまったく同じで、
けっきょく、ぜんぶまとめて1曲みたいなものじゃないか!」
いいえ、むろんぼくはけっして考えてはいない、
ディナサヤランのことをモーツァルト級の天才だなんて。
ぼくもそこまでバカではない。
ぼくがおもうのは、こういうことだ。
なるほど、どんなジャンルであっても、
その表現者が有名であっても、無名であっても、
こういう論点はあるものだし、あって良い。
そして、ムゲーシュによるその批判は、
ディナサヤランの弱点を的確に突いてもいる、
(ほとんど不公平なまでに、その弱点を拡大して)。





11月12日(日)のランチブッフェはこんな感じだった。


トマト・ビリヤニ。
イディリ&ココナツチャトニ。
ヴェジタブル・パコダ。
ナスとニンジンのサンバル。
ダル・ラッサム。
ほうれんそうとひよこ豆のスパイシー炒め。
ナスのクートゥ。
カルヴァットゥ・コロンブ。
(イリコのちょっぴりすっぱいカレー。)
グリーンサラダ。
サブダナ・パヤサム。
ホットコーヒー。


はなやかでとてもいい構成で、
どの料理もおいしかった。
イディリのほのかな酸味がいかにも上品で、
純白のココナツチャトニがまた優美だ。
サンバルは、いかにもサンバルらしく、
ナスとカボチャと豆とタマネギがハーモニーを奏で、
カボチャの優しい甘さがエレガントだ。
ほうれんそうとひよこ豆の炒め物も、
シンプルながら、的確な塩使いで、
しっかり存在感のある仕上がりになっている。
さて、特筆すべきは、
カルヴァットゥ・コロンブ(イリコのちょっぴりすっぱいカレー)で、
この1品が、ディナサヤラン時代の深い酸味とは違って、
あえて酸味を控えめにして、むしろタマネギの優しい甘みを活かした、
マイルドなうまみを前面に出した仕上がりになっていたこと。
ぼくはそこに、”ムゲーシュによる「亡霊ディナサヤランの殺害」”を見る。


レストランは生き物だ。
過去のすべてを継承すればいいというものではなく、
また、そんなことを試みたところで、できるわけもない。
なにかを捨て、なにかを壊し、なにかを継承し、なにかを創造する。
そういう精神のダイナミックな働きがあってこそ、
レストランは、日々、新しくあることができる。
生きているとは、そういうことだ。


この日、ぼくはひとつのドラマを見た。
そしてぼくは微笑みながらレストランを出た。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/11訪問22回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
~¥9991人

常連さんたち。

きのう11月1日(水)夜5時半~
新オウナーになってから1周年記念、ディナーブッフェ900円
が開催された。


メニューは、

チキン・ダム・ビリヤニ、南インドスタイル
ボーンディ・ライタ
プレーン・ミニ・ドーサ(=セット・ドーサ=スポンジ・ドーサ)
ココナツチャトニ
サンバル
フィッシュフライ
チキンカレー
グリーン・サラダ
シャヒ・トクラ(揚げパンのシロップ漬け)
ブラックホットコーヒー


開店と同時に、綺麗な女性が食べに現われた。
お、きょうは運がいいかも、と、おもったものの、
しかし、しばらくのあいだけっこうお店は空いていた。
やがてオウナーのゴヒル夫妻のコドモふたり、
姉・小学校6年生、妹・2年生が現われたので、
ぼくは彼女たちとノートに漢字を書いて遊んだ。
「明るい」っていう字は moon と sun でできてるね。
「問う」という字は、gate のなかにmouth があるね。
じゃね、gate のなかに sound を閉じ込めると、
なんていう字になるか知ってる?
darkness 、やみ、なんだよ。まっくらやみ。
じゃね、gate のなかに tree が生えてるとなんて読むか、知ってる?
知らないでしょ、hi ma って読むの。どうしてだろうね? ふしぎだね。


そんなふうに遊んでいるうちに、ちらほら常連さんたちが現われ、
店はそれらしく賑わってきた。
いつものように日本人とインド人がほど良く交じってゆきます。
アムダスラビーの常連さんたちは、みんな、かるく百回以上は
食べてる人たちで、けっして多くを語ることなく、
ただ来て、黙々と、しっかり食べて、さっと帰ってゆく。
ぼくはおもう、もしもぼくがちょっと話を盛って、レヴューに虚飾をまぶしたとしても、
この人たちはぜーーーんぶ見抜くだろうな。
そしてもしもアムダスラビーの味が落ちたら、あっさり2度と食べに来ないだろうな。
そういう凄みがたたずまいにある。


そのうちにマクロビにくわしい女友達が約束どおり現われて、
ぼくは彼女と隅のテーブルを選び、L字に向き合って座り、しっぽり仲良く食事をはじめた。


チキン・ビリヤニは、南インドっぽく、それほどパラッパラではなく、
炊き込みごはんふうに仕上げてあって、
それでいて香り高くおいしい。
ボーンディ・ライタ(ベサン粉をちょっぴり使っている)をかけると、
エレガントに変身する。
プレーン・ミニ・ドーサ(=セット・ドーサ=スポンジ・ドーサ)は、
ほのかに発酵の酸味があって、
純白のココナツチャトニをかけるとお洒落においしい。
サンバルはサンバルらしい香りを放ち、
フィッシュフライは鯖にマサラが染み渡り、エッジをクリスピーに揚げてある。
おいしい!
チキン・カレーは、手馴れたもので、実においしい。
シャヒ・トクラ(揚げパンのシロップ漬け)は、
食パンの切り方がデカくて、ユーモラス。


新シェフ、ムゲーシュ、これならばっちり大丈夫。
立派なしあがりだ。


ふだんの土日ランチブッフェだと、値段が1200円になって、
野菜のポリヤル と ラッサムがつく。
今回のセットは、簡略版で、キャッチーな料理だけを集めたもの。
女友達もよろこんで、あれこれ、召し上がって、
おかわりもしています。
南インド料理もよく食べているものの、
セット・ドーサははじめてだそうで、よろこんでくれました。
野菜好きの彼女のために、ポリヤルがあれば完璧だったけれど。


ぼくらはいろんなはなしをした。
腸内細菌が健康科学を大きく変える。
全粒粉のパンがマイナーなのは、
業務用精白小麦粉がタダ同然に安いため。
外国産精白小麦粉の農薬問題。
インドの全粒粉ATTA は優秀。
映画『スーパー・サイズ・ミー』は、いまにしておもえば、
腸内細菌叢について考えさせてくれる映画だった。
腸内細菌と地域性(お国柄)・・・海草を消化できる腸内細菌をもっているのは、
日本人だけ。
マクロビは自分の暮らしている土地の食材を大事にする。
1日に青汁1杯とエビオス錠とスピルリナだけで元気に生きている女性。
食べない人たちの光合成生活。
近未来の医学は、個別診療・個別判断型に。
例の、ディナサヤラン問題と、教育の大事さ。
インド社会の多様性。
騙されたやつがアホという国際基準?
ガードレールのないハイウェイと賄賂。
貧乏でも楽しく暮らせるインド社会。


女友達は、ぼく同様、お笑いが好きなので、
ノリも良く、どんな話題でも明るくキャッキャと、乗りこなす。
楽しい時間はあっというまに過ぎていった。


ぼくはおもった、アムダスラビーは儲けるという意味ではちょっぴり不器用だけれど、
しかし実のある、良いレストランだ。
ぼくはほんのちょっとだけながら、日本語関連のヴォランティアをしていて、
気がついたら、アムダスラビーはぼくのなかの一部みたいになっていた。
ぼくはそれを誇りにおもう。
ただし、むろんそれはあくまでもぼくの個人的な感慨にすぎず、
他の人にとっては、「ジュリアス・スージー」なんてどうだっていいことだ。
とくに、アムダスラビーには、寡黙でけっして多くを語らず、
ただ黙々と食べて帰ってゆく常連さんたちがしっかりついている。
この人たちがまたすんごい存在感があって、
アムダスラビーがけっして堕落しないように、しっかり見張っている。
かれらは、けっしてなにもかたらずに、伝えている。


ナン食べ放題みたいなことはやんなくていいから。
クーポンなんかもやんなくていいから。
食べログの点数がほどほどなことも、
カレー百名店にも入ってないこともかまわない。
望むことはただひとつ、
しっかりおいしいリアルタミル料理をいろんな種類、
これまでどおり堂々と作ってくれよな、
そしたらちゃんと通い続けるから、って。


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2017/10訪問21回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

【終了】本日11月1日午後5時半~新オウナーになって1周年記念ブッフェ900円。

ゴヒル夫妻がオウナーになってちょうど1周年、
内装もトイレットもちょっぴり良くして、売り上げも伸びました。
そこで記念ブッフェの開催とあいなりました。
ムゲーシュ27歳はシェフになって2週間め、またもや大任が襲いかかります。


メニューは、


チキン・ダム・ビリヤニ、南インドスタイル
ボーンディ・ライタ
プレーン・ミニ・ドーサ
ココナツチャトニ
サンバル
フィッシュフライ
マラバール・チキンカレー
グリーン・サラダ
シャヒ・トクラ(揚げパンのシロップ漬け)


これでお値段900円。税込み。
チェンナイ基準で「わ。おいしいね♪」というレヴェルです。
フランス料理ならば、かるく3000円は取ってもいいぜいたくな内容です。
新シェフ、ムゲーシュ27歳にとっては、
あっぱれ男の晴れ舞台、ここでばっちり勝利を決めたいところです。
われわれは、そんななりゆきを見守りながら、
わいわいキャーキャー言いながら、
3回はおかわりして楽しみましょう!


アムダスラビーマニアの方がたはもちろん、
新シェフ、ムゲーシュのテイストを味わってみたい人、
ハンサム給仕長グヤン・デヴのファンの人、
ヴェヌスやナンディニがお気に入りだけれど、
アムダスラビーの味もチェックしてみよっかな、とか、
他のカレー屋の関係者だけれどこっそり視察しちゃおかな、とかおもった人、
はたまた、これを機会に噂の南インド料理なるものを初体験してみようかしらん、
と、のせられた人、
みなさん、いらしてください。
ぼくも開店から1時間くらいはいますので、
ぼくのページの読者の人はお声をかけてください。


なお、ラストオウダー9時半まで、
おいしさのレヴェルはなるべく最良を保つように適宜、
作りたて料理の補充はしているけれど、
それでも早めの来店がよりいっそうおいしいですよ。


どのくらいお客さんがいらっしゃるのか、ぼくにはさっぱり読めません。
こんな大サーヴィスを仕掛けた日にお客さんが少ないと淋しいなぁ、と案ずる反面、
twitter で拡散中なので、もしかしたら(!)いくらか
ウェイティングが出る「かも」しれません。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2017/10訪問20回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ムゲーシュの散髪とワダの大きさ。そして空気の読めないスージー。


ムゲーシュが料理長を務めるようになって2度めの週末、
肌寒い雨降りの日曜日である。
多くのレストランは、こういう日は(雨に負けずに)
集客できるように、ちょっと魅力的なメニューを用意します。
きょうのアムダスラビーで言えば、
マトン・ダム・ビリヤニであり、
フィッシュ・モーリー(鯖のココナツ風味、ケーララ・スタイル)ですよ。
そのほか、キャロット・サンバル、
ダル・ラッサム、キャロット・ポリヤル、
ゴビ・パニール・マター・マサラ、
キーライ・ワダ、セミヤ・パヤサムなどが揃っています。


開店そうそう3人の男の常連さんが現われた。
ひとりは埼玉からバイクに乗って。
もうひとりはどちらの在住だかぼくは知らない。
もうひとりは西葛西在住の人。
3人ともディープなインド料理マニアだ。
ぼくは会釈し、アムダスラビーの「例の近況」を言葉少なに伝える。
かれらは黙々と料理を食べる。
ただ料理と向き合って、一心不乱に食べる。


ぼくの印象は、おいしい!
やるじゃないの、ムゲーシュ!
ビリヤニは文句なくおいしい。
他の料理もどれもおいしい。
それから並んだ料理ごとの味の色彩(トーン)が幅広い。
味の決め方が、絵画で言うところのハーフトーンっぽく、美しい。
サンバルはサンバルらしく、ラッサムはラッサムらしい香りをたてている。
キャロット・ポリヤルのニンジンのカットの、
大きさが揃っていない。(ちょっとダサい。)
ワダは先週と比べて、少し大きくなった。
(先週のワダは、ちっちゃくて貧弱だった。)
ぼくは気づいた、やっぱり先週のムゲーシュは超緊張してたんだ。
そりゃあ緊張もするだろう、27歳で30席のレストランをまかされる。
しかも前任のシェフは、経験豊富なディナサヤランである。
しかし、ムゲーシュはその緊張に打ち勝った。
常連さんたちがちゃんと何度もおかわりして食べていることが、
そのなによりの証拠だ。
後で訊いたら、この日は、ぼくらが「モールコロンブ・レイディ」と呼んでいる、
常連さんも食べに来てくだすって、愉しんで帰られたそうな。
(ムゲーシュがうれしそうに教えてくれた。)





先週の月曜日、ムゲーシュは言った、「髪、切ろうかな。」
ぼくは訊いた、「なんで?」
ムゲーシュは言った、「料理人は髪、短いほうがいいかな、と、おもって。」
ぼくは言った、「おぉ、自覚が芽生えたね。」
ムゲーシュは、ぼくの(よく見ないと気がつかないけれど、
ひそかに耳まわりが短い2ブロックな)髪型を見ながら言った、
「どこで切ってるの?」
ぼくは答えた、「駅下の商店街の1000円バーバー。
美奈さんっていう、エンピツみたいに痩せた理容師さんに切ってもらってんだよ。
彼女はヴェジタリアンでロックが好きなんだ。」
ムゲーシュは言った、「おれもそこへ行く。」


お店に着いたものの、美奈さんはいなくって、
別の女と、いつもいる男の、ふたりの理容師が働いていた。
ムゲーシュは、冒険タンタンみたいな、あるいは
むかしふうに言うと GIカットみたいな、髪型にしたいようだ。
ぼくはノートに絵を描いて、注釈に全体2ミリ、前だけ5ミリと書き加え、
女の理容師さんに見せた。
彼女は言った、「この人の髪質だと、2ミリは寒々しいわよ、
6ミリくらいのほうがいいんじゃない?」
ムゲーシュは言った、「じゃ、6ミリ。」
ぼくは訊いた、「前は?」
彼女は言った、「前はハサミで切るから適当よ。」


髪を切ったムゲーシュは、精悍な印象になった。
帰りに缶ビールを半ダース買って、マンションの13階のかれらの部屋で、
ふたりで飲んだ。
ムゲーシュはいたずらっぽく言った、「(Reka の)ヨギさん、
かれはきみのことを嫌いみたいだよ。」
ぼくは言った、「なんで?」
ムゲーシュは言った、
「理由は、きみはReka にいるとき、
綺麗な女の客がいると、すぐにおしゃべりして、
仲良くなっちゃうからだって。」
ぼくは苦笑した、「え、あの人、そんなことでおれに嫉妬してたの!??
知らなかったよ、たしかに、おれ、Reka にはさいきんでこそ行ってないけど、
西葛西1店舗だった頃は通算80回くらい食べたよ。たのしかったよ。
お客も老若男女、多様性に富んでいて、チャーミングな人が多かった。
だからつい、はじめて会った人でさえ、はなしがはずんだもの。
ヨギさんがそんな煩悶をしていたなんて、夢にもおもわなかったよ。
よくあるんだよ、そういうこと。
相手は心のなかで超取り乱してるのに、おれだけちっとも気づいてないの。
ふうん、そうだったんだ? ごめんね、ヨギさん。」


ぼくはいささかの理不尽を感じながら言葉をつないだ、
「ぼくも鈍感なんだろうけれど、
他方、ヨギさんの社交のスタイルもいくらか無理があるんじゃないかしら。
だって、ヨギさんって、教養も高いし、rich だし、日本語も上手だし、
サーヴィス精神旺盛で人に好かれやすい人だけど、
ただし、キャラクター設定があまりにも優等生で、
しかも モテたい願望 が露骨でしょ。
かれはみんなに好かれようとがんばって(誰もに同じ調子の)親切そうな接客トークをする。
逆に言えば、目の前のその人に向けて、その人にふさわしい話題やしゃべり方を選ぶ習慣がない。
たぶん冷蔵庫に対してだって、ヨギさんは同じように親切に話しかけるよ。
たとえばね、ヨギさんは、ディナサヤランの誕生日に、
かれにバースデイメールまで送ってたよ。
ディナサヤランは Reka で食べたこともないし、
ヨギさんはディナサヤランのことなんてなーーーんにも知らないのに。」
ムゲーシュは意地悪そうに笑った。


ぼくはつづけた。
「日本語には、”en (縁) "という言葉があってね、
独特な word でね、
chance、fate、destiny、luck、compatible、matching...
いろいろ訳せるけれど、でも、どれもちょっと違う。
なぜなら、英語が主体的で能動的な言語であるのに対して、
他方、"en"という言葉はとっても仏教的で、
まったく主体を問題にしていない。
自分の主体も、相手の主体もまた。
だから、とっても受動的な言葉。
なにに対して受動的かと言えば、運命に、ということかしら。
けっきょくね、自分とその人とのあいだに"en "があればその人と出会うし、
逆に"en" がなければけっして出会うことはない。
よしんば出会ったところで、"en "がなければ、関係は続かない。
そしてまた、人生は、一期一会。
いまあるものが次の瞬間、なくなるかもしれない。
出会いはいつも、”これが最初で最後かもしれない。”
そうおもえば、出会いは拒まず、多くを求めず、去る者は追わず、
そんな気持ちになるのにね。
人にとって、いちばんの美徳は、”気が軽いこと” ではないかしら。
そして、人の心はその人のもの。けっして誰にも他人の心は奪えないから。」
ムゲーシュは眉をしかめ苦笑した、「わかったわかった、きみのフィロソフィは。
Tooooooo much talking! Leave this topic.」


それからぼくらはいろんなはなしをした。
東京のインドレストラン事情。ぼくの好きなインドレストラン。
ムゲーシュの南インドでのホテル勤め時代のはなし。
北欧からの女性客と恋仲になって、彼女とはいまもFACEBOOKでつながっていること。
そこには彼女のしあわせそうな家族写真が載っていること。


ムゲーシュは言った、「こんなにくつろいで話したの、はじめてだよね。」
ぼくは言った、「ディナさんがいたころは、ディナさんが帝王ですべての中心だったからね。」
窓の外、淡い曇り空の東京が広がっていた。


2017年10月29日(日)


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2017/10訪問19回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

ムゲーシュ、はなやかな light south。

案の定、関係者たちの誰もが想定していたとおり、
去る10月18日木曜日、いきなりぷいとインドへ帰ってしまった料理長のディナサヤランは、
約束の27日金曜日になってもアムダスラビーに戻っては来なかった。
電話の1本もない、オウナーにも、店にも、ぼくにも。
正直言ってぼくは内心ムカついた、
(だって3年間のつきあいとはいえ、友達だとおもっていたからね)、
しかしかれの不在は、かれの期待を裏切って、大勢に影響はなかった。
なぜって、オウナーのゴヒル夫妻は
ディナが勝手にインドへ発ったときこそ激怒したものの、
しかし巧みな采配で即座に厨房のフォーメーションを立て直した。
すなわち、これまで二番手だったムゲーシュは自動的にシェフに昇格し、
四日後にはタンドール担当のジャバル・シンが新たにセカンドとして雇われ、
そしていままでどおりハンサム給仕長のグヤン・デヴがホールを担当する。
オペレーションが乱れたのは、(ムゲーシュがたったひとりで、
ナンを焼き、ドーサを焼き、各種のカレーやビリヤニを作らざるを得なかった)、
わずか三日間だけだった。


きょうのランチブッフェのメニューはざっと以下のとおり。
イディリとココナツチャトニ。
チキン・サグワラ。
マサラワダ。
ペッパーラッサム。
イエロウ・ダル・フライ。
(いわゆるダル、豆のスパイシー・ポタージュである。)
ブロッコリーとじゃがいもとピーマンのスパイシー炒め。
ブラックチャナとナスのマサラ。
バスマティライス と 日本米ごはん。
ムングダルのパヤサム。
グリーンサラダ。
ブラックコーヒー。


ぼくの印象は、はなやかなライトサウスっていう感じ。
その由来は、いくらか北インド寄りであるダルが入っていること、
そして野菜炒めもポリヤルというよりもいくらかサブジっぽいこと。
(ココナツファインを使っていないせい。)
南インドっぽさは、ラッサムとイディリ&ココナツチャトニが担当している。
このくらいの方が広くいろんなお客さんに愛されるんじゃないかしら。
じっさいお客さんの入りも良く、料理もどんどん売れていた。
ぼくも3回おかわりしてたっぷり食べた。


対照的に、ディナサヤランの料理は、いかにもディープサウスだった。
かれのブッフェ構成は、
プーリコロンブ、サンバル、ラッサム、チキンカレーが基本で、
プーリコロンブが深くすっぱく、ラッサムがほのすっぱい。
この酸味の濃淡が、南インドマニアを大いによろこばせたものだけれど、
しかし、ビギナーのお客さんのなかには、ちょっと困ったような顔をする人も、
見られたものだった。(ビギナーは盛り方・食べ方を知らないせいも、やや、ある)。
また炒めものには、容赦なくココナツファインが用いられ、
これも好き嫌いを分ける一因となった。
総じてぼくはディナサヤランの料理が大好きだったけれど、
かるく300食は食べたので、もう未練はない。


アムダスラビーにはこれまでも多くの良い料理人が在籍した。
初代料理長のマハリンガムは現ナンディニに。
2ヶ月間料理長だったヴェヌゴパールは現ヴェヌスに。
そして、アーンドラのラマナイア・シェフの路線で成功するか、
と、予感させもした、ディナサヤランはインドへ戻ってしまった。


さぁ、ムゲーシュの時代がはじまった。
ムゲーシュは27歳、大学でIT系の勉強をしたものの、
ホテルに就職した変り種。マハバリープラムの Indeco Hotels で、
あらゆるセクションを担当し、6年間勤め、
そして来日し、アムダスラビーで働いている。
ムゲーシュは、ウデにエッチなタトゥーを入れるガキっぽさを持ちつつも、
ハリウッド映画仕込みの流暢な英語をしゃべる。
お兄さんもホテルで、欧州料理のシェフをしている。
だから、サラダにしてもときどきセンスを見せつける。
おまけにインド中華も巧い。
しかもこの1年ひじょうに大きく南インド料理のウデを上げたことは、
ぼくを驚かせた。


27歳で30席のレストランのシェフになる、
それってそうとうかっこいいことだ。
ムゲーシュ、きみはついている。
ヴェヌス、ナンディニ、そしてアムダスラビー、
これまでどおり南インド、タミル3大レストランの一角を担うポジションを守りつつ、
新たなアムダスラビーらしさを創出して欲しい。


2017年10月28日(土)


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー -
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2017/10訪問18回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

駆け引きの顛末。

前日に引き続き10月22日(日)のランチブッフェも、
ディナサヤラン料理長はインドへ帰国中ながら、
しかし、2番手のムゲーシュと
新たにスタッフにくわわったキャリア豊富なジャバル・シンのコンビによって、
たいへん高いクオリティの料理がふるまわれた。
ぼくはたいへん驚きそしてよろこんだ、
実はどうなることかと気を揉んでいたのだ。


ヴェジタブル・ビリヤニはかろやかで香り高く、
チキンコルマは優美なおいしさ。
カブとインド高野豆腐のマサラはマイルドで上品、
キェベツのポリヤルは綺麗な若草色にスポイスをほのかに香らせる。
カダンバ・サンバルは多彩な野菜がほんのり優しい甘さをつくりだし、
蟹のラッサムは黒胡椒がすっきり効いてほのかな酸味のキレもいい。
パロタは手馴れたものだし、
グリーンサラダでさえもふさわしい脇役をこなした。
小麦のパヤサムは食事のよろこびのエンディングを優しい甘さで締めくくった。
ぼくはムゲーシュに言った、 "Wonderful! No problem!
You win:Deenathyalan loss.”
ムゲーシュは得意そうにうなずいた。
そう、ムゲーシュのこの1年のウデの向上は著しく、
他方、ディナサヤランはゲームに敗れた。





実はディナサヤランがインドへ帰った理由は、
「持病の糖尿病と尿管結石のみならず、
人間ドッグで全身をチェックしたい。
言葉の不自由のないインドで診てもらいたい」
ということではあるのだけれど、しかしながら、
事前にオウナーにきちんと話し許可を取ることをおこなわず、
ほとんど直前連絡のみでインドへ発った。
1週間の予定、こんどの金曜日に戻る ということにはなっている。


むろんかれの持病はみんなの知るところながら、
しかし店が休みの月曜日はつねに浴びるほどスコッチを飲み、
翌火曜日は必ずひどい二日酔い、
そんなかれの暮らしをスタッフはみんな知っているゆえ、
誰も同情はしない。
(もっとも、ムゲーシュもぼくもしょっちゅう
ディナサヤランと一緒に飲んだのだけれど)。
しかも、今回の件には必ずや 駆け引き が潜んでいて、
「もしもこのおれさまがいなければ、
このレストランはがたがたになるだろう。」という
コドモっぽい悪心が、ないはずがなかった。


とうぜん、オウナー夫妻パンケージ&ジャイ・デヴィ・ゴヒルは激怒した。
かれらはこれまでディナサヤランのウデを高く買い、
ほどほどに厚遇してきた。
そして同時に、壁紙を張り替え、トイレットを上等なものにして、
レストランのサーヴィス向上に努めてきた。
しかも給料の遅滞など一度もなかったし、
売り上げが伸びた月には賞与も与えた。
そしてこのあいだの春には、かれらはディナサヤランのバースデイパーティまで
開いた、(ぼくは呼ばれなかったけど)。
そんなかれらだもの、その激しい怒りはもっともだった。
しかも、オウナーの怒りの対象はディナサヤランはもちろんのこと、
2番手のムゲーシュおよびサーヴィスのグヤン・デヴにまで及び、
共同責任でもって、かれらもまた叱られた。
今後なおこういう由々しき事態が起こるならば、
あなたたちスタッフ総入れ替えもありえます、
という強い調子の怒りだった。
ジャイ・デヴィ・ゴヒルは、ぼくにも「ディナサヤランの友人としての」意見を求めた。
ぼくとてさすがに弁護などできるはずもなく、
ただただ、お怒りはごもっともです、と言い、
「ディワリを家族と一緒に過ごしたかったんでしょう」
と言い添えることが精一杯だった。
(ディナサヤランは、4歳の男の子Johnsanaくんももちろんのこと、
9歳のお嬢さんのAbiさんを溺愛し、ことあるごとに
山のようなかわいい服や文房具などをインドへ送っている。
奥さんのLalitha さんとも仲がいい。
インドが1年でいちばん輝くディワリの日をさぞや家族団欒で過ごしたかったろう。)
しかし、インドへ戻ることじたいは、
きちんとした手続きを踏めばオウナーは快く許しただろうから、
それはけっして弁護にならない。


そしてオウナーは即座にキャリア豊富なジャバル・シンを雇い、
キッチンのフォーメーションを瞬時に立て直した。
ムゲーシュのこの1年の成長にも驚かされた。
それはもう見事なものだった。
レヴェルはひじょうに高く、
ときどきアムダスラビーで食べるていどのお客さんには
料理人の交代はわからないだろうし、
よほどの定連さんにとっても、
どちらの料理がよりいっそう好きかは、
たんに 好みのわずかな揺れ にすぎないだろう。
ぼくにしたところで、この二日のブッフェで感じたわずかな疵は、
きのうのワダが(おいしかったけれど)サイズと形がやや貧弱だったこと、
(おもえばディナサヤランは手が野球のグローブみたいにでかく、
ワダ向きの手をしていた、対してムゲーシュは手がやや小さい。
ただし、あるていどは経験が増えれば克服できるはず)、
そしてきょうのカダンバサンバルの仕上がりがかすかに甘い、
カボチャの甘さがあるのだから、
ほのかな隠し味のジャグリ(濁り黒砂糖)は入れなくてもいいかな、
というていどのことだった。
もっともぼくはたんにアムダスラビーで誰よりも多くの回数を食べているだけで、
ぼくの舌は平凡なインド人ていどのものだろうけれど、
いずれにせよ、ぼくにとってほぼパーフェクトだったし、
雨の日で台風接近のなか詰めかけた40人弱のお客さんの反応も良く、
どの料理もきれいになくなった。





午後3時、すでにお客さんはみんな帰り、
レストランにはぼくとスタッフだけ。オウナー夫妻はいない。
ムゲーシュは皮肉っぽくぼくに囁いた、「Your best friend is gone.
あのさぁ、ほんとのことはわかんないけどさ、
ディナさん、もう帰って来ないかもね。」
ぼくは驚いた、「え? なんで???」
ムゲーシュは言った、「だって部屋にあったディナさんの荷物、
ディナさん、全部キャリーバッグに詰めて行ったんだよ。
いま、なーーーーんにもないよ、ディナさんの荷物。」
ぼくは言った、「マジで???」
ムゲーシュは言った、「確証はないよ。だからわかんないけどさ、
ディナさん、もう帰って来ないかもよ。」


ぼくは呆れた、3年もつきあった挙句、こんな最後なの!??
そういえば、数日まえディナサヤランはかれの家のあるトリチーの、
奥さんの携帯電話の番号をぼくに教えてくれたっけ。
ぼくに、パスポート持ってるか、って訊いたっけ。
ぼくは答えた、いまパスポートは切れてるよ。
あれが最後の挨拶だったのか?
ディナサヤランのことだもの、
もしもオウナーに強く請われたならば、
また戻ってやってもいい、
くらいにおもっているのかもしれないけれど、
しかし、ざんねんながらそういう日は来ないだろう。
なんという幕切れだろう。


すばらしい料理でみんなを愉しませてくれたディナサヤラン。
サンバルもラッサムもいろんなヴァリエーションがあっておいしかった。
カダンバ・サンバルが野菜たっぷりでたのしかった。
冷製のオクラのモール・コロンブが優美だった。
魚カレーは、なぜか鯖ばっかりだったけれど、
ときには「ちっちゃい鯖」と言い張って、
ぼくの知らない魚を買い込んできた。
イリコのちょっぴりすっぱいカレーの酸味の強さも忘れがたい。
料理ごとの味の振り分けは上手だったものの、
ときどき酸味のある料理がやや多すぎた。
二日酔いのときはポリヤルやバジの塩がやや暴れた。
いろんな料理が次から次に現れた。
その癖、やる気のない日はテキトーなメニュー構成で流した。
そういう日もちゃんとおいしかった。
南インドのビリヤニの優しいおいしさを教えてくれた。
各種ドーサもみんなおいしかった、イディリも、
純白のココナツチャトニがまた優美だった。
南インド料理って、たのしいな、と心底おもわせてくれた。


ディナサヤランはーー、
多くの定連さんに愛され、
むっつりしているときにはギャングスタのような顔の癖に、
写真を撮られるときには愛嬌たっぷりの笑窪をつくった。
つねに時制は現在形で、人称もよくまちがえる、ずたぼろの英語を堂々としゃべった。
日本語は助詞の「は」を知っていて、
ぼくになにかしゃべるときは、開口一番「××は~」としゃべり、
続きはずたぼろ英語で意見を開陳した。
ぼくのカタコトのタミル語は、誇り高いタミル人たちの一部を怒らせるから、
調子にのってしゃべるのはやめろ、と戒めた。
西葛西の人たちの多くをよく知っていた。
都バスの行き先表示のいくつかを読めることを自慢した。
高層アパートの前の座り心地のいい場所に腰掛けて、
街行く人たちを眺めるのが好きだった。
太めの女を見かけると oh,big size. とつぶやいて、にっこり微笑んだ。
ムンバイキッチンおよびムンバイパレスのオウナー・シェフのバサントは、
ディナサヤランを引き抜きたがっていた。
ブラックニッカを軽くバカにして、カティサークやティーチャーズを好み、
休みの日は朝からがんがん飲み、飲んだら眠り、夕方起きてはまた飲んだ。
パン屋で他のパンと一緒にカレーパンをそれとは知らずに買い込み、
これはいったいなんなんだ、と、ぼくに訊ね、
カレーパンだと教えると、なんのカレーなのか、と問い返し、
タマネギとニンジンとトマトのカレーだよ、と答えると、
「ナンセンス!」と怒ったものの、その後ときどき買って食べていた。


近年のぼくが世界でいちばん愛した料理人、ディナサヤラン、
こんな幕切れは似合わないよ。
ぼくはディナサヤランの高いプライドをおもうと、
ただただ胸が締めつけられる。
かれはつまらない駆け引きを仕掛けて、そして失敗した。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

  • アムダスラビー - ぼくとムゲーシュ

    ぼくとムゲーシュ

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2017/10訪問17回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

2番手ムゲーシュ、大車輪!

去る木曜日、料理長のディナサヤラン(体重105キロ)がインドへ戻ってしまって、
したがって、10月21日(土)と22日(日)のランチブッフェは、
2番手のムゲーシュが全面的にウデをふるうことになりました。


まず最初にアムダスラビーは30席のレストランでありながら、
料理人はたったの2人、しかも料理長のディナサヤランは37歳、
Dhanalakshimi Srinivation Hotels でエグゼクティヴ・シェフを2年勤めた一流中の一流、
なんでもかんでもひとりで作ってしまって、おまけにレシピは誰にも教えない。
(むかし気質の料理人はみんなそうですが。)
2番手のムゲーシュは、野菜のカットや、
パロタを焼くこと、ごはんを炊くこと、サラダを作ること、
そのほかおもに裏方仕事に携わっています。
そんなムゲーシュは27歳、
腕にエッチなタトゥーを入れているガキッぽさを持ちながら、
それでいてチェンナイの5ッ星ホテル育ちで、
ホテルのあらゆるポジションを順繰りに担当し、
アメリカ映画好きゆえ英語も達者で、お客のマダムたちからも愛され、
料理においても、卒なくドーサを焼き、おいしいインド中華や、
お洒落なサラダを作る教養をそなえています。
したがって、アムダスラビーの通常メニューならば、ほぼ問題はありません。
ただし、あの多彩なブッフェとなるとどうでしょう?


ぼくはそうとう気を揉んでいましたが、
しかしただいま21日10時50分、
味見をしてみたら、いいじゃないですか!
おいしいんですよ。
ヘルプの料理人のJabar Sin さんの助力のせいもあるにせよ、
ムゲーシュ、よくがんばりました!


ラッサムがいい感じにラッサムらしく、
ダルパラクはまったり上品、
キーライ・ブラックチャナポリヤルは、
ほうれんそうがかぶっているものの、優しく体を温めてくれ、
ヴェジチェティナドゥは野菜たっぷりで素敵においしい、
もちろんチキンペッパーマサラは文句なし。
ピーズ・プラオ(炊き込みごはん、グリンピース入り)と、
ウタパン(米粉と豆粉のパンケーキ)、
そしてデザートのパヤサムはまだ味見していないけれど、
しかし、これなら大丈夫でしょう。


ディナサヤランの味と系統は同じで、
かなりディナサヤランの味に近づけながらも、
それでいてやはり違う、
ただし、そのわずかな方向性の違いも、
けっしてマイナスにはなっていなくって、
どくとくの魅力に結実しています。


いちげんさんはもとより、
アムダスラビーマニアには、いっそうおもしろいんじゃないかしら。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/10訪問16回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

南インドにカレーはありますか?

7日(土)、8日(日)、そしてオウナーのゴヒル夫妻が試験的に9日(祝)も
ランチブッフェを出してみることにしたゆえ、
おのずとぼくは3日連続で愉しんだ。
今回は、ビギナーの人たちに向けて紹介してみましょう。
題して、「南インドにカレーはありますか?」





では、検証してみましょう。
まず7日(土)のラインナップでは、どうでしょう?


この日は、スタータードリンクがバターミルクで、
ほんのり酸味のある、ちょっぴり塩っぱいヨーグルト系の薄いドリンクです。
ほどよく辛味の効いた料理が多いですから、
あらかじめ おなかに膜を作りましょう。


ヴェジタブル・プラオ(野菜の炊き込みごはん)があって、
おいしいんですよ、これがまた。
ヴェジタブル・ウタパン(ほんのり酸味のある米粉と豆粉のパンケーキ)があって。
ウタパンは、ピーナツチャトニにつけて食べます。


ラディッシュ・ロビア・ポリヤル(大根とロビア豆のスパイシー炒め、ココナツの香り)があって。
ヴェジパコラ(野菜のかきあげ)があって。
揚げたてですから、クリスピーでおいしいんですよ。


汁ものはと言えば、ペッパーラッサム(酸味の効いた胡椒汁)、
ヴァッタル・プール・コロンブ(苦味スパイス ヴァッタルを具にした酸味の強いスープ)、
これらは、ごはんと食べるとおいしいんです。


そして、ゴビ・パニール・マター・マサラ(カリフラワーとカテージチーズとグリンピースのマイルドカレー)があって、これがいくらかカレーなのですが、
ただし、マイルドな仕上がりでシチューっぽいとも言えます。
こちらは パロタ(うずまきパン)と一緒に食べるとおいしい。


デザートがサブダナパヤサム。
タピオカをドライフルーツ、ナッツ、ヴァーミセリと一緒に煮た、
ほの甘い一品。


そんなわけで、この日のラインナップで、
まちがいなく正真正銘のカレーだぞ、というものは1品もありません。
これはビギナーの人を大いにとまどわせる原因のひとつです。
2番目にとまどわせるのは、酸味のある汁ものが多いこと。
3番目は、ココナツの甘い香りをつけてある料理が多いこと。
このあたりが南インド料理を好きになるか、ならないか、の別れ道です。
しかし、ここを乗り越えた人は、もう南インドぞっこんになることまちがいなし。





8日(日)のラインナップではどうでしょう?


この日はしっかりありますよ、
チキンハイデラバーディマサラが、チキンカレー。
多彩なスパイスを立体的に使ったぜいたくなカレーで、
パロタ(うずまきパン)と一緒に食べるとなんともおいしい。


この日は、ポテトとグリンピースのカレーもありましたが、
これはシチューっぽく、同じくパロタといっしょに食べるとおいしい。


そしてもうひとつの世界が作ってあって、
日本米のごはんに一報から、ガーリックラッサムをかけ、
他方からナスのサンバル(南インドのけんちん汁)をかけて食べます。
いずれも、カレーとはとうてい呼べない、
南インドならではの汁ものです。
好きになるとこれらがなくちゃはじまらない、
でも、好きにならなきゃ、なんだ、こりゃ、です。


この日もスタータードリンクはバターミルク、
そしてこの日のサラダは、おしゃれなルシアン・サラダでした。





さて、9日(祝)はどうでしょう?


この日の主役は、マトン・ビリヤニで、
なんといってもインド料理の華、
この一品だけでも、立派に成立するすばらしい炊き込みごはんです。
これにエッグ・マサラ(ゆで卵カレー)をかけて食べると超おいしい。
エッグマサラは、堂々たるカレーです。


この日はヴェジ・ミルク・コルマがあって、
これはもうあれこれ野菜のシチューです。
パロタ(うずまきパン)と一緒に食べると超おいしい。


その他、白ごはんにかけて食べるべきは、
クラブ・ラッサム(蟹のちょっぴり酸っぱい胡椒汁)と、
カダンバ・サンバル(ニンジン、ダイコン、インゲンなど、
7つの野菜を使った けんちん汁)
これがまた南インド的に優美でエレガント。


この日は、マイソールボンダ、コロッケもあって。


デザートはフルーツパヤサム。
スタータードリンクはレモネードでした。





そんなわけで、アムダスラビーの土日ブッフェには、
カレーらしいカレーは、あったりなかったり、です。
そのかわりというわけではないけれど、野菜シチューや、
あれこれ野菜のスパイシー炒めココナツの香りや、
そしてちょっぴり酸っぱい胡椒汁や、
妖しげな濃い酸味のある苦味スープ、
はまたま南インドのけんちん汁(?)があります。
これはけっしてアムダスラビーのみの個性ではなく、
これこそまさに南インド、タミル料理の世界です。
そのうえ、かわいいコロッケがあったり、
クリスピーな かきあげ があったり、
うずまきパンからデザートまで、
魅惑の料理が控えています。
興味がわいた人は、ぜひぜひ試してみてください。
そしてもしもあなたがインド料理マニアになったならば、いつの日か、
カレーというコトバがほぼ要らなくなる日がくるでしょう。
そのときとっくにあなたの体はインド料理なしにはいられなくなっていることでしょう。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/10訪問15回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

土日ランチブッフェで、おなかのなかから美しくHAPPYに。

ちかごろ炭水化物を悪者にする論調があるでしょ。
「炭水化物は必須栄養素ではなく、嗜好品です」とか、
「糖質制限は人類の希望だ」とか、
そんな大胆なことを言うお医者さんまでいて。
もちろん人それぞれ体質は違うものだし、健康状態もまた同様、
おのずと健康観も人それぞれであり、
世に無数の健康観があるのはむかしからのこと。
でも、このところあまりにも炭水化物敵視の声が大きくなってきて、
世間全体がそっちへそっちへとなびいている気がして、
ぼくなんてちょっぴり気弱になっちゃって、
南インド料理ばっか食べてちゃだめなのかな?
人に勧めちゃいけないの!??
なーんて心配してたんだ。
だって、南インド料理って、基本的に、
いろんな豆や多彩な野菜とわりとしっかり盛ったごはん、
すなわち炭水化物をたっぷり食べて愉しむものだもの。


そんななか南インド料理に援軍現る、って感じで颯爽と登場したのが、
腸内細菌叢を研究する学者たちですよ。
かれらはこんな主張をしています。
人間の体の細胞はひとり60兆個であるのに対して、
それをうわまわる100兆の細菌たちもまた暮らしていて、
とくに大腸のなかの細胞たちには、1000種を越える種類のそれぞれに
違った役割があり、異なった食材の好みがあり、
かれらはヒトの食べた食物をあれこれ食べながら、
ヒトに大事なヴィタミンを作ったり、
免疫機構をつくって外敵から守ってくれたり、
はたまた幸福ホルモンを出して脳にやすらぎを与えてくれたりするそうな。
そしてそんな腸内細菌がよろこんで食べるものは、
炭水化物であり、正確に言えばマメ、野菜、くだもの、ナッツ、
海草、キノコなどの食物繊維ですよ。
どーです! ねぇ。
もしも腸内細菌叢が貧弱になってしまうと、肥満になったり、
その人の免疫が弱くなって、花粉症や喘息にかかったり、
各種アレルギー、2型糖尿病、
自閉症などさまざまな病気を呼び起こすことがあるそうな。
だから、腸内細菌学者たちは言う、
若く元気でいたいなら食物繊維をいっぱいいろんな種類、食べましょう。
白米や精製された小麦粉で焼いたパンには食物繊維が入ってないので、
玄米や全粒粉が理想的。


なお、ごはんやパンなどの糖質を多少カットするのは健康に良い場合「も」あるにせよ、
しかしあまり徹底的にやると腸壁が薄くなって、
あげくのはてに腸内細菌が血管のなかに漏れる、
そんなたいへん危険な事態が起こりうるので、くれぐれも、
糖質もほどほどには食べましょう。
以上は、ぼくが言ってるんじゃなくて、
腸内細菌の研究者たちがおっしゃってること。


ぼくはうれしかったよ、だってそれってぼくにしてみれば、
みなさん、アムダスラビーの土日ブッフェを食べましょう、ってことだもの。
いいえ、厳密に言えば、ごはんは玄米の方がよりいっそう良いのだけれど、
でも、玄米じゃ南インド料理にならないし、他の日に食べればいいでしょ。


アムダスラビーの土日ランチブッフェは基本的に豪華ミールスであり、
それに加えて、ときどきビリヤニやプラオの日があったり、
イディリやウタパムはたまたウプマが入る日もあります。
食材はあれこれのマメ、ナス、オクラ、じゃがいも、ニンジン、キャベツ、
ときにはニガウリなど野菜もたっぷり、そして
肉か魚が1品あって。
チキンカレーの日が多いものの、ときにはマトンや鯖の日も。
料理ごとにほの酸っぱい、濃く酸っぱい、ちょっぴり苦い、
辛味を効かせた、まったり甘いなどなど、
上手に味が振り分けてあります。
香りもまたすばらしく魅惑的。
スタータードリンクにバターミルクやレモネードがついて、
サラダがあって、(平凡な日とおしゃれな日があります)、
パロタがあって、(ただしイディリがある日は、
パロタはありません)。
ごはんはバスマティと多産地混合日本米の2種。
(ただしバスマティを使ったビリヤニやプラオがある日は、
白ごはんは日本米のもののみ。)
デザートにパヤサムなどがつきます。
これで大人1200円、コドモ600円、乳幼児0円。


アムダラビーの土日ブッフェファンの人たちは、
アムダスラビーでブッフェランチを食べた日は、
夕食は抜いてもいいかしら、あるいは軽めでOK、
なーんておもったことはありませんか?
ぼくはけっこうあります。
あれ、ふしぎですよね、
たしかにおいしいからたくさん食べちゃうっていうこともあるにせよ、
でも、そんなそんなフードファイターみたいに食べたわけじゃない。
しかもべつに体調もすこやかで、
ただ、おなかは夕方になっても満足しています。


実はあれも、腸内細菌学者に言わせれば、
腸内細菌たちがマメや野菜をしっかり食べて、
食物繊維を分解して、そのときに出す3種の短鎖脂肪酸、
(酢酸/プロピオン酸/絡酸、これらは人をスリムにする物質と言われています)、
これらが人に満足感を長く与えてくれるかららしい。
なるほど、そうか、そういうことだったのか。


アムダスラビーの土日ランチブッフェをしっかり食べて、
朝にはバナナやリンゴやキーウイ食べて、
おやつにはミックスナッツをつまんだりして、スリムになって、
いつまでも若く、美しく、人生を楽しみましょう。


アムダスラビーの常連さんって、いかにも多士済々。
多忙ななかむりやり時間を作って
埼玉からバイクで駆けつける昆虫採集マニアさんや、
明るいおじいちゃんと、20歳は若く見えるその奥様と、
いかにも仕事ができそうな息子さんのご家族、
葛西エリアのインド系名店を巡回するお酒好きのおじさん、
かわいいイラストを描くおじさま、
ドナルドフェイゲンがスタッフみたいなバンドをやってるような、
そんな音楽を作ってるかっこいいギタリスト、
癒しの女性ヴォーカルさんとギタリストのミニマムなのにゆたかな響きのデュオ、
横浜からいらっしゃる南インド料理好き、
教会帰りに食べにいらっしゃる清楚な美女・・・。
きょうはひさしぶりにインド料理マニアのご夫妻、
そしてインド全域を旅した音楽好きな、コチンムーンさんも現れ、
そしてモロッコ、チュニジア、トルコ、スリランカを旅行し、
いまスパイスに夢中なお嬢さんもいらした。
みなさんとお会いできて、ほくもうれしい!


参考文献:

ジャスティン・ソネンバーグ+エリカ・ソネンバーグ著、鍛原多惠子 訳
『腸科学』(早川書房 2016年)

アランナ・コリン著 矢野真千子 訳
『あなたの体は9割が細菌』(河出書房新社 2016年)


2017年10月1日(日)


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/09訪問14回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

けっして美女にはお勧めしない、あまりにも正しすぎる南インド料理の食べ方。

アムダスラビーの土日ランチブッフェは基本的に豪華ミールスであり、
それに加えて、ときどきビリヤニやプラオの日があったり、
イディリやウタパムはたまたウプマが入る日もあります。
食材はあれこれのマメ、ナス、オクラ、じゃがいも、ニンジン、キャベツ、
ときにはニガウリなど野菜もたっぷり、そして
肉か魚が1品あって。
チキンカレーの日が多いものの、ときにはマトンや鯖の日も。
料理ごとにほの酸っぱい、濃く酸っぱい、ちょっぴり苦い、
辛味を効かせた、まったり甘いなどなど、
上手に味が振り分けてあります。
香りもまたすばらしく魅惑的。
スタータードリンクにバターミルクやレモネードがついて、
サラダがあって、(平凡な日とおしゃれな日があります)、
パロタがあって、(ただしイディリがある日は、
パロタはありません)。
ごはんはバスマティと多産地混合日本米の2種。
(ただしバスマティを使ったビリヤニやプラオがある日は、
白ごはんは日本米のもののみ。)
デザートにパヤサムなどがつきます。
これで大人1200円、コドモ600円、乳幼児0円。


これだけ料理の数が多いと、ふつうは迷ってしまいます、
これはいったいどう食べたらいいのかしらん。
実はアムダスラビーの土日ブッフェは、
3回おかわりして楽しめるようになっています、
いいえ、はじめのサラダとおわりのデザートを入れれば、
なんと5回!


まず、バターミルクかレモネードを飲んで、
サラダをついばむ。(サラダの脇にポリヤルを盛るのも楽しい。)
1回めは、丸いお皿にごはんをどかっと盛って、
そこにチキンカレーをかけて、混ぜ混ぜして白ごはんを染め、
ごはんを「カレーおじや状にして」食べる。
2回めは、パロタ(うずまきパン)をちぎって、
マイルド系のカレー(クートゥーとか)を食べる。
3回めは、丸いお皿にごはんをどかっと盛って、
片側からラッサムをかけ、もう片側からサンバルをかけ、
それぞれ味の違った、そして部分的に両者が混ざった、
そんな「おじや状にして」食べます。すなわち猫飯です。
このときポリヤルを脇に盛って、ついばむのも楽しい。
最後に、デザートをいただく。
ざっとそんな感じ。
むろんスプーンで召し上がってOKです。
ここまでは美女にもお勧めできます。


その他、南インドっぽい食べ方としては、
白い丸皿の上で、
パロタをこまかくフィンガーサイズにちぎって、撒いて、
その上に、チキンカレーをどばっとかけて、
混ぜ混ぜして、パロタをしめらせながら、食べます。
すでに美女にはお勧めしません。


その他、マニアックな食べ方は、最後に、
日本米にバターミルクをかけて、
混ぜ混ぜして食べます。
たいしておいしくありませんが、
しかし、これは南インド人が大好きなカードライスの簡略版です。
完全版は、テンパリング(香りづけ)します。


さて、これからが本題。
けっして美女にはお勧めしない、あまりにも正しすぎる南インド料理の食べ方。
これはいわゆるミールスセットでも同じことですが、
どか盛りごはんに一方からラッサムをかけ、
他方からサンバルをかけ、混ぜ混ぜして、
ときどきポリヤルもついばんで、
それこそコドモが泥遊びをするように、
指で食べてゆきます。
このさい鮨を握る要領で、軽くごはんを揉みます。
ごはんに汁をつけ、ごはんと汁を混じらせ、
米粒のすべてを淡いターメリックカラーに染め上げた、
おじや状のちいさな塊を作って、食べてゆきます。
やがて皿(もしくはステンレスの丸盆)には、
雨の日のクルマのフロンドグラスのワイパーの跡のように、
肘を支点とした前腕のストロークの跡がついてゆきます。
さて、ほとんど食べ終わっても、
それでもラッサムとサンバルの混じり合った汁がいくらか残ります。
汁ですから、指ではもはや食べることはできません。
そこで南インド人は、背筋を正して堂々と、
丸盆、もしくは皿を両手で持って、口元へもってゆき、
飲み干します。
これは実にあっぱれな、いかにも南インド人らしい食べ方ですが、
もしかしたら、ワーキングクラスの男しかやらない食べ方かもしれません。
むろんぼくは、日本人の美女にはけっしてお勧めしません。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/09訪問13回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

あなたの体から、プラオのいい匂いがします。

例によってアムダスラビーの土曜のランチブッフェを食べた後で、
スパイスたちのいい香りをほのかに放つTMVS FOODS に寄ったら、
店主のピライ・マリアッパンくんが、
銀縁眼鏡の奥のどんぐりまなこをくりくりさせてこう言った、
「あなたはきょうプラオ(炊き込みごはん)を食べましたね、
あなたの体からプラオのいい匂いがします。」
ぼくは驚いた、かれの大きな鼻がそなえた恐るべき嗅覚に。
どうしてそんなに正確に言い当てることができるのだろう!??
(実はアムダスラビーには、キャッシャーの脇にファブリーズが置かれていて
自由に使えるのだけれど、ぼくはそれを使わなかった。)


それにしても、である。
なるほど、この日も
ヴェジタブル・プラオ(バスマティ)は、軽やかで、
香り良く、ぼくはにこにこ顔でいっぱい食べたけれど、
それ以外にも、以下の料理もまたおいしくいただいたのだ。


まずはサラダをついばみ、
プラオに、チキン・ペッパー・マサラ(=チキン・カレー)をかけると、
いちだんとおいしい。
そしてカリフラワーが上品においしいゴビ・マター・マサラ、
この日はししとうを上手に使ってあるアル・ジーラ。

ほのかな酸味のプレイン・ウタパムに、
ひんやり冷たい純白のココナツチャトニ。
カリッと揚がった野菜のてんぷらヴェジ・パコダ。


おかわりに多産地混合日本米を盛って、
一方からガーリック・ラッサムをかけ、
他方からニガウリのプーリ・コロンブをかけ、
猫飯にしていただく。


そしてデザートにセミヤ・パヤサム。
どれもすばらしくおいしかった。


さて、これだけあれこれいただいていながら、
結果、やがてプラオのかおりだけが勝ち残って(?)
ぼくの体を包んでいただろうか?
たしかにプラオは、シナモン片、ナイフを入れたカルダモン粒、
クローブなどホールスパイスを豊富に使うゆえ、
魅惑の香りはひじょうに強いとは言え、
しかしそれはビリヤニとて同じこと。
いいえ、ビリヤニはいっそうワイルドな香りのトーンがあるとはいえ、
どうしてプラオと当てられるだろう???


多くの国の料理にとってスパイスはそれほど必要ではない。
けれどもインド料理においては、少なめに見積もっても
十種程度のスパイスは欠かせない。
それどころかインド料理はスパイスもまた食材であって、
野菜や豆、あるいは肉と一緒に食べるものある。
じっさい、インド人が2週間ほどスパイスなしの料理を食べる実験をしたところ、
結果、調子が悪くなったという報告もある、理由は、
インド人の腸内細菌叢はさまざまなスパイス摂取を前提にしているからであるらしい。
そんなかれらが香りについてもうるさくならないわけがない。


さて、ピライ・マリアッパンくんに話を戻せば、
このような精緻な嗅覚を持つがゆえ、
運命はかれをスパイス商になるべく導いたのだろうか?
そしてまた、かれにとって日々はいったいどんな経験なのだろう?
かすかにその人の体臭と混ざり合ったマサラの匂いとともにお客は現れ、
なにか商品を購入して、その香りとともにお客は去ってゆく。
やがて別の匂いとともに別の客が現れる。そしてまた・・・。
たとえばかれの好みの美女客が現れ、
ただし彼女がまとっている匂いは、かれが好むバランスを欠いているとき、
かれの心はひどく煩悶するだろうか?
惑いとともに、つい会話がつかえたりするだろうか?
いずれにせよ、愛嬌たっぷりなインド人、
電卓と携帯電話とともに妙に手馴れた日本語を操りながら、
日々の暮らしを忙しくいとなんでいる商店主ピライ・マリアッパンくんには、
人知れず、なんとも神秘的な内面生活(鼻腔生活?)があるらしい。


2017年9月9日 土


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/08訪問12回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

食いしん坊な神様、ガネーシュの誕生日。


音楽を聴きながら、どうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=8XShAZAcan8


父はシヴァ、
空から落ちてきたガンジス河を頭で支えた男。
その頭に新月をいただき、三叉の矛を手にする。
山のなかで修行した、
そのとき修行を邪魔する美女神カーマを、
修行の邪魔をするな、と、
額の第三の目から火を吹いて殺してしまった。
(もったいない!)


母はパールヴァーティ。山の娘。いくつかの別名を持っています。


シヴァとパールヴァーティがもうけた
ふたりの子のうちのひとりが、ガネーシュ。Ganesh 。
象の顔、片方の牙は折れている、太鼓腹、4本の腕を持ち、
ネズミを乗り物にしている。
ガネーシュはおいしい食事と果物が大好き。
ガネーシュはわがままで嫉妬深いが、
うまくするとあらゆる障害を取り去ってくれ、
財産をもたらしてくれるそうな。


それにしてもインドの神話って、どうしてこうも荒唐無稽なんだろう!
おもしろいから良いけど。





きのうはガネーシュの誕生日だったそうで、
きょうのアムダスラビーの週末ランチビュッフェは、
それにちなんだものになっているそうな。


Butter Milk
Green Salad


Ven Pongal(米と豆をミルク煮した、オフホワイトの粥。
ナッツとシード系のスパイスがこんがりローストされて、効いています)
これに、Katharikai Gothsu (あざやかなターメリックカラーの、
豆のスパイシーポタージュ、茄子入り)をかけて、食べる。
優しく上品なおいしさ。


Vegetable Uttapam (米粉と豆粉のパンケーキ、ニンジン、タマネギ、インゲンが、
細かく切って入っています。)
これに、ひんやり冷えた純白のCoconut chutney をつけて食べます。おいしい!


Veg Pakoda (野菜の掻き揚げ)。サクッカリッとしたおいしさ。

Carrot Peas Poriyal(ニンジンと豆のスパイシー炒め)
ニンジンのオレンジ色が綺麗。優しい甘み。




Chicken Kuzhambhu (チキン・カレー)
肉片が微笑んでいます。




Garlic Rasam ニンニクを効かせた黒胡椒汁、タマリンドの酸味。
Vathal Kuzhambhu こちらはさらに濃いタマリンドの酸味、
苦味スパイス ワッタルが効いています。
Japanese Rice 上記ふたちうの料理を左右からかけて、
猫飯にして食べます。


Semiya Payasam (ヴァーミセリとナッツ、レーズンのミルク煮)
血糖値が幸福に上がってゆきます。





インドがそれほど熱狂的に宗教的な国だとは、
ぼくはけっしておいもわないし、
そもそもヒンドゥーは宗教というよりもむしろ習俗みたいだとおもうけれど、
いずれにせよ、かれらの多くは神様たちと仲良くつきあっている印象はある。
とくにヒンドゥーで商売をしている人たちは、
ガネーシュ像を飾り、毎朝ゴマ油でガネーシュの体を磨いて、
その後、そっと水でふき取ってあげたりしている。
のどかでいいなぁ、とぼくはおもう。


2017年8月26日 土

ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/08訪問11回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

カルパシに恋した女。

ぼくは言った、「なにかお探しですか?」
マニカンダンは言った、「なにくわぁおさがしゅでしゅか?」
「No,no,no, なにかお探しですか? Repeat me.」
「なにくわぁおさがしゅでっか?」
「No,no.no...」
土曜日の夕方、馴染みのインド食材店でぼくは、
鉛筆のように痩せて、背の高いショコラ色の肌のインド青年に、
日本語を教えていた。
客が現れるととうぜん授業は中断する。
インド人はもちろん、フィリピン人、サウジアラビア人など、
いろんな国の客が入れ替わり立ち代わり現れては、
食材を買って去ってゆく。
そんななか茶色の髪がふんわりした若い日本人の女が現れた。
彼女は店の棚に端から目を走らせ、やがてスパイスの棚をじっくり精査しはじめる。
ぼくは言った、「なにかお探しですか?」


彼女は言った、「カルパシ、ありますか?」
ぼくはマニカンダンに訊ねた、「カルパシ、あったっけ?」
マニカンダンははにかんで困った顔をして言った、「No.」
ぼくは彼女に言った、「ごめんなさい、あいにくカルパシは扱っていません。
どこでカルパシに出会いましたか?」
「ダバインディアでマトンカレーをいただいたときに、
すっごくおいしくて、そのときにカルパシを使ってるっていう説明があったので、
メモして、それ以来、探してるんです。」
ぼくは言った、「カルパシは、どんな料理にも使うスパイスではなくて、
またどんな料理人も必ず使うようなスパイスでもなくて、
たとえば、南インドのタミルナドゥ州に、おカネ持ちの
チェティナド族という、むかしから貿易で稼いできた人たちがいて、
かれらの料理は(なにしろカネ持ちですから)スパイスをあれこれいろんな種類使うんですよ、
かれらの料理のなかにはカルパシを使うものがあります。
ごめんなさいね、ものがあればいちばんいいんだけれど。」
彼女は感心したような、ものたりなそうな、なんともいえない表情をした。
ぼくは訊ねた、「これまでどんなお店でインド料理を召し上がってきましたか?」
彼女は答えた、「ダバインディアの他は、カッチャルバッチャルと、
それからあともう一軒、えーっと名前が出てこない。」
ぼくは感心した、「それでもうカルパシに出会いましたか!
早ッ! これから先の成長が愉しみですよ。」
ここでぼくは、一押ししてみた、「南インド料理に興味があるんだったら、
あしたの日曜日、アムダスラビーにいらっしゃいませんか?
ブッフェスタイルで、ラッサム、サンバルはもちろんのこと、
ごはん、パロタ、いろんなカレー、
スタータードリンクをはじめサラダからデザートまで
10種類のタミルナド州の超土着料理が愉しめますよ。
もしも開店11時にいらしたら、ぼくが盛り方、食べ方を教えてさしあげますよ。
食べ方が大事なんですよ、
もしも食べ方を間違うと、すばらしい料理であってさえ、おいしくもなんともないんだから。」


彼女が店を去ってすぐ、ぼくはディナサヤラン料理長(体重108キロ)に電話した、
「あした、カルパシ好きのお客さんが来るよ。」
するとディナサヤランは言った、「オーケー、オーケー、
だいじょぶだいじょぶ、ディナサヤラン、
あしたのチキンペッパーマサラにカルパシ、使う。」





さて、明けて日曜日、約束どおり彼女は11時をちょっとまわった頃、
自転車を漕いで、アムダスラビーへやって来た。
ぼくは彼女を席に案内し、ぼくも彼女の向かい側の席に座る。
まずはこの日のスタータードリンクの、
レモネードを紙コップに注ぎ、いただいて、
つづいて、赤いパプリカと緑のブロッコリーのコントラストが派手な、
白ゴマをまぶしてあるサラダを食べる。
次に、白い丸皿にバスマティライスを盛って、
左側からソヤ・チャンク・ワルワルを注ぎ、
右側からチキンペッパーマサラを注いだ。
そして、それらを食べる途中で、
ぼくはディナサヤランからもらったカルパシの一片を彼女にさしあげた。
カルパシは黒く乾燥し、黒い石の花、という名前がいかにもそれらしい。
彼女は、自分の手のひらに乗せて、カルパシを眺めている。
「へぇ、これがカルパシなんだ! あ、チキンカレーのなかに入ってる!」


つづいてパロタ(うずまきパン)と冬瓜のクートゥーを食べ進む。
冬瓜がマイルドなカレーグレイヴィーを吸い込んで、
エレガントです。


メインは、丸皿にごはんを盛って、
左側からダルラッサム、右側からダイコンのサンバルをかけ、
揚げたてふかふかのワダを添えた。
ぼくは言った、「こうやって左右、違った味にして、
それでいていくらか混ざってもだいじょぶで、
それぞれ猫飯にして食べるんですよ、
これが南インド式。もっともいろんな食べ方があって、
けっきょくは自分の好きなように食べればいいんだけれど、
ただし、ぼくはこの食べ方がいちばん好き。」
彼女は感心して、おっかなびっくりそうやって食べてくれる。
しかも、満面の笑顔で、「おいしい!」なんていってくれちゃって!
ぼくは、南インドマニアとして、たいへんな幸福を味わう。


最後のデザートはパイナップルケサリなのだけれど、
彼女はおなかいっぱいで食べられず、
ぼくだけが食べた。


そして彼女は、ディナサヤランに手を振って、「おいしかった♪」と言った。
ディナサヤランは、ギャングスタのような顔がいきなり笑顔になって、
愛好を崩してゆろこんだ。
そして彼女は会計を済ませ、階段を上り、ぼくにお礼を言って、
店の前に停めておいた自転車に乗って、
茶色いふんわりしたか髪をなびかせて、去っていった。
ぼくは、カルパシに恋した女の背中を見送った。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/08訪問10回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

8月15日、インド独立記念日に。

インド的にはめでたい日なので、マクダウェル McDowell's のウィスキーかラムのワンショットと、
フィッシュフライをサーヴィスするそうなので、寄ってみた。
オニオン・ウタパム onion uttapam 1000円を注文した。
テレビでは、15日間、雨つづきのニュースにかわって、
小池都知事が戦没者追悼式に参加した映像が流れている。


マクダウェルーこのスコットランド由来の名を持つ黄金色の液体は綺麗な香りで、
グラスのなかの氷の音も心地よい。
フィッシュヘッドフライ(ボラ)が届く。
マサラにまみれたボラの頭が黒々と焦げ、
白身はところどころマサラでオレンジ色に染まり、ほっこりおいしく、
ゼラチン質はとぅるんとセクシー。


他方、オニオンウタパムは米粉と豆粉の生地をいくらか発酵させて、
刻んだタマネギを混ぜて焼き上げたパンケーキで、
ステンレスの丸盆でサーヴされる。
レッドチャトニ、ココナツチャトニ、そしてサンバルが添えられ、
それらをすべてウタパムの上に注ぎ、
ウタパムを半月状に折りたたんで、少し押したりして馴染ませて、
ちぎって食べる。加熱されたタマネギのほのかな甘さが優しく、
2種のチャトニとサンバルがそれぞれ部分部分で違った味をつくりだし、
ときにやや混じり合って、食べているうちに、生地もほぐれ、
右手の指は料理まみれになって、
泥遊びをしているコドモのような心地になるのも楽しい。
実はこれはあまりにもタミル土着な食べ方で、
たとえばインド北西部ムンバイのミドルクラスのインド人がぼくのこの食べ方を見れば、
驚き、呆れ、眉をしかめ、なんだこの野蛮なジャパニの野郎、
とゲラゲラ笑いだすだろうけれど、しかしそれがまた愉快で、
そういうときぼくは背筋を伸ばして威張って食べる。





おもえばジャワハルラール・ネルー 1889年 - 1964年 は少年時代、
日露戦争に日本が勝利したニュースにたいそう興奮したそうで、
そうした感慨はけっしてネルーだけのものではなく、それどころか、
その後、中村屋のインド人として知られることになるボースさんや、
その後、ナイルレストランの初代オウナーとして知られることになるナイルさんは、
大日本帝国と共闘して、インドの独立を勝ち取るというヴィジョンに
青春の志を捧げた。しかし残念ながら、大日本帝国は、
一方で中国と、他方でアメリカと戦争を続けるなかで病弊し、
戦争に負けてしまった。


他方、インドは戦後独立を勝ち取ったものの、
それはまったくもって日印友好戦線とは無縁の成果だったし、
しかも、パキスタンと(当時、東パキスタンとして)現バングラデシュが、
ムスリムの国として分離独立する形になってしまった。
(もともとパキスタンはインドのパンジャブ地方の一部だったし、
バングラデシュはベンガル地方としてひとつらなりだった。)
象の顔に似たインドは、両耳を切り離されて独立とあいなった。
気の毒なのは、パキスタン側に暮らしていたヒンドゥーたちで、
命からがら家を捨て、デリーの方へ逃げ延びていったり、
あるいは国を捨て、国外へ亡命したのだった。
このとき亡命した料理人たちが、世界中に散ったがゆえに、
インド以外のほぼすべての国のインド料理が、
タンドリーチキンとバターチキンカレーとナンの、
パンジャビ料理になったのだった。
もう70年もむかしのはなしだけれど。


インドはふしぎな国だ。
地域ごとに言語が違って、代表的なものだけでも22の言語があって、
いちおうの公用語はヒンディながら、それとて誰もが学んでいるわけでもなく、
また言語の数は方言まで含めると800とも1600とも言われ、
けっきょく事実上の公用語は英語である。
そういうところにも、大英帝国が統治していた時代の、
分割統治の影響がないはずがないけれど、
しかしながら、こと言語事情に限って言えば、
必ずしもそれはけっしてはかなむべきことでもなく、
むしろインドのゆたかさ(多様性)の源泉にもなっている。
たとえば料理にしても、パンジャビ料理、ムガル帝国の料理、
ベンガル料理、ゴア料理、南インド料理と大きく分けても5種類はあるし、
細かく分けはじめたらキリがないほどゆたかな料理世界があって、
それらが堂々と共存しているのも、それぞれの地域言語が生きていてこそだろう。


アムダスラビーのようなちいさなレストランのなかでさえ、
タミル語、ヒンディ、ずたぼろ英語、ネパール語、カタコト日本語が飛び交う。
たとえ他人の言語で自分にはつたなくとも、なんとしてでも冗談を言い、
ときには相手をからかい、陽気に罵倒する。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/08訪問9回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

2017年8月12日(土)ランチブッフェに悶絶した。

みなさんにとってはどちらかといえばどうでもいいことかもしれないけれど、
アムダスラビーの週末ランチブッフェ1200円は、もはやぼくのアイデンティティの一部ゆえ、
きょうみたいにしあがりがすばらしいとほんとうにうれしい。
いかにもディープタミルな、こんな構成だった。


★グリーン・サラダ
★ヴェジタブルパコダ(野菜のかき揚げ)
高温の油で一気にカリッと揚げてあって、
ひじょうにテクニックが高い。
★キャロットチャナポリヤル
(ニンジンと黒ひよこ豆のスパイシー炒め)


★鯖のマサラ・フライ
マサラで真っ赤に染まった一口サイズの鯖、
エッジはかりっと焦げていて、
鯖どくとくの苦味がマサラとあいまって、おいしい。
揚げ油のゴマ油の風味が香ばしい。油切りも良い。


★エッグマサラ(ゆで卵カレー)
フレッシュトマトの 酸味の効いたグレイヴィーに、
ゆで卵のまったりしたうまみがおいしい。

★バスマティライス
かろやかな茹であがり、ポップコーンの香り。

★オニオン・ウタパム(米粉と豆粉のパンケーキ)
ほのかな酸味があっておいしい。
★ココナツチャトニ
ひんやり冷たいココナツディップを添える。
なんともエレガント。


★マイソール・ラッサム
ニンニクのうまみの効いた
黒胡椒のコンソメにフレッシュトマトと
タマリンドの酸味が口のなかに広がる。


★ボトル・ゴード・クゥートゥ
(インド瓜のマイルドカレー)
ざく切りのインド瓜に、ほっこり火が入って、
オレンジ色のマイルドでそれでいて辛味の効いた、
グレイヴィーを吸い込んで清楚にセクシーな食感。


★セミヤ・パヤサム
カシューナッツとレーズンとヴァーミセリのミルク煮。
ほのかな甘さ。

★マンゴー・ジュース
色も綺麗で、南国感がたのしい。
血糖値があがってゆきます、極上の幸福感とともに。





ディナサヤラン(体重105キロ)料理長は、にっこり笑って、
野球のグローブみたいな肉厚な右手を広げて見せた。
手の甲はショコラ色で、てのひらは薔薇色、
人差し指の根元と、中指のまんなかに、
それぞれ血豆がひとつづつあった。
ぼくはおもった、これはいわゆるところの
ダンディズム(=自慢)であるに違いない、
ぼくはディナサヤランのこういうコドモっぽいところが好きだ。
給料も出たので、そうばんフィリピン女性のところに
つかのまの愛をたしかめに行くのだろう。


なお、8月12日(土)、13日(日)のディナータイムは、
スペシャル・メニューがあるそうな。


羊の脳みそフライ 950円
鶏レヴァーフライ 750円
魚フライ マサラをまぶした姿焼き 1000円
魚フライ(ボラ、カットされたもの)750円


8月15日(火)は、インド独立記念日ゆえ、
ディナータイムに、マクダウェルのラムかウィスキーのワンショットと、
魚のマサラフライのサーヴィスがあるそうな。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/08訪問8回目

-

  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

えーと、あのね、平日の南インドターリ 1100円なんだけどさ。

午前中、わが友ピライ・マリアッパンくんの相談事につきあった後、
昼食に、おのずと自然な流れでアムダスラビーへ。


ピライ・マリッパンくんはナン+チキンカレーのセット。
ぼくはチキンティカ 1p 250円と、
南インドターリ 1100円を頼んだ。


ピライ・マリアッパンくんは、うん、大丈夫です、おいしい、
という感じで、ほどほどに満足そう。


ぼくの方は、チキンティカは、肉質も柔らかで
マリネも良く、噛めばジューシーに肉汁が口のなかに広がる。
とてもおいしい。


他方、南インドミールスはこんな構成。
澄んだ酸味のラッサム、
ちゃんとサンバルらしい香りをそなえたナスのサンバル、
ココナツのファンシーな香りを放つ いんげんのポリヤル、
上品なバランスの冬瓜と大豆のカレー、
見事にふくらんだ、高い技術を見せつける、揚げパンのプーリ2枚。
軽やかに仕上がったバスマティ・ライス。
どれも標準的なおいしさではあるものの、
そしてサンバルとごはん、ラッサムとごはんなど混ぜて食べるときの、
味のバランスもちゃんと考慮されていて、
ちゃんとしたミールスになってはいるものの・・・。
しかし、どうしても、あのすばらしい、
ときにはその奇跡に悶絶するほどすばらしい日さえある、
ぼくが世界中でもっとも愛しているとともに、
もしも南インド料理好きの人でまだ食べてない人がいたとしたら、
痛恨の大損失無限大、もしもそのまま死んでしまえば千年の悔いを残すだろうところの、
土日のランチブッフェ1200円と比べると、
いささか精彩に欠ける。


これはひとえにオペレーションの問題で、
土日のランチブッフェは数十人ぶんを一気に作るゆえ、
11時開店時のおいしさは比類なく高い。
しかも2時くらいまではそうとうレヴェルが高い。
そもそもその日のメニューを目をらんらんと輝かせて待っている、
そんな常連たちが関東全域からつめかけたりつめかけなかったりするし、
オウナーのゴヒル夫妻が味見にやって来る日もままある、
そんな土日ブッフェには、
作る方も嫌が応にもテンションが上がろうというものだ。
それに対して平日の南インドターリは、
注文ごとの、ままごとみたいな少量調理ゆえ、どうしても迫力が出ないのだ。
もっとも、当たりのときの超絶的すばらしさと、
手抜きのときのテキトーな仕上がりの落差の激しさに、
ディナサヤランの大物っぽさがあると言えないこともないけれど、
しかしなんでもかんでも褒めればいいってものでもない。


わが愛、アムダスラビーをおもうと、
いささか残念だ。
アムダスラビーで、「ふつうにおいしい」だなんて、
そんなの、つまんない!!!
おれを絶叫させてくれ、
うまいうまいうままままま~~~~~~~
と叫びたいんだ。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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2017/06訪問7回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

部分と全体の一口ごとの変化。ときどきの奇跡。

ディナサヤランはすっきりたんじゅんな人生を生きている。
チョコレート色の肌の、樽のような体幹をそなえた巨漢(体重105キロ)で、
まだ37歳だというのに頭は堂々と禿げあがり、
不機嫌そうなときはギャングスタのようだけれど、
笑うと二重まぶたの目がくりくりして、笑窪もできて、愛嬌たっぷり。
朝から晩まで料理を作り、寸暇を惜しんで食べて、飲んで(IWハーパー)、
スマートフォンでSUN TVのニュース見て、家族に電話して、
洗濯して寝る毎日をひたすら繰り返す、つねに他愛のない冗談を言いながら。
ぼくと一緒にいるときは、「あのね~」とか「わからない」とか
カタコトの日本語を使っておどける、いずれもぼくの口癖が移ったものだ。
店が休みの月曜日の午後は、団地のあいだのベンチに座って街行く人たちを眺める。
(かれは知り合いであろうとなかろうと西葛西の多くの人たちのことをよく知っている)。
そして好みであるところの太め女が通り過ぎるとにっこり微笑む。
かれの優美で華やかな料理とその風貌や暮らし向きのあいだにギャップを感じるのは、
ぼくだけだろうか。


このごろのアムダスラビーは、壁紙もちょっぴりお洒落に張り替えて、
トイレットも買い換えて、ライティングも改善して、
ちょっぴりレストランっぽくなってきた。
土日のランチブッフェ(大人 1200円、コドモ600円)も、
スタータードリンクにバターミルクをつけ、
パロタばかりでなく、ときどきウタパンやイディリや、はたまたウプマを出したり、
ごはんもビリヤニやプラオの日も増えて、
南インド料理らしさがいっそう深まり、ヴァラエティも増してきた。


アムダスラビーの土日ランチブッフェはいつもとてもおいしいけれど、
しかし、ときどき超ワンダフルな日があって、
たとえばきょう、2017年6月18日(日)、来た来た来た来た来たーーーーーー。
こんなメニューなんだ。


バターミルク(ちょっぴり塩っぱ酸っぱいスタータードリンク)
トスド・ラディッシュ・サラダ(ニンジン、キューリ、紫タマネギの千切り、チャットマサラ和え)


ヴェジ・ラヴァ・キチュディ&オニオン・トマト・チャトニ
(セモリナ小麦のお粥、ひりっと辛味をしのばせたトマトのディップをつけて)

冷製ヴェジ・アヴィアル
(じゃがいもとニンジンのココナツ風味シチュー)


バスマティ・ライス


アーンドラ・骨つきマトン・カレー

マイソール・ラッサム
(ラッサムスープ、マイソールスタイル)

パンプキン&ラディッシュ・サンバル
(かぼちゃとダイコンを具にした、南インドのけんちん汁)

キーライ・ワダ
(がんもどき、ほうれんそう入り)


セミヤ・サブダナ・パヤサム
(ヴァーミセリのミルク煮、ナッツ、レイズン入り)


見事なラインナップである。





冷たいバターミルクで胃袋を優しく包み、
まずはサラダをついばむ。
そしてキチュディにチャトニをつけて食べる。
南インドらしいカラフルな仕上がり、おいしい。


食べ終わったら、バスマティライスを盛って、
小鉢に冷製ヴェジアヴィアル、もうひとつの小鉢に羊カレーを盛って、食べる。
冷製アヴィアルがしゃれている。
他方、羊カレーは肉質は柔らかく口のなかでほろりと骨がほどける。
スパイスの染み渡った肉汁が広がる。


おかわりは日本米を盛り、
片側からサンバル、他方からラッサムをかけて食べる。
滋味ゆたかな味わい。


最後にセミヤ・サブダナ・パヤサムの清楚な甘さで、〆る。
南インド料理の最高の悦楽。


一般に南インド料理ミールスは、
【炭水化物6: 蛋白質2: 脂質2】
くらいの比率で構成されることが多いけれど、
ただし、むろんブッフェの場合は、
食べ手が好きな比率で自分の好きなように食べればいいのも魅力のひとつ。


アムダスラビーのブッフェは事実上ミールスでありつつ、
ときどきティファン(軽食)の要素も取り入れていて、
南インドの結婚式のような贅沢が味わえる。
必ずしも一品料理をあれこれ揃えて並べているわけではなく、
むしろひとつひとつの料理は全体の構成要素でありすなわち部分であって、
それら部分が合わさって、全体としてひとつの世界を構成するもの。
しかも、食べ手が一口づつ食べながら、その過程で、
料理宇宙の全体がちょっとづつ変化してゆくのもまた楽しい。
ただし、ときにはどれもおいしいしあれこれ食べてたのしいけれど、
でも、欲を言えば感動が足りないなぁ、という日もあって。
それでも相対的にはすばらしい、東京屈指の南インド料理店であり、
チェンナイの一流店と比べてもままったく遜色はありません。
しかし、すばらしくかけがえのない恩寵のような日がいつ訪れるか、
それは誰にもわからない。
(どこの名店もたいていそういうもので、
大事なことはときどき奇跡が起こるか否かであり、
凡店においてはいついかなるときであってもけっして奇跡は起こらない。)
さて、そういうー不意に訪れるー特別な日の料理に
脊髄に悦楽の電流が流れるほど感動できるのは常連の特権かもしれなくて、
たとえばたまたまそんな特別の日に運良く遭遇しても
(場合によっては)人はそれほど感動できないかもしれません。
なぜって、料理の快楽は作り手と食べ手のあいだに生まれるものでゲーム性があって、
まず食べ手が南インド料理をそうとう食べこんでいることが条件だし、
もっと言えば、もしかしたらアムダスラビーで
スロットマシンで2つ揃った時間が続くような「じらし」をしっかり味わった後でこそ、
ようやく3つ揃ったその瞬間にエクスタシーが電流のように流れるのかもしれません。


東京も梅雨らしくなってきた。
インド的には雨は恵みと祝福の象徴である。
タミル州の田舎Trichy 村のディナサヤランの一族にとっては、
ポニーライスの田植の季節である。


2017年6月18日(日)


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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ー 訪問(2022/09 更新)6回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

期間限定・羊の脳みそ炒め。

羊の脳みそといえばフランス料理として有名なことは知っていたけれど、
ぼくはちゃんと食べたことはなかったし、
またインド文化圏でも食べることも知っていたけれど、
こちらもまた同様だった。
さて、アムダスラビーが今回期間限定で、
オーストラリア産の冷凍・羊の脳みそを買って、
羊の脳みそ炒め(マトン・ブレイン・フライ 950円)を出すというので、
しかもディナサヤラン料理長(体重105キロ)がのりのりということもあって、
これを機会に調子にのってぼくも食べてみたよ、
マハラジャ・ビールを飲みながら。


茶褐色の料理の上に、あざやかな緑色のコリアンダーリーフが散らされています。
おそるおそるその茶褐色の料理をスプーンですくって口に入れると、
食感は優しく柔らかくふにふにで、
ちょっとスクランブルドエッグや白子をおもわせます。
ただし、スパイスはしっかり効いていて、辛味がいい感じに口のなかに広がります。
いいね、おいしい! ビールが進む。
オーストラリアについてぼくは、
コアラとエアズロックとアボリジニとシドニーのオペラハウスくらいしか知らないけれど、
(すなわちなーんにも知らない)、
いまぼくに食べられている羊は、その脳みそに、
いったいどんな記憶を宿していたかしら。
ぼくの今夜の夢のなかに現れたりしたら、
ちょっとしたSFになりそう。





羊の脳みそ炒め(マトン・ブレイン・フライ)は、
3月18日(土)夜、
19日(日)夜、
20日(祝)昼/夜 限定で、
950円。
マハラジャ・ビールも、
この3日間は1本、350円。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
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ー 訪問(2022/09 更新)5回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

アムダスラビーファンは、夜、なにを食べればいいの?

どんなレストランもいくらかなりとも謎めいている。
たとえオウナーであろうと料理長、給仕長であろうと、
けっして店の全貌を知ってはいなくって、
ましてや客はわずかな情報を手がかりに、いくらか賭けの心意気とともに、店の扉を開く。
そして、さぁ、わたしをたのしませておくれ、とテーブルへ着き、
メニューを開けば、さぁ、どんな宝物が潜んでいるかしら、
と興味しんしんになるものだ。


アムダスラビーは、南インド、タミルナドゥ州の料理を提供するレストラン。
土日のランチブッフェ1200円がすばらしく、
平日&祝日は、ランチセットB(マサラドーサ・セット)1000円、
蟹づくしミールス 1700円が人気だけれど、
実は、ポム・フリットターリ(マナガツオのフライのセット)1500円も見逃せません。
もしもおふたりでディナーならば、
それぞれ一皿づつポムフリットセットを注文して、
さらにマトンマサラ(=マトンカレー)1050円をひとつ注文して
シェアして召し上がるのも楽しいですよ。


ちっちゃめのマナガツオは外側カリッと素揚げしてあって、
内側の白身はほんのりとまるで蒸したかのように上品に仕上がっています。
ときどきピクルを舐めたりしながら、バスマティライスで食べます。
そこにマトン・マサラがあると、まったりしたホットなグレイヴィーのなかに、
柔らかに微笑む骨つきの肉塊が佇んでいて、リッチな構成感が生まれます。


これらをインドラムのオン・ザ・ロックを舐めながら、
セット・ドーサ(スポンジ・ドーサ)と一緒に食べると、
いかにもアムダスラビーらしい食べ方になるのだけれど、
でも、ざんねんながらセットドーサはまだメニューに載っていません。
また載ったとしてもセットで1000円くらいになるだろうけれど、
ほんとはセットドーサは単品で500円ていどにしたら、
あるいはポムフリットセットのごはんをセットドーサと変更できるようにしたら、
いかにもチェンナイの食堂みたいでいいんだけれど。
ぼくはいちおう提案しておきますけど、でも、通らないだろうなぁ。


余談ながら、アムダスラビーの料理長のディナサヤラン(体重105キロ)も、
二番手のムゲーシュもタミルナドゥ州出身で、
タミラガンは朝に晩にドーサとイディリを食べ、昼はミールスを愉しみ、
チキンチェテイナドゥとアンブール・ダム・ビリヤニがごちそうで、
映画スター、ラジニカーントを愛しています。
(もっともムゲーシュは現代っ子でアメリカ映画ファンだけれど。)
タミラガンは大阪の人たちみたいに陽気で冗談大好きで、
友達同士が会えば、笑顔でお互いに罵倒しあう。
「よお!」と声をかければ、愛嬌たっぷりに笑って「黙れ!」と返し、
”Yesterday,you,how much drinking?”と重ねる。
英文法の壊れっぷりも好ましい。これが友情の証なのである。
もっとも、これはいくらかワーキングクラスのはなしではあるけれど。


さて、かの地は先週、収穫祭ポンガルフェスティヴァルが終わったところ。
たいそうめでたい祭で、毎年、
青年が水牛と格闘するスポーツ bull-fighting、
タミルふうに言えば jallikattu がメインイヴェントのひとつです。
これは紀元前4世紀から伝わるタミルの伝統的スペクタクルで、
檻から放たれ走り逃げる雄牛に、青年たちが挑みかかり、
暴れる雄牛の角をつかまえ、飛び乗ろうとする。
巧く飛び乗れて、しばらく乗っていられれば、成功である。
毎年けっこう死者が出るらしく、今年は百人にものぼった。
他方、このjalikattu には動物愛護団体の反対もそうとうあって、
禁止するかどうかを争う裁判が最高裁にかけられています。
しかしこれを禁止されてはたまらない、と、
たくさんの市民が怒って、デモが繰り広げられ、
WE WANT JALLIKATTU とプラカードを掲げ、街を練り歩き、
やがてそれが暴動に発展し、警察署に放火するなど、もはや収拾がつかなくなっているそうな。
ディナサヤランもムゲーシュもi Phone 片手に、
このニュースに真剣に聞き入っていた。


JALIKATTU はこんなスポーツです。(ヴィディオ)
https://www.youtube.com/watch?v=Fxip2_foi_s


2017年1月24日 火

ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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ー 訪問(2022/09 更新)4回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-

2017年1月14日(土)&15日(日)祝 ポンガル・ランチ・ブッフェの記録。

14日から南インドの収穫祭ポンガル・フェスティバルがはじまります。
男は、白いシャツに白い巻きスカート(ドーティ)姿で、
女たちは南インドドレスで、収穫祭を祝うそうな。
たいそうめでたい祭らしく、そこで
アムダスラビーも14日(土)と15日(日)の
ランチビュッフェ 1200円(コドモ600円)は、
ポンガル・スペシャルになりました。


14日(土)のメニューは、
Ven Pongal
米(と豆)をミルクで煮込んだ素朴で華やかなピュレ。
Coconut Chatuni ポンガルにつけて食べます。
Japanese Rice
Chicken Chettinad Home style
Katharikai Gothsu サンバルの親戚、ナスと豆のふっくら煮込み
Medu Vadai
Parotta
Sweet Pongal デザート版のポンガル
Mysoor Rasam
Vathal Kuzhambhu 苦味スパイスvathal を主役にしたカレー
Yellow Peas Vegetable Salad お洒落サラダ(二番手ムゲーシュ作)


アムダスラビー開店以来、はじめて行列ができました。
午後1時代は、十数人の行列で最後尾15分待ち、まず最初にスタッフ全員がびっくり仰天。
「行列のできる店になっちゃったよ、アムダスラビーが!??」
と、みんなにわかには信じられない様子でした。
ぼくのレヴューを見て来てくだすった方も数人いらして、
ぼくももちろんうれしかったし、
ディナサヤラン料理長は自分の本気料理に、
ちゃんとお客さんがいっぱい来てくれて、
しかもポンガルがちゃんといっぱいよろこんで食べてもらえて、
それはもうよろこんだのなんの。
お客さんと2ショット写真に、えくぼを作って納まったりしておりました。


15日(日)のメニューは、
Butter Milk バターミルク(サーヴィスドリンク)

Chicken Dum Biryani チキンの炊き込みごはん
Chicken Dalcha ぜいたくチキンカレー
South Indian Veg Khorma 野菜のマイルドカレー
Onion Vadai 揚げたてふかふかがんもどき、タマネギ入り
Carrot Punpkin Sambhar ニンジンのかぼちゃのけんちん汁
Nandu Rasam 蟹のラッサム・スープ
Keerai Poryal ほうれんそうのスパイシー炒め
Parotta うずまきパン
Japanese Rice 多産地混合日本米
Green Salad サラダ
Pineapple kesali きんとんパイン味

驚くべきことにきょうも午後1時代には7、8人行列ができました。
お客さんにとってはまったくうれしくもないことながら、
しかしスタッフはみんなよろこびました。ごめんなさい。
明るく気の軽いお客さんが多く、ポンガルの日らしい、
楽しい日になりました。ありがとうございました!

ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2017/01訪問3回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

しかも、たぶん南インド料理のレパートリーがもっとも多い店。

南インド料理をもっと好きになりたい。
そうおもう人は、ビギナーでもマニアでも、
アムダスラビーの土日ランチビュッフェ1200円に、
通ってみるのがいちばんの早道ではないかしら。
それは事実上タミルナドゥ州スタイルのミールスであり、
その構成は、ラッサム、ポリヤル、サンバル、クルマ~クートゥー、
メインはチキンカレーかフィッシュカレー、
あとはワダ、パロタ、サラダです。
ときどきビリヤニが加わることも。


それぞれの料理は、味を振り分けてあって、
1品料理というよりは、
いくらか全体を構成するための部品でもあります。
ひとくちごとに違った味を舌に響かせながら、
愉しんでゆきます。
アムダスラビーは、これまで300種類以上の料理を出してきました。
大きく言えばいつも「同じ」だけれど、
でも、マニアにとっては、それぞれの枠に毎回ちょっとづつ違った料理が並んでいて、
だからこそリピートする愉しみがあります。


2016年11月新たにゴヒル夫妻がオウナーになったものの、
スタッフはこれまでどおり。
ディナサヤラン料理長、37歳、
身長は170センチに満たないながら体重は105キロ、
ゆたかな肉づきの丸っこい体、
ありあまるマッチョ体質によって頭部の7割はショコラ色のスキンヘッド、
後頭部にわずかな窪みがあって、
頭頂部のドームの下から、後ろ頭の襟足まで、
黒髪と白髪が混じった髪がウェイヴがかかっていて、
モミアゲはかっこよく長方形、鼻の下には淡く髭を生やしています。
眉間に皺を寄せているときはインド人ギャングスタみたいな風貌ながら、
しかし笑顔になるとかわいい笑窪が愛嬌たっぷりです。
2番手は27歳、ガキっぽさを残した若々しいムゲーシュ、
給仕長に中央アジアの白人、年齢不詳、イケメンのグヤン・デヴ。
新しいオウナーになって、スタッフはみんなノリノリです。


『タミル料理のメニューをちょっと勉強してみよう。』
https://tabelog.com/rvwr/000436613/diarydtl/132476/

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2016/12訪問2回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

マサラドーサセット1000円は、1回で2度楽しい。

南インド料理店の新しい波が来てますね。
浅草サウスパーク、東久留米ルチラ、
木場アマラーワティのことですよ。
サウスパークはケーララスタイルの各種ミールスがすばらしいのみならず、
プットゥはもちろん、副菜のイディアパンやアッパムもまた要注目です。
ルチラもまた豊富なメニューのなかで
プットゥ、ヌールプットゥ、アッパムがひそかに輝いています。
アマラーワティは、カレー類はざんねんながら北インドでかためてあるもののの、
しかし南インドのミールスもおいしいし、
またティファン(軽食類)は、上記の名店に負けず劣らず
力を入れていてそこがとっても頼もしい。
2017年はティファン元年になりそう。(なって欲しい。)


さて、ぼくの贔屓の西葛西アムダスラビーは、土日のランチビュッフェ、
蟹づくしミールス、マナガツオのフリットが人気ですが、ティファンはどうかしら?
まずは平日&祝日ランチの、
Bセット(=マサラ・ドーサ・セット 飲み物つき1000円)を食べに行ってみたよ。


ぼくはふだん飲み物はマンゴーラッシーかチャイを頼むのだけれど、
イケメン給仕長のグヤン・デヴが、「きょうはバターミルクがあるよ」というので、
ちょっとマニアっぽく頼んでみた。かすかに塩っぱく、かすかにマサラフレイヴァーの、
ミルクである。


Bセットの構成は、マサラ・ドーサ、サンバル、ココナツチャトニ、
ポリヤル、ライス、パパド、ラッサム、グリーン・サラダ、飲み物です。
なお、ちゃっかり白ごはんが並んでいるところが、実にアムダスラビーらしい。
なぜって、2度楽しいセットで、
まずはドーサをたっぷり味わって、後半シンプルミールスを愉しめるようになっているんだよ。
さすがわが愛アムダスラビー、あまりにも南インドらしくって、ちょっと笑ってしまうほど。
あの人たちったら、炭水化物が大好きなんですよ。


マサラドーサはクリスピーなクレープ。
マメとコメを砕いてペースト状にして、タネを寝かせてやや発酵させて、
鉄板の上で丸~く伸ばして、内側にじゃがいものスパイシー炒めを乗せて、
30センチほどの大きさの巨大な葉巻状にロールして仕上げます。
パリパリにクリスピーで、形がユーモラスです。
食べ手はサーヴされたこれを、まず両端を折りたたみ、
上からプッシュして平面化して、じゃがいもの炒め物とドーサ生地をなじませます。
この暴力的な食べ方が、実に南インド人っぽい。
で、これをちぎってそのまま食べたり、サンバルに漬けて食べたり、
ひんやり冷たいココナツチャトニをつけて食べたりします。
(なお、もっと pretentious に召し上がりたい方はどうぞ自分なりの食べ方で。
参考までにYoutube 。https://www.youtube.com/watch?v=7ht395ikn9g
ここまでが前半。


次に、後半は小鉢のごはんを丸盆の上に落とし、
一方からサンバルを、他方からラッサムを注ぎ、
その上にパパドを砕いてふりかけ、猫飯にして、
ニンジンの炒め物やサラダをつまんだりしながら、たいらげてゆきます。

前半と後半で2度おいしい。
楽しいんだなぁ、こういう食べ方が。
しあわせです。





なお、アムダスラビーのア・ラ・カルトのティファンメニューは以下のとおり。


オニオン・ウタパム 1000円
プレイン・ウタパム 900円
マサラ・ドーサ 1000円
ラヴァ・ドーサ1200円
エッグドーサ 1100円
チーズドーサ 1200円
ペーパードーサ 1100円
キーマドーサ 1200円
イディリ 2p 500円
ワダ・サンバル 800円


なお、アムダスラビーは、いま、
グランドメニュー全体を見直し、改訂版を準備中。
新メニュー候補には以下の料理も挙がっています、
ポディ・ドーサ、
セットドーサ、
イディアパン、
コット・パロタ(ヴェジ/ノンヴェジ)

2017年1月9日 月

ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/

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2013/02訪問1回目

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  • 料理・味-
  • サービス-
  • 雰囲気-
  • CP-
  • 酒・ドリンク-
¥1,000~¥1,9991人

タマリンドは、わたしたちの体を守ってくれる。

2018年1月7日(日)のランチブッフェ。
お皿のまんなかにバスマティライスを盛って、
皿の左・右・天に、
「ニンジンのスパイシー炒め、ココナツの香り」
「ダイコンとブロッコリーのコルマ」
そして「鯖とイワシのチェンナイフィッシュカレー」をかけて、
いただいた。
特筆すべきはフィッシュカレーで、
口にすると、まずはタマリンドとトマトの酸っぱさを感じるけれど、
その後、煮込んだタマネギの優しい甘さが追いかけてくる。
鯖とイワシはその身にたっぷりグレイヴィーを吸い込んで、おいしい。
小骨までパリパリ食べてしまう。
なお、この料理は、前任の(体重105キロの)ディナサヤラン料理長のときは、
酸味が凶暴だったけれど、
他方、いま、ムゲーシュ料理長のこのフィッシュカレーは、
酸味はいくらかひかえめで、炒めたタマネギの優しい甘さに包まれている。
ぼくは、どちらも好きだけれど、
ムゲーシュの調理の方がchic でエレガントに感じる。


酸味をもたらすのは、タマリンドという樹木の実のペーストで、
このタマリンドは(ココナツと並んで)南インド料理らしさを作り出している。
フィッシュカレーのみならず、ラッサムの酸味もまた、
このタマリンドとトマトで作り出しています。


中国人は味覚のよろこびを、酸・苦・甘・辛・緘で切り分ける。
南インド人は、けっしてこういう分析的な構造化をおこなってはいないけれど、
ただし、かれらの食はたいへんゆたかで、中国料理にまったく負けていません。
もちろん南インド料理は「酸っぱさ」をもまたけっして忘れない。
その「酸っぱさ」は、おもにタマリンドのペーストが担当しています。


南インド人はタマリンドが大好きだ。
頭痛やのどの痛みに効くとか、下痢を治すとか、言われています。
葉っぱを食べると、優れた歌手のように歌えるようになる、
というような伝説も残っているそうな。


ぼくはべつにこれらのすべてを信じているわけではないけれど、
ただし、南インド人たちにとっては、
大地から生えて、われわれの健康に富みを与える、そんな実を実らせるタマリンドは、
大地と同じほどありがたいものなのだろう。
そこにインド人たちは、神々の摂理を見出しもすれば、
神々の表現を発見しもするのだろう。


写真はタマリンドの樹、そして実。
ただし、じっさいの料理には、市販品のタマリンドペーストを使っています。


ぼくと女友達とインド料理、ときどきフランス料理。
http://tabelog.com/rvwr/000436613/


  • アムダスラビー -
  • アムダスラビー -
  • アムダスラビー -
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店舗基本情報

店名
アムダスラビー 西葛西店(Amudhasurbhi)
受賞・選出歴
カレー 百名店 2018 選出店

食べログ カレー 百名店 2018 選出店

ジャンル インド料理、インドカレー、ビュッフェ
予約・
お問い合わせ

03-5605-2107

予約可否

予約可

住所

東京都江戸川区西葛西5-1-5 サンシティ西葛西 B1F

交通手段

東京メトロ東西線、西葛西駅改札を出て、北口に降り、
駅を背にターミナル左手、携帯電話のY! mobile の側に渡り、
背後の東西線の線路と直交し、南北に走る大通りを北へまっすぐ。
しゃぶしゃぶのしゃぶ玄、ラーメンの日高屋、立ち呑み待夢(たいむ)の隣、
(LAWSONの手前)地下一階。

180m / 徒歩2分

西葛西駅から137m

西葛西駅から131m

営業時間
    • 11:00 - 15:00
    • 17:00 - 22:00

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

予算(口コミ集計)
¥1,000~¥1,999 ¥1,000~¥1,999

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支払い方法

カード不可

電子マネー不可

QRコード決済不可

サービス料・
チャージ

なし。

席・設備

席数

32席

((テーブル16卓32席))

個室

貸切

禁煙・喫煙

分煙

2020年4月1日より受動喫煙対策に関する法律(改正健康増進法)が施行されており、最新の情報と異なる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

駐車場

近隣にコインパーキングあり

メニュー

ドリンク

ワインあり

料理

野菜料理にこだわる、魚料理にこだわる、ベジタリアンメニューあり、英語メニューあり

特徴・関連情報

利用シーン

知人・友人と

こんな時によく使われます。

サービス

テイクアウト

お子様連れ

乳幼児~コドモ、ベビーカー歓迎。

ドレスコード

なし。

ホームページ

http://amudhasurabhi.jp/

公式アカウント
オープン日

2014年4月10日

備考

土・日のランチは、
食べ放題 ブッフェ1200円(税込)のみ。
コドモ半額。乳幼児無料。テイクアウト対応なし。


国民の祝日のランチタイムについては、
ブッフェをやるときもあれば、
また、通常メニューのみの提供のときもあります。
電話やTWITTERでご確認ください。


お店のPR

おなかのなかから美しくHAPPYに。

(by ジュリアス・スージー
初投稿者

ジュリアス・スージージュリアス・スージー(1699)

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