ViveLaBibendumさんが投稿した小やなぎ(東京/麻布十番)の口コミ詳細

ViveLaBibendumの聖餐紀

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ViveLaBibendum (60代前半・男性・埼玉県) 認証済

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小やなぎ麻布十番、六本木、六本木一丁目/ふぐ、鍋

1

  • 夜の点数:5.0

    • ¥15,000~¥19,999 / 1人
      • 料理・味 5.0
      • |サービス 5.0
      • |雰囲気 5.0
      • |CP -
      • |酒・ドリンク -
1回目

2002/12 訪問

  • 夜の点数:5.0

    • [ 料理・味5.0
    • | サービス5.0
    • | 雰囲気5.0
    • | CP-
    • | 酒・ドリンク-
    ¥15,000~¥19,999
    / 1人

小やなぎ

 実は今迄“ふぐ”というものは値の張る割に旨いと思ったことが無かった。懐石料理の極み並みの“お足”を用意しないと旨いものが喰えないのかと思っていた。どの店でも白子ポン酢と炙り、それに雑炊の旨味だけで我慢していたが、ようやくこの店で考えを覆すことが出来た。
 時代を感じさせる提灯を目印に狭くて急な階段を降りると、清潔だが一見何ということも無い店構え。しかし荷物置きのテーブルが樹齢数百年の楓。Violinに化けるか定かではないが楽器になれば数千万円は堅いと思われる木目である。その他訊けば花梨の無垢材が二枚接ぎで座卓になっている。昔は良い木材が沢山取れたという訳だ。それら老舗の証が何気なく置いてあり、決してお洒落とは言えないが、どんなに仕入れが高くても常連一見変わりなく控えめにお足を頂戴して来た、と仰るご亭主と女将の人柄を表しているようで、美麗に飾り立てるより素朴な本物が一番なのだろう。
 さて一杯目のビールに会わせ少々味付け濃い目の煮凝り、ポン酢をつけるのも勿体無い程噛めば噛む程甘味の出る薄作り、湯引き加減絶妙の鐵皮。それにしてもこのポン酢は正に店の宝。味はしっかり、しかし酸味はキツくなく円やか。どれをとっても餓鬼の様に喰うのは罰当たりという代物。唐揚げは多くの店で“骨上げ”かと思う程だが、こんなに身の着いたまま揚げるのは勿体無いと思われる程にプリッぷリモチモチ。白子も箸で摘むのがやっとのシャビシャビ物とは違って充分な歯触りと旨みを楽しめるもの。焼き白子に至っては、ほんの薄皮だけしっかりさせて中はトロッとろ、しかし芯まで同じくアツあつ。コクと香りを充分堪能した。
 20kg程の型の上物から取り出したと言われるとおりカウンターの上に堂々たる姿を現したアンキモも、脂が上品で白子の風味を損ねることなく共に愉しむことが出来た。アンコウと言えば、安く食べさせる店では小型で体表のぬめりも殆ど無く吊るし斬りしなくとも俎板の上で捌けてしまうと云われる中国産を使うところが増えていると聞くが、アンコウは肝が勝負と言う通り、ここが“ふぐ専門店”でなかったら、雑炊を“ドブ汁”仕立てにしたい衝動に駆られる程。あれほどの肝に出会ったのは水戸の「荒磯アサヒ食堂」以来のこと。鍋にするのも勿体ない位だが多少湯引きして食べるのも一興、と葱、豆腐、白菜と順に香りを移した。火を極く小さく、土鍋から目立って湯気が立ち上らない位のところへ一切れずつ身をくぐらせた。雑炊に出汁が出ないよと言われたが、噛み切る時に歯が押し戻される程の適度な弾力が、刺身で食すのとはまた別の味わいとなった。
 雑炊よりも“おじや”が旨いから是非にと薦められ、上品な雑炊の方が良いと言う連れを、これ幸いと捻じ伏せた。薬味を一切廃してポン酢も加えず薄味に仕上げて貰ったから旨みの極み。案の定、殆ど鍋を空にしてから薫り高き海苔を試しに口にすると折角の香りが台無しである。すぐさま口直しにおじやである。誠に海苔というものは恐ろしい。どんなに薫り高い料理も台無しにする程の存在感。更に梅干が出たが勿体無いので持ち帰りにして貰った。
 ビール、冷酒に続き、予め香ばしく炙った鰭をこれでもか、と入れた鰭酒に火を点けずに4合も呑んだが酔わない。丁度良い満腹感でおさまった。ご亭主が箸の進み具合に合わせて料理の量を調整してくれたと言う。ヒトのため逝ってくれた貴重な食材を無駄にせず、お足も軽くしてくれると云うから有り難い。「スッポンやってますか?」と電話が掛かって来たが、次いで多いご質問「御代は幾らか?」に「幾ら幾ら位です。」と応えると「“位”は困る!」と怒る客が多くて叶わないらしい。量に応じて多少お勉強して下さる良心的な店なのだから“位”にも安心して貰いたいもの。
 締めに温州蜜柑が出た。旨い蜜柑は皮ごと食べてしまいたい。高校の恩師が山でゴミを出さないように、とビタミンと水分補給に蜜柑を皮ごと食べるのを見て驚いたが、旨い蜜柑程ヘタだけ取って残さず食べられる。本当に旨いのか?と連れに訊かれて食べて見せたが、折角の雑炊の余韻が消し飛んだ。柑橘系の果皮を盛り付け箸の先に勝手に付いて来る位僅かに椀に添えるのは良いが、丸ごとは多過ぎる。しかし何故懐石の最後に水菓子なのだろう。料理の余韻を残して帰りたいと常々思う。甘くて香りの強いものは土産にしたいと思う客も多いと思うが...
 ともあれふぐならこの店が一押し。旦那衆の手捌きもさることながら、“おじや”の味付けにも水菓子にも註文つけて尚笑顔で接してくれる女将。最高のとらふぐを惜しげも無く安値で譲ってくれる卸が居るということがこの店の人徳。こういった真正直な人たちとの触れ合いは心が洗われるというもの。そう言えば電話で問い合わせのあった鼈は荻窪の「四つ葉」が高潔だが、ふぐならば是非ともこちらへ通いたい。

2006/04/06 更新

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