太陽楼/楽園発見 ! : 太陽楼

今日の浅草も、いつもの二天門から入る。
今年の夏は胸まで暑いからだろうか、絶滅して久しいとみていた外国人女性のノーブラジャーにもどうやら復活の兆しが見えてきているような気がして、酷暑の下ながらも希望を持って、力強く足を進めることが出来た

<R5.8.23>

「太陽楼」

雷門通りの向こう側に見える黄色い庇の中華屋には入ったことがあるが、その隣のanother中華には未だ未訪問と思うんだけど、その理由が分からない ……
訝りながら青信号で横断歩道を渡り切ると、店頭に立つ彼と目が合ってしまい、「先ず手を消毒していただけますか」から、誘われるがままに先払いというシステムに則ったうえ、二階へと続く階段を独り上っていった。
建屋そのものは、これで吹き抜けの作りになっていたなら、まさに昭和の映画に出てくる豪奢な娼館 !　といったような、些か草臥れてはいるが、当時は栄華を誇っていたであろうしっかりとした骨格が見てとれ、窓を突き抜けて空間全体に十分に回り切っているおもてからの光線とも相まって、なかなかの雰囲気が醸し出されている。
ふと、飾られている本の表紙の中の習近平さんと目が合ってしまって、少し照れた ……

「ドリンクバー、スープ、ご飯、カレーはすべてセルフになります」

こういった古くからのお店は、たとえ経営が中国系であっても十分に日本文化に馴染み、且つ日本語ペラペラの御方たちで営られているのだろうと思いきや、スタッフの方々はそこまでには至っていない様子で、そこが逆に不思議である。
私はというと、未だ人っ子一人いないフロアの窓際の隅の角っこに自分で選んで着いて、おかずだけお持ちするので、あとはぜんぶお椀になりますが(笑)勝手にやってください、という彼の案内に基づき、先ずはお水と玉子スープを持ってきてスタンバイ !

“玉子トマト炒め” @700也。

ほどなくして鮮やかなyellowの海原にトマトのrossoのアクセントが効いた、蠱惑の皿が舞い降りた !
依って同時に両脚に力を籠めて立ち上がり、お椀を手にお釜の蓋をオープンセサミさせて瞬間、そのお米の艶が、日本の食卓のそれとは異なることに気付いてちょいがっくり。それでも気をとり直し、よそったお椀の上からさらにカレーをデコレイトしようとして思いのほかお椀が小容量であった為、食器を無駄に汚すのは本意ではないのだけれど、仕方なくこれもお椀に(笑)カレーをほどほどによそうボク ……

ちょっと迷ったのは、各卓にしょう油などの用意がなく、“ご飯・スープ・カレーBar”には一式それらがあって、玉子炒めにしょう油をどうしようかと思ったが、ちょっと食べてみたらかなりしっかり味だった為、今日のところは下味は封印し、玉子本来の味を楽しむことにした。
なんて言いつつ隠し味どころか !　よそってきてしまったカレーと白いご飯との合体から生ずるエクスタシィに抗うことはもう不可能 !　ご飯+カレー+玉子炒めという奇妙な三位一体に、グレードがハテナマークのご飯、また明らかに日本の市販ルウがベースと思うし、ジャガイモ、ニンジンごろごろも良い感じながら、いまいちキレていないカレー、ということがあったものの、なんて言うのかなぁ、兎も角、その混沌に心地良く塗(まみ)れてみるボク ……

それにしても今日のところは最初っから最後まで、自分一人だったから、ゆったりとこのself-serviceに勤しめたわけだが、とりわけ大汗掻き掻きのこの季節、食器やお釜などの扱いを、世界各国のお客さん個々の衛生感覚に委ねるのは、だから最初の「手を消毒してください」、に繋がるんだろうけど、おれなんか異常に神経質な人間なので、ちょっと不安要素が残る。
消毒つったって、(それも分かんないけど、もしも)アルコールで手をもみもみして殺菌できたとしても、でもその手に残っているはずの、夥しい数のばい菌の死骸はそのままでいいの ?
なんて考えちゃったりしちゃうからね ……

とは言え、ドリンクバーの権利を行使せぬままの私でさえも、この安価には頭が下がるばかりなのだから、時給\3,500は下らないオーストラリアのアルバイター旅行者たちの目から見たらもう、日本は地上最後の楽園 !　いわばトップレスのいないニューカレドニア !　みたいな感じに映るはず ♪

―― まあ、これは言葉の定義の問題だけど、ほんとうはトップレスがいない時点で、楽園とは言えないんだけどね ……