大豊記/synchronize、不能 : 恵比寿餃子 大豊記 池袋

新型ウィルス関係なしに元々田舎がなく、正月は、もとい、正月も、毎年その絶望的手持無沙汰を映画で紛らわせている私だが、今年は如何せん、観たい映画のempty状態が続いている。
池袋の老舗名画座でzombie二本立てが掛かっているが、それもなぁ、と最初はピンとこず。しかしいよいよ追い詰められれば、もうこの危機を打破してくれるのはzombieしかないと腹を括り(笑)、都バスに乗ってやってきた。
「ビーボより美味いのはビーボだけ !」　という諺を信ずれば、本物のジョージ・A・ロメロのゾンビ3部作のうちの「ゾンビ」と「死霊のえじき」の2本立てというこの最高の番組は、果たして「ゾンビより面白いのはゾンビだけ !」　となるか !?

劇場は自由席で、二本立てが一巡しない二本目からという難しい入場を目指しているのだが、あれこれ考えてもしょうがないので、先ずはお昼ご飯を優先することにした。
というか、そうかすることしか I can not !

<R2.12.29>

「大豊記」

池袋の人出は衰えず !(といっても新型ウィルス体制後の話)
依って初めて行ったときに、ここならば混み合うこともないだろうと予測できるお店へのエレヴェータを上がってい行く。と、鉄箱を下りてまたしても、営っているんだか営っていないんだか分からない ……
意を決して引き戸を引いてみたら、厨房で男性が一人、デビッド・バナー博士さながら、生きながらにして墓標を立てられたかのように、人っ子一人いない中、宛てもなく中華鍋をふり続けていた。

「もう営ってますか ?」
「長テーブルでお願いします」

―― 話は噛み合わなかったが、いちお営っているようである

そこは5席*2で向かい合わせに10名ほどが着ける真ん中の島。
早速メニュウを手にとって、前々から試してみたかった麻婆豆腐を探すんだけど、それを揃いものでやってみたい気持ちが強く、しかしそうなると油淋鶏とのセットしか見つからず。
私はリン・チーリンは好きだがユーリンチーは苦手なので、結局、でも定点観測の意味も込め、しかしそれほど後ろ向きな気持ちでもなく、またしても“例のもの”を注文することに決めた

“元祖 恵比寿餃子ランチ” @900也。

15分ほど掛かりますがよろしいですか ?　とのことだったが、既にそれは品書きの注釈にも見えていたし、何より暇なものでなんらno problem !
ほどなくして舞い降りた餃子の、その重量級の力強さは健在。
それどころか持ち重りと外皮の硬さに、箸を持つ指の筋が疲労感を覚えてくるほど。ほんとうはナイフとフォウクが欲しいところだが、それを用いるには岡田茉莉子さんの許可を得る必要があり、今日のところはあきらめた。

五反田店でも同じ定食を注文したことがあるが、その時は瑞々しさという点で、こちら池袋の餃子のほうが良い出来栄えだと思っていた。
結論的に今回の餃子は、初回時よりも外皮の硬さの否めぬ、焼きとも揚げともつかない仕上りで、印象的にはネガである五反田のお店のものに近づいてしまったが、そもそもメニュウ写真の面持ちもそんな感じなので、こちらの餃子としては、案外これで基準内ということなのかも知れない

「何名様ですか ?」
「営っていますか ……?」
「何名様ですか ?」

私が料理を待っている間にアベックが一組上がってきたが、私と同じように先ずお店が営っているかが気になるようで、お店の彼はしかし、やはりその思いを汲みとれずに会話をシンクロさせることが出来ない。
店頭、というかエレヴェータ―ホールに看板も何も出しておらず、メニュウ構成をみると夜は居酒屋使いも出来そうなラインナップなのだが、壁にもつまみやドリンクの短冊らしきものは何一つ掲げられておらず、良く言えばすっきりしているが、如何せん飲食店としてのヴァイタルが感じられないのだ。
ここまできて私は、前にこちらに二度目と思ってやって来たとき、休みだと思って踵を返したことがあるが、実はその時も営っていたのではないか ?　という疑念が頭を過ぎった。

ホールから調理からたった一人で切盛りという状況を招いているのは、こういったことは常に個人の責任ではなく、会社の管理、調整の問題が大きいと思うが、このすっきり感とも合算すると、もしかして寿命が決まっていての原状復帰を考えた消化試合でなければいいのだけれど。
なんて穿った見方をせざるを得ないほど ……

封切り映画検索用に使っているウェブサイトがあるのだが、ここのところめぼしき新作公開の一斉の足踏の中で、表面上どうにも食指の湧いてこない作品ばかりになってしまっていることが心底悩ましい。

そこで発想を転換し、検索キーを新作から地域、劇場に切り替えてみたところ、池袋のグランドシネマサンシャインという新しく出来た集合映画館にどういうわけか「タワーリング・インフェルノ」というタイトルが見え、まさかと思いつつ追いかけていったら紛れもなきジョン・ギラーミン監督のそれ !
上映は一日一回ぽっきりながら、時間的にも突拍子もないものではなく午後2時からと、まるで渡りに舟のように神々しく映えて見えて、となったらとつとして早回しのように身支度を調え(笑)、いつものように池袋に乗り込んだ

<R2.9.5>

「恵比寿餃子 大豊記」

エレヴェータを下りると和風居酒屋のような格子の引戸がシンプルに立ちはだかり、一瞬ここが餃子屋なのかと訝ったが、どう考えてもそうとしか考えられないので戸に手を掛ける。

正午の10分ほど前。
店内は概ねがらがらであったが、小上がり席に一組だけカップルがいらっしゃった。夕方から数人でお酒をやるにはこんな感じも良い雰囲気だなぁと、でもそれを実現させる為のこちらのお酒に対する考え方を知りたく、私にとって今は不要なドリンクメニュウを開いてみれば、サワー、カクテル、ハイボールは確かに安価。
それに対し紹興酒がグラス490円と、280円の「大阪王将」さんに比べて高過ぎる !(笑)

BGMは、なんて言うんだろう ?　こういうの。J-POPという言葉は使いたくないのだけれど、そんな感じの。
余談ながら邦楽は邦楽でも、昔の昭和の歌謡曲をBGMに使うお店がよくよくあるが、心の中で口遊(くちずさ)んでしまいながらも、実は私は、そういうのは適当じゃ無いと思っている。何故ならば、そういった曲は感情移入し過ぎてしまい、料理との和を乱してしまうので ……(笑)

“元祖 恵比寿餃子ランチ” @900也。

恵比寿餃子5個・小鉢・スープ・ライス(おかわり無料)。
元祖というのは世間に既に広く浸透しているものに対して、とりわけ自分たちが先駆であるということの主張だと思うが、元々恵比寿餃子なんて見たことも聞いたこともないものに対して(失礼 !)元祖も何もないと思うんだけど ……

注文するとまず餃子のタレの調合キットがPCR検査キットのように舞い下りて、それぞれに小さな容れ物のそれらは、これは醤油などの酸化対策には効果的だなぁと思った。
またその取説を読めば、本キットは特定の餃子のDNAを100万倍程度にまで増幅し、それが宇都宮餃子なのか蒲田餃子なのか、あるいはどこの餃子であるのかを可視化するものであり、それがシウマイであるか餃子であるか、またはイタリアンミートボールであるかの判定には、決して使用しないでください、とのこと

果たして、10分ほど時間を頂戴しますがよろしいでしょうか ?　と勿体ぶられて舞い下りたそれは、一見冷却フィンのきめは細かいようだが、それは皮の合わせ目からボディの半分までのわずかな距離でしか切られておらず、見る者が見れば明らかにダミーと分かるもので、実際には内側にウォータージャケットを抱えたリキッドクールドと思われる。
それを証明するように箸でリフトすると中身が凝縮しているような重量感があり、食べてみると、マスプロダクツ感は否めないんだけれどでもこれがけっこう美味い !
なのでその大振りの餃子一つ食べ切るか切らないかのうちに、もう禁じ手としていたご飯お代わりの覚悟を決める。
その肉主体の餃子は、よくみれば餡に小海老も織り込まれているよう。
その豚くんと魚介系のハーモニーの行く末は私にも分からないんだけど、漠然と食べてる分には、とくに皮の中で反発し合ったりという感もなく、ふつうに美味しい

ご飯半分お代わりをどんぴしゃの口中調味で、餃子と同時にやり終えれば、私の持ち前の好奇心は、テーブルの杉らしき木材に速やかに移行する。
これはプライながらも杉の仲間だと思うのだが、この天板の木目の年輪の固い部分を浮かび上がらせる技法はいったいどうやるのだろう ?　そしてその機能上はグラスに掻いた汗の“逃げ”になって良いと思うが、でも積極的にそれを狙いにいったものでもないと思うんだけどなぁ ……

ともあれ、新しいお店のようだが清潔感のある店内と、あとメニュウ写真の中の麻婆豆腐のおどろおどろしい赤が非常に魅力的だったもので、とりあえずその確認の為にもう一回は来てみようかなと ♪


【以下映画の話】

「タワーリング・インフェルノ」

と言っても、もう語り尽くしてるけどね。
観所はなんといってもフェイ・ダナウェイの、おへそのあたりまで深く切り込まれ、だから必然的にノーブラジャーが必須となる目映いシャンパンゴールドのパーティドレスでのぽろりがあるかどうかで(何しろただでさえきわどく儚いその絶景が、超高層ビルの屋上ヘリポートに着こうとしているヘリコプターのダウンバーストでもう散々に煽られる為 !)、それは映画史上最大の謎とされる、「犬神家の一族」での島田陽子のおっぱいが見えているかどうか !?　ということに匹敵する最高の注目点 !!

―― 私は常々、このノーブラジャーを要求されるパーティドレスを公衆の面前で堂々着ることが出来るのは、日本人の中では叶姉妹だけだと、そしてそれは、フェイ・ダナウェイの魅せるそれとはまったく質の異なったものとなるということを(笑)、この電子日記では散々先述させていただいている

不撓不屈の寡黙な消防隊長が何度も何度も立ち上がり、キザな花形設計士がなりふりかまわずに汚れ仕事を買って出始めれば、同時に前人未踏のスペシアルなタワービルディングの断末魔、今まさに燃え猛る紅蓮の炎がとりわけ勢いを増す !

そして誰もの胸に絶望が去来しはじめた頃、老練のエンジニアが弾き出した“残酷な計算”が、その二人を個性を否応なく収斂させ始め、設計士の「爆薬はどうする ?」との問いに消防隊長が「バカな消防士が運ぶよ」と応えれば、165分もの超大作はパニック映画史上最高のクライマックスに向けて、そのデカい図体をものともせずにみるみると加速してゆく。
同時に総天然色の鮮やかな色彩は、フェイ・ダナウェイの艶々のパーティドレスの儚くも薄い生地の下の膨らみを、何たることか !　まさか透過させはじめる !!

―― この疾走するエンターテインメントの圧倒的な勢いは何だろう !!　ああ、この勢いで来週、同じくギラーミンの「キングコング」掛からないかなぁ。ジェシカ・ラングのおっぱいぺろんも、未だ確認しなければならないことが残ってるし。もう新作はいいや。こんなふうに封切館でもずっと昔の名作掛けてくれたらいいよ。そのほうがよっぽど若い映画ファンも増えるだろうし ……