夏なのにカスレ！カスレがウマイ！ : IZAKAYA VIN

超〜絶品のカスレをいただきました。
仔羊肉、豚バラ肉、ベーコンの塊り、脂身、チョリソー、白インゲン豆がこれでもかっと詰まった皿は至極の一品でありました。

ワインの状態も素晴らしい！　
ここほどワインに関して厳密な吟味をしてる店って無いんじゃないかな。ブショネがサーブされることなどこの店では有り得ません。

このお店には安心して全てを委ねることができます。

先生と慕っていたムッシュが他界してしまいショックでちょっと足が遠退いていたこちらのお店へ久しぶりに足を運んでみた。
2年ぶりくらいかな？
すると変わらずの笑顔でマダムが迎えてくれました。
1階カウンターの居心地は以前とまったく変わらず快適ですが客層が少し若返ったかな？
ムッシュとワイン談義できなくなったのはとても残念なことだけど
私はマダムを気遣いながらムッシュとの想い出話しを小出しにしてワインをちびりちびりと飲る。

シェフは昔と変わらず素晴らしい料理を出してくれる。
この店の羊のローストの完成度はいつも変わらず安定してて美味いなぁー（またいい部分をシェフは出してくれる！）

この空気、この雰囲気
自分が渋谷に居る事を忘れてしまう。

ムッシュがカウンターに立って大きなボルドーグラスを拭きあげながら鋭い視線を客席に走らせる姿が
瞼に浮かんで一筋の涙が零れる。


(2012,02)
今夜は1軒目の店で大衆的な価格のスパークリングと水みたいにがぶ飲みできる白ワインという組み合わせだったので　チョっくらいいワインでもいただきましょうかと2軒目に私が師と仰ぐ方のお店へ。

しかし残念ながらながらムッシュ加藤はこの日はお休みで　1階カウンターは加藤氏の奥さま(マダム）とお美しいソムルエールの2名が仕切っていらした。　「半年ぶりくらいのご訪問かしら？」　とマダムが温かく迎え入れてくれる。

俺　｢ムッシュはどうなさいましたか？　居ないんだ～、残念」
マダム　「あら？私ではご不満かしら？」
俺　「ううん、そうじゃないんだけどね」
マダム　「でもお顔にそう出ていらっしゃいますわ」　　みたいな感じで全くIZAKAYAっぽくなくスタートする。

「ブルゴーニュ赤の美味しいところをグラスで」　なんて注文すると
ジュブレ・シャンベルタン　2007と1997　ヴィンテージ違い2本とヴォーヌ・ロマネ1本を並べてくれて丁寧に畑のことやその年の気候のことを説明してくれる。

グラス1杯あたりに注がれるワイン量も十分で　このくらいの量飲めばそのワインを堪能できますってくらいの量なのが気持ちいい。

ツマミに注文した「鹿のロースト」　今回のは蝦夷鹿ではなく本州鹿のシンタマだった。
肉質はかなりあっさり目　以前食べた蝦夷鹿の方が濃厚で旨み感が強かったと思う。
この店は全国の猟師さんと契約してるみたいでほぼ年中鹿肉が食べられる。
冬場はまさしく猟の獲物、ジビエとしての鹿肉　夏場の禁猟期は害獣駆除された鹿肉が提供される。

年間通して鹿肉の味を比較できる稀有なお店だ。


知ってる人は知ってると思うけど　この店の客層(とくに1階カウンター席）はチャカチャカしたマークシティ周りの様子とは劇的に違う。

まず年齢層がいきなり高い。　（俺が勝手に思うに社会的ステータスも高そうな人が多い）

この日のカウンター席の平均年齢は50歳前後か？　これでも私たちの訪問で60歳代から一気に押し下げたようなカタチだっのだ。

そんな年寄りばっかりの雰囲気は嫌だ　なんって思ってる方は2階、3階へ行けばいい。昔からの常連のお年寄りたちはあの急な階段を上がるのが億劫なのだ。3階を仕切るのはイケメンソムリエの加藤君　お父様に負けじの博学で彼とワイン談義をするのも楽しい。


（2009,OCT)
京王渋谷駅下　八百屋の大和田の前を通り、酔っ払いやガラの悪い呼び込みの間をすり抜け、焼き鳥屋の煙に霞んで見えるのはＩＺＡＫＡＹＡ　ＶＩＮだ。とにかくこの店の周りは渋谷でも一番オシャレじゃない地帯で、カラオケ屋、一杯飲み屋、ホルモン焼き屋、ガールズバーなど雑多な店がひしめき合う渋谷の暗黒大陸みたいな所だ。

その夜寿司屋の帰りだった私達は一階カウンターに陣取り最初からブルゴーニュの赤ではじめるつもりだったが「とってもいい感じに開いたコルトン　シャルルマーニュ」があるとのことで一杯いただき、続いて凄腕ネゴシアンであるジブリオットのジュブレシャンベルタン2003とLes Clous 2004をグラスでいただく。肉料理に合わせてバンドールのシャトーピバルノン2002で〆た。状態も良く申し分の無いワインであった。

お料理はフォアグラのテリーヌと白いんげんのポタージュ、子羊のローストの３品。
子羊は程よく熟成されていて（シェフの話だと塩をして２～３週間寝かせるらしい）素晴らしい香りとともに肉汁が凄い。このボリュームで\2500は原価的に大丈夫かなと思う。
料理全般に言えることだがきちんとブイヨンを取りフォン・ド・ヴォーをひいてる割には原価をあまり気にせずに出しているかのように思える。（余談だがここの牛テールの赤ワイン煮も迫力ある一品だ）どこのビストロにこの値段でこれだけのクオリティーとボリュームで料理を出してくれる店があるだろうか？

店主の持ちビルでの営業という強味か。

ただお店がくたびれた居酒屋スタイルなので皆さんその凄さにあまり気が付かないのだろう。
みんな白いテーブルクロスと磨かれたシルバー、一輪挿しが飾ってある格好だけの店に騙されてはいないか？

今から10年ほど前にここの店主加藤氏に俺はブショネとはなにかを教えていただいた。いい年したおっさんの俺はそれまで浅はかにもブショネとは何であるか解らずにワインを飲み続けていた。
意地悪な加藤氏はムートンロトシルト1987をグラスに一杯注ぎ「どう思いますか？」と聞いてきた。

・・・湿った土のような香りがした・・・

俺は愚かにもそれもテロワールだろうと思いそう答えた。
すると加藤氏はもう一本同じヴィンテージのムートンを開けて「じゃあこれはどうですか？」と聞いてきた。
それは黒スグリの実のような豊かな果実の香り溢れる濃厚な味だった。　　全然違う。
テロワールだと感じた湿った土の香りはよくよく嗅いでみるとジメジメした地下室みたいな臭いで見当違いも甚だしかった。　　「やられた」　　正直俺は恥ずかしくって穴があったら入りたいくらいだった。

加藤氏は強烈な比較をもって俺のちっぽけな脳味噌にブショネを叩き込んでくれた。
ワインスクールに通ってもこのような実例とともにブショネを教えてくれることは無かった。
それ以来ワインに対して真面目に取り組むようになりコルクの洗浄不足による残留薬品によって起こる薬品ブショネやコルク破損によって空気が混入して起こる酸化ブショネ、温度管理の不備によって起こる劣化、もともとの蔵元の木樽が不衛生な時に起こるブショネなどいろんなブショネを体験し学習できた。

しかしワインの事はまだわからないしまだまだこれからもずっと学んでいくのだろうと思う。