秋澄む夜、菊川郊外にて日本料理の変遷を刮目する…！ : おぶね

本日はこちらでディナー。
最近、グルメな方々の中で密かに話題となっているお店が、菊川市のインターから車で少し走った場所にあります。ひっそりと佇む完全予約制のお店。今年で20周年とのことですが、つい最近までほとんど一般開放をしていなかった、常連のみが集う隠れた名店だったそう。コロナ禍もあり、20周年の節目、店主の高木氏が一念発起をし、遂に新規のお客さんを受け入れることにした、とのこと。

そんな話を聞きつけ、早速1人仕事終わりに乗り込みました。テーブル個室や掘り炬燵があり、50〜60人入るとのこと。この日はカウンターに常連さん2組。お酒のペアリングがオススメとのことでしたが、次の日の仕事の関係で泣く泣くノンアルで楽しむことにします…。

せっかくなので、最上級のおまかせコースをお願い。ラインナップは以下の通り。ドリンク含め、30,000円/税込でお釣りが来るお値段です。

◆ 本日のおまかせコース

・山梨県産 大秋柿と唐墨
・北海道 利尻産 雲丹の茶碗蒸し
(フォアグラペースト、ホタテ、鰹出汁、バター、蟹味噌)
・季節の飯蒸し
(しめじ、舞茸、掛川産 栗、新物いくら)
・季節の揚げ物 加計呂麻島の塩と赤山椒で
(地場産 モチモチおくら、掛川産 栗、なめこ、茗荷、小鮑)
・刺身盛り合わせ 加計呂麻島の塩と山葵と酢橘で
(福井産 石垣鯛、福井産 黒ムツ、御前崎産 カツオたたき、静岡県産 モンゴウイカ)
・長野県産 松茸の土瓶蒸し
・越前 紅ズワイガニ
・若狭ガレイ 一夜干し
・遠州夢咲牛 A5 12番、トリュフすき焼き
・京桜味噌と白味噌のほうば味噌、三河鶏と野菜
・イタリア産 ポルチーニ茸と駿河地鶏の炊き込み土鍋ご飯
・大シジミの椀物
・香の物
・シャインマスカットのシャーベット

------- 以下 詳細 -------

まずは付け出しで柿と唐墨から…。もう柿の季節ですね！柿は山梨県の大秋柿という品種で、りんごのようなシャキッとみずみずしい甘さが特徴的。唐墨はしっとり半生な仕上がりで、塩気と甘さが絶妙。

次に胃を温める茶碗蒸し。早速"新日本料理"の片鱗が見られます。フォアグラのペーストに、バター、鰹出汁、蟹味噌、生クリームと、フレンチっぽさが垣間見れる逸品。フォアグラペーストのまったり感、鰹出汁とバター風味のマリアージュ、蟹味噌に生クリーム、中にはホタテ、上には利尻産の生雲丹。贅沢な食材が小さな器に凝縮されてます。全てが喧嘩せずまとまっているところがすごい。

続いては飯蒸し。モチッとしたおこわに、大きな掛川栗ときのこの秋のコンビネーション。そこに新いくらをたっぷり…。きのこが香りますね〜。

次は揚げ物。地場のモチモチおくら、皮付きの掛川栗、なめこ、茗荷、小鮑。これに加計呂麻島の塩と赤山椒で頂きます。サクッと揚がっており、素材を生かした火入れ。特に掛川栗は、パリッとした皮にホクホクの実が最高でした。

ここで魚体4.5上はゆうに超える御前崎産のカツオのロインが登場。それを炙ってタタキに…。お！今日の刺身はカツオのタタキか！と見ていると、石垣鯛、黒ムツ、モンゴウイカとどんどん出てくるではありませんか！美しく盛り合わせ、お盆の上へ。紫蘇の花を散らしたポン酢、醤油、そして塩山葵＋酢橘と好みの食べ方で。さすがは全国の組合、漁師と繋がりを持つ高木氏、素晴らしい質の魚です。特に加計呂麻島の塩と山葵、酢橘で食べるカツオは絶品過ぎました…。この食べ方、最高です。2万円台でここまで豪勢な刺し盛りを出してくる日本料理店も少ないのでは？

刺身を堪能した後は、土瓶蒸しでホッと一息。土瓶蒸し用にチョイスした小さめな松茸が贅沢に入ってます。カボスを一絞り…、あ〜、出汁が死ぬほど効いてる…笑 お猪口でゆっくりと楽しんでいると、目の前に大きな越前蟹が登場。

立派な福井県直送の紅ズワイ蟹。しっかり身の詰まった蟹足に、たっぷりの蟹味噌と蟹身を和えたお頭。そりゃ、不味いわけないんですが、何より"蟹臭さ"が無い。蟹の食べ放題等で感じる手に染み付くような臭みがこの蟹には無く、鮮度が良いのがすぐにわかります。身はホロホロで旨みが乗り、蟹味噌はエグみ無く濃厚な味わいでした。

蟹を堪能した後は、若狭ガレイの一夜干しを出汁に浸して…。キュッと旨みが凝縮されたカレイは、身の剥がれが良くふっくら脂が乗ってます。塩気が丁度良く、ノンアルですがビールが進みますな〜。

カレイを食べ終わる頃に、ほうば味噌が到着。2種の味噌を使用し、三河鶏のそぼろ、茄子、白葱、蓮根など。辛めの京桜味噌と甘めの白味噌がマッチしてます。

さて、ここからがメインディッシュ！
静岡が誇る最強和牛"遠州夢咲牛"のA5ランク、さらには最上位の12番の特級ロースを使用。割下には、驚くほどに削られたトリュフ。これらを合わせ、さらに追いトリュフ笑 これらを卵に潜らせて頂きます。肉質はシルキー、口の中で解けて無くなる融点のサシ、ここに加わるは、トリュフの上品な香り…。もう、口の中が旨さで混乱するレベル。これ1枚で何杯飯が食えるんだろう…笑

その"飯"ですが、もちろんただの白飯じゃあありません。イタリア産のポルチーニ茸を一面に敷き詰めた炊き込み土鍋ご飯です。蓋を開けた瞬間、突き抜けるようなポルチーニ茸の香りは、脳が麻痺するのではないか、と思うほど。身に締まりのある駿河地鶏と一緒に頂きました！ポルチーニ茸って、それこそ定番はパスタやスープだけれど、米にも合うんだな…と感動。腹パンの中、おかわりもしました！

食事の最後は香の物と椀物。椀物は、ハマグリサイズのシジミ。こんな大きなシジミがいるんだ笑 シジミ出汁が高級食材をとことん受け止めた胃を労ります…。

コースを〆るデザートはシャインマスカットのシャーベット。さっぱり爽やかな甘みのシャインマスカットは、本日の極上コースを締めくくるに相応しい一皿でした。

ご馳走様でした！
いやはや、菊川の郊外に、ここまでのお店があるなんて…。従来の日本料理の枠に囚われない"新日本料理"、高木氏の拘りと信念、そして長きに渡る鍛錬によって培われたセンスが生み出した、素晴らしいコースでした。高木氏は終始、満面の笑顔、新規客の私にも、とてもフレンドリーに接してくれました。最初、常連さんに挟まれた状態で少し肩身が狭いかな〜と思いましたが、最後にはまだまだ居座りたいな〜と思ってしまう居心地の良さ。

今後、某予約サイトにも掲載されるようで、全国区になることは間違いないでしょう。予約困難になる前にリピートは必至！また近々伺いたいと思います。良い夜になりました。

※訪問時→評点 3.32