衝撃の刺身定食 : さんぺい

魚好きのおじさんが一人で切り盛りするお店。
その日の天候、漁の成果によって決まる気まぐれな営業日で、電話番号も公開しておらず振られることもしばしば。
ですが、この上ないコスパ、その日あがったばかりの新鮮な魚介に大満足できるお店です。

まず、この店を訪れようと考えている方にお伝えしたいのは、とりあえず一見普通の家、人ん家。玄関に入ると右手にキッチン、というか台所があり、座敷の奥にメニューが書かれたボードがあります。

私が初めて訪れた時は座敷に座り待っていると、隣にいらしたおじさんが『にいちゃん、待ってても注文取りにきてくれないよ、言わなきゃ。』と。

ということらしく、台所のおじちゃんに向かって『おじちゃーん！日替り刺身定食ひとつ！お願いしまーす！』

すると『おなまえはー？』

と聞かれるので名を名乗り、出来上がると『○○さーん！できましたよー！』てな具合に名前を呼ばれるので、台所まで取りに行く。

というセルフスタイル。

そして取りに行って、誰もが驚くボリューム。お魚が炸裂しまくっているわけです。
種類も様々でどれも新鮮そのもの。圧巻です。
他所でこのクラスの刺身○点盛りなんて頼めば倍くらいの価格にはなるのではないでしょうか。

またおじさんの気分と混み具合次第でごはんとあおさのスープはお替わりできることも。

それからまた別な日に行った際、サバの開き定食を頼むと、おじちゃんからアジを勧められ、勧められるがままにアジの開き定食を頼んだのですが、このアジがとにかく大きいのです。
約40cmくらいでしょうか。
私が今までに見たアジの中ではダントツで一番大きかったです。
しかも大鯵でいて大味でない。香ばしい焼き目に脂が乗った柔らかい身。
おじさんがお勧めするだけのことはあります。

食後は食器返却用に用意された棚に食器を持って行って、おじちゃんにお支払いをするという流れです。

窓の外には海が綺麗に見えるテラス席もあり、夏は虫がいたりしますが素敵な景色が迎えてくれます。

なかなか行きづらい場所ではありますが新鮮なお魚とアットホームな雰囲気を是非味わっていただきたいです。


【追記】２月５日夜
県外から単身赴任でこちらに来ていた知人の送別会で、男女７人で初めての夜利用でした。
夜はおじちゃんの携帯に電話して予約しておくというスタイル。
「料理は２，０００円から３，０００円くらいまでで、飲み物はビール以外は持ち込み自由です」
ということでした。

何でしょうこの好条件。震えました。
せっかくなので、と、３，０００円の料理でお願いしました。

と、ここで考えるわけです。
ランチとはいえ、１，０００円であの料理を出してくる化け物に３，０００円×７人=２１，０００円なんて渡したら恐ろしいことになるのではないかと。

そして当日、予想通り、、いえ、予想以上のお魚天国でした。
まず席に用意されたのは、大人一人では持ち きれないような量のお刺身。そして各自の前には枝豆、モズク酢、なまこ酢、さざえ。
みんな揃って乾杯を済ませ食べ始めるわけですが、相変わらずお刺身が旨いのです。
魚マニアの友人とこれはたぶんハガツオだね、イシダイうまいなぁ、アラもうまいね、なんて話しながら食べていると、おじさんから「まだまだあるからね」と、恐ろしい一言。

そしてお刺身を食べながら談笑していると。おじさんが次々と運んでくるわけです。
怪物級のお魚達を。

まずおじさんが繰り出したのはヒラメの唐揚げ。３０ｃｍ程でしょうか。
そして「これは二人で一匹ずつ一人は余るから一人で一匹ね～」
なんて言い出すのです。
すごいボリュームでしたが、ポン酢で食べたり、塩で食べたり、とにかくおいしい！

そしてお次はカワハギの煮付け。
こちらは一人一匹ずつ。
これも良く締まった白身が旨い。そして卵が絶品でした。

それから大皿に盛られたタコのマリネ。こちらは大きなお皿に盛られたものが二皿。
これも新鮮なタコと野菜が優しくお腹を満たしてくれました。

そしてカマスの塩焼き。
もうこんなもんペロリ！
うますぎ！

そして最後にあおさのお吸い物とおにぎりでとどめ刺されました。

お料理を全て出して下さった後にはおじさんが、魚の話、お店の話、いろいろ話してくれました。
そして度肝を抜かれたことが、先程頂いたお刺身の件。
魚マニアで自分でも釣りに行ったり魚突きしたりする友人が、おじさんに
「アラおいしいです」と言うと、おじさんは一瞬はて？みたいな顔をしたのですが、ニコッと笑って
「魚に詳しいね！それはアラじゃなくてキブダイだよ！ほとんどアラと変わらないでしょう！」とおっしゃるのです。
友人はすこぶる驚いていました。キブダイなんてのは釣りや魚突きをする人間からしたら、雑魚同然の扱いなのだそうです。
しかし、おじさん曰く、キブダイにも美味しく食べられる時期がほんの二ヶ月ほどあるのだそうです。
また、名前は覚えていないのですが、他にもイシダイだと思っていたお刺身が違うお魚でした。

高級魚出して旨いのは当然ですが、やはり「旬」って大切なのだと改めて思い知りました。

そしてとりあえず、おじさんのお魚の知識がすごいってことはわかりました。

おじさんは言いました。
「せっかっく美味しい魚が安く手に入るのに、安く出してる店がないじゃない。だから私はそれをやるの。利益なんか求めたらだめ。」

お腹いっぱい。幸せでした。