在住日本人に好評の新鋭、今の粤菜だけでなく外省も懷旧もあり。 : China Tang Harbour City

4.1［ 料理・味4.1 | サービス4.0 | 雰囲気4.1 | CP4.0 | 酒・ドリンク- ］が私の評価です。


今回の香港旅行では、短期だけにできるかぎりミスを避けるためにも、それなりに情報収集・分析はいたしました。

その中の情報源の一つが、在港の日本人諸氏であります。彼ら彼女らは、当然、香港の事情に通じています。
もちろん、在住の形態はいろいろですが、香港は永久居民になる資格要件が比較的甘いので、(7年間在住、6ヶ月以上の不在期間なし、香港での犯罪歴なし、香港に永久に居続ける意志と住所、一定の収入があればいつまでも居られる）香港好きな方は自然に居着いてしまう。そういう方たちはまさに香港♡ラブなので知識経験も広く深い。ただ、食についていえば、我々とはちょっとニーズが違う場合が多いのです。短期の旅行者である我々はどうしても中華料理、それも今の香港ならではのものを求めているのに、在住の人はどうしても「どこの寿司がうまい」「あそこの焼き鳥はすごい」「居酒屋Xの大将がもうすぐ店を畳んでしまうらしい」「本物の京漬物だったら・・」・・・いやいや、そんなのどうでもいいんですってば。

今回はラッキーなことにそうした今の香港中華のお店情報を頂戴することができました。このブランド、上海灘グループの総帥である鄧永鏘（デヴィッド・タン）氏が中環のランドマークにお店を出して好評ということはかろうじて知っておりましたが、「ランドマークよりもハーバーシティがお勧め」だそうで。理由は
１　こちらのほうが新しいので、スタッフのやる気がすごい
２　日本人が集まりやすいシティスーパーや太平洋クラブの近く
３　なんといっても、ハーバービューがきれい

２はともかく、１と３に惹かれて予約、12時に入店。

たしかにできたてできれい、そして景色はすばらしい。しきりにマカオと結ぶフェリーも行き来していますね。

明るい調度と設計、上海灘らしい洗練。香港では高級店でもしばしば皿の縁あたりの欠けは見逃されますが、こちらは皆無、そして同じテーブルで意匠の違うお皿が乗せてあるのも珍しいです。

注文したのは、まず點心から3種
招牌小籠包　潮州粉果　紫薑牛肉球 いずれも$48
スープを2種
淮陽拆魚羹　$128　杏汁菜膽燉白肺　$98
アラカルトから
高湯三寶蔬　$98
掛爐琵琶鴨(半羽）$128

點心、小籠包はまあ、あたりまえにおいしい。しかし皮が破れず、中のスープがほどよく熱い、そして肉がうまい、という3条件をクリアするのは簡単ではありませんが、こちらはもちろん難なく。
潮州粉果　　豚ミンチ、ニラ、ピーナツ、えび、キノコなどを半透明の皮に包んで。がりっという歯応えがいいですね。少し辛いソースが添えられます。
紫薑牛肉球　生姜、セロリ、コリアンダー、牛ミンチを包まないで出す、というのが伝統的なスタイル。これはウスターソースと相性抜群。清々しい食感と香りが口中に広がります。

そして、最近連れに好評のスープ2種攻撃。今回は
淮陽拆魚羹　淮陽は河南省東部の県。これは外省菜という地方の日常料理、これがどうもこちらの特徴らしく、メニューのスープコーナーではなく、外省菜コーナーにありました。魚肉のミンチと黒キクラゲ・タケノコの千切りを具にした、魚ベースのとろみのあるスープ。コクがあり、かつ香辛料が効いているうまみの濃いもの。すばらしい。
そして杏汁菜膽燉白肺、これは廣東の古典的な料理です。豚の肺を青梗菜の芯とともにアーモンドミルクベースのスープで２度蒸しするもの。これは「羹」でなく「湯」ですが、それにしてはトロッとした口当たり、とてもまろやかな味わいになっております。

高湯三寶蔬　ブロッコリー、白菜、ケールをチキンブイヨンでゆっくりと煮込んだ料理。中華ハムが加えられます。これもおいしく、かつスープの美味さはお見事。ある意味スープ３連荘ですけどそんなの気にしません。

メインは、懷舊精選（昔風の料理特集）というコーナーから選びました。琵琶鴨とは、文字通り楽器の枇杷（Pipa)のような形に押し割ったアヒルの肉を、じっくりと時間をかけてマリネしてからローストしたもの。今回まだアヒルを食べていないということで選んだのですが、これが幸運。独特の高貴な風味に魅了されます。ただ、これは量が多いので少しのこった分はお持ち帰り。

サービスも若い男女がてきぱきと無駄のない動きでテーブルを回ります。今回は女子会、ご夫婦、恋人たちなど地元民ばかりに囲まれて、それはにぎやかだけど楽しいランチ。静かな雰囲気を楽しみたい場合は個室が用意されます（最低消費額設定に注意）。また、今はしんどいけど、１１月くらいからだったら、ここのテラス席でディナーなんて、きっとすてきでありましょう。

一皿一皿の完成度が高く、かつ守備範囲が広い。やや垢抜けすぎではないか、という評もありえましょうが、私は在住日本人の多数と意見を同じういたします。再訪希望。


BGM　日本人客を意識しているのでしょうか、圧倒的に演歌（ただし香港人歌手のカバー、あるいはテレサテンのオリジナルなど）。

Asia Tatlerというハイエンド向けサイトにて紹介されています。
http://hk.dining.asiatatler.com/restaurants/china-tang-harbour-city

CXのサイトでもようやく紹介が掲載されました。
http://www.cathaypacific.co.jp/hongkong/cool/detail/id/1183/

an’ an 2106年9月号　「魅惑の香港」　マガジンハウス　28頁


トイレ　店外に他店と共通、男女別洋式。ハーバーシティはどでかいショッピングモールですが、このレストランがある付近は最近改装したてで清潔。