残念、取って付けたような : 山田チカラ

2012年の5月のとある夜のこと、友人と訪れた日の記憶について。
エル・ブジを見て、そういえばという話の流れで、この店の話題がでて、訪れたのだが
結論から先走ると、残念、がっかりというのがその率直な意見であった。

電話での予約対応というものが、その店を訪れる期待感というものを醸成するのだが、
しっかりとおもてなしをされるお店の予約の電話というのはそれが伝わってくるのだが、
こちらはそれが伝わって来なかったというようなところから第一印象がはじまる。

お店は麻布にあり、重い鉄の扉をゆっくりと開けるとすぐに茶室の躙口とカウンターが7席ある。
席に着くと、おしぼりとメニュー。まず、白いご飯とお味噌汁。茶懐石料理の始まりとなる。

ドリンクメニューがiPhoneで表示され渡される。
ボトルのみなので、グラスはベット、ソフトドリンクの方は別の紙メニューを。
ボトルを頼むのが普通なのだろうか、グラスの説明もしてもらえると助かる。

ごはんは甘く柔らかめ。
お味噌汁は白味噌に黒ゴマ豆腐。
ホタルイカの天ぷらに、酢味噌添え。
ホタルイカの天ぷらが冷めていたのは、なぜだろうか。
中途半端な温度感であったので、戸惑ったのだった。
また、料理のひとつひとつに説明がなく、毎度尋ねた。
最後まで聞かないと教えてくれないので、店の方針なのだろうか。

キャビアがよいのがあるので、ご一緒にどうかということなので一緒に出てきたが、
これまた、ごはんがなくなった後に、ごはんの上に載せて召し上がってもよい、
というのは、とてもいただけない。また、キャビアの説明も何もないので、
いったいなにが、良いキャビアがはいったのか分からずじまいだった。

ごはんを食べている途中で注文したドリンクが出たが、
この店のドリンクの位置づけというのは、料理の前の
最初の乾杯というものではなく、途中で飲ませるものである。

オリーブとマティーニ。
ゼリー状に食感のため新鮮である。

お刺身は、それぞれ魚のみが小さなお皿に載せてある。
わさびの量は少なく、醤油がムース状になっていたが、
旨さを追求しない姿勢というのは、エル・ブジをみて納得済みだ。

ウニと毛ガニのロワイヤル＝茶碗蒸しであるが、これまた普通においしい一品だった。
マンハッタンのクラムチャウダー、トマトソースが下に入っている。
濃厚でとても美味しかったが、つけ添えのパンがとっても貧弱でほんのところでいつも肩透かしをくらう。

コンソメスープとフォアグラが冷凍され粉状になっているもの、
スープの説明はない。早く食べないと溶けてしまうことも事前に伝えてほしい。
その瞬間瞬間に対する、出してくれる方の姿勢というのが感じられず非常に残念だった。
（ただ、期待値が高すぎたのだろうか。）

穴子のスモークとレンコンのすりおろしたもの。でんぷん質がもちもちして、ごまの風味と
食感もよく、おいしかった。お椀を開けた時のスモークも香りがよい。
この一品だけ、なんだかほっとできた。

お肉は佐賀牛のローストビーフ、きのこの塩梅と大きさがが悪く、食べ切るのに苦労した。
調理方法いたって普通、おいしかった。蒸し野菜とスープも淡い味付けであった。
続く、五島うどん＋からすみ、出汁が弱く、うどんにコシがない。よく分からない。
からすみの切りそろえ方も、適当であった。

そもそも論だが、普通に食べておいしいかどうかさえ考えこんでしまう。
そもそも和食の基本がないのではないだろうか、というような印象がついて回るので、
落ち着きがなく、本質に向かっていない気持ちが高まってくるので、居心地がよくなくなってくる。
前衛的なアートとしての料理のあり方に、取って付けたような和食や懐石のガワだけ載せてあるような
ちぐはぐを終始感じざるを得ず、とても心地よいものではなかった。

最後のデザートはクリームソーダとのことで、バニラアイスとソーダ小さな器で。
〆はお抹茶で、茶室でも、カウンターでも選べる。
お茶室には入る。クッションが必要な方もいるだろう、しかし、美意識としてその場に
おいておくというのは、いかがなものだろうか、私なら外に出しておいて確認してほしい。
花が飾ってある。お香が焚いてある。季節を感じる、よい趣のある飾りだが、ノーコメントだ。
店員さんとの会話は、何度も通ってた常連さんとしかできないようで、一見さんとしては仕方ない。

お点前を頂戴する。確かに雰囲気があるのだが、
先日、京都の茶会から戻ってこちらにきたので、いろんなところに違和感を感じざるを得ず、
新しいスタイルなんだと、自分に言い聞かせても、なんだかんだで受け入れられなかったところに、
私の感受性のなさがあるのだと思いました。一期一会であってほしかった。

とてもよいお茶席を終えた後のすっきりした気持ちというものを思い出すに、
とても率直に言えば、取って付けたようなもの、表面的なようなもの、でしかないように思いました。
主人が客を迎える姿勢というのは、細部に宿るものだと思います。

以上、非常に辛口なレビューになってしまいましたが、私はまた行きたくなるような箇所が見いだせませんでした。悪しからず。

4.00　料理・味 4.10 |サービス 4.00 |雰囲気 4.24 |CP 3.05 |酒・ドリンク 3.57