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夏の装いの、彩せいろ蕎麦
「残暑」というには残りすぎの暑さをやり過ごそうと近所の蕎麦屋へ。
季節ごとの変わり蕎麦が涼を誘う、ここはそんな粋な演出ができる。
お願いしたのは薬味のたっぷり乗った蕎麦「彩せいろ」。
削りたての鰹節が豊かな香りと旨味を
細切りの大根が程よい辛味と涼を
揚げた蕎麦の実が軽やかな食感を
たっぷりの青葱が味わいを添える。
そして相変わらず細面の優男のような端正な蕎麦。
辛めの汁に山葵を溶いてさっとかけて啜る。
「一服の涼」とは、こういうものだ。
今年は絽に一度しか袖を通さず、浴衣は結局着ずじまい。
そんなこんなでもうすぐ単衣の季節が始まろうとしている。
綺麗な蕎麦を、時間をかけて、ゆっくりと。
見れば二八の御顔に
花をよそおふ薄化粧
花の盛りに誇り高き最期を迎える若武者、敦盛。
優しきいで立ちと謳われた見目麗しい御顔は熊谷直実の手にかかり、名手の誉の高かった青葉の笛は屋島の陣へと送られた。
「蕎麦は二八が一番美味いんだよ」
伊豆の南端で蕎麦屋をしていた祖母はいつも、そう言っていた。
食べ物の薀蓄も知らない頃から私は、そんな祖母の営む海の見えるカウンターのみの蕎麦屋で過ごすことが多かった。
客に旨いものを食べさせる気概が人一倍大きかった祖母の作り上げる蕎麦はそりゃあ旨かったので、何故かそれが基準になっており、よそで蕎麦を食べるというのはあまりしたことが無かった。それは安曇野や戸隠を擁する信濃の国の学校に行ってからも続いた。
自ら進んで蕎麦を食べに出かけるようになったのはここ十数年くらいのこと、つまり、祖母が亡くなってからなのだ。
今の住まいの近所に、感じの良い蕎麦屋がある。
整った庭、清潔な店内、通勤時にふと目線の脇に飛び込んでくる異世界の様子に一服の涼を感じるほどで。
むせ返るような暑い暑い日、繁忙期の職場への出勤前に寄ってこうかと。
久しぶりに店内へ・・・実は何度か利用しているこちら。
客層はいつものように落ち着いた面々、店内も綺麗にしてある。
お願いしたのは天盛りせいろの大きいの。出勤前だし、ちゃんと食べたくて。
長方形に乗ったお蕎麦は細身でさらさらと綺麗な面差し。
薬味も綺麗に手塩皿に収まりよく、蕎麦汁と天つゆを分けておいてくれるのも嬉しい。
天婦羅の海老の身の大きなこと、それにえのきにしし唐、茄子、大ぶりの甘い甘い南瓜。
これらを時間をかけて、ゆっくりいただく。
私もようやく、こうした時間を愉しめるようになったのだな。年を取るって悪くない。
窓の外が庭では無くて海ならば、まるでかつての祖母の店のような感覚で・・・ここはほんとに寛げる。
因みに祖母は店の休みには日本全国津々浦々、旅行にしょっちゅう出かけていた。そして諸国の旨いものをさんざ堪能してきてはまた蕎麦屋稼業に精を出すといった感じで・・・なんだ、今のアタシそっくりじゃないか。
そういえばアタシの娘も同じようなこと言ってたな「ね、お母さんそっくりでしょ」って。
旅好き旨いもの好きはこの遺伝子の仕業か。
今度お墓参りに行ったら「ね、おばあちゃんそっくりになったでしょ」って言っとこう。
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店名 |
蕎麦処 天和庵
|
---|---|
ジャンル | そば |
お問い合わせ |
049-262-0801 |
予約可否 |
予約不可 |
住所 | |
交通手段 |
東部東上線 ふじみ野駅 東口徒歩5・6分 ふじみ野駅から452m |
営業時間 |
|
予算 |
¥1,000~¥1,999 |
予算(口コミ集計) |
¥1,000~¥1,999
|
支払い方法 |
カード不可 電子マネー可 |
席数 |
36席 |
---|---|
個室 |
無 和室は赤ちゃん優先です。 |
貸切 |
不可 |
禁煙・喫煙 |
全席禁煙 |
駐車場 |
有 8台 |
空間・設備 | オシャレな空間、落ち着いた空間、席が広い、座敷あり |
ドリンク | 日本酒あり、ワインあり |
---|
利用シーン |
こんな時によく使われます。 |
---|---|
ロケーション | 景色がきれい、隠れ家レストラン、一軒家レストラン |
お子様連れ |
子供可 |
ホームページ | |
オープン日 |
2005年7月23日 |
初投稿者 | |
最近の編集者 |
|
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通常の、近所で過ごす休日。
年末年始の混雑も落ち着いているだろうから、しばらくぶりに行ってみようと。
前回来た際は残暑にふうふういっていたけれど、すっかり季節が移った。
温かいお蕎麦が良いなとメニューを開いて見つけた、卵とじ。これこれ、これにしよう。そんでもって、牡蠣の天婦羅をいっこ、つけてもらおう。
時刻は丁度、昼過ぎで。窓辺では御簾のような日除けで遮らないと眩しい寒中の斜陽。
温かい蕎麦茶を飲みつつ、待った。
旬の牡蠣天、なんてふくよかで大きい。綺麗に揚がっているのを塩でいただく。滋味深さと味わいを噛み締める。
温かい卵とじは、ふわふわのまんまるが、汁の上に浮かぶ。真ん中の三つ葉をあしらった面差しは気品すらある。
丁寧な出汁の香りがふんわり、極細のお蕎麦はさらりとしてもっちり。そこへ、たまごのやさしさが追いかけてくる。
じわっと・・・温まる。冬の醍醐味だなあ。
実は卵とじが食べたいと思ったのは、京都で食べた鶏卵蕎麦をふと思い出したからだ。丁度このくらいの時分に上洛し、京都駅から直行しては汗を流しながら食べた、葛餡に生姜が乗った色気のある「けいらん蕎麦」。板わさにお銚子を挟んでの蕎麦屋吞み、ここふじみ野でもしたいなあ。
まてよ、確か応仁の乱の前からしているかの店は何故蕎麦切りが広まる前に出来たのかと疑問を投げかけると、もともとは菓子屋だったのだそうだ、ああ、それで納得。
こんな話に花を咲かせて、食後の余韻に浸るが、客は引きも切らずなので早めにごちそうさま。
話の続きは、コーヒーを飲みに行ってからにしよう。