安心材料を店で捏ねて焼き上げる、高品質スーパーのベーカリー。 : カンパーロ KEIHOKU新柏店

柏、我孫子など千葉県東葛飾地方の住宅街に展開する、高品質スーパーの「京北」さん。
高度成長時代の昔には、東京近郊の宅地化の波に乗って拡大する、ごくありきたりな地域スーパーだったのですが、何時からか徹底した高品質を武器に大手の進出に対抗、いまでは紀ノ国屋と商品提携するグループの中でも俄然注目される存在になっています。
昔のエピソードで、タバコが如何に体に悪いかを思い知った社長が、置けばそれなりの利益を生むタバコ自販機を店からすべて撤去したということがありました。
自分たちの商売のブランド、コンセプトを守るというのはそういうことなのだと、衝撃を受けたものです。
高品質、安心安全、そして地産地消への取り組みには定評があって、バイヤーもかなり研究熱心な様子。
都心部でもない商圏でそれなりのターゲットをしっかり捉えるご商売には、そういった地道な努力があるわけですね。

さて、この京北さんが力を入れるのが、「カンパーロ」と銘打つインストアベーカリー。
どの店舗に行っても、この焼きたてパンのコーナーは一番人気ですね。
今回訪問した新柏のお店でも、入り口にもいちばん近い一等地で展開しています。
普通、スーパーのベーカリーでは冷蔵、冷凍されたデリバリー生地を店内で焼くのが一般的。
でも、この「カンパーロ」さんには気候まで読みこなす職人がいて、店内でていねいにスクラッチをこなしています。

「ホテルブレッド1/2」(315円)
少しだけ甘く、ふわふわっとした食感。
きめ細かい生地のせいか、普通のパンより口どけが良く感じます。
京北のパンではこういった食パンがやっぱり一番のお勧めですね。
「フレンチトースト」というカリッと焼かれたラインナップもあって、そちらは小麦の香りが秀逸です。
使用される油脂は有機マーガリンで、イーストフードや乳化剤などは無添加。
必要最低限使用される添加物は徹底的に記載していて、さすが、お店のコンセプトに偽りはありません。

「うぐいすあんぱん」(140円)
いかにも食欲をそそる、すばらしい焼き色を見せます。
コッペパンのような懐かしい感じの生地を割ると、緑鮮やかなうぐいす餡が。
もちろん旨いことは否定しませんが、京北のパンとなると見方は別。
既製餡に由来するのかもしれませんが、この鮮やさは果たして必要なのか・・・・・
餡の香りや味そのものはまずまずながら、甘さの感じ方はちょっと凡庸でしょうか。

「ベーグル・プレーン」(136円)
密度の高い、モチモチの生地。
小麦の良い香りがダイレクトに伝わってきます。
軽くオーブントースターで焼いてみると、格段の旨さです。

「さつま芋カスタード」(130円)
茹でたまま荒い食感を敢えて残したサツマイモにカスタードクリーム。
芋の自然な甘さと牛乳などの素材感が生きたカスタードが出会い、デニッシュ生地に包まれています。
デニッシュ自体は、ほどよく、さほど突出せず・・・・・

「メープルメロンパン」(140円)
これもなかなか旨いですね。
メロンパンの王道とでも言いましょうか。
生地は良い香りでしっとりしているし、中に閉じ込められたメープルシロップは、固まって食感が残るほど。
特に冬場は、その食感とメープルの香りが最高に旨い。
甘さはほどほど、控えめです。

京北さんが食パン類から排除している「イーストフード」。
イーストはイースト菌ですがイーストフードは全く別物。
「フード」と呼ばれるのでイーストの餌などと誤解されるのですが、有機質系フードの一部以外はイーストの栄養分でも何でもなくて、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、リン酸塩など13品目の合成添加物から４～５品目を混ぜて作る化学物質なのだそう。
製パン時間を短縮し、パン焼き機の耐性を良くするための、れっきとした添加物なのですね。
しかも、イーストフードと区分される薬剤の中にはかなり毒性の強いものもあるのだと。
日本ではパンにしか使用が許可されないし、外国ではほとんど使用禁止になっている薬剤もあるのだとか。

これを使えば短時間で大量のパンを発酵させることができるので、少ない原料でもふわふわ膨らんだパンが一度にたくさん焼ける。
同容積の「天然酵母パン」と「イーストフード使用パン」の重量を測ると、相当な違いが出るのは有名な話です。
それにイーストフードを使うと品質や製造時間などが管理できて、均質なパンを大量生産しやすいわけですね。

「無添加」を謳うベーカリーでも、マーガリンにイーストフード等あらゆる種類の添加物を予め練り混んであるものを使用しておいて、無添加を名乗ることがあるのだとか。
一次材料に混入された場合には、添加物表示の義務はないと解釈するのですね。
それに食品添加物の取扱いとして、「キャリーオーバー」の考え方があるのだそう。
製造時に使用しても、工程を踏んで製品になった段階で消失している場合は、添加物表示の義務はないのだと。

レビューを書きながら興味がわいたのでいろいろ調べてみましたが、結局はどこまで気にするか、どこまで拘るか、それはやっぱり人それぞれでしょうね。
悲しいかな、生活の中から悪いものを一切排除することなどできっこないわけです。
それに、パンの種類や焼き方によっては、どうしても使わざるを得ない添加物もあるでしょうし、京北さんでも菓子パンの一部などには「フード」をきちんと表記して使っています。
徹底的に拘り出せば、当然コストにもどんどん跳ね返る・・・・・

その点、京北さんも考え抜いているわけです。
納得できるところで折り合いをつけて、安心安全とコストのバランスをぎりぎりのところで取っている。
成分表示や添加物表示、トレサビリティをきちんとやって、客にしっかり選択眼を養わせることも考えにあるかもしれません。
その結果としてホテルブレッドのように拘ってそれなりに高価な品物も、しっかりした品質の割には手の届く価格として映り、魅力的な訴求ができるわけです。

安心安全、旨さ、クオリティと価格のどこで折り合いをつけるか。
これからの世の中、ますます大切なことになってくるかも知れませんね。