ほぼ十割の田舎板蕎麦の超有名な老舗ですが、その営業姿勢から、変わらぬ人気の理由が分かりました。 : あらきそば

【H28.7.31 日曜日 10:30 訪問】

創業は大正９年だそうですから、何と96年になる老舗です。
又、茅葺き屋根の民家を、そのまま利用した店舗は、築180年以上になるものです。

未だお元気ならば、御店主は２代目の筈ですが、蕎麦打ちは３代目と４代目の担当だそうで、地元の村山産の玄蕎麦を、毎日自家製粉しているそうです。
出される蕎麦は、ほぼ十割という昔ながらの太い田舎蕎麦で、「ほぼ…」という説明から、夏場のこの時期は、つなぎが入っているのだろうと想像出来ます。

又、名物の「にしんのみそ煮」は、北海道岩内から厳選したものを取り寄せた鰊を、自家製の麹味噌でじっくりと煮込んだもので、色が真っ黒なのは、煮汁を50年以上、継ぎ足ししているためだそうです。

社会人に成り立ての頃に、一度連れて来てもらい、その後にもう一度位は訪問した筈ですが、当時の私は、蕎麦の味もラーメンの味も、未だ良く分からない時代でした。
故に、古い民家で食べた、板で出される物凄い量がある田舎蕎麦…位の記憶しかありません。

日曜日ですから、開店時間の30分前に来てみました。
駐車場は３ヶ所ありますが、店の脇の駐車場には既に２台の車がありました。
３組目で良かった♪

先の方が、車から降りて店に向かわれましたので、我々も続きました。
30分前ですが、玄関は既に開けてあり、中に入ることが出来ました。
靴は、洗濯挟みに番号札が２枚付いていて、１枚を持ち、洗濯挟みと切り離せないもう１枚の番号札ごと、靴に挟みます。

中に入ったら、来店順の番号札を渡されました。
席は好きな場所にで大丈夫です。
中に通してもらえただけでも有り難いのに、しばらくしたら水が提供され、注文を聞き始めました。

メニューは卓上にあるものと、店内に掲示してあるものの２種類。
大盛に相当する「むかし毛利」は、卓上のメニューにはありません。

現在のこちらの基本メニューは…
＊「うす毛利」￥820。
＊「うす毛利、にしんのみそ煮付」￥1200。
＊「あらきそばセット」（うす毛利、にしんのみそ煮と季節の野菜付）￥1550。
それに大盛に相当する…
＊「むかし毛利」￥1600。

昔々に私が訪問した頃は、多分「うす毛利」というメニューは無かったかと思います。
確か、ここのを完食したら偉い！…とか言われて来店した記憶が…(笑)。
余りにも量が多いために出来たメニューだそうですから。

こちらの「板」は、普通の店の「大板」とも比較にならない程に長さがあります。
小さな板を出す店ならば、３倍位の長さがあるかと思います。
それに、底板が見えない蕎麦が盛られている訳ですから、昔の板そば（現在の「むかし毛利」）は、普通のざる（盛り）ならば、６枚以上に相当する量だと思います。
当時は、若かったから、ちゃんと食べられました！(笑)。

なので、現在の「うす毛利」でも、普通のざる（盛り）ならば、３枚分以上はあると思います。
写真を見て、板底が見えるスカスカの蕎麦を見て、甘くみたら痛い目に会いますよ(笑)。

注文したもの。
＊「あらきそばセット」（うす毛利、にしんのみそ煮と季節の野菜付）￥1550。
＊「うす毛利、にしんのみそ煮付」￥1200。
この際にお願いした撮影は、勿論快く♪

開店時間前の10時49分には、つゆ徳利、空の猪口、薬味の刻み葱、漬物が提供されました。
更に２分後には、「にしんのみそ煮」と「季節の野菜」が提供されました。
更に８分後の開店時間の１分前である10時59分には、メインの蕎麦まで提供されました。

開店時間の30分前には準備万端で、客を招き入れる姿勢。
「超」が付く有名店なのに、全く偉ぶらない、極めて感じが良い自然体の接客…と…、これだけで、出された料理が美味いだろうに違いない！…と感じます♪

食べた感想です。
提供された順番とは違いますが、メインから順に。

先ずは蕎麦。
とにかく、板が長いです(苦笑)。
板底が見える割合の面積が多いですが、やはりかなりの量があります。

割箸よりは細いですが、エッジが立った断面が正方形の太さがある田舎蕎麦。
これだけの太さで、断面が正方形だというのは、技術が素晴らしいから出来ることだと思います。

水切りは完璧ですが、氷水で完璧には締められていないかと。
そこまでは冷たくはありませんでした。
それでも、延びてはいません。
この時期の太さのある田舎蕎麦ですから、（私が良く遣う）小豆臭さは多少はありますが、気になる程の癖でもなく。

当たり前ですが、喉越し等とは別世界の、ワシワシと噛んで食べるタイプの蕎麦です。
なので、田舎蕎麦の味を、充分に堪能出来ます。
しかしながら、前にも書いた通りに、この「うす毛利」でも、量はかなりあります。
約半分位で、私は飽きて来ました(苦笑)。

同行の女性は、私よりも最近に訪問しています。
「にしんのみそ煮」や漬物等を口直しにしながら、私よりも先に完食！(笑)。
私は、「にしんのみそ煮」は、蕎麦が提供される前に、全部食べてしまいました。
それでもね、途中でつゆに一味を入れたりしなくても、少しの休憩を入れるだけで、最後まで美味しくいただきました。

つゆは、濃口醤油の色が、そのまま現れているもので、この太い田舎蕎麦に、負けない濃さです。
これも、昔ながらのつゆなのでしょうが、際立った旨味やコクは感じられないものですが、蕎麦湯で割った場合に、控え目な旨味が伝わって来ますし、この蕎麦に合うつゆだと思います。
蕎麦湯は好みのさらさらタイプでしたので、何もいうことありませんし。

薬味は、刻み葱のみ。
山葵はありません。
卓上の一味のみが、その他の薬味になります。
私は、山葵も一味も不要で、刻み葱は、蕎麦湯を飲む時に入れる位ですが、途中で一味を使えば、又新鮮な味わいになるかとも。

「にしんのみそ煮」…、単品メニューはありませんが、メニューの差額から、￥380になります。
前記の煮汁は、色とは違い、かなり円やかで、味の濃さ、美味さ共に抜群です。
鰊そのものの美味さも、申し分ないかと。

「季節の野菜」…、同様に、単品だとすると、メニューの差額から、￥350になります。
季節毎にメニュー名や、内容は変わる様です。
今回の内容は、茄子漬、胡瓜と南瓜の漬物（茄子漬よりは浅漬け的）、茄子といんげんとししとうの揚げたものに味噌で味付けしたもの。
漬物も、味噌味の揚げ野菜もしょっぱくはなく、それに合った丁度良い味付けでしたが、薬味と一緒に提供される漬物もありますから、漬物の部分がかなりかぶっているかと思います。

その最初に提供される漬物は、胡瓜と瓜と大葉。
二人分が一皿で提供されました。
この漬物に関しては、かなりしょっぱいという書き込みが多いですが、今回は、前記の「季節の野菜」の中の漬物も含めて、丁度良いしょっぱさで、素材そのもののパリっとした食感が活かされていました。

昔々の曖昧な味の記憶を確かめるために訪問した様なものですが、超が付く有名店になってもの人気の秘密が分かった様な気がします。

蕎麦は、はっきりと好みの問題になりますが、蕎麦も含めた一つ一つの料理を、丁寧に作り続けていることと、又そのことからも来ているのでしょうが、全く偉ぶらない、客を迎え入れる姿勢が素晴らしいと思います。

店を出たのは11時20分頃かと思いますが、待ち合い席は勿論、外にまで待ち客が溢れていました。