煮干しの強烈な苦エグミーの先に得体のしれない旨みがある。 : 煮干鰮豚骨らーめん 嘉饌

仕事が遅番だと上がるのはどうしても23時近くになってしまい、この時間から外食しようにも選択肢は本当に少なく、いつも困ってしまうんですね。で、本当に行く店がなくて、あっそうだ、食べログの機能の一つである「行きたい」店リストの中で、「夜12時以降入店可」な店をピックアップしてみたらどうかしら、すると西八王子にある「煮干鰮豚骨らーめん 嘉饌」がヒット。相模原から車で30分とかからないうえ、過日「煮干鰮らーめん 圓」に食べに行ったその感想に対するコメントでこのお店を勧められて以来、ずっと行きたいと思っていたこともあり、即座に決定。深夜のラーメンドライブと相成りました。

ナビ任せでしたのでどこをどう走ったかはナビに聞いてほしいところですが(笑) 八王子バイパスに乗らないで旧道を走らされ、冨士森公園のあたりを通り過ぎたような気がします。で、線路を渡ってすぐのところ。見た感じ年季の入った飲み屋さんって感じで、居抜きなんでしょうか、夜ということもあるのでしょうがラーメン屋という感じは全然しませんね。ドアのところに「営業中」の札がひっそり掛かっているのを確認し、ドアを開ける。すると中は白一色で黒がアクセントに使われている、「煮干鰮らーめん 圓」と雰囲気を等しくする清新なスタイル。カウンター席7席のみで、席の後ろはすぐドアというくらい狭く、そんな店の小ささの割に大きな食券機、の割に少ないボタン数がちょっと可笑しいw

さて、席に着く前に食券機へ。注文は「煮干鰮豚骨らーめん」(750円)と「白めし」(100円)。ライスじゃなく白めしというのがいいですね、まあ出てきたのは普通のご飯でしたけどw 先客1名、後客２名。愛嬌のあるでも苦労してそうな50歳すぎの男性によるワンオペですが、僕のメニューは4分程度で完成、カウンター越しに渡されました。ぐおぉぉ、この色合い、かなりキテる…。1㎜下の麺が見通せません、すさまじき不透過率。そして何よりこの香り、圓のラーメンに嗅ぎつけたあの煮干し感・ぶっちぎりの鰮煮干しパラダイムをさらに強烈にした、言うなれば鰮煮干しエクストリーム。いいね！ そうこなくっちゃだよね。

嬉々としてスープからいただく――ぐふォォ(声が低くなる)、煮干し感がすげえ重い、ザラリとした質量感、遠慮のない苦エグミーがガツンというかドスンとくるぜ☆ 煮干しラーメン自体がそうなのかもだけど、人をかなり選びそうなスープですし、いかに圓の煮干しラーメンの万人受け仕様が革命的かってことがわかります。力士による張り手がごとく強烈で剥き出しの煮干し風味に負けず劣らず、容赦のないドロリ濃厚豚骨醤油。鰮煮干しにばかり気を取られていると豚骨醤油のボディブローにヤラれるぜ★ 煮干しと豚骨が互いのくさみを相殺し、醤油が全てを丸くおさめる、毒を以て毒を制して和相成るといった趣きだが、しかし液体であるのが不思議なくらい重み・ザラリ感を孕んでいるスープなのに、不思議としょっ辛くはなくて。軽々しく美味しいと言うにはあまりに濃厚・あまりにエグいけれども、奇跡的なバランスによって得体のしれない旨みが生まれているのを否定するわけにはまいりません。

博多ラーメンを思わせる極細麺もいい。思ったほどパツパツしてなくて、モチモチとしてさえいる、細さの割にコシと小麦粉の風味を良く感じられて、印象に残る麺ですね。スープをけっこう拾うから、ラーメンとしての一体感あるし。そして重大な転機になったのが替え玉。麺がかなり美味しかったので追加で注文しちゃったんですけどね(白めし+替え玉=死)、麺の上に刻み玉ねぎが乗っかってきて、この玉ねぎがスープとすごく合う!! いや煮干しラーメンに刻みたまねぎが合うのは前から知ってるし、玉ねぎのフレッシュな生辛さが煮干しのエグ味を打ち消すことは煮干しラーメンを提供してるラーメン屋の関係者ならきっと知ってることだと思うのだけれど、それを、替え玉のタイミングで乗せてくるっていうのがすげえ粋だなあって思ったわけですよ。例えるなら、1クール目ではまったくデレず親の仇みたいに始終ツンツンして視聴者をイラつかせていたヒロインが、2クールの初っ端でいきなりデレ始めるみたいな? そういう演出、グッとくる。一言でいえば、ずるい(たまねぎはトッピングとして最初から注文可能です)

チャーシューはデフォで3枚(マーベラス!!)。1枚はすぐ食べてみたけど、かなり歯ごたえのある、素朴にして肉々して味わい。悪くない。だが僕は残り2枚をずっとスープに浸しといて、替え玉しても食べずにいて、最後の最後で2枚いっぺんに食べたときの、煮干しスープをじゅうぶんに吸って苦み・渋みの凝縮された、"ダンディー"なチャーシューがたいへん鮮烈な味わいでした。ただ、トッピングに関して惜しまれるのは、あの大根でしょうかね。何の変哲もないおでんの大根。正直、ラーメンに乗っている意味がわかりません。素直に圓のような神メンマを乗せればいいじゃないですかぁ～(メンマは別料金～)。

強い煮干しラーメンを食べると、さらに強い煮干しラーメンが食べたくなる。さながら僕は勇者だ。勇者ニボシィーンだ。あ、ちなみに(華麗にスルー)スープに卓上の酢を入れるとさらに強い煮干しラーメンとなりますが、同じく卓上の一味唐辛子を入れると意外に食べやすくなったります。