ヒガコの燈無蕎麦・・・夜更けのヒガコ農大通り。一杯きこしめし千鳥足、と何やら向こうに灯りが見える。中華蕎麦？やれうれしや熱い蕎麦の一杯も・・・ : らーめん にんにくや 小金井店

◆ヒガコの燈無蕎麦 三度(みたび)・・・

本所七不思議に燈無蕎麦と言う譚がある。

夜更けの 本所南割下水辺り、その時分、何軒かの二八蕎麦の屋台が出た。
が 内一軒だけは、湯は沸き 蕎麦玉、汁、丼の用意もあるのだが いつまで待ってみても 誰も来ず、何事もない。

不審に思い 行燈の火を消そうものなら、忽ちその人の近辺に凶事が起こる。
狐狸の仕業ともされるが、その実は 不思議の侭である・・・。

夜更けのヒガコ農大通り。

オフ会で一杯きこしめし千鳥足・・・と、向こうに 蒼い灯りが見える。
狐狸妖怪の仕業に非ず、にんにくやの 蒼い灯火である・・・。

これは嬉しや、熱い中華蕎麦の一杯も。
暖簾をくぐって、のりらーめん 八百五十圓の札を買う。

鍵字の床几に腰掛けて、札を付け台の上に置く。

うん？
店主が変わったか？

帽子は同じ野球帽・・・しかし よくよく見ればやはり人が違う。

こちらの付け台は、盛り台と面一。
見渡せば、床几に腰掛ける客も店主の調理も 自然によく見える。


着丼したのは数分の後。

◆のりらーめん 八百五十圓

海苔は角切り 百圓で 六枚、丼の周りに散らされる。

そこに沈む加水低めの極細丸麺、
関西ネギ少しと、大きく切られた焼豚が乗る。

背脂の白さが少し増したか？
背脂を絡ませ まず麺を一口・・・

◆調和した たれと豚骨と背脂と

うん？
味が変わったか？

今度は海苔を絡ませもう一口・・・
円い、味に円さが出てきている。

塩っぱさ、塩味が立ち気味だったのが、あきらかに円くなり 醤油の立ち上がりと豚骨の旨みと背脂の甘みとが調和する。

たれの配合がやや薄めになったのか、塩味(えんみ)を控えめにしたのか。

◆にんにくを加えて完成形

付け台には店名にもある いつものにんにくの小片。
他にも｢らーめんのたれ｣がある。

以前の塩味の効いた味では意外に足す気にならなかったが、今の円い味では如何なものか。

にんにく一片・・・背脂のまろやかな甘みに 切れ味が加わり、タレをたらせば一転 塩味が増してくる！
これは目を見張る変化。
此度は、にんにくを加えて完成形か。

この変化がわかるのも 味の調和が変わったせいか。

にんにく一片が今での良い釣り合い。
しかし隣の漢などは 替え玉した上 にんにく三、四、五・・・


ヒガコの 燈無蕎麦の行燈に 今日も夜更けに火が灯る。

にんにく五片追加の漢の身に、凶事が起こったか如何かは 謎の侭である・・・。

ヒガコの燈無蕎麦 再び・・・
本所七不思議に燈無蕎麦と言う譚がある。
夜更けの 本所南割下水辺り、その時分、何軒かの二八蕎麦の屋台が出た。
が 内一軒だけは、湯は沸き 蕎麦玉、汁、丼の用意もあるのだが いつまで待ってみても 誰も来ず、何事もない。

不審に思い、行燈の火を消そうものなら忽ち その人の近辺に凶事が起こる。
狐狸の仕業ともされるが、その実は 不思議の侭である・・・。

2015年10月
夜更けのヒガコ農大通り。
オフ会で一杯きこしめし千鳥足・・・と、向こうに 蒼い灯りが見える。
狐狸妖怪の仕業に非ず、にんにくやの 蒼い灯火である・・・。

ならば嬉しや、熱い蕎麦の一杯も。
暖簾をくぐって、らーめん七百五十圜と札を買い 床几に掛ける。

若い主人は手際がよい。
麺を茹で、チャーシューを切り、スープを作り 細麺ゆえに もう麺揚げ。

背脂のたっぷり浮いた 丸細麺。
手繰って啜れば、塩味のキリッと立った 醤油の風味。

それを脱ぎ捨てながら 蕎麦が一気に喉からお腹へ駆け下りる。
醤油が 背脂のコクを供なって 舌にはっきり余韻を残して。

塩味の立った醤油の味が 化かされているのか 酔った舌には 心地よい。
ここで大蒜(にんにく)を入れるも一興。一個入れれば 忽ち コクが増し香ばしい。

さらに一個、塩味が 後に引き 辛味が増す。
何かに惑わされたか、そしてついもう一個・・・。

帰路に着いたネコの身に 凶事が起こったかどうかはいずれまた・・・。

2014年12月
夜更けのヒガコ農大通り 一軒の店先の行燈に 蒼い灯が点る。にんにくやさんというお店である。

暖簾をくぐると すぐ右手脇に食券機。のりらーめん￥850の券を買い、鍵の字型の床几に 腰を下ろし暫し。
込み合っていても、細めんで手際よく作られる一椀は 出るのが早い。

丼を覗けば なかなか端正な顔立ち。
薄めの海苔が 六枚縁取り、大きめの焼豚一枚と モヤシ、あさつきが散らされる。

店名にもある大蒜(ニンニク)は 入っていない。
長机のニンニクを銘々で搾るのである。
　
お汁を掬って飲む。鶏ガラと恐らくゲンコツ主体の 清湯系淡麗醬油。
どろり感のない湯(タン)、臭みは 全く感じられず、きれが良く澄んだ味。塩味の角がやや立ち気味。

淡口醤油ながら 浮かせ脂は、多目の背脂。
屈弟子のような濃口ではない。燕三条でもなく・・・北白河背脂の魁力屋さんのような風貌。

麺は、丸細目のストレート 加水率やや高め、色白のかなり細目の麺。
それを手繰るとお汁たっぷりと共にあさつきも従え 上がってくる。熱いところを一気に啜る。

淡口だが しっかり立った 塩味の為、背脂に力負けせず コクに感じさせる。
しょっぱく脂くさいだけ にならないのは、あっさりしていながら その実骨太のお汁のおかげ。
　
薄手の海苔で、麺を巻くようにし 食するのも良い。
淡口醤油の風味が 面白いように磯の香りに変わる。海苔の風味がここまで出るつゆも珍しい。

支那竹は無く、少量のもやしが 箸休め。塩味が強いため むしろ もやしの方がいい。
麺と共に食べるがおすすめ。薄味のため 食感と もやしの風味がよくわかる。

醤油中華蕎麦で 何時も気にしてる点の 黒胡椒は入っていない。張り手のような禁じ手は用いない。
鶏ガラ＋豚ガラでこのおつゆを作っている。
だから あさつき、細麺がよく合うが道理。

細麺で、喉越しが良いため 物足りない向きは、替え玉￥100も一興。
皿盛りでなく、特製お玉で直に丼に供される。長机の上にタレがあるので、味が薄まる心配は 無用。
更にここで 大蒜の追加をするも宜しかろう。

自分の二つ隣に座った 勤め人の若者なぞ三玉も追加しておった。

但し ニンニクの入れすぎにだけは 要注意。忽ちその人の身に凶事が起きる。

今年一年五,六回は来ているが、その度こんなに旨かったのかと思わせてくれる。
少しずつだが 洗練されてきているようだ。これで塩味の角がもう少し取れ、コクがややでも増えたなら、深夜の行列必至店・・・。
開店一二時間と深夜には満席もしばしば。
　
ただ一つ 残念なのは、その舌代か。中華蕎麦 一杯 ￥750である・・・。

ヒガコの 燈無蕎麦の行燈に 今日も夜更けに火が灯る。

三玉追加の若者の身に、凶事が起こったか如何かは 謎の侭である・・・。