立石アーケードに栄寿司あり！ : 栄寿司

立石駅前、仲見世アーケードの入り口角地に暖簾を掲げる、立ち食い「栄寿司」さん。
ご当地の食を語る上では欠かせない、説明不要の名物寿司屋さんですね。

午後のひととき、お店には昼間から寿司を摘まみながらビールを飲む御仁がずらり。
遅めの昼食をとろうかと立ち寄ろうにも、ちょっと気後れしてしまいます。
様子を窺っていると、どうぞどうぞ！と招き入れてくれた優しいおかみ。
先ずは熱いお茶を啜りながら、ガリを摘まんで。

ここで、お箸は出てきません。
江戸時代の昔、屋台としてできた鮨文化が今に生きる、手掴みの流儀。
今のご時世、衛生管理上どうかと思うけれど、そんなことをガタガタ言うのはもちろん野暮なこと。
汚れた指先はおしぼりで良く拭って。
でも、どうしてもと言えば、たぶんお箸は出していただけると思いますけど。

あくまでも昼御飯なんだから高いネタは頼みません。
鰯、ハマチ、鮪、鯖。
ネタケースを眺めていると、あれこれ頼みたくなるけど、今日はこれだけと決めたんだから、これだけ！
全部一貫110円だから、お勘定は880円です。
安いイメージのある栄寿司さんだけど、こういう使い方だと、巷に良くあるランチのサービス握りなどに比べて、そんなに安いというわけではありませんよね。
ちょっと気前よく高いネタなど摘まもうものなら、昼飯代が2,000円にもなってしまいます。

今日、いちばん旨かったのが鰯。
もちろん一切の臭みなく、透明感すらある旨さ。
秋本番の今、ばっちり脂が乗っています。

鮪は一仕事加えてありますが、少し水っぽいかな？
ハマチも同様、極めて凡庸です。
それから鯖だけど、やはり体調が悪いときに生の鯖だけはやめておいたほうがいいです・・・

外に出てみると、まだ日も高いというのに、対面の「宇ち多」さんには口開け前の長蛇の列。
立石の賑わいは、まだまだこれからですね。

もうかれこれ20年以上も前のことだったか。
今の「各駅停車の旅」的な番組の、謂わばルーツのようなものを視ていたら、京成立石の駅前で、この「栄寿司」さんで、タレントが寿司をつまむシーンが。
どう見ても「ちゃんとした寿司屋の寿司」を、信じられないような庶民価格で頬張っている。
居ても立ってもいられずに早速駆け付けてみると、本当にどれもこれも安くて旨い。
テレビで紹介されるお店なんて、大抵はオーバーな脚色が盛りだくさんで、外れるのが当たり前と心のどこかで諦めているものですが、偶には嬉しい誤算もあるもの。
以来、通りかかるたびに、あるいはわざわざ出掛けて、度々「庶民の寿司」をつまんでいました。

いつしか、食べログでも高評価のお店となって、お昼に行っても結構な混雑。
正直、だんだん出掛ける頻度も落ちていたのですが・・・・
今回は、この道の大先輩と一緒に、久しぶり立石徘徊。
ちょっと立ち寄って行くことになり、暖簾をくぐってみます。

暖簾を仕舞う間際だというのに、快く迎えてくれた、気立ての良いおかみ。
残っているものも少ないけど・・・と。
我儘を聞いてくださって、なんとありがたいことか。
さて、早速若大将に握ってもらいましょうか。

残り物には福があるとはこのことですね。
大好物の鯖がちゃんと残っているではありませんか。
一貫僅か110円にして、ピカピカで脂ののった、血合いが鮮やかな良い鯖。
口にすると、、何とも旨くて蕩けます。

ハマチは普通かな？
背身だから、味わいは極めて蛋白でした。
生蛸は、クニュッとした身の活きの良さ、程よい塩気が旨いです。
そして、あんまり旨いからまた鯖をつまんで・・・・
こんなに旨くてちゃんとしていて、どれもこれも110円、ちょっと良いネタが220円、そして憧れの大トロだって330円と。
本当に安いし、判りやすい。
庶民の寿司屋はかくあるべし、です。

そろそろ、我々が最後の客になりそうなので、締めにあら汁を頼むことに。
熱々のあら汁には、運の良いことに鯛の頭がまるごと。
旨いところがぎっしり入っていますね。
こういうの、最近の若い人はダメな人が多いかな？

眼の周りのトロトロも、脂ばっちりの頭肉も、たっぷり骨ごとしゃぶりつくします。
熱々の汁には、良い出汁がたっぷり出ていて、もうたまりません。
最後の最後まで綺麗に食べつくして、碗の中にはしゃぶりつくした小骨だけが残りました。

久しぶりに暖簾をくぐらせてもらった下町の寿司屋名店は、相変わらず大満足の良店でした。
今度はまたあらためて早い時間にきっちりお伺いして、あれこれ頼んでみたいと思います。