稲荷と海苔巻の専門店。 : 稲荷ずし 松むら 千住店

ＪＲ北千住駅の東側の住宅街にあるお店です。

北千住の東側は、駅前は再開発によりきれいに整備されたものの
さらにその先へ進むと、昔ながらの下町の雰囲気を残す住宅街が続きます。
北千住の駅から直線距離で600mほどの場所ですが、
そこはもう完全なる昔ながらの下町の雰囲気です。
ここから南側に直線距離で500mほどの場所には
京成線の京成関屋駅や東武スカイツリーラインの牛田駅があり
交通の便が悪いわけでもありません。
さらに東側に200mも行けは、荒川の土手に出られます。
柳原という町ですが、地図で見ると
町を囲うように道路が荒川から丸く同心円状にいくつか並んでいます。
田園調布のように駅を中心に計画的に作られた円というわけではなさそうで
円状になった道路は町の外周部だけです。
おそらく明治になって作られた荒川ができる前に
この場所には大きな池か湖があったのかもしれません。
その名残りを示すかのように、円の内側には
小さな池がある柳原千草園という足立区の植物園があります。
ここは四季の植物を見ることができる公園になっています。
町名にある柳は、水辺を好む木なので
かつての池か湖を囲うように柳野原が続いていた場所なのかもしれません。

そんなことを思うほどに、この場所にやってくると
細い道路がまっすぐではなく複雑に入り組んでいました。
実はこちらのお店は以前からこの界隈では知る人ぞ知る有名なお店でした。
しかし、この複雑な細い道路と、どこへ行っても
下町的な戸建ての建物が続く景色が同じように感じて、
何度かこちらのお店に来てみようとしたことはありましたが
見つけられずに未だその姿を見たことはありませんでした。

この日も特に地図で調べることもせずに
なんとなくこの辺りという場所を歩いていると
突然お店の看板が目の前に現れました。
幟等がたくさん立っていてにぎやかな雰囲気ですが
お店そのものはだいぶ年季の入った造りをしていました。
店頭の発泡スチロールの中には
めだかがたくさん泳いでいました。

暖簾がかけられた入口は開け放たれていて
外から店内が見えました。
先客らしい方がひとりいて、
椅子に腰かけて話をされていました。
入口の右手にカウンターがあって、
その内側でまさにお寿司を作っている方と話をされているようでした。
カウンターの向かい側、入口の左手にある椅子は、
3脚ほど並んで壁沿いにおいてあります。
基本的にお寿司をここで注文してから
その注文の品を目の前で作って渡してくれるシステムのようです。
壁にはメニューがたくさん並んでいましたが
基本的にはお稲荷さんと海苔巻きだけのようで
その組み合わせや量によって値段が変わるようでした。
店内も年季が入っているように見えますが
たくさんの色紙が貼られていました。
こちらに気づいたお店の方が
中へどうぞと言われましたが、
先客の男性と並んで座ると窮屈そうだったので
外でしばしメダカを眺めながら待ちました。
待つことしばしで先客が注文の品を手に提げて出てきたので
入れ替わりに中にはいりました。
調理場にはご主人と思われる年配の男性がひとりいらっしゃいました。
カウンターの奥には、大きなトレーに真っ白の酢飯が大量に盛り付けられていました。
全てはこの酢飯を使って作られるようです。
壁に掲げられたメニューの中から、お稲荷さんと海苔巻きが半分ずつ入って一人前という
まじり一人前\630をお願いしました。
お願いすると、椅子へ座ることを促され
奥へ入ったご主人は、冷蔵庫を開けて
ガラスのコップに冷たい麦茶を入れて渡してくれました。
その後にまた厨房へと戻り、お寿司をつくりはじめます。
お稲荷さんも海苔巻きもすべて同じ酢飯の山から
真っ白の酢飯をとり、作っていました。
お稲荷さんを4個に海苔巻き4個のようでしたが、
海苔巻きは、1本の細まきを造り、
それを5つにカットして、5つともパックに詰めてくれました。
最後に冷蔵庫からきゅうりのお漬物を取り出して
一緒に詰めてくれます。
輪ゴムで括って割りばしをつけ、手提げ袋に入れて渡してくれました。

料理・味　3.6
持ち帰ると、残念なことに一部がつぶれてしまっていました。
これはお店のせいではなく、持ち帰る途中に自分でやってしまったものです。
しかし、輪ゴムを外してふたを開けると、
お稲荷さんの甘い香りと、海苔の香りがふんわりと感じられました。
共に食欲をそそられる香りです。
早速いただいてみました。
先に海苔巻きをいただいてみました。
海苔の香りがしっかりとする海苔巻きはかんぴょう巻きでした。
ひとくちに一つのかんぴょう巻きをいただくと、
やわらかなかんぴょうは歯で意識せず噛み切れるほどに柔らかく作られていました。
しょっぱすぎず甘すぎず、味付けもおいしいかんぴょう巻きです。
続いて比較的大き目に感じるお稲荷さんをいただいてみました。
稲荷はシンプルな味わいです。
しゃりは稲荷もかんぴょうも同じでした。
目の前で見ていたので間違いはないですが、いなりには何かを振っていたようなので
気になっていましたが、香辛料ではなく、すりごまかケシの実のようです。
今どきはジューシーな揚げのお稲荷さんが多いですが
こちらは水分をあまりふくまないそれでいてしっかりとした味わいのある揚げでした。
たれではなく、揚げ本来の味わいが感じられるお稲荷さんです。

サービス　3.5
冷たい麦茶をいただきました。
注文が入ってから稲荷とかんぴょう巻きをつくるようで
出来立てがいただけます。
お漬物のきゅうりもうれしいです。

雰囲気　3.2
話好きなご主人でした。
料理をしながらほぼ話しかけられました。
下町らしい雰囲気が感じられます。

CP　3.4
ボリュームもあって、おいしいお寿司でした。
シンプルですが、それがむしろ良いと感じました。
この内容でこのお値段は納得できます。

酒・ドリンク　3.2
通常のサービスなのかわかりませんが、
冷たい麦茶をいただきました。

総合評価は、3.6くらいです。
なかなかボリュームもあって、食べ応えのあるお寿司でした。
その味わいもシンプルで、というかシンプルとしか言いようがなく思いますが
この味わいは他のお店では今どき味わえません。
その意味ではこのお店ならではの特徴的な味わいともいえます。
いろいろと手を加えたとかではなく
それぞれの材料が、酢飯の加減にはじまり
稲荷の味付けや汁の含み具合、海苔の味わいや
かんぴょうの味付けやその食感の柔らかさなど、
どれも仕事は丁寧でそれぞれがおいしいものの組み合わせでした。
またいただいてみたい味わいでした。