気持ちが先走りしているチェーン店 : 串屋横丁 大山店

「ひなた」と「鏑屋」。
私の知る大山の焼きとん屋さんと言えばこの２店でしたが、よもや他にもあるとは思いませんでした。

そしてブランド豚。
今まで岩中豚、白金豚、萬幻豚と食べてきましたが、今回は「縄文豚」。果たしてどんな味がするのか？　非常に興味が湧きました。

とはいえチェーン店。
残念ながら、これまでチェーン店の焼きとん屋さんで良い思い出は殆どないです。せいぜい「ひなた」くらい。なのでお店に入る前の期待値は低かったです。

が、食べ終えた感想は、not that bad。
そんなに悪くなかったです。
否、意外と良かったです。私のチェーン店に対する期待値を上昇させました。
課題はまだまだあると思いますが、これからも更なる精進を求めます、「串屋横丁　大山店」。

外観はチェーン店そのものですね。照明を焚いて派手目に演出しています。上野の「とら八」みたいな感じ。というか、チェーン店の居酒屋さんならばやりかねない手法。注意を向ける構えです。
店内は明るく広々としています。開店が去年の９月ということでまだまだ綺麗なお店。仮に客で満員になってもギュウギュウ詰めにはならないレイアウト。それを前提にしても余りあるくらい店員さんの動線が広く取られています。それくらい広々としています。悪い意味で言うと、スペースを持て余している感じ。もっと上手いレイアウトがあるはず、と思いました。ま、客としては何も不快にはなりませんけど。

店員さんは４～５人でオペレート。客の入り具合はせいぜい３～４割くらい。満員時はどうなるか分かりませんが、私が居る時のオペは何ら問題なかったです。接客も非常にハキハキしていて気持ちよかったです。店員さんは全て若く、恐らく全員20代から30代前半くらい。常連のお客さんなんでしょうかねぇ、高年男性客が若い女性店員さんにやたら話しかけていました。店員さんの仕事を妨害している感じ。それでも嫌な顔せず相手をしながら自分の仕事をし続けるところは、しっかりしてるなぁと思いました。新橋の「やきとん　ユカちゃん　麻布ふじ嶋　新橋店」の女性店員さんを彷彿とするものがありましたね。焼きとん屋さんは店員も客も中高年が多いので、こうした若い人が活躍しているところを見ると、応援したくなります。がんばれ。

また、こちらのお店の「ドリンクパスポート」なるものに好印象です。
写真を見ていただければ分かると思いますが、要するに期間内ならば何回でも最初のドリンク１杯が無料になるということです。
こういうのは良いですよね。ついついお店に寄って軽く一杯いってしまうかもれません。アトラクション（誘引）として良いと思います。

でも、肝心の料理が悪ければ最初の１杯無料でもなかなか足が運びませんよね。
果たしてどうなのか？　縄文豚はどんな味がするのか？　しっかり素材を生かしているのか？　以下講評します。


●レモンサワー
現物系のレモンサワー。シロップ一切無しの純正現物レモンサワー。美味い。これでシャリキンだったら何も言うことないです。祐天寺の「ばん」を思い起こさせる一杯でした。

●お通し
キャベツ。無料でおかわりできるみたい。

●煮込み
味噌ベース。美味い!!!　味加減が絶妙!!!　おまけにモツがぷりぷりで歯応えがあります。大半の焼きとん屋さんの煮込みはモツがトロトロでやわらかい仕上がりになっているけれど、こちらは歯応えに重点を置いています。歯応えのある煮込みは池袋の「三福」とこの店くらい。メニュー表に載っている通りの素晴らしい一品。繰り返すが、美味い!!!

●酢モツ
普通の刺しと変わらず。ただ少々ポン酢が効き過ぎ。もっと穏やかな、主張の少ない、やわらかい酢を使った方が賢明かと。さすればモツが引き立つと思われます。

●バラ、シロ、軟骨
バラは脂が活きていない。焼き加減、具材の質のどちらかが悪い。
シロはパリパリ系。中ジュワ感がない、ゴムゴム感一歩手前な感じ。
軟骨は肉と骨の比率が半々で、どちらも美味いというわけではく、どっちつかずな感じ。この程度の質ならば、どちらかに重点を置いた方がよろしい。

●レバー
焼き加減はウェルダン。口に入れるまで特有の臭味あり。入れると一気に甘味と交代。上質のレバーは噛めば噛むほど徐々に甘味を覚えるが、こちらはいきなり甘味が前面に出てくる。上野「大統領」と同じ仕上がり。ただし、ウェルダンのせいでボロボロ感があり、その食感が甘味を殺いでいる感じ。ウェルダンではなくミディアム、もしくはレアで頼みたいところ。

●赤MIX、スーパーホルモンロール
まるでフランケンシュタイン。色々な部位を寄せ集めただけでコラボ感＆シナジー効果は一切ない。それどころか返って酷い仕上がり具合。止めた方が良い。これらの串に対する店側の入れ込み具合がメニュー表から伝わるが、その気持ちが明後日の方向に向いてしまっている感が否めない。自惚れ過ぎ。あと、タレが全く合っていない。なので余計にバラバラ感が否めない。店側の気持ちと現物の串が著しく乖離している串。無念。

●養豚スペシャル、とんとろホルモン
上記の赤ＭＩＸやスーパーホルモンロール同様、気持ちだけが行き過ぎた串なのでは、と判断。結局食べませんでした。


総じて、気持ちが先行しているお店だと思われます。
メニュー表からはこのお店のこだわり、思いが十分伝わってきます。上手くできたメニュー表です。が、せっかくアピールしている「縄文豚」を生かしていない。煮込みはともかく、串ですね。串で美味しいと思えるものはなかったです。

ん～、私の持論として、串と煮込みには相関関係があり、「串が美味ければ煮込みも美味い、逆も然り」というものがあります。この持論からすれば、この店の煮込みは美味しかったので串も美味いはずなんです。ところがその串がこの体たらく…。私の持論が間違っているとも言えますが、正しければ改善の余地があるということです。焼き担当の店員さんの熟練度が足りないのか、もしくはチェーン店なのでそれなりのマニュアルがあり、そのマニュアルが悪いのかもしれません。はたまた、そもそも縄文豚の質が悪いのか、下処理が悪いのか。どこかに問題点があるはずです。

メニュー表で謳われる料理のアピールと実際の串の差異。これをどれだけ埋めていくかがこのお店の今後の鍵となると思います。

更なる精進を。