この場所で昼でもきちんと「蕎麦屋酒」が楽しめるのは有り難い : 手打蕎麦 みたか

　現在は緊急事態宣言は解除されているが、手放しで喜んでは居られない状況は当分続くようだ。
　手探り状態で外出するにもだんだん知恵が付き始め、「密」になり難い店を選び、日時にも気を使って足を運ぶようになった。
　
　この日（5/23）向かったのは、練馬区でも外れの方に在るこちらの蕎麦屋。
　4.5年前に訪れて以来ご無沙汰していたが、久々に思い出して散歩がてら足を運んでみた。

　13時過ぎならば混んではいないだろうと、大泉学園の駅から10分ほどの道のりを歩いて到着。
　案の定、先客は1組と言う状況。
　奥の方の2人掛けのテーブルを選ぶ。

　まずはビール（ヱビス中瓶）をもらう。
　肴類は品書きに載る定番の他、短冊に記されて壁に貼られたものも昼でも全て注文可能。
　その中から2品を選ぶ。

　「ホタルイカと山うどの酢みそ和え」：旬もののホタルイカのボイルと拍子木切りの山うどに、辛子酢みそが掛けられている。
　ホタルイカは食感の邪魔になる目玉や軟骨が丁寧に取り除かれており、独活の香味とシャキッとした食感、さらにピリッとした辛子の効き具合も好ましく、これで500円は安い。

　「うの花」：自家製とわざわざ付記しているように、自信作のようだ。
　おからが鶏肉を煮た出汁でじっくりと煮含められており、人参・シメジ・牛蒡・油揚げなどもふんだんに入っている。
　やや濃い目の甘辛さだがしみじみとした味わいが好ましく、量もたっぷりでこちらも400円は良心的。

　酒に信州安曇野の「大雪渓」を一合。
　酒も肴も美味く、暫し快適な時間が流れる。

　蕎麦は壁の貼り紙の、枚数限定の「粗挽き 十割そば」を頼む。
　運ばれた蕎麦は香りが心地よく、粗挽きと言ってもざらつく食感は無く、それほど太くないため無骨さは感じられない。
　多少の切り斑は有るが上手に繋がっており、適度な歯ごたえで噛みしめると味が深い。

　つゆはやや甘口だが、バランスの取れた丁寧な仕上がり。
　この蕎麦にはやや優しいかなと思うが、決して悪くない。
　蕎麦湯は仕舞いに近いので白濁してとろみも有るが、あざとさが無い自然体のためスッキリと〆られた。

　久々に訪れたが、なかなか気持ちの良い「蕎麦屋酒」が楽しめた。
　年配のご主人は、和食料理人としても実績があることが分かる。
　女将さんの穏やかな応対ぶりも好感。
　お勘定は税込みのためトータルで3,000円でおつりが来たのには、極めてリーズナブルである。

　他に飲食店の無い住宅地の真中なので昼は食事客が主体だが、夜は焼酎のキープボトルが並んでいることから一杯やる客で賑わうようだ。
　近隣の皆さんには有難い店と思われる。
　

　大泉では駅の南口から5.6分の所に「むら季」が在り結構な回数通っているが、蕎麦の出来はもとより肴や酒も充実しているが、最近は結構混んでいる。
　こちらは「蕎麦屋酒」の楽しさにおいては引けを取らず、時間をずらせばゆっくりできる。

　この辺りも今ではすっかり住宅街となっているが、近所には東京23区内で唯一残っている牧場として有名な「小泉牧場」や、数年前に誕生したことが話題になった「東京ワイナリー」が在り、こちらも合わせて訪れるのも楽しそうだ。

　こちらは保谷に移転した現在も人気店となっている「一喜」が、以前やっていた店舗に入っている蕎麦屋。
　場所は今の「一喜」ほど便の悪さは無いが、大泉学園駅の北口から判りにくい道を10分ほどは歩く、かなり入り込んだ所。

　土曜日の昼時、ゆっくりしようと11時半の口開け時を狙って訪店。4年振りである。
　まずは生ビール（ヱビス）。
　お通しに結構な分量の「おぼろ豆腐」が付いたが、出汁醤油が掛けられた味が美味い。

　定番の他にも＇季節のおすすめ料理＇が掲示されており、女将さんに問えばどれでも用意できるとのこと。
　刺身類まで並ぶラインナップはなかなか魅力的で、まず選んだものは「夏カキ」。
　厚岸産の生牡蠣で、プリッとした食感と程良い磯の香りが心地よく、一口で滑り込ませてしまった。

　2品目は「夏野菜の天ぷら」。
　7種類の野菜（トウモロコシ・ゴーヤ・ミニトマト・オクラ・アスパラ・茗荷・谷中生姜）が、薄衣でサクッと揚がっている。
　塩と天つゆの両方で、それぞれの風味と歯触りを楽しむ。
　特に茗荷や谷中生姜といった、東京人には懐かしい野菜が含まれているのが嬉しい。

　酒には私にしては珍しく、そば焼酎（銘柄は「佐久の花」）をロックでもらう。
　焼酎は片口で、氷は手桶にたっぷりと出されるサービスは有り難い。

　まだゆっくり出来そうなので、肴に「生まぐろぶつ」をもらうが、質の良さに感心。
　つまには大根の他に、晒した白ネギが添えられているの点も良い。
　冷酒を一合（「大雪渓」の純米）を追加して、暫しゆるりと過ごす。

　そろそろ混んできたので蕎麦にする。注文は基本の「二八のせいろ」。
　挽きは細かいが、少し太めの平打ち気味に打たれている。
　香りは多少あるが、やや茹で上げに精妙さが欠けていたのか、コシは弱めなのが残念。

　つゆはバランスの良い仕上がりで、丁寧に作られている。
　蕎麦湯は自然体で、すっきりと伸びるのは好ましく後味良く〆られた。　　


　トータルの印象では、やはり蕎麦前の満足度が大きい。
　それに比べれば蕎麦は今一つ個性に欠ける気がするが、決して低いレベルの仕事では無い。

　ご主人は店を設けるにあたり「一茶庵の蕎麦打ち教室」で学んだそうで、元を辿れば「一喜」とは同じ流れという事になる。
　一方、メニューからも分かるが和食の料理人としての経験は長いようで、肴を充実させ一杯飲ませようという姿勢は強く感じられる。

　休日の昼という事で、私もそれに応えようと臨んだつもりだったが、実情はなかなか難しいようだ。
　12時過ぎから近隣の方と思われる客が次々と来店して満席状態となったが、後客は全て食事のみの注文であったのは残念。
　この近辺には他に大した食事処が無いから仕方ないのかも知れないが、ご主人の力量からすると単なる飯屋として利用されるには、もったいない気がする。