こちらの味をテイクアウト。閉店は残念至極 : BONCOURAGE

　こちらが近日閉店との情報をMFさんの書き込みから知った。
　実際に訪れたのは3回に過ぎないが、地場の産物を使った野菜料理に好ましい印象が残っていただけに残念でならない。

　本来なら最後にきちんと店内で頂きたいところだが、ワインも注文できないこんな状況で料理だけ食べても面白くは無い。
　こちらではテイクアウトも受け付けており、当日の昼に「ディナーボックス」（税込み1,480円）なる、こちらの味が一通り楽しめそうなものを電話で頼んでおいた。

　17時半の約束の時間に自転車で取りに向かう。
　内容はおまかせで、家に持ち帰り早速開けてみると料理は3つの持ち帰り用パックに収められており、別にラップに包まれたバゲットとドレッシングが添えられている。

　1つ目のパックは、たっぷりのサラダと共に盛り合わせられた前菜。
　内容は「白身魚のカルパッチョ・生ハム・コールドミートのテリーヌ・鴨スモーク・フリッタータ風野菜入りオムレツ」で、バラエティに富んでいて楽しい。
　特にゼリー寄せ風のテリーヌとオムレツが良かった。
　サラダには練馬産の野菜が使われており、リーフレタスやキャベツの他、3色の人参の薄切り・ズッキーニ・紅心大根・2色のパプリカなどの薄切りが散らされている。
　ちょっと歯応えが良すぎるものも有ったがどれも新鮮で、摺り下ろした人参入りのドレッシングが良く合った。

　2つ目のパックは「温菜2種」で、「カジキマグロのソテー　マッシュポテト添え」と「チキンロースト　ピラフ添え」だが、出来立てが詰められているためまだ十分に温かい。
　カジキマグロには細かに刻んだ茸や香草類が入ったやや酸味のあるソースが掛かっており、下に敷かれたマッシュポテトも甘みがある。
　チキンは大きく焼かれたものがカットされているためしっとりとした食感で、グレービーを使ったと思われるソースが味を引き立てる。
　その旨味が染込んだピラフも、実に美味しい。
　一見すると量が無いように思うが、実際はかなりのボリュームで満足できた。

　2個のバゲットは、こちらも仄かに温かい。
　淡い色合いのロゼワインを開けて、一品ごと丹念に味わっていくのは中々楽しかった。

　3つ目のパックはデザートで、カットされた「ガトーショコラ」が一切れ入っていた。
　これも自家製と思われるが、チョコレートが結構濃厚でマッタリとした舌触りも良好。
　少量ずつ味わってゆくと案外ワインに合い、結局一本空けてしまった。
　
　結果的に実に快適なディナーが楽しめた。
　もうすぐ閉じてしまう店に対して今さら美辞麗句を並べても仕方の無いことだが、丁寧な仕事が貫かれており味のバランスも良い。
　1,480円の値段は、この内容ならば極めて良心的。

　こちらでは小中学校の同期の会を40人ほどで貸し切って催したことがあり、それが懐かしく思い出される。
　そんなパーティーにも使えるくらいの広さが、かえって災いしたようだ。
　もっと頻繁に通うべきだったという後悔の念と、こちらのような常に存在することが当たり前だった店が無くなってしまう、今の世を恨めしく思う。

　幸いなことに多少業態は変わるようだが、この近くの小規模な店舗で近いうちに再開されるとのこと。
　こじんまりした構えの方が、ご主人の思いが端的に伝わるような気がする。
　新しい店が誕生した際には、是非訪れたい。

　この日も近場でランチ。
　こちらは練馬駅から高架沿いの南側の道を進み、「176」に出る手前のビルの２階。
　同じビルの３階には何度か寄ったことの有る「唐苑」が入っており、１階にあるトルコ料理店やラーメン屋も評判が良いようだ。

　こちらのコンセプトは、地元の練馬で穫れる野菜を多用した料理を出すこと。
　我が家の周辺にはほとんど見かける事は無くなったが、まだ練馬区内には住宅地の中に多くの畑が点在しており、いずれも量より質の姿勢で、商品価値の高い野菜が生産されているようだ。

　エレベーターで上がることも出来るが、2階へ向かう洒落た螺旋階段を上がる。
　11時半の開店より間の無い時刻ながら、テーブル席とカウンター含めて30席ほどの店内には、既に3組ほどの女性グループの姿が見られる。

　ランチタイムメニューは全てちょっとしたミニコースのスタイルになっており、スープ・2種から選べるメイン料理・パン・デザート・飲み物というラインナップ。
　私はこれに、さらに前菜が加わった「Ｄセット」（1,980円）にしてみた。
　デキャンタワインが手ごろな分量のようなので、こちらの白も合わせて注文。

　本日のスープは「シャドークイーンの冷製ポタージュ」。
　シャドークイーンとは紫色のポテトで、これをヴィシソワーズ風に仕立てたものが、小振りのココットで登場。
　濃度の割にはすっきりとした味でなかなか美味いが、10月に入り急に涼しくなった陽気に合わせて、温製の方が好ましい気がする。

　2種類から選べる前菜には「練馬農園の生ハムサラダ」をチョイス。
　被せられた生ハムを持ち上げると、小さくカットされたり薄くスライスされた、数多くの生の地野菜が顔を覗かせる。
　全ては確認出来なかったが、各種のラディッシュや小蕪・人参・茄子・ズッキーニ・トレビス・パプリカ・ミニトマトなど実にカラフル。
　少し甘めのドレッシングが掛かり、目でも舌でも楽しめてボリュームもたっぷり。

　メインは「北海帆立のポワレ～キノコのクリームソース、トリュフ風味～」を選ぶ。
　名前からして期待が高まるが、実際の皿は予想とはちょっと違っていた。
　帆立は貝柱だけでなく、ヒモやコライユも付いた小振りのものが3個。
　そのため火通りはしっかりし過ぎるほどだが、実際に口にすると、むしろ味や食感は柱以外の部分の方が好ましく感じる。
　これに刻んだ茸がたっぷりと加えられたクリームソースと、別に南瓜の甘さを生かした黄色いソースも掛かっている。
　さすがにトリュフがプンプンと香るようなことは無かったが、茸の旨みは感じられ、ピンクペッパーの粒が味を引き締めている。

　パンは温められたバゲットが2切れ出されたが、なかなか美味しい。
　これはお替り自由で、一切れ追加して皿のソースを余さず拭って頂いた。

　＇本日のデザート＇は「ダークチェリーのチーズケーキ」で、大きく作ったものを薄目にスライスしたスタイル。
　ホイップクリームが添えられ、キャラメルソースで飾られていて、見た目も味もなかなか洒落ている。
　12時を過ぎると店内はほぼ満席状態となったが、待ち客が居るような状況ではないので、「コーヒー」を啜りながら、暫しゆるりとした時間を過ごす。

　やはり料理にヘルシー感が有るせいか、客のほとんどはご婦人方のグループで、皆さんおしゃべりに興じながら、優雅にランチを楽しまれている。
　内容的にこのランチはお得感が有り、味の面でも納得できて、人気が有るのも頷ける。
　ホールは一人の女性が全てを担当しているが、手慣れた客裁きには感心。

　夜はお手頃のコースの用意も有るようで、ちょっとした集まりには好適。
　覚えておいて便利な店だと思う。