久しぶりのお邪魔も、味も雰囲気も一切変わらず。大満足。 : 名登利寿司

名登利寿司

(なとりずし)
予算:
定休日
火曜日、水曜日

この口コミは、ピュイフォルカさんが訪問した当時の主観的なご意見・ご感想です。

最新の情報とは異なる可能性がありますので、お店の方にご確認ください。 詳しくはこちら

5.0

¥20,000~¥29,9991人
  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
2020/01訪問8回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥20,000~¥29,9991人

久しぶりのお邪魔も、味も雰囲気も一切変わらず。大満足。

久しぶりのお邪魔になったが、食べたいものを事前にお願いしておいたので、大満足のひと時を過ごせた。このお店は白身魚や締め物、光り物など、一手加えたネタが多い。その一手が、そうでなくてもおいしいお寿司をさらに素敵なものにしている。その日のネタが書かれた紙を見ながら次は何にしようかなと考える時間は、楽しくて仕方ない。

いつものように皿盛りにトロ漬け炙りを追加し、鉄板のアナゴの白焼き、冬の王様・カワハギに、春告げ魚のサヨリ、煮アサリ、このお店で一番女性的なネタのキスなど、お腹いっぱい。若旦那、おかみさん、ご主人、今回もごちそうさまでした!

  • 名登利寿司 -
  • 名登利寿司 -
  • 名登利寿司 -
  • 名登利寿司 -
  • 名登利寿司 -
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2019/08訪問7回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥20,000~¥29,9991人

家庭的な雰囲気で、超一流のネタと、妥協のない仕込み。味はもちろん折り紙付き。

夏休みの最後に、鎌倉・横浜を散策してから東京に移動。東京国立博物館で「三國志展」を見た後で、晩ご飯にお邪魔。これだけ暑いとお魚もばててしまっていいネタがないんじゃないかなと心配していたが、ものはきっちりとそろっていた。それでも「お盆明けなので、魚の種類はいつもよりも少ないんです」とのこと。そんなことはみじんも感じなかったが。

いつものように盛り合わせのお寿司とトロ漬けの握りを注文し、あとは好みのネタを追加注文していく。

(盛り合わせ握り)
トロ漬け炙り(通称:橋本さん。これは別注文)、中トロ、まこがれい、赤身、うに、いくら、しんこ、きんき炙り、いか昆布締め、たいらがい、煮アナゴ

おつまみの蟹爪と、おかみさん特製の卵焼きをいただきながら待つことしばらく、盛り合わせが来る。赤身、白身、光り物、煮物、白身、昆布締め、軍艦巻きと賑やかなお皿。大トロに近いほどに脂がしっかり乗った中トロ、噛むほどに深い味がじわっと滲み出てくるまこがれい、わずかに鉄っぽい、渋い味が魅力の赤身に、ものの良さが光るうにといくら。1枚半が乗ったシンコのさっぱりした味に、たっぷりとした脂が炙られて活性化しているきんき、昆布締めにされて新たなうまみが加わっているいか、サクサクした食感が楽しいたいらがいに、ふわふわの煮アナゴ。どれもこれも、ネタの良さに確かな仕事が加わって、素晴らしい仕上がり。

(お好み握り・その1)かわはぎ、鯛の昆布締め、煮アサリ、アナゴ白焼き

お腹もすいていたので食べたかったものを次々に注文。冬場に最高のネタと思っていたかわはぎがこの日もあった。「肝がちゃんと入っていたので用意しました。季節を問わずあるネタですけど、やっぱり肝がないと面白くないんで」とのこと。冬場のものと全く変わらない、白身独特のさっぱりした中にもしっかりしたうまみのある肉と、うまみの塊の肝が口の中でほぐれると、何も言うことがなくなる。これが夏場に味わえるとは。鯛の昆布締めは、僕好みのしっかりと昆布の味が入った加減。この鯛は昆布締めにする前でも素晴らしくおいしかったんだろうなということがよくわかる。煮アサリは軍艦巻きの上にたっぷりと乗っている。貝のうまみに煮ツメの甘い味が重なって、海苔との相性も良いのだろうけれどシンプルに美味しい。アナゴの白焼きはいつも頼む品だが、梅雨明けでアナゴそのもののものが良いということで、いつも以上にしっかり乗った脂と、ぷつっとした歯ごたえの良さが絶品。でも白焼きにすることで過剰な脂が落ちて、お塩でさっぱりといただける。

(お好み握り・その2)新いか、いわし、煮アナゴとアナゴ白焼き

この日用意していただいていた新いか。スミイカといういかの子供だそうで、あと1週間もすると大きくなってしまうので、この大きさの時が一番おいしいとのこと。身で1貫、げそで1貫。昆布締めのいかのように噛むごとにいからしいうまみが出てくるということはないけど、若々しくさっぱりとした味に、げそのコリッとした歯ごたえが面白い。座っている目の前にあったいわしがピカピカに光ってとてもおいしそうだったので、「このいわし、とってもおいしそうですね」と若旦那に聞いてみると、「このイワシは本当にいいです。身もしっかりしていて、鮮度も抜群です」とのこと。もちろんいただく。さばいている包丁につくほど乗っている脂に、青魚の独特の香りや味。本当に鮮度が良くて歯ごたえがあるのに、でも口に入れると脂とともにとろりととろける。このいわしはすばらしい。先ほど食べておいしかったアナゴの白焼きと、盛り合わせの中に入っていておいしいなと思っていた煮アナゴを食べ比べでいただく。煮アナゴのふわふわ、白焼きのサクサク。煮ツメの醤油味に、白焼きの塩とワサビ。味や歯触りは両極端だが、どちらもこたえられない。

(お好み握り・その3)マコガレイの縁側、大トロ

この後何を頼んだらいいと思うか、若旦那に相談。最後に巻物があるということで、マコガレイの縁側と、大トロはいかがですか、とのこと。もちろん従う。僕は光り物や白身が好きで、トロ漬け炙りを除けばトロを頼むことはほとんどない。それがわかっている若旦那が大トロを勧めてくるということは、これは最高なのだろう。マコガレイの縁側は、ひらめの縁側よりも歯ごたえが強い。その分、うまみはあっさりしているし、脂もそれほどではない。この歯ごたえの良さと、脂よりも魚のうまみがちゃんと前に出てくるところが、カレイの縁側の良さなのだろう。そして来たのが大トロ。ただ脂が多いだけではなくちゃんと歯ごたえもある。でも口に入れるとあっという間に脂があふれる。この脂が甘い。これ以上何を言うことがあるだろうかという素晴らしい状態のトロだった。

(お好み握り・その4)いわし、鯛の昆布締め、巻物2種、お味噌汁

その日一番おいしいなと思ったものを最後にもう一度食べる。この日はイワシと、締め加減が最高だった鯛の昆布締めをもう一度注文。そして若旦那おすすめの巻物は、いかと明太子の巻物と、ワサビたっぷりのかんぴょう巻き。いかの甘味に明太子のピリッとした辛さがよく合い、かんぴょう巻きにはワサビが利かせてあって舌がさっぱりする。最後にいただいたアサリのお味噌汁も粒の大きいアサリばかりで、お出汁もとてもおいしい。

食べたいものを食べたいだけ食べて、若旦那やおかみさんとの会話も楽しんで、お腹も心も大満足。季節感があふれるネタの数々もよし、いつも変わらない定番のネタもよし、その時々の若旦那のおすすめ(心の中で「究極の一品」と呼んでいる)を味わうもよし。いつ伺っても最高に美味しいお寿司がいただけるお店。次にいつ伺えるか、楽しみになる。若旦那、おかみさん、そしてご主人も、いつもありがとうございます。ごちそうさまでした。また伺います!

  • 名登利寿司 - 盛り合わせ握り

    盛り合わせ握り

  • 名登利寿司 - かわはぎの肝乗せ

    かわはぎの肝乗せ

  • 名登利寿司 - 新いかの身とげそ

    新いかの身とげそ

  • 名登利寿司 - 煮アサリ

    煮アサリ

  • 名登利寿司 - アナゴの白焼き

    アナゴの白焼き

  • 名登利寿司 - いわし

    いわし

  • 名登利寿司 - まこがれいの縁側

    まこがれいの縁側

  • 名登利寿司 - 大トロ

    大トロ

  • 名登利寿司 - アナゴの食べ比べ。白焼きと煮アナゴ。

    アナゴの食べ比べ。白焼きと煮アナゴ。

  • 名登利寿司 - いか明太子巻きと、ワサビかんぴょう巻き

    いか明太子巻きと、ワサビかんぴょう巻き

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2019/03訪問6回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥15,000~¥19,9991人

ハレの日にも、ケの日にも。おいしいお寿司をお腹いっぱい召し上がれ。

お世話になった大学教授の定年退官記念パーティーに出席した翌日。後楽園の「東京ドームシティ」の中にある温泉施設「ラクーア」でリラクゼーションを受けてからお邪魔。ゆっくりお寿司をつまんでも、最終の新幹線には余裕で間に合う。ちなみに僕はこちらに伺った時はお腹いっぱい食べるので(それだけおいしい)、「つまむ」という程度ではない(笑)

*訪問してから投稿までに日が空いてしまったので、細かい注文の中身を忘れてしまいました…

この日は私一人なので、お酒のおつまみは不要。皿盛りの握りをいただいてから好みのネタに行く王道のパターン。「最初から好きなものだけ頼めばいいのに」とかつてある人から言われたことがあるが、お任せ握りにはお店が今日その日自信をもってお勧めできるネタがひとそろい入っているというのが僕の持論なので、この頼み方を変えていない。

(皿盛り握り)
トロ漬け炙り、中トロ、マコガレイ、赤身、こばしら、コハダ、カワハギ肝乗せ、さより、うに、煮アナゴ、卵焼き

トロ漬け炙りはいつも注文する品なので、これはさすがに普通の皿盛りには入っていないと思う(苦笑)カマのたっぷりと脂ののった部位に醤油の炙られた香り、熱で溶けだす脂、たっぷりのワサビに、歯ざわりを足す芽ネギ。味のビッグバンド。橋本元首相がお好みあったというのもさもありなん。カワハギの肝乗せは時期的にぎりぎりだったと思うが、さすがに先月伺った時に頂点からは少し落ちていたが、それでもぷりぷりのうまみの塊の肝をサクサクした歯触りの身と一緒にいただくと、口の中でシャリとともに一体となって幸せがあふれる。これは食べると本当に幸せになる。冬の時期限定のお楽しみだろう。対照的に春の代表、サヨリはいかにもというさっぱりした味。ただ、その歯切れのよい身の味と、コリコリとした歯ごたえは、これもこの時期しか楽しめない。

その後はクロムツの炙り、マダコ、煮アサリなどを頼み、初ガツオを頼み、イワシを頼み、いつものようにアナゴの白焼きを頼み、この日抜群に美味しかったマコガレイを頼み、ヒラメの昆布締めを頼み、最後にはもう一度サヨリ。いつものように、その日気になったネタと、いつも必ず頼む定番のネタ、最後は一番おいしいと思ったネタ(実は最近はこれができていなかった)を頼む流れ。こちらにお邪魔すると、いつも写真を撮るのを忘れる。もちろん写真を撮る目的でお邪魔しているわけではないから、出されたら基本的にはすぐに食べてしまうのだけれど、そうすると、日がたつと今回のように細かく何を食べたのかを忘れてしまう(年を取って記憶力が落ちた)。

お値段が書いて無いお寿司屋さんなので、のれんをくぐると一体いくら取られるんだと思われる方も多いと思うが、実はそんなに高くない。というか、この値段でこのお寿司が食べられてもいいのかと思うほどに、安い。本当に安いし、安く感じさせてくれるお味と、雰囲気のお店である。ネタに迷ったときは、若旦那に「次は何がいいですか」と聞いてみればよい。そこまでに食べたネタも考えたうえで、最高の次の一皿を供してくれる。

その時期においしいネタを、きちんと仕事をして、おいしい状態でおいしい空気とともに食べられるお寿司屋さん。いつまでも大事にしたい。若旦那、おかみさん、そしてご主人も、ごちそうさまでした!また伺います。

  • 名登利寿司 - 皿盛り

    皿盛り

  • 名登利寿司 - クロムツの炙り

    クロムツの炙り

  • 名登利寿司 - 初ガツオ

    初ガツオ

  • 名登利寿司 - イワシ

    イワシ

  • 名登利寿司 - 煮アサリ

    煮アサリ

  • 名登利寿司 - マダコ

    マダコ

  • 名登利寿司 - サヨリ

    サヨリ

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2019/02訪問5回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥20,000~¥29,9991人

ブレず変わらず、いつでも、なんでもおいしい。

(2019年2月16日訪問)

今年最初のお邪魔は久しぶりに後輩と。この後輩とお邪魔するのは久しぶり。お邪魔すると決めてからというもの、あれを頼んでこれを食べて…と妄想全開の日々を過ごしたらしい。
実はお店には昨年、大きな変化が一つあった。そのことに触れるのが目的ではないのでこの程度にとどめておくが、最高の素材にひと手間かけてさらにおいしくするという姿勢は全くブレることがない。
いつもの「橋本さん」の事前オーダーに加え、この時期なのでカワハギと、あとははしりのサヨリを食べたいと事前に頼んでおいた。連れのリクエストは春の貝類。あまりあれこれ事前に注文を付けるのもどうなのかと思うが、今回はこれが食べたかったので、欲望に忠実に従った。

私はお茶で、連れはビールで喉を潤してから、お任せでいただく。

(お通し)白エビ、「橋本さん」
富山湾の宝石といわれる白エビ。上にはいくらが乗っている。一口で食べきれるほどのちょうどよい量なので、お醤油をかけたりするよりはいくらの塩味で食べると確かにちょうどよい塩梅になる。
トロ漬けの炙り、「橋本さん」はもちろんお通しというレベルのものではないのだが、お寿司の前に食べるという意味でここに。この日のトロ漬けは最高級のカマトロ。美しく入ったサシと、漬け地の染みた表面。あぶられるとお醤油の焦げる香り、油の香りが鼻をくすぐる。切った断面は最高級のサーロインのよう。たっぷりのワサビとともにいただくが、ワサビの辛みとカマトロの脂が口の中で絡み、そこに魚の旨味が加わる。連れとともに、あまりのおいしさに無言でほおばる。もちろんビールはなくなっていた。

(皿盛り握り)トロ漬け炙り、中トロ、ヒラメ、赤身、ウニ、コバシラ、コハダ、カワハギ肝乗せ、イカ、キンメダイ、煮アナゴ、卵焼き

いつも以上に豪華な盛り込み。トロ漬け炙りやカワハギが入っている盛り込みは僕も初めて見た。いつもはネタに入っているイクラではなく、この日はコバシラの軍艦巻きがついていた。ということはこれが自信があるということなのだろう。コバシラをネタとして頼んだことがなかったので、どんな味なのかなという興味もあったが、サクサクした歯触りに磯の香りが広がり、それでいて貝類独特の旨味もあって、とてもおいしい。貝類大好きの連れは「こんなおいしいの初めて食べました」と大興奮。もちろんそれ以外のネタも全く揺るぎのないおいしさ。そこに焼き立ての卵焼きが味の変化をつけながら彩りを添える。どれをとっても完成されている。僕好みの強めの締め加減のコハダ、口の中でとろける甘い煮アナゴ、塩でいただくウニ……その一つ一つがエゴイスティックではなく、でもそれぞれにおいしさを主張してくる。ここからは好みのものを注文。

(お好み握り・その1)真鯛、サヨリ、ヒラメ昆布締め、イカ昆布締め、赤貝
サヨリと、昆布締め2種は連れも私もいただき、真鯛は私が、赤貝は連れがいただく。この日も真鯛があった。こちらで真鯛があるときは間違いなく本当に状態のいいもの。この日いただいたのも、少し強めの歯ごたえに、噛むごとに奥深い味といい香りがふっと広がる。連れの赤貝も素晴らしく肉厚で、隣に座っている私のところまで甘いにおいが漂ってくるほど良いものだった。身で1貫、ひもで1貫取れるほどの大型で、ここで連れはビール3杯目に突入。サヨリは春を告げる魚、銀色に輝く身が美しい。コリコリした歯ごたえの身を生姜でさっぱりといただく。昆布締めは、皿盛りに入っていたヒラメとイカに、更に昆布の味とうまみ、香りが入っている。締められ寝かされることでじっくりとうまみを熟成させた身に、昆布の味と香りがついて、いつもこのたとえで恐縮だがハーモニーを奏でる。

(お好み握り・その2)
アナゴ白焼き、焼きホタテ、焼き蛤、車エビ、白子炙り、カワハギ肝乗せ

アナゴの白焼き、焼き蛤、カワハギ肝乗せは私が、焼きホタテ、車エビ、白子炙りは連れが注文。
いつの間にか連れは焼酎に変えていた。アナゴの白焼きは最近は出すお店も増えているようだが、ここで食べるのが一番おいしい。炙られても身がスカスカにならず、脂とうまみが活性化されているのに、煮アナゴのほっくりした感じとは全く違いさっぱりとしている。よほど下処理が良いのだろう。カワハギの肝乗せは冬の味覚の王様。カワハギ独特のシコシコの感触に、肝のとろりとしたうまみが絡まると、これはもう何も言えなくなる。連れが頼んだホタテはなんと天然ものだそうで、握りではなく焼き物で出された。これはお酒が進むはずだ。身もヒモも肉厚でぐわっと膨らんでおり、身の痩せたヘタレな養殖ものとは全く違った。僕が頼んだ蛤も焼き物で。握りこぶしほどあるかと思うような大きな実で、4つに切り分けて出された。ああ、お醤油の香ばしい香り、潮の香り、そして口にすると広がる琥珀酸の味というか、グリコーゲンの味というのか、貝類独特の、うまみの塊。春を感じる味でもある。車エビは活けもの。生と半生と火を通すのと、若旦那から提案されていたが、連れは生を選択。よほどうまかったのだろう、あまりそういうことを言ってこないこの連れが、「ぜひこれは食べてください!」とプッシュしてきた。白子の炙り握りももうこの時期がギリギリ。

(お好み握り・その3)サヨリ、カワハギ肝乗せ、カワハギ肝だけ
この日のネタはどれをとっても甲乙つけがたい素晴らしいものばかりで、最後に何を頼むかは本当に悩んだが、食べたいとお願いしていたサヨリとカワハギにした。今度のサヨリは塩でいただく。お魚の種類にももちろんよるだろが、塩でいただくとお醤油でいただくよりも味の立体感というか、奥行きが感じられるネタもたくさんあって、サヨリのように白身と光り物の中間点くらいにあるお魚は特に塩がよく合うように思う。最後にいただいたカワハギは若旦那のお計らいもあって、肝乗せ握りと、なんと肝だけを軍艦巻きにしたものと、2貫。肝乗せ握りのおいしさはもちろんだが、肝だけ握りは……もちろんこんなネタを頼むわけにはいかないし、頼めるわけがない。でもこれは反則級のおいしさである。お魚がないのに、肝の持つ嫌みのない味を純粋に味わうことができる。これはたまらん。

いつものように食べて飲んで、おなか一杯季節のおいしいネタを楽しむことができた。数年前にお寿司屋さんの開業ブームがあったが、その時もてはやされたお寿司屋さんで今も残っているところは果たして何件あるだろうか。「マグロは大間、タイは明石…」とネタの自慢に走るお寿司屋さん、「宮城県産の厳選したコメを、特製の赤酢で…」とシャリ自慢に走るお寿司屋さんもあって、それはそれで一つの考え方と思うが、ここは自慢たらし気なところは一つもないのに、最後に出てくるお寿司はどこよりも良い香りがし、どこよりも美しい光があり、どこよりも嫌みがない。そして口に入れると一様にこう訴えかけてくる。「おいしいでしょう?」と。

若旦那、おかみさん、そしてご主人も、ごちそうさまでした。またお伺いします!

  • 名登利寿司 - 「橋本さん」。この日は最上のカマトロ。

    「橋本さん」。この日は最上のカマトロ。

  • 名登利寿司 - 握り盛り込み

    握り盛り込み

  • 名登利寿司 - サヨリ。生姜で。

    サヨリ。生姜で。

  • 名登利寿司 - 左:カワハギの肝乗せ握り。右:カワハギの肝だけ握り。

    左:カワハギの肝乗せ握り。右:カワハギの肝だけ握り。

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2018/08訪問4回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥15,000~¥19,9991人

味が美味しく、雰囲気も美味しい。肩ひじ張らずに、美味しいお寿司。

前日の夜に「中川家の特大寄席」をルミネザよしもとで鑑賞。腹筋が攣るほど笑い、この日は日本サッカーミュージアムとスヌーピーミュージアムへ行ってから、後輩と合流しこちらへお邪魔。東中野駅からお店までの間、2歩に1歩の割合で「トロ漬け、しめサバ、サンマ、うに…」と食べたい寿司ネタを般若心経のように呟いていた。どう見ても怪しい(笑)。いつものようにお任せからお好みへ行く。

(おつまみ)タコ刺し、橋本さん
佐島のタコ。塩でいただく。美味しくないタコは噛むとゴムのような食感にただ固いだけの吸盤にいつになっても噛み切れない、飲み込めないと罰ゲームなのかと思うほど情けない味だが、このタコはまず香りがよい。ふわりと潮の香りが漂い、噛むとさくりと口の中でちゃんと切れる。きゅっと歯ごたえがあるのにちゃんと切れる。吸盤も柔らかい。美味しい。
いつも頼む「トロ漬け焙り」、「橋本さん」は最高に脂の乗った部位。多分カマのところだろう。箸で持つと千切れるほどに柔らかく、最高に脂が乗ったトロに、秘伝の漬け地が染み、さらに焙って香ばしさを纏い、おろしたてのたっぷりのわさびが脂のちょっとしたしつこさを打ち消す。N響も真っ青のアンサンブルである。後輩のビールは気づくとなくなっていた。

(おまかせ握り)
中トロ、こち、いさき、ウニ、イクラ、コハダ、新サンマ、金目鯛、煮アナゴ、卵焼き

卵焼きは別皿。おかみさん特製の焼き立てをいただく。ほかほかで甘くて、厚くて、これがなければお任せ1人前に画竜点睛を欠くという一品である。握りは9貫。個人的にはかんぴょう巻き、欲しいんだけどな(笑)。夏らしい魚が多い。赤からピンクに、素晴らしい色合いのグラデーションの中トロは脂の味と赤身の鉄っぽい、ちょっと酸味の入った味を同時に味わえる。こちは夏フグともいわれる、シコシコの歯ごたえに噛むごとに滲み出てくる白身魚独特の重層的な旨みは、夏の魚らしくさっぱりしている。いさきのお寿司は実は初めて食べた。とんでもなく厚い身にまず驚く。そしてその厚さでシャリとちょうどぴったり合う、青魚のシンプルな味。後味もすっきりしており、とても潔い。ウニは塩で。最近この出し方のお店が増えたと思うが、この日のウニには薄く白い筋が入っていた。これが脂で、それだけ良いものだったのだと思う。ウニやイクラは直線的に物の良しあしが味の良し悪しのようなところがあるので、いいウニに当たると嬉しくなる(このお店のウニはいつでも美味しいけれど)。イクラは醤油漬けの味がきつくなく、薄味でさっぱりとしている。コハダはちょうどいい具合に脂が乗り、シンコのようなすっきりさっぱりさはないが程よい締め加減で、絶妙のバランス感がある。仕込みの繊細さがわかるネタというのがよくわかる。新サンマはようやく出てきたとおっしゃっていた。脂はほとんどないが、その分純粋に青魚の旨みを味わえる。薬味も何も必要ない、嫌みのない味。金目鯛はコハダ、新サンマから一転して脂の乗りが抜群。軽く焙って皮目の脂が溶け出し、活性化されている。焙ることで少し硬い皮が柔らかくなっているので、食べやすい。煮アナゴはふわふわ。夏場のアナゴはとりわけ美味しいが、口の中でとろける柔らかさに、エッジの利いたツメの味がちゃんと効いている。

(お好み握り・その1)しめサバ2種、キス湯引き、赤むつ(+カマ塩焼き)、えんがわ
ここからは食べたいものを。後輩とともに大好物のしめサバは事前に頼んでおいた。昨日しめたものと、今日しめたものと、2種類を食べ比べ。昨日しめたものは酢が回り、歯ごたえも少し硬くなっている。その分、酢と脂の旨みのマッチングを味わえる。今日しめたものは限りなく生。酢は表面にしか入っておらず、酢はフレッシュさのアクセントという感じ。後輩は今日しめたものが、私は昨日しめたものが好みだったが、二人そろって言ったのは「しめサバ、美味しい!」。若旦那も「やってみたら面白かったですね」としてやったり。しめたものの後なのでキスは湯引きでさっぱりと。なぜこのお店はいつもこんな大きなキスが入っているのだろう。赤むつ、のどぐろは捌く前の丸の姿を見せてもらえた。金沢育ちの僕でもめったに見たことがない大きさ。独特の強い脂の乗りも最高で、焙った食感も楽しい。おまけとして頂いたカマの塩焼きは私が身をつついて後輩が箸を出す流れ。よく動いているカマ、ホホ、ヒレの食感の差がたまらない。きれいに骨だけになった。

(お好み握り・その2)かれい昆布締め いか昆布締め 金目鯛昆布締め 煮アサリ
昆布締め三種。かれいの昆布締めは最高級食材のホシガレイ。ぐっと歯に食い込んでくるしっかりした食感に、そこからあふれ出てくる魚の旨みと、それを重層化する昆布の旨み。いかはしっかりと締まって鼈甲色になり、水分が昆布の旨みに置き換わっている。でも固いわけじゃなくて、さくりとした歯ごたえ。金目鯛は独特の脂が抜けて昆布の独特の香りと旨みを纏う。さらに焙られることによって身の旨み、脂の旨み、昆布の旨みと複線的な旨みを一度に味わえる。どれも個性的でとても美味しい。煮アサリは貝独特の食感にツメの甘辛い味が絡まって口に広がる。貝類はある時とない時があるので、あれば必ずどれか頼むようにしているが、煮アサリはシンプルでいて、奥深い。

(お好み握り・その3)穴子白焼き 新いか シンコ しめサバ トロ漬け焙り
ラストスパートに入る前にシジミのお味噌汁もいただいた。よくある、出し殻のように小さい身のシジミとは違う。身の大きさが五百円玉ほどある。ちゃんと出汁が出ているのに身にも貝の味がしっかり残っている。「これは肝臓にいいですよね!お酒追加します」と後輩はいつの間にか日本酒2合目。シジミ食べたから酒飲んでもいいという理屈はどうなんだろう(苦笑)
穴子の白焼きは定番中の定番。煮アナゴとは違い、塩でいただくさっぱりとした味わい。新いかは一杯丸のまま。例えばアオリイカのような濃厚な旨みや、アカイカのような滲み出る甘さはないが、その分若々しい新鮮な味わい。シンコはコハダとの比較で言えばこれも若くてさっぱりとした味わいだが、その分後味の余韻もすっきりしていて、切れ味がいい。最後にいただくことになったトロ漬け焙り「橋本さん」の握りの前に、もう一度食べたくなったしめサバをはさみ、最後はトロ漬け焙り。大トロの脂のこってり+芽ネギとわさびのさっぱりのコンビネーションで締め。

この日はいつも以上に多くの種類の魚をいただいたので、締めの定番のこの日一番おいしかったネタのリピートができなかったが、その分夏の魚のいろいろな味わいを楽しめた。トロ漬け焙りのような直線的な味わいから手間暇をかけたコハダ、独特の工夫がある金目鯛の昆布締めなど、お寿司の美味しさ、魚の美味しさ、シャリや酢、わさびの美味しさ、そしてご主人とおかみさん、若旦那やほかのお客さんが作る雰囲気の美味しさ。美味しいものが美味しく食べられる理由が揃っているお寿司屋さん。これからも大事にしたい。

ご主人、おかみさん、若旦那、また食べに伺います。ごちそうさまでした!
 

  • 名登利寿司 - この日のおまかせ握り盛り合わせ

    この日のおまかせ握り盛り合わせ

  • 名登利寿司 - トロ漬け焙り。「橋本さん」。

    トロ漬け焙り。「橋本さん」。

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2018/02訪問3回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥15,000~¥19,9991人

グルメ本とは無縁でも、テレビに出なくても、おいしいものはおいしい。

ずいぶん久しぶりのお邪魔。仕事が一つ片付いたお祝いも兼ねて後輩を連れていく。この後輩、東中野駅からお店まで歩いて行く間、3歩に1回の割合で「お寿司♪お寿司♬」とつぶやいていた。

冬には遅く春には早い微妙な時期。お願いしてあったトロ漬けの炙り「橋本さん」と、お任せで。いける口の後輩はまずはビールを頼んでいた。

まずやってきたのはお通しの白魚。薄くポン酢がかけてある。それ自体にあまり味があるものではないから、このぷりぷりとした触感が楽しみ。後輩はいたくこれが気に入ったようだった。
ついで「橋本さん」。今回は本当に大トロ、脂がたっぷり入って身が白くなっているかのような部分と、カマトロ、肉の味の力強さと、よく動いている部分だからこその少し硬めの歯ごたえが味わえる部分、2部位をご用意いただいた。なんと贅沢な…。トロ漬けが焙られて醤油の焦げるいいにおいが漂い、やってきました。「橋本さん」食べ比べ。大トロが一人2切れ。カマトロが一人3切れ。まあなんと見目麗しきお姿。これこそインスタ映えするという奴だろう。でも我々2人はそんなことには全く関心がないので、冷めないうちに食べる。「これなんですか?トロですか!!トロってこんなにおいしんですねえ…。喋るのがもったいないんで、黙って食べます」と、後輩は計5切れの「橋本さん」を、まるで恵方巻を食べるかのように終始無言で、しかし満面の笑みをたたえてほおばった。ものすごく語弊のある言い方をすると、このトロ漬け焙り、まずくなる理由がないので、どの部位が出てこようと、直線的なおいしさを感じる。そういう意味で、何が一番おいしかったかな、と振り返るときに、これが思い返されることは、ほとんどない。でも、ここへ来たならこれは食べねば、と思う、外せない味である。そして日本酒に変更。

(皿盛り)
中トロ、真鯛、赤身漬け、ウニ、イクラ、コハダ、金目鯛、煮アナゴ、カワハギ肝乗せ、卵焼き

…巻物がなくなっていた。かつてはかっぱ巻きとかんぴょう巻きが入り、それがかんぴょう巻きだけになり、今回はなかった。時代に合わせた進化ということか。ここ数回、お邪魔するたびにおいしいものにあたっている真鯛が、今日もあった。関東でこれだけ素晴らしい真鯛に毎回出会えることなど、ほとんど奇跡といっても良い。この日の真鯛は、まったくしつこくないのに豊かな脂の乗りに、かみしめるごとにふわっと漂う白身独特のかぐわしい香りと、ジワリと滲み出る旨み。魚の王者といわれるのがわかる、文句のつけようのない味だった。定番の中トロや赤身の漬けの美味しさはいまさら言うまでもなく、舌に変化をつけてくれるさっぱりとしたコハダに、これもとろっとした脂の旨みがあふれるキンメダイ。ふっくらと煮られた甘辛い煮アナゴに、おいでなさいました冬の王者、カワハギの肝乗せ。冬のこの時期、これを食べねば何を食べる。脂がのって嫌な臭いも癖も全くないカワハギの肝のプルプルとした食感に、かみしめると口の中一杯に広がる旨み。それをきっちり受け止める、さくりとした歯ざわりのカワハギの身。横で食べている後輩は一貫ごとに「おいしい」「すごい」「たまりませんね」を連呼。とりわけこのカワハギ肝乗せには感動した様子で、これをもう1つ食べてもいいですかとリクエスト。結局最後にもう1貫いただいた。

(お好み握り・その1)アナゴ白焼き、焼き蛤、しめサバ、キス、トロ漬け焙り
というわけでお好みへ。まずはこれも定番、アナゴの白焼き。脂が乗っているのに、焼くことでおいしいと思える量だけの脂が残り、煮アナゴとはまた違うさっぱり、さっくりとした味わい。これも外せない一品だろう。春の香り漂うハマグリは、大人の握りこぶしくらいはあろうかという大きさ。焼いて出てきた。ぷりぷりの身に、貝にたまったグリコーゲンたっぷりのジュースも残さず飲み干す。後輩曰く「これは体によさそうですよね」と酒のピッチも早くなる。お願いしてあったトロ漬け焙りの握りの前にさっぱりしたもので舌を変えようと、しめサバとキスを頼んだ。このしめサバがこの日一番と思う素晴らしいネタで、キラッと光るほどにたっぷり脂が乗り、皮に近いほうはかなり強めに締めてあるのに、身はレア。これ以上、お寿司にしておいしいしめサバはどうやったらできるのかと思うほどにおいしかった。キスは個人的に大好物で、このお店で最も女性的なネタ。きっちり5分酢締めにされ、白い身にほんのり赤い皮目、さっぱりしているのに噛むとぐっと口の中で出てくる独特の旨み。天ぷらでいただくキスもおいしいが、お寿司のネタとしても最高である。そしてダメ押しのトロ漬け焙りの握り。芽ネギとたっぷりのワサビでいただく。最初は緊張していた後輩もお酒も程よく回り、「たまりませんね」と美味しいお寿司に舌鼓。

(お好み握り・その2)昆布締め三種(真鯛、平目、いか)、のどぐろ
北陸出身の僕からすると昆布締めは舌のなじみがあって大好きなのでいつもいただくのだが(こちらのお店の昆布締めの豊富さはいつも感動する)、後輩に聞いてみたところ「絶対おいしいですよそれ!食べます!」とのこと。頼もしいじゃない。3種類の昆布締めを1貫ずつ。いかは昆布の旨みが乗り移った証にほんのり黄色くなっている。そして水分が抜け、サクッとした歯触りになる。かみしめると、いかの旨みと昆布の旨みが同時にうわーっと口の中に広がる。平目は王道の昆布締め。水分が抜けて少し歯ごたえが増した身をかみ切ると、断面からまずは昆布の旨みがジワリと出てくる。そのすぐ後に、平目の旨みが後を追うようにやってくる。なぜかわからないが、こちらのお店でいただく昆布締めは、昆布の旨みと魚の旨みが出てくるほんのわずかな時間の差がわかるのだ。それだけ、絶妙極まる締め加減ということだろう。素でいただいてもおいしかった真鯛の昆布締めは、脂が乗った鯛に負けないようにちょっと強めの締め加減。これが噛むごとに旨みが口の中で一体になって広がる。トロ漬け焙りが直線的な旨みをぶつけてくるソロリサイタルなら、昆布締めはハーモニーの旨さで楽しめるブラスバンド、とでもいうのだろうか。
お品書きには出ていなかったが、若旦那が取り出してこられたのがのどぐろ。アカムツともいうかな。北陸の冬を代表する高級魚。少し焙ったものをいただく。個人的にはのどぐろは脂の旨み以外何があるのかなと思ってしまうのでベタボメする気はないが、それでもおいしいものはおいしい。後輩は「こんなの金沢では冬に食べられるんですか?」と質問されたので、地元でもめったに食べることはないと答えておいた。

(お好み握り・その3)アナゴ白焼き、真鯛、カワハギ肝乗せ
締めにはその日一番おいしいと思ったものを頼む。と言いながら、大概アナゴの白焼きはいつもいる。この日は後輩と2人で相談。カワハギの肝乗せはすぐに決まった(というか、最初の皿盛りの時点で「これもう1つ食べたいです」と後輩が若旦那に頼んでいたのだ)が、もう1貫をしめサバ、キス、真鯛で逡巡。皿盛りに出てきたのとは違う腹の部位がありますよ、との若旦那のアドバイスもあり、真鯛に決定。
アナゴの白焼きの旨さは再確認するまでもない。カワハギの肝乗せはこれを逃すとあと1年お預けになってしまう。名残を惜しむ。そして真鯛の腹。いうまでもなく最上級の脂の乗り。そして、よく動いている部位なのでかみしめる歯ごたえ、弾力も抜群。口の中一杯にタイの身の旨み、脂の旨みがあふれんばかりに広がり、そして潔く消える。このしつこさのなさも、よい鯛の証だろう。

いつものように食べたいものを食べたいだけいただいて、おかみさんや若旦那、ご主人との会話を楽しみ、おいしいお寿司をおいしくいただく、至福の時間。ネタの鮮度がいいとか種類が豊富とか、そんなことを自慢するわけでもなんでもなく、きちんと一仕事を施して出てくるお寿司の数々。その証に、この日いただいたネタでお醤油を使ったのは、しめサバだけだった。それ以外にはきちんとおいしくいただけるような仕事、味加減がちゃんとなされている。いわゆるグルメ雑誌に載ることもないし、テレビに出ることもないお店だけど、ほんとに真摯に、まっとうに、丁寧にお寿司と向き合い、奇を衒うことなく、正統派のお寿司をおいしく食べさせてくれるお店。人に教えたいような、内緒にしておきたいような、大事にしたいお店である。

ご主人、若旦那、おかみさん、いつもありがとうございます、この日も最高においしかったです。また伺います、ごちそうさまでした。

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2017/04訪問2回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥15,000~¥19,9991人

きちんと仕事をされたネタの数々をおなか一杯に楽しむ。気持ちも舌も満足できるお寿司屋さん。

(2017年4月9日訪問)

前日にラルクアンシエルの25周年記念ライヴに参戦し大はしゃぎした翌日、お堀端の桜をぶらぶらと散策してからラクーアでリラクゼーションを受けてリフレッシュしてから、新幹線に乗る前に晩御飯にお邪魔。北陸新幹線の最終便は21時04分東京発なので、18時にこちらにお邪魔すればゆっくりとお寿司を楽しむことができる。

いつものようにお好み握りとトロ漬けの炙りをいただいてから、お好みへ。

(おつまみ)タコの頭の湯引き 塩だれ

お酒を飲む人にも飲まない人にも出てくるおつまみ。今日はタコの頭の湯引きに、塩味のたれをかけて上から黒こしょうが振ってある。何となくイタリア料理のようにも感じる一品。噛むほどに味が出てくるタコの頭はこんなにおいしいとは思わなかった。「あんまりご存じない人も多いんですけど、こうやって塩味で食べるとうまいんですよ」と若旦那もしてやったりの表情。

(皿盛り)
中トロ、真鯛、赤身漬け、ウニ、いくら、コハダ、シマアジ、白エビ、煮アナゴ、トロ漬け炙り、かんぴょう巻、卵焼き

いつもの皿盛り。「いつもの」とさら~っと書いているが、いつ行ってもその日良いものと定番のものを取り合わせて出していただける。もちろんおかみさん特製のホカホカ焼きたての卵焼きもおいしい。この日の皿盛りでおいしかったのはなんといっても真鯛。前に頂いた時も非常においしかった真鯛だが、関東のお寿司屋さんにいいものが入ってくることはめったになく、しばらくおいしい真鯛にはありつけないなと思っていたら、またこちらでおいしい真鯛に出会えた。しかも脂の乗り具合、身の寝かせ加減、香り、いずれも前に頂いた真鯛よりもワンランク上の素晴らしい状態。魚の王者、真鯛のうまみがギュッと凝縮された一貫はしょうゆをつける必要すらなく、そのままじっくりと味わえた。ちょっと強めのコハダの締め加減にしっかりと乗った脂、トロ漬けの炙られて活性化したうまみ、煮アナゴのふんわりとした味わい。いずれもどこにでもありそうでこちらでしか味わえない、おいしいとしか表現できない語彙の貧困さが悲しくなるほど、おいしい。

(お好み握り・その1)真子がれい、金目鯛、サヨリ、アナゴ白焼き

真子がれいは真鯛とはまた違うさっくりとした歯ごたえに、さっぱりとした味。でも、魚の味を邪魔せずしつこくない程度に脂も乗っている。金目鯛はいつ頂いても脂がしっかりのっており味のブレが少ない。皮目を炙って、余分な脂を落としながらうまみを活性化させており全くしつこさはない。前の日の夜も食べたサヨリはこちらもかんぬきサイズ。肉厚でしっかりと脂が乗り、歯ごたえも抜群のサヨリにしょうがを噛ませ、さっぱりと頂ける。アナゴの白焼きのうまさは説明不要。

(お好み握り・その2)アマダイ昆布締め、ハタ昆布締め、イカ昆布締め、カツオ、焼き蛤

好物の昆布締めは今日も全種類。お料理としてはいただいた経験はあるが、お寿司としてこちらでいただくのは初めてのアマダイの昆布締めは、ほかの魚とは異なるねっとりとした身質に昆布のうまみが重なり、シャリと一体になって口中に広がる。ハタは生の時よりもサクッとした歯触りになり、水分と昆布のうまみが置き換わって強い脂の味に負けない昆布の味が身の中にしっかりと入っている。イカの昆布締めは締められて黄金色になったイカの身から昆布の味が噛むほどにじわりと出てくる。三種三様の味わいが楽しめて大満足。初物とのカツオだったが、確かに脂はのっていないがその分魚のさっぱりとした味を楽しめ、もちもちとした歯触りは秋の戻りガツオとは違うさわやかな味わいにあふれている。春においしくなる貝類を何か頂こうと思ったが今回は蛤を焼いてもらう(ちなみにこちらの煮蛤はあれば必ず食べたい。ひっくり返るほどにおいしい)。厨房から漂ってくる貝の焼ける匂いにお醤油の焦げる匂い。僕はお酒をほとんど嗜まないがこれは飲む人にはたまらないだろう。肉厚の蛤の焼き立てをほおばり、貝殻に残った琥珀酸たっぷりのスープも残さず頂く。おいしいなぁ。

(お好み握り・その3)真鯛、真子がれい、アナゴ白焼き、アマダイ昆布締め

今日一番おいしかったネタは複数回頼むと決めている(例外はアナゴの白焼き。このネタは何があろうと2貫食べる。理屈や理由はいらない)。今日もっともおいしかった真鯛は2貫追加する。白身が好きなので真子がれいのさっぱりサクサクした味も捨てがたくこちらも。あとは好物の昆布締めからアマダイも追加。真鯛は腹身の脂ののった部分をお塩で、腹から少し背中側の部分をワサビで。腹身の部分は若旦那がおっしゃる通りまさしくマグロでいえば大トロ。これが鯛なのかと思うほど強い脂の味に、でもやっぱり鯛だなと感じる複雑なうまみと白身独特の歯ごたえ。素晴らしくおいしかったが、これを何も言わずに出したら真鯛の腹身だとわかる人はほとんどいないのではないだろうか。それほど素晴らしい脂の乗りだった。もう1貫は大トロと中トロの中間点というところだろうか。身の透明感のある部分と、脂が乗って白くなっている部分のグラデーションが素晴らしく、腹身の部位よりも真鯛のうまみをより強く味わえる。「この部分が一番お好きなんじゃないかと思います」と若旦那がおっしゃっていたが、確かに脂のうまみも、身肉のうまみも、歯ごたえも味わいたいならここが一番だろう。もっともこれだけの真鯛のこの部位をいつでも食べられるお寿司屋さんはほとんどないだろうが…。真子がれいはこの真鯛に比べると確かにさっぱりしているが、さっぱりしているのに噛むほどにぐっと出てくる、濃縮されたうまみはほかの白身にはないもの。これも素晴らしくうまい。アマダイの昆布締めのとろりとしたやわらかい味をもう一度口に含ませ、アナゴの白焼きのプツプツとあふれ出る脂とぷつぷつの歯ごたえを最後に味わう。

サヨリ、貝類、真鯛など春が出盛りのおいしい魚に、コハダ、アナゴなどきちんと仕事がされた定番の魚、いつも種類が豊富な昆布締め。いずれもが産地がどうだとか何日寝かせたとか、もちろんそういうこだわりもあるのだろうけれど、客はそういう情報を過度に仕入れなくても、本能的に、かつ単純明快に、おいしいものをおいしく食べられる。別に僕たちお客は情報を食べに行くわけではないので、いわゆる頭でっかちのグルメになる必要はないのだと思う。おいしいものを、おいしいタイミングで、おいしいうちに食べて、おいしいという。それが最低限にして最高のマナーなのだろうし、このお店は肩ひじ張らずに、おいしいと思わず口からこぼれるものをいつも食べられる。今回もお腹いっぱいおいしいものをいただきました。ご主人、若旦那、おかみさん、ごちそうさまでした!

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2017/02訪問1回目

5.0

  • 料理・味5.0
  • サービス5.0
  • 雰囲気5.0
  • CP5.0
  • 酒・ドリンク4.0
¥15,000~¥19,9991人

お味、雰囲気、お値段とも満足。東京に行った際は必ずお邪魔したい

大雪の翌日にお邪魔。東京に用事があったときは必ず伺うお店。こちらのおかみさんは『寿司屋のかみさん』シリーズをものしている作家の顔も持ち、かの橋本元首相も愛読者であったと伺っている。

連れと2人で訪問。いつものようにおつまみに「トロ漬けの炙り」、通称「橋本さん」(橋本元首相のお気に入りだったから)をいただく。トロの漬けを炙って、たっぷりの山葵と共に頂く。連れのビールはここでもうなくなる。その姿の美しさ、色合いをしげしげと眺め、口に入れると飲み込むのがもったいなくなるお味。

次におかみさん自家製の焼きたて卵焼きをいただき、握りに。先ほどのトロ漬け炙りも握ってもらい、中トロ、漬け、ホウボウの昆布締め、コハダ、スミイカ、ウニ、いくら、煮アナゴ、平目、巻物の皿盛り。どれもきちんと仕事がしてあり、特にこちらのこだわりがある白身(今回は平目)と締めもの(コハダ、ホウボウの昆布締め)はいついただいてもたまらない。

あとはいつものように季節のものと定番のものを注文。肝乗せカワハギ、アナゴの白焼き、〆キス、キスの湯引き、煮アサリ、イカの昆布締め、金目鯛、タコなど。この時期しかないカワハギの肝乗せは、口の中でとろける肝としまった身の味が絶品で、陶然となる。

連れは肝乗せカワハギ、北寄貝、赤貝、活き車海老、白子の炙りなどを注文。北寄貝の焼き物でまたビールが一杯なくなっていた。

お腹いっぱいまで遠慮なく食べて飲んで、それでもひとり2万円はかからない。ご主人、おかみさん、息子さんの3人でやっておられるお店なので、雰囲気もアットホーム。お品書きに値段が載っていないので不安になるかもしれないが、2万あればお腹いっぱい食べられる。きちんと仕事がされたネタの数々を東京の中心部で食べたら、この倍はするだろう。コストパフォーマンスも寿司屋というカテゴリーで考えればこれでいいのかと思うほどに抜群。


ここを訪れた時は何がどうあってもアナゴ(煮アナゴ、白焼きとも)を召し上がっていただきたい。

東京にお邪魔した時に必ず訪れたいお店。また伺います、御馳走様でした!


(2014年3月21日訪問)

L’Arc~en~Cielのライヴの後にお邪魔。閉演直後の退場の列をうまく抜け、国立競技場前駅から大江戸線でおよそ20分。案外近い。

遅めの時間だったからか私が最後のお客になりお店を独り占め。いつものようにお好みで握ってもらう。中トロ、赤身ヅケ、シマアジ、イカの昆布締め、ヒラメ、煮アナゴ、コハダ、ウニなど。どれも仕事がしっかりされている。この日の盛り込みの中でとりわけおいしかったのはヒラメ。肉厚で噛むほどに深い旨みが滲み出てくる。あとでもう1カン頂いたが、若旦那も「このヒラメはいいです。大きさもいいですし、食べるタイミングも最高です」と満面の笑み。

後は好きなものを注文。ライヴではしゃいだ後でお腹もすいていたので、煮蛤、煮アサリ、アナゴの白焼き、ホウボウの昆布締め、締めアジ、トロヅケ炙りなどを注文。この時期を外すと食べられない生の殻付き鳥貝も頂くことができ、ラッキー!ボイルされた鳥貝とは全く違う、シャキッとした歯触りと潮の香り、噛み応えのある貝の味が酢飯と共に口の中でとろける。この日が初仕入れだったのだそうで、ますますラッキー。これも春の味の煮蛤も、手のひらの半分くらいあろうかという見事な大きさ。しっかりした味のツメに負けない食感と、固くはないがしっかり味わえる歯ごたえがたまらない。

生で最高においしかったヒラメは昆布締めも頂く。昆布の味と香りがヒラメの身にきちんと染みこんで、生より重層的になった味と、水分が抜けたことで歯ごたえが増し、口の中でしっかり噛むことで昆布とヒラメ、酢飯の味と香りが絡み合う。ここはいつお邪魔しても昆布締めのネタの種類が豊富で楽しいのだが、昆布の味の染み込み具合が本当に絶品。

最後の最後に、ネタを片付けるところを見ていた鮪の話になり、「この部分召し上がって見られますか」と盛り込みの中にあった中トロよりも少し脂の強い部分をいただく。この鮪が素晴らしいグラデーションで、お寿司にこういう表現は不謹慎だが、グラマラスな色味。しっかり脂がのっているのだがちっともしつこくない。口の中でネタがさらっととろける。脂のうまみと赤身部分のわずかに渋い感じが思わず言葉を失うおいしさ。「この鮪もちょうど具合がよかったですね、今日はいいタイミングのものがあってよかったです」と若旦那も会心の笑顔。こちらも本当においしいものをおいしいタイミングで頂くことができて会心の笑み。

季節が変わるたびに訪れたくなる大事なお店。ご馳走様でした!

(2014年8月24日訪問)
所用の後の遅い時間帯に訪問。先に来ているはずの後輩は山手線で眠りこけ気づいたら恵比寿という絶望的状況。先に食べる。
いつものお任せ握りに好みのものを注文。お任せの中に入っていた蝦蛄は普段はほとんど頼むことがないネタなのだが、変な臭みや癖もなくおいしかった。時期も良かったのだろうが、ウニの握りも良い。梅雨の雨水を吸った煮アナゴもふんわりと口の中で溶ける。

あとは鰹の塩たたき、トロ漬け、イカの昆布締め、金目鯛昆布締め、アナゴの白焼き、〆鯖、キスの湯引き、〆キス、煮アサリ、鯒などを注文。鯒は夏場が良い魚だが、寝かせる時間もちょうどなのか、塩でいただくと噛むごとにじわ~っと染み出るさっぱりとした白身の味が癖になる。トロ漬けもいつもとは少し違う部位を使ってくださっていたそうで、いつもよりも強い、だけど甘くてさらっと溶ける脂と、たっぷり利かせた山葵に芽ねぎの組み合わせはいついただいても笑顔になる美味しさ。

この日一番おいしかったのは、何と言っても新さんま。若旦那も「このさんまはいいです」と言いながら捌いてくださる。くどくなく、だけどしっかりとのった脂に、青魚独特の味と香りが重なり、実によい。イメージとしてさんまをわざわざお寿司でいただかなくても、焼くか、せいぜい刺身で、と思っていたのだが、これは新しい発見だった。ここのネタは単にお魚を切っているだけではない、仕事がされているということも改めて確認できた。

最後は海苔担当改め電話担当重役(笑)のおかみさんお奨めのネギトロ巻。いつも締めにはその日一番おいしいなと思ったものをもう一度頼むことが多いので必然的に巻物で締めということはほとんどない。しかもおかみさんからこれがいいとお奨めを受けたことはあまりないので、これは驚いたが素直に従う。白ネギをたっぷり使ってたさっくりぱりぱりとした歯触りに、脂の乗ったトロのまさにトロトロの感触。これはたまらない。この店にはまだこんな秘密兵器があったのか(笑)

今度窺うときの締めはトロタク巻にしようと決めました。ご馳走様でした!

(2015年2月8日訪問)
東京競馬場での競馬観戦を楽しんだ後で後輩とお邪魔。12戦7勝の私に12戦全敗の後輩とテンションは好対照だが、ここのカウンターに座るとどんな仏頂面の気分でも不思議と笑顔になれる。

皿盛りをいただいた後でお好みを注文。お通しで出てきたのは白魚。さっぱりとした春の味で後輩は「反則ですよ」といいながらビールを煽る。ついでマグロのトロ漬けの炙り、通称「橋本さん」。橋本竜太郎元首相が好んだというひと品。トロの中でも希少なカマトロの部位を3切れ。たっぷりの、しかし少しもしつこくなくさらっととろける脂に醤油の旨みと山葵の辛みが融け合い、思わず恍惚となる。ご主人も「そんなうまい所あげちゃったの?そりゃうまいよ」と冗談とも本気ともつかぬ口調で悔しがる。連れは当然ビールを追加。皿盛りは中トロ、コハダ、ヒラメ、キンメ、鯛の昆布締め、ウニ、煮アナゴ、白エビ、しめ鯖、山葵たっぷりのかんぴょう巻におかみさん特製の卵焼き。どれもしっかり仕事がされていて、鯛の昆布締めの昆布の染み具合、しめ鯖の締まり具合もどんぴしゃり。口の中でふわりと溶ける煮アナゴに、嫌な臭みの一つもないウニ。いずれも、絶品。若旦那がお奨めのしめ鯖は脂ののりも最高で、口の中でするっと溶けて行った。後輩は順調にビールを3杯目に。
ここからはお好みで注文。二人ともお腹を空かせていたのでたくさん食べる。二人そろって頼んだのはこの時期を外すともうなくなるカワハギの肝乗せと、プリプリの脂と歯ごたえがたまらないあなごの白焼き、ウニの握り。カワハギの身よりも大きくたっぷり盛られた肝は嫌味や臭みが一切なく、ただひたすらに旨い。ウニは皿盛りは軍艦巻きだったので、塩握りでいただく。これもとろっと溶けるうにの味が口いっぱいに広がる。おつまみでいただいた「橋本さん」も握りで2巻。カマトロのところと、更にお腹に近いところ、2種類を食べ比べてみる。何という贅沢・・・。添えられたたっぷりの山葵と芽ねぎでしつこさは全くないし、火が入って活性化された脂がシャリと絡み合うと、小泉武夫氏ではないが「頬落舌踊」。
私は昆布締めのヒラメとキンメ、アジ、キスの湯引きと酢締め、煮アサリ、しめ鯖、ホウボウなどを頂く。後輩は競馬の負けはどこへやら、活車海老、赤貝、平貝、白魚軍艦、白子炙りなどを注文。最後に何を食べるか毎度毎度迷い、前回お邪魔したときはトロタク巻にしようといっていたのに、誘惑に勝てずカワハギ肝乗せとあなごの白焼きをもう1貫ずついただいた。冬と春のちょうど境目くらいで、春の走りの魚と、冬の盛りの魚、両方が楽しめ、いつものことですが大満足。あとから後輩に聞いたらビールは6杯飲んだそうだ。

いつもよりもお勘定は少し高めだったが、頼んだものを考えたらそれでも考えられないほどに安い。アットホームな雰囲気もいつも変りなく、しっかり手間暇をかけた極上のお寿司が味わえるお店。ご主人、おかみさん、若旦那、また伺います。ご馳走様でした!


(2015年5月24日訪問)
仕事終わり、新幹線に乗る前に晩御飯にお邪魔。一人で伺うのは久し振りである。いつものお任せからお好みの流れ。

皿盛りの中身は、中トロ、コハダ、ヅケ、イクラ、ウニ、アズキハタ、オニカサゴ昆布締め、煮アナゴ、金目鯛、シロイカ、干瓢巻。炙って味を引き出した金目鯛と、梅雨に向かって旨くなるアナゴのプリプリがたまらない。おかみさん焼きたての卵焼きと、トロ漬けの炙り、通称「橋本さん」を頬張り、ここからはお好みでいただく。まずは若旦那のお奨めの生トリガイ、シャコ、ホシガレイの縁側炙り。生トリガイは茹でたものとは全く異なる磯の香りと、シャキッとした歯触り。シャコは目を見張るほど肉厚で、カツブシ(子供)をしっかり持っている。それほどシャコは好きではないネタなのだが、これは美味しかった。ホシガレイの縁側炙りは、脂と共に滲み出る旨みに、こりこりとした歯ごたえがうっとりするほどの美味しさ。次に煮蛤、コチ、マコガレイ、アジを頂く。煮蛤はふっくら肉厚の蛤に甘味のあるツメが絡んで口の中が旨みでいっぱいになる。コチは夏ふぐの異名に相応しいしこしことした食感に、濃密な旨みがあふれる。マコガレイは脂がのっているがさっぱりと頂ける王道の味。アジも丸々と太った、見るからに美味しそうな身のきらきらピカピカの輝きと、しっかりした食感、濃厚だがしつこく残らずさらっと流れる旨み。ついでイカとカレイの昆布締め、アナゴの白焼き、キスの湯引き。イカとカレイは昆布の味がしっかりとしみこんで、魚の不要な水分は抜けてもっちりとした魚の旨みに昆布のうまみが重なる。アナゴの白焼きはこれを食べなくては始まらない。確認する必要のない旨さ。キスの湯引きもすっきりとした切れ味のよい、さわやかな味。いついただいてもおいしいキスだが、こういう蒸し暑い時期が一番おいしく感じられる。
いつも悩みに悩む〆の一皿には、今日食べた白身の中で一番おいしかったコチに、いつものアナゴの白焼きと、珍しく巻物をと思いトロとたくあんの「トロタク巻」を注文。若旦那は「今日切っているネタのなかではコチはいい状態だなと思っていたんです、最後にまた召し上がっていただいて、嬉しいです」と注文を喜んでくださり、煽てられてこちらも嬉しくなる。ついでに大きな粒が6つも入ったアサリのお味噌汁も頂き、身も心も大満足。貝の美味しい時期なのでいいものがあればと思っていたら生のトリガイと煮蛤がいただけ、夏に向かって旨くなるコチ、アナゴも脂がのって最高の味。あまり褒めなかったが、ホシガレイの縁側炙りはもう顎が落ちてしばらく目を閉じて絶句するほどの、貧困な語彙で表現できない、最高の味。

ご主人、おかみさん、若旦那、いつもおいしいお食事と楽しい時間をありがとうございます!また伺います、ご馳走様でした!

(2015年11月15日訪問)

夏に行われた舞台『ダイヤのA』の限定イベントに当選。TFTホールでイベントを楽しんだのち、最終の新幹線で帰る前にお邪魔。北陸新幹線ができて、東京での夜の時間の使い方がガラッと変わったことを感じる。いつもの皿盛りから、お好みへ。

皿盛りの前におつまみで出されたのが青森産のアンキモ。酒飲みが泣いて喜ぶ品だろうが、下戸の僕でも物の良さがすぐにわかるほど、豊潤な味。ありがちな臭みやしつこさは全くなく、ただ肝の旨みが舌の上で流れる。この日の皿盛りは、中トロ、真鯛、金目鯛の炙り、ウニ、いくら、赤身漬け、コハダ、煮アナゴ、白エビ、おかみさん特製の卵焼き、漬け鉄火巻。いずれも丁寧に仕事がされたネタに、「おいしい」の一言を言うことすら忘れて次々と手が伸びる。この日の皿盛りの中で特に美味しいと思ったのは、コハダ。初夏のシンコの若々しい味よりも、この時期の大きくなって脂の乗ったコハダの味のほうが僕の好みにもあっているのだが、強めに〆られたコハダのしっかりした味は、さっぱりしているのに奥行きがあって力強く、とても印象に残った。

そこからは追加でお願いしていたトロ漬け炙り。本当に大トロの素晴らしい部位を炙っていただき、たっぷりの山葵と芽ねぎを添えて頂く。口の中でぐわっとあふれ出てくる脂に、マグロ特有のわずかな渋味、漬けられた地の醤油味。それらすべてを活性化させる炙り加減と、しっかり受け止めるシャリ。どこかがかければばらばらになる、でもどこも完璧だから渾然一体の素晴らしい味が楽しめる。ついで冬場最高のネタと勝手に思っているカワハギの肝乗せ、鮃の昆布締め、イカの昆布締め、しめ鯖を注文。これから冬にかけてのカワハギは、肝と一緒にいただくともう口の中で肝の旨みと身のさっぱりした味わいが見事に絡まり合う。鮃もこれから寒くなると美味しくなってくるが、この日頂いた昆布締めは締まり具合も脂ののり加減も文句なく、これこそ、という味。イカの昆布締めはイカの水分がしっかり抜けて旨みが凝縮され、そこに昆布の味と香りが乗り移る。しめ鯖は浅目の漬かり具合だが、その分鯖の身がとろりと溶けていく。こちらのお店の昆布締めはいつも種類がたくさんあって、生とは違う美味しさが味わえる。キスの湯引きと締めもの、鯛の昆布締め、煮アサリ、アナゴの白焼きと定番ものも次々に注文。お腹を空かせて来てよかった。ピークからは落ちてきているというアナゴだったが、それでもプリプリの身に炙られてほのかに温かい加減、噛むと「プツッ」と弾ける脂が何とも言えない。

「これを召し上がってみませんか」と若旦那から進めて頂いたのが小柱。確かに僕が食べることは少ないネタ。「日本一ですよこれは。こんな大きな小柱、ありません」という北海道野付産の小柱。確かにいわゆる「大星」の中のさらに上、親指ほどの大きさがある。軍艦にせず小柱のみを塩味でいただく。若旦那が見得を切っただけのことはある、フワ~っと口の中でほぐれていく小柱の身と、そこから滲み出てくる貝の旨み。独特の潮の香りも相まって、素晴らしい味わい。きりっと締まった身の弾力が素晴らしいアジを頂いてから、コハダ、鮃の昆布締め、アナゴの白焼きと炙りアナゴ、といつものように今日美味しいと思ったものをリピートしてから、最後にまたカワハギ。このカワハギは本当にもうなんというか、あればあっただけ食べたくなるというか、この冬の時期に訪れたならば絶対に外せない、余計な講釈も褒め言葉も解説もいらない、ただ無言で手を伸ばし、口に頬張り、ゆっくりと噛みしめて、口の中を魚の旨み一杯にして、喉を通す。幼稚な言い方かもしれないが、「胃が喜ぶ」お寿司。

今日もお腹いっぱい美味しいお寿司を堪能しました。ご主人、おかみさん、若旦那、ご馳走様でした!


(2015年12月19日訪問)

仕事で東京出張のついてに、後輩と忘年会代わりにお邪魔。この冬の時期は魚も脂がのってどれもおいしくなる。お寿司を味わうには絶好の時期である。いつものように皿盛りを握ってもらってからお好みのオーダー。

(お通し)アンキモ、トロ漬け炙り
山口・下関産のアンキモ。アンキモといえば茨城県?と思っていたのだが、「あの辺のはそれほどうまくないですよ」とあっさり却下されてしまう。とはいえ西のものというイメージが全くないアンキモ。言われるがまま食べたが、確かに旨い。1か月前に食べた青森産のアンキモよりも脂が乗り、それでいて臭みやしつこさは全くない。僅かの時期の差、産地の差でこれだけしっかり味が変わるから、魚は面白い。いつも注文するトロ漬け炙り、通称「橋本さん」は、今回は脂がたっぷり入って箸で触ると崩れてしまいそうなくらい柔らかい、スナズリの部位。文句なしにおいしい。脂の間に入ったしょうゆ味と、炙って活性化された脂の滲み出る旨み、これがおいしくないわけはない。後輩のビールはアンキモだけで1杯、トロ漬け炙りで1杯、あっという間に空になった。

(皿盛り)中トロ、金目鯛、赤身ヅケ、アジ、ウニ軍艦巻き、いくら、鉄火巻、コハダ、煮アナゴ、ホウボウ、卵焼き、(追加)トロ漬け炙り
いつもの皿盛り。丁寧に仕事されたネタの数々に、焼きたてが供されるおかみさん特製の卵焼き。おつまみでいただいたトロ漬け炙りはお寿司でも頂く。金目鯛は若旦那がお店に入るようになってから好んで使われているネタだが、脂が乗っているのに比較的さっぱりと頂くことができ、あまりほめたことはないが非常に仕上がりがよい。軍艦巻きのウニも一つ一つの粒がぴんと立ち、それでいて口の中でさらりととろけていく。

(追加のおつまみ)生牡蠣、焼き牡蠣
若旦那から「召し上がってみませんか」とのお誘い。これが出るときは間違いなく自信があるネタである。今回は焼き牡蠣。北海道・昆布森で獲れたものと聞く。普通の牡蠣の3倍はあろうかという大きさ。一つは生で、一つは炙って、後輩とシェア。実を言うと生牡蠣は好んで食することは全くなく、むしろ避けている食材なのだが、この生牡蠣はケタが違った。「海のミルク」というだけのことはあるクリーミーな食感、潮の香り漂う濃厚な味、火を通すと独特の香りが取れ、さらに貝類独特の旨みが活性化される。サイズといい味といい、「これ以上のものはないと思います」というお話の通り、素晴らしい体験だった。

(お好み握り・その1)カワハギ肝乗せ、ウニ塩握り、〆キス、イカ昆布締め、鯛昆布締め、アナゴ白焼き
定番ネタ。カワハギ肝乗せは冬の定番である。11月にも食べて最高だったネタだが、1か月たって更に脂が乗り、カワハギの身のさらり、しこりとした白身の旨みに、肝のいやらしさのかけらもない純粋な脂の旨みが重なる。これ以上の冬のネタはたぶんないと断言できる。あれば必ず食べる。それだけ旨い。イカの昆布締めには強めに昆布の味が入り、イカの身が鼈甲色の艶をまとっている。水分が旨みに置き換わり濃縮されたイカの旨みをしっかりと引き出してがっちりと逃がさない昆布の味。しょうゆをつける必要すらない、完璧な味の仕上がり。鯛の昆布締めは締めてあるにもかかわらず脂がちゃんと残っている。もとの鯛の素性もよかったのだろう。〆キスはこのお店のネタのなかで最も女性的な姿をしていると個人的には思っている。さっと酢で締めたキスのさっぱりした、しかししっかりと土台の出来ている味は、他のお店にもあるようで、ない。皿盛りに入っていたウニが非常においしかったので、海苔なしの塩握りで。こちらの方がウニの味を純粋に味わえるかもしれないが、ウニと海苔は味の相性も良いので、どちらがいいかは好みの問題だろう。アナゴの白焼きはさっぱりと塩味で。炙られてプツプツと口の中で音を立てて始める脂たっぷりのアナゴは、このお店の看板ネタの一つ。プリプリの身、本当に口の中でプツッと音がする炙り加減、そこからジワリと出てくる脂と、最後に残るアナゴの旨み。それを最後まで逃さないシャリ。これを食べずして、何を食べる。

(お好み握り・その2)しめ鯖、煮アサリ、白子塩炙り、活き車海老、赤貝
しめ鯖と煮アサリは私が、白子塩炙り、活き車海老、赤貝は連れが食べる。もともと光り物が好きで鯖が好きな私はしめ鯖には本当に目がなく、ひと腹でも食べたくなるのだが、この日のしめ鯖は脂ののり加減、少し強めの締め具合が抜群に良く、口の中にいつまでも鯖の濃厚なうまみが広がっていた。煮アサリは軍艦の上にこぼれんばかりに盛られたアサリと、甘めの煮ツメ。甘辛いたれの味が、少し若いアサリの味を見事にまとめる。白子の塩炙りは軍艦で。この時期に旨くなるタラの白子を炙って旨みを引き出して、さっぱり塩味で。連れの熱燗がなくなるのもよくわかる味である。活き車海老も半生程度に火を入れ、赤いだんだら模様がくっきり浮かび上がる。白く火が通った身と、半生の透明な部分の美しさ。頭はこんがりと焼かれ、香ばしい匂いに食欲がそそられる。赤貝は肉厚の閖上産。ひもで1貫、身肉で1貫。きゅっと盛り上がる身肉に、相性抜群のきゅうりと合わせた赤貝のひも。貝類大好きの連れは何も言わずに手を伸ばして、あまりの美味しさにしばらく瞑目していた。

最後にいつものようにカワハギとアナゴの白焼きをもう一度頼んで、今年の食べ納め。他のお客様の筋もよく、ご主人、若旦那、おかみさんの接客も分け隔てがなく、本当に気持ちが良い。寿司屋としては考えられないほど、お勘定も安い。何より、いつ来ても安心して飲み食いができる寿司屋があるというのは、オトナとしては至高の喜びである。ご主人、おかみさん、若旦那、今年も1年間、ありがとうございました。ご馳走様でした!


(2016年8月21日訪問)

ゲリラ豪雨と台風の合間の好天。友人とお邪魔。実は今年最初の訪問。久しぶりだったこともあっていろいろ頼む。いつものようにお任せの皿盛りからお好みへの流れ。

(お通し)白海老、トロ漬け炙り、鰹塩たたき
富山湾の宝石と呼ばれる白海老のお刺身。海老なのだが一般的な海老の味はしない。つるっとしたのど越しというか、舌触りを味わう感じ。トロ漬け炙りはこちらにお邪魔した時の定番。若旦那が「ミナミマグロですが、本当にいい状態のマグロです」と自賛されるのがわかる、最高の状態。脂の入り具合、身肉のぎゅっと締まった感じ、口に入れるとふわっと香る芳香。そこに秘伝のヅケの味と、炙られたことでさらにじわっと滲み出る上質の脂、たっぷり乗せられた山葵の辛みが口のなかでとろける。
この時期に良いものが出る鰹もたたきでいただく。たたきと言ってもポン酢だれではなく、たっぷりの芽ねぎと茗荷、粗塩でいただく、塩たたき。脂のある鰹に、芽ねぎと茗荷のさっぱりした後味と、魚の味を邪魔しないお塩の加減が絶品。鰹のいいものがある時期しか食べられないので、これがあるとラッキーである。当然、友人のビールはここで1杯目が無くなり、2杯目へ。

(皿盛り)中トロ、赤身ヅケ、鰯、コハダ、ハタ、うに塩握り、いくら、鉄火巻、煮アナゴ、カンパチ、卵焼き(追加)トロ漬け炙り
恒例の皿盛りに、おかみさんから出される焼きたての卵焼き。おつまみのトロ漬け炙り、通称「橋本さん」はもちろん握りでも頂く。夏の盛りの時期で魚の難しい時期かなとも思っていたが、皿盛りの中のコハダはシンコとコハダの中間地点くらいの大きさで脂の加減と身肉のさっぱりした味が両方味わえる最高の状態だったし、鰯は脂がたっぷりとのって思わず微笑んでしまうほどのうまさ。ハタのさっぱりした、しかししこしことした白身の歯触りに、カンパチのこりっとした歯ごたえと脂の旨み。うにも軍艦巻きではなく塩握りで出され、うっすら白い筋が浮かぶ最高の脂ののり具合。

(お好み握り・その1)サザエ、タイラ貝、煮あさり、キス湯引き、〆キス
サザエとタイラ貝は貝好きの友人が、煮アサリ、キス2種は私が頂く。サザエは大変大振りなもので4貫分が取れ、しかも肝や身の一部は後から壺焼きになって出てきた。こりこりした歯触りと、食べていないのに漂ってくる磯の香りというか、潮の香りというか、これは好きな人にはたまらないだろう。壺焼きの殻に残ったスープをすすっているときの友人の顔は恍惚の人そのものだった。タイラ貝は生でも火を通しても行けるようだったが、友人のチョイスは生の塩握り。なまめかしい感じの白い肌にしゃきしゃき、さっくりした潔い歯触り。夏によく合う涼しげな握りだった。煮アサリは甘く煮込まれたツメの味と共にアサリのシンプルなうまみが口の中に広がる。キスは夏のこの時期がとりわけ、うまい。湯引きにして皮目の脂の味を引っ張り出した握りに、軽く酢で締めてさっぱり感を強調した握り。どちらも上質で肉厚の身から噛むほどに滲み出る旨みが、たまらない。いつの間にか友人は焼酎に変更。

(お好み握り・その2)昆布締め オニカサゴ、鯛、ヒラメ、ハタ、(・・・・・・)
昆布締め大好きな私が注文。実は5種類あった。不覚にももう一つが何だったかを忘れてしまった。どれも昆布で締められることで生の時よりも歯ごたえと旨みがぐっと増し、そこに昆布の味が入り込んで生とは異なる重層的で複雑な味を醸す。締め加減、寝かせ加減も完璧だった。オニカサゴとハタをおかわり。あと1種類、なんだったかなあ。

(お好み握り・その3)アナゴ白焼き 焼き蛤
ここに来たからには絶対に外せないもの(と言っているネタが多すぎて困るのだが)、それはアナゴ。ふんわりした煮アナゴももちろんたまらなく旨い。だが、脂が適度に落ちてさっぱり、プリプリのアナゴの白焼き。このうまさは他では味わえない。もちろんおかわりして最後の1貫にする。食べながらつけ台を眺めていると、煮蛤に仕込むという蛤を剥いているところ。煮るには時間が足りないので、焼いて召し上がってみますか?という若旦那の提案に勿論乗る。醤油の香りが漂う、肉厚の蛤の貝の旨み。頂いておいてよかった。

お腹いっぱいに季節のネタの味と香りを楽しみ、御主人やおかみさん、若旦那とのトークも楽しみ、お勘定もいつも通り。最高のネタを丁寧な技術で仕上げる、最高のお寿司。今回も御馳走様でした!


(2016年10月16日訪問)

六本木のスヌーピーミュージアムと、サントリー美術館での鈴木其一展、京橋の画廊で政治風刺コントの劇団『ザ・ニュースペーパー』の福本ヒデさんの個展を見た後でお邪魔。柄にもなく文化芸術の秋を堪能した後での美味しいお寿司。想像するだけで喉が鳴る。

(お通し)自家製新イクラの手巻き寿司
仕込んだばかりという新イクラがたっぷりと盛られた一口サイズの巻きずし。魚卵独特のプチプチした感触に、醤油味が広がる。冷凍物や季節外れとは全く違う、皮が軟らかい新イクラでしか味わえない脂っぽくもなく臭みも全くないイクラの味は、若いのに美味しい。

(皿盛り)中トロ、真鯛、赤身ヅケ、白子炙り、うに、コハダ、アジ、赤むつ炙り、煮アナゴ、かんぴょう巻、卵焼き(追加)トロ漬け炙り
恒例の皿盛り。冬が近くなってきたなと感じる白子の炙りが入っていた。ちょっと意外だったのは真鯛。関東には良い鯛がないから握らない、という頑ななお店もあるほど、東京のお寿司屋さんで美味しい鯛を頂くのは珍しいのだけれど、今回頂いた真鯛は正真正銘の明石のもので、身の締まり加減も最高のタイミング。真鯛独特の、すっきりと鼻に抜ける香り、噛み締めるとグッと残る歯ごたえにさらっとした舌触りと、しっかりとのった脂にさっぱりした後味。ここ数年頂いたことがないほどに最高の真鯛だった。赤身ヅケのマグロ独特の性質の良い渋み、秋を迎えて脂が乗ってきたコハダのちょっと強めの締め具合、焼きたてがいただけるおかみさん手作りの卵焼き。そして今更コメントの必要がないトロ漬け炙り、「橋本さん」の握り。いついただいても目も舌も満足できる皿盛りだが、こちらのお寿司からはいつも季節が感じられる。それが嬉しい。

(お好み握り・その1)さんま、真ダコ、クロムツ炙り、煮アサリ、〆きす
六本木と銀座を歩いておなかも空いていたのでたくさんいただく。さんまは根室の沖で取れたという脂の乗ったもので、脂肪の白い層がくっきりと見えていた。にもかかわらず、脂っぽさやしつこさは何もなく青魚独特のさっぱり感が残る。真ダコは地物で噛むごとにじわじわと中から出てくる旨みと、強めの歯ごたえがたまらない。皿盛りに入っている赤むつとはもちろん違うクロムツの炙りは、赤むつよりも脂ばないがその分磯の魚独特の香りと味わいがある。粒の大きなアサリは軍艦巻きで。わさびの利いた軍艦巻きに甘辛く煮られたアサリは鉄板の組み合わせ。〆きすもいつも頂く恒例の品。他のどの魚とも比較のできない、キスの味としか言えない、さっぱりしているのに舌に残る上品な味と香りは、こちらのお店でしか味わえない。

(お好み握り・その2)昆布締め ヒラメ、真鯛、いか、えんがわ
昆布締め大好きの私は4種類頂く。僅かに身の色が変わるまで昆布で締められ、昆布の味と香りを移して生とは全く異なる複雑で重層的な味わいを醸し出す。生の握りがオペラのソロなら、昆布締めはオーケストラ、と言ったところか。4種類の中で一番脂が乗っていたのはヒラメ。生のヒラメがなかったので比較は難しいが、歯ごたえが柔らかくなる代わりに昆布の味が乗って噛むことに魚の味と昆布の味が口の中で混じり合う。真鯛は程よい脂の乗りに、程よい締め加減。いかは前の2種類よりもほんのわずかに強めに締められ、噛むほどに昆布の味といかの味がじっくりと出てくる。昆布締めをあまり食べない人も多いがこちらの昆布締めは種類も豊富で締め加減も完璧。いついただいても楽しめる。えんがわの昆布締めはもはや芸術の域。

(お好み握り・その3)真鯛、穴子白焼き、カワハギ肝乗せ
この日一番おいしかった真鯛をもう一貫、今度は腹の少し脂の乗った部分を頂く。腹の部位なのでもともとしこしこと歯ごたえの良い部分だが、身の加減も良かったのかさらに歯ごたえが良くなっており、そこから脂がぐっと出てくる。もちろん真鯛のすっきりした旨みにも溢れており、この部位がいただけたのは幸せだと思う。アナゴの白焼きは外せないひと品。炙られてほかほかの穴子を噛むと、本当に「プツッ!」と音がする白焼きの穴子に、ふつふつとわき出る脂。これをお塩でいただくと、いつもウフフ、と笑いがこぼれてしまう。「うまい」と言わせるお寿司はもちろんいっぱいあるけれど、食べた瞬間に笑顔が出るお寿司はなかなかないのではあるまいか。さて、この日お邪魔してラッキーだったのは冬のお寿司の王様(と勝手に思っている)カワハギの肝乗せがあったこと。カワハギの身それ自体も、独特のサクサクした歯触りと旨みがあってもちろん美味しいのだが、そこに肝が乗るともう言葉がなくなる。真冬の時期ほど、肝にはまだ脂が乗っていないのだが、若いなら若いなりに、脂が乗っていない時期にしか味わえない肝の旨みが味わえる。少しの時期の差で劇的に味が変わる、魚は不思議なもんだなあと食べながら思う。

いつものようにお腹いっぱい美味しいお寿司を頂いて、御主人や若旦那、おかみさんとのトークも楽しんで、身も心もお財布も大満足のひと時。もうちょっと冬が近づいた時にまた食べに伺いたい。ごちそうさまでした!

(2017年2月19日訪問)

今年初めてのお邪魔。出張のついでにうかがう。いつものようにトロ漬け炙り、「橋本さん」の握りだけ事前にオーダーし、後はいつものように皿盛りからお好みの流れ。季節が冬には少し遅い時期だったこともあり、カワハギがなかったのは痛恨だったが、逆に春のネタが入っていてそこは楽しかった。

(皿盛り)中トロ、ヒラメ、赤身漬け、いくら、うに、コハダ、ブリ、サヨリ、煮アナゴ、かんぴょう巻、卵焼き、トロ漬け炙り

見るからに美しい皿盛り。北陸出身の僕だがこの日いただいたブリは、脂の乗りはピークからは少し落ちているかなとは思ったがその分魚の身の味をしっかりと味わえる。切り身も大振りで、口の中いっぱいにうまみが広がる。春の味の代表格のサヨリは身も十分に厚みがあり、さっぱりした味なのにうまみは凝縮されている。コハダは逆にしっかりと脂がのっておりシンコの爽やかさとは対極をなす味。どちらが好きかと言われたらこの脂の乗ったコハダのほうが僕は好きかな。おかみさん自家製のホカホカ焼きたての卵焼きに、脂が乗ったトロを漬けにしてから軽く炙り芽ネギとたっぷりのワサビとともに頂くトロ漬け炙り。いつ頂いても、たまりません。

(お好みその1)クエ、キス湯引き、〆キス、煮あさり、金目鯛

白身が好きな私はまずはクエから。九州では冬の王様。3日ほど寝かせた身ということだったが、熟成されて出てくる魚の味に、まだ残る歯触りが心地よい。好物のキスは酢締めと湯引きの両方。〆られてさっぱり感を強調したものがよいか、湯引きにして皮目の脂が活性化されたうまみを味わうのがよいか。私のお勧めは…両方(笑)。春になるとうまくなる煮あさりは軍艦にたっぷり盛られ、つめの濃い味に負けないしっかりした貝の味が口に広がる。金目鯛は腹目の一番脂の乗ったところを炙ってもらい塩で。こちらの握りはワサビでいただくか、塩でいただくかを聞いてもらえるので、同じねたでも味わい方を変えて食べることができる。脂がじわっと滲み出る金目鯛は塩で食べるとさっぱりした感じになる。

(お好みその2)昆布締め鯛、昆布締めイカ、アナゴ白焼き、ヒラメ、サヨリ、コハダ

これまた大好きな昆布締め。この日は鯛とイカ。鼈甲色に染まったちょうど良い漬かり加減で、魚の味に昆布の味と香りが染み渡る。アナゴの白焼きは何がどうあっても外せない。炙られホカホカ、ぷつっとはじける歯ごたえに、さっぱりした塩味が加わりもはや芸術の域の一貫。皿盛りにも入っていて、おいしいなと思ったヒラメ、サヨリ、コハダを追加。サヨリは今度はワサビではなく生姜でいただいたが、春の淡い味のサヨリには生姜のすっきりした辛みがよくあっていた。

(お好みその3)縁側炙り、金目鯛、昆布締め鯛、アナゴ白焼き

最後に脂の乗ったもので締めたいなと思ったので、金目鯛の炙りと、あとは鉄板のアナゴの白焼き、漬かり加減が私好みだった鯛の昆布締めを注文。その前に、「ラスト前の1貫、何がいいですかねぇ」と若旦那に相談。しばらく考えていた若旦那が出してこられたのはなんとヒラメの縁側。これをいただくときはいつも緊張する。たっぷりの縁側を炙ってうまみと脂を活性化させ、ワサビを効かせて握れば、頬張った時にはもう言葉はない。ただ眼を閉じ、咀嚼し、飲み込んで、おいしい!の一言。お隣にいたお客様から「それなんですか?」と聞かれたが答えるのを憚られた(苦笑)。金目鯛はもう一度炙ってもらい塩で、鯛の昆布締めとアナゴの白焼きは定法通りに頂く。

昨今はいくつものお寿司屋さんが生まれ、雑誌などにも特集されそれぞれにいろいろなお寿司を出しておられるが、浮気せずに「おいしいお寿司が食べたかったら、ここ!」といえるお寿司屋さんは果たして何軒あるのだろうか。頑固なまでに古典的な仕込を貫く光り物や白身、昆布締めもあれば、現代的なアナゴの白焼きトロ漬けの炙りなどもあり、しっかりと季節感を味わえるネタの数々がそろい、しかもご主人、おかみさん、若旦那の接客も気持ちよく、お財布にもそれほど厳しくない。こんなお寿司屋さんはあるようでないと思う。肩ひじ張らずに暖簾をくぐり、「ああ、おいしかった。また来たいな」と思いながらお勘定を済ませられるお店。4月にまた来ます、ご馳走様でした!

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店名
名登利寿司(なとりずし)
ジャンル 寿司
予約・
お問い合わせ

03-3361-2362

予約可否

完全予約制

住所

東京都中野区東中野5-17-7

交通手段

東京メトロ東西線【落合駅】徒歩3分
JR中央線(各駅停車)【東中野駅】東口 徒歩5分
都営地下鉄大江戸線【東中野駅】徒歩9分

落合駅から252m

営業時間
  • 月・木・金・土・日

    • 18:00 - 22:00
  • 火・水

    • 定休日

営業時間・定休日は変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。

予算

¥15,000~¥19,999

予算(口コミ集計)
¥15,000~¥19,999

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支払い方法

カード可

(JCB、AMEX、Diners)

電子マネー不可

席・設備

席数

12席

(カウンター8テーブル1)

個室

貸切

禁煙・喫煙

全席禁煙

駐車場

徒歩3分以内にコイン・パーキングあり

空間・設備

カウンター席あり

メニュー

ドリンク

日本酒あり、焼酎あり、ワインあり

特徴・関連情報

利用シーン

知人・友人と

こんな時によく使われます。

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