自分が好きで美味しいと思うものだけを正々堂々出している感じ : ビートイート

凄い店に出会ってしまったというのが率直な食後感。

2016年3月開店。複数の媒体で「狩りをする女性」が営むカレー店との切り口で取り上げられていたのに興味が湧いての訪問。(いきなり脱線するが、狩りだけでなくクレー射撃もなさるようで、トイレにはクレー射撃の大会で入賞された賞状が飾られていた。)

店主は竹林久仁子様。ご自身が交通事故に遭われたのをキッカケにマクロビオティックを知り、食を見つめる過程で(なぜオーガニック野菜はあるのにオーガニックミートはないのか？)との思いから、狩猟免許と猟銃免許を取得し、自ら狩りに出るようになったそう。

文字情報から逞しくワイルドな女性を想像していたのだが、実際にお邪魔してみると、落ち着いた穏やかな感じの方。そのギャップにビックリ！

タイトルに記載した通りで、店主様自身が好きで、美味しいと思うものだけを正々堂々出していると感じた。(自然により近いものを摂ることが体にとっていい。)とのストレートでシンプルな信念と情熱が紡ぎ出す温度のある皿。

経営者気質とは真逆。算盤勘定は度外視された職人気質の方との印象。ラクして儲けたいといった世俗的な欲からは凄く遠いところにいる方のように思え、非常に好感を持った。

ご自身で狩りをしたジビエ系素材を使われるお店との先入観があったが、今回の品について言えば、一番興味のあった鹿のキーマはもちろんよかったのだが、むしろ全ての品がスパイスは爽やかで華やか、なのに軽やか。スープは滋味深く、塩梅もよく、提供温度もいい。全ての要素が素晴らしく、料理としての完成度の高さを感じざるをえなかった。

各品毎にスパイス使いや味わいにコントラストがあり、単独で食べて美味しいだけでなく、マゼマゼすると化学反応が起き、旨味やスパイスがハーモニーを奏でるのだ。まさに口福。一言も言葉を発することもないまま、陶然として夢中で完食。最初は各品を単独で味わい、半分位食べ進めたら、パパドを砕いてちらし、全体をマゼマゼするのがおススメの食べ方。

東京にありながら、その自由奔放さ、自らの信じる物への情熱、オリジナリティは、むしろ大阪のスパイスカレー店の店主様に通じるような気がした。その直感もあながち的外れではなく、2017年6月4日に大坂で開催されたカレーイベントに東京のカレー店として唯一参加されていた。(※)

(※)2017年6月4日(日)に大阪の「味園ユニバース」で開催された『口癖はカレー EpisodeⅣ ～A New HOPE～』に参加。
15店のカレー屋さんが前半(12:00〜15:30)、後半(16:00〜19:30)に分かれ、各8店舗ずつ出店。(当店のみ前後半とも出店。他店は前半、後半の何れかに出店。)
KALUTARA / ネパール＆インド料理 Manakamana / アジアごはんとスパイスカレー アドゥマン / ガネーシュN / NUWARA KADE / RODDA group / Rice＆Curry ラーマ / 移動式カレー屋 カチャロンカ / Curry＆Cafe Warung / Spices curry Synergy / Curry & Cafe 般ﾟ若 / アグニ / うれしい居酒屋 酒歌 / CURRY&COFEE Noshtam / beet eat

オジサンが行ったことがあるお店は当店、ガネーシュNさん(南森町)、ロッダグループさん(九条)、ラーマさん(但し移転前の西宮時代に訪問)の4店。

＜訪問記録＞
■日時:2017年8月6日20:45頃。
■場所：最寄駅は小田急線の喜多見。成城学園前の隣駅。狛江市に近いが住所は世田谷区。住民の方以外はわざわざ降りることはなさそう。個人的には親しい友人が喜多見に住んでいた1984年以来の喜多見駅下車。北口の正面からやや左手の道に突入→最初の角で左折→当店の店名の入った看板が目に入るので、その看板の脇の階段を下りる→2軒カラオケスナックが並び、当店はその奥。事前情報がなければ飛び込みで入ることはないであろう立地。

■お店の状況等
・カウンター7席のみの狭小店舗。
・営業日、営業時間は不定期。(ケータリングにより昼のみの営業となる等)
・FBには臨時休業等の営業情報が日々アップされるので、事前確認の上での訪問が吉。
・先客7名(男性3、女性4)、後客はなし。オジサンも入れると男女比はちょうど1:1。女性比率高し。
・20分程待って着席。店内に関西カレー本等、カレーに関わる複数の紙媒体が置かれていたので待ち時間は全く苦にならず。
・店主様1人で切盛り。調理、注文取り、給仕、会計等を全て1人でなさる。まさにスローフード。時間にも心にも余裕を持って訪問されるのが吉。
・お話しする時間は全くなかったが、料理を頂くだけでカレーへの並々ならぬ情熱を感じた。お皿を通じて会話した感覚。

■頂いた品・味
出汁の良さ、過剰でない塩分、濃密でありながら濃すぎない油脂分とコク、具の素材の厳選感、酸味の使い方の巧みさ、華やかで爽やかなスパイス感等、あらゆる要素に思いが行き届いている品々。惜しみなく手をかけていることが伝わってきて、素直に感動してしまった。

・チキンカレー：バターチキンの人生最高記録を更新。バター、出汁、鶏肉が超絶美味。
・豆腐とインゲンの有機豆乳ヨーグルトカレー　
・エビとレモンカレー:レモンの酸味と海老の旨味の組合せが絶妙。
・豆のカレー。この品は何と混ぜても合う万能系。
・鹿肉のキーマカレー:噛むと味が出てくる。
・シークワーサーサンバル、副菜、ライタ、パパド、ライス。
会計2,400円。
(2017年8月17日時点：レビュー31件。3.74/マイレビュアー様3件。4.23）