緻密な完成度の高さで楽しませてくれる。 : セララバアド

橋本シェフは計算し尽くしたエンタテインメントを用意する。
その料理のプロセスを見ると、緻密で、正確。
その正確さの中で、楽しみの要素を表現してくる。

今まで、4回か訪問を繰り返しているが、
慣れてくると、橋本シェフの人懐っこさがまた楽しい。

僕らの訪問を楽しんでくれるかのような笑顔。
これが何よりのご馳走。

さて、セララバアドは一斉スタートするレストランで、
イノベーティブフュージョンというジャンルなのか、
とにかく、クリエイティブで目も楽しく、食感や、味がその食べ物というよりは飾り、オブジェのような見た目とのギャップが新鮮。その発想はいつも驚きに満ち溢れている。

緻密で仕事に妥協しないシェフが
その、オブジェを作り出す。
美味しそうとか、料理の種類とか、
一言で言い尽くせないものが多い。

メニューの名前は
イケバナとか
森の朝とか
オブジェとか
落葉の森とか
サルベージされた月とか
松ぼっくりとか…。

どうやってみんなを楽しませるかを考え抜き、
それを皿の上に表現する。

味はやはり、圧倒的な視覚ギャップが信条。
驚きと楽しさの中で食事の席が進み、
「おお、うま〜い！」
「まさかー！こんな味とはっ！」
と驚きで、その場は騒然となる。

アルコールも良いが
ノンアルコールのペアリングはとてもいい。
今まで飲んだことのない、
松の葉を使った飲み物にジュニパーベリーを浮かべた
ドリンクなども出てくるかなりの力作揃い。

スタッフのサービスの機敏さも素晴らしいし、
雰囲気はとても明るくてステキな印象のレストラン。

予約はとても難しいけれど、
取れたら絶対に外せないレストランである。
何にも優先して、訪問したい。

レストラン関係の人の中では知らぬ者のない
超有名レストランでもあり、
セララバアドを知らないと、
食のシーンの一幕をやはり語れないのではないだろうか。

春、夏、秋、冬と訪問したい。
エクスペリエンスレストラン！

まさにモダンガストロノミー。

セララバアドくんの出てくる「学者アラムハラドの見た着物」は確か未完のストーリー。

宮沢賢治の穏やかで、不思議な落ち着きを持った文体で、夢のような風景が描かれ、書きかけの途中である。

橋本シェフ、何を意味してこのセララバアドを店名にしたのか。その辺りの行間もとても一言では言い尽くせない切なさと、雰囲気に貢献する。

風景は提供するが、感じるのは自分次第。
それがセララバアドの楽しみ方なのだと思う。

筆舌に尽くしがたい料理の数々だった。

食の楽しさを追求し
食と言うものの遊びを究極まで探究してきた
橋本さんのノウハウのこのテーブルに集中して表現している。

えっ、これ何？
美しい。
見たことない。
面白い。
うまい。

一皿一皿に芸術品や面白さを縦横無尽に表現する。
ただ、面白く、おいしく、しかもくつろいだ時間を過ごす。
深く考えるものには深みを、
面白さを求めるものには面白さを
味覚を求めるものにはその味覚の探究をも提供する。

それがセララバアドだと感じた。

周りはすべて住宅街。しかも都内でも最高級の住宅地で
お金持ばかり住んでいるエリア。
その一軒がなんと素敵にノルウェーかフィンランドか？
とみ孫うばかりの落ち着いた雰囲気のままのレストランになっているのだ。
このロケーション、この空間は反則技と言うほどすごい。

それからセララバアドと言う名称そのものがイカシテいる。
なぜ、あの宮沢賢治の未完の小説「アラムハラドの見た着物」の
セララバアドなんだと混乱する頭で訪問してしまう。

そういうことで、訪問する前から哲学的な人なんだろうなと思っていたが
僕から見ると表現をご自分でするというより、すべてこの一皿一皿の積み重ねに
表現自体が極めて哲学的に行われているようで
受け取るこちらの感性を自由に解放すると
自分がどう感じるかが最大限になる。

閉じたうがった見方ではその表現を充分に受け取れないのではないかと思う。

味の選び方も実に繊細で、
この繊細な表現をやり切るのは本当にすごい。
この点では表現しきれないものを表現しようとしている求道者のよう。

もちろん、味のセンスも抜群で、
シンプルなイベリコ豚のグリルにその究極系を見た。
付け合わせがまた優れており
イベリコ豚に芳醇な森の恵みである栗や胡桃を合わせてくるのだ。
イベリコの身となった木の実を…。

厨房内はまさにラボ的で、料理人と言うよりは
化学者、哲学者、小説家というような橋本氏。

必ず、未完の小説「学者アラムハラドの見た着物」を読んで訪問するといい。
その味わいが深くなる。

ちなみに、僕のリアルの友人、
ジェームズ大久保ちゃまの案内にて訪問。
しかし、大久保ちゃんの設定する店は外したことがないし
ド級の知識が料理をリードする店がほとんど。

二度、三度といくともっとこの面白さを味わいつくせる。
４月某日に貸し切らせていただきました。

最後に大久保さんに一言！
僕の実名をレビュー内で書くのはお願いだからやめてね。