瞬間燻製のサーモン、素晴らしい！ : シャントレル

今年一番の店に当たった、というか行ってきた。代々木八幡のシャントレル。
店は代々木八幡が最寄りだが、我々は代々木上原から歩いたので、10分位だった。
気候が良い時期に家人とゆったりと歩く10分は悪くない。
ドアを開けて店内に入ると、右手がテーブル席で、入り口から直ぐの所からカウンター席になっている。
カウンターの奥の前がオープンキッチンだが、キチンの方が高いので客が見下ろされている様になる。
でも、この方がシェフの動きが良く分かって、私の様な者には嬉しい。
連休中だったせいか客は我々の他に2組。お陰でシェフの真ん前の席に座れた。

ランチのコースは¥3,600、¥5,500、それにシェフお任せの¥7,000の3種類。
シャンパーニュ、ルノーブル・ＮＶブリュット・キュヴェ・アンタンスを飲みながら、
中田シェフとラ・ブランシュや、田代門下生のクーリルージュ石川シェフの話をしていると、
我々がフレンチ好きと思った様で、「折角なのでシェフお任せのコースにしませんか。素材も料理も夜と一緒です」
と勧められた。それを断る謂れも無いので、家人に確認しお願いした。
メインだけは確認したが、シャラン産の窒息鴨だそうで、肉を見せてくれた。
熟成の良さが判るいい色合いであった。

ワインを選ぼうとリストを見ていたが、「コースだてが分からないからどうしたもんかな〜」と家人に言うと、
中田シェフが「少しいいワインですがお任せ戴けますか」と言う。これも勿論お任せした。
これが料理もワインも大正解。料理は美味いは、ワインはいける。久々に大満足！
その証拠に、あっという間に勧められた白を飲み干し、もう1本白を空け、
メインの鴨にはグラスの赤を飲む始末。流石の私も帰りに転けた様だが、翌日全く覚えていなかった(笑)。

さて、肝心の料理だが以下が内容と感想である。

キノコのクロックムッシュ　豚肉のリエット
アミューズから茸が入ったものが供された。シェフの茸に対する思い入れがら感じられる。
クロックムッシュというのが、フランス在住経験者には嬉しい。
豚肉のリエットはレストラン アラジンのものに似ている。美味しいのは言うまでもない。

キノコのお茶
なんでここでコヒーが出てくるの？と思いきや、茸のお茶がだそう。
シェフはお茶と言っていたが、どう見ても見た目はコーヒー。
実は、シェフが修行先で師匠のジャック・マルコンから教わった茸のスープ。
コンソメベースに茸を使っている。コンソメが出しゃばらないので茸の旨味が前面に出ていて良い。
コンソメに茸エキスだから味は保証付。

鰹のブルスケッタ
シンプルなブルスケッタだ。それ故、鰹の美味さが際立つ。鮮度、味ともに申し分ない。
胡椒、オリーブ、新玉ねぎ、アイオリソース、バジルが使われている。
それぞれの加減、量が適切なのが、シェフの繊細さを物語っている。

シェフが勧めてくれた白ワインはコート・ド・ボーヌのドメーヌ・シャンタル・レスキュール 2010
クロ・デ・トプ・ピゾ。メインまでは海の幸を使った料理がおおいのでそれに合わせて、
ということだったが、確かに塩分、ミネラルが感じられ、魚系と良く合う。

姫帆立の香草焼き
姫帆立にオリーブと香草をたっぷりと使い、オーブンで焼き上げた料理である。
よくある組み合わせだが、旨いのは確かだ。
貝を食べた後に残った香草ソースをパンですくい口に運ぶ。これが旨い！
オリーブで油ぽくなった口中を白ワインで洗う幸せ。

新玉ねぎのムース雲丹添え トマトのジュレ
トマトのジュレは透明で、トマトのジュースを時間をかけて漉して作っている。
新玉ねぎのムーは甘さが足りない感がある。今回、これが一番印象が薄かった。
トマトのジュレは、確かに透明なのにトマトの味がするので、意表を突かれる人もいるかもしれない。
が、私は、以前に和食で、フレンチで、お目にかかっているから、新鮮味は感じなかった。

この辺だったと思うが1本目の白が空き、2本目もシェフに任せて白を開ける。
彼の選択は、ピュイィ フュイッセ ヴィエイユ ヴィーニュ 2010ドメーヌ デローム・エ・フィス。
此方の方が酸が少し強めの感があるが、バランスは悪くない。

瞬間燻製のサーモン 白アスパラ 日向夏ソース
此方のスペシャリテで、この日のハイライト。
シェフは「この瞬間燻製のサーモンで世に出た」と言っていたが、確かに美味。
燻製はごく僅かで、仄かに香る燻製の匂いは、サーモンを口元に近ずけないと分からない。
ミキュイと言う言葉が浮かんだか、ミキュイより生に近いだろう。
しっとりとした食感、適度に上品な脂がのったサーモンの極上の味。日向夏のサッパリとしたソース。
全てがバランスよく組み合わさる。これは素晴らしい！スペシャリテの名に恥じない逸品。
お皿に仲良く並んでいるホワイトアスパラも上質で、大変美味しい。勿論、サーモンとも非常に良く合う。

コヤリイカとフルーツトマト
コヤリイカの中にエンペラを入れソテーしフルーツトマトをあしらった一品。
わらびが添えてあるが、フルーツトマトの甘味とのコントラストと狙ったのだろう。
しかし、わらびの苦味がかなり強烈で、バランスが上手く取れていない感がある。
一方、添え物の木の芽が香りを主張し、良いアクセントとなっていたのに感心する。

魚介とグリンピースのポタージュ
際巻き海老と帆立とグリンピースを使ったポタージュ。空豆も入っている。
優しい味でヤリイカの蕨の苦味と好対照で、ほっとする一品。一息つける。
この辺でお腹は出来上がり、同時に飲み過ぎで味の記憶が不確かになってきている（笑）。

フランス　シャラン産窒息鴨のソテー
鴨肉の熟成は程よく、丁度食べ頃であった。火入れも素晴らしい。
赤ワインベースのソースも美味しいが、何と言っても、表面に振られている胡椒を始めとした香草がいい。
鰹のブルスケッタでもその繊細な使い方で感心したが、それがここでも発揮されている。

日本のグレープフルーツのスフレ
爽やかな味のスフレで、鴨の後のデザートとしてはピッタリである。
日本のグレープフルーツって何だろうと思いながら食べたが、訊くのを忘れた。
相当酔っぱらっている証である（笑）。

ショコラテリーヌ
ショコラはテリーヌ仕立てで、ネットリとしているがスムースな舌触りを楽しめる。
これ私の好みなので、コメントしておく。

久々に高揚感を覚えるフレンチであった。あまりに好みだったので、店を出る前に次回の予約をした。
でも連れてこようとした知人の都合が悪く、後でキャンセルしたのはご愛嬌（笑）。
中田オーナーシェフは渋谷のラブランシュに入店し巨匠田代シェフの下で修行。
きっと若く厳しかった田代さんに相当鍛えられたのだろう。
その後フランスのリヨンから100ｋｍ離れたオーヴェルニュ地方・サンボネ・ル・フロワ村にある、
茸料理で有名な３星オーベルジュのオーナーシェフ、レジス・マルコンの下で修行し帰国。
原宿のラルテミスのシェフを経て、2011年にこの店をオープンした。

私は、何で今迄来なかったのだろうか、という感が強い。
私の好きなカウンターだし、料理は旨いし、中田シェフとの会話も愉しい。
それに週末はランチもやっている。次回も間をあけず来たいという感が強い店である。