｢孤高｣の名に相応しい絶品の｢煮干そば｣ : 支那そば 孤高

兼ねてよりBMしていた八幡山にある｢支那そば
孤高｣に土曜の夜、訪問してきました。

｢支那そば孤高｣の菊地店主は、先日再訪した
｢らぁ麺すぎ本｣の杉本店主同様、佐野実氏の愛
弟子であり、生前の佐野氏のブログによれば、
3年間佐野氏のもとで修行され、その後、静岡の
三島で｢支那そば毎度！｣として8年間営業された
が繁盛するまでには至らず、心機一転東京の八
幡山に現在の｢支那そば孤高｣をオープンしたと
のこと…… それは2014年1月…… 奇しくもその
1ヶ月前に｢らぁ麺すぎ本｣が鷺ノ宮にオープン
したこともあり、佐野実氏はこの両名の名をあ
げ、自身のブログでこう締めくくっている。

｢・・弟子が戦っているかと思うと、俺も頑張れ
る。｣………この4ヶ月後に佐野実氏は志し半ばに
して他界された。

この日食べ終えて思ったことは、支那そばや伝
統の味は杉本氏と菊地氏によって確実に受け継
がれているなぁと感じた一方で、支那そばや本
店の味を忠実にラーメンで表現し、更に磨きを
かけている杉本氏の店舗の屋号には｢支那そば｣
の冠を掲げず、かたや、支那そばや伝統の味を
引き継ぎつつも、むしろ独自の高みを目指して
いる菊地氏の店舗には｢支那そば｣を冠にしてい
るこのギャップが私には不思議に感じました。

さて、お店は京王線の八幡山駅改札を出て南側
の方向に徒歩2分ほどの閑静な場所にあり、お
店に到着したのは夜の部オープン3分前でした
が、先客はなく後客は5名で地元のご夫婦一組
とやはり地元の親子連れで、地元に密着したラ
ーメン店であるように感じました。

開店時間の17時半ジャストに女性スタッフさん
から中へどうぞ！と誘導されて入店すると、厨
房内は菊地店主お一人のオペ……

菊地店主の第一印象は、挨拶が丁寧で実直なお
方だとお見受けしましたが、どことなく美味し
くても美味しかったと素直に言えない空気があ
って、これはとかく店主との相性によって変わ
るものだが個人的には息苦しさを感じました。
ただ、見方を変えれば、厨房を挟んでいい緊張
感があったと言えなくもない。

また、店内はカウンター席が10席のみだが、
広々として新店のような真新しさと清潔感に溢
れ、余計なものは一切なく和の佇まいを感じさ
せ、厨房内も整然としている。

店内券売機でまずはメニューを確認すると、基
本のラーメンメニューは、｢醤油｣と｢潮｣の2種
で、他に限定の｢煮干そば｣と｢冷やし中華そば｣
があるが、メニュー構成は実にシンプルである

単品メニューもトッピング類、ご飯類はあるも
のの支那そばやの象徴でもあるワンタンはメニ
ューに無い。

この日は限定の｢煮干そば｣¥850の食券を購入し
菊地店主さんに食券をまずお渡しし、空いてい
る席に座り、お水はセルフなので取りに行こう
としたら、女性スタッフさんが気を利かして、
お水を持って来て頂けました。水と言えば、説
明書きによると、こちらで使用する水はＲＯ水
だそうで、不純物の無い純水と言われているが
一般的な天然水とは違います。

このＲＯ水同様に、｢支那そば 孤高｣では化学
調味料を一切使用せず、体に優しいラーメンを
提供するという明確な方針があって、それは卓
上に調味料が置かれていないことにも如実に表
れているように思うが、調味料を置かないこと
はそれだけラーメンの味にも絶対の自信がある
からに他ならない。説明書きをよく見ると、素
材一つ一つにもかなり拘りがあって、これは佐
野実氏にも通じる意識の高さが伺えます。

暫くして｢煮干そば｣が菊地店主から手渡されま
した。ラーメン鉢は｢有田焼｣とのことで、手に
持つ瞬間から何故か緊張感が走ります。(笑)

外観すると、スープは透明度の高い淡麗な醤油
ベースで、具のチャーシューは2枚、穂先メン
マ、海苔、刻みネギ、と至ってシンプルな構成

まずはスープから頂くと、最初からキレのある
白口と思われる片口鰯の出汁感が半端無い！、
エグミも雑味も無い上品な味わいながら自称ニ
ボラーの私にも笑みがこぼれるほどに素晴らし
い味わいで正直に言えば、ここまで素晴らしい
煮干出汁だとは想定外でした。

これは大量の煮干から水出しでしっかり出汁を
取っていることがヒシヒシと伝わってきます。
そこに潤目鰯の削り節も合わせていると説明が
あったように記憶していますが、淡麗な煮干で
これ程美味しい煮干スープに出会えるとは高い
電車賃を払って来た甲斐がありました。

また、煮干出汁に合わさるカエシの生醤油が仄
かな熟成した甘みと口あたりの柔らかさ、そし
て上品でコクの深い味わいが素晴らしく、この
カエシと煮干しの旨味が一つとなったような、
正しく｢孤高｣ならではの至高な味わいに感じま
すが、そこにはもちろん鶏ガラなど動物系の厚
みのあるスープや鶏油も合わさり、全てに一体
感のある味わいで、最後の一滴までその美味し
いスープを堪能できました。

そのスープに合わせる麺は、自家製全粒粉の中
細ストレート麺……｢春よ恋｣、｢きたほなみ｣と
いった銘柄を中心に国内産７種の小麦をブレン
ドし、鹹水は天然の内モンゴル産……と聞くと、
佐野氏が拘っていた素材とも被るのだが、そこ
に地鶏卵も使用して製麺した麺は、しなやかに
して風味が抜群によく、喉ごしも素晴らしい。
また、淡麗なスープにもよく合います。

｢支那そばや本店｣、｢らぁ麺すぎ本｣とも共通す
るこの麺の美味しさは、支那そばや伝統の麺で
あり、佐野氏の魂が宿っているようにさえ感じ
てしまう。かつて佐野氏は、｢麺は男、スープ
は女｣という言葉をよく使われていたが、私には
この奥ゆかしい滑らかで風味豊かな麺は日本女
性の象徴にすら感じ、キリッとして奥行きのあ
る深い味わいのするスープは男性的にも感じた
が、感じ方や物の見方は人それぞれである。

具のチャーシューは、低温調理のレアチャーシ
ューが流行している現代のラーメン界の中にあ
っては珍しい、歯応えのある肉で豚はモモのよ
うにも感じるが、これは私のような昭和世代に
は懐かしくもあり支那そばのチャーシューと言
えばコレでしょ！、と思える1品で、その味は
ジューシーで肉そのものがほんと美味しかった

穂先メンマは、穂先は柔らかく太い部分はシャ
キッとした食感で、風味もよく美味しい1品だ。

ほどなく完食すると、｢いや～美味しかった！｣
と言いたかったが、言っても軽く受け流されそ
うな空気を感じとった私は、食べ終えて余韻に
浸ることなく、｢ごちそうさま！｣とだけ挨拶し
てお店を後にした。

最後に・・

｢孤高｣とは、辞書を紐解けば、｢1人かけはなれ
て、高い理想を持つこと｣とある。

菊地店主に相応しい屋号だと、食べ終えて沁々
そう思いました。

《味の評価》
・スープ◎☆
・麺◎
・チャーシュー◎
・他の具◯

《全体の評価》
・外観◎
・ボリューム◯

以上q