2度のキャンセルを乗り越えて久々の訪問！ : 川国風味小林

今回は、久々の訪問。実は、コロナ禍に見舞われてから、2度に渡ってお店側から予約をキャンセルされるという、なんとも巡り合わせの悪い経験をしてきたので、もしや今回もまた？、と感じる瞬間もあったのだが、なんとか予約当日のディナーが実現。このお店に初めて連れてきた親友も、とても満足してくれて、私としても大満足。交番横通りにあった四川料理の名店、萬来軒がクローズしてしまった今、千歳烏山界隈では、貴重な四川料理のお店。山椒好きの人には特にお勧め。

表の満席の掲示を確認して、店内に入るとまだ客がいない。「一番乗りかな」と言うと、店主から「今日は貸切です」の返し。なんと、いつもは3組で満席なのに、今日は私たち1組で満席の貸切状態に。理屈はよくわからないが、早い予約で料理内容が決まっていたから、という説明。料理には、2人以上でしか注文できない四川コースのディナーを注文してあった。他に誰もいないので、写真も撮り放題。大きな扇子の壁掛けや、貝殻装飾の衝立なども被写体に。肝心の料理はといえば、いつもアラカルトの単品で食べている時よりも、数段美味しい。単品は1皿ごとの量は多いので、コースにすると同じ料理が2分の１から3分の１程度の量になっていて、しかもそれを2人でシェアするから、1人が食べる量は、4分の１から6分の１程度まで少なくなっているはず。それなのに、単品を1人で食べる時よりも、全てが美味しく感じられる。コースでは、料理全体に、品物ごとの流れやアクセントがある。少量ずつ味わうそれぞれの料理に、リズムが生まれる。それが、それぞれの料理の味を、効果的に高めていく。特に印象に残ったのは、前菜プレートの中では、クラゲの頭、名古屋コーチン。クラゲは、頭の部分を食べるのは初めてで、ツルツルとして厚みのある食感が良い。名古屋コーチンは、1人で単品で食べた時は、冷製の鶏肉の食味に抵抗を感じたのだが、この日は暖かい四川風ソースがたっぷりと鶏肉を包み込んでいて、とても美味しかった。コースならではのフカヒレのスープも、フカヒレのゼラチン質がよく分かるくらいしっかりとしたフカヒレが入っていてる上に、蟹と貝柱の存在感もしっかりしていて美味。その他は、1人で食べたことのある料理ばかりなのだが、とにかく、どれもコースで食べる方が美味しく感じる。このお店は、コース料理で食べてこそ、その真価がわかるのだということが、よく分かった夜だった。

初訪問の前回、締めに日本式坦々麺を食べたのだが、その時から、こちらのお店の個性がより強く出ているであろう四川坦々麺に惹かれていた。そこで、あまり間をおかずに2度目のランチ。今回も、開店時間の12時に予約を入れる。前回同様、この日も、店先には満席の掲示。やはり、1人客の私以外は、夫婦らしきカップルが2組。合計5人の満席システムだ。今回もまた、単品の3品で攻める。私にとって、常に四川料理の指定席を占める、麻婆豆腐は確定として、1品目に小エビのチリソース煮、2品目に岩中豚の黒酢ソースがらめを、それぞれ選択。前者は、やはり四川料理の定番として、試しておくべきメニューと判断。後者は、この店の人気料理でもあり、自信作でもあるようなので、やはり試しておくべきと判断した。まずは、エビチリだが、辛さは控えめで爽やかさを演出する程度、味はいくつかの味が調和した、しばらく舌に乗せて味わっていたくなる味。一般的なエビチリよりも、はるかに美味だった。岩中豚は、まずその肉の大きさに驚く。骨付きスペアリブなので、もちろん、もっと大きな肉塊もありうるのだが、ここはステーキハウスではない。豚の角煮に使われる肉の厚切りに近いサイズで、一般的な豚の肉料理、例えばカレーの具材としての肉などと比較すると、何倍も大きく厚みのある四角い肉塊。それが、四つも入っている。やはり、2人でシェアするのが適当な量だが、そこはおひとり様に慣れている私。相性の良い黒ビールとともに、肉を食べすすめる。このスペアリブで秀逸だったのは、黒酢のしつこさと、厚みのある岩中豚の相性。見るからに、甘くてしつこそうな黒酢が、この厚みの岩中豚を食べる時は、程よい旨味を醸し出す。添え物の人参やエリンギなどを口にしたときは、やはりしつこく感じるので、この黒酢は、岩中豚の厚い肉に調和するように計算されているとしか思えない。麻婆豆腐は、初回よりも山椒の強さを過度に感じることがなく、これは、2回目にして、舌が慣れたのかな、と思った。最後に、お目当ての四川風坦々麺。こちらは、その器からしてサイズの小さいこと、したがってまた、麺の量の少ないことが、第一印象。麺量が半分であることの説明は受けていたので、驚きはしなかったが、普通のご飯茶碗よりも、二回りくらい大きい程度の器で、とてもラーメンの丼と言えるようなサイズではなかった。肝心の味はというと、底の汁を混ぜて食べると、爽やかな旨味があって、美味しい。日本式坦々麺では、他店の味に及ばなかったが、この四川坦々麺なら、オリジナリティが高く、またこのために通いたくなるレベル。以上を加味して、総合評価は、初回よりもポイントアップ。店主も、前回よりも、テキパキと動き回り、積極的にサーブしているように見えた。また、遠からず、訪れることになりそうな予感。

かねてより楽しみにしていた、食べログでも高評価の四川料理店、川国風味小林に初めて行ってきた。いつもウォーキングで通る旧甲州街道沿いのお店。一番の興味は、いつも通っている千歳烏山の萬来軒と比べて、麻婆豆腐を初めとした四川料理がどれくらい美味しいのかということと、やはりいつも通っている千歳烏山の毛家麺店と比べて、坦々麺がどれくらい美味しいのかということ。千歳烏山からも歩いて通えるこちらのお店、もし気に入れば、一人飲みに使うレパートリーに加わるかも知れない。そんな期待を胸に、予約を入れていた昼12時の開店時刻の数分前に、お店の前で待機。12時になると同時に、満席の札の出ているお店の入口の扉を開く。すると、すでに二組の夫婦らしきカップルが、先客として注文を始めていた。私を含め5人しか客がいないのに、満席の札を出すとは、ずいぶん贅沢なお店だな、という印象。聞こえてくるオーダーは、いずれのカップルも昼のランチセット。私は、全てのメニューから自由に選べる単品で攻める。選んだのは、名古屋コーチン、岩中豚、麻婆豆腐、そして締めに坦々麺。名古屋コーチンは葱山椒ソースで、岩中豚はニンニクの茎四川風炒めで、麻婆豆腐はかなり辛いと説明されたそのままの味で、坦々麺は四川風の汁無しではんくゴマのスープそばと表記された日本式の汁有りで、それぞれお願いした。まず、名古屋コーチンは、二口目までは美味しいのだが、冷製の鶏肉というのに馴染めず、それ以上は食べきるのは大変だった。次は、注文の順序とは異なり、麻婆豆腐が出された。他のテーブルの麻婆豆腐と同じタイミングだったので、まとめて一緒に調理したためと思われる。これは、坦々麺の時も同様で、最後の締めにと注文したのだが、やはり他のテーブルと同時に、肉料理の前に供された。この店は、シェフが独りで厨房の調理も客席への給仕も行なっているので、どうしても同じメニューをまとめて調理しないと間に合わないのだろう。それでも、それぞれの料理に要する調理時間はかなり長く、入店から店を出るまでに要した時間は、2時間を超えた。これは、私がいつも使っている萬来軒や毛家麺店と比べると、約4倍である。ゆったりと食事を楽しめるという意味では悪くはないのだが、例えば萬来軒などは、私の他に６人の円テーブル客と二組のカップル客の、合計11人が来店していても、厨房のシェフと客席の女将の2人だけで、注文の順番通りに30分もあれば全ての料理を提供してしまうので、やはりシェフの手際に問題があるのかとも感じた。肝心の味の方はというと、こちらの麻婆豆腐は、山椒の辛さが前面に出ていて、唐辛子の味はあまり感じない、特徴的なものだった。食べているときには、言われるほど辛いとは感じなかったが、食べ終えた後に、舌全体が痺れる感覚があった。この点は、萬来軒にはないことである。ただ、私の好みから言えば、山椒が強すぎて他の味が感じられないこの麻婆豆腐よりも、山椒と唐辛子のバランスが良く、辛味を旨味で調和させたような萬来軒の麻婆豆腐の方が、美味しいと感じた。岩中豚を食べるのは初めてだったが、豚肉もニンニクの茎も、噛むほどに旨味が出て甘く感じられ、それがほのかな山椒の辛さと合間って美味しかった。最後に、担々麺については、やはり毛家麺店の辛い中にもクリーミーな絶品坦々麺のスープに比べると、スープの味が単調で深みがなく、麺もややボソボソとした食感で、ツルツルした喉越しの良さが感じられない。やはり山椒に頼り過ぎのような気がした。という訳で、まだ若いこちらのお店のシェフは、私の評価では、萬来軒や毛家麺店には、まだ及ばないのであるが、それでも、美味しい料理を出すお店であることは、他の皆さんの記している通り、間違いない。特に、山椒好きの人にとっては、たまらなく美味しいお店なのであろう。また、シェフはまだ若いのに、とても真面目な方で、お話ししていると、仕事に対する真摯な姿勢が伝わってくる。是非、今後も、料理の腕を磨いて欲しい。次回は、四川風の汁無し坦々麺を試すために、再訪してみようと思う。