名品、スープ　ド　トリュフをいただきに。 : オーベルジーヌ

笹塚駅から徒歩５分ほどの住宅街の中。

芝にあった名店「オーベルジーヌ」の小瀧シェフが

数年ぶりにひっそりとオープンされたお店。

６名のみの店内で、すべてお一人でやっています。

今回は、２度目の訪問。

というのも、かのスペシャリテ、スープ　ド　トリュフを

いただくのが目的。　

まさに、シーズン真っ盛り。

とても手が込んでいるのに、まったくそれを感じさせない

自然体な料理の数々。　そこに経験値を感じます。

「いっぱいいっぱいで料理したらダメなのよ」と、

またもや名言が飛び出しました。

今回は、トリュフスープ　ハーフがつく１５０００円のコースを

予約時にお願いしました。

相変わらず、気さくな小瀧シェフ。

作り方も伺うと、気軽に教えてくれます。

お弟子さんをとって、この技を伝授しないのは、

もったいない限り。

さて、この日のコースです。

１、アミューズ
　　ディルで漬けた鹿児島産天然真鯛のパイ
　　なにげないのですが、最初から手が込んでいます。

２、前菜
　　赤ズワイガニと有機の下仁田葱のテリーヌ
　　春菊、水菜、ルッコラ
　　蟹みそのムース

　　蟹みそのムースをたっぷりつけながら、
　　テリーヌをいただきます。
　　蟹の風味満載。　

３、スープ　ド　トリュフ
　　懐かしい味です。
　　そして、どこにもない味でもあります。
　　ゆり根とトリュフをミキサーでまわし、
　　クリーミーな仕上がり。
　　帆立がたっぷり入って、
　　超厚切りトリュフが浮き身に。
　　トリュフの筋はきれいなブラウン。
　　旬な証拠です。
　　あまりに贅沢な一品。

４、あんこうのポワレ
　　根室産のぷりっぷりなあんこうです。
　　ソースフランボワーズ
　　シューフリゼ

　　あんこうとフランボワーズ、
　　すばらしいマリアージュに唸るばかり。

＊ここでサービス
　　メインが出るのに、少し時間がかかるということで、
　　ブルーチーズとはちみつの巣のカナッペを出して
　　いただきました。
　　これがまた美味。

５、鹿と牛蒡
　　シャルトリューズのソース
　　ピエブルー
　　菊芋

　　鹿といい、ガルニといい、ソースといい、
　　大好物ばかりで、かなりご機嫌。
　　ソースのコクと軽やかさは、
　　クラシックをやってきたシェフ自身が
　　進化していることを物語っています。

６、デセール
　　ムースココ
　　フランボワーズ
　　
　　バニラビーンズとミルクがたっぷり入った
　　ムースココ。
　　デセールも天才的に美味。

７、ミニャルディーズ
　　前回も感動しましたが、やはり
　　小瀧シェフのパートドフリュイは逸品です。

　　＊ブラックベリーのパートドフリュイ
　　＊チョコレート

８、コーヒー

バゲットは、すぐそばの
「ブーランジェリー　コンヴィヴィアリテ」。


お供は、赤ワインをグラスで。
Chateau Barbe 1999
素晴らしいビンテージです。


安定感、安心感抜群で、

いい時間を過ごせました。

笹塚駅から徒歩５分ほどですが、

住宅街の細い道。　ちょっと心細くなってきたころ、

灯りに照らされるお店が見えてきます。

「オーベルジーヌが復活したそうです」と友人に聞いたとき、

俄かに、その名前が思い浮かばないほど遠い記憶になっていました。

「あ、芝にあった、あのお店」と思い出してからは、懐かしさが

こみあげてきました。

小瀧シェフは、芝と、常陸太田にあった２軒のフレンチレストランで

シェフをされていましたが、いずれも閉店。

ブランクの４年間、全国に１００名以上はいるという弟子の

レストランを訪問していたそう。

笹塚のお店は、アパートの１Ｆを改装してあり、

カウンター３席、テーブルひとつというこじんまりした空間で、

シェフ一人でサービスもこなします。

芝のときには、気づきませんでしたが、小瀧シェフ、

とにかくよくしゃべり、そして、とてもユーモアたっぷりで、

ひょうきんなキャラ。

目の前で作り上げられるソースを味見しながら、

「ものすごくおいしい！！」というジェスチャーをし、

笑わせてくれます。

この日、３時間以上、料理をしながら、話し続けていました。

しかし、ご本人いわく、「ボク、男性にはこんなにしゃべらないのよ」と。


８月２４日に開店してまだ１か月強。

４年のブランクは大きかった、とおっしゃていましたが、

そこは長年のキャリアをもつ、大御所。

クラシックフレンチに進化を加える見事な料理が

次々繰り出され、大満足。

「書かないでよ」」と言いながら、その秘訣をいろいろ

教えてくれました。

コースは、この日１２０００円。

それでは、復活した小瀧シェフ、渾身の力作です。


１、雲丹とカラスミのパイ

　　雲丹とカラスミの風味が混然一体となって
　　パイに詰まっています。
　　

２、三陸産鮑のサラダ

　　本つぶ貝と茄子が入り、
　　ブラックベリーのドレッシングで。

　　鮑の火入れが抜群で、とてもいい
　　テクスチュア。
　　ブラックベリーの優しい酸味がよく
　　合います。

３、赤ピーマンのスープ

　　スープの上には、ホイップした
　　生クリームが。
　　アツアツの赤ピーマンのスープとの
　　温度差を楽しむ仕掛けになっています。
　　赤ピーマンの自然の甘味が極上。
　　さすが、の一品です。

４、あんこうのポワレ

　　北海道産のあんこうを
　　根室産の塩で。甘味のある
　　荒削りな塩です。
　　ソースは、たてたクリームとペルノー。
　　１時間半煮込んだというビーツが
　　他にないくらいエレガントで美味。
　　細部まで手を抜かず、素晴らしい技。

＊＊ここでサービスが１一品。
　　明日のお客さんに出すという
　　ズワイガニと根セロリのピュレの成形前を
　　味見させてくれました。
　　滑らかにした蟹みそがたっぷりかかっていて、
　　極上。
　　「こんなことしてたら、採算とれないよね～～」
　　なんて言いながら、楽しそうなシェフ。

５、うさぎのフィレのロースト

　　ウサギのフィレに鴨のフォアグラとエストラゴンを
　　詰めて。
　　ガルニは、あんず茸、牛蒡、むかご。

　　溶けないように、鴨のフォアグラを使うところが
　　ミソ。
　　とても軽く仕上がっています。

６、栗のテリーヌ

　　茨城県産の栗の皮を３時間かけて
　　むいたそう。
　　極上の大きな粒です。
　　シナモンと蜂蜜であとは栗だけ。
　　大粒の栗が一粒添えられています。
　　２時間湯煎で煮込んでいます。
　　ソースも栗と水だけ。
　　
　　本当に、栗オンリーのナチュラルな甘さで、
　　これは、他ではお目にかかれません。
　　長年の経験と、手間を惜しまない精神力。
　　脱帽です。

７、ミニャルディーズ

　　この日、すべての料理に感心しましたが、
　　ここでさらに感心する一品が。

　　＊フランボワーズのゼリー
　　　一生でいただいたフランボワーズのゼリーの
　　　中で、最も秀逸でした。
　　　あえて種入りにし、蜂蜜だけで。
　　　技の秘密はシェフに直接聞いてください。

　　＊ココナッツのマドレーヌ

８、ネスレのコーヒー
　
　　業務用コーヒーマシンで淹れたもの。
　　ここにも、長いお話しが・・・。

パンは、すぐ近所の「ブーランジェリー　コンヴィヴィアリテ」

さんのもの。

お供は、赤ワインをグラスで。

CHATEAU SERET
ボルドー
カベルネフラン、カベルネソーヴィニオン、
メルロー。
ブラックベリーのような芳香で、
シェフは、きちんと計算済みのようです。


茨城県で生まれ、会社が性に合わず、２年で辞めて、

大阪のホテルプラザへ。

ここで、まだ若いながら、ドイツに研修に出され、

人生が変わったそう。

それから１０年、ドイツの「オーベルジーヌ」、

アルザスの「オーベルジュ　ドゥ　リル」などで

修業を積み、帰国。

話は、その間のご家族や修業先のことに及び、

３時間で、シェフの半生を料理とともに味わいました。

４年間のブランクなど微塵も感じさせないほど、

料理は、過去に執着することなく、洗練されていました。

復活、バンザイ！！