天才との再会に胸高鳴る…… : TSU・SHI・MI

半年ぶりにツシミさんに伺いました。
今回は、年若い友人二人をご招待し、3人での訪問です。
美しいマダムが笑顔で迎えて下さった瞬間から、まるで友人の自宅に招かれたような気分に。
シェフも「おひさしぶりです」とフレンドリーな笑顔。ときめいてしまいます(笑)
一度お伺いしただけなのに、本当によく覚えていてくださり、
前回の食事中に起った事などにも話が及び、その記憶力に驚いてしまいました。

テーブルに着き、メニューに目を通した瞬間から、
あの素晴らしいお料理にまた逢える、と胸が高鳴ってきます。
なんといってもシェフのお料理の特徴は、一つの食材をいかに美味しく食べさせるか、とことんつきつめること。

例えば「浅葱麺」
雫石浅葱をラーメンに見立てた、楽しい一皿。
ですが、そのスープは雉から濃厚に且つ上品にとられ、トリュフが香り立ちます。一口いただいた瞬間に絶句。
ここ何回か、人生最高かもしれないと思わせるようなスープをいただきましたが、圧倒的にこののスープがトップに躍り出ました。
チャーシューに見立てた雉肉。
ゆで卵代わりの、鶉卵すら普通と違う濃厚さ。
海苔替わりのトリュフ!
塩コショウに見立てて添えられたのは、猪肉のパウダー!に黒胡椒。
途中からスープに加えて味を変化させます。

でも、そんな食材たちも、素晴らしく甘く旨味の濃厚な、雫石浅葱のおいしさを引き出すための脇役なのです。

すべてのお皿にテーマがあり、
一つの食材を極めていきます。
まさに、誰とも違う「ツシミワールド」

この日のメニューです。

◇大地の茶　香で楽しむ日本のエネルギー

◇会釈　蕗の薹・セリ・ダンディライオン

芹は香り高いアイスに！
蕗の薹は薄い鹿のベーコンに包まれて軽いフリット。
今年いただいた蕗の薹でいちばんの香り、鹿のベーコンの塩気と軽い燻しの香りで益々引き立っています。
タンポポとガレットの間には、マグロのリエットが隠れていて、シェフの仰るように一口で頂くと、食感のハーモニー、マグロの薫りに言葉を失います。

同行の友人が「これ、めちゃくちゃ美味しい！早く食べて！」と興奮ぎみ。
本当に美味しい……。なぜこのくみあわせを思いつくのか、不思議……。
「この実力が軽い挨拶だからね、油断しないように」と言われているようです。

◇農園　狂喜乱舞する小さな巨人たち　パースニップ

シグニチャー・プレートです。
今回の真ん中グラスは、珍しい国産のパースニップを暖かいピュレに。

◇シュークルート　発酵キャベツ・紫キャベツ・春菊・バターミルク・毛蟹


◇浅葱麺　雫石浅葱・土耕芽葱・ビーツ・野生雉・鶉卵・トリュフ

◇錯覚　京紅人参・芽人参・ホロホロ鳥・味噌漬け卵黄・カランドゥラ・フォアグラ


錯覚はトマトを使っていないホロホロ鳥のラグーソース。
トマト味と「錯覚」しながら、パスタに見立てたニンジンをいただきます。

◇ステーキハウス　オニオンバゲット・オニオンヌーボー・アーリーレッド・本州鹿・群馬産ミナスチーズ


今回、あの美味しいバゲットは、新玉ねぎのジャムのトーストに。
美しい鹿にミナスチーズが濃厚な香りをプラスし、あえてステーキハウスでいただくワイルドな演出です。

◇トロロアイス　2産地のヤマトイモ・天然クレソン・チーマディラーバ・鯛白子

美しい紫は沖縄の紫大和芋。

◇小麦と米の進化形　南部小麦・ヒメノモチ・古代紫黒米・スモーククリームチーズ


◇アスパラのプゼンス　佐賀県サンホワイトアスパラ・野菜茶アンクルート・アスパラリゾット・銚子産金目鯛


ホワイトアスパラをあの野菜茶でアンクルートし蒸上げてありました。
フワフワの火入れの金目と共にいただきます。

◇セロリ～LOVE　大管達夫の根セロリ・沖縄産塩セロリ・山武産仔猪

セロリラブ(根セロリ)はごく薄くスライスされ、仔猪の腎臓のスライスと共にミルフィーユに。

◇チーズの様に・・・。フロマージュドミラサカ・ナツハゼ・銀座はちみつ・マシュマロ

◇苺を破壊した瞬間　淡雪苺の55℃キャラメリゼ・ルバーブ・エルダーフラワー

苺の赤からインスピレーションを受けたという、苺の爆発。
飛び散った苺の赤は繊細なチュイル。これもい今までいただいたことのある苺の焼き菓子の中で最高の美味しさでした。

◇駒場の森　オリジナルハーブティ


一つ一つのお皿をもっと解説したいところですが、筆力がなく、せっかくの芸術品のイメージを損ないそうです。
写真もつたなく、もどかしいのですが、お料理のテーマから、皆様の想像にゆだねます。

今回の飲み物はペアリングをお願いし、日本酒を含め9種。
お支払いは一人当たりにすると33,000円程度。
一日一組のためにこれだけ力を注ぎ、楽しませていただき、破格と言っていいのではないでしょうか?
食後シェフとお話しする中、このお店は賛否両論、でもそれでいい、とおっしゃっていました。

シェフとマダムの作りだすツシミワールドに魅了され
お食事の時間は終わってみると11時。4時間かかっていましたが、まったくその時間を感じません。
この世界にふれるために、また伺います。
ごちそうさまでした。

ミシュランの星を返上してまでオープンした都志見シェフの新しいお店。
お料理の画像を見て一目ぼれし、さっそく予約、念願かなって友人と二人で行ってまいりました。
コースは昼夜一緒、12000円のみ。
お酒のペアリングコースをお願いし25000円です。

さて、当日、お店に近づくと女性の方が、ドアを開けて下さいました。笑顔が素敵で美しくほっとします。
奥の半個室の、ひろびろした４人掛けのテーブルに案内していただきました。
印象的な壁画に目が奪われ、つい素敵ですねと声をかけると、都志見シェフがご自身で描かれたとの事。
着席すると、今度はすぐウェルカムプレートに目を奪われ、これもお聞きしたところ、彫金作家さんに依頼されたものでした。
力強いプレートは、お料理の数々のintroductionとしてピッタリだと感じました。

この日のメニューです

◇大地の茶・・・香りで楽しむNIPPONのエネルギー

50種類もの野菜を低温で発酵させたお茶で香高く意外なほどさらっと飲みやすい。この感じが日本らしさなのかな?と。
毎日でも飲みたい、元気で健康になりそうなお茶でした。

◇Salution 会釈・・・莢大根・二十日大根・葉人参　マチルダの新じゃが　丘のり

アミューズです。
莢大根は莢に入った状態の大根の種。以前TVで農家さんの栽培を目にして以来、食べてみたいと思っていた食材にここで出会えました。
莢なのにしっかり大根の味。その他の野菜も香高い。山羊の生ハムが添えられ、その塩気て食べてとの事ですが私は野菜だけで充分なインパクトでした。

マチルダの新じゃが。最初の大地のお茶お殻に丸く包まれていました。しっかりとした塩気で甘みが引き立ち美味しい。
豚の塩漬をパウダーにしたものが混ざったバターが添えられ、さらに美味しくなります。
バター一つにこの手のかけかたっ!!　その思いをすべていただこうと気合が入ります!!!

丘のりはパリパリ。本当にノリの味でした。
一口での食べ方がうまくいかず、テーブルの上にぽろぽろとこぼしてしまい、その後ずっと気になる羽目に(写真に写りこんでいるのはご愛敬)

◇Introduction '農園2016’ 狂喜乱舞する小さな巨人たち・・・焼きなす　夏鹿コンソメ

こちらのシグニチャー。
小さく切り取られた野菜たちをどう頂くのかなと、訪問前に考えていましたが・・・
次はどんな味と香り?と、一つ一つを味わうことが楽しく、たぶん私は笑顔を浮かべて、いただいていたと思います。
添えられた、焼なすと夏鹿のコンソメのディップで味に変化をとの事でしたが、必要はありませんでした。
あとで、ディップ自体を大変おいしく頂きました。

◇カリフラワーと牛乳・・・バターミルク　韮オイル　白烏賊

紫、緑、白のカリフラワーはそれぞれが違った調理方法で、食感も全く違う。なんという気の使いようでしょう。
白烏賊のもっちりとした食感と甘みと合わさり素晴らしいハーモニーに、口の中が楽しいのです。
乳清のクリーミーさとしっかりした塩気も、ベストバランス、
食材はカリフラワーと白烏賊なのに奇跡のような美味しさ・・美しさも抜群でした。

◇鮎peppers ・・・万願寺　獅子唐　紫唐辛子　すずこまトマト　花アニス　天然干し稚鮎

花アニスに至るまで、大好きな食材ばかりで構成された一皿。3種の唐辛子の甘味が引き出され、鮎の塩気・ほろ苦さがアクセントになった一皿。

◇玉葱のBreakfast・・・アーリーレッド　七谷鶏　鱧　酢橘

ここでBreakfastと銘打った素晴らしいサンドイッチ。
力強いのにさっくりと歯切れよく、鶏とオニオンのハーモニーが完璧!!　これはびっくりですよ!!
人生で一番おいしいサンドイッチでした。

◇夏の緑(アオ)・・・緑豆5種　豆苗　小林牧場ブルー　十勝牛トモサンカク

運ばれてきたお皿から、夏の香りが立ち昇って深呼吸したくなる感じ。目にも緑のグラデーションが飛び込みます。
全体を通して感じる力強さがここでも存分に発揮されています。豆類の濃い味わいにブルーチーズがなるほどぴったり合ってお互いを引き立てていました。
決してくどくならず、供される量も計算されつくしている感があります。

◇桃の気持ち・・・岡山県清水白桃　佐渡産越淡麗酒粕　食用菊
旬の食材をどう生かすかを考えた一皿。ほんとうに美しい。
私個人としては、美味しい桃ならデザートでいただきたかったかも・・

◇小麦と米の進化形・・・南部小麦　ヒメノモチ　古代紫米

素晴らしい食感のパンに甘酒とバターたっぷりで焼き上げ、甘酒甘みに負けない強めの塩気で仕上げてあります。
前のお皿と、このお皿と、麹の力を見せていただいた印象。
合わせていただいたお酒はドメィヌソガのサケ・エロティックでした。好きで手に入れて飲んでいたお酒なので旧友にあったようでうれしく、テンション上がりめです。
個性の強いものを合わせてまとめ上げるお料理の数々は都志見シェフならではですね。

◇クルックネック・・・吉宗農園クルックネック　国産ニンニク　マカダミアゼラニウム&ナッツ　ハタ

ハタのもっちりした食感と、火入れの良い皮のパリッとした食感が素敵です。
クルックネックは大好きな食材。甘く、程よい食感にニンニクのピュレを合わせ美味しくいただきました。

◇南瓜　夏猪・・・黒皮栗南瓜　雲南百薬　ロペジ　山武産仔猪

仔猪!!
2種の部位をそれぞれのロースト方法で、まずその色の美しさに目を奪われました。
さっくりとナイフの入る柔らかさと、ジューシーさ、油がまったく無い食感はサックリ。
火入れの見事さ!!
この仔猪が今までの人生でいただいたお肉の中で、ベスト1に。
来年の夏、またいいただけるなら必ず伺いたいです。

◇MYOUGA・・・茗荷竹　ライチ　マリーコールド

茗荷竹の爽やかさに、ライチが更に夏らしくさわやかな香りをプラス。
まったりとしたアイスクリームの甘みに合いこれまた美味しい。茗荷竹をコンフィチュールにしてしまう、シェフの発想に驚くばかり。色もきれいですね。

◇大豆のカスタード・・・佐藤利一の有機無農薬大豆　黒糖卵黄　ベルベーヌ　焼き柚子チョコレート

黒糖に漬け込んだ卵黄のまったりしたこくが秀逸。

◇駒場の森の小菓子たち

サボテンの葉脈?が化石のようなオブジェに。そこに盛り付けられたマカロンなどの小菓子たち。芸術です。
だけど、写真がありません・・・
なんと同行者が酔ったのか、転がしてしまった!!!!
一瞬「何すんじゃ!!われ~っっ!!」と、冷静さを失ってしまいました・・・いかんいかん・・・。
美味しくいただきました。シェフ、申し訳ありませんでした。

最後にとても薫り高いオリジナルハーブティをいただき全13皿のコースでした。

ひとつひとつに恐ろしく手が込んでいて、ストイックさを感じます。
絵画のように美しく、かつ美味しい、シェフの思いをいただくようなこの場所がとても大切に感じます。
食後、眼光力強いシェフと、奥様(うつくしい女性は奥様でした)とゆっくりお話しする機会をいただけたのも素晴らしい思い出になりました。

帰り、ずっと長い間お二人で見送ってくださいました。
また必ず伺います。