季節という物語を紡ぐ : クラフタル

中目黒は目黒川沿いにあるモダンフレンチ。
ファンであるソムリエの若山さんが、エールからこちらへ移ったので追っかけをしようと、同じくファンのレビュアーさん達と押しかけました。( *´艸｀)

2Ｆにあるお店は、オープンキッチン。
ナチュラル感のある雰囲気。
シェフは、ジョージアンクラブ（閉店）、ジョエル・ロブション、さらにフランスなどで修行の後、独立されてます。

コース7000円と良心的。

当日のコースは以下になります。

＊帆立
＊牡丹海老　フォアグラムース
＊イワシ　茄子
＊とうもろこし　鶏手羽　カカオ
＊うなぎ　雲丹　胡瓜
＊仔羊　タイカレー風味　カレーパン
＊ミントのソルベ　メロンソース
＊栗　紅茶のアイス　プラリネ　マスカルポーネ
＊カフェ

前回訪問時より、複雑さと力強さが増し、より美味しく感じられた。
まだ若いシェフということもあり、着実に階段を上がっている感じ。
例えば帆立の皿は、レアな帆立に胡桃のサブレを合わせ、その香ばしさで帆立の甘みを際立たせる。
一方で、焼き方により香ばしさを出しつつ帆立の旨みをぎゅっと凝縮したチップスを添える。
帆立の特徴である甘みと旨みという面を、ともに香ばしさをキーワードとしつつも違う形で提供し、それぞれの面を楽しませてくれるという巧みさ。

ただ一方で、チャレンジングな分、好みが分かれる皿もあったのも事実。
とはいえ総じて美味しく、そういうチャレンジングな皿も同席の方は好みだったよう。
いずれにせよ、ワクワク感のある皿が続くのは確かだし、考えているなーと感心。
食べていて、楽しく美味しい料理。
パンペアリングが付きますが、今回は3種で、これはまあ普通に美味しく。

若山さんのワインのチョイスは、相変わらず変態（褒めてます）。
今回は、料理と同じニュアンスを持ったワインを合わせていた傾向があり、そこはまだ少し試運転な感ですが、その分さすがに合ってるし、ワイン自体はレア。
そういう似たニュアンスのワイン自体を探し出すのがスゴイというか。
ワインペアリング力としては、都内トップクラスであり、楽しさという点では一番かも。
まだ31歳ながら、すごい才能ですよ。

会自体も、感想を述べあうのがとても楽しかった。
ずっとお会いしたかったレビュアーさんとも、そういう点ですごく話が合ったし。
それ含めワインに関しては、とても勉強にもなる話も沢山聞けました。

若山さんとの再会含め、思い出に残る楽しい夜。
ご馳走様でしたー。

以下、料理の詳細です。

＊帆立

レアに仕上げた帆立に、イカ墨と帆立のチップス。
マッシュルームと胡桃のクランブルをあしらって。
帆立の甘みを、胡桃の香ばしさが良いアクセントとなって、引き締める感じ。
チップスは、帆立の旨みがたっぷりながら少しジャンクな感じもあって、食べ始めると止まらないです。
レア帆立のトロッと感とチップスのパリッと感の対比も良い。

ペアドリンクですが、最初だけはノンアルを頂いたので、普通な感じで。

＊牡丹海老　フォアグラムース

牡丹海老とサワークリームを和えたものに、生ブドウのカットを。
ブドウのピュレにシャルトリューズ（薬草酒）で香り付けしたフォアグラムースを射込んだものを。
ソースは、ホエー（乳清）をベースにベルベーヌ（レモンバーベナ）で香りづけ。
牡丹海老の甘さに対し、サワークリームの甘さは連続性を、酸味は輪郭を与える。
ブドウの酸味と甘さも同様。
その結果、甘さがクドサを伴わずふわっと浮かび上がる。
フォアグラムースは、口どけが良くてとても美味しい。

合わせたワインは、ピノブラン100％のドイツワイン。
甘みもありますが、酸もあり、サワークリームと葡萄を足した感じに少しニュアンスが似てる。
そのため、前述の効果がより鮮明に。
一方、フォアグラムースにはあまり合わず。
ピノブランの持つ微かな苦みが、フォアグラの苦みを強調する。
それを指摘したら、最初は牡丹海老だけだったのが、後からシェフがフォアグラを付け足したそう。なるほどー（爆）

＊イワシ　茄子

トロ茄子の上にイワシ、さらにラルド（豚の背脂）を乗せて高温にしてトロケさせる。
赤ワインビネガーで軽く〆る。上にエディブルフラワー（ボリジとか）。
焼き茄子のピュレを添えて。
横には、飴色になるまで火を加えた玉ねぎを乗せ、アンチョビで風味を付けたピサラディエール。

イワシは、臭みもなくてとても美味しい。
ラルドによって、イワシと茄子に一体感が出て、焼茄子のピュレがイワシに香ばしさを与えて良いアクセント。
ピサラディエールも、その甘みが良いけど、もう少し甘さを出しても良いかな。

合わせたワインは、リボッラ・ジャッラ100%のオレンジワイン。
最初、イワシの青魚くささを引き出しちゃってるなーと思ったのですが、焼き茄子のピュレをイワシに付けて頂くと、旨みが強調され青魚くささもなく、良いマリアージュに。


＊とうもろこし　鶏手羽　カカオ

とうもろこしのヴルーテとアイスに、カカオで風味づけ。
照り焼きにした鶏の手羽を添え、トリュフを。
コーンフレークで立体的な盛り付け。

とうもろこしは、甘い。
カカオの苦みが、それにキレを。
鶏手羽は照り焼きにより、トウモロコシに焼きトウモロコシのようなニュアンスを与える。
素直に美味しい皿。

合わせたワインは、プティマンサンを使ったもの。
少し貴腐を思わせる甘口のワインですが、少し柑橘を思わせる酸や苦みもある。
トウモロコシの甘さやカカオの苦みと似たニュアンスで、合わないわけがないという・・。

＊うなぎ　雲丹　胡瓜　松茸

押し麦のリゾットの上に、鰻や松茸、雲丹や銀杏。
最後に鶏の出汁を掛けて出来上がり。酢橘風味で。
うなさまをはじめとする贅沢な食材の共演。
そのうなさまは、表面カリッと中は脂がしっかり。
これまた素直に美味しい皿。

合わせるワインは、ケルナーを使った新潟のワイン。
酸とミネラルが豊かで、柑橘やハーブのニュアンスも。
酸やミネラルはウニや鰻のこってり感を爽やかにまとめ、柑橘やハーブのニュアンスも同様でありながら胡瓜と連続性。
上手く繋いでます。

＊仔羊　タイカレー風味　カレーパン

酸味の強いソースが好みではなく・・。
ココナッツとハーブのソースは、それなりに合ってました♪
火入れはさすがに良かったので、まずまず美味しく頂けた。

合わせたワインは、ニュージーランドのピノ。
仔羊にピノは鉄板ですなぁ。

＊ミントのソルベ　メロンソース

液体窒素でフワッと仕上げたソルベは、口どけが素晴らしい。
フワッと仕上げた分、ミントの風味が出過ぎず、メロンの甘みを良い感じに支えてました。
かなり秀逸な皿。

＊栗　紅茶のアイス　プラリネ　マスカルポーネ

最初のアミューズと同じ見た目。
紅茶のアイスが、すごく香り高い。
チョコも合わせていて、その苦みと紅茶の苦み・プラリネの香ばしさが呼応して、栗の香ばしさとグラデーションを与えつつ、甘みを生かす感じが素晴らしかったです。
美味しい。

＊カフェ

以上です。

中目黒にある気鋭のフレンチ。
食べ友さんのお誕生日を祝う目的で訪問。

桜の名所目黒川沿いにあって、時期も丁度桜の頃。
通されたのは窓際の席で、二分咲きではありましたが、桜を愛でながらの風情ある食事。
幹事の方に感謝です。
店内は、最近流行りの北欧調。
カジュアルかつオサレちっく。

メニューですが、通常はアラカルトか7000円のコース。
ただし桜の時期1か月ほどは、食材のグレードをアップした10000円のコースのみ。
そのコースを頂きました。
当日の料理は以下になります。
なお、こちらの特徴として、料理に合わせたパンのペアリングというのがコースに含まれており、それも楽しみに。

＊ふきのとうのムース

ムースは儚い口どけが秀逸。
それが雪解けとその下のふきのとうを想起。
ふきのとうの香りは少し抑えめ。
その下には、ウドやタンポポ（ピサンリ）などの春を告げる野菜。
まだ浅い春の情景。

＊カエル（グルヌイユ）のフリット

雪が解けて、カエルも顔を出します（食べちゃいますが）。
バジルシードがカエルの卵。
フロマージュブランの優しい甘みがカエルの旨みを包み込み、バジルシードに忍ばせたリンゴジュースや山葵が、フリットの油感を良い具合に和らげる。
美味しい。

＊馬肉のタルタル

すごく手が込んでる桜。
馬肉は桜肉とも言うので、春を代表する桜をイメージ。
人参のピュレなどを添えて。
枝は、シュー生地だそうです。
あ、味的には普通に美味しい感じで。（汗）
こちらに合わせて頂くパンは、桜を練り込んだ薄いラスク様のパン。
少し固めのパン。

＊新玉ねぎのタルト　雲丹　グリーンピース添え　

春ならではの新玉ねぎは、じっくりローストしており甘い。
それに加え、雲丹、豆、マスカルポーネの甘みもあって、色々な甘みを楽しむ皿だとか。
ミントがその甘さを良い具合に引き締める。
なかなか美味しいです。
パンペアリングは、アルザスの郷土料理、タルトフランベ。
タルト生地に玉ねぎやサワークリーム、ベーコンなどを乗せたもの。
異なる玉ねぎ料理で、その差を楽しむのがいいな。

＊桜マスのコンフィ　海老のブイヨン仕立て

桜マスのコンフィは、火入れも良くてとても良い仕上がり。
その上に、海老煎餅に乗せた桜海老、コリアンダー（パクチー）、アマランサスなどのハーブを。
さらに海老のブイヨンを流し込むのですが、こぶミカンの葉（バイマックル）やレモングラスなどタイのハーブを使って、少しトムヤンクン風というか、エキゾチックな風味。
ブイヨンの温度がぬるく、もう少し高い方がハーブや海老の香りが出ると思うのですが、フレンチにタイ料理の風味を取り込む試みは素直に楽しかった。
合わせるパンは、何とパンではなくて桜のおこわ。
米はタイ料理に使うジャスミンライス。中に桜海老が入っていて、料理とエスニック繋がりでこれも面白い。

＊仔牛のロースト

うちももの部分。
火入れが難しい仔牛ですが、とても良い火入れ。
ミルキーな風味がタマラナイ。
旬の大きなハマグリやホワイトアスパラも添えてあり、海と山と野の共演。
それをつなぐのは、ジュ（肉汁）とクリームを使ったソース。
全体的に春らしいやわらかいイメージ。
パンは、青さ海苔のバターやトサカという海藻を入れたパン。
春は海藻が美味しい季節でもありますね。
海の香りが良いですな。

＊苺ミルク

デザートは最初と同じムースを使ったもの。
苺のムースに苺のソース、練乳をソースに掛けて。
これまたフワフワの食感が楽しい。
鉄板的美味しさ。

＊蜂蜜のデザート

最後は、花畑を飛び交う蜂をイメージしたデザート。
生姜のアイスを添えて。
可愛い蜂のお尻があったりして、造形は面白い。
個人的には、もっと蜂蜜感があっても良いかも。

最後にハーブティーを頂いて〆。

季節を料理で表して、ストーリー性があり、楽しめました。
視覚的にも食材的にも春を満喫できる料理達。
調理自体も、とても手が込んでる。
味の方は、食材の組み合わせが必ずしもツボでなかったりしましたが、全体的に優しいパステル調で、これも春らしい。
唸るようなインパクトがある料理達ではないですが、この優しい風味は良いな。

帰りは春雷にあいましたが、それもまた風情。
春を満喫して大満足。

ご馳走様でしたー。