自家製の白いやつ : もつ焼き 仁科

３人で一平に向かいますがお店は満席です。
仕方なくと言うと語弊がありますが仁科へと歩を向けます。
仁科さんだって素敵なお店であることには間違いがありません。
扉を開けると仁科さんもそこそこに人が入っています。

４人掛けのテーブル席で飲まれているお二人が奥の２人掛けのテーブルに移動して僕らにテーブルを譲ってくださいました。
お心遣いに感謝し、お礼を申し上げました。

今度きたら食べようと思っていたイカニンジンを頼みます。
なるほど、こいつはいけます。。
松前漬けにも似た感じです。調べると福島の郷土料理のようです。

ハツ刺しは相変わらずの旨みを感じます。ホッピーが進みます。
そして、壁の張り紙。。。
あります、ありました。
投稿写真ではみたのですが前回、初めての訪問の時にはありませんでした。

頼みます。自家製を。。
女将さんが一升瓶を抱えてテーブル席に近寄って来ます。
一升瓶のラベルと中身は違います。
「山形の兄が作ったんですよ。出来立てですよ。一週間もすれば落ち着くんですけど。。」
出来立ての自家製の白いやつはグラスの中で息を吐くように泡をぶつぶつとさせています。。
そして出来立ては酸味を感じて旨いものです。

味が落ち着いた頃の白いやつも味わってみたいものです。
自家製なのです。

一平のすぐ裏にもつ焼き仁科と言う家があると聞き込みました。
では、さっそく行ってみましょう。
目黒線、不動前でおります。
頭に入れたグーグルの地図通りに歩みましょう。
山の手通りを五反田方向に進み信用金庫の角を右に入ると薄暗闇の路地に中華の看板が零れています。
その看板の手前のもっと細い道を右に曲がり今度は左に曲がります。
人家の中に人家の佇まいでお店はありました。
看板が無ければ普通の一軒家と見間違えます。
平屋の木造の漆黒が闇の中で尚の事とその黒さを光らせています。闇夜の鴉ですね。

がらがらと扉を開ければ明るい蛍光灯が清潔感一杯の店内を白く輝かしています。
漆黒から純白の世界です。
６時半を回った鍵状のカウンターは７割方でしょうか。
テーブルは鍵状のカウンターに沿うように配置されています。どのテーブルも人はいません。
ママさんは暖かな笑顔で初めての僕らを向かい入れて下さいます。
安心して真ん中のテーブルに腰を落とします。
ママひとりだけでお店は忙しそうです。
カウンターからテーブルに来て紙おしぼりを置きます。
「もうすこししたら手伝いの人が来ますのでそれまでせわしないけれど。。申し訳ありません」
笑顔で仰います。お年の頃は僕よりも遥かに大先輩です。
そして、とても美しい方です。小柄なタカラジェンヌというところでしょうか。
ホッピーセット黒、白、銀杏焼き、ハツ刺しを頼みます。
笑顔で聞き取りカウンターへ戻っていきます。

焼酎の入ったジョッキと黒白のホッピーとお通しの蒲鉾がお盆に乗って登場します。
「こっちが黒です、こっちが白ね」
ホッピーとふたつのジョッキとお通しの小皿を順次テーブルに置いてゆきます。
利き手の人差し指と親指の付け根の間にはサロンパスが見えます。痛むのでしょうか。。

セットの焼酎はたんまりです。嬉しいです。
蒲鉾相手にホッピーを楽しんでいればガラリ、ガラリとお客さんが入ってきます。
テーブル席もカウンターも大盛況です。
後ろのテーブル席には熟女２名が腰をおろします。
お店の忙しさを察してゆっくりでいいからとハイボール２つを注文しました。
常連さんの気遣いが優しく伝わって来ます。こんな雰囲気も素敵ですね。

がらがらと開き、ここでどうやらお手伝いの女性がお見えになった気配です。
これでママも先ずはほっとしたことでしょう。

女盛りの可愛らしいお手伝いさんの手からお皿を受け取りました。
その皿にはハツ刺しがきれいな色合いで並んでいます。
塩味ですので醤油は使わずにおろした大蒜を付けて喰らい込みます。
旨いです。
銀杏焼きもいいものです。串焼きの銀杏では無く炒った銀杏が小皿に沢山乗っています。
殻の焦げた模様に秋を感じますね。熱い殻をむけば薄皮の下には鮮やかな緑の粒が顔を覗かせます。
塩を付けて抛り込めばホクホクですね。
殻だけを試しにひとつふたつ食べましたがこれもまたいけるものです。口の中からカリコリと軽快な音が響きます。

頼みましょう。。。
こぶくろ刺し、レバー、しろは垂、そして、かしらちゃんぽんと言う串があります。
ちゃんぽんはかしらの脂の部位と肉の部位を合わせたものです。こいつは塩ですね。
煮込みも忘れずに頼みましょう。。
出来上がりが楽しみです。

串の種類は沢山あります。値段は１本100円です。
一品も酒のあてになる物がありますね。
例えばスルメイカの肝あえ、牡蠣フライ、鰺フライ。。
イカニンジンなる物があります、はてどんな料理でしょうか？？次回ですね。

順次に出来上がります。
こぶくろ刺しはコリコリ、つるんととチャーミングです。
串ものは普通に旨いですよ。
なかを３，４回と続けます。気分上々です。。
煮込みは味噌仕立ての薄味ですが生姜が十分に煮こまれて柔らかなゴボウのように堪能出来ます。
カレーモツ煮込みと言うメニューがあります。これも次回までのお楽しみにしましょうか。。

最後は熱燗の大と自家製お新香を楽しみましょう。

ここで、相棒から着信がありました。時刻は８時40分になったところです。
勤務地と終業時間が変わった相棒とは2件目の一平で落ち合う約束でしたが、まだ仁科にいるよと言うとじゃそっちへ行くとの返事です。
ものの２，３分で相棒はやってきます。。
素面の相棒は酎ハイでスタート、僕らは自家製お新香で熱燗を大いに楽しみます。
「いい店じゃない。。」相棒は店内を見まわして言います。

2杯の酎ハイを終えたところで一平に向かいます。
本当に仁科から一平までは目と鼻の先、２分足らずで到着です。。

麻布には昔、昔、狸穴（まみあな）という町名がありました。
まみあな、一説では「マミ」とは雌の狸を指し雄は「ムジナ」と称されていたそうです。
この穴場の２件はまさしく西五反田のまみあなであります。

さぁ今宵も雌の狸と戯れましょう。。
ムジナは大徳利を抱えてゆらゆらと揺れるばかりであります。。