緩急に富むお摘みと旬のネタが充実の握りが勢揃いして驚きのコスパに満足度高し : 鮨 まつうら

◆2021.9.1（水）夕餉

◆お料理 お任せ¥16,500
お飲み物消費税含むお会計¥

◆予約 ポケットコンシェルジュにて

◆お店

松浦 修氏は『鮨 銀座 おのでら』でハワイやロサンゼルスの新店立ち上げを任され、世界の舞台で腕を磨き、帰国後は表参道『ます田』（閉店）や恵比寿『鮨 来主（くるす）』等の修行を経て
2019年9月に白金高輪にて独立されました。
スタートは一斉ではなく個別に対応されてて
17:00〜と19:30〜開始の2回転

❶〜➓迄が摘みお椀玉
①〜⑬迄が握り

本日頂いたコースは以下となります。

最初の一貫目に手巻きのご用意です。
その後にお摘みが続くと言うスタイル

①脳天の中落ちの手巻き鮨 大間

最初の一巻きが素晴らしく
スタートから悶絶する味覚に
狼狽えてしまいました。
いきなりポンと手渡されたので
え！となりましたが
その容姿の欲を誘う色合いに胸キュンとなり
頬っぺたがニンマリでした。
中落ちのトロンと舌に馴染む蕩け具合に
ネギのアクセントが良い香り付け
お海苔しっかり香り中トロの脂質を
きちんと受け止めている
鮪のコクが滲み出ててめちゃ美味い。
この時期の大間はサッパリした脂質に
甘味が豊富な鮪で中落ちの滑らかさが
素晴らしくて
こう言うスタートも潔くて喜んじゃいました。

〜〜〜お摘み前半〜〜〜

空きっ腹に舎利が入り少し落ち着く
熱々の煎茶を啜りながらゆるりと
お摘みを待つタイムが何となく嬉しい

❶佐島の蛸 柔らか煮

佐島の蛸は挟んで和栗の様な甘い匂ひが
鼻腔をふぅッと掠めて舌も歯も癒します
優しさを含んだ温感が穏やかな甘味を引き出し
柔らかさが大人しくて品の良いもの
蛸の身質は穏やかに歯を抱き寄せる感じの肉感で
とても和やかな柔らかさが弾力する
温感も優れていて舌の温度に丁度寄り添って来る更に煮蛸の繊維質がしっかり感じられるので
柔らかみと繊維のしっかりした噛みごたえ感が
同居する美味さ、食感の豊かさに感動した。
そしてその身肉を噛んだ蛸の肉の中から
やんわりと零れてくる和栗の香りがする甘味の
何と美味しいこと
んん、煮汁も美味しくて最初にお目目がパチクリしてしまった。

お出汁に味淋、お砂糖少々と薄口で炊いた
40分くらいでサッと炊いたもの

❷鹿児島 出水の鯵

鯵が2切れのご用意で
手前は生姜
奥は浅葱
薬味がネタとしての鯵を活かす
更に鹿の子状に入れた飾りが
ムッチリとした身質から蕩ける脂を
潤沢に浮き上がらせる仕掛けとなり
瀞みをより一層深めるものにしている
雑味の無い味わいが身質の清らかさと重なって
とてもしっくり来る
咀嚼感が清々しくて
鯵の味覚を鮮烈に際立たせる
生姜の少しくピリッする刺激が鯵の旨味を
シャープな味わいに
一方の浅葱のアクセントは
ほんのりと涼風そよぐ香り付けが
鯵を伸び伸びとした味わいにする
脂も乗ってて滑らかな肌合いの舌触りに
うっとりとなり
鯵の味覚を異なる風味での食べ比べと言う
楽しい仕掛けに満足しちゃいますね。

❸気仙沼 鰹のたたき 玉葱醤油 刻み葱

鰹のたたきが優しい
バチバチ〜ッと炙って皮目を強火で
と言うのではなく
皮は削いで赤身の外回りだけを軽く炙って
たたきが仄かに白濁してます
たたきと言うよりも
叩いてる風に赤身を少しだけ白く染めて
赤身の甘味をクリアにする為に
輪郭を付けてると言う感じです。

鰹の身質の旨味が伸びる様に寄り添う
玉葱醤油の甘味がピタリとマッチする
薬味がいい仕事してる
鰹の甘味を膨らませて
美味しさ倍増
ヌルリと舌を舐めてく感じが堪らん
身質の滑らかさがなんとも言えずで
繊細な鰹の味わいが舌を和ませてる
鰹との触れ合いに喜びを感じますね
此れはヤバイわ
煎茶だけでは耐えられず
お酒を切望したくなりましたね。

❹鹿児島の川鰻を白焼きにて

塩でも山葵でも
皮目がパリッとしてカリカリ
サイズは小さいが
白焼きの味わいは
しっかりと堪能させて頂きます。
臭みのない鰻らしい香りが楽しめる
身は少し痩せていて旨味が薄い気がしますが
価格設定を考えれば
お摘みの充実度もかなりの品揃えです。
鰻をご用意して頂いてるだけでも
満足度高し

❺網走のキンキ

旨出汁に浸らせたキンキ
刻みネギ
柚子皮を振って

キンキは油を落としつつキンキらしさの出る旨味を引き出してます。

じっくりと炊き上げてます。
煮汁が美味しいの
チョット好奇心芽生えて
お出汁を啜ると
ズルッと飲み干したくなるくらい
甘くて旨味が芳醇

お出汁は利尻昆布をお酒に漬け込んで
二週間ほど寝かせてるそう
コリャうんめぇ〜わ

昆布のうま味がお出汁にジワッと滲み出て
然もキンキの甘味もお出汁に流れて移って
いい温和な甘味だわぁ
温感が優しいお出汁に浸されたキンキ
浸し地に程よく馴染んだキンキの旨味は
舌を唸らせるほど気品溢れる味わいです。
勿論お出汁ばかりでなくキンキ自体の
品の良い白身も秀逸でした。

❻対馬の喉黒ご飯

喉黒炭火焼き
玉葱と煎り酒を和えた物
浅葱
舎利

甘味を泳がせるのか上手
舎利の酸味と中和する様に
玉葱の甘味が付き添い
喉黒の脂質で舎利とも仲良く繋げてる

◉全般的に酒肴の範疇が今時の和食店並みに
揃える手数の多いカタチではなく
鮨店らしい大人しさの中に松浦氏の持つセンスで素材をアレンジして味わいふかい魅力を
出してます。
其処には単に味覚の強いものを揃えるのではなく
緩急の織り交ぜ方が優しく食べ疲れしない
和やかに舌を楽しませてくれる酒肴と
なってます。

〜〜〜緩急の抑揚が楽しい握りスタート〜〜〜

握りが始まります。
舎利が気になるところですが
食べて見て感じましたのは
舎利の仕込みの品の良さでしょうか。
舎利玉がキレ過ぎず辛過ぎず硬過ぎず
ハラリと解けてフワッと空気を取り込んで
米粒の糖分から穏やかな甘味を感じるもの
酸味はスッと馴染ませて軽やか
そして塩味の切れ味が良く立ってる舎利です。
酸味に気品があり大人しい感じの赤酢で
基本は米酢の様です。
故に舎利の甘味を引き立たせつつ
酸味が後追いしてネタと絡むみたいな
感じですかね。
ネタも今時のガツンと来るやつではなく
少し強めの味のものと控えめなものと
距離感を置いて寝かせたものなど
緩急に富むネタのご用意にて
握りの強弱も其れに合わせて上手に
調整していらっしゃいました。
メリハリ効かせて飽きが来ず
食べ疲れもせず
海の幸の魅力を最大限引き出すもので
今時の脂質や旨味旺盛に打ち出す握りとは
一線を画した美味しさに富む握りだと
感じるものばかりでした。

②新烏賊 出水 煮切り
③笛鯛 鹿児島 煮切り
④春子鯛 出水 昆布締め 煮切り 柚子
⑤愛知の平貝 煮切り

出水の新烏賊は 飾りを入れずに生のまま
コリッとした食感が豊かに歯に伝わり
塩と酢橘で新烏賊をキュンと締めて来て
舌をリフレッシュさせてくれる様な味わい

笛鯛は寝かせて4日目
本来の身質がネトっとしてる笛鯛ですが
その身を更に熟成を掛けて悩まし気な
もっちり肌に仕上げて来てます。
噛むと自然に歯に吸い付いてくる咀嚼感が
妖しいくらいの味わいを深めている

そして鯛続きは鯛好き鮨好きにとっては
嬉しくなる踊り子たち
出水の春子鯛は昆布締めの香りが
咀嚼した途端に香り立ち
淡白な春子鯛の白身に旨味を広げて
握りの妙味を持ち上げており
身質のプニュぅっとする柔らかみに
舌が悶えながらmogmogが楽しくなる

愛知の平貝は瑞々しいしなやかさを見せて来た
平貝の本来の甘味と身の解け感を
押し出してくる飾りの施しがいい
噛んだ時のコリッと弾力する
酸味が程良く締まりがある味わいに
舌が打たれます。

包丁がいい仕事をしている
松浦大将の本領が随所に発揮されて
素材の魅力をさり気無く引き出す
味の強いものは大らかに
味を潜めてるものは細やかに
味が弱目のものは優しく背中を押す
そんな感じの飾りを自然体でネタに
施していらっしゃいます。

〜〜〜中盤の握りです〜〜〜

⑥長万部の北寄貝 炙り
⑦愛知 車海老 煮切り
⑧ボストン 赤身 漬け
⑨13日目の大トロ ボストン

長万部の北寄貝の炙り立てを
キュッと握られて良い味わい

焦げ目のほろ苦さがいい味で
北寄貝の甘味を伸ばしている
北寄貝の瑞々しさを殺さずに
生かしたままで甘味を靡かせている一貫です。

お次の一貫は愛知の車海老を茹でたてで
ネタの温感に寄り添う様に
舎利も温かめで海老の温かみに合わせての
握りです。
ネタと舎利の温感が同調して舌を和める
和む間からプリッと車海老が無邪気に
飛び跳ねて甘味を振り撒く
元気良く跳ね返る海老の身が
エネルギッシュな躍動感を覚えて
嬉しくなる一貫です。

国内の鮪は薄くて中々良いネタが揃わず
どちら様も苦戦模様が続いてます。
此方は鮪はボストン産を仕入れて
お構いなく握られます。

鮪は赤身の漬けから
酸味が潤沢に通う
血合いの余韻がフワンと香り鼻に抜ける
サッパリしてサラサラと口内を流れる脂
夏鮪のクールな感じが素敵だ
寝かせて無くて鮮度が高いからかな

13日目の大トロ ボストン産は
濃厚な甘味に脂質成分も潤沢に溢れる美味しさ
其れでも細かく鮮やかに飾りを入れて
ダメ押しする様に
甘味も酸味も蕩けて来る
良く寝かせて熟成感のある瀞みに
陶酔してしまう

〜〜〜終盤〜〜〜

⑩富山の白海老 煮切り
⑪いくら小丼
⑫噴火湾 馬糞海胆
⑬対馬 煮穴子 塩
❾玉
➓黒糖シャーベット

富山の白海老は
シンプルに白海老の冷感と甘味を引き出す一貫
甘くて仄かなほろ苦さが重なる
酢橘の搾りをそっと添えて白海老の甘味に
優しい輪郭を浮き立たせていた。
アクセントの施しもとても効果的だ。

新物のいくらをたっぷり舎利の上に
敷き詰めて贅沢な絨毯
いくらの粒が出始めなので可愛い
走り始めのいくらはその分やや味が淡い
其処を出汁醤油漬けで旨味を膨らませての
仕掛けを施してる
旬のものが走り出す期待感に弾む喜びを
感じる一品。

噴火湾からは馬糞海胆を手巻きで
軍艦でもなく握りでも無い
手巻き海苔にして手渡されます。
この馬糞の濃密かつ甘美な味覚派
流石ほ噴火湾の馬糞だと心酔してしまう
舌一面に広がる独特の珍味に埋没です。

対馬の煮穴子は塩で〆る
表面焼いてカラッと仕上げて
身質はホロホロに解ける煮穴子

煮汁に染まる甘味が穴子の身から滲む
対して表面の醤油風味の蒲焼きの様な
趣のある味わいが印象的で
表面と中の身のコントラストが
穴子の妙味を膨らませて
其処に塩味がピンと背筋を伸ばして来る
良く仕掛けられて味覚の多様性を見せてくれた
穴子の握り
秀逸です。

玉には浜名湖の一重草の青海苔入り
磯風味がどことなく漂う玉子焼き

甘味の黒糖シャーベットがスッキリさっぱり
半分ほど食べ進んだら
タイムマシンと言う日本酒を合わせる趣向
此れが熟成感のある日本酒で
シャーベットに滴らせると
甘い香りがフワッと広がり貴醸酒みたい。
最後まで味を楽しませてくれる大将のセンスに
惜しみない拍手を送りたい。

◆これ程の充実したコース構成で
このコスパは素晴らし過ぎ
人気が鰻登りなのも納得です。
内容は一流鮨店に引けを取らず
価格は町の鮨店並みに抑えていらっしやる
予約も取りにくくなるのも当たり前ですね。
一見さんも別け隔て無く和やかな雰囲気の中
大将がにこやかに微笑んで話しかけてくれて
愛想良く細やかな接客に好感が持てます。
初訪問でも和やかに寛げる和空間でした。