エッジが利きつつ上品！高次元の小山内ワールド : 蓮香

久々にお伺いしました。
結論から言うと、やっぱり美味しい(笑)
ナポレオンフィッシュ時代から大好きな小山内さんの料理は、
人にワクワク感を与えて、自然と笑顔にします。

現在、中国少数民族の料理を扱うお店は都内に増えておりますが、
小山内さんはパイオニアの一人だと思います。
現地に仕入れ旅行に行き、自身の舌で考え、
アレンジを加えて日本人に異世界の味を伝えるスタイル。
中でも小山内さんらしさを感じた点は、
エスニックらしさやマニアックさを表現しつつ、
味わい的には塩と油を抑制し、上品に纏めておられるところ。
料理ごとにメリハリが利いており、食べ疲れが皆無です。
また、かつてよりも発酵調味料が多く使用されており、
見た目や食材よりも寧ろ飲み込んだ時の味わいで
意外性を与えてくれるように感じました(たまたまでしょうか？)。
何れにせよ、唯一無二の世界観で、再訪する喜びを実感した次第です。

また、全体的にワインとの相性がアップしているように感じました(笑)

この度頂いた料理(※追加含む)
・キュウリと生キクラゲ芥末油和え
・スティックブロッコリー、怪味ソース掛け
・鴨のプーアル茶スモーク、マカオ式ミントソース
・細切豆腐細セロリ、新生姜風味
・八年モノ黒酢生姜
・傣族豚皮チップ
・天然真フグの白子、老酒漬け蒸し、自家製雲南唐辛子醤油
・空芯菜、傣族板豆豉の強火炒め
・エビと菜心のエシャロット醤炒め
・茄子、自家製干し肉、発酵唐辛子の麻婆茄子風
・茶葉炒蛋(生新茶葉のオムレツ)
・馬告サーロイン炒め(司馬庫斯名物馬告風味)
・豆醤蚬肉豆腐
・スペアリブの月桃葉蒸し
・カジキマグロのスープビーフン
・唐墨炒飯
・汁なし混ぜそば、発酵唐辛子醤
・生ライチ

各御料理のコメントはコンパクトに記載します。

・キュウリと生キクラゲ芥末油和え
・スティックブロッコリー、怪味ソース掛け
・鴨のプーアル茶スモーク、マカオ式ミントソース
・細切豆腐、細セロリ、新生姜風味
・八年モノ黒酢生姜
とりわけ印象的だったのが鴨のプーアル茶スモーク。
身はしっとりに仕上げ、燻蒸香の加減も良い。
マカオミントソースも美味。

・傣族豚皮チップ
レモングラスやディルを爽やかに用いたサルサ的な醤が良い。

・天然真フグの白子、老酒漬け蒸し、自家製雲南唐辛子醤油
唐辛子醤油が香ばしく、甘辛で塩気は穏やか。
老酒の香りは上品。

・空芯菜、傣族板豆豉の強火炒め
発酵の香りが抜群。
風味は納豆的。
葉っぱはとろん、茎はシャキシャキで、小山内さんの炒め技術の高さを実感させる。

・エビと菜心のエシャロット醤炒め
エシャロット醤！エリンギのコハク酸の旨味が活性化される。

・茄子、自家製干し肉、発酵唐辛子の麻婆茄子風
発酵唐辛子故のフルーティな辣。

・茶葉炒蛋(生新茶葉のオムレツ)
当初はそこまで香らず、あらっ？と思うものの、余韻の香りは正にお茶。
また、ほろ苦さが良い。
卵の甘みと一体感がある。

・馬告サーロイン炒め(司馬庫斯名物馬告風味)
これは申し分なく美味しい！
馬告の良い香りが脂のあるサーロインを盛り上げる。
また、使用する生姜は抜けるような辛味がある。
辛味、苦味、甘み、酸味など複雑な味わいを纏めている。
和牛のサーロインを中国少数民族料理で活かす面白さがある。

・豆醤蚬肉豆腐
豆の甘みがある豆醤としらすの風味が面白い組み合わせ。

・スペアリブの月桃葉蒸し
タイヤル族料理。
月桃葉は香りはしっかり利いており、とろーんと漂う甘いバナナのような香り。
否応なしに食欲を刺激する。

・カジキマグロのスープビーフン
繊細ながらに旨味のあるスープ。
カジキマグロ故の酸味もあるのでさっぱり。

・唐墨炒飯
間違いない美味しさ(笑)
小山内さんの炒飯はただでさえ絶品。

・汁なし混ぜそば、発酵唐辛子醤
発酵唐辛子醤が美味しい。

こんなに食べていたとは(笑)

再訪しましたが、小山内シェフの引き出しの多さに改めて感動。
希少性の高い食材をリーズナブルに頂ける点も嬉しい。

今回頂いた中では、下記の料理が特に印象的だった。
【青蛙皮(樹皮)冷製】、【押し豆腐ととりもも茸の香り和え】
【稚鮎と金針菜の山盛り唐辛子炒め】、【ふぐ白子生唐辛子醤油】
【ブラックトリュフの麺】、【雲南風炒飯(追加)】

【青蛙皮(樹皮)冷製】
【押し豆腐ととりもも茸の香り和え】
青蛙皮は海苔のようでありながら他に無い食感。
干豆腐の冷菜は中華では定番中の定番だが、こちらのものはオリジナリティが抜群。
かすかに山椒を利かせたり、とりもも茸をアクセントに用いるなど、前菜から嬉しくなった。

【稚鮎と金針菜の山盛り唐辛子炒め】
鮎肝の苦味は稚鮎であるため爽やか。
そこにクミンの風味が加わり、独特な鮎料理となっている。
鮎を活かし異国情緒を味わわせる料理。

【ふぐ白子生唐辛子醤油】
河豚は香りがしっかりあり、トロトロな火入れが非常に良い。
甘辛いソースも白子に合っており、良い余韻はすっきりで秀逸。

【ブラックトリュフの麺】
中華風カルボナーラとでも言うべき濃厚な麺料理。
こちらの太麺はとても美味しく、中国産ブラックトリュフの香りが食欲をそそる。

【雲南風炒飯(追加)】
上記の麺で食欲をそそったので、炒飯を追加。
ナポレオンフィッシュの頃に頂いて以来だったが、やはり唯一無二の逸品。
ドクダミを用いつつ、(日本人にとって)嫌味にならないギリギリのラインで留めており、
個性的なアクセントに仕上げる事に成功している。
ハムの旨味がグイグイと牽引し、卵の甘み、香菜の風味が複雑に絡まる。

上記以外にもここでしか頂けない食材が幾つもあり、全体的に大満足。
また時間を置いて再訪したくなる、個性豊かな名店です。


【2016年3月】
初めてナポレオンフィッシュを訪問した際は衝撃を受けた。
日本では珍しい雲南料理や貴州料理を頂ける上に、シェフが用いる調味料やハーブのバランスが秀逸であるが故に。
北京で伺った雲南料理の人気店を超える「本格的」な味わいに、小山内シェフのセンスを感じたものだった。

そのシェフが独立されたと聞いて、友人達を誘いこの度訪問する事に。
お店は白金の奥まった場所にあり、鮨いまむらの斜向かいにある。

今回訪問して、シェフの「世界観」が以前よりも明確になっていると感じた。
現地で仕入れてこられた調味料と日本の食材を巧みにハイブリッドさせ、
日本で頂く中国料理としての魅力、必然性に富む料理に仕上げている。
メニューは5,000円のコース一本であるが、シェフの魅力を十分に楽しむ事が出来る。
提供のスピードも非常に速く、間延びする事がない。
強い味わいの料理と穏やかな味わいの料理を織り交ぜ、
最初から最後まで独自の世界観に引き込まれる事になる。
なお、今回の料理は特に雲南省最南端の西双版纳(シーシュアンバンナー)傣族自治州の料理が多かった。
西双版纳は中国本土よりも東南アジアの影響が強いため、特にハーブを多用し、
レモングラスとミントがメインのハーブとなっており、盛り付けにバナナリーフを使う。
個人的には、黒三剁など、よりパンチの利いた雲南料理がもう1品あれば満足度が高かった。
しかし、秋には雲南の真骨頂とも言うべきキノコを使った料理が登場するだろうし、
怪噜炒饭も頂きたいので、今後再訪する事は間違いない。

頂いた料理は下記の通りです。

5,000円のコース
【前菜】押し湯葉・佐土原きゅうり、細モヤシ,ミントの西双版納サラダ、春筍のスパイス揚げ
【鉢鉢鶏】
【～季節の青菜～ 塌菜と雲南ハムの香り炒め】
【発芽大豆 ささげ漬物 ひき肉炒め】
【自然薯 生キクラゲ 香り炒め】
【芹と豆腐の麻辣炒め】
【カキと丸ビーフン セリホンの漬物風味煮込み】
【湖北オムレツ 名物百花菜の香り】
【粉条、傣族固形納豆風味】
【スペアリブ西双版纳風 レモングラスの香り】
【咸蛋煮込み面】

【前菜】押し湯葉・佐土原きゅうり、細モヤシ,ミントの西双版納サラダ、春筍のスパイス揚げ
押し湯葉は所謂干豆腐。硬めに戻しており、歯ごたえが豊か。
通常、キュウリなどの添え合わせは丝(細切り)にする事が一般的だが、
こちらは味わいの強い佐土原きゅうりを丸っと使用している。
シンプルな料理ながらに日本人シェフが日本で再構築する魅力を感じさせる一品となっている。
「北京の辛子油風味」との事で、和芥子を用い、芥子の香りと辛味をキリッと利かせ、塩気は控えめに仕上げている。
細モヤシのサラダはミントを前面に出し過ぎず香りを調和させている。
春筍のスパイス揚げはクミンを用いエスニックテイストを高めているが、
日本の若筍の苦味や甘み、香りを壊しておらず、上品なバランス感覚。
前菜を頂き、小山内シェフのスパイス使いの巧みさを再認識させられる。

【鉢鉢鶏】
「四川省 自貢市名物」とあるが、オリジナルの串料理ではなく、口水鶏に近い調理。
なお、オリジナルはこんな↓イメージで、北京ではなく四川だとデフォルトで鉢に刺さっております
张妈妈特色川味馆
辣はじんわりではなくストレートに走り、何よりも麻がかなり鋭い。
しかし、ベースのタレには甘みや独特の香り(シナモン？)が存在し、麻辣だけではない後を引く味わいとなっている。

【～季節の青菜～ 塌菜と雲南ハムの香り炒め】
塌菜(ターツァイ)をシャキシャキに仕上げ、塩気をパキッと利かせている。
尚、メニューには「極上雲南金華ハム」とあったが、金華火腿は浙江省・金華で作られるハムなので、
こちらのものは雲南省で作られた宣威火腿の事を指すのかと推測。
有名な話だが、金華火腿は世界三大ハムとみなされており、
スペインのハモン・セラーノ、イタリアのプロシュット・ディ・パルマと並んで世界に名を馳せるハムである。

【発芽大豆 ささげ漬物 ひき肉炒め】
発芽大豆の食感がアクセントとなり、生姜、微塵切りにした香菜、葱のバランスが秀逸。
胡麻を僅かに使用し親しみやすい味わいに仕上げており、漬け物の香りとコクが深みを与えている。

【自然薯 生キクラゲ 香り炒め】
貴重な自然薯を炒めものにしている点が興味深い。
日本だとすりおろしのイメージが強いが、シャクッとした食感が魅力的。
生キクラゲ(乾物とは比べ物にならないほど高い)が食感を増やし、
生姜と葱で味を繋ぎ、特に葱の甘みがバランスを取っている。
優しい塩気によって各素材の輪郭が強調されている印象。

【芹と豆腐の麻辣炒め】
見た目は麻婆豆腐風だが、意外性のある味わい。
油に花椒の麻と香りが融解抽出されており、かすかな辛味で独特の麻辣を演出。
豆腐は硬めの木綿豆腐で、甘みと大豆の香りが強い。
ベースのスープには宣威火腿を使用しているのかもしれません。

【カキと丸ビーフン セリホンの漬物風味煮込み】
牡蠣はレアな火入れで、噛みしめるとじゅわっと磯の香りに包まれる。
面白いのがビーフンで、語感よりも寧ろ云南米线やラオスのカオピヤック、ベトナムのブンなどに近く、
しかも生かと思われるような食感。
麺が牡蠣の旨味を吸い込み、一体感のある味わいとなっている。

【湖北オムレツ 名物百花菜の香り】
海老の甘みを活かす穏やかな塩気で、海老の甘みに卵の甘みが混ざる。
百花菜は初めて頂いたが、独特の香りがあり、優雅。
海老のぷりっとした食感は前の牡蠣と同様に火入れの腕を実感させる。

【粉条、傣族固形納豆風味】
分厚い粉条(さつま芋の板はるさめ)は固めに仕上げ、ニンニクと乾燥納豆を強めに利かせつつ、
ディルで爽やかに纏めている。
エリンギも使用しているため味が染み込み濃厚になっているが、飽きさせない魅力があるのは流石。
ディルの鮮度も高く、バランスに長けた一品。

【スペアリブ西双版納風 レモングラスの香り】
柔らかく仕上げたスペアリブは豆豉とレモングラスを程よく纏わせ、噛み締めた時の香りが豊か。
品数が多いコースのメインで、しかも強い味わいだが、全く失速感を感じさせない。
やはり香りのコントロールに長けているためかと私見。
頂いているとどんどん食欲を刺激される。

【咸蛋煮込み面】
咸蛋(塩漬けにしたアヒルの卵)のコクを極めて上手く活かしている卵ラーメン。
黒胡椒をゴリゴリに利かせ、中国式のカルボナーラに昇華！
麺が加水率が高いモチモチ、つるんとした麺で一見すると中国料理っぽくないが、
強い味わいの煮込み料理なので、クタる事なく調和している。
咸蛋好きとしては嬉しい〆となった。

以上の通り非常に充実したコース内容。
こちらはワインや紹興酒も2,900円に統一されておりリーズナブル。
何よりもシェフの引き出しは豊富なので、再訪して色々頂いたみたいと思います。