滋味深ければ素晴らしいが、それだけでは語れない店。しじみ感豊かな優しく品のあるスープと麺と具材が一体化する完成品 : 宍道湖しじみ中華蕎麦 琥珀 東京本店

ラーメン人気店で長い列に並ぶのは、そこそこ慣れているとはいうものの億劫は億劫です。
ここ「宍道湖しじみ中華蕎麦 琥珀」さんも並び始めてから食べ始めるまでの時間はなかなかのものです。今回も比較的順調だったとはいえ、お店に到着してから3時間半以上経ってから食事ができました。(これに交通時間を加えると••)
なので、琥珀さんにもなかなか足が向かなかった訳です。

長らくのBMから脱したきっかけは、”池袋店オープン準備のため 3/20から休業”と食べログ情報に書いてあることに気づいたからです。休業の前に伺っておこうと思い、平日に休暇をとり伺ったのは3月中旬です。

初めての下車かもしれない京浜急行線の雑色駅を降りて、「宍道湖しじみ中華蕎麦 琥珀」に向かいますが、下町的な雰囲気のあるアーケードや商店街を通ります。これがなんといっても楽しいです。店前で朝から焼き鳥を焼いている店、揚げ物を並べている店、古い衣料品店、和菓子店などなどが両側に長々と続いています。この地域の暮らしが少し窺えるような気もしますし、店を見るだけで楽しいです。ラーメン店に向かう途中でなければ立ち食いでもしたかったところです。
お目当ての店に行くために知らない土地に行くのはそんな楽しみがありますね。

因みに「宍道湖」は島根県にあります。そこで採れたしじみが「宍道湖しじみ」ですが、しじみのブランドはここだけのようです。そして宍道湖しじみと一口に言っても、そのエリアとか漁師が特定されるのですね。

趣のある商店街を抜けて、踏み切りを渡った所に「宍道湖しじみ中華蕎麦 琥珀」さんはあります。その踏み切りまで順調に来たのですが、踏み切りが上がりません。遮断機から覗くと、離れた所に電車が止まってしまっていました。そして踏み切りの向こう側のお店には既に14人並んでいるのが見えています。若干焦ったものの9時18分にお店に到着し、15人目に並ぶことができました。

10時から記帳が始まりますから、まずは記帳まで40分ちょい待つことになりました。そしてお店の席数が5つなので、5人ずつ入店することになります。計算的には3ロット目の最後になんとか入れる筈ですが、実際には1人で何人分も記帳する人がいるので、もっと後になります。最初から遅い時間を指定する方もいますが。で、記帳は4ロット目の一番手(12時50分)になりました。集合時間はその10分前の12時40分です。
　　*最初の2ロットは開店(11:30)から30分間隔、3ロット目から25分間隔になります)

商店街やら住宅街やらをぶらぶらしたり、ティーブレーク(2回)したりして、2時間半後にお店の前に戻りました。
名前を呼ばれた時に安堵感といったら。

4ロット目の最初なので、まず入って食券を買ってL字カウンターの奥に座りました。購入は「宍道湖しじみ中華蕎麦<塩>(1000円)にワンタン2個(100円)と味玉(150円)をトッピングしました。

店内は5カウンター5席しかありませんが、全く狭く感じず、寧ろ一人一人のスペースは広く感じた位です。そして、明るい木目のカウンターテーブルがきれいで清潔感もあります。椅子は合皮で、座面が広くしっかりとした背もたれ付きです。勿論、厨房もきれいで、ラーメンも美味しくなりそうです。
助成(奥様？)の接客も感じがいいです。

8分程でカウンター越しにラーメンを受け取ります。
薄い黄金色とも言いたくなる澄んだ綺麗なスープに、大きなチャーシュー2枚が広く陣取り、ワンタンが控えめに盛られ、味玉に支えられた芽ネギは30度位の角度を保って宙に突き出ています。
美しいビジュアルです。

スープを啜ると、しじみの味わいが優しく品よく伝わってきます。蛤のような主張はないのですが、明瞭なしじみの味わいに静かな深みを感じます。潮の強さも感じず、優しさと品の良さに繋がるバランスがいいです。この味わいは宍道湖のしじみだからということだけでは勿論なく、その活かし方ですね。

麺は艶やかなきれいな白い中細ストレートです。
やや柔らかめの茹で加減ですが、食感はしっかりとしています。喉越しがよく小麦感のある麺です。スープとよく合います。ストレートですが、スープとの絡みもいいです。

チャーシューは、柔らかめで肉の旨みを十分に感じます。
雲呑は、ツルツルな大きな皮で、喉越しがいいです。具は少なめですが、生姜が優しく効いて美味しいです。
味玉は流れ出さない程度のとろり感で、濃さがあります。高めの味玉ではありますが、見合った美味しさがあります。

優しく品がいい中に、しじみ感豊かなスープと、そのスープの絡む麺と、具材達が1方向を向いた完成品という感がします。

ご馳走様を言って立ち上がってから、目が合うたびに店主、奥さんなどが3度と頭を下げて頂けるという真摯な姿勢にも好感が持てます。

今は休業中と思いますが、新店の準備を終えて早いうちに戻ってきていただきたいと思います。

ご馳走様でした。