〜 アリストテレスみたいに哲学的なフレンチ 〜 : カンテサンス

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カンテサンス

(Quintessence)
2024年Gold受賞店

The Tabelog Award 2024 Gold 受賞店

フレンチTOKYO百名店2023選出店

食べログ フレンチ TOKYO 百名店 2023 選出店

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4.4

¥20,000~¥29,9991人
  • 料理・味4.4
  • サービス4.2
  • 雰囲気4.1
  • CP4.3
  • 酒・ドリンク4.2
2018/08訪問1回目

4.4

  • 料理・味4.4
  • サービス4.2
  • 雰囲気4.1
  • CP4.3
  • 酒・ドリンク4.2
¥20,000~¥29,9991人

〜 アリストテレスみたいに哲学的なフレンチ 〜

カンテサンスという言葉はアリストテレスによる5つ目の元素エテールに由来し、フランスでは本質・神髄という意味合いを持っている。アリストテレス以前の古代ギリシャでは、エテールとは神の領域を指す言葉であり、カンテサンスにはこういった意味も含まれる。

たしかに神髄とは誰も到達しえない神なる領域にたどり着くことで、カンテサンスもこれを目指しているに違いない。

そのカンテサンスに到着したのは土曜日の20時、予約がとれる一番遅い時間に訪れた。近くに車を停めてからお店に向かう途中、品川から五反田に抜ける小さな丘陵にある御殿山は人通りが少なく、静けさに包まれていた。休日の夜だからだろうか、カンテサンスが店を構えるオフィスビルにも人影はなく、研ぎ澄まされた静けさの中でカンテサンスのエントランスにたどり着く。街中の雑踏を抜けるのと違って、自分たちの足音さえ響き渡る中で、お店にたどり着くのはどこか心地よい。

扉を開けるとパッと明るくなり、スタッフにこころよく迎えられる。それからウェイティングルームのソファーに座り、写真を撮ってもらい、客席に向かうと丸テーブルに案内される。席間隔が広く、ゆったりくつろげる。

グランメゾンであれば色気を漂わせた情緒的なつくりにするところを、カンテサンスは余計な脚色を削り、透明感のある機能的なつくりにしている。ほんとうに料理を美味しく食べてもらたいからこうしたという感じだ。豪華さや優雅さを演出するのではなく、最も料理に集中できる空間にしたのかもしれない。実際厨房の面積は他店よりも圧倒的に広い。料理に集中できる空間とは、感じて思考できる空間に他ならない。ここにいると、哲学的にさえ、感じられてくるから不思議だ。

さて、その料理は以下に。

1.十和田産 姫鱒サブレ
ひとくちサイズのアミューズ、姫鱒の微かな塩味が舌先を包む中で、サブレのバターの香りがほどよく鼻に抜けていく。静かにそっと始まる。

2.北海道噴火湾の毛蟹と夏野菜の冷製スープ
毛蟹を蒸したあと崩してホワイトセロリーなどの野菜と混ぜ合わせて、すだちを垂らしたサワークリームで冷製スープにする。透明な器に盛り付けられた冷製スープを姿勢を低くして横から眺めれば、いくつもの味が何層にも重なっているように見えてくる。実際にスプーンですくながら口に運べば、酸味から始まり、少しずつ味が変化していき、最後には蟹の旨味で終わる。

3.塩とオリーブが主役 山羊乳のバヴァロワ
カンテサンスの看板料理。フレッシュな山羊のミルクでバヴァロワをつくり、フランス産のオリーブに浸すように盛り付ける。塩だけでシンプルに味付けし、百合根とマカダニアンナッツがそっと散らされる。滑らかな舌触りで透き通るような味覚ではあるものの、主張の強いものを好む自分には高尚すぎて、素材の魅力には到達できなかった。同じようにしっかりした味付けを好むフランス人が多く訪れるアストランスでも、ここまで繊細に仕上げているのだろうか。

4.焼き茄子と雲丹
賀茂茄子の発祥と言われる吉川丸茄子を焼き、ビネガー、クルミ、ミント、パルミジャーノチーズを合わせて、雲丹をそっと載せた逸品であり、チーズの香りが鼻に抜けて、口の中ではクルミの食感をアクセントに、エキゾチックな味わいを楽しめる。茄子の素材を活かすためだろうか、旨味は加えられず、酸味とオリエンタルな味覚が交錯する。

5.ムール貝と天然茸のヴォルオーヴァン
簡単に言うとパイ生地を器にしたシチューであり、わりとクラシカルなフランス料理だ。実際にはシュー生地を使い、モンサンミッシェル産のムール貝と天然茸が浮かぶシチューを存分に味わった。わずかな味の違いなどわからない不器用な舌にはちょうどいい味付けで、美味しかった。やっと旨味が入ったか...

6.ブルターニュ産オマール海老とパプリカ
オマール海老にトマトとパプリカを合わせて、サフラン、マカ、フェンネルなどの香辛料を使ったスパイシーなソースでいただく。オマール海老の旨味に、トマトの酸味、ソースの辛味がバランス良く重なり合い、美味しくいただく。海老の食感も好きだが、凝縮された海老のエキスは大好物だ。

7.萩の甘鯛 コンテとヴァンジョーヌのソース
レアに焼いた甘鯛にコンテチーズと黄ワインのソースを合わせて、ヘーベス、山椒、ほおづきのピューレを散らし、アンチョビで和えたささげと万願寺とうがらしを付け合わせている。
まさに甘鯛の火入れは神の領域であり、火入れの天才と称されていることがよく理解できた。ともすればパサつきやすい甘鯛も、岸田シェフの手にかかれば、みずみずしさを閉じ込めたまま口の中でとろけていくほど柔らかく火入れされる。表面の鱗は松笠焼きのようにパリパリで、その身はジューシーにしっとり、ソースとの相性も良く、最高に美味しかった。あれ?味もキマッてる。
その火入れは塊のままフライパンで焼いてみずみずしさや旨味を閉じ込めた上で、余熱によりオーブンでゆっくり丁寧に熱を加えていき、提供する直前に切り分けるのだそうだ。計算つくされた火入れだ。

8.シストロン産仔羊背肉の3時間ロースト
こちらも肉の塊をフライパン焼き、余熱によりオーブンで熱をゆっくり加える。これを3時間繰り返すというから大変手間のかかる仕事だ。ソースは二つあり、ベネゼエラのラム酒とフォンドボーのソース、もうひとつはとうもろこしのピューレであり、どちらも濃厚で仔羊と相性もよい。やっぱり火入れは絶妙で、特に背骨の周りの肉は柔らかくて美味しい。

9.梅のソルベ
10.ココナッツクリーム ピスタチオオイルエスプレッソ
11.夕張メロンのマカロン
12.メレンゲのアイスクリーム

全12品のお任せコースも、最初は余計な味付けを控えて素材の味を活かし、お腹が満たされていくとともにしっかりした味付けに変えていく。味の好みは分かれるところではあるけども、音楽を聴いているようでもあり、計算し尽くされた構成になっている。透明なものが徐々に赤く染まっていくように、コースも繊細な旋律から重厚で高らかな響きへと変わっていき、見るものを圧倒する。その音楽に耳を傾けることにより、自分の味覚も浮き彫りなった。火入れは本当に素晴らしい。

素材、火入れ、味付け、この三つにこだわり、日々高みを追求して、謙虚さとともに考え抜いている姿は、古代ギリシャのアリストテレスのように哲学的に思えてならない。それが内装にも、料理にも、サービスにも、にじみ出て、自分でさえも深い思考のかなたに連れ去られる。食べた後の気分は、優雅な気分でも、贅沢な気分でもない。正しいものに触れてハッとするような感覚、公正な何かに触れたような感覚に包まれている。哲学的なフレンチ、という言葉が弾ける。

帰り際、岸田シェフが見送ってくれたが、その人柄はとても謙虚で、透明感もあり、もの静かに常に何かを考えている印象を受けた。思考の軌跡を見ているのだろうか。僕は丁寧にご挨拶をしてカンテサンスの扉を開けた。

カンテサンスから離れるとやっぱり辺りは静けさに包まれていた。街が呼吸を繰り返すのが聞こえてきそうだ。景色は透明で、遠くのほうで空に向かってひかりが放たれている。車道に沿って消えていく赤いテールランプさえ見かけられない。月は薄暗い雲の尾に覆われ、涼しげな夜風は吹いてこない。そして僕は幻想的にさえ見える御殿山の緩やかな坂を、憂鬱な現実に向かってゆっくりと下っていく。下っていく...

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店舗情報(詳細)

店舗基本情報

店名
カンテサンス(Quintessence)
受賞・選出歴
2024年Gold受賞店

The Tabelog Award 2024 Gold 受賞店

2023年Gold受賞店

The Tabelog Award 2023 Gold 受賞店

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ジャンル フレンチ
予約・
お問い合わせ

03-6277-0090

予約可否

予約可

03-6277-0485 (お問い合わせ・リコンファームなど)
03-6277-0090 (ご予約専用)

住所

東京都品川区北品川6-7-29 ガーデンシティ品川 御殿山 1F

このお店は「港区白金台5-4-7」から移転しています。
※移転前の情報は最新のものとは異なります。

移転前の店舗情報を見る

交通手段

京浜急行電鉄 本線「北品川駅」高輪口より、徒歩5分
JR山手線・京浜東北線・東海道線・上野東京ライン・横須賀線・東海道新幹線「品川駅」高輪口より、徒歩10分
京浜急行電鉄 本線「品川駅」高輪口より、徒歩10分

北品川駅から582m

営業時間
  • 月・火・水・木・金・土

    • 17:00 - 23:30
    • 定休日
  • ■ 営業時間
    【2部制】
    ・17時〜20時
    ・20時30分~23時30分

    ■ 定休日
    日曜日中心に月6日、年末年始、夏期休暇
予算

¥30,000~¥39,999

予算(口コミ集計)
¥60,000~¥79,999 ¥40,000~¥49,999

利用金額分布を見る

支払い方法

カード可

(AMEX、VISA、Master、JCB、Diners)

電子マネー不可

サービス料・
チャージ

サービス料・10%

席・設備

席数

30席

個室

(4人可、6人可)

2室有り

貸切

不可

禁煙・喫煙

全席禁煙

ウェイティングスペースを含め完全禁煙。

駐車場

GARDEN CITY内に一般来客用の有料駐車場有(※レストラン利用による駐車料金サービスは無)

空間・設備

オシャレな空間、落ち着いた空間、席が広い

メニュー

ドリンク

ワインあり、カクテルあり、ワインにこだわる

料理

野菜料理にこだわる、健康・美容メニューあり、ベジタリアンメニューあり

特徴・関連情報

利用シーン

家族・子供と 知人・友人と

こんな時によく使われます。

ロケーション

隠れ家レストラン

サービス

お祝い・サプライズ可、ソムリエがいる

お子様連れ

子供可

高校生(16歳)未満のご来店は不可。

ドレスコード

お店としてはエレガントカジュアルを推奨。
男性の半ズボンやサンダルなど極度にカジュアルな服装はNG。

ホームページ

http://www.quintessence.jp

オープン日

2013年8月24日

備考

2006年5月に白金で開業後、2013年8月に現在の御殿山に移転。
メインダイニングでの写真撮影は不可。個室での撮影は可能。
JR五反田駅・JR品川駅からGARDEN CITY行きの専用バス有り。
http://myconcierge.jp/tjg/2014/Shuttle-Bus_Garden-City.pdf

初投稿者

djkenkenpadjkenkenpa(467)

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