京鼎樓/麻婆丼節考 : 京鼎樓 アクアシティお台場店

思えば夏らしいことをまだ何一つしていない。
古(いにしえ)の超名作映画がレストアされて極く一部の劇場でかかっているのは分かっていたが、私の活動パタンには上映時間帯が合わないと思っていたので、あまり気にしていなかった。で、いつものカウンターでちびちびやりながら封切り映画をチェックしているんだけど、どうしても気の惹かれる映画がみつからなく、お台場という私にとって金輪際柄じゃない集合映画館で、先述の古がちょうど正午っくらいから掛かっているようなので、それでは、それでもちょっと早起きになっちゃうけど、行ってみるかなと ……

<H29.8.27>

新橋でゆりかもめに乗り換えて、お台場で下りるらしい。
車内は若くて可愛い、または若くてきれいな人でいっぱい、とまでは言えなかったけど、目移りするには十分なマティリアルが揃っている。ふだんゆりかもめはビッグサイトに行くときくらいしか使ったことがなかったので、お台場までは、寧ろ近く感じた。
そして勝手分からぬままに規模の大きなショッピング施設を進んでるんだけど、これは未だ時間が早いからであろうか、日曜日だというのに思いの外閑散としていて、テナントに立っている売り子の方たちを見ていてこっちが心配になるほど。

果たして無事切符売り場に到着。
この集合映画館のエントランスも非常に閑散としていた。カウンターで女の子が対応してくれるようで、一般一名と告げて席を決めると、「千八百円です ♪」と。訝り気に視線をやった彼女の胸のバッヂには堂々と、“研修中”という質(たち)の悪いエスプリ的文字列が。もう気が気じゃなくなって、モニタから何とか作品情報をとろうと必死、目の前の女の子も上の空 ……

―― ?　俺が観たいの、確かに3D上映だったよな ……

「すみません、間違えてワンダーウーマンをとってしまいました」

―― そっからかよ (笑)

【 映画鑑賞後/同施設内での消極的お昼ご飯タイム 】

「京鼎樓」

読み方はJIN DIN ROU とのこと。おしぼりの袋にそう書いてあった。
午後二時半を過ぎた頃、店頭に待ち客を抱えていない数少ないお店であったので (ごめんなさい !　でも事実)、とりあえずお店の入り口に半身突っ込んだ形で立ったが、フロアの女の子はこちらに気付きながら、こちらを見てくれず。次に、割と責任のある立場では、と思しき男性とようやく視線が合ったんだけどそっから待つこと暫し。いや、空席があることが見えてたんで、店頭のペーパーに名前を書き入れることが省けると思ってそうやったのだが ……

―― 何か俺に悪いところがあるのなら言ってよ !　直すから。なんて、そんな気さらさらないけど (笑)

で着席するなり、その責任者と思しき男性は今度は一転、何を急いているのかいきなり注文はお決まりですか ?　と。なんだかなあと思いつつ、ちょっと考えさせて欲しい旨伝え、一旦引き下がってもらったのだが ……
それでも足立区民の私なので、結局直ぐに注文を決め (と言ってもいつものなんだけど)、見上げた視線はしかし、お店の人が突っ立ってるにも拘わらず、哀れまたしても、暫し虚空を彷徨う羽目に ……

“マーボー豆腐丼セット” @1,200也。

最初に、生姜かジャガイモのえらい細かな千切りのようなものがのった御小皿が供されたが、何も説明は無かった。
(よくみたら卓に小籠包の食べ方が図解されていたので、それでこの御小皿の謎は解けた)

ここで誠に僭越ながら私の丼論というものを簡単に述べさせていただくと、麻婆豆腐というのは丼にして (どんぶりに盛ったご飯の上に具、またの名で言えばおかずを載せるという一体形態としたとき)、まったくダメではないんだけど、ほぼダメ。
対して丼にして効果を発揮するものは、この私の、西は西日暮里から東は東十条までのたゆまぬ全国調査の結果、天丼、玉子丼、また私は食べないけどカツ丼なんかの、タレがご飯の熱や香りと呼応して相乗するタイプのもの。どちらかというと定食スタイル、即ちご飯とおかずと別々にしてやったほうが良いというのがこの麻婆豆腐。さらに丼にしちゃ絶対駄目なのが、ハンバーグ。
そのように、私は現時点で結論付けている

いや、現実にはハンバーグ丼なんか滅多にないけど、一度茅場町かどっかの洋食屋さんでまかないを謳うハンバーグ丼というのを食べたことがあって。でもそれはドミソースがご飯の香りを完全に塞いじゃっていて、ああ、これはダメだなぁと ……

―― あ～、だからハンバーグって、ご飯を白く平べったいお皿にのせて供すんだろうな［注］。ナイフ&フォウクを使えるようにする為ということもあるんだろうけど、ご飯の香りをとりわけ発揮させて、見た目河野洋平さんのように濃いハンバーグとドミソースに、その穢れ無き純白を拮抗させるべく。そしてもっと言うと、早く冷めるという犠牲をはらってまでも、ハンバーグにはそうしたほうがマッチするということが、プロであれば当然分かるのよ。

注) その意味で、カレーライスというものも丼と同じく一体形態をとるが、でもこちらは器が平べったく、そうなるとやはり、ご飯の香りを、その表面積を稼いで発散させることによって活きるものの括りとなろう

閑話休題。
お会計をと立ち上がり、レジスタカウンターの前で暫し物思いに耽る。そこでもお店の人は誰も私に気が付かない。と、厨房から若い中国人の女の子が出てきて、○○番ですよね ?　と。無論私はこちらの従業員でもマネージャーでもないので、そんなの知らん。でもそれじゃあ女の子が可哀想なので、座っていた席を指さしてそこでしたと (笑)。

―― しかしこういった場所で、税込表記で明朗会計ということだけは偉いと思った。それしか言うことないんだけど、でもそれって非常に重要なことよ